(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127346
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】研削砥石のツルーイング方法及びツルーイング装置
(51)【国際特許分類】
B24B 53/06 20060101AFI20240912BHJP
B24B 49/14 20060101ALI20240912BHJP
B24B 49/18 20060101ALI20240912BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240912BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240912BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B24B53/06 B
B24B49/14
B24B49/18
B24B49/10
B24B49/12
H01L21/304 601B
H01L21/304 622M
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036452
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】津留 太良
【テーマコード(参考)】
3C034
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB93
3C034CA03
3C034CA04
3C034CA19
3C034CA22
3C034CA24
3C034CA26
3C034CB08
3C034CB11
3C034CB12
3C034CB13
3C034CB18
3C034DD10
3C034DD20
3C047CC10
3C047CC15
5F057AA02
5F057AA03
5F057AA20
5F057BA11
5F057BB02
5F057BB06
5F057BB09
5F057BC09
5F057CA09
5F057DA11
5F057EB27
5F057FA39
5F057GB22
5F057GB24
5F057GB31
5F057GB40
(57)【要約】
【課題】溝形状を有する研削砥石の形状を高精度、高品質に行い、形状(品質)のばらつきを抑えた研削砥石のツルーイング装置及び方法を得る。
【解決手段】ツルア10を固定するツルア移動台25と、ツルア10と研削砥石16との形状を測定する形状測定部35と、ツルア10と研削砥石16との変位を測定する変位評価部31と、ツルア10と研削砥石16との振動を測定する振動計測部32と、温度・熱流を計測する加工熱評価部33と、変位評価部31、振動計測部32、加工熱評価部33の測定結果に基づいて、ツルア10の切込み量、回転速度、位置を制御する制御部30と、変位評価部31、振動計測部32、加工熱評価部33の測定結果と、ツルーイング後に測定したツルア10と研削砥石16の形状と、を関連付けて記憶した加工条件データベース37-1と、加工学習モデル37-2と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの面取り装置に使用される研削砥石のツルーイング方法であって、
前記研削砥石の目標形状を決定し、
少なくとも加工前に測定されたツルアと前記研削砥石との形状と、前記ツルアと前記研削砥石との加わる力及び変位の関係を示す変位条件と、に基づいて前記研削砥石を前記目標形状となるようにツルーイングすることを特徴とする研削砥石のツルーイング方法。
【請求項2】
前記ツルーイング中は、前記ツルア及び前記研削砥石の変位と、振動と、加工熱とをモニタリングすることを特徴とする請求項1に記載の研削砥石のツルーイング方法。
【請求項3】
前記ツルアの変位条件は軸方向の変位とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の研削砥石のツルーイング方法。
【請求項4】
前記研削砥石の変位条件は曲げ、ねじりによる変位とすることを特徴とする請求項3に記載の研削砥石のツルーイング方法。
【請求項5】
前記ツルーイング後は、前記ツルアと前記研削砥石の形状を測定し、前記ツルアと前記研削砥石のそれぞれの前記目標形状と比較して許容範囲の場合は、前記ウェーハを前記研削砥石で研削して良否の判定を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の研削砥石のツルーイング方法。
【請求項6】
