(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127577
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ウェーハの研削方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240912BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240912BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240912BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B7/04 A
B24B41/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036815
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】種村 大佑
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佳一
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C034DD08
3C034DD10
3C043BA03
3C043BA07
3C043BA09
3C043BA12
3C043CC04
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
5F057AA02
5F057AA05
5F057BA15
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB12
5F057BB16
5F057BC03
5F057BC06
5F057BC10
5F057CA15
5F057DA08
5F057DA11
5F057EB20
5F057FA13
5F057FA28
5F057FA30
(57)【要約】
【課題】膜を安定的に研削することができるウェーハの研削方法を提供すること。
【解決手段】ウェーハの研削方法は、保持面に回転軸を有するチャックテーブルでウェーハを保持する保持ステップ101と、円形凹部とリング状補強部とを該ウェーハに形成する研削ステップ102と、を備える。研削ステップ102は、スピンドルを研削砥石がウェーハの中心から外周端部に向かって接触する方向に回転させることによって、膜を除去する膜研削ステップ1021と、スピンドルを研削砥石がウェーハの外周端部から中心に向かって接触する方向に回転させることによって、膜が除去されたウェーハを研削しウェーハに円形凹部とリング状補強部とを形成するウェーハ研削ステップ1023とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に膜が形成されたウェーハの該膜と該ウェーハとを研削し、該ウェーハの表面に円形凹部と該円形凹部を囲繞するリング状補強部とを形成するウェーハの研削方法であって、
保持面に回転軸を有するチャックテーブルで該ウェーハを保持する保持ステップと、
環状の基台と該基台の一面に設けられた複数の研削砥石とを含み、複数の該研削砥石で形成される直径が該ウェーハの半径以下の研削ホイールを先端に装着したスピンドルを有する研削ユニットの該研削砥石の回転軌跡を該保持面の回転軸と重なる位置に位置づけた状態で、該研削ユニットと該チャックテーブルとを該スピンドルの回転軸方向に相対的に接近させ、該円形凹部と該リング状補強部とを該ウェーハに形成する研削ステップと、を備え、
該研削ステップは、
該スピンドルを該研削砥石が該ウェーハの中心から外周端部に向かって接触する方向に回転させた状態で、該研削ユニットと該チャックテーブルとを該スピンドルの回転軸方向に相対的に接近させることによって、該膜を除去する膜研削ステップと、
該スピンドルを該研削砥石が該ウェーハの外周端部から中心に向かって接触する方向に回転させた状態で、該研削ユニットと該チャックテーブルとを該スピンドルの回転軸方向に相対的に接近させることによって、該膜が除去された該ウェーハを研削し該ウェーハに該円形凹部と該リング状補強部とを形成するウェーハ研削ステップと、
を含み構成されるウェーハの研削方法。
【請求項2】
該膜研削ステップと該ウェーハ研削ステップは、異なる回転速度で該スピンドルを回転させることを特徴とする請求項1に記載のウェーハの研削方法。
【請求項3】
該研削ステップは、該膜研削ステップの後、且つ該ウェーハ研削ステップの前に、該研削ユニットと該チャックテーブルとを該スピンドルの回転軸方向に相対的に離間させる離間ステップ、を更に備える請求項1または請求項2に記載のウェーハの研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばSiP(System in Package)等の普及に伴い、ウェーハを歩留まり良く薄化できる研削技術が要望されている。ウェーハを薄化する研削技術の一つとして、TAIKO(登録商標)研削方法が知られている。
