IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河AS株式会社の特許一覧 ▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-回転規制構造及びワイヤーハーネス 図1
  • 特開-回転規制構造及びワイヤーハーネス 図2
  • 特開-回転規制構造及びワイヤーハーネス 図3
  • 特開-回転規制構造及びワイヤーハーネス 図4
  • 特開-回転規制構造及びワイヤーハーネス 図5
  • 特開-回転規制構造及びワイヤーハーネス 図6
  • 特開-回転規制構造及びワイヤーハーネス 図7
  • 特開-回転規制構造及びワイヤーハーネス 図8
  • 特開-回転規制構造及びワイヤーハーネス 図9
  • 特開-回転規制構造及びワイヤーハーネス 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126957
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】回転規制構造及びワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20240912BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240912BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/04 068
B60R16/02 620C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035749
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竿谷 尚志
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 博文
【テーマコード(参考)】
5G357
5G371
【Fターム(参考)】
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD06
5G357DD10
5G357DE08
5G357DG04
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA03
(57)【要約】
【課題】外装部材の耐久性を向上させること。
【解決手段】回転規制構造100は、可撓性を有し、内部に導体路2が挿通される管状の外装部材3と、外装部材3の一端側を固定する第1のベース部材と、外装部材3の中心軸Axを中心として外装部材3を回転可能に外装部材3の他端側を保持する第2のベース部材5と、外装部材3と第2のベース部材5との間を接続し、外装部材3の回転を規制する回転規制構造体6とを備える。回転規制構造体6は、外装部材3に係止される第1の係止部61と、第2のベース部材5に係止される第2の係止部62と、第1,第2の係止部61,62間を接続し、外装部材3の回転に応じて変形する可撓性を有する可撓部63とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有し、内部に導体路が挿通される管状の外装部材と、
前記外装部材の一端側を固定する第1のベース部材と、
前記外装部材の中心軸を中心として前記外装部材を回転可能に前記外装部材の他端側を保持する第2のベース部材と、
前記外装部材と前記第2のベース部材との間を接続し、前記外装部材の回転を規制する回転規制構造体とを備え、
前記回転規制構造体は、
前記外装部材に係止される第1の係止部と、
前記第2のベース部材に係止される第2の係止部と、
前記第1の係止部と前記第2の係止部との間を接続し、前記外装部材の回転に応じて変形する可撓性を有する可撓部とを備える回転規制構造。
【請求項2】
前記外装部材には、
内外を貫通する貫通孔が設けられ、
前記第1の係止部は、
前記貫通孔を介して前記外装部材内に位置付けられる請求項1に記載の回転規制構造。
【請求項3】
前記可撓部における前記第1の係止部から前記第2の係止部までの長さ寸法は、
前記外装部材における前記中心軸を中心とする周方向の外周の長さ寸法よりも短い請求項1に記載の回転規制構造。
【請求項4】
前記第1の係止部と前記可撓部との接続部分は、
断面T字形状を有する請求項1に記載の回転規制構造。
【請求項5】
前記第2の係止部と前記可撓部との接続部分は、
断面T字形状を有する請求項1に記載の回転規制構造。
【請求項6】
