(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127190
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】包餡食品
(51)【国際特許分類】
A23C 19/068 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A23C19/068
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036173
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】川本 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】平櫛 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】太田 丈尋
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC05
4B001AC20
4B001BC01
4B001BC02
4B001BC08
4B001BC99
4B001DC01
4B001EC04
(57)【要約】
【課題】本発明は、ナチュラルチーズ又はプロセスチーズからなる外皮で包餡した重さ10g以上70g未満の包餡チーズにおいて、側面から見た断面形状が、いわゆる大福餅様の形状の包餡チーズを提供することを課題とする。
【解決手段】外皮及び餡がチーズ類である重さ10g以上70g未満の包餡チーズであって、以下で規定される包餡チーズのアスペクト比が0.6以上1.0以下、円筒度が0.5以上1.0以下である、前記包餡チーズ。
アスペクト比;包餡チーズを水平な平面に置いたときの、該平面に対して垂直な面における、包餡チーズに外接する長方形の短辺/長辺の比
円筒度;包餡チーズを水平な平面に置いたときの、該平面に対して垂直な面における、包餡チーズの最大内接円の半径/最小外接円の半径の比
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外皮及び餡がチーズ類である重さ10g以上70g未満の包餡チーズであって、
以下で規定される包餡チーズのアスペクト比が0.6以上1.0以下、
円筒度が0.5以上1.0以下である、
前記包餡チーズ。
アスペクト比;包餡チーズを水平な平面に置いたときの、該平面に対して垂直な面における、包餡チーズに外接する長方形の短辺/長辺の比
円筒度;包餡チーズを水平な平面に置いたときの、該平面に対して垂直な面における、包餡チーズの最大内接円の半径/最小外接円の半径の比
【請求項2】
外皮となるチーズ類がナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード又は乳主原である請求項1に記載の包餡チーズ。
【請求項3】
餡となるチーズ類が、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード又は乳主原である請求項1又は2に記載の包餡チーズ。
【請求項4】
外皮がナチュラルチーズであり、餡が、外皮と同じ組成の割けた状態のナチュラルチーズ及び生クリームを配合したチーズである請求項1又は2に記載の包餡チーズ。
【請求項5】
重さが30~50gである請求項1又は2に記載の包餡チーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包餡チーズに関する。特に詳しくは外皮及び餡が共にチーズ類である包餡チーズに関する。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルチーズやプロセスチーズを外皮として、流動性のある食品を内包する包餡チーズとして、例えば以下が挙げられる。
特許文献1には、フレッシュ感およびミルク感を向上させた、弾力性があるナチュラルチーズを外層として包餡した、包餡チーズおよびその製造方法が記載されている。本製造方法により製造された包餡チーズは、大きさは特に制限がなく10gくらいの一口サイズから複数人提供用として1,000gくらいまでの範囲で製造できることが開示されている。形状については、包餡機で丸型に成形されうること、また、実施例では、外層に弾力性があるナチュラルチーズ、内部用にクリームチーズが供給され包餡機で外層と内部の重量比が2:1となるように供給された50gの包餡チーズが開示されている。しかし、外観に関する記載は無い。
特許文献2には、弾力性があるナチュラルチーズを外層として包餡した包餡チーズおよびその製造方法が記載されている。本製造方法は、特定の評価方法で評価された弾力性を有するナチュラルチーズを外層とし、35℃~60℃の温度範囲内で包餡機で連続的に包餡させることにより、包餡チーズを製造することを特徴としている。この製造法によって製造される包餡チーズについては特許文献1と同様に大きさに関する記載はあるものの、やはりそれ以外の外観に関する記載は無い。
