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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127379
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】湾曲矯正方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240912BHJP
   B24B 41/06 20120101ALN20240912BHJP
【FI】
H01L21/304 622N
H01L21/304 622J
B24B41/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036504
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 航太
【テーマコード(参考)】
3C034
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB75
3C034DD10
5F057AA53
5F057BA15
5F057BB03
5F057CA14
5F057CA24
5F057DA11
5F057EC03
5F057EC04
5F057EC13
5F057EC14
5F057FA13
5F057FA28
5F057FA45
5F057GA21
(57)【要約】
【課題】山形に湾曲している板状物を適切に平坦に矯正することができる、板状物の矯正方法を提供する。
【解決手段】湾曲した板状物を平坦化する板状物の湾曲矯正方法であって、外的刺激によって収縮し硬化する液状樹脂を準備する液状樹脂準備工程と、湾曲して山形になった面に液状樹脂を塗布する液状樹脂塗布工程と、塗布した液状樹脂に外的刺激を付与して液状樹脂を収縮させ硬化させる収縮工程と、を含み構成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した板状物を平坦化する板状物の湾曲矯正方法であって、
外的刺激によって収縮し硬化する液状樹脂を準備する液状樹脂準備工程と、
湾曲して山形になった面に液状樹脂を塗布する液状樹脂塗布工程と、
塗布した液状樹脂に外的刺激を付与して液状樹脂を収縮させ硬化させる収縮工程と、
を含み構成される湾曲矯正方法。
【請求項2】
該液状樹脂塗布工程において、湾曲の度合いと該湾曲を矯正する液状樹脂の厚みとの相関関係を求めたテーブルを予め作成しておき、該テーブルに基づいて液状樹脂の厚みを調整する請求項1に記載の湾曲矯正方法。
【請求項3】
該外的刺激は紫外線である請求項1に記載の湾曲矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲した板状物を平坦化する板状物の矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、研削装置によって研削され所望の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、デバイスチップに対応する複数の領域を備えた配線基板に個々のデバイスチップの表面を対面させて配設し、その後デバイスチップの裏面全体に樹脂をモールドしてパッケージ基板を生成する技術が実用化されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-032471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、裏面側に樹脂をモールドしてパッケージ基板を生成した場合、樹脂が収縮することで裏面側に引張力が作用して表面側が山形に湾曲する。そして、このようなパッケージ基板の裏面を研削すべく、表面側をチャックテーブルに載置して全体を吸引保持する際に該湾曲が大きい場合は、該パッケージ基板の表面側がチャックテーブルに密着せず、適切に吸引保持できないという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、山形に湾曲している板状物を適切に平坦に矯正することができる、板状物の矯正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、湾曲した板状物を平坦化する板状物の湾曲矯正方法であって、外的刺激によって収縮し硬化する液状樹脂を準備する液状樹脂準備工程と、湾曲して山形になった面に液状樹脂を塗布する液状樹脂塗布工程と、塗布した液状樹脂に外的刺激を付与して液状樹脂を収縮させ硬化させる収縮工程と、を含み構成される湾曲矯正方法が提供される。
