(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127347
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ウェーハの分割方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H01L21/78 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036454
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 千悟
(72)【発明者】
【氏名】木内 逸人
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA31
5F063CB29
5F063DD67
5F063DD69
5F063DG17
5F063EE42
5F063EE43
5F063EE44
5F063EE48
5F063EE50
(57)【要約】
【課題】チップ間の間隔を所定の間隔にする。
【解決手段】ダイシングテープ113の延びやすい方向における露出部分116の硬化予定部分117の糊115を、紫外線照射部51によって硬化させている。これにより、硬化予定部分117が延びにくくなるので、露出部分116の延びやすい方向の延び量および熱収縮量を抑えることができる。これにより、ダイシングテープ113のウェーハ100に接している部分における延びやすい方向の延び量を、たとえば延びにくい方向の延び量と同程度にすることができる。その結果、両方向におけるチップ120間の間隔を、容易に、均等な所定の間隔とすることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングフレームの中央の開口に配置されたウェーハと該リングフレームとを、基材の一方の面に糊を備えたダイシングテープを貼着して一体化させることにより形成されたワークセットの該ダイシングテープを拡張することによって、該ウェーハに形成された格子状の分割起点で該ウェーハを複数のチップに分割し、チップとチップとの間に所定の間隔を形成する、ウェーハの分割方法であって、
該ワークセットの該リングフレームをフレーム保持テーブルによって保持するとともに、該ダイシングテープの該ウェーハが貼着されたエリアをウェーハ保持テーブルに載置する保持工程と、
該ダイシングテープの延びやすい方向における該ウェーハの外周と該リングフレームの内周との間を硬化させる硬化工程と、
該フレーム保持テーブルが下、該ウェーハ保持テーブルが上になるように、これらを相対的に昇降させることにより、該ウェーハを該分割起点で複数のチップに分割し、チップとチップとの間に所定の間隔を形成する分割工程と、
を含む、ウェーハの分割方法。
【請求項2】
該ダイシングテープの該糊は、紫外線硬化型であって、
該硬化工程は、紫外線照射ユニットによって該糊に紫外線を照射することを含む、
請求項1記載のウェーハの分割方法。
【請求項3】
該ダイシングテープの該基材は、熱硬化型であって、
該硬化工程は、加熱ユニットによって該基材を加熱することを含む、
請求項1記載のウェーハの分割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の技術では、リングフレームの開口部分にウェーハを配置し、リングフレームとウェーハとを、これらにダイシングテープを貼着して一体化させることにより、ワークセット形成している。このワークセットをチャックテーブルによって保持し、ウェーハに、その内部に集光点が位置するようにレーザー光線を照射することにより、ウェーハのストリートに沿って改質層を形成している。
【0003】
その後、ウェーハを上方向に、リングフレームを下方向に相対的に移動させることによってダイシングテープを拡張させて、ウェーハを複数のチップに分割し、チップとチップとの間に隙間を形成している。さらに、ダイシングテープの拡張によってウェーハの外周とリングフレームの内周との間のダイシングテープにリング状の弛み部分を形成させ、その弛み部分に熱を与え熱収縮させることによって、該隙間を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のダイシングテープは、ロール状のロールテープから引き出されて使用される。
