(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127416
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036559
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】中本 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】長谷 岳誠
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 有信
(72)【発明者】
【氏名】山下 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩間 元孝
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033AA23
2H033BA25
2H033BA27
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB17
2H033BB21
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB37
2H033BE03
2H033CA07
2H033CA17
2H033CA41
(57)【要約】
【課題】遮蔽部材の反りを抑制する。
【解決手段】回転体と加熱源との間に配置され加熱源から回転体への加熱エネルギーを遮蔽する遮蔽部材27と、遮蔽部材27を支持する支持部材28と、を備える加熱装置であって、支持部材28は、互いに向かい合う方向に突出し遮蔽部材27を挟んで支持する第一支持部31及び第二支持部32を有し、第一支持部31及び第二支持部32のそれぞれの頂部31a,32aが、回転体の長手方向において互いにずれた位置に配置される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、
加熱エネルギーを放射して前記回転体を加熱する加熱源と、
前記回転体と前記加熱源との間に配置され前記加熱源から前記回転体への前記加熱エネルギーを遮蔽する遮蔽部材と、
前記遮蔽部材を支持する支持部材と、
を備える加熱装置であって、
前記支持部材は、互いに向かい合う方向に突出し前記遮蔽部材を挟んで支持する第一支持部及び第二支持部を有し、
前記第一支持部及び前記第二支持部のそれぞれの頂部が、前記回転体の長手方向において互いにずれた位置に配置されることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記第一支持部及び前記第二支持部のぞれぞれの前記頂部が接触する前記遮蔽部材上の接触点同士の間の前記回転体の長手方向とは直交する方向の間隔をAとし、
前記第一支持部及び前記第二支持部のぞれぞれの前記頂部同士の間の前記回転体の長手方向とは直交する方向の間隔をBとすると、
前記回転体が前記加熱源によって加熱されない状態では、A<Bの関係を満たし、
前記回転体が前記加熱源によって加熱されて所定の目標温度に達した状態では、A>Bの関係を満たす請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第一支持部及び前記第二支持部の少なくとも一方が、前記回転体の長手方向へ伸び当該長手方向に対して傾斜する傾斜面を有する請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記傾斜面は、前記回転体の長手方向に対して0°より大きく90°より小さい角度で傾斜する請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記支持部材は、線膨張係数が4.0×10-6/℃以上の材料により構成される請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記支持部材が、樹脂により構成される請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記第一支持部及び前記第二支持部が、成形型により成形可能な形状に形成される請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記支持部材は、移動可能に構成される請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の加熱装置を用いて未定着画像を担持する記録媒体を加熱し、前記未定着画像を前記記録媒体に定着させることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の加熱装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置の一例として、用紙などの記録媒体を加熱して記録媒体上の未定着画像を記録媒体に定着させる定着装置が知られている。
【0003】
一般的に、定着装置は、互いに接触してニップ部を形成する一対の回転体と、これらの回転体のうちの少なくとも一方を加熱する加熱源を備えている。回転体が加熱された状態において、回転する一対の回転体同士の間(ニップ部)に未定着画像を担持する用紙が進入すると、用紙上の未定着画像が加熱及び加圧されて定着される。
【0004】
このとき、用紙が通過しない回転体上の非通紙領域においては、通紙に伴う熱の消費がされにくいため、温度上昇する傾向にある。このため、連続印刷した場合に、非通紙領域における回転体の温度が過剰に昇温するといった問題がある。
