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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126965
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 25/04 20060101AFI20240912BHJP
   F26B 3/20 20060101ALI20240912BHJP
   C02F 11/13 20190101ALI20240912BHJP
   B01D 1/22 20060101ALI20240912BHJP
   B01D 1/24 20060101ALI20240912BHJP
   A23L 5/00 20160101ALN20240912BHJP
【FI】
F26B25/04
F26B3/20
C02F11/13 ZAB
B01D1/22 C
B01D1/24
A23L5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035761
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】秋山 英也
【テーマコード(参考)】
3L113
4B035
4D059
4D076
【Fターム(参考)】
3L113AA06
3L113AC48
3L113AC62
3L113BA36
3L113CB33
3L113DA07
4B035LP24
4B035LT20
4D059AA00
4D059AA30
4D059BD05
4D059BD12
4D059BD21
4D059BD26
4D059CB06
4D059CB18
4D059EB10
4D076AA02
4D076AA14
4D076AA24
4D076BA18
4D076CA11
4D076CB02
4D076CB05
4D076CD01
4D076CD04
4D076DA12
4D076DA25
4D076EA04Y
4D076EA11Y
4D076EA12Y
4D076FA22
4D076HA11
4D076JA03
(57)【要約】
【課題】ディスクの乾燥面から掻き取られた乾燥物が押付具に引っかかって滞留することを防止する。
【解決手段】乾燥装置は、乾燥面を有するディスクと、前記ディスクの前記乾燥面を加熱する加熱装置と、前記ディスクを回転させる回転装置と、加熱され且つ回転する前記ディスクの前記乾燥面に被乾燥物を吹き付ける吹付装置と、加熱され且つ回転する前記ディスクの前記乾燥面に付着した乾燥物を掻き取る掻取刃を有する掻取装置と、一端が前記掻取刃に当接する当接体と、前記当接体の前記一端から前記乾燥面から掻き取られた前記乾燥物の進行方向に所定距離離間する位置に設けられ、前記当接体を介して前記掻取刃を前記ディスクの前記乾燥面に押し付ける押付具と、前記ディスクの前記乾燥面の前記掻取刃が接触する位置と前記押付具との間の領域に、前記乾燥物が回収部に移動する方向に、気体を噴射する噴射装置と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥面を有するディスクと、
前記ディスクの前記乾燥面を加熱する加熱装置と、
前記ディスクを回転させる回転装置と、
加熱され且つ回転する前記ディスクの前記乾燥面に被乾燥物を吹き付ける吹付装置と、
加熱され且つ回転する前記ディスクの前記乾燥面に付着した乾燥物を掻き取る掻取刃を有する掻取装置と、
一端が前記掻取刃に当接する当接体と、
前記当接体の前記一端から前記乾燥面から掻き取られた前記乾燥物の進行方向に所定距離離間する位置に設けられ、前記当接体を介して前記掻取刃を前記ディスクの前記乾燥面に押し付ける押付具と、
前記ディスクの前記乾燥面の前記掻取刃が接触する位置と前記押付具との間の領域に、前記乾燥物が回収部に移動する方向に、気体を噴射する噴射装置と、
を備える乾燥装置。
【請求項2】
前記噴射装置は、前記ディスクの前記乾燥面から掻き取られた前記乾燥物が前記押付具の位置に到達する前に、前記気体を噴射する、請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記噴射装置により噴射される前記気体の温度は、前記ディスクの表面から前記乾燥物が掻き取られた時の前記乾燥物の温度より低い、請求項1又は請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記ディスクの前記乾燥面から掻き取られた前記乾燥物が前記押付具に到達することを防止する防止部材を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記防止部材は、前記ディスクの前記乾燥面から掻き取られた前記乾燥物の進行方向を、前記ディスクの前記掻取刃に対する移動方向と逆方向の成分を有する方向に変更する傾斜面を有する傾斜部材である、請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記防止部材は、前記傾斜面の前記乾燥物の前記変更後の進行方向の端部には、前記乾燥物の前記変更後の進行方向を更に前記掻取刃に向かう方向に変更する変更部材を更に備える、請求項5に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾燥装置として以下のディスク型乾燥装置が提案されている(特許文献1)。