(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127253
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】非晶質粉末およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 3/253 20060101AFI20240912BHJP
C03C 12/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C03C3/253
C03C12/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036282
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】藤田 英史
(72)【発明者】
【氏名】道幸 明久
(72)【発明者】
【氏名】田上 幸治
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA10
4G062BB10
4G062DA01
4G062DB02
4G062DB03
4G062DC01
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4G062MM23
4G062NN25
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4G062NN33
4G062NN34
(57)【要約】
【課題】焼成操作による結晶化によって、緻密な焼結体を製造することができる、非晶質粉末およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
リチウムを1.0質量%以上4.0質量%以下、アルミニウムを0.5質量%以上6.0質量%以下、ゲルマニウムを15質量%以上35質量%以下、リンを10質量%以上30質量%以下含有し、残部が酸素および不可避不純物であり、TG-DTA測定による結晶化温度が、620℃以上650℃以下である非晶質粉末を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムを1.0質量%以上4.0質量%以下、
アルミニウムを0.5質量%以上6.0質量%以下、
ゲルマニウムを15質量%以上35質量%以下、
リンを10質量%以上30質量%以下含有し、
残部が酸素および不可避不純物であり、
TG-DTA測定による結晶化温度が、620℃以上650℃以下である非晶質粉末。
【請求項2】
リチウムを1.0質量%以上4.0質量%以下、
アルミニウムを0.5質量%以上6.0質量%以下、
ゲルマニウムを15質量%以上35質量%以下、
リンを10質量%以上30質量%以下含有し、
残部が酸素および不可避不純物であり、
TG-DTA測定によるDTAの最大ピーク値であるDTAmax(μV)、DTAのベースラインとなる値であるDB(μV)、測定試料質量S(mg)により、下記式(1)から算出される発熱量(μV/mg)が、2μV/mg以上10μV/mg以下である非晶質粉末。
発熱量(μV/mg)=(DTAmax(μV)-DB(μV))/S(mg)・・・式(1)
【請求項3】
TMA測定による700℃の体積変化が、-25%以上-40%以下である、請求項1または2に記載の非晶質粉末。
【請求項4】
前記非晶質粉末を700℃において焼結して得た焼結体の密度が、2.40g/cm3以上3.40g/cm3以下である、請求項1または2に記載の非晶質粉末。
【請求項5】
前記非晶質粉末に含まれる粒子のアスペクト比(短径/長径)が、0.6以上1.0以下である、請求項1または2に記載の非晶質粉末。
【請求項6】
チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、ホウ素およびガリウムからなる群から選ばれる1種以上の元素を、合計5質量%以下の範囲でさらに含有する、請求項1または2に記載の非晶質粉末。
【請求項7】
非晶質粉末の製造方法であって、
リチウム、アルミニウム、ゲルマニウム、リンを含む原料を溶融し、溶湯を得る工程と、
前記溶湯を冷却粉砕する工程とを有する、非晶質粉末の製造方法。
【請求項8】
前記冷却粉砕の冷却速度が、2.0×102K/sec以上1.0×105K/sec以下である、請求項7に記載の非晶質粉末の製造方法。
【請求項9】
前記冷却粉砕の冷却速度が、5.0×102K/sec以上5.0×104K/sec以下である、請求項7に記載の非晶質粉末の製造方法。
【請求項10】
前記溶湯を冷却粉砕する工程が、溶湯へアトマイズガスを噴射するものである、請求項7に記載の非晶質粉末の製造方法。
【請求項11】
前記溶湯を得る工程において、さらにチタン原料化合物、ジルコニウム原料化合物、ハフニウム原料化合物、ケイ素原料化合物、ホウ素原料化合物およびガリウム原料化合物からなる群から選ばれる1種以上の原料を溶融する、請求項7に記載の非晶質粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に使用される固体電解質の前駆体である非晶質粉末およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池の固体電解質の一例としてNASICON型結晶構造を有するリチウムイオン伝導体があり、その一つとして、リチウム、アルミニウム、ゲルマニウム、リンを含有し、一般式Li1+xAlxGe2-x(PO4)3(xの範囲は、0<x≦1)にて記載されるリチウムイオン伝導体(本発明において「LAGP」と記載する場合がある)が知られている。そして、全固体電池において固体電解質は、固体電解質粉末を焼結させた焼結体として用いられる。高いリチウム伝導性を得るには固体電解質粉末の焼結体が緻密であることが望まれている。
【0003】
特許文献1には、緻密なLAGP焼結体を得るために固相反応により製造した結晶質のLAGP粒子をCIP(冷間静水等方圧プレス)成形することにより成形体を作製し、当該成形体を熱処理して製造することが記載されている。