前記モニタリングした結果と、前記ツルーイング後に測定した前記ツルアと前記研削砥石の形状と、を関連付けて加工条件データベースとして記憶し、前記加工条件データベースから加工学習モデルを構築することを特徴とする請求項2に記載の研削砥石のツルーイング方法。
【請求項7】
ウェーハの面取り装置に使用される研削砥石のツルーイング装置において、
ツルアを固定し、回転軸、X、Y、Z軸を可変とするツルア移動台と、
前記ツルアと前記研削砥石との形状を測定する形状測定部と、
前記ツルアと前記研削砥石との変位を測定する変位評価部と、
前記ツルアと前記研削砥石との振動を測定する振動計測部と、
温度・熱流を計測する加工熱評価部と、
前記変位評価部、前記振動計測部、前記加工熱評価部の測定結果に基づいて、前記ツルアの切込み量、回転速度、位置を制御する制御部と、
前記測定結果と、ツルーイング後に測定した前記ツルアと前記研削砥石の形状と、を関連付けて記憶した加工条件データベースと、
前記加工条件データベースから構築された加工学習モデルと、
を備えたことを特徴とする研削砥石のツルーイング装置。
【請求項8】
前記制御部は、少なくとも加工前に前記形状測定部によって測定された前記ツルアと前記研削砥石との形状と、前記ツルアの軸方向の変位と、前記研削砥石の曲げ、ねじりによる変位と、に基づいて前記研削砥石を目標形状となるように前記ツルーイングすることを特徴とする請求項7に記載の研削砥石のツルーイング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの端面における面取り装置に使用される溝形状を有する研削砥石のツルーイング方法及びツルーイング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェーハ等は多品種少量生産が進められている。ウェーハの面取り加工において使用される溝形状を有する研削砥石は、多品種少量生産、ウェーハの品質向上、歩留まり向上などを目的として、高精度化、品質向上の要求が高まっている。
【0003】
また、炭素(C)とシリコン(Si)との化合物であるSiC(炭化ケイ素)を始め、バンドギヤツプ(UWBG)が大きく、結晶を構成する原子間の結合が強い壊れにくい材料、例えばGaN(窒化ガリウム)、酸化ガリウム、AlGaN、ダイヤモンドを利用した半導体は、シリコン半導体より小型、低消費電力、高効率のパワー素子、高周波素子、耐放射線性に優れた半導体材料として期待され、実用化が進んでいる。しかし、4H-SiC等のUWBG材料は、難加工材であるため研削砥石の溝形状の高精度化、品質向上がより強く求められている。
【0004】
半導体ウェーハの製造工程における面取り加工は、研削砥石をツルアによりツルーイングすること、研削後ウェーハのエッジ形状を測定すること、をウェーハが所望の形状になるまで繰り返すことが必要とされていた。
【0005】
また、半導体ウェーハの外周面取りの仕上げ加工は、円周方向の研削痕の発生を防止するため、ウェーハに対して研削砥石を傾けて面取り部を研削する、いわゆるヘリカル研削を行うことが知られている。ただし、ヘリカル研削は、研削砥石のツルーイングによる形状の形成に関して、微妙な調整が不可欠であり、時間が掛かり、熟練した専任の担当者が必要であった。
【0006】
特許文献1には、ツルアを用いて溝の形成を行うヘリカル研削用のツルーイングにおいて、転写率、加工性を向上すると共に、ツルアによって形成される溝の精度を向上するため、研削砥石に形成する溝の上部あるいは下部をツルアで加工することが記載されている。そして、その後は、ツルアを研削砥石に対して相対的に厚さ方向に下降あるいは上昇させることを繰り返すことが記載されている。
【0007】
また、レーザ光によりツルーイングすることが知られている。特許文献2には、レーザ光によりツルーイングすることが記載され、被成形工具に対して熱影響が少く、高い加工精度を得るため、フェムト秒レーザ等の超短パルスレーザを用いること、ツルーイングは、レーザ光における集光点を中心とした進行方向前後の所定範囲によって行うこと、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-325号公報
【特許文献2】特開2015-98041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術において、特許文献1に記載のものは、面取り加工を行う研削砥石のツルーイングを行う上でツルアの移動等に熟練した専任の担当者による調整が不可欠であった。また、難加工材であるSiC等では、加工に時間が掛かり、所望の形状を形成するのが困難であり、研削砥石のツルーイングによる形状(創成)のばらつきが大きかった。
