(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001268
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20231226BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231226BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20231226BHJP
H04N 5/268 20060101ALI20231226BHJP
H04N 23/90 20230101ALI20231226BHJP
【FI】
H04N23/60 500
G06T7/00 660Z
G06T7/70 B
H04N5/268
H04N23/90
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023184234
(22)【出願日】2023-10-26
(62)【分割の表示】P 2019549317の分割
【原出願日】2018-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2017201190
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大坪 洋介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 侑也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 和広
(72)【発明者】
【氏名】宝珠山 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】正田 真利恵
(72)【発明者】
【氏名】曽宮 翔
(72)【発明者】
【氏名】小池 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大谷 直也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切替の自動化を考慮したカメラ制御装置、制御システム及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】制御システム1において、制御装置110は、施設内の第1領域101の第1被写体を撮影する複数の第1カメラACと、施設内の第2領域102の第2被写体を撮影する複数の第2カメラFCと、にアクセスし、第1カメラのうち何れかのカメラが撮影した第1被写体の映像データに基づき、第1被写体内の観客群の視線方向を検出する検出部、観客群の視線方向に基づいて、観客群の第2領域内の注視領域を特定し、第2カメラの各々が撮影した第2被写体の映像データに基づき、注視領域内に存在する観客群の注視対象を特定する特定部、注視対象に基づいて、第2カメラの中から映像データの送信元となる特定の第2カメラを決定する決定部及び特定の第2カメラからの映像データを送信する送信部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内の第1領域の第1被写体を撮影する複数の第1カメラと、前記施設内の第2領域の第2被写体を撮影する複数の第2カメラと、にアクセス可能な制御装置であって、
前記複数の第1カメラの各々が撮影した前記第1被写体内の観客群の人数に基づいて、前記複数の第1カメラの中から特定の第1カメラを選択する選択部と、
前記特定の第1カメラによって撮影された特定の第1被写体の映像データに基づいて、前記特定の第1被写体内の特定の観客群の視線方向を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された特定の観客群の視線方向に基づいて、前記特定の観客群の前記第2領域内の注視領域を特定し、前記複数の第2カメラの各々によって撮影された第2被写体の映像データに基づいて、前記注視領域内に存在する前記特定の観客群の注視対象を特定する特定部と、
前記特定部によって特定された注視対象に基づいて、前記複数の第2カメラの中から映像データの送信元となる特定の第2カメラを決定する決定部と、
前記決定部によって決定された特定の第2カメラからの映像データを送信する送信部と、
を有する制御装置。
【発明の詳細な説明】
【参照による取り込み】
【0001】
本出願は、平成29年(2017年)10月17日に出願された日本出願である特願2017-201190の優先権を主張し、その内容を参照することにより、本出願に取り込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、制御装置、制御システム、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、スポーツ競技等の撮影に用いられるカメラ自動制御システム、カメラ自動制御方法、カメラ自動制御装置、およびプログラムを開示する。しかしながら、特許文献1では、操作者からの切替指示により、競技撮影用カメラを切り替えている。すなわち、テレビの放送用のカメラの切替は依然としてディレクターと呼ばれる責任者の指示により行われるため、切替の自動化は考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本願において開示される技術の一側面となる制御装置は、施設内の第1領域の第1被写体を撮影する複数の第1カメラと、前記施設内の第2領域の第2被写体を撮影する複数の第2カメラと、にアクセス可能な制御装置であって、前記複数の第1カメラの各々が撮影した前記第1被写体内の観客群の人数に基づいて、前記複数の第1カメラの中から特定の第1カメラを選択する選択部と、前記特定の第1カメラによって撮影された特定の第1被写体の映像データに基づいて、前記特定の第1被写体内の特定の観客群の視線方向を検出する検出部と、前記検出部によって検出された特定の観客群の視線方向に基づいて、前記特定の観客群の前記第2領域内の注視領域を特定し、前記複数の第2カメラの各々によって撮影された第2被写体の映像データに基づいて、前記注視領域内に存在する前記特定の観客群の注視対象を特定する特定部と、前記特定部によって特定された注視対象に基づいて、前記複数の第2カメラの中から映像データの送信元となる特定の第2カメラを決定する決定部と、前記決定部によって決定された特定の第2カメラからの映像データを送信する送信部と、を有する。
【0006】
本願において開示される技術の他の側面となる制御装置は、施設内の第1領域の第1被写体を撮影する第1カメラと、前記施設内の第2領域の第2被写体を撮影する第2カメラと、にアクセス可能な制御装置であって、前記第1カメラによって撮影された前記第1被写体の映像データに基づいて、前記第1被写体内の観客群の視線方向を検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記観客群の視線方向に基づいて、前記観客群の前記第2領域内の注視領域を特定する特定部と、前記特定部の特定結果に基づいて、前記第2カメラの撮影を制御する制御部と、を有する。
【0007】
本願において開示される技術の一側面となる制御システムは、施設内の第1領域の第1被写体を撮影する複数の第1カメラと、前記施設内の第2領域の第2被写体を撮影する複数の第2カメラと、前記複数の第1カメラ、および前記複数の第2カメラにアクセス可能な制御装置と、を有する制御システムであって、前記制御装置は、前記複数の第1カメラのうちいずれかの第1カメラによって撮影された前記第1被写体の映像データに基づいて、前記第1被写体内の観客群の視線方向を検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記観客群の視線方向に基づいて、前記観客群の前記第2領域内の注視領域を特定し、前記複数の第2カメラの各々によって撮影された第2被写体の映像データに基づいて、前記注視領域内に存在する前記観客群の注視対象を特定する特定部と、前記特定部によって特定された注視対象に基づいて、前記複数の第2カメラの中から映像データの送信元となる特定の第2カメラを決定する決定部と、前記決定部によって決定された特定の第2カメラからの映像データを送信する送信部と、を有する。
【0008】