市場に流通している包餡チーズとして、例えばQBB六甲バター株式会社のゴルゴンゾーラ風味のチーズボールとよばれる包餡チーズが知られている(非特許文献1)。本チーズは、外皮がしっかりとしていて、内部が軟らかい大きさ8gの円形扁平形のチーズである。
また、同じく市場に流通している包餡チーズとして「ブラータ」という伝統的なチーズも知られており、例えば花畑牧場製のものが知られている。本チーズは、内部にモッツァレラチーズと生クリームを混ぜたものを用いて、モッツァレラチーズからなる外皮で包餡したおよそ70gの包餡チーズである。外観は、円形扁平形である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-063808号公報
【特許文献2】国際公開2016/043311号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】QBB六甲バター株式会社のホームページhttps://www.qbb.co.jp/lp/tsutsumiに掲載された「チーズボール/包み」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ナチュラルチーズ又はプロセスチーズを外皮として、流動性のある食品を内包物として包餡機で包餡した従来の包餡チーズは、外皮は柔らかく、自立性が低いため、包餡直後の形状を維持することが難しく、そのため出来上がった包餡チーズは、扁平形状のものが多く、いわゆる大福餅様の形状の包餡チーズを形成することが難しいという問題があった。
上記の従来の包餡チーズ(特許文献1,2)についても、形状に関する特徴はなく、市販されている包餡チーズ(非特許文献1)も円形扁平状のチーズである。ここで、チーズは栄養を得るための食品であるとともに、おやつや、おつまみのような嗜好品としての利用も多いことから、食品の外観としては、円形扁平状のほかにも、より丸みを帯びたいわゆる大福餅形状や球状など嗜好性に応じて様々な形状のものが好まれる傾向にある。
本発明は、ナチュラルチーズ又はプロセスチーズからなる外皮で包餡した重さ10g以上70g未満の包餡チーズにおいて、側面から見た断面形状が、一定のアスペクト比及び円筒度を満たすような、包餡チーズを提供することを課題とする。すなわち、円形扁平状ではなく、いわゆる大福餅様の形状の包餡チーズを提供することを課題とする。特に、綴じ目がしっかりとして内包物が漏れない包餡チーズを包餡機により安定して連続的に提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、包餡直後の包餡チーズをすばやく冷却することで、包餡直後の形状であるいわゆる大福餅様の形状を保持でき、かつ、綴じ目が固く(強く)内包物の漏れを抑えた包餡チーズを提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
<1>
外皮及び餡がチーズ類である重さ10g以上70g未満の包餡チーズであって、
以下で規定される包餡チーズのアスペクト比が0.6以上1.0以下、
円筒度が0.5以上1.0以下である、
前記包餡チーズ。
アスペクト比;包餡チーズを水平な平面に置いたときの、該平面に対して垂直な面における、包餡チーズに外接する長方形の短辺/長辺の比
円筒度;包餡チーズを水平な平面に置いたときの、該平面に対して垂直な面における、包餡チーズの最大内接円の半径/最小外接円の半径の比
<2>
外皮となるチーズ類がナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード又は乳主原である<1>に記載の包餡チーズ。
<3>
餡となるチーズ類が、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード又は乳主原である<1>又は<2>に記載の包餡チーズ。
<4>
外皮がナチュラルチーズであり、餡が、外皮と同じ組成の割けた状態のナチュラルチーズ及び生クリームを配合したチーズである<1>又は<2>に記載の包餡チーズ。
<5>