ダイシングテープは、引き出し方向と幅方向とで延び具合が異なるということが、一般的に言われている。そのため、ダイシングテープの引き出し方向におけるチップ間の距離である第1の距離と、ダイシングテープの幅方向におけるチップ間の距離である第2の距離とに違いが生じる。
【0006】
通常、引き出し方向が延びやすい方向であり、幅方向が延びにくい方向である。このため、延びやすい引き出し方向における弛み部分は大きく、延びにくい幅方向における弛み部分は小さくなり、これらの弛み部分に熱を与えて熱収縮させることにより、チップ間の隙間を固定させている。そのため、引き出し方向においてダイシングテープの熱収縮量が大きくなるので、チップ間の隙間が固定されたときに、引き出し方向のチップ間の距離である第1の距離よりも、幅方向のチップ間の距離である第2の距離が小さくなる。したがって、第2の距離が所定の距離になるようにウェーハをチップに分割する際には、リングフレームとウェーハとの高さ差を大きくして、ダイシングテープを拡張する。このため、第1の距離が所定の距離よりも大きくなるという問題がある。
また、チップとチップとの間隔が均等にならないという問題がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、チップとチップとの間隔を均等にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のウェーハの分割方法(本分割方法)は、リングフレームの中央の開口に配置されたウェーハと該リングフレームとを、基材の一方の面に糊を備えたダイシングテープを貼着して一体化させることにより形成されたワークセットの該ダイシングテープを拡張することによって、該ウェーハに形成された格子状の分割起点で該ウェーハを複数のチップに分割し、チップとチップとの間に所定の間隔を形成する、ウェーハの分割方法であって、該ワークセットの該リングフレームをフレーム保持テーブルによって保持するとともに、該ダイシングテープの該ウェーハが貼着されたエリアをウェーハ保持テーブルに載置する保持工程と、該ダイシングテープの延びやすい方向における該ウェーハの外周と該リングフレームの内周との間を硬化させる硬化工程と、該フレーム保持テーブルが下、該ウェーハ保持テーブルが上になるように、これらを相対的に昇降させることにより、該ウェーハを該分割起点で複数のチップに分割し、チップとチップとの間に所定の間隔を形成する分割工程と、を含んでいる。
【0009】
本分割方法では、該ダイシングテープの該糊は、紫外線硬化型であってもよく、該硬化工程は、紫外線照射ユニットによって該糊に紫外線を照射することを含んでいてもよい。
【0010】
本分割方法では、該ダイシングテープの該基材は、熱硬化型であってもよく、該硬化工程は、加熱ユニットによって該基材を加熱することを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本分割方法では、硬化工程において、ダイシングテープの延びやすい方向におけるウェーハの外周とリングフレームの内周との間(露出部分)を硬化させている。したがって、ダイシングテープの露出部分における延びやすい方向の延び量および熱収縮量を抑えることができる。これにより、ダイシングテープのウェーハに接している部分における延びやすい方向の延び量を、たとえば延びにくい方向の延び量と同程度にすることができる。
その結果、両方向におけるチップ間の間隔を、容易に、均等な所定の間隔とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】紫外線照射ユニットの構成を示す斜視図である。
【
図8】加熱ユニットによる硬化工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、本実施形態にかかるウェーハの分割方法の分割対象物であるウェーハ100は、ワークセット110の形態で取り扱われる。
【0014】
ウェーハ100は、たとえば円板状の半導体ウェーハである。ウェーハ100には、格子状の分割起点102が形成されている。本実施形態では、分割起点102は、レーザー加工によって形成された強度の弱い改質層である。分割起点102によって区画された領域には、複数のデバイス103が形成されている。
【0015】
このようなウェーハ100を含むワークセット110は、ウェーハ100に加えて、ウェーハ100を収容可能な開口112を有する環状のリングフレーム111と、ダイシングテープ113とを含んでいる。そして、ワークセット110は、リングフレーム111の中央の開口112に配置されたウェーハ100とリングフレーム111とを、これらにダイシングテープ113を貼着して一体化させることによって、形成されている。
