(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126992
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】炭酸塩硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20240912BHJP
C04B 40/02 20060101ALI20240912BHJP
C04B 28/06 20060101ALI20240912BHJP
B01D 53/80 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
C04B40/02
C04B28/06
B01D53/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035803
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182914
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 善紀
(72)【発明者】
【氏名】丸屋 英二
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英明
(72)【発明者】
【氏名】古賀 明宏
(72)【発明者】
【氏名】上田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 知昭
(72)【発明者】
【氏名】平田 隆祥
【テーマコード(参考)】
4D002
4G112
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC04
4D002AC05
4D002BA03
4D002CA20
4D002DA05
4D002DA08
4D002DA11
4D002DA12
4D002DA66
4D002DA70
4D002FA02
4D002GA01
4D002GB20
4D002HA09
4G112PB08
4G112RA02
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を含む排気ガスからオンサイトで、二酸化炭素を効率よく固定化することが可能であり、普通コンクリート用の骨材として有用な強度を有する炭酸塩硬化物を製造することが可能な方法を提供すること。
【解決手段】本開示は、二酸化炭素を含む排気ガスから炭酸塩硬化物を製造する方法であって、Caを構成元素として有する塩基性化合物を含む原料を撹拌させながら、排気ガス中の二酸化炭素に接触させることによって、炭酸化物を得る炭酸化工程と、上記炭酸化物及び水硬性材料を含む混合物を撹拌造粒することによって炭酸塩硬化物を得る造粒工程と、を有し、上記原料は、乾燥質量100質量部に対して、15~40質量部の水を含む、製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む排気ガスから炭酸塩硬化物を製造する方法であって、
Caを構成元素として有する塩基性化合物を含む原料を撹拌させながら、排気ガス中の二酸化炭素に接触させることによって、炭酸化物を得る炭酸化工程と、
前記炭酸化物及び水硬性材料を含む混合物を撹拌造粒することによって炭酸塩硬化物を得る造粒工程と、を有し、
前記原料は、乾燥質量100質量部に対して、15~40質量部の水を含む、製造方法。
【請求項2】
前記炭酸化物は、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムを含み、
前記混合物において、前記炭酸カルシウム、前記水酸化カルシウム及び前記水硬性材料の乾燥質量の合計量を100質量部として、前記炭酸カルシウムの含有量が31~55質量部であり、前記水酸化カルシウムの含有量が5~19質量部であり、前記水硬性材料の含有量が26~64質量部である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記炭酸化工程において、前記原料と、前記二酸化炭素とが接する時間が3~20分間である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記炭酸化工程において、二酸化炭素1モルに対して、前記塩基性化合物が酸化カルシウム換算量にて1~2モルとなるように調整する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記造粒工程において、前記混合物の乾燥質量100質量部に対して、水が10~35質量部となるように調整して、撹拌造粒する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記炭酸化物に対して、少なくとも前記水硬性材料を添加することによって、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム及び前記水硬性材料の乾燥質量