(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127414
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】農畜産物識別システム及び農畜産物の識別方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240912BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036557
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔦 瑞樹
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】農畜産物の個体の識別をその種別を問わずに広汎に実行することを可能にする農畜産物識別システム及び識別方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る農畜産物識別システム1は、複数の個体を含む農畜産物の第1集合AP1に関し取得した複数種類の特徴量に基づいて第1識別子を取得すると共に、農畜産物の第1集合AP1に関し取得した特徴量に基づいて第2識別子を取得するサーバ10と、第1識別子と第2識別子とを含むデータを参照データとして記憶する参照データ記憶部20と、複数の個体を含む農畜産物の第2集合AP2に関し取得した複数種類の特徴量に基づいて第1識別子を取得し、第1集合AP1についての第1識別子と第2集合AP2についての第1識別子とを照合して、第1集合AP1と第2集合AP2の同一性を判定する端末装置110と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個体を含む農畜産物の第1集合に関し取得した複数種類の特徴量に基づいて第1識別子を取得すると共に、前記第1集合に関し取得した特徴量に基づいて第2識別子を取得するサーバと、
前記第1識別子と前記第2識別子とを含むデータを参照データとして記憶する参照データ記憶部と、
複数の個体を含む農畜産物の第2集合に関し取得した複数種類の特徴量に基づいて前記第1識別子を取得し、前記第1集合についての前記第1識別子と前記第2集合についての前記第1識別子とを照合して、前記第1集合と前記第2集合の同一性を判定する端末装置と
を備えたことを特徴とする農畜産物識別システム。
【請求項2】
前記端末装置は、前記第2集合に関し取得した特徴量に基づいて前記第2識別子を取得するよう構成されると共に、前記第1集合についての前記第2識別子と前記第2集合についての前記第2識別子とを照合して、前記第1集合と前記第2集合に含まれる個体を照合する、請求項1に記載の農畜産物識別システム。
【請求項3】
前記第2識別子は、単一の種類の特徴量に基づいて取得される、請求項2に記載の農畜産物識別システム。
【請求項4】
前記第2識別子は、前記第1集合に含まれる複数の個体の間で値が全て異なる特徴量を特徴量として選定して取得される、請求項3に記載の農畜産物識別システム。
【請求項5】
前記端末装置は、前記第1集合に含まれる個体の数と、前記第2集合に含まれる個体の数とを照合するよう構成される、請求項2に記載の農畜産物識別システム。
【請求項6】
前記端末装置は、前記第1集合に関し前記特徴量を取得した日時から所定の閾値より大きい経過時間が経過している場合に前記第1集合の前記特徴量から得られた前記第1識別子を前記第2集合の前記第1識別子との照合の対象から除外する、請求項1に記載の農畜産物識別システム。
【請求項7】
前記端末装置は、前記第1集合と前記第2集合の同一性が判定された場合、前記参照データ記憶部から前記参照データを読み出して前記特徴量を取得するよう構成される、請求項1に記載の農畜産物識別システム。
【請求項8】
複数の個体を含む農畜産物の第1集合に関し取得した複数種類の特徴量に基づいて第1識別子を取得するステップと、
前記農畜産物の前記第1集合に関し取得した特徴量から第2識別子を取得するステップと、
前記第1識別子と前記第2識別子とを含むデータを参照データとしてデータベースに記憶するステップと、
複数の個体を含む農畜産物の第2集合に関し取得した複数種類の特徴量に基づいて前記第1識別子を取得するステップと、
前記第1集合についての前記第1識別子と前記第2集合についての前記第1識別子とを照合して、前記第1集合と前記第2集合の同一性を判定するステップと
を備えたことを特徴とする農畜産物の識別方法。
【請求項9】
前記第2集合に関し取得した前記特徴量に基づいて前記第2識別子を取得するステップと、