【0005】
このような温度上昇の問題を改善するため、従来では、加熱源から回転体へ放射される加熱エネルギーを遮蔽する遮蔽部材を非通紙領域に配置し、非通紙領域において加熱源から回転体へ付与される熱量を調整する技術が提案されている(例えば、特許文献1:特開2014-59382号公報参照)。
【0006】
ところで、遮蔽部材が回転体に接触すると、回転体が損傷したり、回転体の熱が遮蔽部材に奪われて回転体の温度が部分的に低下したりするなどの問題が生じる。そのため、遮蔽部材は、通常、回転体に接触しない位置に配置される。しかしながら、製造時に遮蔽部材に反りが生じると、回転体あるいはその他の周辺部材に対して遮蔽部材が接触する虞がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、遮蔽部材の反りを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、回転体と、加熱エネルギーを放射して前記回転体を加熱する加熱源と、前記回転体と前記加熱源との間に配置され前記加熱源から前記回転体への前記加熱エネルギーを遮蔽する遮蔽部材と、前記遮蔽部材を支持する支持部材と、を備える加熱装置であって、前記支持部材は、互いに向かい合う方向に突出し前記遮蔽部材を挟んで支持する第一支持部及び第二支持部を有し、前記第一支持部及び前記第二支持部のそれぞれの頂部が、前記回転体の長手方向において互いにずれた位置に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遮蔽部材の反りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る定着装置の斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る回転体保持部材の斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る遮蔽部材の支持構造及び移動機構を示す斜視図である。
【
図6】反りがある場合の遮蔽部材の組み付け状態を示す図である。
【
図7】本発明の第一実施形態に係る支持部材の断面図である。
【
図8】支持部材の孔部内に遮蔽部材の取付部が挿入された状態を示す断面図である。
【
図9】支持部材が熱膨張している途中の状態を示す断面図である。
【
図10】支持部材が熱膨張して遮蔽部材の反りが低減又は解消された状態を示す図である。
【
図11】遮蔽部材に
図8とは反対向きの反りがある場合の支持部材の構成であって、支持部材の孔部内に遮蔽部材の取付部が挿入された状態を示す断面図である。
【
図12】支持部材が熱膨張している途中の状態を示す断面図である。
【
図13】支持部材が熱膨張して遮蔽部材の反りが低減又は解消された状態を示す図である。
【
図14】支持部材の頂部同士の間隔と遮蔽部材の接触点同士の間隔との関係を示す図である。
【
図15】遮蔽部を支持する傾斜面の傾斜角度を大きくした例を示す断面図である。
【
図16】成形型を用いて支持部材を成形する例を示す断面図である。
【
図17】傾斜面を有しない支持部材の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字及び図形などの意味を持つ画像を形成するだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を形成することも意味する。まず、
図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置1000は、用紙などのシート状の記録媒体に画像を形成する画像形成部100と、記録媒体に画像を定着させる定着部200と、記録媒体を画像形成部100へ供給する記録媒体供給部300と、記録媒体を装置外へ排出する記録媒体排出部400を備えている。
【0014】
画像形成部100には、作像ユニットとしての4つのプロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkと、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkが備える感光体2に静電潜像を形成する露光装置6と、記録媒体に画像を転写する転写装置8が設けられている。
【0015】
各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色のトナー(現像剤)を収容している以外、基本的に同じ構成である。具体的に、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体としての感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電部材3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面を清掃するクリーニング部材5を備えている。
【0016】
転写装置8は、中間転写ベルト11と、一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13を備えている。中間転写ベルト11は、無端状のベルト部材であり、複数の支持ローラによって張架されている。一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11の内側に4つ設けられている。各一次転写ローラ12が中間転写ベルト11を介して各感光体2に接触することにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に一次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11の外周面に接触し、二次転写ニップを形成している。
