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特開2024-127559粉粒体状食品用の固結抑制剤及び粉粒体状食品の固結抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127559
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】粉粒体状食品用の固結抑制剤及び粉粒体状食品の固結抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240912BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20240912BHJP
   A23G 3/42 20060101ALI20240912BHJP
   A23G 3/54 20060101ALI20240912BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20240912BHJP
【FI】
A23L5/00 A
A23L5/00 D
A23L29/212
A23G3/42
A23G3/54
A23L5/00 F
A23L29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036787
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】横田 圭亮
【テーマコード(参考)】
4B014
4B025
4B035
【Fターム(参考)】
4B014GE04
4B014GG04
4B014GG05
4B014GK02
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4B014GL07
4B014GL09
4B014GL10
4B014GL11
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4B035LK19
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP26
(57)【要約】
【課題】粉粒体状食品の固結を抑制する手段を提供する。
【解決手段】粉粒体状食品用の固結抑制剤として澱粉を使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉を有効成分として含有する、粉粒体状食品用の固結抑制剤。
【請求項2】
澱粉の水分含量が11.5質量%以下である、請求項1に記載の固結抑制剤。
【請求項3】
請求項1に記載の固結抑制剤を含有する、粉粒体状食品。
【請求項4】
粉粒体状食品100質量部(ただし、固結抑制剤の質量を除く)に対し、固結抑制剤に含まれる澱粉の量が0.7質量部以上である、請求項3に記載の粉粒体状食品。
【請求項5】
安息角が40~60度であり、かつ、スナック菓子へ付着させて用いられる、請求項3又は4に記載の粉粒体状食品。
【請求項6】
更に油脂を含有し、油脂の含有量が、粉粒体状食品100質量部(ただし、固結抑制剤及び油脂の質量を除く)に対して0.05~9.0質量部である、請求項5に記載の粉粒体状食品。
【請求項7】
請求項3に記載の粉粒体状食品をスナック菓子に付着させる工程を含む、食品の製造方法。
【請求項8】
粉粒体状食品に澱粉を混合する工程を含む、粉粒体状食品の固結を抑制する方法。
【請求項9】
澱粉の水分含量が11.5質量%以下である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体状食品用の固結抑制剤として澱粉を用いることを特徴とする発明に関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体状食品は、食塩、糖類、粉末香辛料、粉末抽出エキス(その分解物を含む)や、これらの混合物を含有する。粉粒体状食品として、シーズニングミックス、グレーズミックス、ドーナツシュガーや、コーティングシュガー等が知られている。
吸湿性成分を含有する粉粒体状食品では、その保存中に、吸湿に起因する固結(以下、「固結」ともいう)や潮解が起こるおそれがある。固結は、粉粒体状食品の取扱い性を低下させるだけでなく、商品価値の著しい低下に繋がる変色や変質を引き起こすことがある。