重さが30~50gである<1>又は<2>に記載の包餡チーズ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ナチュラルチーズ又はプロセスチーズからなる外皮で包餡した重さ10g以上70g未満の包餡チーズにおいて、側面から見た断面形状が、一定のアスペクト比及び円筒度を満たすような、すなわち、大福餅様の形状の包餡チーズを提供することができる。また、綴じ目がしっかりとして内包物が漏れない包餡チーズを安定して連続的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】包餡チーズを水平な平面に置き、該平面に対して真上から撮った画像(A)及び該平面に対して垂直な面(つまり側面)から撮った画像(B)を示す。画像(B)中、点線は、包餡チーズに外接する長方形を示し、当該長方形の長辺と短辺の比(短辺/長辺)をアスペクト比とする。白抜き両矢印は、長方形の短辺と長辺の長さを示す。一点鎖線は最大内接円を示し、2点鎖線は最小外接円を示し、最大内接円の半径/最小外接円の半径を円筒度とする。
【
図2】各実施例及び比較例で製造した包餡チーズのアスペクト比と円筒度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(包餡チーズ)
本発明の包餡チーズは、外皮及び餡がチーズ類である重さ10g以上70g未満の包餡チーズであって、以下で規定される包餡チーズのアスペクト比が0.6以上1.0以下、円筒度が0.5以上1.0以下である、前記包餡チーズである。
本発明の包餡チーズの大きさは、10g以上70g未満である。この範囲の大きさであれば包餡機により連続的に製造することができるため好ましい。大きさは、さらに好ましくは20~60gであり、よりいっそう好ましくは30~50gであり、もっとも好ましくは35~45gである。
本発明において、包餡する際に外皮と中身の割合は、中身が外皮で被覆できるような重量比であればよく、特に限定されないが、外皮の加工特性及び中身とのバランスにより調製することが好ましい。このような観点から外皮:中身の重量比は、好ましくは10:1~1:10であり、さらに好ましくは5:1~1:5であり、よりいっそう好ましくは2:1~1:2であり、もっとも好ましくは1:1である。
【0010】
(アスペクト比)
本発明において、包餡チーズの形状は、用途や嗜好性に応じて各種の形状とすることができる。一例として丸みを帯びた形状が好ましく、より好ましくは略球状である。包餡チーズの丸みは、包餡チーズ側面から観察したときの下記で規定するアスペクト比、及び円筒度で規定することができる。すなわちアスペクト比は1に近く、円筒度も1に近い方がより球に近く丸みを帯びているといえる。
当該アスペクト比は以下のようにして求められる。包餡チーズを水平な平面に置き、該平面に対して垂直な面(つまり側面)の画像を取得する(
図1(B))。次に、当該画像から包餡チーズに外接する長方形を描画し、当該長方形の短辺/長辺の比をアスペクト比とする。包餡直後の包餡チーズのアスペクト比はほぼ1に近く、冷却後も1に近ければ近い程包餡チーズは変形せずに(扁平とならずに)、好ましいといえる。冷却後の本発明の包餡チーズのアスペクト比は0.6以上が好ましく、0.7以上がさらに好ましく、0.8以上がさらにいっそう好ましく、0.9以上がもっとも好ましい。上限としては1.0である。
また、前記短辺と長辺の長さは、上記アスペクト比を満たすような範囲であればいずれでもよいが、短辺は、好ましくは25~55mmであり、さらに好ましくは25~50mmであり、もっとも好ましくは30~40mmである。長辺は、好ましくは30~60mmであり、さらに好ましくは30~50mmであり、もっとも好ましくは40~50mmである。
また、側面から見た中央断面の面積としては、好ましくは650~3,500mm
2であり、さらに好ましくは700~2,000mm
2であり、もっとも好ましくは650~1200mm
2である。
【0011】
(円筒度)
本発明において包餡チーズの円筒度は、以下のようにして求められる。アスペクト比を求める際の平面に対して垂直な面(つまり側面)の画像(
図1(B))から最大内接円と最小外接円を描画し、最大内接円の半径/最小外接円の半径の比を円筒度とする。包餡直後の包餡チーズの円筒度はほぼ1に近く、冷却後も1に近ければ近い程包餡チーズは変形せずに(扁平とならずに)、好ましいといえる。冷却後の本発明の包餡チーズの円筒度は、0.5以上が好ましく、0.6以上がさらに好ましく、0.7以上、0.8以上、0.9以上がさらにいっそう好ましい。上限としては1.0である。
良好な丸みを有する範囲として、上記アスペクト比及び上記円筒度の組み合わせは、アスペクト比0.6以上かつ円筒度0.5以上であり、さらに好ましくはアスペクト比0.7以上かつ円筒度0.6以上であり、アスペクト比0.8以上かつ円筒度0.7以上、アスペクト比0.9以上かつ円筒度0.8以上、アスペクト比0.9以上かつ円筒度0.9以上、がよりいっそう好ましい。
また、前記最大内接円の半径と最小外接円の半径は、前記円筒度を満たすような範囲であればよく、最大内接円の半径は、好ましくは10~25mmである。最小外接円の半径は、好ましくは15~30mmである。
【0012】
(外皮となるチーズ)