【0016】
ダイシングテープ113は、少なくともウェーハ100よりも大きい直径を有し、
図2に示すように、基材114と、基材114の一方の面に備えられた糊(糊層)115とを有する。ダイシングテープ113の基材114は、伸縮性および熱収縮性を有しており、その材料は、たとえば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルおよびポリプロピレン等である。また、糊115は、紫外線硬化型の糊であり、ウェーハ100およびリングフレーム111に接着している。
そして、ワークセット110では、ダイシングテープ113は、ウェーハ100の外周縁とリングフレーム111の内周縁との間に、リング状の露出部分116を有している。
【0017】
なお、ダイシングテープ113は、ロール状のロールテープ(図示せず)から引き出されて使用されるものであり、
図1に示すロールの引き出し方向D1に延びやすく、幅方向D2に延びにくい性質を有している。
また、本実施形態では、
図1に示すように、ワークセット110のダイシングテープ113の露出部分116における引き出し方向D1の両端部に、略円弧状の2つの硬化予定部分117が設定されている。すなわち、ダイシングテープ113の延びやすい方向(引き出し方向D1)におけるウェーハ100の外周とリングフレーム111の内周との間に、硬化予定部分117が設定されている。
なお、引き出し方向D1は、MD(Machine Direction)方向、幅方向D2は、TD(Transverse Direction)方向である。
【0018】
そして、本実施形態にかかるウェーハの分割方法は、このようなワークセット110のダイシングテープ113を拡張することによって、ウェーハ100に形成された格子状の分割起点102でウェーハ100を複数のチップに分割し、チップとチップとの間に所定の間隔を形成する方法である。このために、
図1に示す分割装置1が用いられる。
【0019】
図1に示すように、分割装置1は、ワークセット110のウェーハ100を保持するウェーハ保持テーブル10と、リングフレーム111を保持するフレーム保持テーブル20と、フレーム保持テーブル20を昇降させる昇降機構30と、ウェーハ保持テーブル10、フレーム保持テーブル20および昇降機構30を支持して回転するターンテーブル35と、ダイシングテープ113を加熱収縮させる熱収縮機構40と、ダイシングテープ113の硬化予定部分117を硬化する紫外線照射ユニット50と、を有している。
【0020】
図2に示すように、ウェーハ保持テーブル10は、略円板状の枠体11を有しており、枠体11の上面に設けられた凹部内に、ポーラスセラミックス等の多孔質部材からなる保持部材13を有している。保持部材13の上面が、ウェーハ100を吸引保持する保持面12となっている。この保持面12には、ダイシングテープ113のウェーハ100が貼着されたエリアが載置される。そして、ウェーハ保持テーブル10では、保持部材13がバルブ14を介して吸引源15に連通されることにより、保持面12によって、ダイシングテープ113を介してウェーハ100が吸引保持される。すなわち、保持面12によって、ダイシングテープ113のウェーハ100が貼着されたエリアが吸引保持される。
【0021】
このような構成を有するウェーハ保持テーブル10は、
図1に示すように、後述するフレーム保持テーブル20のフレーム保持台21およびカバープレート22の円形開口23,24から突出可能なように、ターンテーブル35上に、複数の支柱部19によって支持されている。
【0022】
また、ウェーハ保持テーブル10の外周縁には、複数のコロ18が回転自在に配設されている。ダイシングテープ113の拡張時に、ダイシングテープ113が複数のコロ18に接触することで、ウェーハ保持テーブル10の外周縁とダイシングテープ113との摩擦を緩和することができる。
【0023】
フレーム保持テーブル20は、中央に円形開口23を有しリングフレーム111の下面が載置されるフレーム保持台21と、中央に円形開口24を有しリングフレーム111の上面を押さえるカバープレート22とを備えている。
【0024】
フレーム保持テーブル20は、たとえば4つ(