このディスク型乾燥装置は、加熱されたディスクを回転させると共に、吹付装置により、加熱され且つ回転するディスクの表面に、液状の被乾燥原料を吹付け、さらに、ディスクの表面に掻取刃を弾性的に圧接させ、ディスクの表面に付着した乾燥原料を掻き取っている。掻き取られた乾燥原料は、回収部に落下して、回収される。そして、このディスク型乾燥装置では、ディスクの表面に掻取刃を圧接させるために、掻取刃に当接体を、ディスクの表面とは逆側からディスクの表面に向かって、当接させておき、当接体を貫通するボルトに当接体を介して蝶ナットを係合した押付具において、蝶ナットを回転することにより、当接体を下方に移動させて、掻取刃を、ディスクの表面に向かって、圧接させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-241235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記ディスク型乾燥装置では、当接体を貫通するボルトの位置は、ディスクの表面から掻き取られた乾燥原料が進行する先に位置する。よって、ディスクの表面から掻き取られた乾燥原料は、回収部に落下する前に、ボルト又は蝶ナットに引っかかり、滞留する。
【0005】
本開示の技術は、ディスクの乾燥面から掻き取られた乾燥物が押付具に引っかかって滞留することを防止することができる乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本開示の技術の第1の態様の乾燥装置は、乾燥面を有するディスクと、前記ディスクの前記乾燥面を加熱する加熱装置と、前記ディスクを回転させる回転装置と、加熱され且つ回転する前記ディスクの前記乾燥面に被乾燥物を吹き付ける吹付装置と、加熱され且つ回転する前記ディスクの前記乾燥面に付着した乾燥物を掻き取る掻取刃を有する掻取装置と、一端が前記掻取刃に当接する当接体と、前記当接体の前記一端から前記乾燥面から掻き取られた前記乾燥物の進行方向に所定距離離間する位置に設けられ、前記当接体を介して前記掻取刃を前記ディスクの前記乾燥面に押し付ける押付具と、前記ディスクの前記乾燥面の前記掻取刃が接触する位置と前記押付具との間の領域に、前記乾燥物が回収部に移動する方向に、気体を噴射する噴射装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術は、ディスクの乾燥面から掻き取られた乾燥物が押付具に引っかかって滞留することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】乾燥装置の内部の一例を示す正面図である。
図2】乾燥装置の内部の一例を示す側面図である。
図3】掻取装置、及び押付具の構成の一例を示す図である。
図4】乾燥装置の内部における一対のディスクの間の構成の一例を示す断面図である。
図5】噴射装置が、ディスクの乾燥面の掻取刃が接触する位置と押付具との間の領域に、乾燥物が回収部に移動する方向に、気体を噴射する様子の一例を示す図である。
図6】噴射装置が、乾燥物が押付具の位置に到達するまでに時間がある場合に、気体を噴射しない様子を示す図である。
図7】噴射装置が、乾燥物が押付具の位置に到達する直前に、気体を噴射する様子を示す図である。
図8】第2実施形態の乾燥装置の内部における一対のディスクの間の構成の一例を示す断面図である。
図9】第2実施形態の乾燥装置の巻き込み部材の一例を示す斜視図である。
図10】第1の変形例の巻き込み部材の一例を示す斜視図である。
図11】第2の変形例の巻き込み部材に変更部材が設けられた一例を示す斜視図である。
図12】第3の変形例の巻き込み部材の一例を示す斜視図である。
図13】第4の変形例の巻き込み部材の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示の技術の実施の形態を説明する。
【0010】
[第1の実施の形態]
図1は、乾燥装置の内部の一例を示す正面図であり、図2は、乾燥装置の内部の一例を示す側面図である。以下、乾燥装置の一例として、被乾燥物としてウイスキー製造の際に生じる酵母が懸濁した原料スラリーを加熱乾燥させて、スラリー乾燥物としての乾燥酵母を製造するためのスラリー乾燥機を例にとり説明する。本開示の技術の乾燥装置は、スラリー乾燥機に限定されない。
本開示の技術の乾燥装置は、樹脂溶液の乾燥や、無機懸濁液等の乾燥に利用される。溶媒は水に限定されず、有機溶媒が含まれても良い。
【0011】
図1及び図2に示すように、乾燥装置は、揺動開閉自在なカバー板1a、1b、1c(特に図2参照)を備えたケーシング2の内側に、乾燥機本体Aと、図示しないスラリー貯留槽からポンプを用いて供給された液状の被乾燥物を乾燥機本体Aの下側で貯留するスラリータンクBと、ケーシング2の下部に形成され、スラリータンクBの底部近くに連通されたスラリーホッパーCと、を備えている。
【0012】
乾燥機本体Aは、各々が表裏に乾燥面5を有する複数のディスク3がその軸芯方向に略一定間隔を隔てて回転軸部材10で同芯状に連結して固定されている金属製の回転体4を備えている。
【0013】
複数のディスク3は、回転装置11により、横軸芯X周りで回転する。各ディスク3は、その内部に円形の中空部を同芯状に形成してある中空ディスクで構成されている。回転軸部材10は、各ディスク3の円形の中空部に連通する中空部12を同芯状に形成してある中空軸で構成されている。