前記第1集合についての前記第2識別子と前記第2集合についての前記第2識別子とを照合して、前記第1集合と前記第2集合に含まれる個体を照合するステップと
を備える、請求項8に記載の農畜産物の識別方法。
【請求項10】
前記第2識別子は、単一の種類の前記特徴量に基づいて取得される、請求項9に記載の農畜産物の識別方法。
【請求項11】
前記第2識別子は、前記第1集合に含まれる複数の個体の間で値が全て異なる特徴量を特徴量として選定して取得される、請求項10に記載の農畜産物の識別方法。
【請求項12】
前記第1集合に含まれる個体の数と、前記第2集合に含まれる個体の数とを照合するステップを更に備える、請求項9に記載の農畜産物の識別方法。
【請求項13】
前記第1集合に関し前記特徴量を取得した日時から所定の閾値より大きい経過時間が経過している場合に、前記第1集合の前記特徴量から得られた前記第1識別子を前記第2集合の前記第1識別子との照合の対象から除外する、請求項8に記載の農畜産物の識別方法。
【請求項14】
前記第1集合と前記第2集合の同一性が判定された場合、前記データベースから前記参照データを読み出して前記特徴量を取得するステップを更に備える、請求項8に記載の畜産物の識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農畜産物識別システム及び農畜産物の識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農畜産物のトレーサビリティは長年研究されており、一部の高価な農産物については、パッケージやラベルに固有の識別子(二次元コード等)を付与したり、又は固有の識別子を格納したRFIDタグを埋め込んだりなどの方法により、トレーサビリティが実行されている。また、個々の農産物の個体の画像自体(例えば、メロンの皮の網目)に従い農畜産物のトレーサビリティを実行する手法も知られている。
【0003】
しかし、パッケージやラベルへの識別子の付与や、RFIDタグの埋め込みなどは高コストであり、低価格の一般的な農畜産物に見合う方法ではない。コストの問題は、農畜産物のトレーサビリティを実現する上で解決すべき問題である。また、農産物の個体の画像自体に従うトレーサビリティは、対象品目が限られるという問題がある。
【0004】
従来における農畜産物のトレーサビリティにおいては、識別子やRFIDタグ等をパッケージやラベルに付与して行うことが一般的であり、農産物の個体を識別することが難しい(個体識別性)。農畜産物の個体の追跡を行うことはできておらず、パッケージの差し替え等により農畜産物の産地等の偽装を行うことが容易である(偽装への脆弱性)。また、従来の方法では、農産物の個体の識別を、様々な農畜産物に適用することが難しいという問題がある(汎用性)。
【0005】
このように、従来のトレーサビリティの方法においては、偽装を防止しつつ、農畜産物の個体の識別をその種別を問わずに広汎に実行することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-226047号公報
【特許文献2】特開2006-146570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、農畜産物の個体の識別をその種別を問わずに広汎に実行することを可能にする農畜産物識別システム、及び識別方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の畜産物識別システムは、複数の個体を含む農畜産物の第1集合に関し取得した複数種類の特徴量に基づいて第1識別子を取得すると共に、前記第1集合に関し取得した特徴量に基づいて第2識別子を取得するサーバと、前記第1識別子と前記第2識別子とを含むデータを参照データとして記憶する参照データ記憶部と、複数の個体を含む農畜産物の第2集合に関し取得した複数種類の特徴量に基づいて前記第1識別子を取得し、前記第1集合についての前記第1識別子と前記第2集合についての前記第1識別子とを照合して、前記第1集合と前記第2集合の同一性を判定する端末装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の農畜産物の識別方法は、複数の個体を含む農畜産物の第1集合に関し取得した複数種類の特徴量に基づいて第1識別子を取得するステップと、前記農畜産物の前記第1集合に関し取得した特徴量から第2識別子を取得するステップと、前記第1識別子と前記第2識別子とを含むデータを参照データとしてデータベースに記憶するステップと、複数の個体を含む農畜産物の第2集合に関し取得した複数種類の特徴量に基づいて前記第1識別子を取得するステップと、前記第1集合についての前記第1識別子と前記第2集合についての前記第1識別子とを照合して、前記第1集合と前記第2集合の同一性を判定するステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の農畜産物識別システム及び識別方法によれば、偽装を防止しつつ、農畜産物の個体の識別をその種別を問わずに広汎に実行することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態に係る農畜産物識別システム1の全体構成を説明する概略図である。