粉粒体状食品の固結を抑制する手段として、固結抑制剤(第三リン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、グルタミン酸マグネシウム、二酸化ケイ素や、デキストリン等)が一般的に用いられている。しかしながら、固結抑制剤自体の効果が低い、又は、食品衛生法上の規制により十分量で配合できない等の理由により、満足のいく固結抑制を達成できない場合があった。
他の固結抑制手段として、HLB値が10以下の蔗糖脂肪酸エステル(特許文献1)、セルロース誘導体(特許文献2及び特許文献3)、微粒化セルロース(特許文献4)や、特定植物由来の水不溶性食物ファイバー(特許文献5)の使用が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭55-50667号公報
【特許文献2】特公昭40-10385号公報
【特許文献3】特公昭42-22185号公報
【特許文献4】特開平5-176691号公報
【特許文献5】特開平5-84048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、粉粒体状食品の固結に対して、従来技術よりも優れた抑制手段を提供することである。
【0005】
この課題を鋭意検討した結果、本発明者は、澱粉が、粉粒体状食品の固結に対して優れた抑制効果を示すことを見いだした。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。本発明は、以下の態様を提供する。
〔1〕澱粉を有効成分として含有する、粉粒体状食品用の固結抑制剤。
〔2〕澱粉の水分含量が11.5質量%以下である、前記〔1〕に記載の固結抑制剤。
〔3〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の固結抑制剤を含有する、粉粒体状食品。
〔4〕粉粒体状食品100質量部(ただし、固結抑制剤の質量を除く)に対し、固結抑制剤に含まれる澱粉の量が0.7質量部以上である、前記〔3〕に記載の粉粒体状食品。
〔5〕安息角が40~60度であり、かつ、スナック菓子へ付着させて用いられる、前記〔3〕又は〔4〕に記載の粉粒体状食品。
〔6〕更に油脂を含有し、油脂の含有量が、粉粒体状食品100質量部(ただし、固結抑制剤及び油脂の質量を除く)に対して0.05~9.0質量部である、前記〔5〕に記載の粉粒体状食品。
〔7〕前記〔5〕又は〔6〕に記載の粉粒体状食品をスナック菓子に付着させる工程を含む、食品の製造方法。
〔8〕粉粒体状食品に澱粉を混合する工程を含む、粉粒体状食品の固結を抑制する方法。
〔9〕澱粉の水分含量が11.5質量%以下である、前記〔8〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、固結が抑制された粉粒体状食品を得ることができる。
更に、本発明によれば、固結が抑制されつつ、スナック菓子等への付着性が良好な粉粒体状食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔粉粒体状食品〕
本発明において、粉粒体状食品とは、可食性粉体、可食性粒体及び可食性造粒体からなる群から選択される一種以上を含有する食品をいう。
【0008】
可食性粉体とは、可食性の微細な固体粒子(例えば、粒子径が1nm以上0.1mm未満)の集合体をいう。
可食性粒体とは、可食性の比較的粗い固体粒子(例えば、粒子径が0.1mm以上10mm未満)の集合体をいう。
可食性造粒体とは、可食性粉体及び/又は可食性粒体を、結合剤(バインダー)(例えば、油脂や水性液体調味料等)を用いた造粒工程(例えば、撹拌造粒、流動層造粒又は押出造粒等)に供して得られる造粒物の集合体をいう。
【0009】
可食性の粉体及び粒体は、単一種類又は複数種類の食品成分から構成される。
本発明の一態様において、食品成分とは、加工食品等の調味に使用され、そのままの状態で加食可能なもの(調味成分)をいう。
本発明の一態様において、食品成分は加熱調理処理されたものである。この態様では、加熱調理処理の履歴がない穀粉(例えば、小麦粉やコーンフラワー)は、可食性の粉体及び粒体を構成する食品成分に含まれない。
食品成分の種類は、粉粒体状に加工できる限り特に制限されない。食品成分の例としては、以下のものが挙げられる。
【0010】