図1では3つのみ図示)の昇降機構30によって昇降可能となっている。昇降機構30は、ターンテーブル35上に立設されており、シリンダ31とピストン32とを備えている。ピストン32の先端に、フレーム保持テーブル20のフレーム保持台21が固定されている。
【0025】
フレーム保持テーブル20では、たとえば、フレーム保持台21に載置されているリングフレーム111上にカバープレート22を載置して固定(たとえばクランプ固定)することにより、フレーム保持台21とカバープレート22とによってリングフレーム111を挟み込んで、ワークセット110を保持することができる。このようにフレーム保持テーブル20によってワークセット110を保持すると、ウェーハ保持テーブル10に保持されているウェーハ100およびダイシングテープ113の一部が、円形開口23,24から露出した状態となる。
【0026】
ターンテーブル35は、支柱部19を介してウェーハ保持テーブル10を支持しているとともに、昇降機構30を介してフレーム保持テーブル20を支持している。そして、ターンテーブル35は、図示しない駆動機構によって、ウェーハ保持テーブル10、フレーム保持テーブル20および昇降機構30とともに、ウェーハ保持テーブル10の保持面12の中心を通る回転軸を中心に回転されることが可能である。
【0027】
熱収縮機構40は、フレーム保持テーブル20の上方に配設されている。熱収縮機構40は、アーム42の両端に取り付けられた一対のヒータ41、アーム42とともに一対のヒータ41を上下方向に昇降させる昇降部43、および、アーム42とともに一対のヒータ41を水平方向に回転させる回転機構44を備えている。
【0028】
一対のヒータ41は、たとえば遠赤外線ヒータであり、所定のピーク波形の遠赤外線をスポット照射することができる。そして、一対のヒータ41は、ダイシングテープ113におけるリング状の露出部分116を加熱して熱収縮させるために用いられる。
【0029】
このため、一対のヒータ41は、ウェーハ100の直径に応じた所定距離だけ互いに離れるように、アーム42の両端に取り付けられている。これにより、一対のヒータ41は、ウェーハ保持テーブル10にウェーハ100が保持されている場合に、ウェーハ100の外側に位置しているダイシングテープ113の露出部分116上に、ウェーハ100を挟むように配置されることが可能となっている。
【0030】
昇降部43は、ダイシングテープ113の露出部分116に対するヒータ41の高さ位置を調整する。回転機構44は、たとえばパルスモータであり、ウェーハ保持テーブル10の保持面12の中心を通る回転軸を中心として、アーム42および一対のヒータ41を所定の回転速度で水平方向に回転させる。
【0031】
このような構成を有する熱収縮機構40では、ダイシングテープ113の露出部分116上に配置されている一対のヒータ41を水平方向に回転させながら、遠赤外線を下方に向けて照射することによって、露出部分116を全周にわたって加熱する。これにより、露出部分116を熱収縮させることができる。
【0032】
なお、熱収縮機構40のヒータ41は、遠赤外線ヒータに限られず、所定の温度および風量の温風を吹き出す温風ヒータとして構成されていてもよい。
【0033】
紫外線照射ユニット50は、フレーム保持テーブル20の上方における+Y方向側に配設されている。紫外線照射ユニット50は、紫外線を照射する紫外線照射部51、紫外線照射部51をZ軸方向に沿って昇降移動させる昇降機構60、および、紫外線照射部51を水平方向(X軸方向)に移動させる水平移動機構70を備えている。
【0034】
紫外線照射部51は、たとえば紫外線照射用のLEDを有しており、ダイシングテープ113の糊115を硬化可能な紫外線を下方に向けて照射するように構成されている。
【0035】
昇降機構60は、紫外線照射部51を、ウェーハ保持テーブル10の保持面12に垂直なZ軸方向に移動させる。昇降機構60は、
図3に示すように、Z軸方向に延びる基台61、基台61においてZ軸方向に延びる一対のガイドレール63、ガイドレール63に取り付けられた昇降テーブル64、ガイドレール63と平行に延びるボールネジ65、および、ボールネジ65を回転させる駆動モータ66を含んでいる。
【0036】
一対のガイドレール63は、Z軸方向に平行に、基台61に配置されている。昇降テーブル64は、一対のガイドレール63に、これらのガイドレール63に沿ってスライド可能に設置されている。昇降テーブル64には、水平移動機構70および紫外線照射部51が取り付けられている。
