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  • 特開-ATP産生促進剤及び飲食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127424
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ATP産生促進剤及び飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240912BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240912BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/899
A61P43/00 111
A23L2/52
A23L2/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036570
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大友 雄登
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋介
(72)【発明者】
【氏名】野出 純一
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD49
4B018ME14
4B018MF01
4B117LC04
4B117LG16
4B117LP01
4C088AB73
4C088BA08
4C088BA10
4C088MA23
4C088MA31
4C088MA32
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA41
4C088MA43
4C088MA52
4C088MA55
4C088MA56
4C088MA59
4C088MA63
4C088MA66
4C088NA14
4C088ZC02
(57)【要約】
【課題】効果的にATP産生促進作用を発揮するATP産生促進剤、及び、当該ATP産生促進剤を含む飲食品を提供する。
【解決手段】本発明は、小麦胚芽を含む、ATP産生促進剤及びこれを含む飲食品である。本発明のATP産生促進剤は、小麦胚芽の抽出物を含むことが好ましい。ATP産生促進剤が、小麦胚芽の抽出物として、アルコール抽出物を含むことも好ましい。アルコール抽出物として、エタノール抽出物を含むことも好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦胚芽を含む、ATP産生促進剤。
【請求項2】
小麦胚芽が、小麦胚芽の抽出物である、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
前記抽出物が、アルコール抽出物である、請求項2に記載の剤。
【請求項4】
前記アルコール抽出物が、エタノール抽出物である、請求項3に記載の剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の剤を含む、飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATP産生促進剤及びそれを含有する飲食品に関する。
【0002】
ATP(adenosine triphosphate;アデノシン三リン酸)は、全ての生体の細胞に広く分布し、特に真核生物の生体内反応のエネルギー源として、重要な役割を担っている。ATPは、例えば、糖代謝、筋収縮、能動輸送、生合成等の諸種の生体内反応において、重要なエネルギー源として機能している。生体のエネルギー代謝に重要な役割を担うATPは、その産生能が低下することにより、細胞の増殖、代謝、修復などの機能が低下し、老化、ひいては細胞死が誘導される場合がある。低下した細胞の機能を上昇させ、細胞分裂を促進させるためには、分裂に必要なエネルギーを細胞に補給することが重要である。
したがって、運動時に限らず、安静時においても、ATP産生を促進できれば、細胞の機能や細胞分裂に必要なエネルギー源として、ATPを細胞に補給することができ、その結果、細胞の増殖、代謝、修復などの機能の活性化の効果が期待できる。またATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態を予防又は改善する効果も期待できる。
従来、アロエベラやアシタバ等の植物の抽出物にATP産生促進効果が知られている(特許文献1及び2)が、容易に入手でき、安全で効果の高いATP産生促進剤がなお求められている。
【0003】
一方、小麦胚芽は、小麦の中でも栄養素が多く含まれる部位とされ、これまでに、視神経保護、筋肉増強、細胞外マトリックス産生促進等に用いられているが、ATP産生効果は知られていない(特許文献3~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-161274号公報
【特許文献2】特開2022-053924号公報