食品成分は、複数種類の食品素材を組み合わせたものであってもよい。例として、醤油等の液体調味料をデキストリン等の担体に担持させた粉末化液体調味料(粉末醤油等)や、複数種類の食品素材の煮汁の乾燥粉末(ブイヨンやコンソメ等の乾燥煮汁)等が挙げられる。
【0011】
粉粒体状食品は、前述の食品成分の他に、酸化防止剤、着色剤、pH調整剤、乳化剤や、香料等の添加物を任意に含んでいてもよい。
添加物を含有する粉粒体状食品の例としては、コンソメ顆粒、スパイスミックス、グレーズミックス、ドーナツシュガー、コーティングシュガー、シーズニングミックスや、旨味調味料等が挙げられる。
【0012】
粉粒体状食品は、固形状食品(具材)を調合したものであってもよい。
具材を調合した粉粒体状食品の例としては、具材(乾燥コーン、乾燥ワカメや、クルトン等)を含む粉末スープ、具材(焼き海苔や、乾燥鮭フレーク等)を含むふりかけ及びお茶漬けの素、具材(クルトン、乾燥ひじきやアーモンド等)を含む粉末ドレッシング等が挙げられる。
【0013】
〔粉粒体状食品の固結抑制〕
固結とは、粉粒体状食品を構成する可食性の粉体、粒体及び/又は造粒体同士が結合して固体化する現象をいう。
固結の程度は、後述する評価例2に記載の固結度を指標にして評価できる。
本発明の一態様において、粉粒体状食品の固結度は、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下又は10%以下である。本発明において、粉粒体状食品の固結度は、低いほど好ましい。
固結は、粉粒体状食品に含まれる吸湿性成分が吸湿することで生じると考えられる。吸湿性成分の例としては、糖類、乾燥エキス、乾燥蛋白質分解物、乾燥煮汁、無機塩(例えば、ニガリ成分を含む天然塩)、香辛料(粉末ガーリック)や、野菜パウダー(粉末オニオン)等が挙げられる。粉粒体状食品には複数種類の吸湿性成分が含まれていてもよい。
本発明における固結抑制には、(1)固結は発生するものの、その程度(固結度)を低減させることと、(2)固結を発生させないこと(固結防止)とが含まれる。
【0014】
〔粉粒体状食品用の固結抑制剤〕
本発明の粉粒体状食品用の固結抑制剤(以下、「固結抑制剤」ともいう)は、有効成分として澱粉を含有する。
〔澱粉〕
澱粉は、食品へ配合可能なものを特に制限なく使用できる。例えば、穀類や芋類等から分離精製したものを使用できる。澱粉の例としては、タピオカ澱粉、じゃがいも澱粉(例えば、馬鈴薯澱粉)、とうもろこし澱粉(コーンスターチ)、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉や、サゴ澱粉等が挙げられる。
澱粉は、原料作物のワキシー種やハイアミロース種に由来するものであってもよい。
澱粉は、未変性澱粉でもよく、未変性澱粉に1種以上の変性処理を施した変性澱粉であってもよい。変性処理の例としては、α化、エーテル化、エステル化、架橋や、酸化等が挙げられる。
【0015】
〔澱粉の水分含量〕
澱粉の水分含量は、澱粉の総質量に対して、好ましくは11.5質量%以下、より好ましくは11.0質量%以下、更に好ましくは9.0質量%以下、より更に好ましくは7.0質量%以下である。
澱粉の水分含量の下限は、固結抑制効果の観点では特に制限されない。
澱粉の水分含量は、反射型近赤外線吸光法、乾燥減量法、カールフィッシャー法や、蒸留法等によって測定できる。反射型近赤外線吸光度法では、水分を含んだ対象物に近赤外線領域の光(水に吸収される)と参照波長領域の光(水に吸収されない)を照射し、対象物から反射してくる近赤外線領域の光と参照波長領域の光の比を測定することにより水分含量を求めることができる。乾燥減量法では、澱粉試料を水の沸点以上に加熱して水分を除去した後、加熱前後の質量差から水分含量を求めることができる。
【0016】
澱粉の水分含量は乾燥処理を用いて調節できる。乾燥手段は特に制限されないが、例えば、オーブン、リールオーブン、焙焼釜、高温乾燥機、熱風乾燥機、加熱攪拌機、間接過熱型乾燥機、マイクロ波発生器やフリーズドライ等が挙げられる。
澱粉を均一に乾燥するために、適時、気流やミキサー等で澱粉を混合すること、及び/又は、熱伝導にムラが生じない程度に澱粉を薄く広げることが好ましい。
例えば、澱粉を厚さ5mmになるように金属製バットに敷き詰め、100℃に予熱した熱風乾燥機に投入し、目標の水分含量になるまで100℃で乾熱処理することで、均一に乾燥された澱粉が得られる。乾熱処理後の澱粉は、室温になるまで放冷してもよく、通風や間接水流により強制急速冷却してもよい。