【0014】
各ディスク3の乾燥面5は、加熱装置13により加熱される。具体的には、加熱装置13は、回転軸部材10の一方の端部に接続された給気ダクト14aと、他方の端部に接続された排気ダクト14bと、を備えている。加熱装置13は、ボイラーから供給された熱媒、例えば、水蒸気を、給気ダクト14aから回転軸部材10の中空部12に通して、各ディスク3の中空部に供給することにより、各ディスク3の乾燥面5を加熱する。各ディスク3の乾燥面5が加熱されると、各ディスク3の乾燥面5に塗布された被乾燥物を加熱乾燥される。ディスク3の中空部に供給される熱媒の温度は、ディスク3の乾燥面5を加熱して、被乾燥物を加熱乾燥できる温度である。なお、熱媒は、水蒸気に限定されず、水や油の液体でもよい。
【0015】
乾燥機本体Aには、加熱され且つ回転する各ディスク3の表裏の乾燥面5毎に、乾燥面5に液状の被乾燥物を吹き付ける吹付装置6が配置されている。各吹付装置6は、筒状に形成され、吹き出し孔が形成されている。各吹付装置6は、ヘッダ15に接続されている。ヘッダ15には、スラリータンクBに貯留された被乾燥物が循環ポンプ16により供給される。吹付装置6は、ヘッダ15に供給された被乾燥物を、各吹き出し孔から、ディスク3の乾燥面5に吹き付ける。なお、乾燥面5に吹き付けた被乾燥物のうちの余剰スラリーは、スラリーホッパーCを介して、スラリータンクBに回収される。
【0016】
乾燥機本体Aには、図2及び図4に示すように、乾燥面5に付着している乾燥物を掻き取る掻取刃20を有する掻取装置9(9a、9b)が配置されている。なお、掻取装置9(9a、9b)は、鋼(硬質金属)製である。掻取装置9a、9bは、図3及び図4に示すように、隣り合うディスク3間に配置されている。掻取装置9a、9bは、乾燥面5に接触する掻取刃20が形成された帯板材で構成されている。掻取装置9a、9bは、横軸芯X方向で互いに対向する乾燥面5毎に各別に対応させて、回転軸部材10側ほど高くなる傾斜姿勢で乾燥面5に沿って配置されている。図2に示すように、掻取装置9(従って、掻取刃20)は回転軸部材10側ほど高くなる傾斜姿勢で配置されている。
【0017】
吹付装置6及び掻取装置9は、ディスク3の図中の矢印(図2参照)で示す回転方向に間隔を隔てて順に配置されている。
【0018】
図4を参照して、掻取装置9(9a、9b)の支持構造を説明する。支持構造は、掻取装置9の基部側を挟み込むと共に互いにボルト固定された補強用の一対の板状金具21a、21bと、ケーシング2(図2も参照)側に設けられ、隣り合うディスク3間に配置してある一対の掻取装置9a、9bの各々を、板状金具21a、21bを介して、機枠45に支持する掻取装置支持部22とを、備えている。
【0019】
掻取装置支持部22は、図4にも示すように、一端が機枠45側に固定された固定アーム25を備えている。掻取装置支持部22は、各々がV字状の受け面23を有し、固定アーム25の左右両側にスペーサ26を挟んで互いに平行に位置し、回転軸部材10側ほど高くなる傾斜姿勢で、受け面23が上を向くように、固定アーム25にボルト固定された一対の支持レール24を備えている。
【0020】
図4に示すように、各掻取装置9a、9bを支持レール24の受け面23に支持させる際に、板状金具21aの下向き角部31を受け面23に載置して、各掻取装置9a、9bを掻取装置支持部22に支持してある。
【0021】
図4に示すように、一対の掻取装置9a、9bの間には、一端が一方の掻取装置9aの掻取刃20に当接し、他端が他方の掻取装置9bの掻取刃20に当接する当接体33が配置されている。当接体33は、回転軸部材10側ほど高くなる傾斜姿勢で配置されている。
【0022】
掻取装置9aの掻取刃20に当接する当接体33の一端から、後述するように乾燥面5から掻き取られた乾燥物が当接体33に沿って進行する方向(図4の右方向)に所定距離離間する位置と、掻取装置9bの掻取刃20に当接する当接体33の他端から、後述するように乾燥面5から掻き取られた乾燥物が当接体33に沿って進行する方向(図4の左方向)に所定距離離間する位置との間には、当接体33を介して各掻取刃20を各乾燥面5に押圧力Pで一対の掻取装置9a、9bの背面側から弾性的に押し付ける押付具32が配置されている。
【0023】
押付具32は、ねじ溝が形成され、固定アーム25に立設され、当接体33を、貫通孔37を介して、貫通したボルトである軸部材34と、軸部材34に挿通され、当接体33上に位置するワッシャ38と、軸部材34に上部から係合された蝶ナット36と、を備えている。
【0024】
蝶ナット36が所定方向に回転すると、蝶ナット36が下方に移動する。蝶ナット36の下方への移動によりワッシャ38を介して当接体33が下方に移動する。当接体33の下方への移動により上記押圧力Pが発生し、当接体33は、各掻取刃20を各乾燥面5に、一対の掻取装置9a、9bの双方の背面側から弾性的に押し付ける。
【0025】
掻取装置9の掻取刃20で掻き取った乾燥物は、回転軸部材10側ほど高くなる傾斜姿勢で配置されている当接体33に沿ってケーシング2の下部に形成した乾燥物ホッパー39に落下し、更に、乾燥物ホッパー39からスクリュー搬送装置40に落下し、機外に連続的に搬出される。
なお、乾燥物ホッパー39及びスクリュー搬送装置40は、本開示の技術の「回収部」の一例である。
【0026】
