(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127504
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート
(51)【国際特許分類】
C08G 63/183 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
C08G63/183
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036692
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】戸嶋 梨乃
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
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4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
4J029KE15
(57)【要約】
【課題】色調に優れ、特に黄色味が少ないダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレートを提供する。
【解決手段】テレフタル酸類を含むジカルボン酸成分並びに1,4-ブタンジオール及びダイマージオールを含むジオール成分を含むダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレートであって、マグネシウム元素を3~150質量ppm含むことを特徴とするダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。ダイマージオールは、不飽和脂肪酸の二量体である環式又は非環式二量体酸が還元された、炭素数36~44の二量体ジオールに由来する2価の炭化水素基を有し、数平均分子量が700以下であることが好ましい。ダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート中のダイマージオール成分の含有量は1~80質量%が好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸類を含むジカルボン酸成分並びに1,4-ブタンジオール及びダイマージオールを含むジオール成分を含むダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレートであって、マグネシウム元素を3~150質量ppm含むことを特徴とするダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項2】
マグネシウム元素を5~100質量ppm含むことを特徴とする、請求項1に記載のダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項3】
マグネシウム元素を10~50質量ppm含むことを特徴とする、請求項2に記載のダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項4】
ダイマージオールが、不飽和脂肪酸の二量体である環式又は非環式二量体酸が還元された、炭素数36~44の二量体ジオールに由来する2価の炭化水素基を有し、数平均分子量が700以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項5】
ダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート中のダイマージオール成分の含有量が1~80質量%であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項6】
ダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート中のダイマージオール成分の含有量が1~60質量%であることを特徴とする、請求項5に記載のダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイマージオールを共重合したポリブチレンテレフタレート(以下「ダイマージオール共重合PBT」と略記することがある。)に関し、詳しくは、色調に優れたダイマージオール共重合PBTに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイマージオールを共重合したポリブチレンテレフタレートは成形性に優れ、高い機械的強度と、耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性などのゴム的性質を有し、防水性、電気絶縁性、作業環境性、生産性、耐久性、耐燃料性に優れる特徴があるため、自動車、電子・電気機器、精密機器用途の成形品、各種フィルムなどに有用であることが知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
しかし、特許文献1、2に記載されるような従来のダイマージオール共重合PBTは、Tiを100ppm以上含有していたり、或いはTiと共にSnを含有しており、このため、後掲の比較例1~3に示されるように、ポリマーの色調、特に黄色味を表すb値が劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-239504号公報
【特許文献2】特開2011-122164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、色調に優れ、特に黄色味が少ないダイマージオール共重合PBTを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、テレフタル酸類を含むジカルボン酸成分並びに1,4-ブタンジオール及びダイマージオールを含むジオール成分からなるダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレートにおいて、マグネシウム元素を必須成分として所定の割合で含有することで、色調に優れたポリマーとなることを知見し、本発明に到達した。