【0017】
〔任意成分〕
固結抑制剤は、任意成分として、公知の固結防止剤(例えば、第三リン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、グルタミン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、デキストリン等)、酸化防止剤、着色剤、pH調整剤、乳化剤や、香料等を含んでいてもよい。
【0018】
〔固結抑制剤を含有する粉粒体状食品〕
本発明の粉粒体状食品は、前述の固結抑制剤を含有する。
本発明では、粉粒体状食品における固結抑制剤の含有量を、その有効成分(澱粉)を基準にして規定する。具体的には、粉粒体状食品100質量部(ただし、固結抑制剤の質量を除く)に対して、澱粉が好ましくは0.7質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは4.0質量部以上、より更に好ましくは10.0質量部以上である。
澱粉含有量の上限は、固結抑制の観点では特に制限されないが、例えば粉粒体状食品がシーズニングミックスであるとき、澱粉の含有量が多すぎると舌触りが悪くなる場合があるので、シーズニングミックス100質量部(ただし、固結抑制剤の質量を除く)に対し、澱粉は、好ましくは25.0質量部以下、より好ましくは20.0質量部以下、更に好ましくは15.0質量部以下である。
なお、前述のとおり、澱粉の含有量を決定するにあたり、粉粒体状食品に含まれる固結抑制剤の質量は、粉粒体状食品の質量に含めないものとする。
【0019】
〔スナック菓子へ付着させて用いる粉粒体状食品〕
本発明の一態様では、粉粒体状食品は、スナック菓子へ付着させる。
スナック菓子の種類は特に制限されないが、好ましくは膨化菓子、フライ菓子や、ノンフライ菓子等である。
膨化菓子の例としては、コーンパフ、小麦パフ、米パフ、ポテトパフや、さつまいもパフ等が挙げられる。
フライ菓子の例としては、ポテトチップス、ごぼうチップスや、ドーナッツ菓子等が挙げられる。
ノンフライ菓子の例としては、コーン、米、ポテト、ニンジン、ほうれんそう、ピーマン、かぼちゃ、トマト、ブロッコリー、アボガド、枝豆、エンドウ豆、ひよこ豆、大豆、玄米等を原料とした乾燥野菜チップが挙げられる。
【0020】
粉粒体状食品の構成成分のうち、糖類、無機塩やアミノ酸等は一般的に安息角が低く、流動性が高いため、スナック菓子へ付着しにくい。例えば、塩やグラニュー糖の安息角は40度程度、グルコースの安息角は38度程度、グルタミンソーダの安息角は35度程度である。
そこで、スナック菓子へ付着させて用いる場合、本発明の粉粒体状食品の安息角は、好ましくは40~65度、より好ましくは43~60度、更に好ましくは46~53度、より更に好ましくは47~51度である。安息角が前記の範囲にあると、スナック菓子への付着性を高めることができる。例えば、粉粒体状食品が調味料や香辛料等を含むシーズニングミックスである場合、その安息角を前記の範囲へ調節して付着性を向上させることで、スナック菓子の着味、着香や着色等を効果的に実施できる。
安息角とは、日本工業規格 JIS R9301-2-2:1 999「アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-2:安息角」に記載の方法に従って測定したものをいう。
【0021】
粉粒体状食品の安息角を調節する手段としては、公知の手段を特に制限なく使用できる。例としては、粉粒体状食品を混合しながら、水、可溶性成分(糖類や塩類等)の水溶液や液体状の油脂を滴下又は噴霧する方法;固形状油脂を添加する方法;乳化油脂を添加する方法や、粉末油脂を添加する方法等が挙げられる。安息角の調節手段は、粉粒体状食品を構成する成分に応じて適宜選択できるが、水、可溶性成分の水溶液又は液体状の油脂を、滴下又は噴霧する方法が好ましい。
【0022】
油脂は、安息角の調節に加えて、粉粒体状食品を被覆することで粉粒体状食品の吸湿(ひいては、固結)を更に抑制できるので好ましい。
油脂は、食品に用いられるものを特に制限なく使用できる。また、油脂の性状も特に制限はなく、液体状、固形状又は半固形状のいずれでもよい。
粉粒体状食品へ添加するにあたり、液状油脂はそのまま使用できる。固形状又は半固形状の油脂は、そのまま又は加熱溶融して使用できる。