【0017】
定着部200においては、画像が転写された記録媒体を加熱する加熱装置としての定着装置20が設けられている。定着装置20は、互いに接触する一対の回転体21,22などを備えている。
【0018】
記録媒体供給部300には、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15が設けられている。以下、「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は、紙(用紙)だけでなくOHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。また、「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙及びアート紙など)、トレーシングペーパなども含まれる。
【0019】
記録媒体排出部400には、用紙Pを画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙Pを載置する排紙トレイ18が設けられている。
【0020】
次に、
図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置1000の印刷動作について説明する。
【0021】
画像形成装置1000において印刷動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2及び転写装置8の中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が、回転を開始し、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触することにより静止し、用紙Pに転写される画像が形成されるまで用紙Pの搬送が一旦停止される。
【0022】
各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、まず、帯電部材3によって、感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が、各感光体2の表面(帯電面)を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4がトナーを供給し、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。なお、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkのいずれか一つを使用して単色画像を形成したり、いずれか2つ又は3つのプロセスユニットを用いて2色又は3色の画像を形成したりすることもできる。また、中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後は、クリーニング部材5によって各感光体2上の残留トナーなどが除去される。
【0023】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、用紙Pは、定着装置20へと搬送され、互いに接触する一対の回転体21,22の間を通過する。このとき、用紙P上のトナー画像が一対の回転体21,22によって加熱及び加圧されることにより、トナー画像が用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、記録媒体排出部400へ搬送され、排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出される。これにより、一連の印刷動作が終了する。
【0024】
続いて、
図2に基づき、本発明の一実施形態に係る定着装置20の基本構成について説明する。
【0025】
図2に示されるように、本実施形態に係る定着装置20は、一対の回転体21,22のほか、加熱源23、ニップ形成部材24、補強部材25、反射部材26、遮蔽部材27などを備えている。
【0026】
一対の回転体21,22のうち、一方の回転体(第一回転体)21は、用紙Pの未定着画像担持面に接触して用紙Pに未定着画像(未定着トナーT)を定着させる定着回転体である。他方の回転体(第二回転体)22は、定着回転体21の外周面に対して相対的に加圧され、定着回転体21に対して接触する加圧回転体である。
【0027】
本実施形態において、定着回転体21は、可撓性を有する無端状のベルト部材(定着ベルト)により構成されている。一方、加圧回転体22は、弾性層などを有するローラ(加圧ローラ)により構成されている。なお、定着回転体21としては、ベルト部材のほか、ローラを用いてもよい。また、加圧回転体22も、ローラである場合に限らず、ベルト部材により構成されてもよい。
【0028】
具体的に、定着回転体21を構成するベルト部材は、その内周面側から外周面側に向かって順に、基材、弾性層、離型層を有する。定着回転体21の基材の材料としては、ニッケル、ステンレスなどの金属材料でもよいし、ポリイミドなどの樹脂材料であってもよい。定着回転体21の弾性層の材料としては、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴム材料が好ましい。定着回転体21の離型層の材料は、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)などが用いられる。また、基材の厚さは例えば30~50μmであり、弾性層の厚さは例えば100~300μmであり、離型層の厚さは例えば10~50μmである。特に、小型化及び低熱容量化を図る場合は、定着回転体21の全体の厚さが1mm以下で、直径が30mm以下であることが好ましい。