【0007】
即ち本発明の要旨は以下である。
【0008】
[1] テレフタル酸類を含むジカルボン酸成分並びに1,4-ブタンジオール及びダイマージオールを含むジオール成分を含むダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレートであって、マグネシウム元素を3~150質量ppm含むことを特徴とするダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0009】
[2] マグネシウム元素を5~100質量ppm含むことを特徴とする、[1]に記載のダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0010】
[3] マグネシウム元素を10~50質量ppm含むことを特徴とする、[2]に記載のダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0011】
[4] ダイマージオールが、不飽和脂肪酸の二量体である環式又は非環式二量体酸が還元された、炭素数36~44の二量体ジオールに由来する2価の炭化水素基を有し、数平均分子量が700以下であることを特徴とする、[1]から[3]のいずれかに記載のダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0012】
[5] ダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート中のダイマージオール成分の含有量が1~80質量%であることを特徴とする、[1]から[4]のいずれかに記載のダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0013】
[6] ダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート中のダイマージオール成分の含有量が1~60質量%であることを特徴とする、[5]に記載のダイマージオール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【発明の効果】
【0014】
本発明のダイマージオール共重合PBTは、色調に優れ、特に黄色味が少ないので、本発明のダイマージオール共重合PBT或いはこれを含むコンパウンド及びそれを用いて得られる成形品は、色調が良好で商品価値が高い。従って、得られる成形品は各種の用途、例えば自動車、電子・電気機器、精密機器用途の成形品、各種フィルムなどとして好ましく使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されるものではない。
【0016】
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において「主成分とする」とは、当該成分の70モル%以上を占めることを意味する。例えば、「テレフタル酸成分を主成分として含むジカルボン酸成分」とは、ポリエステルを構成する全酸成分の70モル%以上がテレフタル酸成分であることを意味する。
また、「ジカルボン酸成分」とは、「ジカルボン酸成分に由来してダイマージオール共重合PBT中に組み込まれる構成単位」との意味合いでも用いられる。「ジオール成分」、「ダイマージオール成分」についても同様である。
【0017】
[1]ダイマージオール共重合PBTの原料
本発明のダイマージオール共重合PBTは、テレフタル酸類を含むジカルボン酸類と、1,4-ブタンジオール(以下「1,4-BG」と称することがある)及びダイマージオールを含むジオール、更に必要に応じて用いられるその他の共重合可能な化合物をエステル交換反応及び/又はエステル化反応させた後、重縮合反応することにより得られる。
エステル化反応及び/又はエステル交換反応、重縮合反応においては反応触媒を使用することができる。
本発明のダイマージオール共重合PBTは、この反応触媒として、後述のマグネシウム化合物を所定のマグネシウム元素含有量となるように用いることで製造することができる。
【0018】
(ジカルボン酸類)
本発明のダイマージオール共重合PBTを構成するジカルボン酸成分はテレフタル酸類成分を主成分として含む。
【0019】
テレフタル酸類としては、テレフタル酸のほか、テレフタル酸の低級アルコールエステル、酸無水物や酸塩化物等のエステル形成性誘導体を用いることができる。またこれらは、石油化学法及び/又はバイオマス資源由来の発酵工程を有する製法によって製造されたものを用いることもできる。ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としてはジカルボン酸の低級アルコールエステルの他、酸無水物や酸塩化物等のエステル形成性誘導体が挙げられる。ここで、低級アルコールとは、通常、アルキル基の炭素数が1~4の直鎖式もしくは分岐鎖式のアルコールを指す。
【0020】
1,4-BGはテレフタル酸の存在下では容易に分子内脱水を起こしテトラヒドロフラン(THF)に転化するため、中性で反応が進行するエステル交換法に比較して多量の1,4-BGが必要となる。原料である1,4-BGの量を減らすことが出来るという点から、テレフタル酸類としては、テレフタル酸ジメチル等のテレフタル酸の低級アルコールエステルを用いることが好ましい。
これらのテレフタル酸類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
本発明に係るジカルボン酸成分は、テレフタル酸類成分以外の第二のジカルボン酸類成分を含んでもよいが、この場合、第二のジカルボン酸成分の量はジカルボン酸成分全体に対し好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0022】