本願において開示される技術の一側面となる制御プログラムは、施設内の第1領域の第1被写体を撮影する複数の第1カメラと、前記施設内の第2領域の第2被写体を撮影する複数の第2カメラと、にアクセス可能なプロセッサに、前記複数の第1カメラのうちいずれかの第1カメラによって撮影された前記第1被写体の映像データに基づいて、前記第1被写体内の観客群の視線方向を検出する検出処理と、前記検出処理によって検出された前記観客群の視線方向に基づいて、前記観客群の前記第2領域内の注視領域を特定し、前記複数の第2カメラの各々によって撮影された第2被写体の映像データに基づいて、前記注視領域内に存在する前記観客群の注視対象を特定する特定処理と、前記特定処理によって特定された注視対象に基づいて、前記複数の第2カメラの中から映像データの送信元となる特定の第2カメラを決定する決定処理と、前記決定処理によって決定された特定の第2カメラからの映像データを送信する送信処理と、を実行させる。
【0009】
本願において開示される技術の他の側面となる制御プログラムは、施設内の第1領域の第1被写体を撮影する第1カメラと、前記施設内の第2領域の第2被写体を撮影する第2カメラと、にアクセス可能なプロセッサに、前記第1カメラによって撮影された前記第1被写体の映像データに基づいて、前記第1被写体内の観客群の視線方向を検出する検出処理と、前記検出処理によって検出された前記観客群の視線方向に基づいて、前記観客群の前記第2領域内の注視領域を特定する特定処理と、前記特定処理の特定結果に基づいて、前記第2カメラの撮影を制御する制御処理と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、制御システムの構成例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、制御装置の機能的構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、観客カメラで撮影される観客群の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、観客の動的な視線方向の感度例1を示す説明図である。
【
図6】
図6は、観客の動的な視線方向の感度例2を示す説明図である。
【
図7】
図7は、観客の動的な視線方向の感度例3を示す説明図である。
【
図8】
図8は、観客群の視線方向の検出例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、耳の位置変化による動きベクトルの検出例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、特定の観客の視線方向の検出例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、特定部による注視領域および注視対象の特定例1を示す説明図である。
【
図12】
図12は、特定部による注視領域および注視対象の特定例2を示す説明図である。
【
図13】
図13は、注視領域の面積の計算例を示す説明図である。
【
図14】
図14は、制御装置による制御処理手順例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、
図14に示した選択部による第1観客カメラ選択処理(ステップS1401)の詳細な処理手順例1を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、
図14に示した選択部による第1観客カメラ選択処理(ステップS1401)の詳細な処理手順例2を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、
図15に示した第2観客カメラ選択処理(ステップS1504)の詳細な処理手順例1を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、
図15に示した第2観客カメラ選択処理(ステップS1504)の詳細な処理手順例2を示す説明図である。
【
図19】
図19は、
図15に示した第2観客カメラ選択処理(ステップS1504)の詳細な処理手順例2を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、
図14に示した特定処理(ステップS1403)の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、フィールドカメラの自動シャッター機能の説明図である。
【
図22】
図22は、マーケティングへの応用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<制御システムの構成例>
図1は、制御システムの構成例を示す説明図である。本実施例の制御システム1は、テレビやインターネット上に放送される映像データのシーンを観客からの視線に合わせて自動的に切り替えるシステムである。この制御システム1は、たとえば、施設に実装されるシステムである。施設とは、観客が注視対象を目視するための建造物または場所であり、具体的には、たとえば、スタジアム、アリーナ、イベントホール、体育館、運動場、競技場、プール、演舞場、テーマパークを含む。本実施例では、サッカーのスタジアム100を例に挙げて説明する。
【0012】
施設は、観客が存在する第1領域と注視対象が存在する第2領域とを有する。サッカーのスタジアム100の場合、第1領域が観客席101であり、第2領域がフィールド102である。注視対象とは、観客が注視する人または物であり、たとえば、サッカーの場合、人であれば選手や監督、審判であり、物であればボールである。
【0013】
制御システム1は、複数の観客カメラACと、複数のフィールドカメラFCと、制御装置110と、データベースと、を有する。観客カメラACは、第1領域である観客席101を被写体として動画撮影するカメラである。フィールドカメラFCは、スタジアム100のフィールド102を被写体として動画撮影するカメラである。フィールドカメラFCは、被写体を自動的に追尾してもよく、撮影者が操作してもよい。
【0014】
観客カメラACおよびフィールドカメラFCからの映像データは、制御装置110に送信される。なお、フィールドカメラFCの映像データは、電波塔経由で一般家庭のテレビ103に、または、インターネット経由でパーソナルコンピュータ104(スマートフォンやタブレット含む)に配信される。
【0015】
制御装置110は、複数の観客カメラAC、複数のフィールドカメラFC、およびデータベース120と通信可能なコンピュータである。データベース120は、施設に関する設計情報として、観客席情報121、フィールド情報122、観客カメラ情報123、フィールドカメラ情報124を記憶する。また、データベース120は、選手情報125や特徴人物情報126も記憶する。データベース120は、制御装置110からアクセス可能であれば、制御システム1の外に設けられてもよい。
【0016】
観客席情報121は、直交しあうX軸、Y軸、およびZ軸からなるローカル座標系10において、施設における観客席101の3次元位置を示す情報である。X軸およびY軸で形成される平面がフィールド102に平行な面であり、Z軸がフィールド102からの高さを示す。
【0017】
フィールド情報122は、施設におけるフィールド102の3次元位置を示す情報である。観客カメラ情報123は、施設における観客カメラACの3次元位置や撮影条件を示す情報である。撮影条件とは、たとえば、撮影方向、画角、倍率である。フィールドカメラ情報124は、施設におけるフィールドカメラFCの3次元位置や撮影条件を示す情報である。
【0018】
選手情報125は、選手の所属チームやユニフォームの色や模様、背番号を示す情報である。また、選手の顔画像データを含んでもよい。特徴人物情報126は、特徴的な人物を示す情報であり、具体的には、たとえば、当該人物の顔画像データや服装の画像データを含む。
【0019】
ここで、制御システム1の動作について説明する。
【0020】
(1-1)フィールドカメラFCがフィールド102上の選手やボールを撮影し映像データを取得する。
(1-2)観客カメラACが観客席101の観客群を撮影し、映像データを取得する。
【0021】
(2-1)フィールドカメラFCは、取得した映像データを制御装置110に送信する。
(2-2)観客カメラACは、取得した映像データを制御装置110に送信する。
【0022】
(3)制御装置110は、取得した映像データを用いて、観客群が注視しているフィールド102の領域(以下、注視領域)を特定し、注視領域に存在する注視対象(選手やボール)を、データベース120を参照して特定する。
【0023】