液状油脂とは、室温(25℃)で液状の油脂をいう。液状油脂の例としては、大豆油、菜種油、胡麻油、サンフラワー油、オリーブ油、綿実油、コーン油、米油、パーム油、ヒマワリ油や、ベニバナ油や、これらを組み合わせたサラダ油等が挙げられる。なかでも、サラダ油が好ましく、コーンサラダ油がより好ましい。
液状油脂は、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0023】
固形状又は半固形状の油脂とは、室温(25℃)で固形状又は半固形状の油脂をいう。
固形状又は半固形状の油脂は硬化油であってもよい。硬化油とは、比較的融点の低い不飽和脂肪酸を多く含むために常温で液体となっている油脂に水素付加を行い、より融点の高い飽和脂肪酸の割合を増加させたものをいう。
固形状又は半固形状の油脂の例としては、ショートニング、バター、マーガリン、ラード、ヘット、カカオバター、パーム硬化油や、水素添加硬化油脂等が挙げられる。
固形状又は半固形状の油脂は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0024】
粉粒体状食品における油脂の含有量は、所定の安息角を達成できる限り特に制限されないが、粉粒体状食品100質量部(ただし、固結抑制剤及び油脂の質量を除く)に対して、好ましくは0.05~9.0質量部、より好ましくは0.3~8.0質量部、更に好ましくは0.5~6.0質量部、より更に好ましくは0.7~5.0質量部である。油脂の含有量が前記の範囲にあると、スナック菓子に対してより優れた付着性が得られる。
【0025】
〔粉粒体状食品が付着した食品の製造方法〕
粉粒体状食品が付着した食品は、スナック菓子に粉粒体状食品を付着させることで製造できる。
スナック菓子は、公知の方法に従い製造できる。例えば、膨化菓子は、生地原料をエクストルーダー等で加熱押出しすることで製造できる。フライ菓子は、穀粉生地又はスライスした塊茎等を油浴でフライすることで製造できる。ノンフライ菓子は、穀粉生地又はスライスした塊茎等を熱風乾燥することで製造できる。
粉粒体状食品を付着させる手段に特に制限はなく、公知の手段を使用できる。例えば、コンベヤ上を流れるスナック菓子(膨化菓子やフライ菓子等)の上から所定量の粉粒体状食品を振りかける方法や、所定量の粉粒体状食品をスナック菓子(膨化菓子やフライ菓子等)と共にドラムミキサー中で共に転動させてまぶす方法等を使用できる。
【0026】
〔粉粒体状食品の固結を抑制する方法〕
前述の固結抑制剤は、粉粒体状食品の固結を抑制する方法としても把握される。したがって、この固結抑制方法は、澱粉を粉粒体状食品と混合する工程を含む。
混合手段に特に制限はなく、公知の手段を使用できる。例えば、羽根付きミキサー、リボンミキサー、ナウターミキサー、カスケードミキサー、ドラムミキサーや、V型ミキサーや、気流型混合機等を使用できる。
【実施例0027】
次に、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例では、下記の評価例に従って各種物性を測定した。
【0029】
〔評価例1:澱粉の水分含量〕
澱粉をガラス製シャーレに分取し、反射型近赤外水分計を用いて水分含量を測定した。
【0030】
〔評価例2:粉粒体状食品の固結度〕
粉粒体状食品(試験粉体)を厚さ5mmになるように金属製バットに敷き詰め、加湿機能付き恒温機に投入し、庫内温度50℃かつ相対湿度80%の設定条件下で1週間放置した。放置後の試験粉体を、14メッシュの金網で1分間、左右に120回の条件で篩い、金網上に残存した試験粉体の質量を測定した。下記の式1に従い、固結度を算出した。
【0031】
1:篩う前の試験粉体の質量
2:金網上に残存した試験粉体の質量
【0032】
〔評価例3:粉粒体状食品の安息角〕
日本工業規格 JIS R9301-2-2:1 999「アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-2:安息角」に記載の方法に従って測定した。
【0033】
〔評価例4:粉粒体状食品のスナック菓子への付着量〕
粉粒体状食品を付着させたスナック菓子100gを採取し、付着している粉粒体状食品を刷毛で払落してガラス製シャーレに集め、上皿天秤にて質量を測定した。測定値からガラス製シャーレの質量を差し引くことにより、スナック菓子100gに付着していた粉粒体状食品の質量を求めた。