【特許文献3】特開2012-077010号公報
【特許文献4】特開2012-046544号公報
【特許文献5】特開2021-080259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安全に摂取でき、細胞におけるATP産生を効果的に促進できるATP産生促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、小麦胚芽を含む、ATP産生促進剤を提供する。
また本発明は、前記のATP産生促進剤を含有する飲食品を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のATP産生促進剤は、効果的に細胞内のATP産生を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例及び比較例のATP産生率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。本発明のATP産生促進剤は経口剤であることが好ましい。本実施形態のATP産生促進剤は、小麦胚芽を有効成分とするものである。
【0010】
本発明のATP産生促進剤に含有される小麦胚芽とは、小麦の種子に含まれる、発芽時に幼根や子葉となる胚芽部分をいう。したがって、本発明のATP産生促進剤には、胚芽部分を含む小麦種子がそのまま含有されていてもよいが、小麦の種子から分離された胚芽が含有されていることが好ましい。
【0011】
小麦胚芽としては油脂分を除去した脱脂小麦胚芽及び未除去の小麦胚芽(「全脂小麦胚芽」ともいう。)のいずれも使用することもできる。
【0012】
小麦胚芽の原料となる小麦としては、入手可能な小麦であれば、いずれのものも用いることができる。好適な例として、イネ科コムギ属のパンコムギ、デュラムコムギ、クラブコムギ、スペルトコムギ、エンマコムギ等や、イネ科エギロプス属のタルホコムギ、クサビコムギ等が挙げられる。
【0013】
小麦胚芽の原料となる小麦の産地としては、カナダ産、アメリカ産、オーストラリア産、日本産、フランス産等が挙げられる。
【0014】
小麦が普通小麦である場合、その蛋白質含有量から硬質小麦、中間質小麦、及び軟質小麦に分けられる。一般に、粒の硬さは、蛋白質含有量と比例する。
このうち、硬質小麦は蛋白質含有量が比較的多く、硬質小麦を由来とする小麦粉は主に中華麺やパンの製造に使用されており、軟質小麦は蛋白質含有量が比較的少なく、軟質小麦を由来とする小麦粉は主に天ぷら衣や菓子類の製造に使用されている。中間質小麦はそれらの中間の蛋白質含有量を有し、中間質小麦を由来とする小麦粉は主にうどんの製造に使用されている。硬質小麦の例としては、DNS(Dark Northern Spring)、HRW(Hard Red Winter)、1CW(No.1 Canada Western)、PH(Australian Prime Hard)、春よ恋、ゆめちからなどの小麦品種・銘柄が挙げられる。軟質小麦の例としては、WW(Western White)、SRW(Soft Red Winter)などが挙げられる。中間質小麦の例としては、ASW(Australian Standard White)、きたほなみなどが挙げられる。小麦が普通小麦である場合、小麦胚芽の原料となる小麦は、軟質小麦、硬質小麦及び中間質小麦のいずれに由来してもよく、硬質小麦又は中間質小麦に由来してもよく、中間質小麦に由来してもよい。
【0015】
本発明のATP産生促進剤中においては、上記胚芽部分を含む小麦種子、種子から分離された胚芽、又は脱脂小麦胚芽が各々単独で含有されていてもよく、又はいずれか2種以上が併用されていてもよい。
【0016】
小麦種子から胚芽を分離する方法としては、特に限定されず常法を用いることができる。例えば、小麦種子に機械的な力を加えることにより、胚芽、胚乳破砕物、種皮破砕物を含む混合物を得、該混合物から、胚乳破砕物、種皮破砕物等を取り除いて粗胚芽画分(胚芽を主成分とし、胚乳破砕物、種皮破砕物を含む混合物)を得る。小麦種子に加える力は、小麦種子から胚芽を分離することができる程度の強さであればよい。小麦種子に機械的な力を加える方法としては、公知の粉砕装置による粉砕工程が挙げられる。粉砕の程度は、小麦胚芽の大きさに応じて適宜選択すればよい。次いで、得られた小麦種子粉砕物から、公知の分級装置、例えば、篩を用いて粗胚芽画分を取得する。必要に応じて、得られた粗胚芽画分はロールにかけて圧扁を行った後、篩分けにより種皮、胚乳、ゴミ等を除去して良い。或いは、得られた粗胚芽画分に含まれる種皮、胚乳、ゴミ等を風力、静電気力を利用して除去してもよい。また、胚芽と種皮、胚乳の比重の違いを利用する方法、例えば重液選別により、粗胚芽画分を得ることもできる。さらに必要に応じて、得られた粗胚芽画分から、例えば目視や色彩選別機等を用いて胚芽を選別し、洗浄等を行ってもよい。
【0017】
本発明が小麦種子から分離した小麦胚芽を用いる場合、小麦胚芽の純度は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上が更に好ましい。