(4)制御装置110は、特定した注視対象を撮影するフィールドカメラFCを複数のフィールドカメラFCから決定する。制御装置110は、具体的には、たとえば、注視領域とフィールドカメラFCとの位置関係や距離、同一フィールドカメラFCの連続放送時間がしきい値を超えたか否か、選手の顔が認識できるか否か、といった基準により、切替先となる最適なフィールドカメラFCを決定する。
【0024】
これにより、決定されたフィールドカメラFCからの映像データが、テレビ103やパーソナルコンピュータ104に放送または配信される。したがって、フィールドカメラFCの切替の自動化を図ることができる(リアルタイム制御)。
【0025】
<制御装置110のハードウェア構成例>
図2は、制御装置110のハードウェア構成例を示すブロック図である。制御装置110は、プロセッサ201と、記憶デバイス202と、入力デバイス203と、出力デバイス204と、通信インターフェース(通信IF)205と、を有する。プロセッサ201、記憶デバイス202、入力デバイス203、出力デバイス204、および通信IF205は、バス206により接続される。
【0026】
プロセッサ201は、制御装置110を制御する。記憶デバイス202は、プロセッサ201の作業エリアとなる。また、記憶デバイス202は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的なまたは一時的な記録媒体である。記憶デバイス202としては、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリがある。
【0027】
入力デバイス203は、データを入力する。入力デバイス203としては、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、スキャナがある。出力デバイス204は、データを出力する。出力デバイス204としては、たとえば、ディスプレイ、プリンタがある。
【0028】
通信IF205は、観客カメラ群ACsおよびフィールドカメラ群FCsから映像データを受信する。また、通信IF205は、インターネット200や電波塔210と接続し、観客カメラ群ACsおよびフィールドカメラ群FCsから受信した映像データをパーソナルコンピュータ104やテレビ103に送信する。
【0029】
<制御装置110の機能的構成例>
図3は、制御装置110の機能的構成例を示すブロック図である。制御装置110は、検出部301と、特定部302と、決定部303と、送信部304と、選択部305と、を有する。検出部301~選択部305は、具体的には、たとえば、
図2に示した記憶デバイス202に記憶されたプログラムをプロセッサ201に実行させることにより実現される機能である。
【0030】
検出部301は、観客カメラ群ACsのうちいずれかの観客カメラACによって撮影された第1被写体の映像データに基づいて、第1被写体内の観客群の視線方向を検出する。観客群の視線方向とは、観客群の中の各観客の視線方向の合成ベクトルが指し示す方向である。
【0031】
すなわち、合成ベクトルのスカラー値が所定値以上である場合、観客群の大部分が合成ベクトルの方向を向いて、フィールド102を注視しているとみなす。なお、観客の個々の視線方向の検出する方法の一つとして、目領域の検出がある。検出部301は、観客が映っている映像データ中から目領域中の虹彩の位置を検出することにより視線方向を検出する。また、検出部301は、観客の顔の向きにより、観客の視線方向を検出してもよい。
【0032】
特定部302は、検出部301によって検出された観客群の視線方向に基づいて、観客群の第2領域内の注視領域を特定する。具体的には、たとえば、特定部302は、観客群の視線方向の先となるフィールド102上の注視領域を、データベース120の観客席情報121およびフィールド情報122から特定する。すなわち、観客群の観客席101の位置を始点として視線方向の先となるフィールド102の領域を注視領域とする。なお、注視領域は、視線方向の延長線とフィールド102とが交差する点を包含する領域である。
【0033】
また、特定部302は、フィールドカメラ群FCsの各フィールドカメラFCによって撮影された第2被写体の映像データに基づいて、注視領域内に存在する観客群の注視対象を特定する。具体的には、たとえば、特定部302は、フィールドカメラFCが撮影している注視領域上の注視対象を、フィールドカメラFCの映像データから特定する。
【0034】
また、観客カメラACが、いわゆる全天球型カメラである場合、観客カメラACは、観客席101と、当該観客席101と反対側のフィールド102を撮像している。したがって、制御装置110は、この観客カメラACからの映像データを用いて、観客群の視線方向の延長線上に存在する注視対象を直接特定する。これにより、注視対象の特定にフィールドカメラFCの映像データを用いる必要がなく、注視対象の特定精度の向上および処理速度の向上を図ることができる。
【0035】
決定部303は、特定部302によって特定された注視対象に基づいて、フィールドカメラ群FCsの中から映像データの送信元となる特定のフィールドカメラFCを決定する。具体的には、たとえば、決定部303は、注視領域とフィールドカメラFCとの位置関係や距離、同一フィールドカメラFCの連続放送時間がしきい値を超えたか否か、選手の顔が認識できるか否か、といった基準により、切替先となる最適なフィールドカメラFCを決定する。
【0036】
これにより、決定されたフィールドカメラFCからの映像データが、テレビ103やパーソナルコンピュータ104に放送または配信される。したがって、フィールドカメラFCの切替の自動化を図ることができる。
【0037】
送信部304は、決定部303によって決定された特定のフィールドカメラFCからの映像データを送信する。具体的には、たとえば、送信部304は、通信IFを用いて、電波塔210経由で一般家庭のテレビ103に、または、インターネット200経由でパーソナルコンピュータ104(スマートフォンやタブレット含む)に、特定のフィールドカメラFCからの映像データを送信する。
【0038】
選択部305は、視線方向の検出に先立って、観客カメラ群ACsの中から特定の観客カメラACを選択する。具体的には、たとえば、選択部305は、複数の観客カメラACの各々が撮影した第1被写体内の観客群の人数の多さを示すスコアに基づいて、複数の観客カメラACの中から特定の観客カメラACを選択する。スコアは、観客群の人数の多さを示し、具体的には、たとえば、映像データの1フレーム内の面積のうち観客の画像データが占める割合、すなわち、密度である。スコアが大きいほど、観客数が多い。
【0039】
なお、選択部305による観客カメラACの選択は、検出部301で多数の観客群の視線方向を検出するためである。したがって、所定数以上の観客席101が第1被写体として観客カメラACの画角に収まるように、観客カメラACの撮影条件が設定されているものとする。検出部301は、選択部305によって選択された観客カメラACにより撮影された第1被写体の映像データに基づいて、第1被写体内の観客群の視線方向を検出することになる。
【0040】
また、選択部305は、観客群と注視領域との位置関係に基づいて、特定の観客カメラACを選択する。具体的には、たとえば、選択部305は、複数の観客カメラACの中で、注視領域に近い観客群を撮影する観客カメラACを特定の観客カメラACとして選択する。当該選択についての詳細は、
図4~
図6で後述する。
【0041】
また、選択部305は、スコアが所定のしきい値以上となる観客カメラACを特定の観客カメラACとして選択する。スコアが高い観客カメラACほど、より多くの観客を撮影しているため、観客群の視線方向の検出に適していることになる。したがって、選択部305は、複数の観客カメラACの中で絶対的にスコアが高い、すなわち、スコアがしきい値以上である観客カメラACを選択すればよい。
【0042】
スコアが所定のしきい値以上となる観客カメラACが複数存在する場合は、選択部305は、最高値のスコアの観客カメラACを選択してもよい。また、上述した観客席101と注視領域との位置関係で特定の観客カメラACとしての条件を満たしている観客カメラACに制限してもよい。
【0043】
また、選択部305は、複数の観客カメラACのスコアの中で相対的なに高いスコアの観客カメラACを特定の観客カメラACとして選択する。スコアが高い観客カメラACほど、より多くの観客を撮影しているため、観客群の視線方向の検出に適していることになる。したがって、選択部305は、複数の観客カメラACの中で相対的にスコアが高い観客カメラACを選択すればよい。
【0044】