【0037】
ボールネジ65は、昇降テーブル64に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。駆動モータ66は、ボールネジ65の一端部に連結されており、ボールネジ65を回転駆動する。ボールネジ65が回転駆動されることで、昇降テーブル64、水平移動機構70および紫外線照射部51が、ガイドレール63に沿って、Z軸方向に移動する。
【0038】
水平移動機構70は、紫外線照射部51を、ウェーハ保持テーブル10の保持面12に平行なX軸方向に移動させる。水平移動機構70は、X軸方向に延びる一対のガイドレール71、ガイドレール71に取り付けられたX軸テーブル72、ガイドレール71と平行に延びるボールネジ73、および、ボールネジ73を回転させる駆動モータ75を備えている。
【0039】
一対のガイドレール71は、X軸方向に平行に、昇降テーブル64に配置されている。X軸テーブル72は、一対のガイドレール71に、これらのガイドレール71に沿ってスライド可能に設置されている。X軸テーブル72には、紫外線照射部51が取り付けられている。
【0040】
ボールネジ73は、X軸テーブル72に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。駆動モータ75は、ボールネジ73の一端部に連結されており、ボールネジ73を回転駆動する。ボールネジ73が回転駆動されることで、X軸テーブル72および紫外線照射部51が、ガイドレール71に沿って、X軸方向に移動する。
【0041】
また、
図1に示すように、分割装置1は、その内部に、分割装置1の制御のための制御部7を有している。制御部7は、制御プログラムに従って演算処理を行うCPU、および、メモリ等の記憶媒体等を備えている。制御部7は、各種の処理を実行し、分割装置1の各構成要素を統括制御する。
【0042】
たとえば、制御部7は、分割装置1の上述した各部材を制御して、ワークセット110のウェーハ100に対するウェーハの分割方法を実行する。
以下に、制御部7によって制御される分割装置1におけるウェーハの分割方法について説明する。
【0043】
(1)保持工程
この工程では、ワークセット110のリングフレーム111をフレーム保持テーブル20によって保持するとともに、ダイシングテープ113のウェーハ100が貼着されたエリアを、ウェーハ保持テーブル10に載置する。
【0044】
具体的には、まず、作業者あるいは図示しない搬送部材が、フレーム保持テーブル20のフレーム保持台21に、ウェーハ100が上向きとなるように、ワークセット110のリングフレーム111を載置する。この際、リングフレーム111は、フレーム保持台21の円形開口23と同心状に配置される。また、ダイシングテープ113のウェーハ100が貼着されたエリアが、ウェーハ保持テーブル10に載置される。すなわち、ウェーハ100が、ダイシングテープ113を介して、ウェーハ保持テーブル10の保持面12に載置される。
【0045】
次に、
図2に示すように、作業者あるいは図示しない搬送部材が、フレーム保持台21に載置されているリングフレーム111上に、カバープレート22を載置して固定する。これにより、カバープレート22とフレーム保持台21とでリングフレーム111が挟みこまれて、フレーム保持テーブル20によってリングフレーム111が保持される。
【0046】
(2)硬化工程
この工程では、
図1に示したワークセット110のダイシングテープ113の延びやすい方向(引き出し方向D1)におけるウェーハ100の外周とリングフレーム111の内周との間の糊115を硬化させる。すなわち、ダイシングテープ113の露出部分116における硬化予定部分117の糊115を硬化させる。本実施形態では、糊115の硬化のために、紫外線照射ユニット50によって糊115に紫外線を照射する。
【0047】
具体的には、制御部7が、
図1に示した紫外線照射ユニット50の昇降機構60および水平移動機構70を制御して、紫外線照射部51を、ウェーハ保持テーブル10およびフレーム保持テーブル20に保持されているワークセット110におけるダイシングテープ113のリング状の露出部分116上に配置する。さらに、制御部7は、ターンテーブル35によってウェーハ保持テーブル10およびフレーム保持テーブル20を回転させることにより、ダイシングテープ113の露出部分116の一方の硬化予定部分117を、紫外線照射ユニット50の紫外線照射部51の下方に配置する。