図4及び図5に示すように、掻取装置9aの掻取刃20に当接する当接体33の一端と当接体33を貫通する押付具32の位置との間の領域に気体を噴射する噴射装置100Aと、掻取装置9bの掻取刃20に当接する当接体33の他端と当接体33を貫通する押付具32の位置との間の領域に気体を噴射する噴射装置100Bと、が設けられている。
噴射装置100A、100Bは、ディスク3の乾燥面5から掻き取られた乾燥物が押付具32の位置に到達する前に、気体を、乾燥物が乾燥物ホッパー39及びスクリュー搬送装置40に移動する方向に、噴射する。
噴射装置100A、100Bにより噴射される気体の温度は、ディスク3の乾燥面5から乾燥物が掻き取られた時の乾燥物の温度より低い。
気体は、何を選択しても良いが、窒素等の不活性ガスが望ましい。
【0027】
以上のように構成された乾燥装置では、複数のディスク3は、回転装置11により、横軸芯X周りで回転する。加熱装置13は、ボイラーから供給された熱媒、例えば、水蒸気を、給気ダクト14aから回転軸部材10の中空部12に通して、ディスク3の中空部に供給することにより、ディスク3の乾燥面5を加熱する。吹付装置6は、加熱され且つ回転するディスク3の乾燥面5に、液状の被乾燥物を吹き付ける。乾燥面5に塗布された被乾燥物は、加熱され且つ回転するディスク3の乾燥面5に付着し、乾燥し、乾燥物となる。乾燥面5に付着している乾燥物は、掻取刃20により掻き取られる。
【0028】
乾燥面5から掻取刃20により掻き取られた乾燥物は、図6に示すように、続いて掻き取られた乾燥物により押し出され、当接体33上を、押付具32の軸部材34に向かって進む。
【0029】
乾燥面5から掻取刃20により掻き取られた乾燥物が、押付具32の軸部材34に到達する時間(到達時間)は、回転装置11により回転するディスク3の回転速度に基づいて予め定められる。
【0030】
そこで、本実施の形態では、図示しないコンピュータにより構成された制御部は、乾燥面5から掻取刃20により乾燥物が最初に掻き取られた時から上記到達時間が経過する所定時間前に、噴射装置100A、100Bを、一定時間、作動させる。
【0031】
乾燥面5から掻取刃20により乾燥物が最初に掻き取られた時から上記到達時間が経過する所定時間前であれば、図7に示すように、当接体33上を押付具32の軸部材34に向かって進む乾燥物は、軸部材34に到達しない。この状態で、制御部により噴射装置100A、100Bが作動し、噴射装置100A、100Bは、気体を、当接体33上を押付具32の軸部材34に向かって進む乾燥物に噴射する。よって、噴射装置100A、100Bは、ディスク3の乾燥面5から掻き取られた乾燥物が押付具32の位置に到達する前に、気体を、一定時間、噴射する。これにより、気体が噴射された乾燥物は、押付具32の位置に到達する前に、ケーシング2の下部に形成した乾燥物ホッパー39からスクリュー搬送装置40に落下し、機外に連続的に搬出される。
【0032】
制御部は、上記のように気体が一定時間噴射されるように噴射装置100A、100Bを制御すると、噴射装置100A、100Bを、気体が噴射されないように、制御する。これにより、乾燥面5から掻取刃20により掻き取られた乾燥物は、図6に示すように、当接体33上を、押付具32の軸部材34に向かって進む。
【0033】
制御部は、噴射装置100A、100Bを、気体が噴射されないように、制御した時から上記到達時間が経過する所定時間前に、噴射装置100A、100Bを、一定時間、作動させる。よって、噴射装置100A、100Bは、ディスク3の乾燥面5から掻き取られた乾燥物が押付具32の位置に到達する前に、気体を、一定時間、噴射する。これにより、気体が噴射された乾燥物は、押付具32の位置に到達する前に、ケーシング2の下部に形成した乾燥物ホッパー39からスクリュー搬送装置40に落下し、機外に連続的に搬出される。
【0034】
制御部は、上記制御を繰り返す。これにより、噴射装置100A、100Bは、気体を一定時間(第1の時間)、噴射することと、気体の噴射停止時から上記到達時間が経過する所定時間前になるまでの時間(第2の時間)、噴射を停止することとを、繰り返す。
【0035】
このように本実施の形態では、制御部が自動的に噴射装置100A、100Bを制御する。
【0036】
しかし、被乾燥物の材料によっては、掻き取られる乾燥物がつづら折り(周期の短いサインカーブのような断面)になることもある。この場合には、作業者が、乾燥物の動きを観察しながら、乾燥物が押付具32の位置に到達する前の任意のタイミングで噴射装置を作動させるようにしてもよい。
【0037】
また、他の例として、押付具32の位置よりも、乾燥物の進行方向とは逆方向に所定距離の位置に、乾燥物を検知するセンサを配置する。制御部は、センサから、乾燥物を検知したことを示す信号を受信した時に、気体を一定時間(第1の時間)、噴射するように、噴射装置100A、100Bを制御する。
【0038】
更に他の例として、掻取刃20が乾燥面5に接触する位置と押付具32の位置との間の当接体33上の領域を撮影するカメラを備える。制御部は、カメラの撮影により得た画像に基づいて、乾燥物の先端の位置を検出し、乾燥物の先端が、押付具32の位置より乾燥物の進行方向とは逆方向に所定距離の位置に位置したと判断した場合に、気体を一定時間(第1の時間)、噴射するように、噴射装置100A、100Bを制御する。
【0039】