相対的に高いスコアの観客カメラACが複数存在する場合は、選択部305は、その中で最高のスコアの観客カメラACを選択してもよい。また、上述した観客席101と注視領域との位置関係で特定の観客カメラACとしての条件を満たしている観客カメラACに制限してもよい。
【0045】
また、選択部305は、スコアが所定のしきい値未満となる観客カメラACを特定の観客カメラACとして選択してもよい。スコアが高い観客カメラACほど、より多くの観客を撮影しているため、観客群の視線方向の検出に適しているが、しきい値以上のスコアが存在しない場合は、しきい値未満のスコアの観客カメラACが選択される。スコアが所定のしきい値未満となる観客カメラACが複数存在する場合は、選択部305は、最高値のスコアの観客カメラACを選択してもよい。
【0046】
また、上述した観客席101と注視領域との位置関係で特定の観客カメラACとしての条件を満たしている観客カメラACに制限してもよい。また、選択部305は、通常は、スコアがしきい値以上の観客カメラACを選択し、ランダムにまたは周期的にスコアがしきい値未満となる観客カメラACを選択してもよい。これにより、少数派の視線方向も考慮して、たとえば、多数派が見逃してしまうようなシーンにフィールドカメラFCを切り替えることができる。
【0047】
また、選択部305は、複数の観客カメラACのスコアの中で相対的に低いスコアの観客カメラACを特定の観客カメラACとして選択する。相対的に低いスコアの観客カメラACが複数存在する場合は、選択部305は、その中で最低のスコアの観客カメラACを選択してもよい。また、上述した観客席101と注視領域との位置関係で特定の観客カメラACとしての条件を満たしている観客カメラACに制限してもよい。
【0048】
また、選択部305は、通常は、スコアが最低ではない観客カメラACを選択し、ランダムにまたは周期的に相対的に低いスコアの観客カメラACを選択してもよい。これにより、少数派の視線方向も考慮して、たとえば、多数派が見逃してしまうようなシーンにフィールドカメラFCを切り替えることができる。
【0049】
また、スコアがしきい値未満または相対的に低い観客カメラACが特定の観客カメラACとして選択された場合、検出部301は、特定の観客カメラACで撮影される観客群の視線方向ではなく、その中の特定の観客の視線方向を検出してもよい。スコアがしきい値未満または相対的に低い場合は、観客数が少ないため、観客群の視線方向が、観客群全体として注視したい方向でない場合もある。したがって、このような場合には、検出部301は、ノイズ除去により、観客群を絞り込む。
【0050】
ここで、ノイズとは、スマートフォンの操作中、飲食中(いずれも下を向いている)、電光掲示板の方向を向いている観客のように非注視行動をとっている観客である。検出部301は、そのような視線方向の観客を除去し、残余の観客群から特定の観客の視線方向を検出する。また、検出部301は、データベース120を参照して特徴的な人物を特定の観客として選択し、その視線方向を検出してもよい。
【0051】
また、スコアがしきい値未満または相対的に低い観客カメラACが特定の観客カメラACとして選択された場合、検出部301は、決定部303によって決定された特定のフィールドカメラFCの撮影方向と、特定の観客群の各々の視線方向と、に基づいて、特定の観客の視線方向を検出してもよい。
【0052】
特定のフィールドカメラFCからの映像データは、テレビ103の視聴者が視聴するため、特定のフィールドカメラFCの撮影方向は、テレビ103の視聴者の視線方向となる。したがって、検出部301は、当該撮影方向と逆方向に位置する観客群の個々の観客の視線方向を検出し、その中から特定の観客の視線方向を検出してもよい。
【0053】
この場合の特定の観客の視線方向は、撮影方向と同一または許容範囲内で近似する方向でもよい。これにより、テレビ103の視聴者と観客とがともに注視する映像を提供することができる。また、特定の観客の視線方向は、撮影方向と許容範囲外れている方向でもよい。これにより、テレビ103の視聴者が注視することができない注視対象へフィールドカメラFCを切り替えることができる。
【0054】
また、制御装置110は、フィールドカメラ群FCsのうち、過去の放送データに最も類似している画像データを撮影しているフィールドカメラFCに切り替えてもよい。このとき、制御装置110は、観客カメラACと当該被写体を結んだベクトルを観客の視線方向として検出する。この視線方向検出に基づき、検出精度を改善することができる。
【0055】
また、送信部304は、フィールドカメラFCが撮影した静止画データを、当該フィールドカメラFCの切替元となった観客群のうち少なくとも1人の観客Aの通信端末300(たとえば、スマートフォン)に送信してもよい。この場合、制御装置110は、データベースに観客の通信端末300のアドレス情報(たとえば、電子メールアドレス)を記憶しているものとする。静止画データは、フィールドカメラFCが静止画として撮影したデータでもよく、映像データから抽出したデータでもよい。
【0056】
また、送信部304は、静止画データそのものではなく、静止画データの保存先を示すアクセス情報(たとえば、URL)を当該通信端末300に送信してもよい。フィールドカメラFCの切替直後は、決定的なシーンとなることがあるため、その時の静止画データまたはアクセス情報を、当該シーンを見ていたであろう観客に提供することができる。特に、このようなシーンでは、観客は撮影せずに注視対象を注視しているため、観客は静止画データを撮影できる状況でなくても、そのとき注視している注視対象の静止画データを取得することができる。
【0057】
上述した実施例では、制御装置110は、複数のフィールドカメラFCを切り替える例を説明したが、1台または複数の観客カメラACの映像データを用いて注視領域R、あるいは注視領域R内の注視対象を特定して、1台のフィールドカメラFCを制御することとしてもよい。フィールドカメラFCを制御する制御部は、たとえば、特定した注視領域R、あるいは特定した注視領域R内の注視対象の方向にフィールドカメラFCを向ける制御を実行する。
【0058】
<観客カメラACで撮影される観客群>
図4は、観客カメラACで撮影される観客群の一例を示す説明図である。
図4において、観客カメラAC1,AC2は同一撮影条件とする。観客カメラAC1は、観客席101の観客群401を撮影しており、観客カメラAC2は、観客席101の観客群402を撮影している。観客群401,402の人数の多さは、上述した選択部305においてスコアを算出することにより特定される。
【0059】
図4の例では、観客群401のスコアは、しきい値以上または相対的に高いスコアとなり、検出部301は、観客群401の各々の観客の視線方向ベクトルの合成ベクトルを、観客群401の視線方向として検出する。また、観客群402のスコアは、しきい値未満または相対的に低いスコアとなり、検出部301は、観客群401の特定の観客の視線方向を検出する。
【0060】
<観客と選手との位置関係>
つぎに、観客と選手との位置関係について説明する。観客席101は、フィールド102の周囲に設置されているものとする。観客がフィールド102上の注視対象(選手やボール)を視線追尾する場合、制御装置110は、観客の動的な視線方向や奥行側の追尾をしづらく、視線方向に直交する左右方向や手前側の追尾をしやすい。視線方向の追尾のしやすさを感度と表現する。したがって、観客の動的な視線方向や奥行側の追尾については感度が悪く、視線方向に直交する左右方向や手前側の追尾については感度が良い。
【0061】
なお、以下の
図5~
図7では、ある一人の観客を例に挙げて説明するが、複数の観客の集合である観客群の場合も同様である。
【0062】
図5は、観客の動的な視線方向の感度例1を示す説明図である。フィールド102を囲む観客席101A~101Dのうち、観客500Aは、観客席101Aに位置し、観客500Bは、観客席101Bに位置する。観客席101Aは、観客席101Bと対向する。
【0063】
また、フィールド102において、選手PがX方向に移動するエリアをエリア102A、102Bとする。エリア102Aは、観客席101Bよりも観客席101Aに近いエリアであり、エリア102Bは、観客席101Aよりも観客席101Bに近いエリアである。
【0064】
図5においては、選手Pがエリア102Aに存在するときの観客500Aの最大視野角はθAであり、選手Pがエリア102Bに存在するときの観客500Aの最大視野角はθB(<θA)である。したがって、観客500Aは、選手Pがエリア102Bよりもエリア102Aにいる時の方が選手PのX方向の移動による視線方向の違いが得られやすい。これにより、検出部301は、観客500Aの視線方向を高感度で検出することができる。