第二のジカルボン酸類としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族鎖式ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体;ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体;フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体;等を挙げることができる。これらのなかでも、得られるダイマージオール共重合PBTの物性の面から、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族鎖式ジカルボン酸類が好ましい。これらの第二のジカルボン酸類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
(ジオール)
本発明のダイマージオール共重合PBTは、ジオール成分として1,4-BG成分及びダイマージオール成分を含む。
ジオール成分として1,4-BG成分を含むことで、ダイマージオール共重合PBTの結晶性、機械特性、熱特性が良好となる。また、ダイマージオール成分を含むことで、ダイマージオール共重合PBTの成形性、機械的強度、耐衝撃性が優れたものとなり、また、弾性回復性、柔軟性などのゴム的性質を得ることができる。
なお、1,4-BGについては、バイオマス資源由来のものを使用することができる。
また、1,4-BGは、1,4-BGを用いることを有効に得る観点から、ジオール成分全体に対して2~99モル%、特に51~99モル%用いることが好ましい。
【0024】
ジオール成分は、1,4-BG、ダイマージオール及び以下に記載する他のジオールの合計の全ジオール成分のモル量が、ジカルボン酸成分のモル量と概ね等しくなるような量とする。ダイマージオール共重合PBTが後述の「その他の共重合可能な成分」を含む場合は、この量を加味してジオール成分の量を定める。
【0025】
<1,4-BG及びダイマージオール以外のジオール成分>
本発明のダイマージオール共重合PBTは、所望の特性を妨げない範囲で、ジオール成分として1,4-BG及びダイマージオール以外のジオール成分を含んでいてもよい。
【0026】
1,4-BG及びダイマージオール以外のジオールとしては例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオールなどの直鎖式脂肪族ジオール;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール;キシリレングリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンなどの芳香族ジオール;イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、エリトリタンなどの植物原料由来のジオール;等を挙げることができる。
これらの他のジオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
なお、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール等はバイオマス資源由来のものを使用することができる。
【0028】
これらの中でも、得られるダイマージオール共重合PBTの物性の面から、炭素数2以上、例えば炭素数2~8の脂肪族及び/または脂環式ジオールが好ましく、このようなジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましく用いられる。
【0029】
1,4-BG及びダイマージオール以外のジオールを用いる場合、その使用量としては、本発明のダイマージオール共重合PBTの結晶性、機械特性、熱特性の悪化を招かないようにする点で、ジオール成分全量に対し10モル%未満が好ましく、5モル%未満がより好ましく、0モル%が特に好ましい。
【0030】
これらの他のジオールは1,4-BGと共にジカルボン酸成分と組み合わさって、ダイマージオール共重合PBTのハードセグメントを構成する。
【0031】
<ダイマージオール成分>
本発明におけるダイマージオール(以下、「ダイマージオール(1)」と称す場合がある。)は、具体的には、下記式(1)で表される化合物である。
HO-R1-OH ・・・(1)
(式(1)中、R1は、不飽和脂肪酸の二量体である環式又は非環式二量体酸が還元された、炭素数36~44の二量体ジオールに由来する2価の炭化水素基を表す。)
【0032】
即ち、ダイマージオール(1)は、式(1)中のR1で表される炭化水素基を有する、不飽和脂肪酸の二量体である環式又は非環式二量体酸が還元された、炭素数36~44の二量体ジオールである。
該二量体ジオールとしては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
HO-(CH2)s-Y-(CH2)t-OH ・・・(2)
(式(2)中、Yは、置換基を有していてもよい炭素数16~42の直鎖、分岐鎖、又は環状の2価の炭化水素基を表し、sは1~10の整数を表し、tは1~10の整数を表す。)
【0033】
Yは、置換基を有していてもよい炭素数16~42の直鎖、分岐鎖、又は環状の2価の炭化水素基である。Yの炭素数は、16~36であってもよく、18~30であってもよい。
Yの2価の炭化水素基としては、2価の飽和炭化水素基であってもよく、2価の不飽和炭化水素基であってもよい。
Yの2価の炭化水素基が置換基を有する場合、該置換基としては、炭素数1~10の直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルキル基、又は炭素数2~10の直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルケニル基が挙げられる。
sは、1~10の整数であり、6~10の整数であることが好ましく、6~8の整数であることがより好ましい。
tは、1~10の整数であり、6~10の整数であることが好ましく、6~8の整数であることがより好ましい。
【0034】
二量体ジオールが非環式二量体酸を還元して得られた直鎖状の二量体ジオールである場合、式(2)中、Yは下記式(3)で表される基であることが好ましい。
-Ra1-X-Ra2- ・・・(3)