【0008】
該液状樹脂塗布工程において、湾曲の度合いと該湾曲を矯正する液状樹脂の厚みとの相関関係を求めたテーブルを予め作成しておき、該テーブルに基づいて液状樹脂の厚みを調整するようにしてもよい。また、該外的刺激は紫外線であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の湾曲矯正方法は、外的刺激によって収縮し硬化する液状樹脂を準備する液状樹脂準備工程と、湾曲して山形になった面に液状樹脂を塗布する液状樹脂塗布工程と、塗布した液状樹脂に外的刺激を付与して液状樹脂を収縮させ硬化させる収縮工程と、を含み構成されることから、板状物の湾曲が矯正されて平坦化され、該板状物がチャックテーブルに適切に吸引保持されないという問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】湾曲矯正装置の全体斜視図である。
図2】(a)図1に示す湾曲矯正装置によって湾曲が矯正されるウエーハの斜視図、(b)(a)に示すウエーハの湾曲を示す断面図である。
図3】液状樹脂塗布工程において参照するテーブルを示す概念図である。
図4】液状樹脂塗布工程を実施する際に湾曲矯正装置のチャックテーブルにウエーハを保持する態様を示す斜視図である。
図5】液状樹脂塗布工程の実施態様を示す概念図である。
図6】(a)収縮工程の実施態様を示す斜視図、(b)収縮工程により平坦化されたウエーハを示す側面図である。
図7】研削工程の実施態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に基づいて構成される湾曲矯正方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
図1には、本実施形態の湾曲矯正方法を実施するのに好適な湾曲矯正装置1の全体斜視図が示されている。湾曲矯正装置1は、ハウジング2と、ハウジング2内に配設され板状物を保持する保持手段20と、保持手段20に保持される板状物に対して液状樹脂を塗布する液状樹脂塗布手段30と、液状樹脂塗布手段30を矢印Yで示すY軸方向に移動させる搬送手段40と、液状樹脂塗布手段30に高圧エアーWを供給する高圧エアー供給手段50と、板状物に対して外的刺激として紫外線を照射する紫外線照射手段60と、液状樹脂塗布手段30に対して液状樹脂を供給する液状樹脂供給手段70と、図示を省略する制御手段と、を備えている。なお、図示の湾曲矯正装置1を構成する各手段は、適宜の支持台によって支持されるが、図1では、説明の都合上省略している。
【0013】
ハウジング2は、上方が開放された箱状で形成されている。ハウジング2の底部2aは傾斜しており、傾斜方向の端部(最も深い部分)に、余剰に供給された液状樹脂やハウジング2内を洗浄する際に発生する洗浄水等を排出するドレン2bが配設されている。さらに、ハウジング2の側壁2cには、図示を省略する吸引手段が配設された吸引ダクト2eが接続される開口部2dが形成されている。
【0014】
保持手段20は、回転軸22上に形成されるチャックテーブル21と、回転軸22を矢印R1で示す方向に回転させる駆動モータ23とを備え、ハウジング2の底部2aの中央に配設されている。チャックテーブル21の保持面は、通気性を有するポーラス部材によって形成されると共に、図示を省略する吸引源に接続されている。該吸引源を作動して、チャックテーブル21の保持面に負圧を生成することで、板状物を吸引保持することができる。なお、チャックテーブル21の直径は、保持する板状部に対して小さい寸法で設定される。
【0015】