の合計量を100質量部として、前記炭酸カルシウムの含有量が31~55質量部であり、前記水酸化カルシウムの含有量が5~19質量部であり、前記水硬性材料の含有量が26~64質量部である前記混合物を調製する調製工程を更に有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記造粒工程は、前記炭酸塩硬化物の平均粒径が0.4mm以上となるように調整される、請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素を含む排気ガスから炭酸塩硬化物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラル社会の実現に向け、二酸化炭素(CO2)の貯留、固定化に関する技術が注目されている。CO2を炭酸塩として固定化し、その炭酸塩をコンクリート等の建設材料として利用することができれば、大量のCO2の固定化を見込めることから、実用的かつ汎用性のある技術確立が強く望まれている。
【0003】
炭酸塩をコンクリート用材料として利用する場合、粉体混合材として使用するか、骨材として使用するかに応じて、適正な配合量や要求される特性が異なる。コンクリートの構成材料の大部分は骨材(細骨材又は粗骨材)であるため、上記炭酸塩を骨材として使用可能であれば、その使用量に照らしてCO2の固定化への寄与が増大し得る。さらに、このような骨材を普及させ脱炭素社会に貢献するためには、二次製品や特殊用途のコンクリートではなく、普通コンクリートとして使用されることが望まれる。
【0004】
従来、このような炭酸塩を製造する技術としては、一定の強度を有する粒状又は塊状の固体にCO2を含む排気ガスを反応させる手法が用いられている。具体的には、例えば、ケイ酸カルシウム組成物を部分的に炭酸化して、結着成分との複合組織を得る技術(特許文献1)、高炉徐冷スラグを炭酸化して骨材を得る技術(特許文献2)、及びコンクリート等のセメント質硬化体を特定の条件で炭酸化する技術(特許文献3,4)が開示されている。さらに、カルシウムやマグネシウムの炭酸塩スラリーを調製し、これを骨材基質の表面に被覆させる技術も知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-031657号公報
【特許文献2】特開2014-237559号公報
【特許文献3】特開2020-131076号公報
【特許文献4】特開2020-015659号公報
【特許文献5】特表2022-517780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CO2の固定化を、CO2を含む排気ガスが発生する場所で行うことができれば、CO2を貯蔵する設備の必要がなく、実用上より望ましい。このようなオンサイトでのCO2の固定化、炭酸塩の製造を行うためには、連続的に排出されるCO2を含む排気ガスから炭酸塩への変換を比較的短時間とすること、及びCO2固定化率を高めることが求められる。しかし、一般に、反応時間の低減とCO2固定化率の向上とはトレードオフの関係にある。上述の先行技術においては、使用材料の炭酸化率のみに着目されており、オンサイトでの製造の際に懸念されるCO2の散逸を抑制するとの着想は無く、このような観点での検討においては改善の余地がある。
【0007】
また、普通コンクリートにも適用できる汎用性を確保するには、上記炭酸化物を骨材として用いた場合に、普通コンクリートに十分な強度を与える強度を有することが望ましい。しかし、上述の先行技術では炭酸化物又はその造粒物としての強度の点で改善の余地がある。
【0008】
本開示は、二酸化炭素を含む排気ガスからオンサイトで、二酸化炭素を効率よく固定化することが可能であり、普通コンクリート用の骨材として有用な強度を有する炭酸塩硬化物を製造することが可能な方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下の[1]~[7]を提供する。
【0010】
[1]
二酸化炭素を含む排気ガスから炭酸塩硬化物を製造する方法であって、
Caを構成元素として有する塩基性化合物を含む原料を撹拌させながら、排気ガス中の二酸化炭素に接触させることによって、炭酸化物を得る炭酸化工程と、
前記炭酸化物及び水硬性材料を含む混合物を撹拌造粒することによって炭酸塩硬化物を得る造粒工程と、を有し、
前記原料は、乾燥質量100質量部に対して、15~40質量部の水を含む、製造方法。
[2]
前記炭酸化物は、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムを含み、
前記混合物において、前記炭酸カルシウム、前記水酸化カルシウム及び前記水硬性材料の乾燥質量の合計量を100質量部として、前記炭酸カルシウムの含有量が31~55質量部であり、前記水酸化カルシウムの含有量が5~19質量部であり、前記水硬性材料の含有量が26~64質量部である、[1]に記載の製造方法。
[3]