導体路と、
可撓性を有し、内部に前記導体路が挿通される管状の外装部材と、
前記外装部材の一端側を固定する第1のベース部材と、
前記外装部材の中心軸を中心として前記外装部材を回転可能に前記外装部材の他端側を保持する第2のベース部材と、
前記外装部材と前記第2のベース部材との間を接続し、前記外装部材の回転を規制する回転規制構造体とを備え、
前記回転規制構造体は、
前記外装部材に対して係止される第1の係止部と、
前記第2のベース部材に対して係止される第2の係止部と、
前記第1の係止部と前記第2の係止部との間を接続し、前記外装部材の回転に応じて変形する可撓性を有する可撓部とを備えるワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転規制構造及びワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に備えられているスライドドア内には、パワーウインドモータ、スイッチ、スピーカ等の種々の電装品が組み込まれている。これら種々の電装品に対して車体側からの給電、あるいは、当該種々の電装品と車体との間での各種信号の送受信を行うために、車体とスライドドアとの間には、ケーブル等の導体路が架け渡されるように配索されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、特許文献1では、導体路を保護するために、当該導体路が内部に挿通されるコルゲートチューブが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-228759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようなコルゲートチューブは、一端側がスライドドアに対して接続され、他端側が車体に対して接続される。そして、以下に示す第1,第2の場合には、コルゲートチューブに挿通されている導体路の寿命が短くなる、という問題がある。
【0005】
第1の場合は、コルゲートチューブの一端側と他端側との一方に対して他方が当該コルゲートチューブの中心軸を中心として1回転以上、回転した状態で、車両に対して当該コルゲートチューブが取り付けられてしまった場合である。この場合において、コルゲートチューブの一端側と他端側との一方に対して他方が当該コルゲートチューブの中心軸を中心として1回転以上、回転すると、当該コルゲートチューブの回転に伴い、当該コルゲートチューブ内で導体路の捻じれが生じ、当該導体路の屈曲耐久性が低下し、当該導体路の寿命が短くなってしまう。
【0006】
第2の場合は、スライドドアの開閉動作に追従する際に、コルゲートチューブの一端側と他端側との一方に対して他方が当該コルゲートチューブの中心軸を中心として1回転以上、回転してしまう場合である。そして、コルゲートチューブの一端側と他端側との一方に対して他方が当該コルゲートチューブの中心軸を中心として1回転以上、回転すると、当該コルゲートチューブの回転に伴い、当該コルゲートチューブ内で導体路の捻じれが生じ、当該導体路の屈曲耐久性が低下し、当該導体路の寿命が短くなってしまう。
【0007】
そこで、コルゲートチューブの過回転を防止し、導体路の寿命が短くなることを回避することができる技術が要望されている。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、導体路の寿命が短くなることを回避することができる回転規制構造及びワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る回転規制構造は、可撓性を有し、内部に導体路が挿通される管状の外装部材と、前記外装部材の一端側を固定する第1のベース部材と、前記外装部材の中心軸を中心として前記外装部材を回転可能に前記外装部材の他端側を保持する第2のベース部材と、前記外装部材と前記第2のベース部材との間を接続し、前記外装部材の回転を規制する回転規制構造体とを備え、前記回転規制構造体は、前記外装部材に係止される第1の係止部と、前記第2のベース部材に係止される第2の係止部と、前記第1の係止部と前記第2の係止部との間を接続し、前記外装部材の回転に応じて変形する可撓性を有する可撓部とを備える。
【0010】
また、本発明に係る回転規制構造では、上記発明において、前記外装部材には、内外を貫通する貫通孔が設けられ、前記第1の係止部は、前記貫通孔を介して前記外装部材内に位置付けられる。
【0011】