【0010】
また、特許文献2に記載のものは、照射範囲を広くすることが困難であり、一度にツルーイングできる部分が小さく砥石全体に実施することができず、溝形状を有するような砥石全体の形状を高精度化することは、考慮されていなかった。
【0011】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、溝形状を有する研削砥石の形状を高精度、高品質に行い、形状(品質)のばらつきを抑えた研削砥石のツルーイング装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、ウェーハの面取り装置に使用される研削砥石のツルーイング方法であって、前記研削砥石の目標形状を決定し、少なくとも加工前に測定されたツルアと前記研削砥石との形状と、前記ツルアと前記研削砥石との加わる力及び変位の関係を示す変位条件と、に基づいて前記研削砥石を前記目標形状となるようにツルーイングする。
【0013】
さらに、上記の研削砥石のツルーイング方法において、前記ツルーイング中は、前記ツルア及び前記研削砥石の変位と、振動と、加工熱とをモニタリングすることが好ましい。
【0014】
さらに、上記の研削砥石のツルーイング方法において、前記ツルアの変位条件は軸方向の変位とすることが好ましい。
【0015】
さらに、上記の研削砥石のツルーイング方法において、前記研削砥石の変位条件は曲げ、ねじりによる変位とすることが好ましい。
【0016】
さらに、上記の研削砥石のツルーイング方法において、ツルーイング後は、前記ツルアと前記研削砥石の形状を測定し、前記ツルアと前記研削砥石のそれぞれの前記目標形状と比較して許容範囲の場合は、前記ウェーハを前記研削砥石で研削して良否の判定を行うことが好ましい。
【0017】
さらに、上記の研削砥石のツルーイング方法において、前記モニタリングした結果と、前記ツルーイング後に測定した前記ツルアと前記研削砥石の形状と、を関連付けて加工条件データベースとして記憶し、前記加工条件データベースから加工学習モデルを構築することが好ましい。
【0018】
また、本発明は、ウェーハの面取り装置に使用される研削砥石のツルーイング装置において、ツルアを固定し、回転軸、X、Y、Z軸を可変とするツルア移動台と、前記ツルアと前記研削砥石との形状を測定する形状測定部と、前記ツルアと前記研削砥石との変位を測定する変位評価部と、前記ツルアと前記研削砥石との振動を測定する振動計測部と、温度・熱流を計測する加工熱評価部と、前記変位評価部、前記振動計測部、前記加工熱評価部の測定結果に基づいて、前記ツルアの切込み量、回転速度、位置を制御する制御部と、前記測定結果と、ツルーイング後に測定した前記ツルアと前記研削砥石の形状と、を関連付けて記憶した加工条件データベースと、前記加工条件データベースから構築された加工学習モデルと、を備えたものである。
【0019】
さらに、上記の研削砥石のツルーイング装置において、前記制御部は、少なくとも加工前に前記形状測定部によって測定された前記ツルアと前記研削砥石との形状と、前記ツルアの軸方向の変位と、前記研削砥石の曲げ、ねじりによる変位と、に基づいて前記研削砥石を目標形状となるように前記ツルーイングするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、研削砥石の目標形状を決定し、少なくとも加工前に測定されたツルアと研削砥石との形状と、ツルアと研削砥石との変位条件と、に基づいて研削砥石を目標形状となるようにツルーイングするので、溝形状を有する研削砥石の形状を高精度、高品質に行い、形状(品質)のばらつきを抑えた研削砥石のツルーイング装置及び方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態によるツルア及び研削砥石の力-変位のモデル化を示す図
【
図2】一実施形態によるツルーイング装置の全体システム構成を示すブロック図
【
図4】ツルーイングする時の加工精度に関する因子の説明図
【
図5】研削砥石をツルーイングする時の加工力による変形とその測定を示す説明図
【
図6】一実施形態によるツルアと研削砥石の位置合わせの説明図
【
図8】一実施形態によるツルーイング方法のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態によるツルア10及び研削砥石16の力-変位のモデル化を示す図、
図2は、一実施形態によるツルーイング装置の全体システム構成を示すブロック図である。