本発明における外皮となるチーズは、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード又は乳主原であればよく、弾力性のあるナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード又は乳主原が望ましい(以下、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード、乳主原をまとめてチーズ等ということがある)。弾力性のあるチーズ等としては、原料チーズを混錬して得られるナチュラルチーズ、原料チーズを乳化して得られるプロセスチーズ、チーズフード又は乳主原が挙げられる。「乳主原」とは、乳等を主要原料とする食品のことであり、本願発明で外皮として用いられる乳主原としては、このうち多糖類、澱粉など一般にチーズ製品の副原料として使用される素材を含んだものが挙げられる。
これらは1種類で用いてもよく、また2種以上の組み合わせであってもよい。原料チーズとしては、モッツァレラチーズ、カチョカバロチーズ、スカモルツァチーズ、プロバローネチーズ、ストリングチーズなどが挙げられるがこれらに限定されない。また、原料として用いられるナチュラルチーズの熟度は低熟度のものが望ましい。低熟度であれば混錬後に弾力性と糸引き性が強く出るため、包餡に有利であるからである。
低熟度のナチュラルチーズとは、一般的には、熟度25質量%以下の原料チーズであり、全窒素含有量に対して、pH4.4に調整した水溶液への可溶性窒素含量の割合(水溶性窒素に対する全窒素の割合)が25質量%以下であるチーズをいう。
原料チーズの混錬・乳化は、チーズの混錬に用いられる汎用機により行えばよく、例えばケトル型乳化機、ステファン型乳化機、混錬機などが挙げられる。このうちでもケトル型乳化機又は混錬機が望ましい。
外皮の厚みとしては、中身となるチーズを包餡機で包餡でき、輸送の振動にも耐え、かつ、食べたときの食感が好ましい範囲であればよく、好ましくは1.5mm~5mmの範囲であり、さらに好ましくは1.5~3mmである。
【0013】
(包餡される食品(中身))
包餡される中身となる食品は、外皮となるチーズ等で包餡できるものであればいずれでもよく限定されない。食品のうちでも外皮とは別の食感となるチーズ等を使用することにより、外皮と中身の食感の違いを楽しめるナチュラルチーズを提供することができる。中身となるチーズとしては、クリームチーズ、フレッシュチーズ、硬質ナチュラルチーズ、半硬質ナチュラルチーズ、軟質ナチュラルチーズ、カビ熟成型ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード、乳主原がある。乳主原としては、一般にチーズ製品の副原料として使用される素材であればよく、「植物油脂」「増粘多糖類」「澱粉」「香料」「チーズパウダー」などが例として挙げられるが、この限りではない。外皮と中身の具体的な組み合わせとして例えばモッツアレラチーズを外皮とし、外皮と同じモッツアレラチーズをステファン式乳化機で攪拌し「さけるチーズ」を作製し、これに生クリームなどを配合して得られるチーズを中身として組み合わせることも望ましい。例えば、ブッラータに代表されるようなモッツアレラを外皮とし、モッツアレラ製造時の端切れなどにクリームを混ぜたものを中身とすることでモッツアレラの有効利用も兼ねた包餡チーズの製造を行うこともできる。このような組み合わせの包餡チーズは、食したときにしっかりとした外皮とトロッとした中身の異なる食感を味わうことができる。
また、チーズ以外に中身となる食品としては、例えば、ヨーグルトなどの発酵乳、クリーム、バター、マーガリン、畜肉類、肉加工品、野菜、魚介類、水産加工品、果実、香辛料、糖蜜、ジャム、ソース、プレパレーション、フィリング、卵加工品、大豆加工品、調味料、スープ、プリン、ゼリー、栄養食品、サプリメントなども挙げることができる。
【0014】
(製造方法、包餡装置)
本発明の包餡チーズは、例えば、以下の工程(1)~(3)を含む製造工程により製造することができる。
(1)外皮となるチーズで食品を包餡する工程
(2)包餡後の包餡チーズを凹状の型に載置する工程
(3)前記型に載置された包餡チーズを冷却水中に浸漬する工程
(1)の工程は、弾力性のあるチーズを外皮として、食品を包餡する工程であり、典型的には包餡機(包餡装置ともいう)を使って連続的に包餡される。(2)及び(3)の工程は本発明の製造方法の特徴となる工程であり、本工程に使用される装置構成としては種々のものが考えられる。
【0015】
包餡機は食品に汎用される包餡機であれば特に限定されないが、弾力性があるチーズを加温して定量的かつ連続的に食品を包餡できる装置であればいずれでもよい。
ここで、弾力性があるチーズを加温して定量的かつ連続的に食品を包餡できる装置としては、少なくとも以下の(i)~(iii)の手段を含む装置が挙げられる。