前記炭酸化工程において、前記原料と、前記二酸化炭素とが接する時間が3~20分間である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]
前記炭酸化工程において、二酸化炭素1モルに対して、前記塩基性化合物が酸化カルシウム換算量にて1~2モルとなるように調整する、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]
前記造粒工程において、前記混合物の乾燥質量100質量部に対して、水が10~35質量部となるように調整して、撹拌造粒する、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]
前記炭酸化物に対して、少なくとも前記水硬性材料を添加することによって、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム及び前記水硬性材料の乾燥質量の合計量を100質量部として、前記炭酸カルシウムの含有量が31~55質量部であり、前記水酸化カルシウムの含有量が5~19質量部であり、前記水硬性材料の含有量が26~64質量部である前記混合物を調製する調製工程を更に有する、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]
前記造粒工程は、前記炭酸塩硬化物の平均粒径が0.4mm以上となるように調整される、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、二酸化炭素を含む排気ガスからオンサイトで、二酸化炭素を効率よく固定化することが可能であり、普通コンクリート用の骨材として有用な強度を有する炭酸塩硬化物を製造可能な方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。なお、以下の説明では、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」を意味する。
【0013】
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。混合物等の組成物における各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
本開示に係る炭酸塩硬化物は、二酸化炭素を含む排気ガスから炭酸塩硬化物を製造する方法である。上記製造方法は、Caを構成元素として有する塩基性化合物を含む原料を撹拌させながら、排気ガス中の二酸化炭素に接触させることによって、炭酸化物を得る炭酸化工程と、上記炭酸化物及び水硬性材料を含む混合物を撹拌造粒することによって炭酸塩硬化物を得る造粒工程と、を有する。炭酸化工程で得られる炭酸化物は、場合によって、一旦、ホッパー等に貯蔵してもよい。炭酸塩硬化物は主として粒子形状で得られる。粒子形状は球形であってよい。
【0015】
二酸化炭素を含む排気ガスは、二酸化炭素を含むものであれば特に制限されるものではないが、例えば、石炭火力発電所、セメント工場、及び清掃工場等からの排気ガスであってよい。本開示に係る製造方法は、オンサイトでの二酸化炭素の固定化が可能であることから、石炭火力発電所、セメント工場、及び清掃工場等において、実施し得る。排気ガス中の二酸化炭素の含有量は、標準状態で、例えば、1体積%以上であってよく、3~50体積%、5~40体積%、又は8~30体積%であってよい。また、これらの排気ガスを直接用いてもよく、排気ガスから回収し濃縮した高濃度(例えば、50体積%超)の二酸化炭素を用いてもよい。
【0016】
上記原料は、カルシウム(Ca)を構成元素として有する塩基性化合物を含み、Caを構成元素として有する塩基性化合物からなっていてもよい。Caを構成元素として有する塩基性化合物は、例えば、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、カルシウムシリケート(CaSiO3、Ca2SiO4、Ca3SiO5等)、及びカルシウムアルミネート(CaAl2O4、Ca3Al2O6、Ca12Al14O33等)等が挙げられる。また、これらの塩基性化合物を含む原料として、コンクリートスラッジ等の廃棄物、及び廃コンクリート等が挙げられる。上記廃棄物は、そのまま用いることもできるが、化学的処理や加熱処理等によって、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムの形態に調整して用いることもできる。さらに、塩基性化合物を含まない廃棄物であっても、廃石膏等のCaを含有するものであれば、化学的処理や加熱処理等によって、酸化カルシウム又は水酸化カルシウム等の塩基性化合物を調整でき、これを使用できる。
【0017】
上記原料は、Caを構成元素として有する塩基性化合物に加えて、その他成分を更に含有してもよい。なお、後述する水硬性材料、結合剤、及び分散剤等の添加剤についても、炭酸化工程におけるCO2の固定化を阻害するものでなければ、上記原料にその他の成分として配合することもできる。この場合、水硬性材料及び添加剤の含有量は、原料の乾燥質量100質量部を基準として、64質量部以下、又は50質量部以下であってよい。