【0065】
同様に、観客500Bは、選手Pがエリア102Aよりもエリア102Bにいる時の方が選手PのX方向の移動による視線方向の違いが得られやすい。したがって、検出部301は、観客500Aの視線方向を高感度で検出することができる。また、観客500A、500Bはともに、選手PのY方向の移動による視線方向の違いが得られにくい。すなわち、視線方向の検出感度がX方向よりも悪い。
【0066】
したがって、選手Pがエリア102Aにいる場合、選択部305は、観客席101Aを撮影する観客カメラAC-Aを選択するのが好ましく、選手Pがエリア102Bにいる場合、選択部305は、観客席101Bを撮影する観客カメラAC-Bを選択するのが好ましい。
【0067】
図6は、観客の動的な視線方向の感度例2を示す説明図である。フィールド102を囲む観客席101A~101Dのうち、観客500Cは、観客席101Cに位置し、観客500Dは、観客席101Dに位置する。また、観客席101Cは、観客席101Dと対向する。
【0068】
また、フィールド102において、選手PがY方向に移動するエリアをエリア102C、102Dとする。エリア102Cは、観客席101Dよりも観客席101Cに近いエリアであり、エリア102Dは、観客席101Cよりも観客席101Dに近いエリアである。
【0069】
図6においては、選手Pがエリア102Cに存在するときの観客500Cの最大視野角はθCであり、選手Pがエリア102Dに存在するときの観客500Cの最大視野角はθD(<θC)である。したがって、観客500Cは、選手Pがエリア102Dよりもエリア102Cにいる時の方が選手PのY方向の移動による視線方向の違いが得られやすい。これにより、検出部301は、観客500Cの視線方向を高感度で検出することができる。
【0070】
同様に、観客500Dは、選手Pがエリア102Cよりもエリア102Dにいる時の方が選手PのY方向の移動による視線方向の違いが得られやすい。したがって、検出部301は、観客500Cの視線方向を高感度で検出することができる。また、観客500C、500Dはともに、選手PのX方向の移動による視線方向の違いが得られにくい。すなわち、視線方向の検出感度がY方向よりも悪い。
【0071】
したがって、選手Pがエリア102Cにいる場合、選択部305は、観客席101Cを撮影する観客カメラAC-Cを選択するのが好ましく、選手Pがエリア102Dにいる場合、選択部305は、観客席101Dを撮影する観客カメラAC-Dを選択するのが好ましい。
【0072】
図7は、観客の動的な視線方向の感度例3を示す説明図である。感度例3は、感度例1と感度例2とを結合した例である。エリア102Aとエリア10Cの重複エリアがエリア102ACであり、エリア102Aとエリア10Dの重複エリアがエリア102ADであり、エリア102Bとエリア10Cの重複エリアがエリア102BCであり、エリア102Bとエリア102Dの重複エリアがエリア102BDである。
【0073】
選手Pがエリア102ACにいる場合、選択部305は、観客席101Aを撮影する観客カメラAC-Aまたは観客席101Cを撮影する観客カメラAC-Cを選択するのが好ましく、選手Pがエリア102ADにいる場合、選択部305は、観客席101Aを撮影する観客カメラAC-Aまたは観客席101Dを撮影する観客カメラAC-Dを選択するのが好ましい。
【0074】
<観客群の視線方向>
図8は、観客群401の視線方向の検出例を示す説明図である。検出部301は、個々の観客の動きベクトルmvを検出し、各動きベクトルmvの合成動きベクトルMVを観客群401の視線方向として生成する。その際、検出部301は、観客の目領域中の虹彩の位置の変化により動きベクトルmvを視線方向として検出してもよく、観客の頭は顔のパーツ(たとえば、耳)の位置の変化により動きベクトルmvを視線方向として検出してもよい。
【0075】
なお、検出部301は、観客の個々の頭部方向を検知し、注視領域を特定してもよい。検出部301は、頭部方向検出において、画像データから頭部およびその方向を検出する既存のアルゴリズムなどを用いる。たとえば、検出部301は、深層学習を用いて頭部方向(3自由度:Yaw,Roll,Pitch)の学習を行うことで顔画像から頭部方向を検出することができる。
【0076】
図9は、耳の位置変化による動きベクトルmvの検出例を示す説明図である。なお、観客カメラACが全天球型カメラである場合、映像データの各フレームの両端に歪みが発生するため、フレームの両端を拡大することにより、観客の耳の位置の変化量が大きくなり、検出部301は、動きベクトルmvを検出しやすくなる。
【0077】
図10は、特定の観客の視線方向の検出例を示す説明図である。
図10では、上述したように、観客群402の人数を示すスコアがしきい値未満または相対的に低いために、選択部305は、特定の観客を選択する。
図10において、観客A1~A8のうち、観客Aは、スマートフォン1000を見ているため、ノイズとして除外される。
【0078】
観客A2は、その視線方向が、たとえば、電光掲示板の方向となるため、ノイズとして除外される。なお、電光掲示板の位置は、施設の設計情報から得られる。したがって、選択部305は、観客A3~A8の中から任意の観客を特定の観客として選択する。また、観客A3~A8の中で、特徴人物情報126に合致する観客がいる場合(たとえば、観客A8)、観客A8を特定の観客として選択してもよい。
【0079】
<注視領域および注視対象の特定例>
図11は、特定部302による注視領域および注視対象の特定例1を示す説明図である。仮想平面VSは、XZ平面に平行な面である。観客カメラACは仮想平面VS上に位置する。特定部302は、合成動きベクトルMVを仮想平面VSからフィールド102側に投影して、フィールド102上の領域となる注視領域Rを特定する。そして、特定部302は、注視領域Rを撮像中のフィールドカメラFC-A~FC-Dを、当該フィールドカメラFC-A~FC-Dの撮影方向PD-A~PD-Dから特定する。
【0080】
ここで、特定部302は、撮影方向PD-Bが注視領域Rを向いていないフィールドカメラFC-Bを除外する。
図11の場合、特定部302は、フィールドカメラFC-A,FC-C,FC-Dの映像データから注視領域R内に存在する選手Pを注視対象として特定する。
【0081】
図12は、特定部302による注視領域および注視対象の特定例2を示す説明図である。
図12の特定例は、観客カメラACとして全天球型カメラ1200を用いた例である。全天球型カメラ1200を用いることにより、全天球型カメラ1200に対し合成動きベクトルMVの生成元の観客群401の反対側のフィールド102も撮影される。したがって、特定部302は、全天球型カメラ1200の映像データから合成動きベクトルMVが指し示すフィールド102の注視領域Rおよび注視対象(選手P)を同時に特定することができる。
【0082】
図13は、注視領域の面積の計算例を示す説明図である。
図13では、注視領域Rを矩形とする。観客Aが注視領域を注視する場合、観客Aのフィールド102からの高さをh、観客Aをフィールド102上に投影した場合の注視領域Rまでの距離をL、注視領域Rの直交する2辺の長さをx、yとした場合、xは下記式(1)、yは下記式(2)であらわされる。ただし、θ±は下記式(3)、観客Aから注視領域Rまでの距離Dは下記式(4)であらわされる(ただし、yaw角θyaw、pitch角θpitchは、
図13の凡例を参照。)。
【0083】
【0084】
また、注視領域Rの面積Sは、S=x・yである。これにより、特定部302は、観客Aから注視領域Rまでの距離Dや注視領域Rの面積Sを特定することができ、距離Dおよび面積Sにより注視領域R上の注視対象(たとえば、選手P)を特定することができる。なお、ここでは、ある観客Aを基準にしたが、観客群401の場合は合成動きベクトルMVの始端位置を観客Aの位置としてよい。
【0085】
<制御処理手順例>
図14は、制御装置110による制御処理手順例を示すフローチャートである。制御装置110は、観客カメラACからの映像データとフィールドカメラFCからの映像データを取得しているものとする。制御装置110は、選択部305により、第1観客カメラ選択処理を実行して視線方向を検出するための観客カメラACを選択する(ステップS1401)。つぎに、制御装置110は、検出部301により、選択した観客カメラACからの映像データを解析して、視線方向を検出する(ステップS1402)。
【0086】