液状樹脂塗布手段30は、搬送アーム31と、搬送アーム31によって支持された液状樹脂噴射ノズル32とを備えている。搬送アーム31は、後述する搬送手段40のガイドレール45上を図示のY軸方向にスライドする摺動部31aと、液状樹脂噴射ノズル32の先端部32aを支持する水平部31bと、液状樹脂噴射ノズル32の本体部32bを支持する垂直部31cとを含み構成されている。液状樹脂噴射ノズル32の上端には、後述する液状樹脂100が導入される液状樹脂導入部32cが形成されている。
【0016】
搬送手段40は、図示のように、ハウジング2のY軸方向に沿う開口部に沿って形成されており、駆動ローラ41と、従動ローラ42と、駆動ローラ41を回転駆動するパルスモータ43と、駆動ローラ41と従動ローラ42とに巻き掛けられる搬送ベルト44と、上記した搬送アーム31の摺動部31aを支持し、搬送ベルト44に隣接しY軸方向に沿う方向に配設されたガイドレール45とを備えている。搬送ベルト44と上記した搬送アーム31の摺動部31aとが連結されていることにより、上記した制御手段によってパルスモータ43を作動して、駆動ローラ41を回転することで、搬送アーム31をY軸方向の所望の位置に移動することができる。液状樹脂噴射ノズル32は、ハウジング2におけるX軸方向の中央に配設されており、上記した搬送手段40を作動することで、液状樹脂噴射ノズル32の先端部32aをチャックテーブル21の中心に位置付けることができる。
【0017】
本実施形態の湾曲矯正装置1においては、液状樹脂噴射ノズル32に高圧エアーWを供給する高圧エアー供給手段50が配設されている。高圧エアー供給手段50は、高圧エアー源51と、高圧エアー源51に接続されるエアー供給路52と、エアー供給路52に配設される開閉弁53とを備えている。高圧エアー供給源51によって供給される高圧エアーWの圧力は、例えば0.5MPaである。該高圧エアーWは、搬送アーム31の水平部31bに供給され、水平部31b内において、液状樹脂噴射ノズル32の先端部32aに導入される。液状樹脂噴射ノズル32に高圧エアーWが導入されることで、液状樹脂噴射ノズル32から液状樹脂100を噴射させることができる。液状樹脂噴射ノズル32の先端部32aに高圧エアーWが導入される構成については、追って詳細に説明する。
【0018】
本実施形態の搬送アーム31の水平部31bには、紫外線照射器60が配設されている。紫外線照射器60は、下面側のX軸方向に並んで紫外線ランプが配設されており、X軸方向の広い範囲で下面側に向けて紫外線を照射することができる。紫外線照射器60は、搬送アーム31の水平部31bに配設されていることから、上記した搬送手段40を作動してY軸方向に移動させることができ、チャックテーブル21に保持される板状物の上方を通過させて、板状物の上面全体に紫外線を照射することができる。
【0019】
液状樹脂供給手段70は、液状樹脂100を貯留する貯留タンク71と、貯留タンク71の下部に配設された供給管72と、供給管72に配設された開閉バルブ73とを備えている。液状樹脂供給手段70は、ハウジング2の一方側(図中奥側)に設置されており、上記した搬送手段40を作動して液状樹脂噴射ノズル32をY軸方向に移動することにより、液状樹脂噴射ノズル32の液状樹脂導入部32cを、供給管72の先端部72aに位置付けることができる。これにより、供給管72を介して液状樹脂100を液状樹脂噴射ノズル32に供給することができる。なお、説明の都合上、図示の貯留タンク71の上方は開放されているが、貯留タンク71の上は適宜の蓋部材により閉塞されている。
【0020】
本実施形態の液状樹脂100は、例えば、外的刺激として紫外線を照射することにより硬化する紫外線(UV)硬化樹脂が採用される。液状樹脂100として採用されるUV硬化樹脂は、コーティング適性や硬化物性を左右する重合性オリゴマー(主材)と、硬化性や物性をコントロールするための多官能モノマー、反応希釈剤としての単官能モノマー(副材)と、光重合開始剤とを主な成分とする。主材としては、例えば、ウレタンアクリルレート、エポキシアクリルレート、アクリルアクリルレート、ポリエステルアクリルレート、脂環式エポキシ、オキセタン化合物等から選択され、副材としては、多官能アクリルレートモノマー、単管能アクリルレートモノマー、ビニルエーテルモノマー等から選択され、光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、スルホニウム塩系等から適宜選択され混合される。選択する成分の種類や混合する際の分量を調整することで、紫外線を照射して収縮し硬化する際の体積収縮率を調整することが可能である。なお、本発明の液状樹脂100は、上記したUV硬化樹脂に限定されず、外的刺激として加熱することにより硬化する熱硬化性樹脂であってもよい。