【0034】
〔製造例1:乾燥澱粉の製造〕
固結抑制剤の有効成分として使用する乾燥澱粉を製造した。
澱粉質原料を、厚さ5mmになるように金属製バットに敷き詰め、100℃に予熱した熱風乾燥機へ投入し、100℃で乾熱処理した。乾熱処理後、澱粉が室温になるまで放冷して乾燥澱粉(未変性澱粉)を得た。乾燥処理前後の澱粉の水分含量を評価例1に従い測定した。結果を表1に示す。
【0035】
表1
【0036】
〔製造例2:シーズニングミックス(旨味タイプ)の製造〕
配合表1に従い、粉末醤油(日研フード(株)社製の粉末たまりA-267)、食塩(ジャパンソルト(株)社製の特級塩うず塩)、アミノ酸(味の素(株)社製の「味の素(登録商標)」(I)FC)及びブドウ糖(サンエイ糖化(株)社製の無水結晶ぶどう糖 TDA-S)をケミカルミキサーへ投入し、12000回転/分で2分間混合して、粉粒体状の調味料混合物を得た。
続いて、調味料混合物100質量部に対して、11.6質量部の乾燥澱粉A(乾燥タピオカ澱粉)及び2.3質量部の二酸化ケイ素(三栄源エフ・エフ・アイ(株)社製のカープレックス FPS-500)を投入し1分間混合して、粉粒体状のシーズニングミックス(旨味タイプ)を得た。
汎用的な固結防止剤であることが公知の二酸化ケイ素は、本発明の固結防止剤の任意成分として使用した。また、製造例2における二酸化ケイ素の量は、食品衛生法上の使用上限(最終含有率2.0質量%)であった。
【0037】
配合表1:シーズニングミックス(旨味タイプ)
【0038】
〔試験例1:澱粉の配合効果の検討(その1)〕
各固結抑制剤を、表2に記載の含有量で用いたことを除き、製造例2に従ってシーズニングミックスを製造し、その固結度を評価例2に従って測定した。
表2に記載の含有量は、シーズニングミックス100質量部(ただし、固結抑制剤の質量を除く)に対する各固結抑制剤の量を質量部で表したものである。
比較例1では、澱粉をデキストリン(汎用の固結抑制剤)で置き換えた。
比較例2では、二酸化ケイ素のみを食品衛生法上の使用上限量(最終含有率2.0質量%)で添加した。
比較例3では、食品衛生法上の使用上限を超える量の二酸化ケイ素で澱粉を置き換えた。
【0039】
表2
【0040】
乾燥澱粉A:乾燥タピオカ澱粉(水分含量:1.9質量%)
乾燥澱粉B:乾燥じゃがいも澱粉(水分含量:2.4質量%)
乾燥澱粉C:乾燥とうもろこし澱粉(水分含量:1.8質量%)
澱粉A:タピオカ澱粉(水分含量:14.2質量%)
澱粉B:じゃがいも澱粉(水分含量:18.0質量%)
澱粉C:とうもろこし澱粉(水分含量:12.8質量%)
【0041】
従来の固結抑制剤を用いた比較例1及び比較例2では、顕著な固結が発生した。
乾燥澱粉A~Cを用いた実施例1~3では固結が認められなかった(固結防止)。
澱粉A~Cを用いた実施例4~6では、比較例1及び2よりも固結が抑制された。
これらの結果から、粉粒体状食品用の固結抑制剤の有効成分として、様々な材料に由来する澱粉を使用できること、及び、澱粉を乾燥させると固結抑制効果が向上することが分かった。
【0042】
〔試験例2:粉粒体状食品における澱粉含有量の検討〕
製造例1の乾燥澱粉A及び二酸化ケイ素を、表3に記載の含有量で用いたことを除き、製造例2に従ってシーズニングミックスを製造し、その固結度を評価例2に従って測定した。
表3に記載の含有量は、シーズニングミックス100質量部(ただし、固結抑制剤の質量を除く)に対する各固結抑制剤の量を質量部で表したものである。
【0043】
表3
【0044】
固結抑制剤の有効成分である乾燥澱粉Aの含有量が多くなるほど、粉粒体状食品の固結抑制効果が高くなることが分かった。
【0045】
〔試験例3:澱粉の水分含量の検討〕
製造例1において、乾熱処理中の澱粉Aの一部を適宜取出し、評価例1に従って水分含量を測定し、あらかじめ設定した水分含量になった時点で金属製バットごと取出して、表4に記載の乾燥澱粉A-1~A-4を製造した。
乾燥澱粉A-1~A-4を用いたことを除き、製造例2に従ってシーズニングミックスを製造し、その固結度を評価例2に従って測定した。結果を表4に示す。
表4に記載の含有量は、シーズニングミックス100質量部(ただし、固結抑制剤の質量を除く)に対する各固結抑制剤の量を質量部で表したものである。
【0046】
表4
【0047】