特許文献2には、非晶質のLAGP粒子を高アスペクト比の鱗片状形状に制御することで、緻密なLAGP焼結体を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5970284号
【特許文献2】特開2013-58376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、結晶質のLAGP粒子を用いて緻密なLAGP焼結体を得ているが、結晶質のLAGP粒子は非晶質のLAGP粒子に比較して硬いため、緻密なLAGP焼結体を得ることが難しい。そのために、特許文献1では、CIPによって結晶質のLAGP粒子へ高圧をかけることで成形体を作製し、当該成形体を熱処理することで、緻密なLAGP焼結体を得ている。しかし、この製造方法を工業的なプロセスとして用いることは生産性に課題があるため、非晶質の固体電解質粉末が求められている。
【0006】
一方、特許文献2では、高アスペクト比の鱗片状の非晶質LAGP粒子を使用している。一般的に鱗片状の粒子においては、体積に対する比表面積が大きくたるため、結晶化温度は低くなる。この結果、緻密なLAGP焼結体を得るのは、難しいものであった。
【0007】
本発明は、上述の状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、焼成操作による結晶化によって、緻密な焼結体を製造することができる、非晶質粉末およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、上述の課題を解決する第1の発明は、
リチウムを1.0質量%以上4.0質量%以下、
アルミニウムを0.5質量%以上6.0質量%以下、
ゲルマニウムを15質量%以上35質量%以下、
リンを10質量%以上30質量%以下含有し、
残部が酸素および不可避不純物であり、
TG-DTA測定による結晶化温度が、620℃以上650℃以下である非晶質粉末である。
第2の発明は、
リチウムを1.0質量%以上4.0質量%以下、
アルミニウムを0.5質量%以上6.0質量%以下、
ゲルマニウムを15質量%以上35質量%以下、
リンを10質量%以上30質量%以下含有し、
残部が酸素および不可避不純物であり、
TG-DTA測定によるDTAの最大ピーク値であるDTAmax(μV)、DTAのベースラインとなる値であるDB(μV)、測定試料質量S(mg)により、下記式(1)から算出される発熱量(μV/mg)が、2μV/mg以上10μV/mg以下である非晶質粉末である。
発熱量(μV/mg)=(DTAmax(μV)-DB(μV))/S(mg)・・・式(1)
第3の発明は、
TMA測定による700℃の体積変化が、-25%以上-40%以下である、第1または第2の発明に記載の非晶質粉末である。
第4の発明は、
前記非晶質粉末を700℃において焼結して得た焼結体の密度が、2.40g/cm3以上3.40g/cm3以下である、第1または第2の発明に記載の非晶質粉末である。
第5の発明は、
前記非晶質粉末に含まれる粒子のアスペクト比(短径/長径)が、0.6以上1.0以下である、第1または第2の発明に記載の非晶質粉末である。
第6の発明は、
チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、ホウ素およびガリウムからなる群から選ばれる1種以上の元素を、合計5質量%以下の範囲でさらに含有する、第1または第2の発明に記載の非晶質粉末である。
第7の発明は、
非晶質粉末の製造方法であって、
リチウム、アルミニウム、ゲルマニウム、リンを含む原料を溶融し、溶湯を得る工程と、
前記溶湯を冷却粉砕する工程とを有する、非晶質粉末の製造方法である。
第8の発明は、
前記冷却粉砕の冷却速度が、2.0×102K/sec以上1.0×105K/sec以下である、第7の発明に記載の非晶質粉末の製造方法である。
第9の発明は、
前記冷却粉砕の冷却速度が、5.0×102K/sec以上5.0×104K/sec以下である、第7の発明に記載の非晶質粉末の製造方法である。
第10の発明は、
前記溶湯を冷却粉砕する工程が、溶湯へアトマイズガスを噴射するものである、第7の発明に記載の非晶質粉末の製造方法である。
第11の発明は、
前記溶湯を得る工程において、さらにチタン原料化合物、ジルコニウム原料化合物、ハフニウム原料化合物、ケイ素原料化合物、ホウ素原料化合物およびガリウム原料化合物からなる群から選ばれる1種以上の原料を溶融する、第7の発明に記載の非晶質粉末の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る非晶質粉末を用いた焼成操作による結晶化によって緻密なLAGP焼結体を製造することができるため、LAGP焼結体のイオン伝導度の向上を図ることができる。そのため、全固体電池の固体電解質層を形成する固体電解質として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る非晶質粉末の製造フローである。
【
図2】本発明に係る非晶質粉末を製造するためのアトマイズ装置の模式的な断面図である。
【
図3】実施例1に係る非晶質粉末と、当該非晶質粉末700℃で2時間焼成した粉末とのXRDスペクトルである。
【
図4】実施例1に係る非晶質粉末のTG-DTA測定結果を示すグラフである。
【
図5】
図4に示すTG-DTA測定結果を得る際、0.5秒間隔でサンプリングしたDTA(μm)値の差であるΔDTA(μV)の値を縦軸とし、温度を横軸としたグラフである。
【
図7】
図4へ、ベースライン温度の値を当て嵌めたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。尚、本明細書においては、個々の「粒子」が「粉末」を構成し、「粉末」は「粒子」の集合を指すものとする。以下の説明においては原則として、粉末を構成する個々のものに着目している場合は「粒子」という言葉を、粒子の集合という全体に着目している場合は、「粉末」または「粒子の粉末」という言葉を使用する。
【0012】
1.本発明に係る非晶質粉末