また、本発明に係る回転規制構造では、上記発明において、前記可撓部における前記第1の係止部から前記第2の係止部までの長さ寸法は、前記外装部材における前記中心軸を中心とする周方向の外周の長さ寸法よりも短い。
【0012】
また、本発明に係る回転規制構造では、上記発明において、前記第1の係止部と前記可撓部との接続部分は、断面T字形状を有する。
【0013】
また、本発明に係る回転規制構造では、上記発明において、前記第2の係止部と前記可撓部との接続部分は、断面T字形状を有する。
【0014】
本発明に係るワイヤーハーネスは、導体路と、可撓性を有し、内部に前記導体路が挿通される管状の外装部材と、前記外装部材の一端側を固定する第1のベース部材と、前記外装部材の中心軸を中心として前記外装部材を回転可能に前記外装部材の他端側を保持する第2のベース部材と、前記外装部材と前記第2のベース部材との間を接続し、前記外装部材の回転を規制する回転規制構造体とを備え、前記回転規制構造体は、前記外装部材に対して係止される第1の係止部と、前記第2のベース部材に対して係止される第2の係止部と、前記第1の係止部と前記第2の係止部との間を接続し、前記外装部材の回転に応じて変形する可撓性を有する可撓部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る回転規制構造及びワイヤーハーネスによれば、導体路の寿命が短くなることを回避することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施の形態に係るワイヤーハーネスが搭載された車両を示す図である。
図2図2は、ワイヤーハーネスを示す図である。
図3図3は、回転規制構造の構成を説明する図である。
図4図4は、回転規制構造の構成を説明する図である。
図5図5は、回転規制構造の機能を説明する図である。
図6図6は、回転規制構造の機能を説明する図である。
図7図7は、回転規制構造の機能を説明する図である。
図8図8は、実施の形態の変形例1を示す図である。
図9図9は、実施の形態の変形例2を示す図である。
図10図10は、実施の形態の変形例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0018】
〔ワイヤーハーネスの概略構成〕
図1は、実施の形態に係るワイヤーハーネス1が搭載された車両CAを示す図である。図2は、ワイヤーハーネス1を示す図である。なお、図1では、説明の便宜上、車両CAの左側のスライドドアCA2と車体CA1との間に架け渡されたワイヤーハーネス1を示している。図2では、車両CAの右側のスライドドアCA2と車体CA1との間に架け渡されたワイヤーハーネス1を示している。また、図2では、スライドドアCA2がドア開口CA11を閉塞している状態でのワイヤーハーネス1を示している。さらに、図2では、車体CA1及びスライドドアCA2を一点鎖線によって図示している。また、図1及び図2では、車両CAの前方側をFRとし、車両CAの後方側をREとし、車両CAの内部側をINとし、車両CAの外部側をOUTとしている。その他の図も同様である。
【0019】
本実施の形態に係るワイヤーハーネス1が搭載された車両CAは、図1に示すように、左右両側の側部にドア開口CA11が設けられた車体CA1と、左右両側にそれぞれ設けられ、前後方向にスライドすることでドア開口CA11を開閉するスライドドアCA2とを備える。
【0020】
そして、ワイヤーハーネス1は、車両CAの左右のスライドドアCA2と車体CA1との間にそれぞれ架け渡されている。なお、左右のワイヤーハーネス1は、左右対称となるため、以下では、車両CAの右側のスライドドアCA2と車体CA1との間に架け渡されたワイヤーハーネス1についてのみ説明する。
【0021】
ワイヤーハーネス1は、図2に示すように、電線束2と、コルゲートチューブ3と、ドア側ベース部材4と、車体側ベース部材5と、回転規制構造体6とを備える。
【0022】
電線束2は、本発明に係る導体路に相当する。本実施の形態では、電線束2は、複数の電線を含む。そして、電線束2の一端側は、ドア側ベース部材4を介して、スライドドアCA2に設けられたコネクタ(図示略)に接続される。当該コネクタは、スライドドアCA2内に搭載された電装品から延出されるケーブルに接続される。すなわち、電線束2の一端側は、スライドドアCA2に搭載された電装品に電気的に接続される。一方、電線束2の他端側は、車体側ベース部材5を介して、車体CA1に設けられたコネクタ(図示略)に接続される。当該コネクタは、車体CA1内に搭載された例えば、給電装置としてのバッテリや電装品等から延出されるケーブルに接続される。すなわち、電線束2の他端側は、車体CA1に搭載されたバッテリや電装品等に電気的に接続される。