以上説明したように本実施の形態では、噴射装置100A、100Bは、乾燥物が押付具32の位置に到達する前に、気体を、乾燥物に向けて噴射することにより、乾燥物が押付具32に到達させないようにしている。よって、乾燥物が押付具32の軸部材34や蝶ナット36に引っかかって滞留することを防止することができる。従って、本実施の形態では、乾燥物を遅滞なく連続的に回収することができる。更に、噴射装置100A、100Bは、気体を、乾燥物が乾燥物ホッパー39及びスクリュー搬送装置40に移動する方向に、噴射する。よって、乾燥物が乾燥物ホッパー39及びスクリュー搬送装置40に移動する方向ではない方向に気体を噴射する場合に比較すると、乾燥物の回収効率を高めることができる。
【0040】
また、本実施の形態では、噴射装置100A、100Bにより噴射される気体の温度は、ディスク3の乾燥面5から乾燥物が掻き取られた時の乾燥物の温度より低い。よって、乾燥物をフレーク状により小さくすることができる。なお、噴射装置100A、100Bにより噴射される気体の温度を、ディスク3の乾燥面5から乾燥物が掻き取られた時の乾燥物の温度より低くしなくとも、噴射装置100A、100Bは、乾燥物がフレーク状に小さくなる噴射速度で、気体を乾燥物に噴射するようにしてもよい。また、本実施の形態では、乾燥物がフレーク状へと小さくなるので、嵩が減り、次工程への取扱い性が良くなる。
【0041】
ところで、乾燥物が押付具32の軸部材34や蝶ナット36に引っかかって滞留すると、種々の問題が生ずる。
例えば、第1に、加熱されたディスク3の乾燥面5付近に、不揮発成分を有する乾燥物が滞留し、乾燥物の化学反応が進み、不揮発成分が熱暴走する。
第2に、スムーズに回収される乾燥物と、押付具32に引っかかって滞留した後に回収される乾燥物とが混在することになり、両者は熱履歴が異なり、乾燥物内で化学反応進行に差が生ずる。
これに対し、本実施の形態では、掻取装置9の掻取刃20で掻き取った乾燥物が滞留することを防止している。よって、上記各問題が解決される。
上記第1の不揮発成分が熱暴走することを防止することができる。
上記第2の乾燥物内で化学反応進行に差が生ずることを防止することができる。
【0042】
また、気体を、乾燥物に向けて噴射するので、乾燥物が結露するのを防止することができる。
【0043】
[第2の実施の形態]
次に、本開示の技術の第2の実施の形態を説明する。第2の実施の形態の乾燥装置の構成は、第1の実施の形態の乾燥装置の構成と略同じであるので、同一の部分には同一の符号を付して、主として異なる部分を説明する。
【0044】
図8及び図9に示すように、取装置9a側の掻取刃20及び掻取装置9b側の掻取刃20の各々に当接する当接体33の一端及び他端と押付具32との間には、ディスク3の乾燥面5から掻き取られた乾燥物を、先に掻き取られた部分が後から掻き取られた部分の内側になるように巻き込む巻き込み部材50が設けられている。
巻き込み部材50は、本開示の技術の防止部材の一例である。
【0045】
巻き込み部材50は、掻取装置9a側の傾斜面50Aと、掻取装置9b側の傾斜面50Cと、一端が傾斜面50Aの上端に接続し、他端が傾斜面50Cの上端に接続する上面50Bと、を有する傾斜部材である。巻き込み部材50は、一体で製造されている。
傾斜面50Aの上端と傾斜面50Cの上端とは、上から見て、平行、即ち、互いの間隔が一定である。なお、傾斜面50Aの上端と傾斜面50Cの上端とは互いの間隔が一定であることに限定されず、傾斜面50Aの上端と傾斜面50Cの上端との間隔は、ディスク回転軸側が狭くてもよい。傾斜面50Aの上端と傾斜面50Cの上端とは、上から見て、「ハ」の字又は逆「ハ」の字でもよい。
【0046】
上面50Bには、押付具32の軸部材34が貫通し、蝶ナット36は、上面50Bより下側で、軸部材34に係合されている。
【0047】
傾斜面50A(傾斜面50C)は、掻取装置9a(9b)のディスク3の乾燥面5から掻き取られた乾燥物の進行方向を、ディスク3の掻取刃20に対する乾燥物の移動方向と逆方向の成分を有する方向、具体的には、当接体33の上面に対して斜め上の方向に変更する。
【0048】
傾斜面50A(傾斜面50C)の下端は、当接体33に、接着剤で固定されている。傾斜面50A(傾斜面50C)の下端、即ち、当接体33に固定された位置と、当接体33の一端(他端)とは、所定距離離間している。従って、傾斜面50A(傾斜面50C)の下端は当接体33に直接当接していない。
【0049】
以上のように、傾斜面50A(傾斜面50C)の当接体33に対する鋭角側の角度は、90°未満であり、掻取装置9a(9b)のディスク3の乾燥面5から掻き取られた乾燥物を巻き込む角度である。つまり、当該鋭角側の角度は、乾燥物を巻き込む角度であり、傾斜面50A上を乾燥物が登っていく角度である。
【0050】
巻き込み部材50(傾斜部材)は、傾斜面50Aを有する板体と、傾斜面50Cを有する板体と、上面50Bを有する板体とを備えている。よって、傾斜部材は中空である。
傾斜面50Aを有する板体、傾斜面50Cを有する板体、及び上面50Bを有する板体は、例えば、ステンレス製である。傾斜面50Aを有する板体と、傾斜面50Cを有する板体との各々の内側には、ヒートシンク50Hが取り付けられている。ヒートシンク50Hは、ジルコニア等よりも伝熱特性の良いアルミニウム、鉄、銅などの金属により構成された複数の板(所謂、フィン)を備えている。ヒートシンク50Hの複数の板は、上側から下側に位置するに従って、長さが長くなっている。掻き取られた乾燥物が最初に傾斜面50A、傾斜面50Cに当たる部分は、傾斜面50A、傾斜面50Cの下側であるので、下側の放熱効果を、上側の放熱効果より高めるためにある。