固結抑制剤の有効成分である乾燥澱粉中の水分含量が少ないほど、粉粒体状食品の固結抑制効果が高くなることが分かった。
【0048】
〔製造例3:シーズニングミックス(甘味タイプ)の製造〕
配合表2に従い、キャラメルパウダー(森永乳業(株)社製のキャラメルパウダー)、食塩(ジャパンソルト(株)社製の特級塩うず塩)、グラニュー糖(東洋精糖(株)社製のT.T.G.A特グラニュー糖)及び粉糖((株)有友商店社製の粉糖ARD-S)をケミカルミキサーへ投入し、12000回転/分で2分間混合して、粉粒体状の調味料混合物を得た。
続いて、調味料混合物100質量部に対して、11.6質量部の乾燥澱粉A及び2.3質量部の二酸化ケイ素(三栄源エフ・エフ・アイ(株)社製のカープレックス FPS-500)を投入し1分間混合して、粉粒体状のシーズニングミックス(甘味タイプ)を得た。
【0049】
配合表2:シーズニングミックス(甘味タイプ)
【0050】
〔試験例4:澱粉の配合効果の検討(その2)〕
各固結抑制剤を、表5に記載の含有量で用いたことを除き、製造例3に従ってシーズニングミックスを製造し、その固結度を評価例2に従って測定した。
表4に記載の含有量は、シーズニングミックス100質量部(ただし、固結抑制剤の質量を除く)に対する固結抑制剤の量を質量部で表したものである。
比較例4では、澱粉をデキストリン(汎用の固結抑制剤)で置き換えた。
比較例5では、二酸化ケイ素のみを食品衛生法上の使用上限量(最終含有率2.0質量%)で添加した。
比較例6では、食品衛生法上の使用上限を超える量の二酸化ケイ素で澱粉を置き換えた。
【0051】
表5
【0052】
乾燥澱粉A:乾燥タピオカ澱粉(水分含量:1.9質量%)
乾燥澱粉B:乾燥じゃがいも澱粉(水分含量:2.4質量%)
乾燥澱粉C:乾燥とうもろこし澱粉(水分含量:1.8質量%)
澱粉A:タピオカ澱粉(水分含量:14.2質量%)
澱粉B:じゃがいも澱粉(水分含量:18.0質量%)
澱粉C:とうもろこし澱粉(水分含量:12.8質量%)
【0053】
従来の固結抑制剤を用いた比較例4及び比較例5では、顕著な固結が発生した。
乾燥澱粉A~Cを用いた実施例14~16では固結が認められなかった(固結防止)。
澱粉A~Cを用いた実施例17~19では、比較例4及び5よりも固結が抑制された。
これらの結果から、粉粒体状食品の固結抑制剤の有効成分として、様々な材料に由来する澱粉を使用できること、及び、澱粉を乾燥させると固結抑制効果が向上することが分かった。
また、シーズニングミックス(甘味タイプ)に関する試験例4の結果は、シーズニングミックス(旨味タイプ))に関する試験例1の結果と同様の傾向を示した。従って、本発明の固結抑制剤は、様々な成分から構成される粉粒体状食品に対して固結抑制効果を奏することが分かった。
【0054】
〔製造例4:液状油脂を配合した粉粒体状食品の製造〕
配合表3に従い、粉末醤油(日研フード(株)社製の粉末たまりA-267)、食塩(ジャパンソルト(株)社製の特級塩うず塩)、アミノ酸(味の素(株)社製の「味の素(登録商標)」(I)FC)及びブドウ糖(サンエイ糖化(株)社製の無水結晶ぶどう糖 TDA-S)をケミカルミキサーへ投入し、12000回転/分で2分間混合して、粉粒体状の調味料混合物を得た。
続いて、調味料混合物100質量部に対して、11.6質量部の乾燥澱粉A及び2.3質量部の二酸化ケイ素(三栄源エフ・エフ・アイ(株)社製のカープレックス FPS-500)を投入して1分間混合し、更に、液状油脂であるコーンサラダ油1.5質量部を滴下により投入し、1分間混合して、粉粒体状のシーズニングミックス(液状油脂配合タイプ)を得た。
【0055】
配合表3:シーズニングミックス(液状油脂配合タイプ)
【0056】
〔製造例5:粉粒体状食品を付着させた食品の製造〕
コーングリッツ3kgと水300gとを容器に入れ、20秒間混合攪拌し、一軸エクストルーダー(株式会社オオヤマフーズマシナリー製:「P-7型」)へ投入し、加熱加圧下で押出して膨化菓子(スナック菓子)を製造した。得られた膨化菓子の形状は、直径2.0cm、長さ1.5cmの略円筒形であった。
膨化菓子100質量部と、製造例4のシーズニングミックス(液状油脂配合タイプ)15質量部をドラム型混合機へ投入し、60回転/分で30秒間混合して、シーズニングミックスで調味された膨化菓子(調味済み膨化菓子)を製造した。
【0057】