本発明に係る非晶質粉末は、所定量のリチウム、アルミニウム、ゲルマニウム、リンを含む非晶質粒子で構成される非晶質粉末である。本発明に係る非晶質粉末は、焼結体となる際に、固体電解質を形成する前駆体粉末である。即ち、焼結体となる際に結晶化することで、NASICON型結晶構造を有する固体電解質を形成する前駆体粉末である。そして、NASICON型結晶構造を有する固体電解質は高いイオン伝導度を発現するため、全固体電池の固体電解質として用いることができる。ここで、固体電解質とは、外部から加えられた電場によってイオン(帯電した物質)を移動させることができる固体のことである。
【0013】
本発明に係る非晶質粉末は、その結晶化温度が一定の範囲内であることにより、非晶質粉末を用いた焼成操作による結晶化によって、緻密なLAGP焼結体を製造することができる。また、本発明の非晶質粉末は、TG-DTA測定による発熱量が一定の範囲内であることにより、非晶質粉末を用いた焼成操作による結晶化によって、緻密なLAGP焼結体を製造することができる。
本発明に係る非晶質粉末は、構成元素としてリチウム、アルミニウム、ゲルマニウム、リン含有し、所望に応じて、その他の元素を含有し、残部が酸素および不可避不純物である。以下、各構成元素の効果と含有割合について、(1)リチウム、(2)アルミニウム、(3)ゲルマニウム、(4)リン、(5)その他の元素、(6)酸素、(7)不可避不純物、の順で説明する。
【0014】
(1)リチウム
リチウムは、非晶質粉末を結晶化させたときに、NASICON型結晶構造の形成に寄与する元素である。本発明に係る非晶質粉末には、リチウムが1.0質量%以上4.0質量%以下含有されている。リチウムの含有量は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは1.8質量%以上である。一方、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3.3質量%以下である。
【0015】
(2)アルミニウム
アルミニウムは、非晶質粉末を結晶化させたときに、NASICON型結晶構造の形成に寄与する元素である。本発明に係る非晶質粉末には、アルミニウムが0.5質量%以上6.0質量%以下含有されている。アルミニウムの含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上である。一方、好ましくは5.5質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。
【0016】
(3)ゲルマニウム
ゲルマニウムは、非晶質粉末において非晶質の形成に寄与するとともに、非晶質粉末を
結晶化させたときに、NASICON型結晶構造の形成に寄与する元素である。本発明に係る非晶質粉末には、ゲルマニウムが15質量%以上35質量%以下含有されている。ゲルマニウムの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは22質量%以上、さらに好ましくは23.5質量%以上である。一方、好ましくは33質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0017】
(4)リン
リンは、非晶質粉末において非晶質の形成に寄与するとともに、非晶質粉末を結晶化させたときに、NASICON型結晶構造の形成に寄与する元素である。本発明に係る非晶質粉末には、リンが10質量%以上30質量%以下含有されている。リンの含有量は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。一方、好ましくは28質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0018】
(5)その他の元素
本発明に係る非晶質粉末が結晶化する際、NASICON型結晶構造を形成するのであれば、上述したリチウム、アルミニウム、ゲルマニウムおよびリン以外のその他の元素を含んでもよい。その他の元素としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、ホウ素およびガリウムからなる群から選ばれる1種以上の元素を含んでもよい。当該その他の元素の合計の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
(6)酸素
本発明に係る非晶質粉末に含まれる酸素含有量は、(100質量%-酸素以外の各構成元素の質量%の合計値)で求めることができる。非晶質の固体電解質前駆体粉末に含まれる酸素含有量は、40質量%以上55質量%以下であることが好ましい。
【0020】
(7)不可避不純物
本発明に係る非晶質粉末には、本発明の効果を損なわない範囲で、リチウム、アルミニウム、ゲルマニウム、リン、酸素、さらに、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、ホウ素およびガリウム以外の元素を、不可避不純物元素として含有していてもよい。不可避不純物元素の合計は、好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0021】
本発明に係る非晶質粉末は、非晶質粉末を構成する各成分の偏析を回避し、且つ、非晶質度を高めるために、リチウム、アルミニウム、ゲルマニウム、リンを含む各原料を溶融した溶湯を調製し、これを冷却・粉砕することにより得られる。その結果、本発明に係る非晶質粉末として、従来の技術に係る非晶質のLAGP粒子よりも、結晶化温度が高い非晶質LAGP粒子で構成される非晶質粉末を得ることができる。
本発明に係る非晶質粉末は、高い結晶化温度を有することにより高温で急激な収縮が起こり、高い相対密度を有する緻密な焼結体を得ることができるため、焼結体のイオン伝導度が向上するものである。
本発明の非晶質粉末は、当該非晶質粉末を粉末X線回折(XRD)測定したときに、2θ:10°~40°の領域でハローが観察されるものである。尚、ハローとは、明瞭なピークを示さず、X線の強度の緩やかな起伏であって、X線チャートにおいてブロードな盛り上がりとして観察されるものである。そして、ハローの半値幅は2θ:2°以上である。
【0022】
本発明の非晶質粉末は、TG-DTA測定による結晶化温度が、620℃以上650℃以下であり、緻密な焼結体を得ることができる。尚、本発明において結晶化温度とは、非晶質粉末のTG-DTA測定で得られたDTA曲線の発熱ピーク値が、最大値なる時の温度とする。