【0021】
本実施形態の湾曲矯正装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、この湾曲矯正装置1を使用して実施される湾曲矯正方法について、以下に説明する。
【0022】
本発明の湾曲矯正方法を実施するに際し、まず、外的刺激(本実施形態では紫外線)によって収縮し硬化する液状樹脂100を準備する液状樹脂準備工程を実施する。より具体的には、図1に基づき説明した液状樹脂供給手段70の貯留タンク71に、上記したUV硬化樹脂の主材、副材、光重合開始剤から適宜の材料を選択し、紫外線を照射した場合の体積収縮率を所望の体積収縮率に調整した液状樹脂100を貯留しておき、液状樹脂噴射ノズル32の液状樹脂導入部32cを液状樹脂供給手段70の供給管72の先端部72aに位置付ける。次いで、液状樹脂供給手段70の開閉バルブ73を開放して、液状樹脂噴射ノズル32に、所定量の液状樹脂100を充填する。なお、本実施形態では、体積収縮率が5%であるUV硬化樹脂G1と、体積収縮率が10%であるUV硬化樹脂G2とを用意しておき、後述する板状物に応じて適宜選択されたものが液状樹脂100として貯留される。
【0023】
上記した液状樹脂準備工程を実施したならば、矯正対象となる板状物において、湾曲して山形になった面に液状樹脂を塗布する液状樹脂塗布工程を実施する。ここで、本実施形態の湾曲矯正方法を実施する板状物は、例えば図2(a)に示すウエーハ10である。図示のウエーハ10は、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面10aに形成されたシリコンのウエーハであって裏面に樹脂がモールドされたパッケージウエーハである。該ウエーハ10は、厚みが700μm、直径が200mmのウエーハである。このウエーハ10は、図2(b)に示すように、表面10aが上方に凸となるように山形に、すなわち外周領域に対し、中央領域がAmm高くなるように湾曲している。なお、図2では、説明の都合上、湾曲の度合いを強調して記載しており、実際の湾曲の度合いとは一致していない。ここで、液状樹脂塗布工程を実施するに際し、ウエーハ10の表面10aに塗布する液状樹脂100の厚みを決定する手順について説明する。
【0024】
本実施形態の湾曲矯正方法を実施するに際し、板状物における湾曲の度合いと、該板状物に塗布して該湾曲を矯正する液状樹脂の厚みとの相関関係を予め実験により求め、図3に示すようなテーブルを作成しておく。該テーブルは、縦軸に所定の大きさの板状物の表面側が凸となるように湾曲した場合の反り量(mm)によって湾曲の度合いを示し、横軸に板状物の表面側にUV硬化樹脂を塗布する際の厚み(μm)を示している。該テーブルを作成するに際しては、本実施形態の矯正対象となる上記したウエーハ10と同一の材質、寸法のウエーハであって、表面が山形となる反り量が1.5mmである2枚のウエーハを選択し、一方のウエーハの表面側に、上記した体積収縮率が5%であるUV硬化樹脂G1を塗布すると共に外的刺激(紫外線の照射)を付与しながら硬化させて徐々に厚みを増してウエーハの反り量の変化を求め、他方のウエーハの表面側に体積収縮率が10%であるUV硬化樹脂G2を塗布すると共に外的刺激を付与しながら硬化させて徐々に厚みを増してウエーハの反り量の変化を求める実験を行った。その結果、図示のような、ウエーハの湾曲の度合いと該湾曲を矯正するUV硬化樹脂G1の厚みとの相関関係を示すUV硬化樹脂G1に対応する線G1と、ウエーハの湾曲の度合いと該湾曲を矯正するUV硬化樹脂G2の厚みとの相関関係を示すUV硬化樹脂G2に対応する線G2と、を示すテーブルを作成した。
【0025】