【0018】
炭酸化工程において、上記原料は、乾燥質量100質量部に対して、15~40質量部の水を含む。上記原料は湿潤粉体ということもできる。本発明者らの検討によれば、炭酸化のための反応時間を長時間確保できる場合には、従前のようにスラリー状態(例えば、原料の乾燥質量100質量部に対して、水100質量部以上の状態)であることが好ましいものの、スラリー中の原料の濃度が低下することに加え二酸化炭素の拡散が遅いため、オンサイトでの二酸化炭素固定化のように短時間で反応が求められる場合には、反応速度が不十分となり得ることが判明した。また、オンサイトでのCO2固定化には水分量をむしろ低減させることが望ましいものの、水分を介した炭酸化の反応点が偏在化するため、原料を撹拌させることによってこれを補い、短時間で効率よくCO2を固定化できることも見出した。
【0019】
上記原料における水の含有量は、上記原料の乾燥質量100質量部に対して、例えば、17質量部以上、20質量部以上、又は25質量部以上であってよい。上記原料における水の含有量の下限値を上記範囲内とすることで、原料表面の水の存在割合が増し、CO2の固定化率をより向上させ得る。上記原料における水の含有量は、上記原料の乾燥質量100質量部に対して、例えば、38質量部以下、37質量部以下、又は35質量部以下であってよい。上記原料における水の含有量の上限値を上記範囲内とすることで、空隙内の水の増加に伴う二酸化炭素の拡散の不均質化、またそれによるCO2固定化率低下を抑制し得る。上記原料における水分量の調整は、例えば、水を直接配合することによって行ってもよい。
【0020】
炭酸化工程では上記原料を撹拌させながら、排気ガスに含まれる二酸化炭素と接触させる。原料を撹拌させることによって二酸化炭素との接触面を経時的に変化させることが可能であり、これによってCO2の固定化の効率をより向上させることができる。前述のとおり、炭酸化工程ではオンサイトでのCO2固定化を図る観点から原料を湿潤粉体の状態で使用する必要がある。本発明者らの検討によれば、湿潤粉体の場合、静置状態で炭酸化を図るとCO2の固定化率が著しく劣ることが判明している。
【0021】
原料を撹拌する手段は特に限定されるものではないが、例えば、攪拌型ミキサ(リボンミキサ、ナウタミキサ等)、容器混合型ミキサ(V型ミキサ等)、混合輸送機(スクリューフィーダー等)、移動層型反応器(キルン型等)、及び攪拌槽型反応器等が挙げられる。
【0022】
炭酸化工程において、上記原料と、上記二酸化炭素とが接する時間は、排気ガスにおける二酸化炭素の含有量、炭酸化工程を実施する容器の形状、サイズ等に応じて調整してよい。炭酸化工程において、上記原料と、上記二酸化炭素とが接する時間は、例えば、3分間以上、5分間以上、6分間以上、又は7分間以上であってよい。上記時間の下限値を上記範囲内とすることで、反応時間が確保され、CO2固定化率をより向上させ得る。炭酸化工程において、上記原料と、上記二酸化炭素とが接する時間は、例えば、20分間以下、18分間以下、15分間以下、又は12分間以下であってよい。上記時間を長く確保するためには、連続的に排出される排気ガスを固定化するための反応装置を大きく設計することが求められオンサイト製造に向かず、炭酸塩硬化物の製造コストが上昇する傾向がある。このため、上記時間の上限値を上記範囲内とすることで、より実用的な設備投資、及び運転コストで炭酸塩硬化物を製造し得る。炭酸化工程において、上記原料と上記二酸化炭素とが接する時間は、上述の範囲内で調整してよく、例えば、3~20分間であってよい。
【0023】
炭酸化工程において、二酸化炭素1モルに対して、上記塩基性化合物が酸化カルシウム換算量で、例えば、2モル以下、1.7モル以下、又は1.5モル以下であってよい。上記塩基性化合物の供給量の上限値を上記範囲内とすることで、上記塩基性化合物の使用量の過剰な増大を抑制し、運転コストの増大を抑制し得る。炭酸化工程において、二酸化炭素1モルに対して、上記塩基性化合物が酸化カルシウム換算量で、例えば、1モル以上であってよい。上記塩基性化合物の供給量の下限値を上記範囲内とすることで、CO2の固定化をより十分なものとし、炭酸カルシウムの量を増大し得る。炭酸化工程において、二酸化炭素1モルに対して、上記塩基性化合物の供給量は上述の範囲内で調整してよく、酸化カルシウム換算量で、例えば、1~2モルとなるように調整してよく、1~1.7モル、又は1~1.5モルであってよい。
【0024】
炭酸化工程において得られる炭酸化物は、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムを含んでよい。上記炭酸化物は、更に、原料に含まれる成分(例えば、酸化カルシウム等)を含んでいてもよい。
【0025】