また、本発明の非晶質粉末は、TG-DTA測定による発熱量が、2μV/mg以上10μV/mg以下であって、緻密な焼結体を得ることができる。尚、本発明において発熱量は、TG-DTA測定によるDTAの最大ピーク値であるDTAmax(μV)、DTAのベースラインとなる値であるDB(μV)、測定試料質量S(mg)により、下記式(1)から算出される。
発熱量(μV/mg)=(DTAmax(μV)-DB(μV))/S(mg)・・・式(1)
尚、本発明の非晶質粉末に対するTG-DTA測定の測定方法については、実施例1にて説明する。
【0023】
本発明の非晶質粉末は、熱機械分析(TMA)測定した場合における700℃の体積変化率が、-25%以上-40%以下であることが好ましい。
本発明の非晶質粉末は、当該非晶質粉末を700℃において焼結して得た焼結体の密度が、2.40g/cm3以上3.40g/cm3以下であることが好ましい。焼結体の密度を、2.40g/cm3以上3.40g/cm3以下にすることでより、高いイオン伝導度を得られるため好ましい。
本発明の非晶質粉末は、非晶質粉末に含まれる粒子のアスペクト比(短径/長径)が、0.6以上1.0以下であることが好ましい。
本発明の非晶質粉末の平均粒子径は、100μm以下にすることが好ましい。より好ましくは平均粒子径を10μm以下、さらに好ましくは5μm以下とする。本発明の非晶質粉末の平均粒子径は、0.1μm以上にすることが好ましい。より好ましくは平均粒子径を0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上とする。
【0024】
本発明の非晶質粉末に対するTMA測定の測定方法については、実施例1にて説明する。
【0025】
2.本発明に係る非晶質粉末の製造方法
本発明に係る非晶質粉末の製造方法について、
図1に示す本発明に係る非晶質粉末の製造フローを参照しながら説明する。
【0026】
(1)原料化合物の混合
リチウム原料化合物としては、酸化リチウム、過酸化リチウムなどの酸化物、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウム、等のリチウム塩を好ましく用いることができる。
アルミニウム原料化合物としては、酸化アルミニウムなどの酸化物、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、フッ化アルミニウム、等のアルミニウム塩を好ましく用いることができる。
ゲルマニウム原料化合物としては、一酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウムどの酸化物および塩化ゲルマニウム、臭化ゲルマニウム、等のゲルマニウム塩を好ましく用いることができる。
リン原料化合物としては、五酸化二リンなどの酸化物、リン酸二水素アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸リチウムなどのリン酸塩、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸などのオキソ酸を好ましく用いることができる。
ガリウム原料化合物としては、酸化ガリウムなどの酸化物、水酸化ガリウム、硝酸ガリウム、硫酸ガリウム、塩化ガリウム等のガリウム塩を好ましく用いることができる。
チタン原料化合物としては、二酸化チタンなどの酸化物、水酸化チタン、オキシ硫酸チタン、塩化チタン等のチタン塩を好ましく用いることができる。
ホウ素原料化合物としては、酸化ホウ素などの酸化物、ホウ酸、メタホウ酸などのオキソ酸を好ましく用いることができる。
ケイ素原料化合物としては、二酸化ケイ素などの酸化物、オルトケイ酸、メタケイ酸などのオキソ酸を好ましく用いることができる。
ジルコニウム化合物としては、酸化ジルコニウムなどの酸化物、水酸化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム等のジルコニウム塩を好ましく用いることができる。
ハフニウム原料化合物としては、酸化ハフニウムなどの酸化物、水酸化ハフニウム、オキシ塩化ハフニウム等のハフニウム塩を好ましく用いることができる。
【0027】
上述したリチウム原料化合物、アルミニウム原料化合物、ゲルマニウム原料化合物およびリン原料化合物、さらに所望によりチタン原料化合物、ジルコニウム原料化合物、ハフニウム原料化合物、ケイ素原料化合物、ホウ素原料化合物およびガリウム原料化合物からなる群から選ばれる1種以上の原料を、所望のLAGP焼結体の組成における、リチウム、アルミニウム、ゲルマニウムおよびリンの各モル比に合わせて各々秤量し、混合して混合物を得る。このとき、混合方法は、均質な混合物を得ることができる方法であれば通常に用いる手段にて可能であり、容器回転型混合装置、容器固定型混合装置、流体運動型混合装置など、既知の方法を用いればよい。均質な混合物とすることで、後述する溶湯作製において、均一な溶湯を得ることができ好ましい。
尚、リチウムについては溶湯作製時に揮発して狙いに対し組成ズレする可能性がある。そこで、狙いのリチウム組成に対しリチウム原料化合物を、1.0倍を超え1.1倍以下程度、過剰に仕込むことが望ましい。
【0028】
(2)溶湯作製
図2は、本発明に係る非晶質粉末を製造するためのアトマイズ装置の模式的な断面図である。
以下、
図2を参照しながら「(2)溶湯作製、(3)出湯、(4)冷却粉砕」について説明する。
上述した「(1)原料化合物の混合」で得られた混合粉末を、アトマイズ装置の電気炉10に設けられたるつぼ12内へ投入する。そして電気炉ヒーター11により、るつぼ12を1200℃以上1400以下に加熱して混合粉末を溶融し溶湯13を得る。
【0029】
(3)出湯
混合粉末が溶湯13となった後、るつぼ12の下部に設けられたノズル(溶湯供給部)14を開通しノズル14の先端から、溶湯13を垂下出湯させる。出湯の量は、50g/hr以上、1000g/hr以下であることが好ましい。
【0030】
(4)冷却粉砕
出湯した溶湯17に、アトマイズガスをアトマイズガス噴射部16から噴射し、出湯した溶湯17を冷却粉砕して粒子18とし、チャンバ19内を降下させる。さらにサイクロン20内に吸引した後、サイクロン20内の回収部21にて、冷却粉砕した粉末22を回収する。この冷却粉砕して得られた粒子18は非晶質である。