つぎに、制御装置110は、特定部302により、検出した視線方向のベクトルを用いて、特定処理を実行して注視領域および注視対象を特定する(ステップS1403)。そして、制御装置110は、複数のフィールドカメラFCから注視対象を撮影しているフィールドカメラFCを決定する(ステップS1404)。
【0087】
このあと、制御装置110は、送信部304により、決定したフィールドカメラFCからの映像データを電波塔210またはインターネット200を介して送信する(ステップS1405)。これにより、観客群が注視する方向に存在する注視対象に自動的にフィールドカメラFCを切り替えることができる。
【0088】
図15は、
図14に示した選択部305による第1観客カメラ選択処理(ステップS1401)の詳細な処理手順例1を示すフローチャートである。制御装置110は、選択部305により、観客カメラACごとに観客数を示すスコアを算出する(ステップS1501)。つぎに、制御装置110は、選択部305により、上述したように、算出したスコアに基づいて観客カメラACを選択する(ステップS1502)。
【0089】
たとえば、制御装置110は、しきい値以上のスコアまたは相対的に高いスコアの観客カメラACを選択する。なお、ステップS1502の選択では、制御装置110は、しきい値以上のスコアまたは相対的に高いスコアの観客カメラACが存在する場合に、その観客カメラACを確率的に(たとえば、70%の確率で)選択してもよい。
【0090】
つぎに、制御装置110は、選択部305により、しきい値以上のスコアまたは相対的に高いスコアの観客カメラACが選択されたか否かを判断する(ステップS1503)。しきい値以上のスコアまたは相対的に高いスコアの観客カメラACが選択された場合(ステップS1503:Yes)、ステップS1402に移行する。この場合、制御装置110は、検出部301により、観客群401の合成動きベクトルMVを視線方向として検出することになる。
【0091】
一方、しきい値以上のスコアまたは相対的に高いスコアの観客カメラACが選択されなかった場合(ステップS1503:No)、制御装置110は、選択部305により、第2観客カメラ選択処理を実行して(ステップS1504)、ステップS1402に移行する。第2観客カメラ選択処理(ステップS1504)では、観客群402の中の特定の観客A8を選択する処理である。この場合、制御装置110は、検出部301により、特定の観客A8の動きベクトルmvを視線方向として検出することになる。
【0092】
図16は、
図14に示した選択部305による第1観客カメラ選択処理(ステップS1401)の詳細な処理手順例2を示すフローチャートである。
図16では、
図15と同一処理については同一ステップ番号を付し、その説明を省略する。制御装置110は、特定部302により、前回特定部302によって特定された注視対象とその注視領域を特定し、特定した注視領域と各観客カメラACとの位置関係により、
図5~
図7に示したように、観客カメラACを特定する(ステップS1602)。
【0093】
ステップS1602で特定される観客カメラACは複数でもよい。たとえば、注視対象である選手Pがエリア102ACにいる場合、エリア102ACに近い観客カメラAC-A,AC-Cが特定される。このあと、
図15に示したように、ステップS1602で特定した観客カメラACについて、ステップS1501~S1504が実行される。これにより、注視対象の位置に近い観客カメラACが選択されやすくなり、視線方向の検出感度の向上を図ることができる。
【0094】
図17は、
図15に示した第2観客カメラ選択処理(ステップS1504)の詳細な処理手順例1を示すフローチャートである。制御装置110は、選択部305により、各観客カメラACの映像データからノイズを除去する(ステップS1701)。つぎに、制御装置110は、選択部305により、ノイズ除去された各観客カメラACの映像データに特徴的な人物の画像データが存在するか否かを判断する(ステップS1702)。
【0095】
特徴的な人物の画像データが存在する映像データを取得した観客カメラACがある場合(ステップS1702:Yes)、制御装置110は、選択部305により、当該観客カメラACを選択して(ステップS1703)、ステップS1402に移行する。一方、特徴的な人物の画像データが存在する映像データを取得した観客カメラACがない場合(ステップS1702:No)、制御装置110は、選択部305により、スコアが最大の観客カメラACを選択して(ステップS1704)、ステップS1704に移行する。
【0096】
図18は、
図15に示した第2観客カメラ選択処理(ステップS1504)の詳細な処理手順例2を示す説明図である。具体的には、たとえば、制御装置110は、選択部305により、テレビ103の視聴者TAが視聴しているシーンと同じシーンを注視している観客A11を特定の観客として選択する。
【0097】
テレビ103の視聴者TAが視聴しているシーンとは、あるフィールドカメラFCがその撮影方向PDで撮影している選手P(注視対象)である。制御装置110は、現在放映中のフィールドカメラFCの撮影方向PDと逆方向の観客席101を特定し、特定した観客席101を映す観客カメラACを選択する。そして、選択した観客カメラACにより撮影された観客群402(観客A11,A12を含む)から動きベクトルmvが撮影方向PDと同じまたは方向のずれが許容範囲内の角度であれば、観客A11を特定の観客として選択する。
【0098】
図19は、
図15に示した第2観客カメラ選択処理(ステップS1504)の詳細な処理手順例2を示すフローチャートである。制御装置110は、選択部305により、現在の映像データを撮影したフィールドカメラFCの撮影方向を特定し(ステップS1901)、特定した撮影方向の逆方向の観客席101を特定し(ステップS1902)、特定した観客席101を撮影可能な観客カメラACを選択する(ステップS1903)。これにより、テレビ103の視聴者TAが視聴しているシーンと同じシーンを注視している観客A11を特定の観客として選択することができ、特定の観客の推定精度の向上を図ることができる。
【0099】
図20は、
図14に示した特定処理(ステップS1403)の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。制御装置110は、特定部302により、
図11~
図13に示したように、ステップS1402で得られた視線方向からフィールド102上の注視領域を特定する(ステップS2001)。つぎに、制御装置110は、特定部302により、
図11~
図13に示したように、ステップS2001で特定した注視領域内の注視対象(たとえば、選手P)を特定する(ステップS2002)。
【0100】
なお、
図11の例の場合は、制御装置110は、フィールドカメラFCの映像データを用いて、ステップS2001で特定した注視領域内の注視対象(たとえば、選手P)を特定する。これにより、視線方向の先にいる注視対象を高精度に特定することができる。また、
図12の例の場合は、制御装置110は、全天球型カメラの映像データを用いて、ステップS2001で特定した注視領域内の注視対象(たとえば、選手P)を特定することになる。
【0101】
これにより、1台の全天球型カメラからの映像データにより、注視領域および注視対象(選手P)を同時に特定することができ、より特性精度の向上を図ることができる。またこれにより、処理速度の向上や検出頻度の上昇を図ることができる。このように、制御装置110は、1台のカメラの映像データを用いて注視領域、あるいは注視領域R内の注視対象を特定してもよい。
【0102】
(1)以上説明したように、本実施例にかかる制御装置110は、施設(たとえば、スタジアム100)に関する設計情報を記憶するデータベース120と、施設内の第1領域(たとえば、観客席101)の第1被写体を撮影する複数の第1カメラ(たとえば、観客カメラ群ACs)と、施設内の第2領域(たとえば、フィールド102)の第2被写体を撮影する複数の第2カメラ(たとえば、フィールドカメラ群FCs)と、にアクセス可能である。
【0103】
制御装置110は、検出部301と、特定部302と、決定部303と、送信部304と、を有する。検出部301は、複数の第1カメラのうちいずれかの第1カメラによって撮影された第1被写体の映像データに基づいて、第1被写体内の観客群401の視線方向を検出する。
【0104】
特定部302は、検出部301によって検出された観客群401の視線方向に基づいて、観客群401の第2領域内の注視領域Rを特定し、複数の第2カメラの各々によって撮影された第2被写体の映像データに基づいて、注視領域R内に存在する観客群の注視対象を特定する。決定部303は、特定部302によって特定された注視対象に基づいて、複数の第2カメラの中から映像データの送信元となる特定の第2カメラを決定する。送信部304は、決定部303によって決定された特定の第2カメラからの映像データを送信する。