【0018】
本発明の剤は、小麦胚芽をそのまま含有していてもよいが、更に、粉砕、抽出、乾燥、乾熱から選択される処理をしたものを含有することができ、小麦胚芽の抽出物であってよい。ここでいう抽出物とは、溶媒抽出物が挙げられる。抽出原料として小麦胚芽をそのまま用いてもよいが、小麦胚芽に対して乾燥、粉砕、乾熱等の加熱から選ばれる処理を施したものが行うことができ、粉砕することが抽出効率向上という点で好ましい。粉砕手段としては、粉砕する場合、粉砕物は公称目開き710μmの試験用ふるいを通過させたものとすることが粉砕物の均一化という点で好ましい。
【0019】
(抽出工程)
小麦胚芽の溶媒抽出に用いる溶媒としては、極性溶媒を用いることがATP産生促進効果が高い点で好ましい。極性溶媒としては、水、極性有機溶媒が挙げられる。極性有機溶媒として使用し得る有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコールや1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン等が挙げられる。
【0020】
本発明では、ATP産生促進効果が高い点や食品として取り扱いやすい点から、極性溶媒の中でも、とりわけ、水、アルコールから選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、特にアルコールを用いることが好ましい。アルコールとしては、炭素数1~5の低級脂肪族アルコールが好ましく、炭素数2~3の低級脂肪族アルコールがより好ましく、エタノールを用いることが最も好ましい。
【0021】
本明細書において抽出溶媒としてエタノール等のアルコールを用いるとは、純粋なアルコールを用いることのみならず、アルコールを主とする混合溶媒で抽出することを含む。ここでアルコールを主とするとは、抽出溶媒中60質量%以上を意味し、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、95質量%以上であることが更に一層好ましく、99.5質量%以上であることが最も好ましい。このようにアルコール(例えばエタノール)を主とする抽出溶媒による抽出物を、アルコール抽出物(例えばエタノール抽出物)ともいう。
【0022】
前記抽出溶媒の使用量は特に限定されないが、小麦胚芽1質量部に対して、通常1質量部以上であることが好適であり、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。また、通常100質量部以下が好適であり、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0023】
また、抽出温度は、通常0℃以上が好適であり、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上である。また、通常100℃以下が好適であり、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0024】
また、抽出時間は、通常1分以上であることが好適であり、通常72時間以下であることが好適である。より好ましくは1時間以上48時間以下、更に好ましくは2時間以上24時間以下である。
【0025】
抽出工程で得られた抽出液は、そのまま、或いは、希釈、濃縮、溶媒除去等をした後、必要に応じて粉末やペースト状に調製して用いることもできる。溶媒除去は減圧蒸留、減圧・真空乾燥、凍結乾燥、スプレードライ等の公知の方法で行うことができる。抽出液は、溶媒分を含んだままでも良く、また、溶媒分のみ除去して水溶液状のものを得ることもできる。
【0026】
また、上記抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。
【0027】
本発明の剤は、ヒトを含む動物の医薬品、医薬部外品又は飲食品として、あるいはそれらを製造するために使用することができる。本発明の剤は、医薬品、医薬部外品又は飲食品として、ヒトを含む動物に直接投与若しくは摂取させてもよく、飲食品又はペットフード等の動物飼料に添加・配合してATP産生促進用の飲食品又は動物飼料として使用してもよい。後者の場合、小麦胚芽の飲食品又は動物飼料への添加・配合方法は特に制限されず、例えば、小麦胚芽は飲食品又は動物飼料の製造前に原料・素材に直接配合してもよく、飲食品又は動物飼料の製造工程中に添加してもよく、製造された飲食品又は動物飼料に添加してもよい。
前記「飲食品」は、ヒトが食物として摂取可能な物を指し、いわゆる健康食品を含む一般飲食品の他、例えば、厚生労働省の保健機能食品制度に規定される特定保健用食品や栄養機能食品等の保健機能食品、サプリメント等が挙げられる。
前記「動物飼料」は、家畜、家禽、養魚などのヒト以外の動物(ヒトに飼育される動物)に餌として与えられる物を指し、例えば、家畜用飼料、ペットフード等が挙げられる。
【0028】