上記混合物における炭酸カルシウム、水酸化カルシウム及び水硬性材料の配合量は、炭酸塩硬化物の強度を向上させるの観点から調整してよい。上記混合物において、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム及び水硬性材料の乾燥質量の合計量を100質量部として、例えば、炭酸カルシウムの含有量が31~55質量部であり、水酸化カルシウムの含有量が5~19質量部であり、且つ水硬性材料の含有量が26~64質量部であってよく、好ましくは、炭酸カルシウムの含有量が35~50質量部であり、水酸化カルシウムの含有量が5~17質量部であり、水硬性材料の含有量が33~60質量部であってよく、より好ましくは、炭酸カルシウムの含有量が40~50質量部であり、水酸化カルシウムの含有量が10~16質量部であり、水硬性材料の含有量が34~50質量部であってよい。混合物における炭酸カルシウム、水酸化カルシウム及び水硬性材料の配合量が上述の範囲内となるように調整することによって、炭酸塩含有率を十分に高く維持しつつ、後述する工程で得られる炭酸塩硬化物の機械的強度をより向上させることができる。こうして得られる炭酸塩硬化物は、普通コンクリート用の骨材により適する。
【0026】
造粒工程では、炭酸化物を得る炭酸化工程と、上記炭酸化物及び水硬性材料を含む混合物を撹拌造粒することによって炭酸塩硬化物を調製する。
【0027】
水硬性材料は、水和反応によって硬化し、硬化体を形成する材料である。水硬性材料は、例えば、高炉スラグ、及びポゾラン物質等が挙げられる。ポゾラン物質は、例えば、フライアッシュ及びシリカ質混合材等が挙げられる。水硬性材料としては、比較的安価であり、それ自体が得られる際のCO2排出量が少ない観点から、高炉スラグが好適に使用できる。セメントクリンカ等を含むセメント組成物も水硬性材料ではあるが、セメント組成物を製造する際に排出されるCO2排出量が多いため、市販の製品は使用しないことが望ましい。本開示における水硬性材料として、セメント組成物を使用する場合には、不要となったセメント硬化体等から回収し、再利用したものであることが望ましい。
【0028】
上記混合物は、炭酸化物及び水硬性材料に加えて、その他の材料を更に含んでもよい。その他の材料としては、例えば、水、造粒を促進するための結合剤、及び分散剤等であってよい。
【0029】
本開示において造粒手段としては撹拌造粒を採用することによって、得られる炭酸塩硬化物が機械的強度に優れたものとなっている。造粒手段は一般に、湿式造粒及び乾式造粒が知られている。湿式造粒としては、撹拌造粒の他、転動造粒、流動層造粒、及び被覆造粒等が挙げられる。撹拌造粒を採用することによって他の造粒方法に比べて機械的強度に優れる硬化物が得られる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは次のように推察している。(1)まず、炭酸化物と水硬性材料の混合物を造粒する場合、炭酸化物自体は水和反応を生じないため、水硬性材料のみを造粒する場合に比べて機械的強度を確保しにくい。この場合、炭酸化物の粒子と水硬性材料の粒子とが十分に混合されて密に接していることが、機械的強度に優れる条件であると考えられる。(2)湿式造粒のうち、転動造粒、流動層造粒、及び被覆造粒は、得られる硬化物において、複数の層が重なった層状の構造が形成されると考えられる。この造粒の過程において、層間には空隙が生じやすく、炭酸化物の粒子と水硬性材料の粒子が密に接している状態とはなり難い。そのため、一部の層間に機械的に弱い欠陥が形成されることによって、硬化体としての機械的強度の低下を招き得ると考えられる。(3)一方で、湿式造粒の中でも、撹拌造粒の場合、硬化体の原料となる混合物を撹拌し、系内を均一化しながら遠心圧縮を与えて造粒させることから、層状の構造は形成されにくく、炭酸化物の粒子と水硬性材料の粒子が十分に混合されて密に接している状態となりやすい。そのため、撹拌造粒によって得られる硬化物の強度を向上し得ると考えられる。
【0030】
上述のとおり、撹拌造粒によれば、緻密な造粒物及びその硬化物を得ることができ、且つ連続生産が可能であるため、オンサイトでの炭酸塩硬化物の製造に好適である。なお、造粒以外の方法としては、混合物に十分な水を加えて流込成型し、硬化後に破砕して骨材とする方法も考えられる。しかし、この場合、材料を均一化するために加える水の量が多くなりやすく、高い機械的強度が得られにくい。
【0031】
造粒工程において、上記混合物は水分を含んでよい。水分は、炭酸化物又は水硬性材料に由来するものであってもよく、外部から配合するものであってよい。本明細書における混合物の水分は両者の合計量を意味する。なお、前述したように、炭酸化工程で使用する原料は、乾燥質量100質量部に対して、15~40質量部の水分を含んでいるが、この一部は炭酸化反応による発熱によって蒸発し得る。この蒸発によって揮散した水分は混合物の水分として含めないものとする。水の含有量の下限値は、上記混合物の乾燥質量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、12質量部以上、15質量部以上、又は17質量部以上であってよい。水の配合量の下限値が上記範囲内であることによって、水硬性材料の硬化反応をより十分に進行させることができる。水の含有量の上限値は、上記混合物の乾燥質量100質量部に対して、例えば、35質量部以下、30質量部以下、25質量部以下、又は24質量部以下であってよい。水の含有量上限値が上記範囲内であることで、撹拌造粒に要する時間を短縮化することが可能であり、炭酸塩硬化物をより安定的に調製し得る。水の含有量は上述の範囲内で調整してよく、上記混合物の乾燥質量100質量部に対して、水が、例えば、10~35質量部となるように調整してよい。