〔試験例5:粉粒体状食品における液状油脂の含有量の検討(その1)〕
コーンサラダ油を、表6に記載の含有量で用いたことを除き、製造例4に従ってシーズニングミックスを製造し、続いて、製造例5に従って調味済み膨化菓子を製造した。
シーズニングミックスの固結度、安息角及び付着量を、それぞれ評価例2~4に従って評価した。結果を表6に示す。
表6に記載の含有量は、シーズニングミックス100質量部(ただし、固結抑制剤及びコーンサラダ油の質量を除く)に対するコーンサラダ油の量を質量部で表したものである。
【0058】
表6
【0059】
コーンサラダ油を添加した実施例21~25のいずれにおいても、未添加の実施例20と同様に、固結が認められなかった(固結防止)。
膨化菓子100g当たりのシーズニングミックスの付着量は、実施例21~24で4.0g以上と多く、実施例22で最も多かった。
【0060】
〔試験例6:固形状油脂を配合した粉粒体状食品の検討〕
コーンサラダ油に替えて固形状油脂(融点36℃)であるショートニング(月島食品工業(株)社製のショートニングEX-LT、油脂含量100%)を表7に記載の含有量で用いたことを除き、製造例4に従ってシーズニングミックスを製造し、続いて、製造例5に従って調味済み膨化菓子を製造した。製造の際、ショートニングは、あらかじめ加温して液状化したものを他の原料へ滴下した。
シーズニングミックスの固結度、安息角及び付着量を、それぞれ評価例2~4に従って評価した。結果を表7に示す。
表7記載の含有量は、シーズニングミックス100質量部(ただし、固結抑制剤及びショートニングの質量を除く)に対するショートニングの量を質量部で表したものである。
【0061】
表7
【0062】
ショートニング油を添加した実施例27~31のいずれにおいても、未添加の実施例26と同様に、固結が認められなかった(固結防止)。
膨化菓子100g当たりのシーズニングミックスの付着量は、実施例27~30で4.5g以上と多く、実施例28で最も多かった。
【0063】
〔試験例7:粉粒体状食品における液状油脂の含有量の検討(その2)〕
スナック菓子として膨化菓子の代わりにフライ菓子を用いたことを除いて、製造例4に従ってシーズニングミックスを製造し、続いて、製造例5に従って調味済みフライ菓子を製造した。フライ菓子は、ジャガイモ塊茎をスライスして厚み0.5mmジャガイモ薄片を作製し、180℃の油浴中でフライすることで製造した。
シーズニングミックスの固結度、安息角及び付着量を、それぞれ評価例2~4に従って評価した。結果を表8に示す。
表8記載の含有量は、シーズニングミックス100質量部(ただし、固結抑制剤及びコーンサラダ油の質量を除く)に対するコーンサラダ油の量を質量部で表したものである。
【0064】
表8
【0065】
フライ菓子を用いた試験例7では、膨化菓子を用いた試験例5と同様に、コーンサラダ油を添加した実施例33~37のいずれにおいても、未添加の実施例32と同様に、固結が認められなかった(固結防止)。
膨化菓子100g当たりのシーズニングミックスの付着量は、実施例33~36で4.0g以上と多く、実施例34で最も多かった。
【0066】
〔試験例8:粉粒体状食品における液状油脂の含有量の検討(その3)〕
スナック菓子として膨化菓子の代わりにノンフライ菓子を用いたことを除いて、製造例4に従ってシーズニングミックスを製造し、続いて、製造例5に従って調味済みノンフライ菓子を製造した。ノンフライ菓子は、ジャガイモ塊茎をスライスして厚み0.5mmジャガイモ薄片を作製し、180℃で熱風乾燥して製造した。
シーズニングミックスの固結度、安息角及び付着量を、それぞれ評価例2~4に従って評価した。結果を表9に示す。
表9記載の含有量は、シーズニングミックス100質量部(ただし、固結抑制剤及びコーンサラダ油の質量を除く)に対するコーンサラダ油の量を質量部で表したものである。
【0067】
表9
【0068】
ノンフライ菓子を用いた試験例8では、膨化菓子を用いた試験例5と同様に、コーンサラダ油を添加した実施例39~43のいずれにおいても、未添加の実施例38と同様に、固結が認められなかった(固結防止)。
膨化菓子100g当たりのシーズニングミックスの付着量は、実施例40~42で4.0g以上と多く、実施例40で最も多かった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は飲食品等に利用可能である。