【0031】
上述したアトマイズガスにより出湯した溶湯17を冷却粉砕する際、溶湯の冷却速度が2.0×102K/sec以上1.0×105K/sec以下となるように調整することで本発明の非晶質粉末のTG-DTA測定による結晶化温度、発熱量を高くすることができる。
溶湯の冷却速度は、5.0×102K/sec以上5.0×104K/sec以下が好ましく、さらに好ましくは1.0×103K/sec以上2.0×104K/sec以下である。
溶湯の冷却速度は、アトマイズガスのガス種、アトマイズガスの噴射圧力、アトマイズガスの流量によって調整することができる。
アトマイズガスは、大気、窒素、水素、ヘリウム、アルゴンを使用することが好ましい。これらガスは単独に限らず混合して使用してもよい。大気、窒素は、コストの観点から使用が好ましく、冷却速度の観点からは、水素、ヘリウムを使用することが好ましい。使用するアトマイズガスは、目的に応じて適宜選択すればよい。
アトマイズガス噴射部16からのアトマイズガス噴射圧力は、0.1MPa以上1.0MPa以下が好ましい。さらに、0.4MPa以上であると得られる粉末の粒子径が小さくなり好ましい。1.0MPa以下であると設備、装置の対応が容易である。
アトマイズガスの流量は、1.0Nm3/min以上10.0Nm3/min以下が好ましい。
【0032】
尚、出湯した溶湯17を急冷する際の冷却速度は、Al-4.5%Cu合金を用いたDAS法により求めることができる。冷却速度の求め方は、軽金属学会 研究委員会 鋳造・凝固部会 アルミニウムのデンドライトアームスペーシングと冷却速度の測定法(1988.8)を参照することができる。
具体的な測定方法は、実施例1にて説明する。
【0033】
(5)微粉砕
冷却粉砕によって得られた非晶質粉末は使用用途に応じて微粉砕を行ってもよい。微粉砕は、サイクロン20内の回収部21にて回収された、非晶質な粉末22を適宜な微粉砕手段により、所望の粒度に調製することができる。微粉砕により非晶質粉末の平均粒子径を100μm以下にすることが好ましい。より好ましくは平均粒子径を10μm以下、さらに好ましくは5μm以下とする。微粉砕により非晶質粉末の平均粒子径を0.1μm以上にすることが好ましい。より好ましくは平均粒子径を0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上とする。
微粉砕手段としては、ローラーミル、ジェットミル、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル)、容器駆動型ミル(回転ミル、振動ミル、遊星ミル)、媒体攪拌ミル(アトライター、ビーズミル)等が挙げられる。
【実施例0034】
以下、本発明について実施例を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
<非晶質粉末の作製>
リチウム原料化合物として、炭酸リチウム(富士フィルム和光純薬製)118gと、ゲルマニウム原料化合物として、二酸化ゲルマニウム(富士フィルム和光純薬製)314gと、アルミニウム原料化合物として、酸化アルミニウム(富士フィルム和光純薬製)51gと、リン原料化合物として、リン酸2水素アンモニウム(富士フィルム和光純薬製)692gと、を乳鉢にて混合し、混合物を底部にノズルが設置された白金坩堝へ投入し、1300℃で60分間保持することでリチウム、アルミニウム、ゲルマニウム、リンを含む原料混合物を溶融させて溶湯を作製した。
【0036】
溶湯を白金坩堝の底部に設置されたノズルから200g/hrの速度で出湯させた。
この出湯した溶湯へ、アトマイズガスとして大気を圧力0.2MPa、流量1.8Nm3/minで噴霧して、溶湯を冷却粉砕し、非晶質粉末を得た。大気の噴霧による溶湯の冷却粉砕した際の冷却速度は1.3×103K/secであった。
【0037】
得られた非晶質粉末を、日清エンジニアリングの旋回式ジェットミル(SJ-100)を用い、大気中にて粉砕圧0.6MPaで微粉砕して、実施例1に係る非晶質粉末を得た。
【0038】
ここで、大気の噴霧により溶湯を冷却粉砕した際の冷却速度の測定方法、得られた実施例の非晶質粉末の構成元素の組成分析方法、各種の物性値測定項目および測定方法について説明し、それらの条件と測定結果について表1に記載する。
【0039】
溶湯を冷却粉砕した際の冷却速度は、Al-4.5%Cu合金におけるデンドライト2次アーム間の距離を測定して、DASの大きさ(μm)と冷却速度(C)との関係式である式(2)から求めた。(詳細は、「軽金属学会 研究委員会 鋳造・凝固部会 アルミニウムのデンドライトアームスペーシングと冷却速度の測定法(1988.8)」を参照。)
【0040】
具体的には、所定量のアルミニウム粉末(富士フィルム和光純薬製)と銅粉末(富士フィルム和光純薬製)とを乳鉢にて混合した。得られた混合物を、底部にノズルが設置された白金坩堝へ投入し、原料混合物を溶融させてAl-4.5%Cuの溶湯を作製した。そして作製したAl-4.5%Cuの溶湯を、上述したリチウム、アルミニウム、ゲルマニウム、リンを含む原料混合物を溶融させた溶湯と同じ条件で、冷却粉砕した。得られたAl-4.5%Cu合金粒子で構成された微粉末28g、とアトルアス社製エポフィックスキット(硬化剤3g、樹脂25g)とを混合し、30mmφの円筒容器に流し込んで24時間放置し硬化させた。硬化したアルミニウム合金粒子を含む樹脂を円筒より抜出し、回転研磨機により耐水研磨紙、バフ研磨を実施して、アルミニウム合金粒子断面観察サンプルを作製した。
【0041】
作製したアルミニウム合金粒子断面観察サンプルを、FE-SEMを用いて500倍で撮影し、撮影されたアルミニウム合金粒子から無作為に1粒子を選択する。選択された1粒子の断面から、さらに無作為に10視野を選択し、当該各視野において交線3本を設け、デンドライトの2次アーム間の距離を30箇所において測定した(交線の設け方については「軽金属学会 研究委員会 鋳造・凝固部会 アルミニウムのデンドライトアームスペーシングと冷却速度の測定法(1988.8)」の交線法を参照のこと)。このようにして10視野から得られた、合計300箇所のデンドライトの2次アーム間の距離を平均し、当該1粒子におけるデンドライトの2次アーム間の平均距離とした。