(式(3)中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、炭素数8~21の直鎖のアルキレン基、又は炭素数8~21の直鎖のアルケニレン基、アルカジエニレン基、若しくはアルカトリエニレン基(即ち、不飽和結合を1~3含む基)を表し、Xは、単結合、又は-O-を表す。)
【0035】
二量体ジオールが非環式二量体酸を還元して得られた分岐構造を有する二量体ジオールである場合、式(2)中、Yは下記式(4)で表される基であることが好ましい。
-CH(Rb1)-CH(Rb2)- ・・・(4)
(式(4)中、Rb1及びRb2は、それぞれ独立に、炭素数8~20の直鎖のアルキレン基、又は炭素数8~20の直鎖のアルケニレン基、アルカジエニレン基、若しくはアルカトリエニレン基(即ち、不飽和結合を1~3含む基)を表す。)
【0036】
二量体ジオールが環式二量体酸を還元して得られた環状構造を有する二量体ジオールである場合、式(2)中、Yは下記式(5)で表される基であることが好ましい。
【0037】
【0038】
(式(5)中、環Cは炭素数5~14の飽和炭化水素環、又は炭素数5~14の、1~3の不飽和結合を含む不飽和炭化水素環を表し、pは1~6の整数であり、Rc1は、それぞれ独立に、炭素数1~16の直鎖のアルキレン基、又は炭素数1~16の直鎖のアルケニレン基、アルカジエニレン基、若しくはアルカトリエニレン基(即ち、不飽和結合を1~3含む基)を表す。)
【0039】
環Cは、単環であってもよく、2つ以上の単環が縮合した縮合環であってもよい。前記単環は5員環であってもよく、6員環であってもよい。
pは1~6の整数であり、環Cの炭素数から2を減じた数以下の整数である。環Cが6員環の単環の場合、pは1~4であり、環Cが2つの6員環の単環が縮合した縮合環の場合、pは1~6である。
【0040】
前記式(1)におけるR1の2価の炭化水素基を構成する二量体ジオールは、炭素数18~22の不飽和脂肪酸を二量体化し、得られる環式二量体酸又は非環式二量体酸を還元することによって得ることができる。
ここで、「環式二量体酸」とは、環状構造を有する二量体酸を意味し、「非環式二量体酸」とは、環状構造を有さない二量体酸を意味する。
炭素数18~22の不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、γ-リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、β-エレオステアリン酸、ステアリドン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、エルカ酸、ドコサジエン酸、アドレン酸を例示できる。なかでも、入手容易性の点から、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルカ酸が好ましい。
【0041】
非環式二量体酸を還元して得られた分岐構造を有する二量体ジオールとしては、下記構造式で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【0043】
環式二量体酸を還元して得られた環状構造を有する二量体ジオールとしては、下記構造式で表される化合物が挙げられる。
【0044】
【0045】
本発明に係るダイマージオール(1)の数平均分子量は、700以下であることが好ましく、680以下であることがより好ましく、660以下であることが更に好ましい。一方、ダイマージオール(1)の数平均分子量は400以上であることが好ましく、450以上であることがより好ましく、500以上であることが更に好ましい。
ダイマージオール(1)の数平均分子量がこの範囲であると、ダイマージオール共重合PBT製造時の反応性が良好であり、共重合による融点降下の程度が小さく、機械的特性等が良好なダイマージオール共重合PBTを得ることができる。
ここで、ダイマージオール(1)の数平均分子量は、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により求められた値である。なお、ダイマージオールのSEC測定方法は、後述の実施例の項に記載される通りである。
【0046】
ダイマージオール(1)成分の、本発明のダイマージオール共重合PBT中の含有量、即ち、本発明のダイマージオール共重合PBTにおけるダイマージオール(1)の共重合割合の下限は好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。ダイマージオール(1)の共重合割合がこの範囲であると、熱安定性に優れ、柔軟性と融点のバランスがよいダイマージオール共重合PBTを得ることができる。
【0047】
(その他の共重合可能な成分)
本発明のダイマージオール共重合PBTは、前記のジカルボン酸成分、及びジオール成分に加えて、必要に応じその他の共重合可能な成分を含んでもよい。
【0048】
本発明のダイマージオール共重合PBTの原料として使用可能なその他の共重合可能な化合物としては、グリコール酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-β-ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸;ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、t-ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能カルボン酸;トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸等の三官能以上の多官能カルボン酸;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステル等の三官能以上の多官能アルコール等が挙げられる。
その他の共重合可能な化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
その他の共重合可能な化合物の使用量、即ち、本発明のダイマージオール共重合PBT中のその他の共重合可能な成分の含有量は、酸にあっては全カルボン酸成分に対し、水酸基化合物にあっては全ジオール成分に対し、好ましくは10モル%未満、より好ましくは5モル%未満である。