【0029】
加圧回転体22を構成するローラは、中実の鉄製芯材と、この芯材の外周面に設けられる弾性層と、弾性層の外周面に設けられる離型層を有する。加圧回転体22の芯材は、中実の部材であるほか、中空の部材であってもよい。加圧回転体22の弾性層の材料としては、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが用いられる。加圧回転体22の離型層の材料としては、PFA又はPTFEなどのフッ素樹脂が挙げられる。
【0030】
加熱源23は、赤外線などの電磁波を含む加熱エネルギーを放射して対象物を加熱する非接触式の加熱源である。本実施形態においては、加熱源23として、赤外線(赤外光)を放射して対象物を加熱するハロゲンヒータを用いている。加熱源23であるハロゲンヒータは、定着回転体21の内側に配置されており、ハロゲンヒータから赤外線が放射されると、赤外線が定着回転体21の内周面に照射され、定着回転体21が内側から加熱される。なお、加熱源23としては、ハロゲンヒータのほか、カーボンヒータ、あるいは電磁誘導加熱(IH)方式の加熱源であってもよい。
【0031】
ニップ形成部材24は、定着回転体21の内側に配置され、加圧回転体22との間に定着回転体21を挟んでニップ部Nを形成する部材である。ニップ形成部材24が、定着回転体21を介して加圧回転体22の外周面に接触することにより、定着回転体21と加圧回転体22との間にニップ部Nが形成される。
【0032】
補強部材25は、ニップ形成部材24を補強する部材である。補強部材25は、定着回転体21に接触するニップ形成部材24の面とは反対側の面を支持する。これにより、加圧回転体22からの加圧力が補強部材25によって受け止められるため、加圧力によるニップ形成部材24の撓みが抑制され、均一な幅のニップ部Nが得られる。
【0033】
反射部材26は、加熱源23から放射される加熱エネルギーを定着回転体21に向けて反射する部材である。本実施形態においては、反射部材26が、加熱源23と補強部材25との間に配置されている。このため、加熱源23から加熱エネルギーが放射されると、加熱エネルギーは反射部材26によって定着回転体21へ反射される。また、反射部材26によって、補強部材25への加熱エネルギーの照射も抑制される。これにより、定着回転体21が効率良く加熱されると共に、省エネルギー化も図れる。
【0034】
遮蔽部材27は、加熱源23と定着回転体21との間に介在し、加熱源23から定着回転体21への加熱エネルギーを遮蔽する部材である。ここで、「遮蔽する」とは、加熱エネルギーを遮ることを意味し、例えば、加熱エネルギーを反射すること、あるいは、加熱エネルギーを吸収することも含む概念である。遮蔽部材27は、例えば、厚さ0.1mm~1.0mmの金属板を、定着回転体21の内周面に沿った円弧状の断面形状に形成して構成される。
【0035】
また、遮蔽部材27は、画像形成装置本体に設けられるモータなどの駆動源によって、
図2中の実線にて示される位置と二点鎖線にて示される位置との間で矢印C方向に移動可能に構成されている。
【0036】
遮蔽部材27が、
図2中の二点鎖線にて示される位置へ移動した状態においては、遮蔽部材27が加熱源23と定着回転体21との間の加熱エネルギー照射位置に配置されるため、加熱源23から放射される加熱エネルギー(本実施形態の場合、赤外線)は遮蔽部材27によって遮蔽される。一方、遮蔽部材27が
図2中の実線にて示される位置へ移動すると、遮蔽部材27が加熱源23と定着回転体21との間から退避するため、遮蔽部材27による加熱エネルギーの遮蔽が解除される。このように、遮蔽部材27は、定着回転体21内において、加熱源23からの加熱エネルギーを遮蔽する遮蔽位置(
図2中の二点鎖線の位置)と、その遮蔽位置から退避した退避位置(
図2中の実線の位置)との間で移動可能に構成されている。
【0037】
図3は、本発明の一実施形態に係る定着装置20の斜視図である。
【0038】
図3に示されるように、遮蔽部材27は、その長手方向両端部側に配置される一対の遮蔽部27aと、一対の遮蔽部27a同士を連結する連結部27bを有している。各遮蔽部27aは、通紙可能な最大幅の用紙Pが通過する最大通紙領域(最大記録媒体通過領域)W1よりも両外側の非通紙領域W2に配置されている。このため、遮蔽部材27が上記遮蔽位置に配置されると、遮蔽部27aが加熱源23と定着回転体21との間に配置され、非通紙領域W2における加熱エネルギーの照射が遮蔽される。一方、連結部27bは、最大通紙領域W1内における加熱エネルギーの照射をなるべく遮蔽しないように、遮蔽部27aよりも定着回転体21の回転方向へ細く形成されている。
【0039】
また、
図3に示されるように、定着回転体21は、その長手方向Xの両端部側に配置される一対の回転体保持部材29によって回転可能に保持される。なお、ここでいう「長手方向」とは、定着回転体21の回転方向に対して直交し、かつ、定着回転体21の外周面に沿った方向を意味する。すなわち、「長手方向」は、
図3中の矢印Xにて示される方向であり、加圧回転体22の長手方向又は回転軸方向、遮蔽部材27の長手方向、あるいは定着回転体21と加圧回転体22との間(ニップ部N)を通過する用紙の幅方向(用紙搬送方向とは交差する方向)と平行な方向でもある。