図3に示すテーブルの線G1及び線G2から理解されるように、収縮すると共に硬化させたUV硬化樹脂の厚みが徐々に厚くなるに従い、UV硬化樹脂の体積収縮による矯正効果が発揮されて、各ウエーハの反り量が減少する。そして、UV硬化樹脂G1の塗布による湾曲の変化を示す線G1は、横軸の点P1(180μm)において横軸と交差することから、UV硬化樹脂の厚みが180μmとなった場合に、ウエーハの反り量が0mmとなることが分かる。また、UV硬化樹脂G2の塗布による湾曲の変化を示す線G2は、横軸の点P2(130μm)において横軸と交差することから、UV硬化樹脂の厚みが130μmとなった場合に、反り量が0mmとなることが分かる。図示のテーブルを作成する際の実験では、UV硬化樹脂G1、G2の収縮・硬化によって反り量が0mmとなった状態から、さらにUV硬化樹脂G1、G2をそれぞれのウエーハに塗布し、外的刺激を付与することにより硬化させて、各ウエーハの反り量を観察している。UV硬化樹脂G1を塗布した一方のウエーハでは、UV硬化樹脂G1の厚みが300μmとなった際に約-0.6mmの反り量となり、UV硬化樹脂G2を塗布した他方のウエーハでは、UV硬化樹脂G2の厚みが300μmとなった際に約-1.1mmの反り量となり、いずれもウエーハの表面側が谷形となる反り量となったことが確認された。このように作成されたテーブルは、湾曲矯正装置1に配設される図示を省略する制御手段に記憶される。
【0026】
本実施形態の湾曲矯正方法を実施するに際し、予め湾曲矯正の対象となるウエーハ10の反り量Aを計測しておく。反り量Aの計測を実施した結果、例えば、本実施形態のウエーハ10の反り量Aが1.5mmであったとする。次いで、液状樹脂100として、UV硬化樹脂G1、G2のいずれかを選択する。反り量が大きい場合は、硬化した場合の体積収縮率が大きいUV硬化樹脂G2を選択し、反り量が小さい場合は、体積収縮率が小さいUV硬化樹脂G1を選択することが好ましい。本実施形態では、上記した反り量A=1.5mmだったことに基づき、液状樹脂供給手段70に貯留する液状樹脂100として、UV硬化樹脂G1が予め選択され準備されている。そして、図3に示すテーブルを参照することにより、液状樹脂塗布工程において、上記したウエーハ10の湾曲を矯正して略平坦とすべくUV硬化樹脂G1を塗布する際の厚みを180μmと求める。なお、本発明は、ウエーハ10の反り量Aが1.5mmであった場合に、液状樹脂100として、UV硬化樹脂G2を選択することを除外しない。液状樹脂100として、UV硬化樹脂G2を選択した場合は、ウエーハ10の湾曲を矯正して略平坦とすべくUV硬化樹脂G2を塗布する際の厚みを130μmと求めることができる。
【0027】
なお、湾曲矯正の対象となるウエーハ10の反り量Aを計測した結果、例えば、該反り量Aが1.0mmであった場合は、図3に示すテーブルのUV硬化樹脂G1による線G1を、図示の矢印R2で示す縦軸方向(Y軸方向)に平行移動して、該線G1が縦軸における反り量1.0mmの位置で交差するように移動する(破線で示す)。そして、その際に該線G1が横軸で交差する位置の液状樹脂厚みを求める。図示の実施形態では、その横軸の位置は135μmであり、これにより、該反り量Aが1.0mmだった場合には、ウエーハ10を平坦化すべく液状樹脂塗布工程において塗布するUV硬化樹脂G1の厚みは、135μmであると求めることができる。このように、ウエーハ10の反り量Aが1.5mm以外の値である場合には、図3に示すテーブルの線G1、線G2を、縦軸方向に平行移動させることで、ウエーハ10の反り量Aに応じたUV硬化樹脂G1、G2を塗布する際の厚みを求めることができる。
【0028】
上記したように、液状樹脂塗布工程において塗布すべきUV硬化樹脂G1の厚み(180μm)を求めたならば、以下に説明する液状樹脂塗布工程を実施する。
【0029】
液状樹脂塗布工程を実施するに際し、まず、図4に示すように、図1に基づき説明した湾曲矯正装置1に配設された保持手段20のチャックテーブル21に、ウエーハ10の表面10aを上方に向けて載置し、図示を省略する吸引源を作動して吸引保持する。ウエーハ10は、上記したように、表面10a側が凸となるように湾曲して山形になっており、保持手段20のチャックテーブル21の直径がウエーハ10に対して十分小さい直径に設定されていることから、チャックテーブル21によってウエーハ10を吸引保持することが可能である。
【0030】