【0032】
造粒工程において、上記炭酸塩硬化物の平均粒径は0.4mm以上となるように調整されてよい。また、炭酸塩硬化物の用途等に応じて平均粒径を調整してよい。例えば、炭酸塩硬化物を普通コンクリート用細骨材として用いる場合には、炭酸塩硬化物の平均粒径は、0.4~1.2mmが好ましく、0.6~1.0mmがより好ましい。また、炭酸塩硬化物を普通コンクリート用粗骨材として用いる場合には、炭酸塩硬化物の平均粒径は、7~32mm又は8~31mmが好ましく、15~25mmがより好ましい。炭酸塩硬化物の平均粒径をこのような値とすることで、炭酸塩硬化物を普通コンクリート用の細骨材や粗骨材として好適に使用することができる。
【0033】
本明細書における平均粒径は、JIS A 1102:2014「骨材のふるい分け試験方法」に記載の方法で粒度分布を測定し、算出した粒径加積曲線が質量分率の50%となるときの粒子径によって測定される値を意味する。
【0034】
本開示に係る炭酸塩硬化物の製造方法は、炭酸化工程及び造粒工程に加えて、その他工程を有していてもよい。その他の工程としては、例えば、上記混合物の組成を調整する工程、排気ガスや炭酸化物の分析工程、炭酸塩硬化物の養生工程、及び粒度調整工程等が挙げられる。
【0035】
上記混合物の組成を調整する工程は、炭酸化工程において得られる炭酸化物の組成を調整する工程であってよい。上記混合物の組成を調整する工程は、炭酸化工程の後、造粒工程の前に実施されることが望ましい。調整工程では、上記炭酸化物に対して、少なくとも上記水硬性材料を添加することによって、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム及び水硬性材料の乾燥質量の合計量を100質量部として、炭酸カルシウムの含有量が31~55質量部であり、水酸化カルシウムの含有量が5~19質量部であり、水硬性材料の含有量が26~64質量部である上記混合物を調製してよい。調製工程では上述の組成の調整にあたって、炭酸化物及び水硬性材料の配合量を調整する他、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムの少なくとも一方を外部から添加してもよい。例えば、炭酸化工程で得られる炭酸化物の組成を分析し、炭酸化物中の炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムの含有量を決定し、その値に基づいて、上記配合を調整することができる。
【0036】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施形態についての説明内容は、互いに適用することができる。
【実施例0037】
以下、実施例、比較例、製造例及び参考例を参照して本開示の内容をより詳細に説明する。ただし、本開示は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(製造例1~5,比較例1~9)
ポリビーカー中に、Caを構成元素として有する塩基性化合物及び水を、表1に記載の成分及び配合量にて測り取り、混合することで原料を調製した。Caを構成元素として有する塩基性化合物として水酸化カルシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、消石灰、特号品)を用い、水としては蒸留水を用いた。さらに、水酸化カルシウム100質量部に対して、4L/分の流速で二酸化炭素(炭酸ガス)を7.5分間又は10分間通気し、炭酸化処理を行うことで、炭酸化物を得た。このような通気とすることによって、二酸化炭素1モルに対する上記塩基性化合物の酸化カルシウム換算でのモル比が表1に記載のとおりのものとなるように調整した。炭酸化処理において、原料を撹拌し動的状態を維持した。撹拌は、スリーワンモーター、又はホバートミキサを使用した。撹拌速度は表1に示した。
【0039】
上述のようにして得た炭酸化物をプラスチックバットに移し、70℃で12時間乾燥させた後、後述する方法によって、原料の炭酸化率及びCO2固定化率を決定した。結果を表1に示す。
【0040】
[原料の炭酸化率及びCO2固定化率の決定方法]
まず、上述のようにして得られた炭酸化物から自由水を除去するために、300℃で1時間加熱処理した。加熱処理後の質量をXとした。次に、炭酸化物中の炭酸カルシウムを脱炭酸させるために、900℃で1時間加熱処理し、当該加熱処理後の質量をYとした。上記XとYとの差分をXで除し100を乗じて脱炭酸に基づく質量減少率を算出した。