【0040】
図4は、本発明の一実施形態に係る回転体保持部材29の斜視図である。
【0041】
図4に示されるように、回転体保持部材29は、定着回転体21の長手方向端部内に挿入される断面C字状の保持部29aと、保持部29aよりも大きい外径に形成された規制部29bと、規制部29bから突出するように設けられる固定部29cを有している。規制部29bは、少なくとも定着回転体21の外径よりも大きく形成されており、定着回転体21に長手方向Xの寄り(長手方向への移動)が生じた場合にその寄りを規制する。一方、保持部29aは、定着回転体21の内径以下の大きさに形成され、定着回転体21の長手方向端部内に挿入されることにより、定着回転体21を内側から回転可能に保持する部分である。固定部29cは、定着装置の側板などのフレーム部材に固定される部分である。固定部29cが定着装置のフレーム部材に固定されることにより、定着回転体21が回転体保持部材29を介して回転可能に支持される。
【0042】
図5は、本発明の一実施形態に係る遮蔽部材27の支持構造及び移動機構を示す斜視図である。
【0043】
図5に示されるように、遮蔽部材27は、その長手方向端部側に配置される支持部材28によって支持される。なお、遮蔽部材27は、
図5に示される長手方向端部側とは反対側においても同じように、支持部材28によって支持される。具体的に、遮蔽部材27は、その長手方向両端部から突出する一対の取付部27cを有し、各取付部27cが各支持部材28に設けられる孔部28a内に挿入されることにより、遮蔽部材27が各支持部材28によって支持される。また、各支持部材28は、ガイド部として機能する突起28bを有している。この突起28bが、回転体保持部材29に設けられる円弧状のガイド溝29dに沿って移動することにより、支持部材28が
図5中の矢印C方向(定着回転体21の回転方向又はその反対方向)へ移動する。これにより、遮蔽部材27が遮蔽位置又は退避位置へ移動する。
【0044】
本実施形態に係る定着装置20は、次のように動作する。
【0045】
印刷動作が開始されると、加圧回転体22が
図2中の矢印方向(時計回り)への回転を開始し、これに伴って定着回転体21が従動回転する。また、通電により加熱源23が発熱し、加熱源23によって定着回転体21の加熱が開始される。そして、定着回転体21の温度を検知する温度センサなどの検知温度に基づいて加熱源23の発熱量が制御されることにより、定着回転体21の温度が所定の定着温度(画像定着可能な温度)となるように維持される。この状態において、未定着画像(未定着トナーT)を担持する用紙Pが、定着回転体21と加圧回転体22との間(ニップ部N)へ搬送されることにより、用紙Pが加熱及び加圧され、用紙P上の画像が用紙Pに定着される。その後、用紙Pは、ニップ部Nを通過し、定着装置20から排出される。
【0046】
ここで、用紙が通過しない非通紙領域W2(
図3参照)においては、通紙に伴う熱の消費がされにくいため、定着回転体21の温度が上昇する傾向にある。特に、用紙が連続印刷される場合は、非通紙領域W2における定着回転体21の温度が過度に上昇する虞がある。そのため、定着回転体21の温度が過度に上昇する虞がある場合は、遮蔽部材27を遮蔽位置(
図2中の二点鎖線にて示される位置)へ移動させる。遮蔽部材27が遮蔽位置へ移動すると、一対の遮蔽部27aが非通紙領域W2における加熱源23と定着回転体21との間に配置されるため、加熱源23から定着回転体21への加熱エネルギーが遮蔽される。これにより、非通紙領域W2における定着回転体21の過度な温度上昇が抑制されるため、定着回転体21の温度を適正な温度に維持できる。
【0047】
なお、各遮蔽部27aは、最大通紙領域W1よりも外側に配置される場合に限らず、最大通紙領域W1よりも内側に配置されてもよい。例えば、各遮蔽部27aを、最大通紙領域W1よりも内側で、最小通紙領域よりも外側に配置してもよい。その場合、最小サイズの用紙が連続通紙された場合の非通紙領域における定着回転体21の温度上昇を抑制できる。
【0048】
ところで、遮蔽部材27は長手状に形成されているため、成形又は加工の過程において反りが発生することがある。特に、遮蔽部材27の細長い連結部27bにおいては、成形限界によって反りが発生しやすい。通常、遮蔽部材27は、
図6中の実線にて示されるように、定着回転体21に対して接触しないように配置される。しかしながら、
図6中の点線にて示されるように、遮蔽部材27に反りが発生した場合は、遮蔽部材27がその長手方向に渡って曲線状に撓み、遮蔽部材27の長手方向中央部分が定着回転体21の内周面に対して矢印D方向に接近するため、遮蔽部材27の長手方向中央部分が定着回転体21に接触する虞がある。
【0049】
また、部品組み立て完了時点で遮蔽部材27が定着回転体21に対して非接触に配置されたとしても、定着回転体21が回転すると、回転に伴う定着回転体21の変形によって定着回転体21が遮蔽部材27に接触する虞がある。特に、生産性が高い(印刷速度が速い)高速機においては、回転時の定着回転体21の変形が大きくなるため、定着回転体21と遮蔽部材27が接触する可能性が高くなる。
【0050】
そして、万が一、遮蔽部材27と定着回転体21とが接触した場合は、定着回転体21が損傷したり、定着回転体21の熱が遮蔽部材27に奪われて定着回転体21の温度が部分的に低下したりするなどの問題が生じる。そのため、遮蔽部材27と定着回転体21との接触を回避する対策が必要となる。
【0051】
そこで、本発明においては、遮蔽部材27に反りなどの変形があっても、遮蔽部材27が定着回転体21に接触しないようにするため、次のような構成を採用している。