【0048】
その後、制御部7は、
図4に示すように、紫外線照射部51から、ダイシングテープ113の硬化予定部分117(硬化予定部分117の糊115)に向けて紫外線UVを照射する。この際、制御部7は、硬化予定部分117の全体に紫外線UVが照射されるように、ターンテーブル35(
図1参照)によってワークセット110を僅かに回転させるか、あるいは、紫外線照射ユニット50の水平移動機構70によって紫外線照射部51を水平方向に僅かに移動させながら、紫外線照射部51からの紫外線照射を実施してもよい。
その後、制御部7は、ダイシングテープ113の他方の硬化予定部分117を紫外線照射部51の下方に配置して、この硬化予定部分117にも同様に紫外線UVを照射する。
【0049】
これにより、ダイシングテープ113の延びやすい方向(引き出し方向D1;
図1参照)にウェーハ100を挟んで並ぶように配置された2つの硬化予定部分117の糊115が硬化されて、これらの硬化予定部分117が延びにくくなる。
【0050】
(3)分割工程
硬化工程の後、フレーム保持テーブル20が下、ウェーハ保持テーブル10が上になるように、これらを相対的に昇降させることにより、ウェーハ100を分割起点102で複数のチップ120に分割し、チップ120とチップ120との間に所定の間隔を形成する。
【0051】
具体的には、制御部7は、
図5に示すように、制御部7は、昇降機構30のピストン32を下降させることにより、フレーム保持テーブル20を下降させて、ウェーハ保持テーブル10とフレーム保持テーブル20との高さに差を設ける。これにより、制御部7は、露出部分116を含むダイシングテープ113を引き延ばし、ダイシングテープ113を放射状に拡張させる。このダイシングテープ113の拡張にともない、
図1に示した格子状の分割起点102に沿って、ウェーハ100が、複数のチップ120に分割される。そして、チップ120間に所定の間隔Gが形成される。
なお、上記のようにフレーム保持テーブル20を下降させるのでなく、ウェーハ保持テーブル10を上昇させ、ダイシングテープ113を放射状に拡張させるようにしてもよい。
【0052】
(4)ダイシングテープ保持工程
分割工程の後、制御部7は、ウェーハ保持テーブル10のバルブ14を開いて保持面12を吸引源15に連通させる。これにより、保持面12によって、ダイシングテープ113のウェーハ100が貼着されたエリアが吸引保持される。
【0053】
(5)固定工程(ヒートシュリンク工程)
その後、制御部7は、
図6に示すように、昇降機構30のピストン32を上昇させて、ウェーハ保持テーブル10の高さをウェーハ保持テーブル10と同様とする。これにより、引き延ばされたダイシングテープ113のリング状の露出部分116に、弛みが生じる。制御部7は、熱収縮機構40のヒータ41によって、弛んだ露出部分116を加熱して熱収縮させる。露出部分116が収縮することにより、ダイシングテープ113の全体が弛みなく張った状態に戻るため、隣接するチップ120間の間隔Gが維持されて、各チップ120の位置を固定することができる。
【0054】
固定工程の後、ワークセット110は、たとえば洗浄ユニットに搬送されて、洗浄処理および乾燥処理が施される。
【0055】
以上のように、本実施形態では、分割工程の前に硬化工程を実施して、ダイシングテープ113の延びやすい方向(引き出し方向D1)における露出部分116の硬化予定部分117の糊115を硬化させている。
【0056】
ここで、硬化工程を実施しない場合、分割工程においてダイシングテープ113が放射状に拡張されたときに、ダイシングテープ113の露出部分116の延び量は、幅方向D2よりも、ダイシングテープ113の延びやすい方向である引き出し方向D1において大きくなる。また、ダイシングテープ113のウェーハ100に接している部分(保持面12上の部分)の延び量も、幅方向D2よりも、引き出し方向D1において大きくなる。
そして、ウェーハ保持テーブル10とフレーム保持テーブル20との高さを同一にして、ダイシングテープ113の拡張を止め、ウェーハ100の外周とリングフレーム111の内周との間(露出部分116)においてダイシングテープ113の弛みを作ったときに、引き出し方向D1での弛み部分は、幅方向D2での弛み部分より大きくなり、これらの弛み部分に熱を与えて固定する。このため、ダイシングテープ113の露出部分116は、幅方向D2よりも引き出し方向D1において大きく熱収縮する。