【
図2】
図1に示すサーバ10及び端末装置110の構成の一例を説明するブロック図である。
【
図3】サーバ10が、農畜産物の第1集合AP1の構成物の複数通りの特徴量を各種の計測機器を用いて計測する様子を図示した概略図である。
【
図4】第1識別子の生成に関し説明する概略図である。
【
図5】第2識別子の生成に関し説明する概略図である。
【
図6】追加情報付与部13による追加情報の付与について説明する概略図である。
【
図7】端末装置110での第1/第2特徴量及び第1/第2識別子の取得に関し説明する概略図である。
【
図8】サーバ10が取得した第1識別子及び/又は第2識別子と端末装置110が取得した第1識別子及び/又は第2識別子とを照合部115で照合し、第1集合AP1と第2集合AP2の同一性を判定する手順を説明する概略図である。
【
図9】第1集合AP1と第2集合AP2の間の構成物(個体)の間の照合について説明する概略図である。
【
図10】サーバ10及び参照データデータベース20における参照データの取得の手順の一例を説明するフローチャートである。
【
図11】第1集合AP1と第2集合AP2との間の照合の手順について説明するフローチャートである。
【
図12A】マハラノビス汎距離の演算について説明する概略図である。
【
図12B】マハラノビス汎距離の演算について説明する概略図である。
【
図13】第2の実施の形態に係る農畜産物識別システム1のサーバ10及び端末装置110の構成の一例を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0013】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0014】
[第1の実施の形態]
図1及び
図2を参照して、第1の実施の形態に係る農畜産物識別システムを説明する。
図1は本システム1の全体構成を説明する概略図であり、
図2はサーバ10及び端末装置110の構成の一例を説明するブロック図である。
【0015】
この農畜産物識別システム1は、サーバ10と、端末装置110とをネットワークNWを介して接続して構成される。サーバ10は、参照データデータベース20と連携している。サーバ10は、農畜産物の生産地等で生産された農畜産物の第1集合AP1の構成物の各種特徴量を計測して、その計測値(特徴量)に従って第1識別子を生成し、当該農畜産物の第1集合AP1に付与する。付与された第1識別子は、参照データとして参照データデータベース20に格納される。すなわち、本システム1は、農畜産物の集合体を識別の対象とし、その集合体の構成物の個々の特徴を示す特徴量を計測し、その特徴量に従って識別子を生成し、農畜産物の識別に利用することを可能としている。
【0016】
一方、端末装置110は、生産地より下流の流通拠点や販売店などに配置され、流通拠点や販売店に届いた農畜産物の第2集合AP2の構成物の特徴量を各種計測機器(例えば糖酸度計130、重量計140、分光光度計150)を用いて測定し、その計測値に従って第1識別子を生成・付与する。本システム1は、第1集合AP1の第1識別子と第2集合AP2の第1識別子を比較することにより、農畜産物の同一性を判定することが可能に構成される。
【0017】
なお、
図1において、サーバ10、及び端末装置110が1つずつ図示されているが、これは図示の簡略化のためであり、サーバ10は1つには限られず、複数であってよい。すなわち、サーバ10は、例えば農畜産物の複数の生産地に分散して配置することができる。また、端末装置110は、農畜産物の流通拠点や販売店等に複数個設けられ得る。
【0018】
図2に示すように、サーバ10は、第1特徴量に基づいて第1識別子を取得する第1識別子取得部11、第2特徴量に基づいて第2識別子を取得する第2識別子取得部12、第2特徴量に従って生成される追加情報を付与する追加情報付与部13、情報を送受信する情報送受信部14を備えることができる。また、端末装置110は、第1特徴量に基づいて第1識別子を取得する第1識別子取得部111、第2特徴量に基づいて第2識別子を取得する第2識別子取得部112、情報を送受信する情報送受信部114、生成された第1/第2識別子を参照データと照合する照合部115を備えることができる。