【0052】
図7は、本発明の第一実施形態に係る支持部材28の断面図である。
【0053】
図7において、支持部材28の右側X1は、定着回転体21の長手方向における内側(中央側)に相当し、これとは反対の左側X2は、定着回転体21の長手方向における外側に相当する。また、支持部材28の上側Y1は、定着回転体21の外径側に相当し、下側Y2は、定着回転体21の内径側に相当する。以下、
図7において、「右側」、「左側」、「上側」、「下側」を、それぞれ「長手方向内側」、「長手方向外側」、「外径側」、「内径側」と称し、支持部材28の構成について説明する。
【0054】
図7に示されるように、支持部材28の孔部28aには、互いに向かい合う方向に突出する第一支持部31及び第二支持部32が設けられている。第一支持部31及び第二支持部32は、孔部28a内に挿入される遮蔽部材27の取付部27cを支持する部分として機能する。
【0055】
第一支持部31及び第二支持部32は、断面三角形状に形成されており、互いに最も接近する部分に頂部31a,32aを有している。また、第一支持部31及び第二支持部32は、それぞれの頂部31a,32aから長手方向内側X1及び長手方向外側X2へ向かって伸びる傾斜面31b,32bを有している。各傾斜面31b、32bは、いずれも定着回転体21の長手方向に対して傾斜するように配置される。具体的に、第一支持部31の各傾斜面31bは、第一支持部31の頂部31aから長手方向内側X1側及び長手方向外側X2へ向かって外径方向Y1(図の上側)へ傾斜し、第二支持部32の各傾斜面32bは、第二支持部32の頂部32aから長手方向内側X1及び長手方向外側X2へ向かって内径側Y2(図の下側)へ傾斜している。
【0056】
また、第一支持部31及び第二支持部32の各頂部31a,32aは、定着回転体21の長手方向において互いにずれた位置に配置される。この場合、第一支持部31の頂部31aは、第二支持部32の頂部32aよりも長手方向内側X1に配置され、第二支持部32の頂部32aは、第一支持部31の頂部31aよりも長手方向外側X2に配置されている。
【0057】
図8は、支持部材28の孔部28a内に遮蔽部材27の取付部27cが挿入された状態を示す断面図である。
【0058】
図8に示されるように、この場合、遮蔽部材27に矢印D方向の反りが生じていることから、遮蔽部材27の取付部27cは、長手方向内側X1へ向かって外径側Y1側(図の上側)へ傾斜するように配置される。このように、取付部27cが長手方向内側X1へ向かって外径側Y1側へ傾斜する場合、
図6に示されるように、遮蔽部材27の長手方向中央側の部分が定着回転体21の内周面に対して接近するように配置される。従って、このままの状態で定着回転体21を回転させると、遮蔽部材27に対して定着回転体21が接触する虞がある。
【0059】
しかしながら、本実施形態においては、次に説明する熱膨張に伴う支持部材28の作用によって、遮蔽部材27の反りを低減又は解消することができる。以下、本実施形態に係る支持部材28の作用について詳しく説明する。
【0060】
まず、
図8に示されるように、支持部材28の孔部28a内に遮蔽部材27の取付部27cが挿入された状態においては、支持部材28が熱膨張しておらず、遮蔽部材27の反りが生じたままの状態である。
【0061】
この状態から、加熱源23による定着回転体21の加熱が開始されると、定着回転体21の温度上昇に伴って支持部材28も温度上昇するため、支持部材28が熱膨張する。そして、支持部材28が熱膨張すると、
図9に示されるように、第一支持部31及び第二支持部32が互いに接近する方向に変位し、第一支持部31及び第二支持部32の各頂部31a,32aによって遮蔽部材27の取付部27cが両側から挟まれる。
【0062】
さらに、支持部材28の熱膨張が進むと、第一支持部31及び第二支持部32の各頂部31a,32aが遮蔽部材27の取付部27cを押圧する。このとき、
図10に示されるように、取付部27cが各頂部31a,32aによって互い違いに押されることにより、取付部27cの傾きが変化する。詳しくは、第一支持部31の頂部31aが第二支持部32の頂部32aを支点として遮蔽部材27を押し下げると共に、第二支持部32の頂部32aが第一支持部31の頂部31aを支点として遮蔽部材27を押し上げることにより、遮蔽部材27の傾きが反対方向に変化する。
【0063】
このように、本実施形態においては、支持部材28が熱膨張した際に、遮蔽部材27の取付部27cが第一支持部31及び第二支持部32の各頂部31a,32aによって互い違いに押圧されることにより、遮蔽部材27の傾きが反りの方向とは反対方向に変化する。これにより、遮蔽部材27の反りが低減又は解消されるので、定着回転体21と遮蔽部材27との接触を回避できるようになる。従って、本実施形態によれば、遮蔽部材27との接触による定着回転体21の損傷及び温度低下などの問題を解消でき、信頼性の高い定着装置及び画像形成装置を提供できるようになる。
【0064】
ここで、遮蔽部材27に生じる反りは、上記のような方向の反りに限らない。すなわち、
図6及び
図8に示される反りとは反対方向の反りが発生することもある。その場合、支持部材28の構成は、遮蔽部材27の反りの方向に応じて変更すればよい。
【0065】
具体的に、遮蔽部材27に生じる反りが
図6及び
図8に示される反りとは反対方向である場合は、
図11に示されるように、第一支持部31の頂部31aと第二支持部32の頂部32aの配置を、
図8に示される例とは反対にすればよい。すなわち、第一支持部31の頂部31aを第二支持部32の頂部32aよりも長手方向外側X2に配置する。