図3は、面取り装置におけるウェーハWの面取り加工の手順を示す図である。
【0023】
面取り加工は、
図3に示すように、ツルア10により研削砥石16が形状転写あるいは加工(ツルーイング)され、次に研削砥石16によりウェーハWの形状が研削加工されることにより行われる。
図3において、研削砥石16は、クイル18を介して砥石スピンドル17に装着されて回転する。ツルア10の端面の上面角θ1、下面角θ2は、目標とするウェーハWの上面角θ1’、下面角θ2’よりも若干小さな角度(具体的には、2~3deg程度))に調整されることが多い。また、ヘリカル研削を行う場合、研削砥石16の溝形状(目標形状)は、上下対称でない場合もあり、その場合は、ツルア10の端面の上面角θ1、下面角θ2もそれにあわせて調整される。
【0024】
一実施形態の特徴は、ツルーイング一連のプロセスを行うツルーイングプログラム30-1(
図8)に、加工前に測定されたツルア10と研削砥石16の形状と、モデル化されたツルア10と研削砥石16の変位条件を反映することにある。
例えば、ツルーイング条件は、ツルア10の研削砥石16への押し当て力の調整条件を含む。ツルア10が研削砥石16に押し当てられると、研削砥石16が変位し、研削砥石16からの反力によってツルア10もまた変位する。
ツルーイング条件により加工力が決まるため、ツルア10の形状は、予定されるツルーイング条件に由来する加工力によるツルア10、研削砥石16の変位を予め加味した面取り角度とされることが好ましい。
【0025】
図1(a)はツルア10の変位条件の関係をモデル化する構成、
図1(b)は、研削砥石16の変位条件の関係をモデル化する構成を示している。(a)において、ツルア10の変位条件の測定は、ツルア10の下側にレーザ変位計20を設置し、上側からテンションゲージ40(フォースセンサ、分銅でも良い)で既知の荷重を負荷する。そして、変位δの測定は、レーザ変位計20で行う。これにより、ツルア10の変位条件(力-変位の関係)は、軸方向の変位として求められる。
【0026】
図1(b)において、研削砥石16の変位条件の測定は、研削砥石16の側面にレーザ変位計20を設置し、ツルア10を既知の力で研削砥石16の溝に押し当て、研削砥石16の曲げ剛性を測定し、研削砥石16の曲げ、ねじりによる変位が求められる。
【0027】
これにより、研削砥石16の変位条件(力-変位の関係)は、研削砥石16の曲げ、ねじりによる変位として求められる。ツルア10、研削砥石16の品質のばらつきは、その他の変位条件として反映する。なお、研削砥石16は、クイル18を介して砥石スピンドル17に装着されて回転する。
【0028】
図4は、ツルーイングする時の加工精度に関する因子の説明図である。加工精度に関する因子は、
図4に示すように、研削砥石16の矢印に示すような曲げ、ねじり、振動、ツルア10の表面形状、砥粒状態、形状転写時に掛かる力f
1とツルア10の変形及び加工熱と熱膨張率(CTE)、ツルア10と研削砥石16の位置合わせ等となる。
【0029】
図5は、研削砥石16をツルーイングする際の加工力によるツルアの変形とその測定を示す説明図である。
図5(a)は、研削砥石16の上面をツルーイングするときの、ツルア10にかかる応力(加工力)と、それに伴う研削砥石16の変位方向を示し、
図5(b)は、研削砥石16の下面をツルーイングするときの、ツルア10にかかる応力(加工力)と、それに伴う研削砥石の変位方向を示している。溝の上面をツルーイングするときは、ツルア10が研削砥石16の上面に押し付けられ、ツルア10にはその反力として矢印の向きに応力が加わる。ツルア10は、その材質等(剛性)に応じて、矢印の方向に変形(変位)することとなる。一方、研削砥石16の軸は、
図5(a)に示すように、一点鎖線から破線への方向へと回転軸が傾いたり、水平方向(X)に逃げる方向に変位する。なお、図面は模式的なもので、説明のために誇張して描かれており、実際の変位は図面で示されるような変位よりも、小さい場合もある。
【0030】
溝の下面をツルーイングするときも同様である。ツルア10に対しては、矢印のように応力が加わり、変形(変位)する。一方の研削砥石16の軸は、ツルア10が押し付けられるために、
図5(b)に示すように、その軸が一点鎖線から破線の方向へと傾き、水平方向(X)に逃げる。研削砥石16の下方に設置した渦電センサ21は、上面及び下面のいずれのツルーイング中においても、加工力による研削砥石16の変位を計測する。
なお、ツルア10及び研削砥石16の加工力-変形(変位)の関係は
図1で示したように予め変位条件として求めておく。
【0031】