上述した1粒子におけるデンドライトの2次アーム間の平均距離の測定を、さらに、撮影されたアルミニウム合金粒子から無作為に選択された他の粒子に対しても同様に実施し、合計100粒子の各々におけるデンドライトの2次アーム間の平均距離を求めた。そして、当該100粒子の各々におけるデンドライトの2次アーム間の平均距離をさらに平均し、その値を実施例1に係るd:DAS(μm)とした。
得られたd:DAS(μm)を式(2)に代入し、実施例1に係るC:冷却速度(K/sec)を求めた。
d=49・C-0.39・・・・・・式(2)
但し、d:DAS(μm)
C:冷却速度(K/sec)
【0042】
<非晶質粉末の分析>
(1)構成元素の組成分析
実施例1に係る非晶質粉末を、溶融剤として炭酸ナトリウムを使用してアルカリ溶解した。そして、このアルカリ溶解溶液に対し、ICP装置(Agilent社ICP-720)を用いて元素分析を行い、構成元素であるリチウム、アルミニウム、ガリウム、リンの組成分析をおこなった。組成分析結果を表2に記載する。
尚、後述する実施例5~10においては、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、ホウ素、ガリウムについて、実施例1と同様にICP装置による元素分析を実施した。
【0043】
(2)XRD測定
実施例1に係る非晶質粉末と、当該非晶質粉末700℃で2時間焼成した粉末とのXRDスペクトル測定を、次に示す測定条件に従い実施した。
装置:島津製作所製、XRD-6100
管球:Cu
管電流:30mA
発散スリット:1.0°
散乱スリット:1.0°
受光スリット:0.3mm
ステップ幅:0.02°/step
計測時間:0.25sec
【0044】
実施例1に係る非晶質粉末のXRDスペクトルを
図3に灰色実線にて示す。
得られたXRDスペクトルから、実施例1に係る非晶質粉末は非晶質構造を有していることが確認された。これはXRD測定により2θ:10°~40°の領域でハローチャートが確認されたことによる。尚、「ハロー」とはX線強度の緩やかな起伏であって、X線チャートにおいてブロードな盛り上がりとして観測できるものである。そして、当該ハローの半値幅は2θ:2°以上であった。
【0045】
また、実施例1に係る非晶質粉末を700℃で2時間焼成して得た粉末のXRDスペクトルを、
図3に黒色実線にて示す。
得られたXRDスペクトルを、XRD装置付属の電子計算機を用いてICDD(国際回折データセンター)のPDF(Powder Diffraction File)No.01-080-1922と照合すると、NASICON型結晶構造を有するリチウムイオン伝導酸化物を含む粉末であることが確認された。
【0046】
(3)TG-DTA測定
実施例1に係る非晶質粉末のTG-DTA測定を、次に示す測定条件に従い実施し、結晶化温度および発熱量の測定をおこなった。
装置:日立ハイテクサイエンス製、示唆熱熱重量同時測定装置STA300
昇温速度:10℃/min
温度範囲:30℃~800℃
雰囲気:大気(100ml/minを測定中に流す。)
測定容器(パン):Al2O3(φ5.2mm 高さ2.5mm 容量25μL)
データサンプリング間隔:0.5sec
サンプル量:6mg±0.6mg
【0047】
結晶化温度は、TG-DTA測定で得られたDTAの値が、最大値となる時の温度を読み取った。
一方、発熱量については式(1)を用い、結晶化温度のDTAの値(最大値)から、ベースラインとなるDTA値を引いた値を、測定の試料量で割り返して求めた。
発熱量(μV/mg)=(DTA
max(μV)-DB(μV))/S(mg)・・・式(1)
但し、DTA
max:DTAの最大ピーク値(μV)
DB:DTAのベースラインとなる値(μV)
S:測定試料質量(mg)
具体的には、
図4に示すTG-DTA測定結果を得る際の、0.5秒間隔でサンプリングしたDTA(μV)値の差であるΔDTA(μV)の値を縦軸とし、温度を横軸としたグラフである
図5を作成した。そして、
図5のA部分を拡大した
図6において、ΔDTA(μV)の値が0.05μV以上となる時の温度をベースライン温度として読み取った
当該ベースライン温度の値を
図4に当て嵌めたものを
図7に示す。
図7において、当該ベースライン温度におけるTG-DTA測定結果から、DTAのベースラインとなる値:DB(μV)を得たものである。
結晶化温度および発熱量の測定結果を表3に記載する。
【0048】
(4)熱機械分析(TMA)測定
実施例1に係る非晶質粉末を手動プレス機により成形して直径5mmφ、高さ約5mmの圧粉成形体を得た。
得られた圧粉体を、熱機械分析(TMA)装置(日立ハイテクサイエンス製:TMA/SS6200)の試料ホルダ(シリンダー)にセットした。そして、大気雰囲気中でシリンダーの上部からピストン状治具により980mNの荷重を付与し、常温から昇温速度10℃/minにて昇温しピストン治具の変位を計測して700℃における圧粉成形体の体積変化を測定した。尚、体積変化の値がマイナスとあるのは体積が収縮したことを意味する。
TMAによる体積変化の測定結果を表3に記載する。
【0049】
(5)非晶質粉末の平均粒子径、アスペクト比
非晶質粉末の平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製のへロス粒度分布測定装置(HELOS&RODOS(気流式の分散モジュール)))を使用して、分散圧5barで体積基準の粒度分布を測定し、体積基準の累積50%粒子径D50の値とする。
非晶質粉末のアスペクト比は、実施例1に係る非晶質粉末28gと、アトルアス社製エポフィックスキット(硬化剤3g、樹脂25g)とを混合し、30mmφの円筒容器に流し込んで24時間放置し硬化させた。
硬化した樹脂(+粉末)を円筒より抜出し、回転研磨機により耐水研磨紙、バフ研磨を実施して粒子断面観察サンプルを作製した。
作製した粒子断面観察サンプルをFE-SEMを用いて、倍率5000倍で撮影した。その際、観察画像内にて測定の対象とした粒子であって、観察画像の縁部または粒子同士の重なりにより、形状が一部見えない欠損があるものや、接触しているものは除外した。そして、1つの粒子で全周の形状が撮像されている粒子画像であるものを不作為に100個選択し、ソフトウェア(株式会社マウンテック社製 Macview)を用いて測定し、得られた100個の粒子のアスペクト比(短径/長径)の平均値をアスペクト比とした。