本発明の剤を医薬品又は医薬部外品として使用する場合、有効成分である小麦胚芽を単独で含有していてもよく、又は、更に薬学的に許容される担体を含有していてもよく、又は、小麦胚芽によるATP産生促進作用が損なわれない範囲で更に他の有効成分や薬理成分を含有していてもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、希釈剤、分散剤、緩衝剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、活性増強剤、殺菌剤、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。
【0029】
本発明の剤を医薬品又は医薬部外品として使用する場合、任意の投与形態で投与され得る。投与形態は、経口投与でも非経口投与でもよい。例えば、経口投与形態としては、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤のような固形投薬形態、並びにエリキシル、シロップ及び懸濁液のような液体投薬形態が挙げられ、非経口投与形態としては、注射、輸液、経皮、経粘膜、経鼻、経腸、吸入、坐剤、ボーラス、貼布剤等が挙げられる。このうち、経口投与形態が好ましい。
【0030】
本発明の剤において小麦胚芽の量は有効成分となりうる量であれば任意であり、剤中の固形分中、小麦胚芽が5質量%以上、或いは30質量%以上を、或いは50質量%以上を、或いは70質量%以上を占めている場合もありうる。なお、ここでいう固形分とは溶媒を除いた全合計量であり、溶媒としては、前記の抽出溶媒で挙げた各種溶媒や一般的に溶剤として使用されている有機溶媒が挙げられる。
【0031】
本発明の剤を飲食品として使用する場合、有効成分である小麦胚芽を単独で含有していてもよく、又は、小麦胚芽によるATP産生促進効果が損なわれない範囲で更に、飲食品の製造に用いられる種々の添加剤を含有していてもよい。斯かる添加剤としては、例えば、各種油脂、生薬、アミノ酸、多価アルコール、天然高分子、ビタミン、食物繊維、界面活性剤、精製水、賦形剤、安定剤、pH調整剤、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、有機酸などの酸味料、安定剤、フレーバー、着色料、香料等が挙げられる。
【0032】
飲食品としては、例えば、口腔剤(ガム、キャンデーなど)やかまぼこ、ちくわなどの加工水産ねり製品、ソーセージ、ハムなどの畜産製品、パン、洋菓子類、和菓子類、生めん、中華めん、ゆでめん、ソバなどのめん類、ソース、醤油、タレ、砂糖、ハチミツ、粉末あめ、水あめなどの調味料、カレー粉、からし粉、コショウ粉などの香辛料、ジャム、マーマレード、チョコレートスプレッド、漬物、そう菜、ふりかけ、又は各種野菜・果実の缶詰・瓶詰など加工野菜・果実類、チーズ、バター、ヨーグルトなど乳製品、みそ汁、スープ、果実ジュース、野菜ジュース、乳清飲料、清涼飲料、酒類などの飲料、その他、健康食品など一般的な飲食品への使用が挙げられる。
【0033】
本発明には、包装体と、該包装体に収容された前述の本発明のATP産生促進剤、又はそれを含有する飲食品若しくは動物飼料とを含む、パッケージが包含される。
前記包装体は、本発明の剤、飲食品又は動物飼料を収容することができ、且つこれらの成分表示等を印刷可能なものであればよく、形態及び材質は特に制限されない。前記包装体の形態としては、例えば、箱状、袋状等が挙げられる。前記包装体の素材としては、例えば、紙、プラスチック、紙、織布、金属等が挙げられる。
前記包装体には、該包装体に収容されている本発明の剤、飲食品又は動物飼料中の小麦胚芽の含有量等の各種情報が明示されている。斯かる包装体における情報の提示方法は特に制限されず、例えば、1)包装体の外面又は内面に印刷されていてもよく、2)包装体の内部にATP産生促進用途が、飲食品又は動物飼料とともに内包された印刷用紙等の印刷媒体に印刷されていてもよく、3)包装体又はこれに内包された印刷媒体にインターネットのURLが記載され、そのURLにアクセスすることで提示されるようになっていてもよい。
【0034】
本発明において、小麦胚芽は、後述する実施例において具体的に示す通り、筋肉細胞等の細胞内のATP産生促進作用、すなわちエネルギー産生促進作用を有するので、本発明のATP産生促進剤を用いることにより、細胞の増殖、代謝、修復等の細胞機能の活性化や抗老化(アンチエイジング)等の効果が期待できる。また、ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態(症状)の予防又は改善(治療)を必要とする対象者に、副作用を伴うことなく、かかる疾患若しくは状態の予防又は改善(治療)が期待される。従って、ミトコンドリア障害や機能低下によるATP産生低下やそれに起因した症状等を予防又は改善等が期待される。ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態としては、例えば、神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病等)、慢性腎臓病、糖尿病、心疾患、肝機能障害、リウマチ・がん等が挙げられる。
【0035】