【0003】
TAIKO研削方法は、複数のデバイスが形成されたデバイス領域を表面に備えるウェーハの裏面を研削するとき、ウェーハの裏面の外周エッジ部分を残し、外周エッジ部分の内側のデバイス領域に対応するウェーハの裏面の内側部分のみを研削して薄化する技術である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
TAIKO研削方法により、ウェーハの外周エッジ部分に補強部として機能するリング状補強部が形成される。リング状補強部が形成されることにより、ウェーハの内側部分が薄化された後においても、例えば、ウェーハの反り、及び搬送時におけるウェーハの割れ等が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、TAIKO研削方法では、ウェーハの半径以下の外径を有する研削ホイールを使用し研削を行う。そのため、TAIKO研削方法では、通常の全面研削方法と比較すると砥石セグメントの個数が少ないこと、および砥石セグメントの周速が遅くなることにより研削能力が低下する(即ち、砥粒1個あたりの仕事量が増える)。
【0007】
それにより、研削面に例えば酸化膜などの膜が形成されているウェーハの研削では、全面研削よりも研削砥石のコンディション不良(目潰れ、目こぼれ、目詰まり)が発生しやすい。従って、ウェーハの外周部にリング状の補強部を形成するTAIKO研削方法には、酸化膜を安定的に研削できる手法の確立、という解決すべき課題がある。
【0008】
本発明の目的は、膜を安定的に研削することができるウェーハの研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウェーハの研削方法は、表面に膜が形成されたウェーハの該膜と該ウェーハとを研削し、該ウェーハの表面に円形凹部と該円形凹部を囲繞するリング状補強部とを形成するウェーハの研削方法であって、保持面に回転軸を有するチャックテーブルで該ウェーハを保持する保持ステップと、環状の基台と該基台の一面に設けられた複数の研削砥石とを含み、複数の該研削砥石で形成される直径が該ウェーハの半径以下の研削ホイールを先端に装着したスピンドルを有する研削ユニットの該研削砥石の回転軌跡を該保持面の回転軸と重なる位置に位置づけた状態で、該研削ユニットと該チャックテーブルとを該スピンドルの回転軸方向に相対的に接近させ、該円形凹部と該リング状補強部とを該ウェーハに形成する研削ステップと、を備え、該研削ステップは、該スピンドルを該研削砥石が該ウェーハの中心から外周端部に向かって接触する方向に回転させた状態で、該研削ユニットと該チャックテーブルとを該スピンドルの回転軸方向に相対的に接近させることによって、該膜を除去する膜研削ステップと、該スピンドルを該研削砥石が該ウェーハの外周端部から中心に向かって接触する方向に回転させた状態で、該研削ユニットと該チャックテーブルとを該スピンドルの回転軸方向に相対的に接近させることによって、該膜が除去された該ウェーハを研削し該ウェーハに該円形凹部と該リング状補強部とを形成するウェーハ研削ステップと、を含み構成されることを特徴とする。
【0010】
前記ウェーハの研削方法において、該膜研削ステップと該ウェーハ研削ステップは、異なる回転速度で該スピンドルを回転させても良い。
【0011】
前記ウェーハの研削方法において、該研削ステップは、該膜研削ステップの後、且つ該ウェーハ研削ステップの前に、該研削ユニットと該チャックテーブルとを該スピンドルの回転軸方向に相対的に離間させる離間ステップ、を更に備えても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、膜を安定的に研削することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るウェーハの研削方法の加工対象のウェーハを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るウェーハの研削方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示されたウェーハの研削方法の保持ステップを模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示されたウェーハの研削方法の膜研削ステップを模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示されたウェーハの研削方法の膜研削ステップ中のウェーハと研削ホイールの研削砥石を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示されたウェーハの研削方法の離間ステップにおいて研削ホイールをウェーハから離間させた状態を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図2に示されたウェーハの研削方法の離間ステップにおいて研削ホイールを回転軸回りに他方の方向に回転させた状態を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図2に示されたウェーハの研削方法のウェーハ研削ステップを模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図2に示されたウェーハの研削方法のウェーハ研削ステップ中のウェーハと研削ホイールの研削砥石を模式的に示す平面図である。