【0050】
[2]ダイマージオール共重合PBTの製造方法
本発明のダイマージオール共重合PBTは、ジカルボン酸類及びジオールと、必要に応じて用いられるその他の共重合可能な化合物を出発物質として、エステル交換反応及び/又はエステル化反応工程、及びこの反応により得られたオリゴマーの重縮合反応、更に必要に応じて固相重縮合を行う重縮合工程を経てポリエステルを得る方法により製造することができる。
【0051】
(エステル交換反応及び/又はエステル化反応)
本発明においては、第1段階として、ジカルボン酸類とジオールとの間のエステル交換反応及び/又はエステル化反応を行う。
【0052】
通常、ジカルボン酸類とダイマージオール(1)は、エステル交換反応及び/又はエステル化反応に続く後述の重縮合反応おいて留去されることはないが、原料ジオールには、1,4-BGのように重縮合反応において留去されるものとされないものがある。
重縮合反応において留去されるジオールを用いる場合には、原料ジオール全体のモル量を原料ジカルボン酸類のモル量よりも多少多く使用して、エステル交換反応及び/又はエステル化反応において全てのジカルボン酸類を反応させた後、重縮合反応時に未反応のジオールを留去するのがよい。
一方、重縮合反応において留去されないジオールを用いる場合、重縮合反応を十分に進めるためには、使用する原料ジオール全体のモル量を、原料ジカルボン酸類のモル量とほぼ等しくするのがよい。
【0053】
すなわち、本発明においては、1,4-BG等の重縮合反応において留去される原料ジオールを用いるため、原料ジオール全体の使用量は、原料ジカルボン酸類1モルに対して1.1~3.0モルであることが好ましく、さらには1.1~1.5モルが好ましい。この値が小さすぎると、重縮合反応が十分に進行しない傾向があり、大きすぎると1,4-BGの分解によるTHFの生成が増える傾向がある。
【0054】
エステル交換反応及び/又はエステル化反応条件は、その反応を進行させることができる限り任意であり、反応温度は通常120℃以上、好ましくは150℃以上、一方、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、更に好ましくは210℃以下である。また、反応時間は通常2~8時間、好ましくは2~6時間、更に好ましくは2~4時間である。
【0055】
上記第1段階の反応により、原料ジカルボン酸類と原料ジオールが反応したオリゴマーが生成する。
【0056】
(重縮合反応)
上記エステル交換反応及び/又はエステル化反応に次いで、エステル交換反応及び/又はエステル化反応で生成したオリゴマーの重縮合反応(第2段階の反応)を行う。
重縮合反応は、通常溶融重縮合反応で行う。溶融重縮合反応における条件は、その反応を進行させることができる限り任意である。
重縮合反応時における反応温度は好ましくは300℃以下、好ましくは250℃以下であり、一方200℃以上が好ましく、より好ましくは240℃以上である。反応温度が上記上限値以下であると、製造時の熱分解反応を抑制し、色調が良化する傾向にある。反応温度が上記下限値以上であると効率的に重縮合反応を進行させやすい。
【0057】
本発明のダイマージオール共重合PBTに用いられる成分の一つであるマグネシウム化合物としては、有機マグネシウム化合物が好ましい。該マグネシウム化合物の具体例としては、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等が挙げられる。これらのマグネシウム属化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中では酢酸マグネシウムが好ましい。
本発明のダイマージオール共重合PBTの製造において、これらのマグネシウム化合物は重縮合触媒として反応系に添加される。
【0058】
マグネシウム化合物の使用量は、マグネシウム元素として得られるダイマージオール共重合PBTに対する質量比で3~150質量ppmであり、この量は5質量ppm以上が好ましく、10質量ppm以上がより好ましい。またこの量は100質量ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましい。マグネシウム化合物の使用量が多過ぎ、得られるダイマージオール共重合PBT中のマグネシウム元素の含有量が上記上限を超えると、ダイマージオール共重合PBTの色調、耐加水分解性などが悪化する。逆に、マグネシウム化合物の使用量が少な過ぎ、得られるダイマージオール共重合PBT中のマグネシウム元素の含有量が上記下限未満では、重合性が悪化する。
【0059】
重縮合触媒には、通常、触媒としてチタン化合物と、好ましくは更に周期表2A族金属化合物が使用される。
これらの触媒成分は、エステル交換反応及び/又はエステル化反応に使用して、そのまま重縮合反応を行ってもよいし、エステル交換反応及び/又はエステル化反応では使用せずに、又は、チタン触媒のみを使用し、重縮合反応時に触媒を更に添加してもよい。
【0060】
マグネシウム化合物以外の重縮合触媒としては、例えば、三酸化二アンチモン等のアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等のチタン化合物;酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等のカルシウム化合物等の周期表第2A族金属の原子を含む金属化合物の他、マンガン化合物、亜鉛化合物等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
重縮合触媒としては、中でも、チタン化合物が好ましく、テトラブチルチタネートが特に好ましい。
従って、本発明においては、重縮合触媒としてテトラブチルチタネート等のチタン化合物とマグネシウム化合物を併用することが好ましい。
【0062】
マグネシウム化合物以外の反応触媒の使用量は、製造されたダイマージオール共重合PBTに含まれる該反応触媒由来の金属濃度として、通常1~300質量ppm、好ましくは5~250質量ppm、より好ましくは10~200質量ppm、更に好ましくは20~175質量ppm、特に好ましくは25~90質量ppmである。ダイマージオール共重合PBT中の金属換算含有量がこの範囲内にあると、異物の生成が抑制され、また得られるダイマージオール共重合PBTの熱滞留時の劣化反応やガス発生が起こりにくい。