【0023】
コルゲートチューブ3は、可撓性を有し、内部に電線束2が挿通される管状に形成され、本発明に係る外装部材に相当する。本実施の形態では、コルゲートチューブ3は、ポリプロピレン、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)等の樹脂成型品によって構成され、断面視円形状を有する。
【0024】
このコルゲートチューブ3は、コルゲートチューブ3の中心軸を中心とする周方向に沿って延在する凹条溝31(図3図4参照)及び凸条部32(図3図4参照)とが当該中心軸に沿って交互に配設された凹凸構造を有する。
そして、コルゲートチューブ3には、回転規制構造体6が接続される。
なお、コルゲートチューブ3と回転規制構造体6との接続構造については、後述する「回転規制構造の構成」において説明する。
【0025】
ドア側ベース部材4は、本発明に係る第1のベース部材に相当する。このドア側ベース部材4は、コルゲートチューブ3の中心軸を中心とする回転方向に当該コルゲートチューブ3を回転不能な状態で当該コルゲートチューブ3の一端側を固定する。そして、ドア側ベース部材4は、ネジ等の締結部材によってスライドドアCA2に固定される(図2)。
【0026】
車体側ベース部材5は、本発明に係る第2のベース部材に相当する。この車体側ベース部材5は、コルゲートチューブ3の中心軸を中心として当該コルゲートチューブ3を回転可能に当該コルゲートチューブ3の他端側を保持する。そして、車体側ベース部材5は、ネジ等の締結部材によって車体CA1に固定される(図2)。
なお、車体側ベース部材5の詳細な構成については、後述する「回転規制構造の構成」において説明する。
【0027】
回転規制構造体6は、コルゲートチューブ3と車体側ベース部材5との間を接続し、当該コルゲートチューブ3の回転を規制する。
なお、回転規制構造体6の詳細な構成については、後述する「回転規制構造の構成」において説明する。
【0028】
そして、以上説明したワイヤーハーネス1には、コルゲートチューブ3における一端側に対する他端側の当該コルゲートチューブ3の中心軸を中心とする回転を規制する回転規制構造100が設けられている。
【0029】
〔回転規制構造の構成〕
図3及び図4は、回転規制構造100の構成を説明する図である。具体的に、図3は、図2の一部を拡大するとともに、車体側ベース部材5のアッパーケース5Aを取り外した状態を示す図である。図4は、コルゲートチューブ3と回転規制構造体6との接続構造を説明する図である。
回転規制構造100は、上述したコルゲートチューブ3、ドア側ベース部材4、車体側ベース部材5、及び回転規制構造体6によって構成されている。
【0030】
先ず、図3を参照しつつ、車体側ベース部材5の構成について説明する。
車体側ベース部材5は、図3に示すように、アッパーケース5A(図2)とロアーケース5Bとの2体に分割形成され、当該アッパーケース5Aと当該ロアーケース5Bとを組み合わせることによって中空状のケースとして構成される。
【0031】
この車体側ベース部材5において、車両CAの外部側OUTの側面には、図3に示すように、当該車体側ベース部材5の内外を貫通する第1の貫通孔51が設けられている。そして、コルゲートチューブ3の他端側は、第1の貫通孔51を介して、車体側ベース部材5内に配置される。
【0032】
また、車体側ベース部材5において、車両CAの前方側FRの側面には、当該車体側ベース部材5の内外を貫通する第2の貫通孔52が設けられている。そして、コルゲートチューブ3内に挿通された電線束2の他端側は、第2の貫通孔52を介して車体側ベース部材5外に引き出される。
【0033】
さらに、車体側ベース部材5の内面には、図3に示すように、回転支持部53が設けられている。この回転支持部53は、車体側ベース部材5の内面から突出し、コルゲートチューブ3の他端側が車体側ベース部材5内に配置された状態で、当該コルゲートチューブ3の中心軸を中心とする周方向に沿って延在する円環形状を有し、当該中心軸に沿って複数、並設されている。これら回転支持部53は、コルゲートチューブ3における各凹条溝31にそれぞれ入り込む。そして、コルゲートチューブ3は、当該コルゲートチューブ3の中心軸を中心として回転可能に車体側ベース部材5に保持される。
【0034】
また、車体側ベース部材5において、車両CAの内部側INの側面には、図3に示すように、当該車体側ベース部材5の内外を貫通する第3の貫通孔54が設けられている。