【0051】
噴射装置100A、100Bが作動しない場合、ディスク3の乾燥面5から掻き取られた乾燥物は、巻き込み部材50の傾斜面50A(傾斜面50C)の下端、即ち、当接体33に固定された位置と、当接体33の一端(他端)との間隙に位置した後、後から到達する乾燥物により、傾斜面50A(傾斜面50C)まで押し出される。傾斜面50A(傾斜面50C)まで押し出された乾燥物は、その進行方向が、傾斜面50A(傾斜面50C)により、上記斜め上の方向に変更される。傾斜面50A(傾斜面50C)の当接体33に対する鋭角側の角度は、乾燥物を巻き込む角度である。進行方向が、傾斜面50A(傾斜面50C)により、上記斜め上の方向に変更された乾燥物は、図6に示すように、先に掻き取られた部分が後から掻き取られた部分の内側になるように巻き込まれ、断面が螺旋状に(所謂、葉巻状)に丸まり、自重又は丸まることによる回転運動によって裂け目が入り、引きちぎられ、フレーク状へと小さくなる。よって、掻取装置9の掻取刃20で掻き取られた乾燥物は、押付具32には到達せず、押付具32の軸部材34や蝶ナット36に引っかかって滞留することはない。
【0052】
上記のように制御部は、乾燥面5から掻取刃20により掻き取られた乾燥物が押付具32の軸部材34に到達しないように噴射装置100A、100Bから作動させている。しかし、何らかの理由で、制御部が噴射装置100A、100Bを作動させなかった場合でも、巻き込み部材50により、乾燥物を、先に掻き取られた部分が後から掻き取られた部分の内側になるように巻き込みようにして、乾燥物が押付具32に到達することを防止することができる。
【0053】
ところで、本開示の技術は、乾燥面5から掻取刃20により乾燥物が最初に掻き取られた時から上記到達時間が経過する所定時間前に、噴射装置100A、100Bを、一定時間、作動させることに限定されない。例えば、進行方向が、傾斜面50A(傾斜面50C)により、上記斜め上の方向に変更された乾燥物が、先に掻き取られた部分が後から掻き取られた部分の内側になるように巻き込まれ、断面が螺旋状に丸まった状態になった時に、制御部は、噴射装置100A、100Bを作動させ、乾燥物に、乾燥物ホッパー39及びスクリュー搬送装置40に移動する方向に、気体を噴射させる。これにより、丸まった乾燥物に裂け目を入れ、乾燥物は、裂け目から引きちぎられ、フレーク状に小さくなって、乾燥物ホッパー39及びスクリュー搬送装置40に向かって移動する。本実施の形態では、乾燥物がフレーク状へと小さくなるので、次工程への取扱い性が良くなる。
【0054】
先に掻き取られた部分が後から掻き取られた部分の内側になるように巻き込まれ、断面が螺旋状に丸まった状態になるまでの時間(第3の時間)は予め定まる。そこで、制御部は、乾燥面5から掻取刃20により乾燥物が最初に掻き取られた時から第3の時間が経過した時、噴射装置100A、100Bにより気体を噴射し終わった時から第3の時間が経過した時に、噴射装置100A、100Bを作動させる。
【0055】
他の例として、掻取刃20が乾燥面5に接触する位置と押付具32の位置との間の当接体33上の領域を撮影するカメラを備える。制御部は、カメラの撮影により得た画像に基づいて、乾燥物が、断面が螺旋状に丸まった状態になったことを検出した場合に、噴射装置100A、100Bを作動させるようにしてもよい。
【0056】
また、巻き込み部材50の各板体が絶縁性のフッ素樹脂で構成されている場合には、各板体がステンレス製の場合に比べると、乾燥物との接触による摩擦により、板体に帯電が生じ、乾燥器内を減圧から常圧に戻し、カバー板1a、1b、1cを開けた時、酸素濃度が上がり、溶剤蒸気と静電気で発火するおそれがある。しかし、本実施の形態では、巻き込み部材50の各板体は、ステンレス製である。よって、乾燥物との摩擦による帯電を抑制することができ、上記発火を抑制することができる。
【0057】
本実施の形態では、巻き込み部材50の傾斜面50Aを有する板体と傾斜面50Cを有する板体との各々の内側には、ヒートシンク50Hが取り付けられている。よって、傾斜面50A、50Cに接触した乾燥物の温度を、ヒートシンクを取り付けない場合よりも低下させることができる。なお、掻き取られた乾燥物が最初に当たる傾斜面50A、50Cの下側部分の内側には、上側部分よりも長さが長いヒートシンク用の板が設けられているので、下側の放熱効果を、上側の放熱効果より高め、乾燥物の温度をより低下させることができる。
【0058】
[変形例]
次に、第2の実施の形態の4つの変形例を説明する。各変形例は、前述した第2の実施の形態の乾燥装置とは、主として巻き込み部材が異なるので、巻き込み部材以外の構成の部分は同一の符号を付して、その説明を省略する。
4つの変形例の各巻き込み部材51~54は、本開示の技術の「防止部材」の一例である。
【0059】
(第1の変形例)
第1の変形例を説明する。図10は、第1の変形例の巻き込み部材51の一例を示す斜視図である。図10に示すように、巻き込み部材51では、傾斜面50Aの下端は、当接体33に固定された板体50Dの一端に接続され、傾斜面50Cの下端は、当接体33に固定された板体50Eの一端に接続されている。巻き込み部材51(50A~50E)は、一体で製造されている。板体50D及び板体50Eは、接着剤等により、当接体33に固定されている。