【0019】
図3に示すように、サーバ10は、農畜産物の第1集合AP1の構成物の複数通りの特徴量を各種の計測機器(例えば糖酸度計30、重量計40、分光光度計50)を用いて計測する。特徴量は、ここでは、一例として、色度、彩度、重量、糖度である。第1識別子取得部11は、これらの特徴量を統合して第1識別子を取得する。
【0020】
第1集合AP1は、例えば、パッケージに収容された複数個のミニトマトの集合であるが、これに限定されるものではない。第1集合AP1の構成物の第1特徴量は特に特定のものに限定されないが、例えば糖度、酸度、重量、大きさ、色度、彩度等のうちの少なくとも2つ以上である。
図1では、各種計測機器の例として、糖酸度計30、重量計40、分光光度計50を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、これ以外に大きさを計測するノギス、水分量を計測する水分量計等が含まれても良い。
【0021】
また、サーバ10は、第2識別子取得部12を有し、農畜産物の第1集合AP1の構成物の特徴量の1つである特徴量(第2特徴量)を計測し、その第2特徴量に基づいて第2識別子を取得することができる。第2特徴量は、第1特徴量とは異なり、単一の種類の特徴量である。第2特徴量に基づいて第2識別子が生成されることにより、第1集合AP1と第2集合AP2との間の同一性に加え、複数の集合の中の個体の間の同一性も判断することが可能になる。なお、個体間の同一性の判断が不要である場合には、本システムにおいて第2識別子の生成を省略することも可能である。なお、第2特徴量は、複数の特徴量を合成して得られた単一の特徴量であってもよい。また、第2特徴量は、第1特徴量とは別の特徴量であってもよいし、同一の特徴量であってもよい。
【0022】
第2特徴量としては、第1集合AP1の特徴量のうち、第1集合AP1の構成物の間で値が全て異なる特徴量が第2特徴量として選択される。加えて、第2特徴量として選定される特徴量は、経時的に値が変化する程度が小さい特徴量が好適である。詳しくは後述する。取得された第1識別子及び第2識別子は参照データとして参照データデータベース20に格納される。
【0023】
端末装置110は、前述の通り、農畜産物の流通拠点や販売店に配置される。端末装置110は、生産地から流通して来た農畜産物の第2集合AP2の構成物の複数通りの特徴量(第1特徴量)を各種計測機器(例えば糖酸度計130、重量計140、分光光度計150)を用いて計測し、その複数通りの第1特徴量を用いて第1識別子を演算する。端末装置110と連携する計測機器は、
図1では、例えば糖酸度計130、重量計140、分光光度計150であるが、これに限定されるものではない。また、複数の端末装置110の間で計測機器の種類がすべて一致している必要はなく、取得される識別子の同一性等が判断できるのであれば、装置の種類は不問である。
【0024】
また、端末装置110は、農畜産物の第2集合AP2の構成物の特徴量のうちの1つの特徴量(第2特徴量)を計測し、その第2特徴量に基づいて第2識別子を取得するよう構成することができる。
【0025】
図4を参照して、第1識別子の生成に関し説明する。サーバ10は、前述のように各種計測機器を用いて複数通りの特徴量(例えば色度、彩度、重量、糖度)を第1集合AP1の構成物の各々に関し取得可能である。これらの複数通りの特徴量の一部(2種類以上)を、第1識別子取得部11は第1特徴量として選択する。例えば、色度、彩度、重量、糖度のうち、色度、彩度、糖度の3通りの特徴量が第1特徴量として選択され、第1識別子が生成される。
【0026】
図5を参照して、第2識別子の生成に関し説明する。サーバ10は、前述のように各種計測機器を用いて複数通りの特徴量(例えば色度、彩度、重量、糖度)を第1集合AP1の構成物の各々に関し取得可能であるが、これらの特徴量のうちの1つであって、第1特徴量として選択されなかった特徴量が第2特徴量として選択され得る。第2特徴量として選択される特徴量は、複数の構成物の間で値が全て異なる特徴量とされるのが好適である。加えて、第2特徴量として選択される特徴量は、経時的に値が変化する程度が小さい特徴量が好適である。
図5の例の場合、重量は全ての構成物の間で値が異なり、且つ経時的な値の変化が小さいと推定されることから、第2特徴量として選択され、この重量のデータに従って第2識別子が生成される。
【0027】