このとき、アスペクト比は平行線法により求めた。短径は、粒子の平面図についてその輪郭に接する2つの平行線間の最短距離とし、長径は上述した平行線で、短径に直角方向の最大距離とした。
【0050】
(6)イオン伝導度
実施例1に係る非晶質粉末0.5gを、直径10mmφの円筒絶縁容器中に投入し、ステンレス集電体とともにプレス機によって360MPaでプレスして圧粉体を得た。
得られた非晶質粉末の圧粉体を焼結炉に入れて、大気雰囲気下で昇温速度1℃/minで700℃まで昇温し、700℃2時間大気中で焼成し、結晶化させて、NASICON型結晶構造を有するリチウムイオン伝導酸化物粉末の円柱状の圧粉焼結体を製造した。
【0051】
製造された圧粉焼結体に対し、大気雰囲気下、温度25℃において、ポテンショ/ガルバノスタット(ソーラトロン社製、1470E)と、周波数応答分析器(ソーラトロン社製、1255B)とを用い、交流インピーダンス法により100Hz~4MHzの範囲で、抵抗値測定を行った。
そして、当該抵抗測定値のCole-Coleプロット(複素インピーダンス平面プロット)から、圧粉焼結体の抵抗値を求め、得られた抵抗値からイオン伝導率を算出した。
イオン伝導率の測定結果を表3に記載する。
【0052】
(7)焼結体の密度
実施例1に係る非晶質粉末0.5gを直径10mmφの円筒絶縁容器中に投入し、プレス機によって360MPaでプレスして圧粉体を得た。
得られた非晶質粉末の圧粉体を焼結炉に入れて、大気雰囲気下で昇温速度1℃/minで700℃まで昇温し、700℃2時間大気中で焼成し、結晶化させて、NASICON型結晶構造を有するリチウムイオン伝導酸化物粉末の円柱状の圧粉焼結体を製造した。
【0053】
製造した圧粉焼結体に膨れや反りがある場合は、サンドペーパーを用いて歪みの無い円柱状に整えた後、110℃で乾燥させて乾燥後の焼結体の重量を測定した。
その後、ノギスを用いて焼結体の厚みと直径とを求め、以下の式(3)、(4)から焼結体の体積(cm3)、焼結体の密度(g/cm3)を求めた。
700℃にて焼成し、結晶化させた焼結体の密度の測定結果を表3に記載する。
焼結体の体積(cm3)=(焼結体の直径(mm)/10/2)2×円周率(3.14)×(焼結体の厚み(mm)/10)・・・式(3)
焼結体の密度(g/cm3)=焼結体の重量(g)/焼結体の体積(cm3)・・・式(4)
【0054】
(実施例2~4)
<非晶質粉末の作製>
実施例1と同様にして、炭酸リチウム(富士フィルム和光純薬製)を118g、二酸化ゲルマニウム(富士フィルム和光純薬製)を314g、酸化アルミニウム(富士フィルム和光純薬製51g、リン酸2水素アンモニウム(富士フィルム和光純薬製を692g計量し、乳鉢にて混合し、底部にノズルが設置された白金坩堝へ投入し、1300℃で60分間保持することでリチウム、アルミニウム、ゲルマニウム、リンを含む原料混合物を溶融させて溶湯を作製した。溶湯の作製後、白金坩堝の底部に設置されたノズルから200g/hrの速度で出湯させた。
【0055】
ここで、実施例2においては、出湯した溶湯へ、アトマイズガスとして圧力0.4MPa、流量3.6Nm3/minの大気を噴霧して、溶湯をアトマイズにより急冷・粉砕し、微粉化した。
実施例2に係る溶湯のアトマイズ急冷、微粉化・微粉化の際の冷却速度の測定を実施例1と同様に実施したところ、冷却速度は2.3×103K/secであった。
【0056】
また、実施例3においては、出湯した溶湯へ、アトマイズガスとして圧力0.4MPa、流量9.1Nm3/minのヘリウムを噴霧して、溶湯をアトマイズにより急冷・粉砕し、微粉化した。
実施例3に係る溶湯のアトマイズ急冷、微粉化・微粉化の際の冷却速度の測定を実施例1と同様に実施したところ、冷却速度は1.2×104K/secであった。
【0057】
また、実施例4においては、出湯した溶湯へ、アトマイズガスとして圧力0.8MPa、流量7.4Nm3/minの大気を噴霧して、溶湯をアトマイズにより急冷・粉砕し、微粉化した。
実施例4に係る溶湯のアトマイズ急冷、微粉化・微粉化の際の冷却速度の測定を実施例1と同様に実施したところ、冷却速度は7.6×104K/secであった。
【0058】
出湯した溶湯をアトマイズにより急冷・粉砕することにより得られた実施例2~4の粒子を、それぞれ日清エンジニアリングの旋回式ジェットミル(SJ-100)を用い、大気中にて粉砕圧0.6MPaで微粉砕して、実施例2~4に係る非晶質粉末を得た。実施例2~4に係る非晶質粉末を構成する粒子の形状は、いずれも不定形であった。
【0059】
(実施例5)
実施例5においては、リチウム原料化合物として、炭酸リチウム(富士フィルム和光純薬製)118gと、ゲルマニウム原料化合物として、二酸化ゲルマニウム(富士フィルム和光純薬製)298gと、アルミニウム原料化合物として、酸化アルミニウム(富士フィルム和光純薬製)51gと、リン原料化合物として、リン酸2水素アンモニウム(富士フィルム和光純薬製)692gと、チタン原料化合物として、二酸化チタン(富士フィルム和光純薬製)12gと、を乳鉢にて混合し、混合物を底部にノズルが設置された白金坩堝へ投入した以外は、実施例2と同様に操作して、実施例5に係る非晶質粉末を得た。
【0060】
(実施例6)
実施例6においては、リチウム原料化合物として、炭酸リチウム(富士フィルム和光純薬製)118gと、ゲルマニウム原料化合物として、二酸化ゲルマニウム(富士フィルム和光純薬製)298gと、アルミニウム原料化合物として、酸化アルミニウム(富士フィルム和光純薬製)51gと、リン原料化合物として、リン酸2水素アンモニウム(富士フィルム和光純薬製)692gと、ジルコニウム原料化合物として、二酸化ジルコニウム(富士フィルム和光純薬製)18gと、を乳鉢にて混合し、混合物を底部にノズルが設置された白金坩堝へ投入した以外は、実施例2と同様に操作して、実施例6に係る非晶質粉末を得た。
【0061】
(実施例7)