【0060】
前述した実施の形態のように、傾斜面50A(傾斜面50C)の下端、即ち、当接体33に固定された位置と、当接体33の一端(他端)とは、所定距離離間している。よって、板体50D(50E)の他端は、当接体33の一端(他端)とは、当該所定距離よりも未時間距離だけ離間している。
【0061】
このように傾斜面50Aの下端が、当接体33に固定された板体50Dの一端に接続され、傾斜面50Cの下端が、当接体33に固定された板体50Eの一端に接続されている。よって、巻き込み部材51を、傾斜面50A(傾斜面50C)の下端のみで当接体33に固定する場合よりも、安定して当接体33に設置させることができる。
【0062】
(第2の変形例)
第2の変形例を説明する。図11は、第2の変形例の巻き込み部材52に変更部材50F、50Gが設けられた一例を示す斜視図である。図11に示すように、巻き込み部材52は、傾斜面50Aにおける、乾燥物の変更後の進行方向の端部(上端部)には、乾燥物の変更後の進行方向を更に掻取装置9aの掻取刃20に向かう方向に変更する変更部材(即ち、所謂、返し部材)50Fが設けられている。巻き込み部材52は、傾斜面50Cにおける、乾燥物の変更後の進行方向の端部(上端部)には、乾燥物の変更後の進行方向を更に掻取装置9bの掻取刃20に向かう方向に変更する変更部材(即ち、所謂、返し部材)50Gが設けられている。巻き込み部材52(50A~50C、50F、50G)は、一体で製造されている。
【0063】
前述した実施の形態では、傾斜面50A(傾斜面50C)の当接体33に対する鋭角側の角度は、掻取装置9a(9b)のディスク3の乾燥面5から掻き取られた乾燥物を巻き込む角度である。
【0064】
第2の変形例では、傾斜面50A(傾斜面50C)の当接体33に対する上記角度は、上記巻き込む角度でもよいが、変更部材50F(変更部材50G)が設けられているので、上記巻き込む角度より小さくてもよい。具体的には、傾斜面50A(傾斜面50C)の当接体33に対する鋭角側の角度と、変更部材50F(変更部材50G)の傾斜面50A(傾斜面50C)に対する鋭角側の角度とは、傾斜面50A(傾斜面50C)と変更部材50F(変更部材50G)とにより2回、乾燥物の進行方向が変更され、乾燥物が、先に掻き取られた部分が後から掻き取られた部分の内側になるように巻き込まれる角度である。
【0065】
(第3の変形例)
第3の変形例を説明する。図12は、第3の変形例の巻き込み部材53を示す斜視図である。
【0066】
前述した実施の形態の巻き込み部材50は、傾斜面50Aと傾斜面50Cと、一端が傾斜面50Aの上端に接続し、他端が傾斜面50Cの上端に接続する上面50Bと、を有する傾斜部材である。
【0067】
これに対し、第3の変形例の巻き込み部材53は、図12に示すように、掻取装置9a側の傾斜面53Aと、掻取装置9b側の傾斜面53Cと、一端が傾斜面53Aの下端に接続し、他端が傾斜面53Cの下端に接続する下面53B1と、を有する傾斜部材である点で相違する。巻き込み部材53(53A、53B1、53C)は、一体で製造されている。下面53B1は、接着剤等により、当接体33に固定されている。
【0068】
前述した実施の形態の巻き込み部材50では、傾斜面50Aと傾斜面50Cとの上側は、上面50Bにより閉鎖されているのに対し、第3の変形例の巻き込み部材53では、傾斜面53Aと傾斜面53Cとの上側は開放されている。
【0069】
下面53B1には、押付具32の軸部材34が貫通しており、下面53B1は当接体33上に位置するワッシャ38も兼ねている。
【0070】
傾斜面53A(傾斜面53C)は、掻取装置9a(9b)のディスク3の乾燥面5から掻き取られた乾燥物の進行方向を、ディスク3の掻取刃20に対する乾燥物の移動方向と逆方向の成分を有する方向、具体的には、当接体33の上面に対して斜め上の方向に変更する。
【0071】
傾斜面53A(傾斜面53C)の下端、即ち、当接体33に固定された位置と、当接体33の一端(他端)とは、所定距離離間している。
【0072】
以上のように、傾斜面53A(傾斜面53C)の当接体33に対する鋭角側の角度は、90°未満であり、掻取装置9a(9b)のディスク3の乾燥面5から掻き取られた乾燥物を巻き込む角度である。
【0073】
このように傾斜面53A及び傾斜面53Cの下端が、当接体33に固定された下面53B1に接続されている。よって、巻き込み部材53を、傾斜面53A(傾斜面53C)の下端のみで当接体33に固定する場合よりも、安定して当接体33に設置させることができる。
傾斜面53A及び傾斜面53Cの内側には、ヒートシンク50Hを設けるようにしてもよい。
【0074】
(第4の変形例)
第4の変形例を説明する。図13は、第4の変形例の巻き込み部材54の一例を示す斜視図である。
【0075】
第3の変形例の巻き込み部材53では、傾斜面53Aの下端と傾斜面53Cの下端との間に下面53B1が設けられているのに対し、第4の変形例の巻き込み部材54では、傾斜面53Aの上端と傾斜面53Cの上端との間に上面53B2が設けられている点で相違している。
【0076】
第4の変形例では、押付具32が、巻き込み部材54の傾斜面53A、傾斜面53C、及び上面53B2に覆われている。押付具32の軸部材34の上部は、上面53B2を貫通している。軸部材34に係合する一対のナット42A、42Bが、上面53B2を挟んだ状態で締め付け、軸部材34を上面53B2に固定している。