加工精度を向上するためには、力・熱等による変形の加工精度への影響を分析した加工制御モデルの構築、性能に強く影響する因子の特定、自動化するための機械学習が必要となる。特にツルア10と研削砥石16の位置合わせは、これらの基準となるものである。ツルーイング、及び、研削のために装置が稼働するときには、研削くずが発生し、かつ、研削箇所にはクーラント等が絶えず供給される、というセンシングには過酷な条件となるため、堅牢な測定の仕組みが重要となる。
【0032】
図6は、ツルア10と研削砥石16の位置合わせの説明図、
図7は、位置合わせ部の構成図である。レーザ変位計20は、ツルア10、研削砥石16の2次元断面形状を計測する。レーザ変位計20による計測により、2次元断面形状から、ツルア10の端面中央部Tと研削砥石16の溝底中央位置Mとが導き出される。これらが一致するような、ツルア10と研削砥石16との相対的な位置関係を基準位置として設定する。位置合わせは、ツルア10と研削砥石16との位置を、この基準位置にあわせるように移動させることで行われる。
【0033】
図7に示すように、ツルア10と研削砥石16の位置合わせは、研削砥石16の中に第1導電体23-1(又は磁性体)及びツルア10を固定するチャックテーブル24の中に第2導電体23-2(又は磁性体)を埋め込み、渦電センサ21-1、21-2により位置を検出して行う。
【0034】
図7において、ツルア10はチャックテーブル24に固定されている。第2導電体23-2(又は磁性体)は、チャックテーブル24に埋め込まれている。第1導電体23-1(又は磁性体)は、研削砥石16の溝底中央部に埋め込まれている。移動ステージ22は測長機能付きであり、渦電センサ21-1、21-2を取り付けている。
【0035】
渦電センサ21-1は、第1導電体23-1(又は磁性体)に対向する位置にZ方向に可動とされて移動ステージ22に取り付けられ、研削砥石16の溝底中央部の位置をZ1として求める。渦電センサ21-2は、第2導電体23-2(又は磁性体)に対向する位置にZ方向に可動とされて移動ステージ22に取り付けられ、ツルア10の端面中央部Tの位置をZ2として求める。ツルア10の端面中央部Tと研削砥石16の溝底中央位置Mの位置合わせは、Z1とZ2との差が所定値となるようにツルア10を移動させれば設定した基準位置に一致したことになる。
【0036】
図2のシステム構成において、制御部30は、加工条件としてツルア10の切込み量、回転速度、位置等を変位評価部31、振動計測部32、加工熱評価部33の評価に基づいて制御する。変位評価部31は、力-変位計測部36での測定値に基づいて加工時のツルア10及び研削砥石16の変形(変位)を評価する。
【0037】
変位評価部31は、
図1(b)で示した既知の荷重負荷によるツルア10と研削砥石16のモデル化された変位条件に基づいて、加工中のツルア10と研削砥石16の変形(無負荷時からの変位)を測定してレイティング(基準に基づき数値化)する。振動計測部32は、ツルア10、研削砥石16の加工中の振動を測定する。
【0038】
振動計測部32は、
図6で示したレーザ変位計20、渦電センサ21と共通でもよい。すなわち、これらの測定値から振動を見積もってもよい。
加工熱評価部33は、温度・熱流計測部34を構成する熱電対や熱流計により温度・熱流の計測値を用いてツルア10と研削砥石16の加工熱を評価する。
【0039】
形状測定部35は、レーザ変位計20等で構成され、少なくともツルア10と研削砥石16の2次元断面形状を測定する。
研削砥石16は、砥石スピンドル17に装着される。ツルア10は、ツルア移動台25に載置されたチャックテーブル24に固定され、回転軸、X、Y、Z軸が可変とされる。
【0040】
加工条件データベース37-1は、ツルア10及び研削砥石16の変位と、振動と、加工熱とをモニタリングした結果と、ツルーイング後の形状測定部35の測定結果とを関連付けて記憶する。記憶した結果は、加工学習モデル37-2として構築する。その他、制御部30は、冷却水系による研削熱を制御する。
【0041】
図8は、ツルーイング方法のフローチャートである。このフローには、ツルア10の形状の最適化手順も含まれる。
まず、ステップS35として、加工前のツルア・砥石の形状測定が実施される。ツルア10の目標形状は、
図1(a)で示したように、予め求めたツルア10の軸方向の変位条件を加味し、
図3で示した端面の上面角θ1、下面角θ2面取り角度等としたものとされる。
【0042】
次に、研削砥石16の目標形状が決定され、データ化される。(ステップS1)