図6を参照して、追加情報付与部13による追加情報の付与について説明する。追加情報付与部13により生成される追加情報は、第2特徴量を軸として特徴量の情報を並び替えることで生成される。その際、個々のデータには、第1集合AP1を特定するグループ番号、及び第1集合AP1中の個々の構成物を特定する個体番号が付与される。
【0028】
図7を参照して、端末装置110での第1/第2特徴量及び第1/第2識別子の取得に関し説明する。端末装置110では、サーバ10と連携しているのと同様の各種計測機器を備え、同一の特徴量を取得可能にすることもできるが、端末装置110が有している各種計測機器は、サーバ10と連携している各種計測機器とは一部異なっていても良く、取得する特徴量も一部異なっていても良い。例えば、
図7に示すように、端末装置110では色度、彩度、重量のみを計測可能とし、糖度は測定対象外とされていてもよい。
【0029】
この場合でも、第1識別子取得部111において、色度と彩度の測定値のみに基づいて第1識別子を生成することが可能であり、また、第2識別子取得部112において、重量の測定値に基づいて第2識別子を生成することができる。そして、
図8に示すように、サーバ10が取得した第1識別子及び/又は第2識別子と端末装置110が取得した第1識別子及び/又は第2識別子とを照合部115で照合し、第1集合AP1と第2集合AP2の同一性が判断される。同一性の判断は、後述するように、第1識別子の間のマハラノビス汎距離の積算距離を演算することにより行うことができる。具体的には、最もマハラノビス汎距離の積算距離が小さい第1集合AP1と第2集合AP2が同一であると判定され得る。
【0030】
図9を参照して、第1集合AP1と第2集合AP2の間の構成物(個体)の間の照合について説明する。この個体間の照合の手順は、端末装置110側の選択により任意に実行される。端末装置110での第2集合AP2の計測により得られたクエリデータは、第2特徴量である重量に従ってデータの並び替えが実行される。その状態において参照データとクエリデータとの照合が実施され、第1集合AP1と第2集合AP2との同一性が判定される。同一とされた第1集合AP1と第2集合AP2との間で、個体番号が対比され、個体番号が一致するデータは、同一の個体を示していると判定される。
【0031】
図10のフローチャートを参照して、サーバ10及び参照データデータベース20における参照データの取得の手順の一例を説明する。まず、サーバ10は、各種計測機器30~50等を用いて、各グループ(第1集合AP1)に所属する個体(構成物)の特徴量を測定する(ステップS11)。次に、得られた特徴量のうちの一部が第1特徴量として選定され、その第1特徴量又はその合成変数から第1識別子が生成される(ステップS12)。
【0032】
個体間の照合が行われる場合、第2特徴量が上記の基準により複数の特徴量の中から選択され、選択された第2特徴量(又はその合成変数)に基づいて第2識別子が生成される(ステップS13)。そして、生成された第2特徴量に従ってデータの並べ替えが行われ、上記のような追加情報が付与される(ステップS14)。全ての第1集合AP1(参照グループ)について特徴量の取得が完了すると(ステップS15)、生成された第1識別子、第2識別子、追加情報が、各個体の所属グループの情報と共に参照データデータベース20に保存される(ステップS16)。
【0033】
図11のフローチャートを参照して、第1集合AP1と第2集合AP2との間の照合の手順について説明する。まず、端末装置110は、第2集合AP2に所属する構成物(個体)の特徴量を計測し、第1識別子及び第2識別子を生成する(ステップS21、S22)。なお、第1識別子の生成に用いた第1特徴量のデータは、必要に応じて次元圧縮処理の対象とされる(ステップS23)。次元圧縮処理には、主成分分析、PLS回帰分析、t-SNEのいずれか、又はそれらの組み合わせを適用することができる。
【0034】
端末装置110で生成された第1識別子は、参照データデータベース20に格納されている全ての参照データと順次比較される(ステップS24)。参照データが参照データデータベース20から取り出されると(ステップS31)、まず、参照データに係る第1集合AP1内の構成物の個数が、第2集合AP2の構成物の個数と一致するか否かが判定される(ステップS32)。
【0035】
次に、ステップS31で取り出された参照データが取得された日時から現在までの経過時間が所定の閾値以内であるか否かが判定される。閾値Th1以内であれば、その参照データの特徴量から得られた第1識別子は端末装置110で得られたデータとの比較の対象とされ(ステップS33)、閾値Th1を超えているようであれば、その参照データの特徴量から得られた第1識別子は比較の対象から除外され、次の参照データが読み出される(N)。なお、比較の対象から除外する際、第1識別子を比較の対象から除外するようデータ処理がされてもよいし、参照データ自体がデータベースから除外されてもよい。