【
図10】
図10は、本発明と比較例のウェーハの研削方法のスピンドル電流値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るウェーハの研削方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るウェーハの研削方法の加工対象のウェーハを模式的に示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係るウェーハの研削方法の流れを示すフローチャートである。
【0016】
(ウェーハ)
実施形態1に係るウェーハの研削方法は、
図1に示すウェーハ1を研削加工する研削方法である。実施形態1に係るウェーハの研削方法の加工対象の
図1に示すウェーハ1は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを基板2とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。ウェーハ1は、
図1に示すように、基板2の表面3にデバイス領域4と、デバイス領域4を囲繞する外周余剰領域5とを備える。
【0017】
デバイス領域4は、基板2の表面3に格子状に設定された分割予定ライン6と、分割予定ライン6によって区画された各領域に形成されたデバイス7と、を有している。
【0018】
デバイス7は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)又は半導体メモリ(半導体記憶装置)である。外周余剰領域5は、デバイス領域4を全周に亘って囲繞し、基板2の表面3にデバイス7が形成されていない領域である。
【0019】
実施形態1では、ウェーハ1は、表面3の裏側の裏面8(即ち、基板2の表面であって、特許請求の範囲に記載された表面に相当)に酸化膜9(膜に相当)が形成されている。酸化膜9は、基板2よりも研削加工を施しにくい。実施形態1では、ウェーハ1は、基板2が例えばシリコンで構成され、酸化膜9がSi02により構成されている。
【0020】
(ウェーハの研削方法)
次に、実施形態1に係るウェーハの研削方法を説明する。実施形態1に係るウェーハの研削方法は、
図1に示されたウェーハ1の酸化膜9とウェーは1の基板2とを研削加工する研削方法である。実施形態1に係るウェーハの研削方法は、
図2に示すように、保持ステップ101と、研削ステップ102とを備える。
【0021】
(保持ステップ)
図3は、
図2に示されたウェーハの研削方法の保持ステップを模式的に示す斜視図である。保持ステップ101は、保持面22に回転軸23を有するチャックテーブル21でウェーハ1を保持するステップである。
【0022】
実施形態1において、保持ステップ101では、
図3に示すように、研削装置20が、回転軸23を中心として回転自在なチャックテーブル21の保持面22にウェーハ1の表面3側が載置される。このとき、ウェーハ1は、表面3に表面保護テープが貼着されていても良い。
【0023】
なお、表面保護テープは、ウェーハ1と同径の円板状に形成され、非粘着性と可撓性を有する樹脂により構成された基材層と、基材層に積層されかつ粘着性と可撓性を有する樹脂により構成された糊層とを備え、糊層がウェーハ1の表面3に貼着される粘着テープ、又は、糊層を備えずに熱可塑性樹脂により構成されかつウェーハ1の表面に熱圧着される基材層のみから構成されるシートである。
【0024】
実施形態1において、保持ステップ101では、研削装置20が、保持面22が図示しない吸引源により吸引されて、ウェーハ1の表面3側を保持面22に吸引保持する。なお、実施形態1において、研削装置20は、チャックテーブル21の上方に鉛直方向に沿って移動自在即ちチャックテーブル21の保持面22に接近又は離間自在な研削ユニット30を備える。
【0025】
研削ユニット30は、研削ホイール31を先端である下端に装着したスピンドル32を有している。スピンドル32は、鉛直方向に沿って平行な回転軸33回りに図示しないスピンドルモータにより回転される。研削ホイール31は、環状の基台34と、基台34の一面である下面35に設けられた複数の研削砥石36とを含む。研削ホイール31は、複数の研削砥石36の外縁で形成される円の直径がウェーハ1の半径以下である。実施形態1では、研削ホイール31は、複数の研削砥石36の外縁で形成される円の直径がウェーハ1のデバイス領域4の半径と等しい。