実施例7においては、リチウム原料化合物として、炭酸リチウム(富士フィルム和光純薬製)118gと、ゲルマニウム原料化合物として、二酸化ゲルマニウム(富士フィルム和光純薬製)298gと、アルミニウム原料化合物として、酸化アルミニウム(富士フィルム和光純薬製)51gと、リン原料化合物として、リン酸2水素アンモニウム(富士フィルム和光純薬製)692gと、ハフニウム原料化合物として、二酸化ハフニウム(富士フィルム和光純薬製)32gと、を乳鉢にて混合し、混合物を底部にノズルが設置された白金坩堝へ投入した以外は、実施例2と同様に操作して、実施例7に係る非晶質粉末を得た。
【0062】
(実施例8)
実施例8においては、リチウム原料化合物として、炭酸リチウム(富士フィルム和光純薬製)118gと、ゲルマニウム原料化合物として、二酸化ゲルマニウム(富士フィルム和光純薬製)314gと、アルミニウム原料化合物として、酸化アルミニウム(富士フィルム和光純薬製)51gと、リン原料化合物として、リン酸2水素アンモニウム(富士フィルム和光純薬製)669gと、ケイ素原料化合物として、二酸化ケイ素(富士フィルム和光純薬製)12gと、を乳鉢にて混合し、混合物を底部にノズルが設置された白金坩堝へ投入した以外は、実施例2と同様に操作して、実施例8に係る非晶質粉末を得た。
【0063】
(実施例9)
実施例9においては、リチウム原料化合物として、炭酸リチウム(富士フィルム和光純薬製)118gと、ゲルマニウム原料化合物として、二酸化ゲルマニウム(富士フィルム和光純薬製)314gと、アルミニウム原料化合物として、酸化アルミニウム(富士フィルム和光純薬製)41gと、リン原料化合物として、リン酸2水素アンモニウム(富士フィルム和光純薬製)692gと、ホウ素原料化合物として、酸化ホウ素(富士フィルム和光純薬製)7gと、を乳鉢にて混合し、混合物を底部にノズルが設置された白金坩堝へ投入した以外は、実施例2と同様に操作して、実施例9に係る非晶質粉末を得た。
【0064】
(実施例10)
実施例10においては、リチウム原料化合物として、炭酸リチウム(富士フィルム和光純薬製)118gと、ゲルマニウム原料化合物として、二酸化ゲルマニウム(富士フィルム和光純薬製)314gと、アルミニウム原料化合物として、酸化アルミニウム(富士フィルム和光純薬製)41gと、リン原料化合物として、リン酸2水素アンモニウム(富士フィルム和光純薬製)692gと、ガリウム原料化合物として、酸化ガリウム(富士フィルム和光純薬製)19gと、を乳鉢にて混合し、混合物を底部にノズルが設置された白金坩堝へ投入した以外は、実施例2と同様に操作して、実施例10に係る非晶質粉末を得た。
【0065】
以上説明した、実施例2~10に係る溶湯のアトマイズ急冷、微粉化・微粉化の際のアトマイズ条件、冷却速度、粉砕方法、粒子の形状の測定結果を表1に記載する。
【0066】
<非晶質粉末の分析>
得られた実施例2~10に係る非晶質粉末に対し実施例1と同様に、構成元素の分析、XRD測定、TG-TDA測定、TAM収縮率、アスペクト比、平均粒子径、イオン伝導度、焼結体の密度といった、各種の物性値の測定をおこなった。
構成元素の分析結果を表2に、TG-TDA測定、TAM収縮率、アスペクト比、平均粒子径、イオン伝導度、焼結体の密度の測定結果を表3に記載する。
【0067】
(比較例1)
<非晶質粉末の作製>
実施例1と同様の操作を行って、ガラス溶融した溶湯の作製後、白金坩堝の底部に設置されたノズルから溶湯を出湯させて射出した。そして、溶湯をアトマイズ急冷することなく80g/hrの速度で出湯させ、出湯した溶湯をアルミナの容器で受け、自然冷却させてガラスインゴットを作製した。
得られたガラスインゴットを乳鉢で粉砕して、200μm以下に粗砕した後、実施例1と同様に日清エンジニアリングの旋回式ジェットミル(SJ-100)を用いて、粉砕圧0.6MPaで大気中にて微粉砕し、比較例1に係る非晶質粉末を得た。
【0068】
そして、比較例1と同じ条件で出湯したAl-4.5%Cu合金の溶湯をアルミナ容器で受けて自然冷却し、Al-4.5%Cu合金インゴットの粒子を作製し、そのインゴットの粒子を100個サンプリングした。そして実施例1と同様にして、凝固した金属の断面からデンドライト二次アーム間を測定し、冷却速度について平均値を求めた。
冷却速度、粉砕方法、粒子の形状の測定結果を表1に記載する。
【0069】
<非晶質粉末の分析>
得られた比較例1に係る非晶質粉末に対し実施例1と同様に、構成元素の分析、XRD測定、TG-TDA測定、TAM収縮率、アスペクト比、平均粒子径、イオン伝導度、焼結体の密度といった、各種の物性値の測定をおこなった。
構成元素の分析を表2に、TG-TDA測定、TAM収縮率、アスペクト比、平均粒子径、イオン伝導度、焼結体の密度の測定結果を表3に記載する。
【0070】
(比較例2)
<非晶質粉末の作製>
Ge原料化合物として、二酸化ゲルマニウム(富士フィルム和光純薬製)152gと濃度28wt%アンモニア水77gと純水3160gを混合して攪拌し、ゲルマニウム溶液を調製した。
Li、Al、Pの原料化合物としては、硝酸リチウム(富士フィルム和光純薬製)102gと、硝酸アルミニウム・9水和物(富士フィルム和光純薬製)195gと、リン酸2水素アンモニウム(富士フィルム和光純薬製)360gと、純水675gとを混合し攪拌し、リチウム、アルミニウム、リン溶液を調製した。
調製したゲルマニウム溶液へ、同じく調製したリチウム、アルミニウム、リン溶液を混合して攪拌し、リチウム、アルミニウム、ゲルマニウム、リンを含む混合スラリーを得た。
得られた混合スラリーを噴霧熱乾燥し、固形物化した後、400℃で2時間焼成することで、湿式合成粉末を得た。
この湿式合成粉末を、実施例1と同様に日清エンジニアリングの旋回式ジェットミル(SJ-100)を用いて、粉砕圧0.6MPaで大気中にて微粉砕し、比較例2に係る非晶質粉末を得た。
粉砕方法、粒子の形状の測定結果を表1に記載する。
【0071】
<非晶質粉末の分析>
得られた比較例2に係る非晶質粉末に対し実施例1と同様に、構成元素の分析、XRD測定、TG-TDA測定、TAM収縮率、アスペクト比、平均粒子径、イオン伝導度、焼結体の密度といった、各種の物性値の測定をおこなった。
構成元素の分析結果を表2に、XRD測定、TG-TDA測定、TAM収縮率、アスペクト比、平均粒子径、イオン伝導度、焼結体の密度の測定結果を表3に記載する。
【0072】
【0073】
【0074】