【0063】
また、マグネシウム化合物を含む全反応触媒は、製造されたダイマージオール共重合PBTに含まれる全反応触媒由来の金属濃度として、通常3~150質量ppm、好ましくは3~100質量ppm、より好ましくは5~100質量ppm、更に好ましくは5~50質量ppm、特に好ましくは10~50質量ppmとなるように用いることが好ましい。ダイマージオール共重合PBT中の全反応触媒由来の金属換算含有量がこの範囲内にあると、異物の生成が抑制され、また得られるダイマージオール共重合PBTの熱滞留時の劣化反応やガス発生が起こりにくい。
【0064】
本発明において、特に反応触媒としてチタン化合物とマグネシウム化合物とを併用する場合、得られるダイマージオール共重合PBT中のチタン化合物由来のチタン元素と、マグネシウム化合物由来のマグネシウム元素の質量比率が、Ti:Mg=1:0.3~3.3、特に1:0.6~3.3の比率となるように用いることが、マグネシウム化合物を用いることによる上述の本発明の効果と、チタン化合物を用いることによる良好な触媒効果をバランスよく得る観点から好ましい。
なお、反応触媒としてチタン化合物とマグネシウム化合物を併用する場合、チタン化合物は、エステル化反応に使用して、そのまま重縮合反応を行ってもよいし、エステル化反応では使用せずに、重縮合段階で追加してもよい。更には、エステル化反応で、最終的に使用する触媒量の一部を使用し、重縮合反応の進行と共に適宜追加することもできる。
【0065】
重縮合反応時の反応槽内圧力は低いほど反応は進みやすく、最終段階では通常27kPa以下、好ましくは20kPa以下、より好ましくは13kPa以下、中でも少なくとも1つの重縮合反応槽においては好ましくは0.4kPa以下の状態をとることが好ましい。
重縮合反応に要する時間は、得られるダイマージオール共重合PBTの固有粘度を測定しその範囲を一定にするように調整されるが、通常2~12時間、好ましくは2~10時間である。重縮合反応を連続式で行う場合、重縮合反応槽での平均滞留時間を重縮合反応に要する時間とみなす。
【0066】
なお、本発明において、ダイマージオール(1)の反応系への添加時期は、エステル交換反応及び/又はエステル化反応の開始時以降、重縮合反応終了までの間である。
この間にダイマージオール(1)を添加することにより、共重合成分としてのブロック性が保持しやすく、高融点のダイマージオール共重合PBTを得ることができる。添加時期としては、エステル交換反応及び/又はエステル化反応の開始時から重縮合反応開始までの間が、添加操作及びブロック性確保の点から好ましく、特にエステル交換反応及び/又はエステル化反応の開始時に添加することが好ましい。
【0067】
重縮合反応終了後、得られたポリマーを反応槽からストランド状に抜き出し、水冷下又は水冷後、カッティングしてペレットとする。得られたペレットに対して必要に応じて固相重縮合を行うことで更に高重合度化することができる。
【0068】
固相重縮合反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、減圧にて、又は不活性ガス流通下行う。固相重縮反応温度は通常180℃以上、好ましくは190℃以上で、一方、通常210℃以下、好ましくは200℃以下である。固相重縮合反応は所望の固有粘度に達するまで比較的長時間行われる。固相重縮合の反応時間は通常5~20時間、好ましくは6~15時間である。固相重縮合反応は回分式または連続式で行うことができる。
【0069】
[3]ダイマージオール共重合PBTの物性
以下に、本発明のダイマージオール共重合PBTの好適な物性値を挙げる。各物性の測定方法は後述の実施例の項に記載される通りである。
【0070】
(固有粘度)
本発明のダイマージオール共重合PBTの固有粘度(dL/g)は好ましくは0.20~1.60であり、より好ましくは0.50~1.55、更に好ましくは0.70~1.50である。
固有粘度がこの範囲であると、成形性が良好で、成形品にしたときの物性に優れたものとなる。
【0071】
(融点)
本発明のダイマージオール共重合PBTの融点は好ましくは100~230℃であり、より好ましくは110~220℃である。
融点がこの範囲であると、高温での使用に耐える優れた耐熱性を有し、また熱安定性に優れ、高温下でも有害なガスが発生しないものとなる。
【0072】
(末端カルボキシル基量)
本発明のダイマージオール共重合PBTの末端カルボキシル基量(AV:当量/トン)は好ましくは2~40当量/トンであり、より好ましくは3~25当量/トン、更に好ましくは3~21当量/トンである。
末端カルボキシル基量がこの範囲であると耐加水分解性が良好となる。
【0073】
(色調)
本発明のダイマージオール共重合PBTのb値は、-4.0~1.5の範囲が好ましく、より好ましくは-3.9~1.3、更に好ましくは-3.8~1.2である。b値が低いほど黄色味が少なく好ましい。
【0074】
[4]組成物・成形体
本発明のダイマージオール共重合PBTには、必要に応じて安定剤、酸化防止剤、充填剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤等の各種添加剤、あるいは本発明のダイマージオール共重合PBT以外のPBTやその他の樹脂を配合してポリエステル組成物とすることができる。また、該ポリエステル組成物を用いて成形体とすることもできる。
【0075】
(配合方法)
前記の各種添加剤や樹脂の配合方法は、特に制限されない。各種添加剤はダイマージオール共重合PBTの製造段階あるいは製造後に配合することができる。
本発明のダイマージオール共重合PBT以外のPBTやその他の樹脂はダイマージオール共重合PBTの製造後に配合することができる。