さらに本発明の特徴となる上記工程(2)及び(3)の工程の実施には(iv)~(vi)の手段を含む装置が使用される。
(i)外皮となるチーズを供給する手段
(ii)包餡される食品を供給する手段
(iii)外皮で前記食品を包餡する手段
(iv)型を提供する手段
(v)包餡後の包餡チーズを型に排出する手段
(vi)型を移動させる手段
【0016】
(iv)~(vi)は連続的に型を提供して、包餡機から排出される包餡チーズを型で受け取り、その後、包餡チーズを水中へと移動させる構成であり、例えば包餡機に付随する搬送ベルトが好適に用いられる。すなわち、包餡機から包餡チーズが出てくる位置に搬送ベルトで型を運び、包餡チーズを搬送ベルト上の型(容器)で受け取り、そのまま移動して、包餡チーズを冷水へと誘導し、包餡チーズを水中に浸漬する構成が挙げられる。搬送ベルトが冷水を通過してもよいし、搬送ベルトを傾けたり、型を反転させるなどして、包餡チーズのみを冷水中に排出し浸漬させてもよい。包餡チーズが入った型を載せた搬送ベルトが冷水を通過する場合は、包餡チーズは型ごと冷却されることになり、搬送ベルトを傾けたり、型を反転させるなどして包餡チーズを型から冷却水中に排出する場合は、包餡チーズのみが冷却されることになる。また、型を反転させる場合は、型の反転手段が必要になる。包餡チーズの形状を維持し、綴じ目の硬さを実現できればいずれでもよい。ここで綴じ目の硬さを実現するとは外皮の綴じた部分がしっかりと接着しており、中身が外に漏れださない程度の強さを有することを言う。
【0017】
(i)~(vi)は1つの装置が備えてもよいし、(i)~(iii)を備える装置と(iv)~(vi)を備える装置は別個の装置であってもよい。すなわち、包餡されたチーズを包餡装置から排出するところまでは1台の装置で、排出された包餡チーズを受け取るための型を提供し、型で受け取り、その後移動して包餡チーズを冷却水に排出するまでを2台目の装置で行う場合である。典型的には、包餡機に付随する搬送ベルトを利用することができる。
これらの一連の工程は、定量的かつ連続的に行われる装置(あるいは装置セット)であることが望ましい。
【0018】
本発明において、弾力性があるチーズ等を外皮として食品を包餡する場合の外皮となるチーズの温度は、外皮となるチーズ等を包餡機に供給して実際に中身を包餡できる状態に加温されていればよい。
【0019】
包餡チーズを受け取る型は、包餡チーズの形状を維持できる大きさ及び形であればよく、包餡チーズとほぼ同等かあるいは少し大きめの凹状の型であればよく、好ましくは略半球状である。材質は、包餡チーズが内表面に接着せずに抜き取りやすい材質であればよく、ABS樹脂、テフロン(登録商標)又はステンレスなどが挙げられる。
【0020】
包餡チーズを冷却する冷水の温度は、包餡チーズより低い温度で、包餡直後の形状を維持できる温度であればよく、30℃以下が好ましく、さらに好ましくは20℃以下であり、よりいっそう好ましくは10℃以下である。好ましい温度範囲としては0℃以上30℃以下であり、さらに好ましくは0℃以上20℃以下であり、よりいっそう好ましくは0℃~10℃である。
包餡チーズは、包餡後できるだけ短時間でその形状を維持したまま冷却されることが望ましく、包餡後、包餡チーズが型に載置されてから冷水に浸漬されるまでの時間は、具体的には10秒以内が好ましく、さらに好ましくは5秒以内である。
以下に本発明を実施例をもってより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0021】
[実施例1]
(1)外皮となる弾力性のあるナチュラルチーズの調整
モツァレラチーズ 5.0kgと、水 0.5kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで1分間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで4分間攪拌して、外皮となる弾力性のあるナチュラルチーズを得た。
【0022】
(2)包餡される中身(チーズ)の調整
上記(1)と同様の方法で弾力性のあるナチュラルチーズ2.5kgを作製し、これをステファン式乳化釜に投入して1,500rpmで2分間攪拌して、割かれた状態の弾力性のあるナチュラルチーズを得た。割かれた状態の弾力性のあるナチュラルチーズを脂肪率47%の生クリーム2.5kgと混合し、冷蔵庫にて一昼夜以上静置させて包餡チーズの中身を作製した。
【0023】
(3)包餡工程