【0041】
次に、炭酸化処理を行う前の上述の原料についても、上記と同様に質量減少率を求め、炭酸化率がゼロの場合の質量減少率とした。次いで、これを完全に炭酸化した炭酸化物についても同様に質量減少率を求め、二点の関係で、炭酸化率に関する検量線を作成し、ここで得られた検量線の切片をAとし、検量線の傾きをBとした。なお、完全に炭酸化した炭酸化物を得ることは困難であるため、予め原料の塩基性化合物の量を特定し、その全量が炭酸カルシウムに変化したと想定して理論的な質量変化を計算し、質量減少率を算出した。
【0042】
このようにして得られたX,Y,A及びBの値を用いて、下記式(1)に基づき炭酸化率Z(単位:質量%)を求めた。ここで、炭酸化率Zは、炭酸化物中の塩基性化合物が炭酸カルシウムに変化した割合(質量%)である。
炭酸化率Z=[{(X-Y)/X×100}-A]/B … 式(1)
【0043】
上述のようにして求めた炭酸化率Z(塩基性化合物が炭酸カルシウムに変化した割合)の値を用い、下記式(2)に基づいて、炭酸化率Z’(単位:モル%)を決定した。式(2)中、Cは炭酸カルシウムの分子量(単位:g/モル)を示し、Dは塩基性化合物の分子量(単位:g/モル)を示す。
炭酸化率Z’=[(Z/C)/{(Z/C)+((100-Z)/D)}×100] … 式(2)
【0044】
次に、下記式(3)に基づいて、CO2の固定化率を算出した。式(3)中、Eは原料中の塩基性化合物の含有量(単位:モル)を示し、Fは二酸化炭素の供給量(単位:モル)を示す。なお、原料中に複数種の塩基性化合物が存在する場合には、炭酸化物中の未反応分を定量し、それぞれの塩基性化合物について炭酸化率Z、炭酸化率Z’、及びCO2固定化率を算出し、合計する必要がある。CO2固定化率は、各塩基性化合物の値を加算して算出する。
CO2固定化率=E×(Z’/F)×100 … 式(3)
【0045】
(比較例10)
炭酸化工程における撹拌を行わず、静的状態を維持したこと以外は製造例1等と同様にして炭酸化物を調製した。得られた炭酸化物について、製造例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
表1に示されるとおり、原料中の水の配合量が少ない又は過剰である場合(比較例1~9)には、炭酸化率Zが低く、CO2固定化率も十分に向上させることが難しいことが確認された。また、原料中の水の配合量が適切に調整されていても、撹拌をせずに炭酸化処理を行う場合(比較例10)には、炭酸化処理の時間を延ばしたとしても、やはり炭酸化率Z及びCO2固定化率を向上させることが困難であることが確認された。
【0048】
なお、表1の比較例6~8では、製造例2~4と比べて、スリーワンモーターによる撹拌の回転速度の変化によって、炭酸化率Z及びCO2固定化率の変動が大きくなっていることが確認された。これは、原料中の水分が多く、撹拌による原料の分散状態の変化や練り込み等が生じ、二酸化炭素の拡散状態が変化、抑制されるためと推察される。このような点から、原料中の水分量を適切な範囲とすることで、撹拌条件にある程度のゆとりを持たせることが可能であり、実用上有益であると考えられる。
【0049】
(製造例6):撹拌造粒
炭酸化物の例として、炭酸カルシウム(ニューライム社製、軽質)及び水酸化カルシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、消石灰、特号品)の配合物を用意し、水硬性材料として高炉スラグ(千葉リバーメント株式会社製、商品名:リバメントGx)を添加し、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム及び水硬性材料が、質量比で50:5:45となるような混合物を調製した。
【0050】
容量が500cm3のポリビーカーに、上記混合物100質量部、蒸留水21質量部、及び高性能AE剤(ポリカルボン酸系高性能AE減水剤、BASF社製、商品名:マスターグレニウムSP8SV)3質量部を測り取り、スリーワンモーターを用いて回転速度:700rpmの条件下で10分間撹拌し、造粒して、炭酸塩硬化物を得た。得られた炭酸塩硬化物は、平均粒径が1.1mmとなるように粒度を調整した。
【0051】
[炭酸塩硬化物の骨材としての評価]
得られた炭酸塩硬化物をポリ袋内で7日間密封養生した後、炭酸塩硬化物を骨材として用いたモルタルを作製し、モルタル強度を測定することで造粒物の強度を評価した。モルタルは、普通ポルトランドセメント(C)と蒸留水(W)をW/C=50(質量比)の条件で配合したセメントペーストを用意し、当該セメントペーストと骨材との体積比が3:7となるように各材料を計量し、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準拠してホバートミキサで混合した。混合物をΦ50mmのサミット缶に充填し、7日間湿空養生した。サミット缶から脱型し、万能材料試験機テンシロンを用いてモルタルの圧縮強さを測定した。結果を表2に示す。