【0105】
これにより、決定された第2カメラ(フィールドカメラFC)からの映像データが、テレビ103やパーソナルコンピュータ104に放送または配信される。したがって、第2カメラ(フィールドカメラFC)の切替の自動化を図ることができる。
【0106】
(2)また、上記(1)の制御装置110は、複数の第1カメラの各々が撮影した第1被写体内の観客群401の人数の多さを示すスコアに基づいて、複数の第1カメラの中から特定の第1カメラを選択する選択部305を有する。
【0107】
これにより、検出部301は、特定の第1カメラによって撮影された特定の第1被写体の映像データに基づいて、特定の第1被写体内の特定の観客群401の視線方向を検出し、特定部302は、検出部301によって検出された特定の観客群401の視線方向に基づいて、特定の観客群401の注視領域Rを特定する。したがって、観客数の多さに応じて、第2カメラ(フィールドカメラFC)の切替の自動化を図ることができる。
【0108】
(3)また、上記(2)の制御装置110において、選択部305は、観客群401と注視領域Rとの位置関係に基づいて、特定の第1カメラを選択してもよい。これにより、視線方向の検出感度を考慮して、特定の第1カメラ(フィールドカメラFC)を特定することができる。
【0109】
(4)また、上記(2)の制御装置110において、選択部305は、スコアが所定のしきい値以上となる第1カメラを特定の第1カメラとして選択してもよい。これにより、観客人数が絶対的に多いと評価された第1カメラからの映像データにより、当該観客群401の視線方向を検出することができる。したがって、多数の観客が注視している注視領域や注視対象を撮影する第2カメラに自動で切り替えることができ、その結果、視聴者は、多数の観客が注視している注視領域Rや注視対象を試聴することができる。
【0110】
(5)また、上記(2)の制御装置110において、選択部305は、複数の第1カメラのスコアの中で相対的に高いスコアの第1カメラを特定の第1カメラとして選択してもよい。これにより、観客人数が相対的に多いと評価された第1カメラからの映像データにより、当該観客群401の視線方向を検出することができる。したがって、多数の観客が注視している注視領域や注視対象を撮影する第2カメラに自動で切り替えることができ、その結果、視聴者は、多数の観客が注視している注視領域Rや注視対象を試聴することができる。
【0111】
(6)また、上記(2)の制御装置110において、選択部305は、スコアが所定のしきい値未満となる第1カメラを特定の第1カメラとして選択してもよい。これにより、観客人数が絶対的に少ないと評価された第1カメラからの映像データにより、当該観客群402の視線方向を検出することができる。したがって、少数の観客が注視している注視領域や注視対象を撮影する第2カメラに自動で切り替えることができ、その結果、視聴者は、少数の観客が注視している注視領域Rや注視対象を試聴することができる。すなわち、多数の観客が注視できなかった注視領域Rや注視対象の映像データに自動で切り替えることができる。
【0112】
(7)また、上記(2)の制御装置110において、選択部305は、複数の第1カメラのスコアの中で相対的に低いスコアの第1カメラを特定の第1カメラとして選択してもよい。これにより、観客人数が相対的に少ないと評価された第1カメラからの映像データにより、当該観客群402の視線方向を検出することができる。したがって、少数の観客が注視している注視領域や注視対象を撮影する第2カメラに自動で切り替えることができ、その結果、視聴者は、少数の観客が注視している注視領域Rや注視対象を試聴することができる。すなわち、多数の観客が注視できなかった注視領域Rや注視対象の映像データに自動で切り替えることができる。
【0113】
(8)また、上記(6)または(7)の制御装置110において、検出部301は、特定の第1カメラによって撮影された特定の第1被写体の映像データに基づいて、特定の第1被写体内の特定の観客群402の中の特定の観客の視線方向を検出してもよい。これにより、特定部302は、検出部301によって検出された特定の観客A8の視線方向に基づいて、特定の観客A8の注視領域Rを特定する。
【0114】
したがって、観客人数が絶対的または相対的に少ないと評価された場合に、視聴者は、特定の観客が注視している注視領域Rや注視対象を試聴することができる。観客人数が少なくても観戦している観客は、優良なファンである可能性が高いため、そのような観客目線で視聴者が注視している注視領域Rおよび注視対象に第2カメラを切り替えることで、玄人目線での映像データを視聴者に提供することができる。
【0115】
(9)また、上記(8)の制御装置110において、検出部301は、特定の第1被写体の映像データに基づいて、特定の観客群402のうち非注視行動をとっている観客A1、A2以外の残余の観客A3~A8から特定の観客A8を選択して、特定の観客A8の視線方向を検出してもよい。これにより、中止に関与していないノイズを除去し、視線方向の検出の高精度化を図ることができる。
【0116】
(10)また、上記(8)の制御装置110において、データベース120は、特徴的な人物に関する画像データ(特徴人物情報126)を記憶しており、検出部301は、特定の第1被写体の映像データに基づいて、特定の観客群402から特徴的な人物を特定の観客として検出し、特定の観客A8の視線方向を検出してもよい。
【0117】
これにより、特徴的な人物とのマッチングにより、特定の観客の検出精度の向上を図ることができる。したがって、そのような観客目線で視聴者が注視している注視領域Rおよび注視対象に第2カメラを切り替えることで、玄人目線での映像データを視聴者に提供することができる。
【0118】
(11)また、上記(6)または(7)の制御装置110において、検出部301は、決定部303によって決定された特定の第2カメラの撮影方向と、特定の観客群401の各々の視線方向と、に基づいて、特定の観客A11の視線方向を検出してもよい。これにより、視聴者が視聴している映像データと同じ注視領域Rおよび注視対象を注視している観客を特定することができるため、より観客目線でのシーンに切り替えることができる。
【0119】
(12)また、上記(1)の制御装置110において、第1カメラは、第1領域(観客席101)および第2領域(フィールド102)を撮影可能なカメラ(たとえば、全天球型カメラ1200)であり、検出部301は、いずれかの第1カメラによって撮影された第1被写体および第2被写体を含む映像データに基づいて、観客群401の視線方向を検出し、特定部302は、検出部301によって検出された観客群401の視線方向に基づいて、観客群401の第2領域内の注視領域Rおよび注視領域R内に存在する観客群401の注視対象を特定してもよい。
【0120】
これにより、第1カメラの映像データにより、注視領域Rおよび注視対象が特定されるため、第2カメラの映像データに依存しない。したがって、注視領域Rおよび注視対象の特定精度の向上を図ることができる。また、第2カメラで注視対象を特定する必要がなくなり、処理の高速化を図ることができる。
【0121】
(13)また、上記(1)の制御装置110において、決定部303は、観客群401と注視領域Rとの位置関係に基づいて、特定の第2カメラを決定してもよい。これにより、観客群401と注視領域Rとの位置関係を考慮して、様々な撮影方向の第2カメラに自動的に切り替えることができる。
【0122】
たとえば、上記位置関係が観客群401と注視領域Rとが近い距離の関係にある場合には、観客群401が注視している環境での映像データを配信することができ、視聴者からみれば観客群401に近い視点で同じ注視対象を視聴することができる。また、上記位置関係が観客群401と注視領域Rとが離れた距離の関係にある場合には、観客群401が注視している方向とは異なる角度からの映像データを配信することができ、視聴者からみれば観客群401とは別視点で同じ注視対象を視聴することができる。
【0123】
(14)また、上記(1)の制御装置110において、決定部303は、注視対象の認識結果に基づいて、特定の第2カメラを決定してもよい。これにより、観客群401基準ではなく、たとえば、注視対象である選手Pの顔が見える撮影方向の第2カメラに決定することで、視聴者は、第2カメラの切替後のシーンで選手Pを正面から視聴することができる。
【0124】