チャックテーブル21によってウエーハ10を吸引保持したならば、図1に基づき説明した搬送手段40を作動して、搬送アーム31をY軸方向に移動し、図5に示すように、UV硬化樹脂G1が充填された液状樹脂噴射ノズル32を、ウエーハ10の中心に位置付ける。次いで、チャックテーブル21を矢印R1で示す方向に回転させると共に、上記した高圧エアー供給手段50を所定時間作動して、高圧エアーWを、搬送アーム31の水平部31bに導入する。該水平部31bに導入された高圧エアーWは、水平部31bの連通路33及び液状樹脂噴射ノズル32の先端部32aの外周を囲うように形成された環状の導入路34を介して先端部32aの噴射通路32dに導入される。このとき、図示を省略する吸引手段を作動して、吸引ダクト2eを介して、ハウジング2内に飛散するUV硬化樹脂G1の飛沫を外部に排出する。以上により、ウエーハ10の表面10aに所定量のUV硬化樹脂G1が噴射され、ウエーハ10の回転によってウエーハ10の表面10aにUV硬化樹脂G1が均一に広がり、ウエーハ10の表面10aに形成されるUV硬化樹脂G1の厚みが180μmとなるように塗布されて、液状樹脂塗布工程が完了する。
【0031】
上記した液状樹脂塗布工程を実施したならば、UV硬化樹脂G1を収縮させ硬化させる収縮工程を実施する。より具体的には、UV硬化樹脂G1に対して外的刺激を付与すべく、上記した紫外線照射器60の紫外線ランプを点灯すると共に搬送手段40を作動し、図6(a)に示すように、紫外線照射器60を矢印R3で示す方向に移動して、ウエーハ10の表面10a全体に紫外線を照射する。本実施形態では、紫外線照射器60を矢印R3で示す方向に移動させた後、さらに逆方向に紫外線照射器60を移動して往復移動させることにより、ウエーハ10の表面10aに塗布されたUV硬化樹脂G1に対し、十分に紫外線を照射して、UV硬化樹脂G1を収縮させ硬化させる。この際、チャックテーブル21を低速で回転させてもよい。なお、図6(a)では、紫外線照射器60を支持する搬送アーム31については、説明の都合上、省略している。
【0032】
上記した収縮工程を実施することにより、ウエーハ10の表面10aには、図6(b)に示すように、収縮すると共に硬化したUV硬化樹脂G1’の層が形成される。これにより、ウエーハ10には、上記した湾曲を矯正する作用が働き、図示のようにウエーハ10が平坦化されて、本実施形態の湾曲矯正方法が完了する。このようにして、ウエーハ10が平坦化されたならば、図7に示す研削装置80に搬送して、ウエーハ10の裏面を研削する研削工程を適切に実施することができる。
【0033】
図7に示すように、研削装置80は、チャックテーブル81上に吸引保持されるウエーハ10の裏面10bを研削して薄化するための研削手段を備えている。研削手段は、図示しない回転駆動機構により回転させられる回転スピンドル82と、回転スピンドル82の下端に装着されたホイールマウント83と、ホイールマウント83の下面に取り付けられ複数の研削砥石85が下面側に環状に配設された研削ホイール84と、を備えている。上記チャックテーブル81の保持面は、上記したウエーハ10と略同一の直径で形成されており、通気性を有するポーラス部材により形成されて、図示を省略する吸引手段に接続されている。
【0034】
研削工程を実施するに際し、ウエーハ10の裏面10b側を上方に、UV硬化樹脂G1’の層を形成した表面10a側を下方に向けて、チャックテーブル81の保持面に載置し、図示を省略する吸引手段を作動して、チャックテーブル81上に負圧を生成する。この際、ウエーハ10には、上記した実施形態に基づく湾曲矯正方法が施されており、当初の湾曲が矯正されて平坦化されている。これにより、ウエーハ10は、チャックテーブル81に適切に吸引保持され、吸引保持できないという問題が生じない。そして、チャックテーブル81を図中矢印R4で示す方向に、例えば300rpmで回転させつつ、回転スピンドル82を図中矢印R5で示す方向に、例えば6000rpmで回転させる。次いで、研削砥石85をウエーハ10の裏面10bに接触させ、研削ホイール84を、例えば1.0μm/秒の研削送り速度で、図中R6で示す下方に向けて研削送りする。この際、図示しない接触式又は非接触式の測定ゲージによりウエーハ10の厚みを測定しながら研削を進めることができ、ウエーハ10の裏面10bを所定量研削する。ウエーハ10を所定の厚さとしたならば、洗浄、乾燥工程等を経て、ウエーハ10の裏面10bを研削する研削工程が完了する。