ダイマージオール共重合PBTの製造後に配合する場合は、ベント口から脱揮できる設備を有する1軸又は2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。各成分は、混練機に順次供給することもでき、また一括して供給することもできる。また、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合しておいてもよい。
【0076】
(成形方法)
本発明のダイマージオール共重合PBT及びそれを含む組成物は、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形法、すなわち、射出成形、中空成形、押出成形、プレス成形、延伸成形、インフレ成形等の成形法によってフィラメント、繊維、シート、フィルム等を含む各種の成形体とすることができる。
なお、本発明のダイマージオール共重合PBTは、特に、着色が少なく、薄物の場合には透明性に優れているため、押出成形によるシート、フィルム、モノフィラメント(繊維を含む)などの用途において改良効果が顕著である。
【実施例0077】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0078】
[測定・評価方法]
以下の諸例で採用した物性および評価項目の測定方法は次の通りである。
【0079】
<ダイマージオールの分子量>
ダイマージオールの分子量のSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定は東ソー株式会社製高速GPC装置HLC-8120GPCを使用して行った。
試料は移動相液である試薬1級THF(酸化防止剤ジブチルヒドロキシトルエン含有)で溶解し、0.45μmのポリテトラフルオロエチレンのフィルターでろ過したものを測定に供した。
SEC条件を以下に示す。
検出器:RI(装置内蔵)
移動相:試薬1級THF(酸化防止剤ジブチルヒドロキシトルエン含有)
流速:0.6mL/分
注入量:20μL
カラム:TSKgel SuperHM-L
(6.0mmI.D.×15cmL×2)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン換算
較正曲線近似式:3次式
【0080】
<ダイマージオール共重合PBTの固有粘度>
(株)センテック製の全自動粘度測定装置(型式 DT553、毛細管式)を使用し次の要領で求めた。
すなわち、PTM11(フェノールと1,1,2,2-テトラクロロエタンとの質量比1/1混合物)の混合液を溶媒として使用し、30℃において、濃度1.0g/dLの試料溶液および溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式より固有粘度を求めた。
固有粘度(dL/g)=((1+4KHηsp)0.5-1)/(2KHC)
(但し、ηsp=η/η0-1であり、ηは試料溶液落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。)
【0081】
<ダイマージオール共重合PBTの融点>
DSC(示差走査熱量計)により測定した。測定条件としては、-10℃から300℃まで20℃/分で昇温し、300℃で3分間保持した後、20℃/分で急冷した後に、再度-10℃から300℃まで20℃/分で昇温し、吸熱ピークの頂点の温度を融点とした。
【0082】
<ダイマージオール共重合PBTの末端カルボキシル基量>
自動滴定装置として、東亜ディーケーケー製のAUT-501(自動ビュレット ABT-511:5mLシリンジ使用)を使用した。また、滴定には0.01Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液を用いた。粉砕後の試料から、0.5gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール25mLを加えて、195℃、9分間で溶解させた後、氷水で40秒浸漬し、室温まで冷却した。次いで、これにエタノール2mLを加えた。この試験管を測定攪拌用スターラーに載せ、pH電極、滴定ノズルを入れ、攪拌ながら自動滴定を行った。ブランクとして、試料を溶解させずに同様の操作を実施し、以下の式によって末端カルボキシル基量(酸価)を算出した。
末端カルボキシル量(当量/トン)=(a-b)×0.01×f/w
(ここで、aは、滴定に要した0.01Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、bは、無試料で滴定に要した0.01Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、wは、試料の量(g)、fは、0.01Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。)
【0083】
<ダイマージオール共重合PBTの色調>
日本電色(株)製色差計「Z-300A型」を使用し、L、a、b表色系で評価した。
【0084】
[ダイマージオール]
以下の実施例及び比較例で用いたダイマージオール(エクウスジャパン社製)は、前記式(1)において、R1が不飽和脂肪酸の二量体である環式又は非環式二量体酸が還元された、炭素数36の二量体ジオールに由来する2価の炭化水素基であるものであり、数平均分子量537のダイマージオールである。
【0085】
[実施例1]
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管を備えたエステル交換反応槽に、テレフタル酸ジメチルエステル(DMT)を121.3質量部、1,4-ブタンジオール(1,4-BG)を65.0質量部、ダイマージオール(エクウスジャパン社製)を15.0質量部(生成するダイマージオール共重合ポリエステルに対し10質量%)、触媒としてテトラブチルチタネートをチタン元素換算で、生成するダイマージオール共重合PBTに対して25質量ppmとなるように1,4-BG溶液として添加した。次いで、槽内液温を150℃に60分保持した後105分かけて210℃まで昇温し、210℃で45分保持した。この間、生成するメタノールを留出させつつ、トータル210分エステル交換反応を行った。