上記(1)で得られた外皮となる弾力性のあるナチュラルチーズ5.0kgと、上記(2)で得られた中身となるチーズ5.0kgを包餡機(株式会社コバード製)に投入し、1個あたりの重量が35g、外皮と中身の重量比が1:1となるように条件を設定した。包餡機から供給(排出)される包餡チーズを、包餡機に付随している搬送ベルト上に載置した直径60mmの半球状の容器(ABS樹脂製)で受けとめ、その後容器を反転させて、5℃の冷却水中に包餡チーズを排出し、内部と外部で食感の異なる2層の包餡チーズを得た。容器に受け止めてから冷却水中に排出させるまでの時間は4秒であった。
【0024】
(4)アスペクト比及び円筒度の測定
包餡チーズを水平な平面に置き、該平面に対して垂直な面(つまり側面)の画像を取得した(
図1B)。次に、当該画像から包餡チーズに外接する長方形を描画し、当該長方形の短辺、長辺、アスペクト比を求めた。
また、
図1Bの画像から最大内接円と最小外接円を描画し、最大内接円の半径、最小外接円の半径、円筒度を求めた。
各実施例及び各比較例の包餡チーズの側面の画像及び各測定結果を表1及び
図2に示す。なお、包餡チーズの外皮の厚みは、1.5~5mmの範囲であった(以下実施例品について同じ)。
【0025】
【0026】
[実施例2]
(1)外皮となる弾力性のあるナチュラルチーズの調整
モツァレラチーズ 5.0kgと、水 0.5kgを混錬機に投入し、前進と後進を繰り返して混錬させて、直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させて、外皮となる弾力性のあるナチュラルチーズを得た。
【0027】
(2)包餡される中身(チーズ)の調整
上記(1)と同様の方法で弾力性のあるナチュラルチーズ2.5kgを作製し、これをステファン式乳化釜に投入して1,500rpmで2分間攪拌して、割かれた状態の弾力性のあるナチュラルチーズを得た。割かれた状態の弾力性のあるナチュラルチーズを脂肪率47%の生クリーム2.5kgと混合し、冷蔵庫にて一昼夜以上静置させて包餡チーズの中身を作製した。
【0028】
(3)包餡工程
容器で包餡チーズを受け止めてから冷却水に排出させるまでの時間を3秒としたこと以外は実施例の(3)と同様に行った。
【0029】
[実施例3]
(1)外皮となる弾力性のあるプロセスチーズの調整
モツァレラチーズ5.0kg、クエン酸ナトリウム0.025kgと、水 0.5kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで1分間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで4分間攪拌して、外皮となる弾力性のあるプロセスチーズを得た。
【0030】
(2)包餡されるチーズの調整
クリームチーズ5.0kg、乳化剤 JOHA Cnew 0.040kg、バター0.80kg、水 0.05kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで30秒間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで30秒間攪拌して包餡チーズの中身を作製した。
【0031】
(3)包餡工程
容器で包餡チーズを受け止めてから冷却水に排出させるまでの時間を2秒としたこと以外は実施例1の(3)と同様に行った。
【0032】
[実施例4]
(1)外皮となる弾力性のあるチーズの調整
モツァレラチーズ 5.0kg、クエン酸ナトリウム 0.025kgと、水 0.5kgを混錬機に投入し、前進と後進を繰り返して混錬させて、直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させて、外皮となる弾力性のあるプロセスチーズを得た。
【0033】
(2)包餡されるチーズの調整
クリームチーズ 5.0kg、乳化剤 JOHA Cnew 0.040kg、バター 0.80kg、水 0.05kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで30秒間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで30秒間攪拌して包餡チーズの中身を作製した。
【0034】
(3)包餡工程
容器で包餡チーズを受け止めてから冷却水に排出させるまでの時間を2秒としたこと以外は実施例1の(3)と同様に行った。
【0035】
[実施例5]
(1)外皮となる弾力性のあるプロセスチーズの調整
モツァレラチーズ5.0kg、クエン酸ナトリウム 0.025kgと、増粘多糖類0.020kg、水 0.5kgを混錬機に投入し、前進と後進を繰り返して混錬させて、直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させて、外皮となる弾力性のあるプロセスチーズを得た。
【0036】
(2)包餡されるチーズの調整