(15)また、上記(1)の制御装置110において、送信部304は、特定の第2カメラが撮影した画像データまたは画像データの保存先を示す情報を、観客群401のうち少なくとも1人の観客Aの通信端末300に送信してもよい。これにより、第2カメラの切替後のシーンは、決定的な瞬間である場合があるため、そのようなシーンでは観客群401は注視することに集中してカメラ撮影をしていないと考えられる。したがって、そのような観客群401に切替後のシーンの静止画データを、当該観客群401の通信端末300に送信することにより、観客群401が撮影できなかった決定的な静止画データを、当該観客群401に提供することができる。
【0125】
(16)また、本実施例にかかる制御システム1は、施設(たとえば、スタジアム100)に関する設計情報を記憶するデータベース120と、施設内の第1領域(たとえば、観客席101)の第1被写体を撮影する複数の第1カメラ(たとえば、観客カメラ群ACs)と、施設内の第2領域(たとえば、フィールド102)の第2被写体を撮影する複数の第2カメラ(たとえば、フィールドカメラ群FCs)と、これらにアクセス可能な制御装置110と、を有する。
【0126】
制御装置110は、検出部301と、特定部302と、決定部303と、送信部304と、を有する。検出部301は、複数の第1カメラのうちいずれかの第1カメラによって撮影された第1被写体の映像データに基づいて、第1被写体内の観客群401の視線方向を検出する。
【0127】
特定部302は、検出部301によって検出された観客群401の視線方向に基づいて、観客群401の第2領域内の注視領域Rを特定し、複数の第2カメラの各々によって撮影された第2被写体の映像データに基づいて、注視領域R内に存在する観客群の注視対象を特定する。決定部303は、特定部302によって特定された注視対象に基づいて、複数の第2カメラの中から映像データの送信元となる特定の第2カメラを決定する。送信部304は、決定部303によって決定された特定の第2カメラからの映像データを送信する。
【0128】
これにより、決定された第2カメラ(フィールドカメラFC)からの映像データが、テレビ103やパーソナルコンピュータ104に放送または配信される。したがって、第2カメラ(フィールドカメラFC)の切替の自動化を図ることができる。
【0129】
(17)また、本実施例にかかる制御プログラムは、施設(たとえば、スタジアム100)に関する設計情報を記憶するデータベース120と、施設内の第1領域(たとえば、観客席101)の第1被写体を撮影する複数の第1カメラ(たとえば、観客カメラ群ACs)と、施設内の第2領域(たとえば、フィールド102)の第2被写体を撮影する複数の第2カメラ(たとえば、フィールドカメラ群FCs)と、にアクセス可能なプロセッサ201に実行させる。
【0130】
制御プログラムは、プロセッサ201に、検出処理と、特定処理と、決定処理と、送信処理と、を実行させる。制御プログラムは、検出処理では、プロセッサ201に、複数の第1カメラのうちいずれかの第1カメラによって撮影された第1被写体の映像データに基づいて、第1被写体内の観客群401の視線方向を検出させる。
【0131】
制御プログラムは、特定処理では、プロセッサ201に、検出処理によって検出された観客群401の視線方向に基づいて、観客群401の第2領域内の注視領域Rを特定し、複数の第2カメラの各々によって撮影された第2被写体の映像データに基づいて、注視領域R内に存在する観客群の注視対象を特定させる。
【0132】
制御プログラムは、決定処理では、プロセッサ201に、特定処理によって特定された注視対象に基づいて、複数の第2カメラの中から映像データの送信元となる特定の第2カメラを決定させる。制御プログラムは、送信処理では、プロセッサ201に、決定処理によって決定された特定の第2カメラからの映像データを送信させる。
【0133】
これにより、決定された第2カメラ(フィールドカメラFC)からの映像データが、テレビ103やパーソナルコンピュータ104に放送または配信される。したがって、第2カメラ(フィールドカメラFC)の切替の自動化をソフトウェアにより実現することができる。
【0134】
また、第2カメラが切り替わってから所定時間経過するまでは切り替わらないように制約条件を設定してもよい。また、切替前の映像データと切替後の第2カメラとの関係を学習してデータベース120に蓄積しておき、第2カメラの切替の際には、制御装置110は、その学習内容を参照して、第2カメラを決定してもよい。これにより、第2カメラの決定精度の向上を図ることができる。
【0135】
また、上述した実施例では、制御装置110は、過去の同種競技の撮影データ(たとえば、ディレクターの技法に関する情報)を用いてもよい。具体的には、たとえば、制御装置110は、当該撮影データを機械学習することにより、最適なカット位置に関する規則を学習することができ、視線方向の検出精度の向上を図ることができる。
【0136】
また、フィールドカメラFCは、自動シャッター機能を有してもよい。具体的には、たとえば、観客群の視線方向先の対象が静的な場合に対しても適用可能である。
【0137】
図21は、フィールドカメラFCの自動シャッター機能の説明図である。たとえば、制御装置110は、フィールドカメラFCの映像データを参照して、その被写体である選手Pの視線方向を検出する。選手Pの視線方向が視線方向d1からフィールドカメラへの視線方向d2に切り替わった場合に、フィールドカメラFCは、シャッターを切り、選手Pを主要被写体とする静止画データ2100を撮像する。これにより、選手Pによるカメラ目線の静止画データを自動で得ることができる。
【0138】
また、観客群の視線方向先の対象が、動かない静的なもの、たとえば、陳列されている商品である場合に、本実施例は適用可能である。
【0139】
図22は、マーケティングへの応用例を示す説明図である。群衆2201は、商品の陳列棚を注視しており、制御装置110は、観客カメラACにより群衆2201を撮影し、撮影データから群衆2201内の各人の視線方向を示す視線ベクトルを検出し、合成視線ベクトルを生成する。
【0140】
制御装置110は、陳列棚2200に陳列されている商品群のうち、合成視線ベクトルによって指し示される商品を特定し(以下、特定の商品)、特定の商品の売り上げ個数、合成視線ベクトルによって指定されているときの売上個数、合成視線ベクトルによって指定されていないときの売上個数、合成視線ベクトルによって指定されているときに選択されなかった回数、といった統計情報を管理する。このように、注目度の高い商品や低い商品の検出に役立てることができる。
【0141】
上述した実施例では、制御装置110は、複数の第2カメラ(フィールドカメラFC)を切り替える例を説明したが、1台または複数の第1カメラ(観客カメラAC)の映像データを用いて注視領域R、あるいは注視領域R内の注視対象を特定して、1台の第2カメラ(フィールドカメラFC)を制御することとしてもよい。第2カメラ(フィールドカメラFC)を制御する制御部は、たとえば、特定した注視領域R、あるいは特定した注視領域R内の注視対象の方向に第2カメラ(フィールドカメラFC)を向ける制御を実行する。
【0142】
上述した実施例では、制御装置110は、複数のフィールドカメラFCを切り替える例を説明したが、1台または複数の観客カメラACの映像データを用いて注視領域R、あるいは注視領域R内の注視対象を特定して、1台のフィールドカメラFCの撮影により生成された画像を処理することとしてもよい。制御装置110は、たとえば、1台のフィールドカメラFCの撮影により生成された画像から、特定した注視領域R、あるいは特定した注視領域R内の注視対象を含む部分画像の領域を特定する。そして、制御装置110は、特定した部分画像を放送(送信)することとしてもよい。
【0143】
また、制御装置110は、1台のカメラで観客が存在する第1領域と、注視対象が存在する第2領域とを撮影した被写体の画像を処理することとしてもよい。制御装置110は、たとえば、1台のカメラの撮影により生成された画像から、注視領域R、あるいは注視領域R内の注視対象を特定し、特定した注視対象を含む部分画像の領域を特定する。そして、制御装置110は、特定した部分画像を放送(送信)することとしてもよい。
【符号の説明】
【0144】
AC 観客カメラ、FC フィールドカメラ、MV 合成動きベクトル、mv 動きベクトル、P 選手、R 注視領域、1 制御システム、101 観客席、102 フィールド、110 制御装置、120 データベース、301 検出部、302 特定部、302 特定部、303 決定部、304 送信部、305 選択部