【0036】
ステップS33で閾値Th1以内と判定された参照データの第1特徴量のデータは、必要に応じて次元圧縮処理の対象とされる(ステップS34)。その後、参照データ(第1集合AP1)中の構成物の特徴量と端末装置110により得られた第2集合AP2中の構成物の特徴量のマハラノビス汎距離の計算が行われ(ステップS35)、もっとも距離が近い個体同士の間で距離が積算され、マハラノビス汎距離として算出される(ステップS36、
図12A、
図12B参照)。
【0037】
すべての参照データとのマハラノビス汎距離の演算が終了すると、ステップS37に移行して、複数の参照データのうち、積算距離が閾値Th2以下である参照データが存在するか否かが判定される。そのような参照データが無い場合(N)、端末装置110のディスプレイに「一致なし」のメッセージが表示される(ステップS38)。
【0038】
一方、積算距離が閾値Th2である参照データが存在する場合(Y)、それら参照データのうち、積算距離が最も小さい参照データに係る第1集合AP1と第2集合AP2とが同一のものであると判定され得る(ステップS39)。その後、任意に第2集合AP2の構成物と参照データに係る第1集合AP1の構成物との間の個体間照合が、第2識別子に従って実行され(ステップS40)、一致すると判定された第1集合AP1に係る参照データが端末装置110のディスプレイに表示される(ステップS41)。
【0039】
以上説明したように、第1の実施の形態の農畜産物識別システム1によれば、農畜産物の第1集合AP1を構成する構成物の複数の特徴量である第1特徴量に基づいて第1識別子がサーバ10において生成され、参照データとして参照データデータベース20に格納される。農畜産物の流通拠点や販売店では、端末装置110により農畜産物の第2集合AP2を構成する構成物の第1特徴量が計測され、これにより第1識別子が取得される。端末装置110の照合部115は、参照データの第1識別子と、計測データの第1識別子との比較により、第1集合AP1と第2集合AP2の間の同一性を判断することができる。また、適宜第2識別子により得られた追加情報に従い、第1集合AP1及び第2集合AP2の中の構成物の間の一致性も判断することができる。このように、第1の実施の形態によれば、農畜産物の集合の構成物の特徴量を直接計測して第1識別子とされるので、農畜産物の産地等の偽装を防止しつつ、農畜産物の個体の識別をその種別を問わずに広汎に実行することが可能になる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、
図13を参照して、第2の実施の形態の農畜産物識別システム1を説明する。この第2の実施の形態の農畜産物識別システム1の全体構成は、第1の実施の形態(
図1)と同一であってよい。また、サーバ10の構成(
図2)も同様であってよい。ただし、端末装置110の構成が第1の実施の形態と異なっている。具体的には、端末装置110は、参照データデータベース20から、第1識別子/第2識別子に関する情報を第1識別子取得/読出部111A、及び第2識別子取得/読出部112Aを介して読出し、これを端末装置110において利用することが可能にされている。
【0041】
第1の実施の形態で説明したように、端末装置110は、サーバ10と連携する各種計測機器を有していない場合がある。この場合、第1集合AP1と第2集合AP2の同一性が判断された後、当該第1集合APについて得られている参照データを読み出して、第2集合AP2についての特徴量として取得する。このように、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることが可能とされることに加え、参照データデータベース20の格納データを端末装置110において利用することができ、農畜産物の情報の供給をより適切なものにすることができる。
【0042】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…農畜産物識別システム
10…サーバ
11…第1識別子取得部
12…第2識別子取得部
13…追加情報付与部
14…情報送受信部
20…参照データデータベース
30、130…糖酸度計
40、140…重量計
50、150…分光光度計
110…端末装置
111…第1識別子取得部
111A…第1識別子取得/読出部
112…第2識別子取得部
112A…第2識別子取得/読出部
114…情報送受信部
115…照合部
AP1…第1集合
AP2…第2集合