【0035】
次に、図4を参照しつつ、コルゲートチューブ3と回転規制構造体6との接続構造について説明する。
コルゲートチューブ3において、第3の貫通孔54に対向する位置には、図4に示すように、当該コルゲートチューブ3の内外を貫通する貫通孔33が設けられている。
【0036】
回転規制構造体6は、例えば、ゴム等の弾性を有する材料によって構成されている。この回転規制構造体6は、図4に示すように、第1,第2の係止部61,62と、可撓部63とを備える。
【0037】
第1の係止部61は、コルゲートチューブ3に係止される部分である。この第1の係止部61は、回転規制構造体6がコルゲートチューブ3に接続された状態で、当該コルゲートチューブ3の中心軸に沿って延在する断面略二等辺三角形状の柱状体によって構成されている。
【0038】
第2の係止部62は、車体側ベース部材5に係止される部分である。この第2の係止部62は、回転規制構造体6がコルゲートチューブ3に接続された状態で、当該コルゲートチューブ3の中心軸に沿って延在する断面矩形状の柱状体によって構成されている。
【0039】
可撓部63は、第1,第2の係止部61,62間を接続する部分である。より具体的に、可撓部63は、第1の係止部61における断面略二等辺三角形状の底辺部分の略中央に接続する。この可撓部63は、回転規制構造体6がコルゲートチューブ3に接続された状態で、当該コルゲートチューブ3の中心軸に沿って延在する断面矩形状の平板によって構成されている。すなわち、第1の係止部61と可撓部63との接続部分は、断面T字形状を有する(図5参照)。なお、第2の係止部62と可撓部63との接続部分も同様に、断面T字形状を有する(図5参照)。
【0040】
ここで、車両CAの内部側INから見た場合に、第1の係止部61の外形サイズは、貫通孔33の内形サイズよりも大きい。また、可撓部63の外形サイズは、貫通孔33の内形サイズよりも小さい。このため、第1の係止部61の弾性を利用して、当該第1の係止部61を貫通孔33に挿入し、当該第1の係止部61をコルゲートチューブ3内に位置付ける。これによって、第1の係止部61は、コルゲートチューブ3の内面に係止され、当該コルゲートチューブ3からの回転規制構造体6の脱落を防止する。そして、回転規制構造体6は、上記のようにしてコルゲートチューブ3に接続される。
【0041】
なお、第1の係止部61の外形サイズは、コルゲートチューブ3の内面と電線束2の外面との隙間に入り込むことができれば、どのようなサイズでも構わないが、当該電線束2との機械的な干渉を極力、回避することができるサイズとすることが好ましい。
【0042】
また、車両CAの内部側INから見た場合に、第2の係止部62の外形サイズは、第3の貫通孔54の内形サイズよりも大きい。また、可撓部63の外形サイズは、第3の貫通孔54の内形サイズよりも小さい。このため、回転規制構造体6をコルゲートチューブ3に接続した状態で、第3の貫通孔54内に可撓部63が位置し、車体側ベース部材5外に第2の係止部62が位置するように、アッパーケース5A及びロアーケース5Bを組み合わせる。これにより、第2の係止部62は、車体側ベース部材5の外面に係止され、当該車体側ベース部材5内に引き込まれることはない。そして、回転規制構造体6は、上記のようにして車体側ベース部材5に接続される。
【0043】
〔回転規制構造の機能〕
図5ないし図7は、回転規制構造100の機能を説明する図である。具体的に、図5ないし図7は、コルゲートチューブ3の中心軸Axに直交する平面によって回転規制構造100を切断した断面図である。
先ず、回転規制構造体6をコルゲートチューブ3及び車体側ベース部材5に接続した直後の状態は、図5に示した状態となる。
【0044】
図5に示した状態から、中心軸Axを中心としてコルゲートチューブ3の他端側が図5中、時計回りに回転した場合には、可撓部63は、図6に示すように、当該回転に応じてコルゲートチューブ3の外周面に巻き付くように変形する。また、第2の係止部62は、可撓部63の変形に応じて、車体側ベース部材5の外面に向けて引き寄せられる。そして、第2の係止部62が車体側ベース部材5の外面に当接すると、コルゲートチューブ3の他端側の回転が規制される。
【0045】
また、図5に示した状態から、中心軸Axを中心としてコルゲートチューブ3の他端側が図5中、反時計回りに回転した場合にも同様に、可撓部63は、図7に示すように、当該回転に応じてコルゲートチューブ3の外周面に巻き付くように変形する。また、第2の係止部62は、可撓部63の変形に応じて、車体側ベース部材5の外面に向けて引き寄せられる。そして、第2の係止部62が車体側ベース部材5の外面に当接すると、コルゲートチューブ3の他端側の回転が規制される。