クリームチーズ5.0kg、乳化剤 JOHA Cnew 0.040kg、バター0.80kg、水 0.05kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで30秒間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで30秒間攪拌して包餡チーズの中身を作製した。
【0037】
(3)包餡工程
容器で包餡チーズを受け止めてから冷却水に排出させるまでの時間を5秒としたこと以外は実施例1の(3)と同様に行った。
【0038】
[実施例6]
(1)外皮となる弾力性のあるプロセスチーズの調整
モツァレラチーズ 5.0kg、クエン酸ナトリウム0.025kgと、増粘多糖類0.020kg、水 0.5kgを混錬機に投入し、前進と後進を繰り返して混錬させて、直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させて、外皮となる弾力性のあるプロセスチーズを得た。
【0039】
(2)包餡される中身(チーズ)の調整
クリームチーズ5.0kg、乳化剤 JOHA Cnew 0.040kg、バター0.80kg、水0.05kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで30秒間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで30秒間攪拌して包餡チーズの中身を作製した。
【0040】
(3)包餡工程
冷却水の温度を20℃、容器で包餡チーズを受け止めてから冷却水に排出させるまでの時間を3秒としたこと以外は実施例1の(3)と同様に行った。
【0041】
[実施例7]
(1)外皮となる弾力性のあるプロセスチーズの調整
モツァレラチーズ 5.0kg、クエン酸ナトリウム0.025kgと、増粘多糖類0.020kg、水0.5kgを混錬機に投入し、前進と後進を繰り返して混錬させて、直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させて、外皮となる弾力性のあるプロセスチーズを得た。
【0042】
(2)包餡されるチーズ(中身)の調整
上記クリームチーズ5.0kg、乳化剤 JOHA Cnew 0.040kg、バター0.80kg、水0.05kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで30秒間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで30秒間攪拌して包餡チーズの中身を作製した。
【0043】
(3)包餡工程
冷却水の温度を30℃としたこと以外は実施例1の(3)と同様に行った。
【0044】
[比較例1]
(1)外皮となる弾力性のあるナチュラルチーズの調整
モツァレラチーズ5.0kgと、水0.5kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで1分間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで4分間攪拌して、外皮となる弾力性のあるナチュラルチーズを得た。
【0045】
(2)包餡されるチーズ(中身)の調整
上記(1)と同様の方法で弾力性のあるナチュラルチーズ2.5kgを作製し、これをステファン式乳化釜に投入して1,500rpmで2分間攪拌して、割かれた状態の弾力性のあるナチュラルチーズを得た。割かれた状態の弾力性のあるナチュラルチーズを脂肪率47%の生クリーム2.5kgと混合し、冷蔵庫にて一昼夜以上静置させて包餡チーズの中身を作製した。
【0046】
(3)包餡工程
上記(1)で得られた外皮となる弾力のあるナチュラルチーズ5.0kgと、上記(2)で得られた中身5.0kgを包餡機(株式会社コバード製)に投入し、1個あたりの重量が35g、外皮と中身の重量比が1:1となるように条件を設定した。包餡機から供給(排出)される包餡チーズを包餡機に付随している搬送ベルトで一度受け止め、搬送ベルト出口まで搬送後、冷却水に排出して2層の包餡物を得た。冷却水の温度は5℃、冷却水に排出させるまでの時間は15秒であった。
【0047】
[比較例2]
(1)外皮となる弾力性のあるナチュラルチーズの調整
モツァレラチーズ 5.0kgと、水 0.5kgを混錬機に投入し、前進と後進を繰り返して混錬させて、直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させて、外皮となる弾力性のあるナチュラルチーズを得た。
【0048】
(2)包餡されるチーズ(中身)の調整
上記(1)と同様の方法で弾力性のあるナチュラルチーズ 2.5kgを作製し、これをステファン式乳化釜に投入して1,500rpmで2分間攪拌して、割かれた状態の弾力性のあるナチュラルチーズを得た。割かれた状態の弾力性のあるナチュラルチーズを脂肪率47%の生クリーム2.5kgと混合し、冷蔵庫にて一昼夜以上静置させて包餡チーズの中身を作製した。