エステル交換反応終了後、テトラブチルチタネートをチタン元素換算で生成するダイマージオール共重合PBTに対して33質量ppmとなるように、酢酸マグネシウムをマグネシウム元素換算で生成するダイマージオール共重合PBTに対して48質量ppmとなるように、それぞれ1,4-BGの溶液として添加し、更に、酸化防止剤として、「アデカスタブAO-60」(BASF社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)を生成するダイマージオール共重合PBTに対して530質量ppmとなるように添加した後、攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管、減圧用排気口を備えた重縮合反応槽に移送し、減圧を付加して以下の条件で重縮合反応を行った。
槽内圧力を常圧から1.0Torrまで90分かけて徐々に減圧し、1.0Torr以下で継続した。反応温度は減圧開始から15分間210℃に保持し、以後、240℃まで45分間で昇温してこの温度で保持した。所定の攪拌トルクに到達した時点で反応を終了した。
次に槽内を減圧状態から窒素で復圧し、次いでポリマー抜き出しのため加圧状態にした。抜き出しの際の口金の熱媒温度を235℃としてポリマーを口金からストランド状にして押し出し、次いで冷却水槽内でストランドを冷却した後、ストランドカッターでカッティングし、ペレット化した。
得られたダイマージオール共重合PBTの固有粘度は0.99dL/gであった。
このダイマージオール共重合PBTの評価結果を表-1に示す。
【0086】
[実施例2]
実施例1において、ダイマージオールを30.0質量部(生成するダイマージオール共重合PBTに対し20質量%)を用いるほかは実施例1と同様にして、ダイマージオール共重合PBTを得た。
得られたダイマージオール共重合PBTの評価結果を表-1に示す。
【0087】
[実施例3]
実施例1において、ダイマージオールを75.0質量部(生成するダイマージオール共重合PBTに対し50質量%)を用いるほかは実施例1と同様にして、ダイマージオール共重合PBTを得た。
得られたダイマージオール共重合PBTの評価結果を表-1に示す。
【0088】
[実施例4]
実施例1において、ダイマージオールを90.0質量部(生成するダイマージオール共重合PBTに対し60質量%)を用いるほかは実施例1と同様にして、ダイマージオール共重合PBTを得た。
得られたダイマージオール共重合PBTの評価結果を表-1に示す。
【0089】
[比較例1]
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管を備えたエステル化反応槽に、テレフタル酸(TPA)103.7質量部、1,4-ブタンジオール(1,4-BG)161.3質量部、ダイマージオール15.0質量部(生成するダイマージオール共重合PBTに対して10質量%)、触媒としてテトラブチルチタネートとモノ-n-ブチル-モノヒドロキシスズオキサイドを、生成するダイマージオール共重合PBTに対してそれぞれチタン元素換算、スズ元素換算で表-1に示す量となるように添加した。
次いで、槽内液温を190℃から225℃で反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、テトラブチルチタネートを生成するポリマーに対してチタン元素換算で表-1に示す量になるように追添加し、さらに酸化防止剤として「イルガノックス1010」(チバガイギー社製ヒンダ-ドフェノ-ル系酸化防止剤)を生成するダイマージオール共重合PBTに対して表-1に示す量になるように添加した後、減圧を付加して、重縮合反応を行った。重縮合反応は槽内圧力を常圧から27Paまで50分かけて徐々に減圧し、27Pa以下で継続した。反応温度は245℃に昇温してこの温度で保持した。
次に槽内を減圧状態から窒素で復圧し、次いでポリマー抜き出しのため加圧状態にした。ポリマーを口金からストランド状にして押し出し、次いで冷却水槽内でストランドを冷却した後、ストランドカッターでカッティングしペレット化して、ダイマージオール共重合PBTのペレットを得た。
得られたダイマージオール共重合PBTの評価結果を表-1に示す。
【0090】
[比較例2]
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管を備えたエステル化反応槽に、テレフタル酸(TPA)103.7質量部、1,4-ブタンジオール(1,4-BG)161.3質量部、触媒としてテトラブチルチタネートを生成するダイマージオール共重合PBTに対してチタン元素換算で表-1に示す量となるように添加した。
次いで、槽内液温を170℃から220℃で2時間エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、ダイマージオール15.0質量部(生成するダイマージオール共重合PBTに対して10質量%)と、酸化防止剤として「イルガノックス1330」(チバガイギー社製ヒンダ-ドフェノ-ル系酸化防止剤)を生成するダイマージオール共重合PBTに対して表-1に示す量になるように投入し、255℃まで昇温する一方、系内をゆっくり減圧にしてゆき、60分かけて255℃で665Paとし、さらに133Pa以下で重縮合反応を行った。
次に槽内を減圧状態から窒素で復圧し、次いでポリマー抜き出しのため加圧状態にした。ポリマーを口金からストランド状にして押し出し、次いで冷却水槽内でストランドを冷却した後、ストランドカッターでカッティングしペレット化して、ダイマージオール共重合PBTのペレットを得た。
得られたダイマージオール共重合PBTの評価結果を表-1に示す。
【0091】
[比較例3]
比較例1において、ダイマージオールを75.0質量部(生成するダイマージオール共重合PBTに対し50質量%)を用い、酸化防止剤を添加しなかったこと以外は比較例1と同様にして、ダイマージオール共重合PBTを得た。
得られたダイマージオール共重合PBTの評価結果を表-1に示す。
【0092】
【0093】
[結果の評価]
本発明によれば、テレフタル酸類を含むジカルボン酸成分並びに1,4-ブタンジオール及びダイマージオールを含むジオール成分からなるダイマージオール共重合PBTにおいて、特定量のマグネシウム元素を含有させることにより、着色が少ないダイマージオール共重合PBTを得ることができる。