ここで、ウェーハ100に対応する部分においても引き出し方向D1は延びやすい方向なので、引き出し方向D1でのチップ120間の間隔は、幅方向D2での間隔よりも広くなっている。そして、この広くなっている引き出し方向D1でのチップ120間の間隔が、引き出し方向D1におけるダイシングテープ113の露出部分116の大きな熱収縮により、広くなったままで固定される。このため、引き出し方向D1におけるチップ120間の間隔が、幅方向D2における間隔よりも広くなり、所定の間隔になりにくくなる。このように、引き出し方向D1は、ダイシングテープ113の特性に起因してチップ120とチップ120との間隔が広く形成される方向である。
【0057】
これに関し、本実施形態では、硬化工程を実施することにより、ダイシングテープ113の引き出し方向D1における露出部分116の硬化予定部分117の糊115を硬化させている。その結果、硬化予定部分117が延びにくくなるので、露出部分16の引き出し方向D1における弛み部分が、幅方向D2における弛み部分と同程度の大きさになる。このため、ダイシングテープ113の露出部分116を熱収縮させたときに、露出部分116における引き出し方向D1の熱収縮量を、幅方向D2の熱収縮量と同程度に抑えることができる。
【0058】
これにより、ダイシングテープ113のウェーハ100に接している部分における引き出し方向D1の延び量を、幅方向D2の延び量と同程度にすることができる。
その結果、ウェーハ100が分割されることによって形成されるチップ120間の間隔を、幅方向D2と引き出し方向D1との両方向において、均等な所定の間隔Gとすることが容易となる。
【0059】
このように、本実施形態では、分割工程において、幅方向D2および引き出し方向D1におけるチップ120間の間隔を、容易に所定の間隔Gに均等にすることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、硬化工程において、ターンテーブル35によってワークセット110を回転させることにより、ダイシングテープ113の露出部分116の硬化予定部分117を、紫外線照射ユニット50の紫外線照射部51の下方に配置している。これに関し、ワークセット110を回転させる代わりに、図示しない回転機構によって露出部分116に沿って紫外線照射部51を回転移動させることにより、硬化予定部分117の上方に紫外線照射部51を配置してもよい。この場合、ターンテーブル35は備えられなくてもよい。
【0061】
また、この場合、
図7に示すように、紫外線照射部51は、熱収縮機構40のアーム42の両端に、ヒータ41と並ぶように備えられていてもよい。
【0062】
この構成では、硬化工程において、制御部7は、ダイシングテープ113の露出部分116の上方に、一対の紫外線照射部51を配置する。そして、制御部7は、回転機構44によって紫外線照射部51を水平方向に回転させさせることにより、硬化予定部分117の上方に紫外線照射部51を配置する。さらに、制御部7は、回転機構44によって紫外線照射部51を水平方向に僅かに回転させながら、紫外線照射部51から下方に向けて紫外線UVを照射して、硬化予定部分117の全体に紫外線UVを照射する。これにより、硬化予定部分117の全体の糊115が硬化される。
【0063】
この構成では、2つの硬化予定部分117の糊115を同時に硬化することができる。このため、硬化工程にかかる時間を短縮することができる。
【0064】
また、本実施形態では、ダイシングテープ113の糊115は、紫外線硬化型の糊である。そして、硬化工程において、ダイシングテープ113の延びやすい方向(引き出し方向D1)における露出部分116の硬化予定部分117の糊115を硬化させている。これに対し、第2実施形態では、硬化工程において、ダイシングテープ113の延びやすい方向(引き出し方向D1)における露出部分116の硬化予定部分117の基材114を硬化させてもよい。
この場合、熱硬化型の基材114を含むダイシングテープ113を用いる。この場合、
図8に示すように、分割装置1は、硬化予定部分117の基材114を固めるための一対の加熱ユニット(ヒータ)55を備えていてもよい。
【0065】
この加熱ユニット55は、ダイシングテープ113の露出部分116の硬化予定部分117に下方から対向することが可能なように設けられており、たとえば遠赤外線あるいは温風によってダイシングテープ113の基材114を加熱することが可能なものである。