【0046】
なお、上記では、図5に示した状態から図6及び図7に示した各状態への動作をそれぞれ説明したが、図6に示した状態から図7に示した状態への動作や、図7に示した状態から図6に示した状態への動作も略同様である。
【0047】
そして、本実施の形態では、可撓部63における第1の係止部61から第2の係止部62までの長さ寸法は、コルゲートチューブ3における中心軸Axを中心とする周方向の外周の長さ寸法よりも短い。すなわち、中心軸Axを中心とするコルゲートチューブ3の他端側の1回転以上の回転ができない構造となっている。
【0048】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態に係る回転規制構造100は、上述したコルゲートチューブ3、ドア側ベース部材4、車体側ベース部材5、及び回転規制構造体6によって構成されている。そして、回転規制構造体6は、コルゲートチューブ3に係止される第1の係止部61と、車体側ベース部材5に係止される第2の係止部62と、当該第1,第2の係止部61,62間を接続し、中心軸Axを中心とするコルゲートチューブ3の回転に応じて変形する可撓性を有する可撓部63とを備える。
したがって、本実施の形態に係る回転規制構造100によれば、中心軸Axを中心とするコルゲートチューブ3の過回転を防止することができる。これにより、コルゲートチューブ3の回転に伴う電線束2の捻じれによる当該電線束2の屈曲耐久性の低下を防ぎ、当該電線束2の寿命が短くなることを回避することができる。
【0049】
特に、可撓部63における第1の係止部61から第2の係止部62までの長さ寸法は、コルゲートチューブ3における中心軸Axを中心とする周方向の外周の長さ寸法よりも短い。このため、中心軸Axを中心とするコルゲートチューブ3の1回転以上の回転を効果的に防止することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
以下に示す変形例1~6を採用しても構わない。
【0051】
(変形例1)
図8は、実施の形態の変形例1を示す図である。具体的に、図8は、図7に対応した図である。
上述した実施の形態において、図8に示した本変形例1のように、貫通孔33の縁部分に補強部材331を貼り付けて、当該縁部分を補強しても構わない。当該補強部材331としては、PVC(ポリ塩化ビニル)テープ等を例示することができる。
【0052】
以上説明した本変形例1によれば、上述した実施の形態と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
ところで、コルゲートチューブ3における貫通孔33の縁部分には、中心軸Axを中心とする当該コルゲートチューブ3の回転(可撓部63の変形)に応じて、当該可撓部63から負荷が加わる。そして、当該負荷によって、貫通孔33の縁部分に亀裂が入ってしまう場合がある。
本変形例1では、貫通孔33の縁部分は、補強部材331によって補強されている。このため、可撓部63からの負荷によって、貫通孔33の縁部分に亀裂が入ってしまうことを抑制することができる。
【0053】
(変形例2)
図9は、実施の形態の変形例2を示す図である。具体的に、図9は、図7に対応した図である。
上述した実施の形態において、図9に示した本変形例2のように、第2の係止部62を囲むように車体側ベース部材5の外面にカバーCVを取り付けても構わない。
【0054】
また、本変形例2に係る第2の係止部62において、カバーCVに対向する側の角部分621(図9)は、大きめのR面によって構成されている。
【0055】
以上説明した本変形例2によれば、上述した実施の形態と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
ところで、第2の係止部62は車体側ベース部材5の外面に露出しているため、当該第2の係止部62に対して外力が加わってしまう場合がある。この場合において、外力に応じて第2の係止部62が動くと、コルゲートチューブ3が不要に回転してしまう。
本変形例2では、第2の係止部62は、カバーCVによって覆われている。このため、第2の係止部62に外力が加わることがなく、コルゲートチューブ3が不要に回転してしまうことがない。
【0056】
また、本変形例2では、第2の係止部62において、カバーCVに対向する側の角部分621は、大きめのR面によって構成されている。このため、カバーCV内での第2の係止部62の動きを良くすることができる。