【0066】
このように、遮蔽部材27に生じる反りの向きが反対方向である場合は、これに倣って第一支持部31及び第二支持部32の各頂部31a,32aの配置も反対にすることにより、支持部材28が熱膨張すると、
図12及び
図13に示されるように、遮蔽部材27の取付部27cが第一支持部31及び第二支持部32によって互い違いに押されるため、遮蔽部材27の傾きを反りの方向とは反対方向に変更することができる。これにより、遮蔽部材27の反りが低減又は解消される。なお、この場合は、遮蔽部材27の反りの方向が、内径側Y2から外径側Y1へ変化するため、遮蔽部材27よりも内径側Y2に配置される部材に対する遮蔽部材27の接触を回避できるようになる。
【0067】
また、上記のような熱膨張による支持部材28の作用(反り低減作用)を、より効果的に得られるようにするには、支持部材28が線膨張係数の大きい材料により構成されることが好ましい。具体的には、支持部材28が、4.0×10-6/℃以上の線膨張係数の材料により構成されることが好ましい。このように、支持部材28を4.0×10-6/℃以上の線膨張係数の材料により構成することにより、支持部材28の熱膨張に伴う反り低減作用が効果的に得られるようになるため、遮蔽部材27の反りをより確実に低減又は解消できるようになる。また、支持部材28の材料としては、樹脂などを用いることができる。
【0068】
また、遮蔽部材27の反りを確実に低減又は解消するには、
図14に示される間隔A,Bが、次のような関係を満たすことが好ましい。ここで、間隔Aは、遮蔽部材27の取付部27cが支持部材28の孔部28a内に挿入された状態において、第一支持部31及び第二支持部32のぞれぞれの頂部31a,31bが接触する遮蔽部材27上の接触点e1,e2同士の間の定着回転体21の長手方向とは直交する方向(
図14の上下方向)の間隔である。また、間隔Bは、第一支持部31及び第二支持部32のぞれぞれの頂部31a,32a同士の間の定着回転体21の長手方向とは直交する方向(
図14の上下方向)の間隔である。
図14において、(a)は、定着回転体21が加熱源23によって加熱されていない状態(常温状態)を示し、(b)は、定着回転体21が加熱源23によって加熱されて所定の目標温度(画像を定着可能な温度)に達した状態を示す。言い換えれば、(a)は、支持部材28が熱膨張する前の状態を示し、(b)は、支持部材28が完全に熱膨張した状態を示す。
【0069】
上記の如く定義される間隔A,Bについて、定着回転体21が加熱源23によって加熱されない状態においては、
図14(a)に示されるように、A<Bの関係を満たすようにする。すなわち、支持部材28が熱膨張する前の状態においては、各頂部31a,32a同士の間隔Bが遮蔽部材27の接触点e1,e2同士の間隔Aよりも大きくなるようにする。これに対して、定着回転体21が加熱源23によって加熱されて所定の目標温度に達した状態においては、
図14(b)に示されるように、A>Bの関係を満たすようにする。すなわち、支持部材28が熱膨張した状態においては、熱膨張前の状態とは反対に、各頂部31a,32a同士の間隔Bが遮蔽部材27の接触点e1,e2同士の間隔Aよりも小さくなるようにする。
【0070】
このような関係とすることにより、支持部材28が熱膨張した際に、遮蔽部材27の取付部27cが第一支持部31及び第二支持部32の各頂部31a,32aによって確実に押圧されるようになるため、遮蔽部材27の反りを確実に低減又は解消できるようになる。一方、熱膨張前の状態では、各頂部31a,32a同士の間隔Bが遮蔽部材27の接触点e1,e2同士の間隔Aよりも大きいため、孔部28a内への遮蔽部材27の挿入を行いやすく、良好な組み付け性を確保できる。
【0071】
また、遮蔽部材27の反りが低減又は解消された状態において、遮蔽部材27の姿勢を安定させるため、第一支持部31及び第二支持部32の各傾斜面31b,32bのうち、少なくとも一方は、遮蔽部材27に対して接触することが好ましい(
図10又は
図13参照)。
【0072】
特に、
図10に示されるように、遮蔽部材27が、第一支持部31と第二支持部32の両方の傾斜面31b,32bによって挟まれる場合は、遮蔽部材27が各傾斜面31b,32bによって両側から保持されるため、遮蔽部材27の姿勢が安定しやすい。また、
図13に示されるように、第一支持部31と第二支持部32の各傾斜面31b,32bのうち、いずれか一方のみ(この場合、第二支持部32の傾斜面32bのみ)が遮蔽部材27に対して接触する場合であっても、遮蔽部材27の姿勢を安定させることが可能である。このように、遮蔽部材27が各傾斜面32b,32bの少なくとも一方に接触することにより、反りが低減又は解消された状態で遮蔽部材27の姿勢が安定するため、定着回転体21又はその他の部材に対する遮蔽部材27の接触をより確実に回避できるようになる。
【0073】
上記のような遮蔽部材27を支持する各傾斜面31b,32bの傾斜角度θ1,θ2(
図10、
図13参照)は、定着回転体21の長手方向Xに対して0°より大きく90°より小さい角度であればよい。
【0074】
また、
図15に示されるように、遮蔽部材27を支持する傾斜面32bの傾斜角度θ2を大きくすると、その分、遮蔽部材27の傾きがより大きく変化するので、遮蔽部材27の反りが大きい場合に有効である。
【0075】
また、第一支持部31の傾斜面31bと第二支持部32の傾斜面32bとが、長手方向内側X1及び長手方向外側X2に向かって互いに離れるように傾斜することにより、