【0052】
(比較例11):流し込み成型後の粉砕による造粒
製造例6と同様にして調製した混合物を用いて、容器に上記混合物100質量部、蒸留水24質量部を測り取り、ホバートミキサを用いてスラリー化するまで混合した。次に、300mm×250mm×10mmの直方体状の型枠に得られたスラリーを投入し、バイブレーターで型枠に振動を加えながら型枠内に充填させた。その後、型枠の上面をポリエチレンフィルムで覆って密封し、7日間養生することで、炭酸塩硬化物を得た。得られた炭酸塩硬化物を粉砕することで造粒物を得た。得られた造粒物は平均粒径が1.1mmとなるように粒度を調整した。得られた造粒物を用いて、製造例6と同様にして、炭酸塩硬化物の骨材としての評価を行った。
【0053】
(比較例12):転動造粒
製造例6と同様にして調製した混合物を用いて、容器に上記混合物100質量部、蒸留水19質量部を加え、ホバーミキサを用いて水が混合物全体に均一に馴染むまで混合した。混合後、パン型の転動造粒機に投入し、回転速度60rpmで3分間転動造粒を行い、造粒物を得た。得られた造粒物は平均粒径が1.1mmとなるように粒度を調整した。得られた造粒物を用いて、製造例6と同様にして、炭酸塩硬化物の骨材としての評価を行った。
【0054】
(参考例1)
参考のため、汎用的なモルタル用骨材である珪砂(3号A+新特5号A+7号Aの混合物、宇部サンド工業株式会社製)を参考例1とした。炭酸塩硬化物に変えて上記珪砂を用いたこと以外は、製造例6と同様にして、骨材の評価を行った。
【0055】
【0056】
表2に示されるとおり、同じ炭酸化物の混合物を用いた場合であっても、撹拌造粒以外の造粒方法では、所望の圧縮強さが発揮されないことが確認された。製造例6で調製された炭酸塩硬化物を骨材として用いた場合、比較例11,12の造粒物よりも優れ、汎用の骨材(参考例1)を用いた場合に比べて、十分なモルタル圧縮強さを発揮し得ることが確認された。
【0057】
(実施例1)
CO2固定化率の最も優れていた製造例5と同様にして炭酸化物を調製した。容量が500cm3のポリビーカーに、得られた炭酸化物を55質量部測、及び水硬性材料としての高炉スラグを45質量部測り取り混合した。得られた混合物の乾燥質量100質量部に対して水の配合量が24質量部となるように蒸留水を加えた。さらに高性能AE減水剤を3質量部更に配合した。スリーワンモーターを用いて回転速度:700rpmの条件下で110分間撹拌し、造粒して、炭酸塩硬化物を得た。
【0058】
[炭酸塩硬化物の平均破壊荷重の測定]
得られた炭酸塩硬化物をポリ袋内で7日間密封養生した後、粒子径が2.36~4.75mmの炭酸塩硬化物を20~60個選択、抽出し、万能材料試験機テンシロンを用いて一粒毎の破壊荷重を測定し、その算術平均値を炭酸塩硬化物の平均破壊荷重とした。結果を表3に示す。なお、表3には、市販の石灰石砕砂の平均破壊荷重を参考例2として併記した。
【0059】
(実施例2~6)
炭酸化処理の時間を20分間に変更したこと以外は、製造例5と同様にして、炭酸化物を調製した。得られた炭酸化物中の炭酸カルシウムの割合を測定し、その上で、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム及び水硬性材料の配合量が表3に示す割合となるように水酸化カルシウムと高炉スラグを添加し、混合物を調製した。得られた混合物の乾燥質量100質量部に対して水の配合量が20質量部となるように蒸留水を加えた。さらに高性能AE減水剤を3質量部更に配合した。スリーワンモーターを用いて回転速度:700rpmの条件下で5~43分間撹拌し、造粒して、炭酸塩硬化物を得た。得られた炭酸塩硬化物について、実施例1と同様にして、炭酸塩硬化物の平均破壊荷重の測定を行った。結果を表3に示す。
【0060】
【0061】
表3に示されるとおり、実施例1~6で調製したいずれの炭酸塩硬化物であっても、市販骨材である石灰石砕砂の6割以上の平均破壊荷重を有していることが確認された。特に、炭酸化物と水硬性材料との配合割合が、炭酸カルシウムが31~55質量部であり、水酸化カルシウムが5~19質量部であり、水硬性材料が26~64質量部であるように配合が調整された実施例1,2,3、及び5で調製された炭酸塩硬化物は、石灰石砕砂の7割程度以上の強度を有しており、骨材としてより有用であることが確認された。
【0062】
なお、参考例2とした石灰石砕砂は、100N/mm2を超える高強度コンクリートにも使用されており、この石灰石砕砂の6割程度以上の強度があれば18~45N/mm2程度の普通コンクリートに適用できる十分な強度を有しているといえる。
本開示によれば、二酸化炭素を含む排気ガスからオンサイトで、二酸化炭素を効率よく固定化することが可能であり、普通コンクリート用の骨材として有用な強度を有する炭酸塩硬化物を製造可能な方法を提供できる。本開示に係る製造方法によれば、大量のCO2固定化が可能であり、得られる炭酸塩は、普通コンクリート用骨材として可能である。これによって、カーボンニュートラル社会の実現に貢献し得る。