【0057】
(変形例3)
図10は、実施の形態の変形例3を示す図である。具体的に、図10は、図7に対応した図である。
上述した実施の形態において、図10に示した本変形例3のように、第3の貫通孔54の縁部分に滑り部材541を貼り付けても構わない。当該滑り部材541としては、滑り性の良い粘着テープ(フッ素樹脂テープ、超高分子量ポリエチレンテープ等)を例示することができる。
【0058】
以上説明した本変形例3によれば、上述した実施の形態と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本変形例3では、第3の貫通孔54の縁部分には、滑り部材541が貼り付けられている。このため、第3の貫通孔54内において、可撓部63を円滑に動かすことができる。
【0059】
(変形例4)
上述した実施の形態において、コルゲートチューブ3の構成は、上述した実施の形態で説明した構成に限らない。すなわち、コルゲートチューブ3としては、可撓性を有していれば、先端から基端にかけて全て凹条溝31及び凸条部32が交互に配設された凹凸構造を有している必要はなく、少なくとも一部に、内径寸法及び外径寸法がそれぞれ略一定となる部分が設けられていても構わない。
以上説明した本変形例4の構成を採用した場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を奏する。
【0060】
(変形例5)
上述した実施の形態では、コルゲートチューブ3に貫通孔33を設けていたが、これに限らない。例えば、コルゲートチューブ3に一端から他端まで中心軸Axに沿って直線状に延在したスリットが予め設けられている場合には、当該スリットを貫通孔33の代わりに用いても構わない。すなわち、当該スリットにおいて用いる部分の両端(中心軸Axに沿う方向の両端)にPVCテープ等をそれぞれ貼り付けることによって当該スリットと当該PVCテープとで貫通孔33と同様の貫通孔を設ける。
以上説明した本変形例5の構成を採用した場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を奏する。
【0061】
(変形例6)
上述した実施の形態において、コルゲートチューブ3と第1の係止部61との接続構造、及び車体側ベース部材5と第2の係止部62との接続構造は、上述した実施の形態で説明した接続構造に限らず、その他の接続構造を採用しても構わない。
例えば、コルゲートチューブ3と第1の係止部61との接続構造としては、当該コルゲートチューブ3の外面に当該第1の係止部61が係止する係止受け部を設け、当該第1の係止部61と当該係止受け部との係止による接続構造を採用しても構わない。
また、例えば、車体側ベース部材5と第2の係止部62との接続構造としては、当該車体側ベース部材5の内面に当該第2の係止部62が係止する係止受け部を設け、当該第2の係止部62と当該係止受け部との係止による接続構造を採用しても構わない。
以上説明した本変形例6の構成を採用した場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を奏する。
【0062】
(変形例7)
上述した実施の形態では、本発明に係る第1のベース部材をドア側ベース部材4として構成し、本発明に係る第2のベース部材を車体側ベース部材5として構成していたが、これに限らない。逆に、本発明に係る第1のベース部材を車体側ベース部材5として構成し、本発明に係る第2のベース部材をドア側ベース部材4として構成しても構わない。
以上説明した本変形例7の構成を採用した場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0063】
1 ワイヤーハーネス
2 電線束
3 コルゲートチューブ
4 ドア側ベース部材
5 車体側ベース部材
5A アッパーケース
5B ロアーケース
6 回転規制構造体
31 凹条溝
32 凸条部
33 貫通孔
51 第1の貫通孔
52 第2の貫通孔
53 回転支持部
54 第3の貫通孔
61 第1の係止部
62 第2の係止部
63 可撓部
100 回転規制構造
331 補強部材
541 滑り部材
621 角部分
Ax 中心軸
CA 車両
CA1 車体
CA11 ドア開口
CA2 スライドドア
CV カバー
FR 前方側
IN 内部側
OUT 外部側
RE 後方側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10