【0035】
上記した実施形態では、図3に示すテーブルを作成する際に、矯正の対象となるウエーハ10と同一のウエーハを用意して、予め実験を行ってテーブルを作成した。これは、所定のUV硬化樹脂を塗布した後、紫外線を照射して収縮・硬化させた場合の矯正の効果は、矯正の対象となる板状物の材質、厚み、大きさ(直径)等によって異なるものであることによる。よって、矯正の対象となる板状物の材質、厚み、大きさが複数種類ある場合は、各々に対応するテーブルを作成しておくことが好ましい。
【0036】
本発明は、上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態では、図3に示したように、湾曲の度合いと該湾曲を矯正する液状樹脂の厚みとの相関関係を求めたテーブルを作成しておき、該テーブルに基づいて液状樹脂の厚みを調整するようにしていた。この際、上記したテーブルでは、実験値に基づいて作成した上記の相関を示す線G1、G2をそのまま採用し利用していたが、例えば、実験により求めた線G1と線G2に近似する近似直線を生成してテーブルとし、該近似直線を縦軸方向に平行移動することで、塗布する液状樹脂の厚みを求め、塗布する際の厚みを調整するものであってもよい。このような近似曲線を使用した場合は、ウエーハ10の湾曲を矯正する際の精度が劣る可能性があるが、ウエーハ10の湾曲を矯正する場合、ウエーハ10の湾曲を矯正した結果、次の工程(例えば研削工程)において、チャックテーブルによって適切に吸引保持できる程度に湾曲が矯正されればよいことから、必ずしも厳密に平坦化する必要はない。
【0037】
また、上記した実施形態では、図3に示すようなテーブルに基づいて、湾曲の度合いに基づき液状樹脂の厚みを調整するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、体積収縮率が異なる複数の液状樹脂を用意しておき、液状樹脂塗布工程において、湾曲を矯正しようとする板状物に塗布する液状樹脂の量を一定とし、湾曲の度合いに応じて、塗布する液状樹脂を体積収縮率に基づき選択するようにしてもよい。例えば、矯正すべき湾曲の度合いが大きい場合(例えば反り量が1.5mmの場合)は、体積収縮率が10%のUV硬化樹脂G2を塗布し、湾曲の度合いが小さい場合(例えば反り量が0.5mmの場合)は、体積収縮率が5%のUV硬化樹脂G1を塗布し、湾曲の度合いが中程度の場合(例えば反り量が1.0mmの場合)は、UV硬化樹脂G1とUV硬化樹脂G2とを混合して、体積収縮率が7.5%となるように調整したUV硬化樹脂を生成して塗布するようにしてもよい。
【0038】
また、本発明に適用される液状樹脂は、上記したUV硬化樹脂に限定されず、外的刺激として熱を加えることにより収縮して硬化する熱硬化性樹脂であってもよい。その場合は、図1に基づき説明した湾曲矯正装置1の紫外線照射器60に替えて、加熱又は赤外線ヒータを配設し、湾曲したウエーハ10の表面10aに液状樹脂として熱硬化性樹脂を塗布した後、該加熱ヒータによって加熱して、熱硬化性樹脂を収縮させ硬化させればよい。
【符号の説明】
【0039】
1:湾曲矯正装置
2:ハウジング
2a:底部
2b:ドレン
2c:側壁
2d:開口部
2e:吸引ダクト
10:ウエーハ(板状物)
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
14:分割予定ライン
20:保持手段
21:チャックテーブル
22:回転軸
23:駆動モータ
30:液状樹脂塗布手段
31:搬送アーム
31a:摺動部
31b:水平部
31c:垂直部
32:液状樹脂噴射ノズル
32a:先端部
32b:本体部
32c:液状樹脂導入部
40:搬送手段
41:駆動ローラ
42:従動ローラ
43:パルスモータ
44:搬送ベルト
45:ガイドレール
50:高圧エアー供給手段
51:高圧エアー源
52:エアー供給路
53:開閉弁
60:紫外線照射器
70:液状樹脂供給手段
71:貯留タンク
72:供給管
72a:先端部
73:開閉バルブ
80:研削装置
81:チャックテーブル
84:研削ホイール
85:研削砥石
100:液状樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7