【0066】
この場合、制御部7は、硬化工程において、加熱ユニット55によって硬化予定部分117の基材114を加熱して硬化させる。この際、制御部7は、略円弧状の硬化予定部分117の全体が加熱されるように、たとえば、ターンテーブル35(
図1参照)によってワークセット110を僅かに回転させるか、あるいは、図示しない回転機構によって露出部分116に沿って加熱ユニット55を僅かに回転させながら、加熱ユニット55による加熱を実施する。
【0067】
この構成でも、ダイシングテープ113の延びやすい方向(引き出し方向D1;
図1参照)にウェーハ100を挟んで並ぶように配置された2つの硬化予定部分117の基材114を硬化して、これらの硬化予定部分117を延びにくくすることができる。したがって、幅方向D2および引き出し方向D1におけるチップ120間の間隔を、容易に、均等な所定の間隔とすることができる。
このように、硬化工程は、ワークセット110のダイシングテープ113の延びやすい方向(引き出し方向D1)におけるウェーハ100の外周とリングフレーム111の内周との間を硬化させる工程であればよい。
【0068】
また、ダイシングテープ113の基材114が熱硬化型である場合、加熱ユニット55に変えて、熱収縮機構40のヒータ41によって、硬化予定部分117の基材114を加熱して硬化させてもよい。
【0069】
この場合、制御部7は、硬化工程において、ダイシングテープ113の2つの硬化予定部分117の上方に、一対のヒータ41を配置する。そして、制御部7は、回転機構44によってヒータ41を水平方向に僅かに回転させながら、ヒータ41によって硬化予定部分117の全体を加熱する。これにより、硬化予定部分117の基材114が硬化されて、硬化予定部分117が延びにくくなる。なお、この場合、糊115を介して基材114が加熱されて、加熱された基材114が硬化されてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、ウェーハ100の分割起点102が、強度の弱い改質層として示されている。これに関し、ウェーハ100の分割起点102は、改質層に限られず、切削ブレード等による切削加工あるいはレーザー加工によって形成された分割溝(ハーフカットあるいはフルカット)であってもよい。
【0071】
また、ウェーハ100の格子状の分割起点102によって区画される領域が長方形である場合、分割工程において形成されるチップ120が長方形となる。この場合、引き出し方向D1と幅方向D2とで、チップ120間の間隔の数が異なることもある。この場合には、チップ120間の間隔の数が多い方の方向に沿って、ダイシングテープ113の露出部分116に硬化予定部分117を設定し、硬化予定部分117の糊115あるいは基材114を硬化させてもよい。これにより、両方向におけるチップ120間の間隔を、均等な所定の間隔とすることが容易となる。
【0072】
また、本実施形態では、ダイシングテープ113の露出部分116に設定される硬化予定部分117が、略円弧状であるとしている。これに関し、硬化予定部分117は、硬化されることにより露出部分116の引き出し方向D1の延び量を抑えることができるのであれば、略円弧状に限らず、略長方形などの他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1:分割装置、7:制御部、10:ウェーハ保持テーブル、11:枠体、12:保持面、
13:保持部材、14:バルブ、15:吸引源、18:コロ、19:支柱部、
20:フレーム保持テーブル、21:フレーム保持台、22:カバープレート、
23:円形開口、24:円形開口、30:昇降機構、31:シリンダ、32:ピストン、
35:ターンテーブル、40:熱収縮機構、41:ヒータ、42:アーム、
43:昇降部、44:回転機構、50:紫外線照射ユニット、51:紫外線照射部、
55:加熱ユニット、60:昇降機構、61:基台、63:ガイドレール、
64:昇降テーブル、65:ボールネジ、66:駆動モータ、
70:水平移動機構、71:ガイドレール、72:X軸テーブル、73:ボールネジ、
75:駆動モータ、100:ウェーハ、102:分割起点、103:デバイス、
110:ワークセット、111:リングフレーム、112:開口、
113:ダイシングテープ、114:基材、115:糊、
116:露出部分、117:硬化予定部分、120:チップ、
D1:引き出し方向、D2:幅方向、UV:紫外線