【0077】
このように第4の変形例では、巻き込み部材54の上面54Bが軸部材34に固定されているので、掻き取られた乾燥物に押されて、巻き込み部材54が浮いてしまうことを防止することができる。
傾斜面53A及び傾斜面53Cの内側には、ヒートシンク50Hを設けるようにしてもよい。
【0078】
(その他の変形例)
前述した実施の形態及び上記各変形例では、巻き込み部材50~54の各傾斜面50A、53A、50C、53Cは、板体に形成された平面であるが、掻取装置9a、9bの掻取刃20に対して凹面(巻き込み部材50~54の内側に向けて凸面)となる湾曲面であってもよい。巻き込み部材52の変更部材50F及び変更部材50Gは、板体に形成された平面であるが、掻取装置9a、9bの掻取刃20に対して凹面(押付具32の軸部材34の上部に向けて凸面)となる湾曲面であってもよい。そして、巻き込み部材52の傾斜面50Aと変更部材50Fとが連続的に上記凹面となる湾曲面であってもよく、傾斜面50Cと変更部材50Gとが連続的に上記凹面となる湾曲面であってもよい。
【0079】
前述した実施の形態及び上記各変形例では、巻き込み部材50~54の各面の両端側、。例えば、図5に示す例では、傾斜面50A、50C、上面50Bの両端(図5の手前側及び奥側の端)は、開放されているが、板体により閉じていてもよい。
【0080】
第2の変形例の巻き込み部材52及び第4の変形例の巻き込み部材54も、第1の変形例のように、板体50D、50Eを備えるようにしてもよい。
【0081】
第1の変形例の巻き込み部材51、第3の変形例の巻き込み部材53、第4の変形例の巻き込み部材54も、第2の変形例のように、変更部材50F、50Gを備えるようにしてもよい。
【0082】
本開示の技術による乾燥装置は、回転体を縦軸周りで駆動回転自在に設けてもよい。
【0083】
本開示の技術による乾燥装置は、ディスクに塗布した被乾燥物をディスクの外側から加熱して乾燥可能な加熱装置を設けてもよい。蒸発工程は、固形化する物質の性質又は有用性から常圧または加圧・減圧下で実施できる。
【0084】
本開示の技術による乾燥装置は、各種食品の残滓が懸濁した被乾燥物や汚泥が懸濁した被乾燥物を乾燥するものであっても良い。
【実施例0085】
次に、本開示の技術の実施例を説明する。
(メタ)アクリル系樹脂であるDIC製のアクリディック(登録商標)WDL-787(固形分濃度35重量%)の乾燥を、西村鐵工所製CDドライヤーを用いて実施した。CDドライヤーに掻取刃を有する掻取装置と噴射装置を設置した当接体と押圧具をセットし、ディスク回転数を1.0rpmで運転し、ディスク中へ蒸気を入れディスク温度を昇温させながら、当接体を介して掻取刃をディスク乾燥面に弾性的に接触させる押圧具の蝶ナットの締め付けトルクを調整し、暖気運転を実施した。ディスク温度が120℃になった後、ディスク回転数を0.5rpmに保ったまま、吹付装置へ溶液のポンプ送液を開始した。吹付装置から吐出される溶液は、ディスクの最適位置に当たるように調整した。ディスクに付着しない溶液分は、溶液ホッパーを介して、溶液タンク中へ回収され、再びポンプ送液を行った。ディスクへ付着した溶液分は、掻取刃へ達するまでにディスク上で蒸発し、生じた乾燥物は掻取刃で掻き取られた。
【0086】
掻き取られた乾燥物は、当接体の上を、回収方向に向かうと同時に当接体を貫通するボルトや当接体を固定する蝶ナットの方へもシート状に広がった。乾燥物が当接体を貫通するボルトや当接体を固定する蝶ナットに接触する直前に、当接体に設置した噴射装置(噴射装置のノズル径2mmΦ)から掻取刃に向かって圧力0.3MPaの窒素を2秒間噴射した。乾燥物は引きちぎれ、一枚様のシート状となり、吹き飛ばされ、順次回収装置へと回収された。運転終了後、掻取刃で掻き取られた乾燥物が、回収装置内に100%回収されたことを確認した。
【0087】
蒸発した有機溶媒蒸気は、熱交換器により凝縮液として回収した。蒸発工程中は、ディスク温度が120℃±3℃で一定になるよう調整した。なおCDドライヤー(乾燥装置)による蒸発工程の廃液処理に要したエネルギー量は、装置規模に対して廃液量が少なかったため定量化できなかったが、蒸発工程を問題なく実施することができた。
【比較例】
【0088】
噴射装置を設置しない以外は、実施例1と同じ条件でCDドライヤーを運転した。
【0089】
掻き取られた乾燥物は、当接体の上を、回収方向に向かうと同時に当接体を貫通するボルトや当接体を固定する蝶ナットの方へもシート状に広がった。やがて乾燥物が当接体を貫通するボルトや当接体を固定する蝶ナットに接触すると、シート状に広がった乾燥物は、次から次へと前記ボルトや前記蝶ナットに覆い被さってしまい、当接体上でひっかかった形状になった。それゆえ、乾燥物が当接体上で滞留してしまい、回収装置へ送られなくなってしまった。運転終了後、掻取刃で掻き取られた乾燥物が、回収装置内に10%も回収されなかったことを確認した。
【符号の説明】
【0090】
3 ディスク
4 回転体
5 乾燥面
6 吹付装置
9 掻取装置
11 駆動装置
13 加熱装置
32 押付具
33 当接体
50~54 巻き込み部材
50F、50G 変更部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13