例えば後述する実施例の通り、本発明は、横紋筋細胞等の筋肉細胞におけるATP産生を効果的に促進できる。このため、本発明は、筋肉細胞におけるエネルギー産生促進用途、筋肉組織の活性化用途、ミトコンドリア賦活化等に好適に用いることができる。
【0036】
例えば、本発明は、好ましくは運動能力向上や筋回復などの非医療目的に、ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態にある対象者に、小麦胚芽を投与する工程を備えた、ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態を予防又は改善する方法を含む。また本発明は、ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態の予防又は改善(治療)剤や飲食品としての小麦胚芽の使用や、ATP産生の低下に起因する疾患若しくは状態(症状)の予防又は改善(治療)剤や飲食品を製造するための小麦胚芽の使用を含む。本発明は運動能力向上や筋回復等のためのATP産生促進を目的とした飲食品やその製造、使用を含む。
【0037】
本発明の剤は、その有効成分が天然植物由来であるため、安全性が高く、長期間、連続的な摂取が可能である。例えば小麦胚芽が固形状の抽出物である場合であって小麦胚芽をATP産生促進用に用いる場合は、成人(体重60kg)一日当たりの摂取量は120mg~4.8gが好適であり、1.2g~2.4gがより好適である。またATP産生促進用に用いる場合に、抽出物ではない小麦胚芽それ自体の量としては、成人(体重60kg)一日当たりの摂取量は、1g~40gであることが好ましく、より好適には10g~20gである。
【実施例0038】
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)小麦胚芽の由来となる小麦
オーストラリア産中間質小麦を由来とする小麦胚芽を評価に用いた。小麦胚芽は小麦種子を粉砕及び分別して得た。得られた小麦胚芽の純度は目視によって胚芽と胚芽以外に分離し、それぞれの重量を測定することにより求めた。
【0039】
(2)小麦胚芽の調製及び破砕処理
小麦胚芽は5gをミキサー(岩谷産業株式会社製サイレントミルサー)で30秒間破砕した。また、破砕した小麦胚芽は公称目開き710μmの試験用ふるいにかけ、スルーしたものをエタノール抽出に使用した。
【0040】
(3)小麦胚芽エタノール抽出物の製造
小麦胚芽1gに対し99.5質量%エタノールを5mL添加し、室温(25℃)条件下で2時間攪拌した。5分間遠心(3,000rpm)後、減圧条件下でエタノールを留去し、エタノール抽出物を得た。
【0041】
(4)エネルギー産生促進評価(ATP産生量評価)
(4-1)細胞前培養
C2C12細胞(マウス横紋筋由来細胞)を、10体積%FBS(ウシ胎児血清)-高グルコースDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)に5.0×104cells/mLの濃度に調製した。0.1質量%ゼラチン水溶液でコーティングした白色96wellプレートに前記の濃度に調製したC2C12細胞を100μL/well播種し、37℃、5体積%CO2の条件で培養した。24時間培養後、2体積%HS(ウマ血清)-高グルコースDMEMに培地交換を行い、37℃、5体積%CO2の条件で96時間培養した。
【0042】
(4-2)試験液の調製
(3)で調製した小麦胚芽エタノール抽出物を120mg/mLになるようにジメチルスルホキシドにそれぞれ溶解させ、表1の比率で混合して試験液を調製した。
【0043】
【表1】
【0044】
(4-3)本培養及び評価
前記で調製した試験液を(3-1)の細胞へ100μL/wellの量を培地交換し、37℃、5体積%CO2の条件で48時間培養した。
前記の48時間培養後に添加した96wellプレートを室温下で30分静置し、培地と等量のATP量測定試薬(CellTiter-Glo 2.0 Reagent)を添加し、400rpmで2分間振蕩した。
10分間静置後、プレートリーダーで発光強度を測定した。試験は4連で行った。
【0045】
比較例1の発光強度の平均値(11495)を100(%)としたときの発光の強度の平均値の比率(%)をATP産生率として図1に示す。図1に示す通り小麦胚芽がATP産生を効果的に促進できることが判明した。
【0046】
(実施例2~8)
表2に示すように、オーストラリア産中間質小麦の代わりに、カナダ産硬質小麦1種、アメリカ産軟質小麦1種、アメリカ産硬質小麦1種、オーストラリア産硬質小麦2種、国内産硬質小麦2種の計7種を由来とする小麦胚芽を評価に用いて、同様の評価を行った。ATP産生量の結果を表2に示す。表2には実施例1の結果も併せて示す。なお表2の「A」「B」の別は、品種・銘柄が異なることを意味する。
【0047】
【表2】
【0048】
計測した発光強度について実施例1~8はいずれも比較例1に対してt検定で有意差P<0.01)を示した。従って、産地や軟質/硬質の異なる小麦に由来する小麦胚芽を用いた場合にも、優れたATP産生促進効果が得られることが判る。
図1