【0049】
(3)包餡工程
冷却水の温度を5℃、冷却水に排出させるまでの時間を20秒としたこと以外は比較例1の(3)と同様に行った。
【0050】
[比較例3]
(1)外皮となる弾力性のあるプロセスチーズの調整
モツァレラチーズ 5.0kg、クエン酸ナトリウム 0.025kgと、水 0.5kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで1分間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで4分間攪拌して、外皮となる弾力性のあるプロセスチーズを得た。
【0051】
(2)包餡されるチーズ(中身)の調整
クリームチーズ 5.0kg、乳化剤 JOHA Cnew 0.040kg、バター 0.80kg、水 0.05kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで30秒間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで30秒間攪拌して包餡チーズの中身を作製した。
【0052】
(3)包餡工程
冷却水の温度は5℃、冷却水に排出させるまでの時間を20秒としたこと以外は比較例1の(3)と同様に行った。
【0053】
[比較例4]
(1)外皮となる弾力性のあるプロセスチーズの調整
モツァレラチーズ 5.0kg、クエン酸ナトリウム 0.025kgと、水 0.5kgを混錬機に投入し、前進と後進を繰り返して混錬させて、直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させて、外皮となる弾力性のあるプロセスチーズを得た。
【0054】
(2)包餡されるチーズ(中身)の調整
クリームチーズ 5.0kg、乳化剤 JOHA Cnew 0.040kg、バター 0.80kg、水 0.05kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで30秒間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで30秒間攪拌して包餡チーズの中身を作製した。
【0055】
(3)包餡工程
冷却水の温度を5℃、冷却水に排出させるまでの時間を15秒としたこと以外は比較例1の(3)と同様に行った。
【0056】
[比較例5]
(1)外皮となる弾力性のあるプロセスチーズの調整
モツァレラチーズ 5.0kg、クエン酸ナトリウム 0.025kgと、水 0.5kgを混錬機に投入し、前進と後進を繰り返して混錬させて、直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させて、外皮となる弾力性のあるプロセスチーズを得た。
【0057】
(2)包餡されるチーズ(中身)の調整
クリームチーズ 5.0kg、乳化剤 JOHA Cnew 0.040kg、バター 0.80kg、水 0.05kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで30秒間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで30秒間攪拌して包餡チーズの中身を作製した。
【0058】
(3)包餡工程
冷却水の温度を8℃、容器に包餡チーズを受け止めてから冷却水に排出させるまでの時間を20秒としたこと以外は実施例1の(3)と同様に行った。
【0059】
[比較例6]
(1)外皮となる弾力性のあるプロセスチーズの調整
モツァレラチーズ 5.0kg、クエン酸ナトリウム 0.025kgと、水 0.5kgを混錬機に投入し、前進と後進を繰り返して混錬させて、直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させて、外皮となる弾力性のあるプロセスチーズを得た。
【0060】
(2)包餡されるチーズ(中身)の調整
クリームチーズ 5.0kg、乳化剤 JOHA Cnew 0.040kg、バター 0.80kg、水 0.05kgをケトル型乳化機に投入し、150rpmで30秒間攪拌し、150rpmで直接蒸気と間接蒸気を投入して80℃に達温させ、150rpmで30秒間攪拌して包餡チーズの中身を作製した。
【0061】
(3)包餡工程
冷却水の温度を40℃、冷却水に排出させるまでの時間を2秒としたこと以外は比較例1と同様に行った。
本発明によれば、ナチュラルチーズ又はプロセスチーズからなる外皮で包餡した重さ10g以上70g未満の包餡チーズにおいて、側面から見た断面形状が大福餅様の形状の包餡チーズを提供することができる。したがって、嗜好性が高く手ごろな大きさの包餡チーズを提供することができる。