ツルーイングプログラム30-1には、ステップS35で加工前に測定されたツルア10と研削砥石16の2次元断面形状、ステップS31としてモデル化された、ツルア10と研削砥石16の変位条件(研削砥石16の曲げ、ねじり等)、及び、上記目標形状が反映される。(ステップS2)
【0043】
次に、ステップS3として、ツルーイングが実施される。ツルーイングは、ツルーイングプログラム30-1に従って行われる。ツルーイングでは、10により研削砥石16を、目標形状となるように加工する。
なお、ステップS3は、
図6で示したように、レーザ変位計20による計測により、ツルア10の端面中央部Tと研削砥石16の溝底中央位置Mが一致する位置を基準位置に設定して行う。
【0044】
ツルーイング中は、変位評価部31、振動計測部32、加工熱評価部33、温度・熱流計測部34等で加工条件のモニタリングを行う。(ステップS4)
また、ツルーイング後は、形状測定部35のレーザ変位計20でツルア10と研削砥石16の形状を測定し(ステップS5)、良否判定する。ツルア10と研削砥石16のそれぞれの目標形状を比較してこれらが許容範囲の場合は、次に、ウェーハWをその研削砥石16で研削し、エッジの設計値(目標値)に対する良否の判定を行う。(ステップS6)
【0045】
ツルーイングされたツルア10と、研削砥石16とが目標形状及び形状転写された研削砥石16で研削されたウェーハWがエッジの設計値(目標値)の許容範囲に無い場合は、ステップS35、ステップS1の工程に戻す。加工条件と加工後の2次元断面形状は、関連付けて加工条件データベース37-1としてデータベース化し、加工学習モデル37-2を構築する。(ステップS37)
【0046】
また、加工条件データベース37-1は、ツルーイング中の加工条件として変位評価部31、振動計測部32、加工熱評価部33、温度・熱流計測部34等でモニタリングした結果と関連付けてデータベース化される。加工学習モデル37-2は、データベース化された加工条件データベース37-1から構築される。ステップS3において、ツルーイングプログラム30-1は、加工学習モデル37-2を参照する。
【0047】
ステップS5及びステップS6における良否判定は、予め加工条件データベース37-1に蓄積された結果を利用しても良い。また、ステップS5での加工後の研削砥石16の良否判定は、加工条件データベース37-1に蓄積された結果を利用することが好ましい。
【0048】
加工学習モデル37-2は、加工条件データベース37-1に蓄積された結果であるデータに対してコンピューターが評価・判断した結果を出力する機械学習モデルである。ツルーイングプログラム30-1は、必要に応じて加工学習モデル37-2へ問い合わせを入力し、評価・判断した結果を得る。
【0049】
以上、一実施形態は、ツルーイング中に変位評価部31、振動計測部32、加工熱評価部33、温度・熱流計測部34等でモニタリングする。そして、加工条件データベース37-1と加工学習モデル37-2を利用し、ツルーイングプログラム30-1により実施するので、溝形状を高精度化、高品質化し、形状のばらつきを抑えることができる。
【0050】
図3の説明は、ツルア10の形状転写として説明したが、より高精度化を図るためには、研削砥石16に形成する溝の上部あるいは下部をツルア10で加工し、その後は、ツルア10を研削砥石16に対して相対的に厚さ方向に下降あるいは上昇させるように片側ずつ削ることでも良い。
【0051】
また、ツルーイング中は、変位評価部31、振動計測部32、加工熱評価部33、温度・熱流計測部34等でモニタリングする。そして、加工条件データベース37-1と加工学習モデル37-2を構築して利用することは、ウェーハWが難加工材である4H-SiC、他のポリタイプ(3C-SiC、6H-SiC、15R-SiC等)、GaN(窒化ガリウム)、酸化ガリウム、AlGaNを利用したいずれかのものにも適用が可能である。そして、一実施形態は、ウェーハWが難加工材であっても高品質化、特に後工程等にとって好適な(高精度な形状形成、均一な表面状態(うねり・粗さ)とすることができる。
【符号の説明】
【0052】
10…ツルア
16…研削砥石
17…砥石スピンドル
18…クイル
20…レーザ変位計
21…渦電センサ
22…移動ステージ
23-1…第1導電体
23-2…第2導電体
24…チャックテーブル
25…ツルア移動台
30…制御部
30-1…ツルーイングプログラム
31…変位評価部
32…振動計測部
33…加工熱評価部
34…温度・熱流計測部
35…形状測定部
36…変位計測部
37-1…加工条件データベース
37-2…加工学習モデル
40…テンションゲージ
W…ウェーハ