図16に示されるように、成形型41,42を用いた支持部材28の成形が可能となる。すなわち、2つの成形型41,42を用いて第一支持部31及び第二支持部32を成形する場合、各傾斜面31b,31bが各成形型41,42を成形品(支持部材28)から分離する際の抜き勾配として機能することにより、成形型による成形が可能である。このように、一支持部31及び第二支持部32が、成形型41,42による成形が可能な形状であることにより、切削などにより支持部材28を成形する場合に比べて、第一支持部31及び第二支持部32を容易に成形できるようになり、製造コストの削減を図れる。
【0076】
なお、第一支持部31及び第二支持部32は、
図17に示される例のように、傾斜面31b,32bを有しない構成であってもよい。このような場合でも、第一支持部31及び第二支持部32の各頂部31a,32aが遮蔽部材27を互い違いに押圧することにより、遮蔽部材27の反りを低減又は解消することができる。また、第一支持部31及び第二支持部32は、断面三角形状に形成される場合に限らず、
図17に示されるような断面矩形の突起であってもよい。
【0077】
また、本発明は、上記実施形態のような遮蔽部材を移動可能に支持する支持部材に適用される場合に限らず、移動しない固定式の遮蔽部材を支持する支持部材にも適用可能である。
【0078】
また、上記実施形態においては、本発明を、加熱装置の一例である定着装置に適用した場合を例に説明したが、本発明は、電子写真方式の画像形成装置に搭載される定着装置に限らず、例えばインクジェット方式の画像形成装置に搭載され、用紙に塗布されたインクなどの液体を加熱して乾燥させる乾燥装置にも適用可能である。また、本発明は、フィルムなどの被覆部材を用紙などのシートの表面に熱圧着させるラミネータ、あるいは包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの加熱装置にも適用可能である。これらの加熱装置においても、本発明が適用されることにより、遮蔽部材の反りを低減又は解消することができるため、回転体などに対する遮蔽部材の接触を回避できるようになる。
【0079】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の構成を備える加熱装置、定着装置、画像形成装置が含まれる。
【0080】
[第1の構成]
第1の構成は、回転体と、加熱エネルギーを放射して前記回転体を加熱する加熱源と、前記回転体と前記加熱源との間に配置され前記加熱源から前記回転体への前記加熱エネルギーを遮蔽する遮蔽部材と、前記遮蔽部材を支持する支持部材と、を備える加熱装置であって、前記支持部材は、互いに向かい合う方向に突出し前記遮蔽部材を挟んで支持する第一支持部及び第二支持部を有し、前記第一支持部及び前記第二支持部のそれぞれの頂部が、前記回転体の長手方向において互いにずれた位置に配置される加熱装置である。
【0081】
[第2の構成]
第2の構成は、前記第1の構成において、前記第一支持部及び前記第二支持部のぞれぞれの前記頂部が接触する前記遮蔽部材上の接触点同士の間の前記回転体の長手方向とは直交する方向の間隔をAとし、前記第一支持部及び前記第二支持部のぞれぞれの前記頂部同士の間の前記回転体の長手方向とは直交する方向の間隔をBとすると、前記回転体が前記加熱源によって加熱されない状態では、A<Bの関係を満たし、前記回転体が前記加熱源によって加熱されて所定の目標温度に達した状態では、A>Bの関係を満たす加熱装置である。
【0082】
[第3の構成]
第3の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記第一支持部及び前記第二支持部の少なくとも一方が、前記回転体の長手方向へ伸び当該長手方向に対して傾斜する傾斜面を有する加熱装置である。
【0083】
[第4の構成]
第4の構成は、前記第3の構成において、前記傾斜面は、前記回転体の長手方向に対して0°より大きく90°より小さい角度で傾斜する加熱装置である。
【0084】
[第5の構成]
第5の構成は、前記第1から第4のいずれか1つの構成において、前記支持部材は、線膨張係数が4.0×10-6/℃以上の材料により構成される加熱装置である。
【0085】
[第6の構成]
第6の構成は、前記第1から第5のいずれか1つの構成において、前記支持部材が、樹脂により構成される加熱装置である。
【0086】
[第7の構成]
第7の構成は、前記第1から第6のいずれか1つの構成において、前記第一支持部及び前記第二支持部が、成形型により成形可能な形状に形成される加熱装置である。
【0087】
[第8の構成]
第8の構成は、前記第1から第7のいずれか1つの構成において、前記支持部材は、移動可能に構成される加熱装置である。
【0088】
[第9の構成]
第9の構成は、前記第1から第8のいずれか1つの構成の加熱装置を用いて未定着画像を担持する記録媒体を加熱し、前記未定着画像を前記記録媒体に定着させる定着装置である。
【0089】
[第10の構成]
第10の構成は、前記第1から第8のいずれか1つの構成の加熱装置、あるいは、前記第9の構成の定着装置を備える画像形成装置である。
【符号の説明】
【0090】
20 定着装置(加熱装置)
21 定着回転体
22 加圧回転体
23 加熱源
27 遮蔽部材
28 支持部材
31 第一支持部
31a 頂部
31b 傾斜面
32 第二支持部
32a 頂部
32b 傾斜面
1000 画像形成装置
N ニップ部
P 用紙(記録媒体)
X 長手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】