【0026】
(研削ステップ)
研削ステップ102は、研削ユニット30のスピンドル32が回転軸33回りに回転した際の研削砥石36の回転軌跡を、保持面22の回転軸23と重なる位置に位置づけた状態で、研削ユニット30とチャックテーブル21とをスピンドル32の回転軸33方向に相対的に接近させ、円形凹部13(
図8及び
図9に示す)とリング状補強部14(
図8及び
図9に示す)とをウェーハ1に形成する、所謂TAIKO(登録商標)研削するステップである。実施形態1において、研削ステップ102は、
図2に示すように、膜研削ステップ1021と、離間ステップ1022と、ウェーハ研削ステップ1023とを含み構成される。
【0027】
(膜研削ステップ)
図4は、
図2に示されたウェーハの研削方法の膜研削ステップを模式的に示す斜視図である。
図5は、
図2に示されたウェーハの研削方法の膜研削ステップ中のウェーハと研削ホイールの研削砥石を模式的に示す平面図である。
【0028】
膜研削ステップ1021は、スピンドル32を研削砥石36がウェーハ1の中心から外周端部に向かって接触する方向に回転させた状態で、研削ユニット30とチャックテーブル21とをスピンドル32の回転軸33方向に相対的に接近させることによって、酸化膜9を除去するステップである。
【0029】
実施形態1において、膜研削ステップ1021では、研削装置20は、研削ユニット30のスピンドル32が回転軸33回りに回転した際の研削砥石36の回転軌跡を、保持面22の回転軸23と重なる位置に位置づけ、チャックテーブル21を回転軸23回りに一方の方向231に回転するとともに、研削ユニット30のスピンドル32即ち研削ホイール31を回転軸33回りに一方の方向331に回転する。なお、実施形態1において、膜研削ステップ1021のチャックテーブル21が回転する一方の方向231と、研削ホイール31が回転する一方の方向331とは逆向きである。
【0030】
実施形態1において、膜研削ステップ1021では、研削装置20は、
図4及び
図5に示すように、研削液ノズルから研削液を供給しつつ、研削ホイール31の研削砥石36をウェーハ1の少なくともデバイス領域4の裏面8に当接させてチャックテーブル21に所定の送り速度で近づけて、研削砥石45でウェーハ1のデバイス領域4の裏面8を研削加工する。なお、実施形態1において、膜研削ステップ1021及びウェーハ研削ステップ1023では、研削装置20は、研削ホイール31の複数の研削砥石36のウェーハ1の径方向に2等分された研削砥石36のうちの一方側の研削砥石36(
図5中に実線で示し、以下、符号361で示す)がウェーハ1のデバイス領域4の裏面8に当接して裏面8を研削し、他方側の研削砥石36(
図5中に破線で示し、以下、符号362で示す)がウェーハ1のデバイス領域4の裏面8から間隔をあけて裏面8を研削しない。
【0031】
このとき、実施形態1において、膜研削ステップ1021では、チャックテーブル21即ちウェーハ1と研削ホイール31即ち研削砥石36が、回転軸23,33回りに逆向きに回転しているので、裏面8を研削する一方側の研削砥石361がウェーハ1の中心から外周端部に向かうこととなる。このように、裏面8を研削する一方側の研削砥石361がウェーハ1の中心から外周端部に向かう研削加工を、以下、内外研削加工という。こうして、膜研削ステップ1021では、研削装置20は、スピンドル32を一方側の研削砥石36がウェーハ1の中心から外周端部に向かって接触する方向に回転させる。
【0032】
実施形態1において、膜研削ステップ1021では、一方側の研削砥石361が、研削ホイール31が回転する一方の方向331の最も上流側の位置でウェーハ1の裏面8の研削加工を開始する。実施形態1において、膜研削ステップ1021では、一方側の研削砥石361の一方の方向331の最も上流側で研削加工を開始する位置の研削砥石361(以下、符号361-1で示す)が回転する一方の方向331と、チャックテーブル21即ちウェーハ1が回転する一方の方向231とが互いに直交する。このため、膜研削ステップ1021では、研削砥石36を裏面8に食い込ませて、ウェーハ1の基板2よりも研削し難い酸化膜9を研削することができ、デバイス領域4の裏面8の酸化膜9を除去することができる。
【0033】
実施形態1において、膜研削ステップ1021では、研削装置20が、ウェーハ1のデバイス領域4の厚さが所定の厚さになると、離間ステップ1022に進む。なお、実施形態1において、膜研削ステップ1021では、研削装置20が、ウェーハ1のデバイス領域4の裏面8を研削加工して、デバイス領域4の裏面8の酸化膜9を除去し、デバイス領域4の裏面8に凹部11を形成し、
図4に示すように、凹部15の底にソーマーク12(加工痕ともいう)と呼ばれる微細な凹凸を形成する。なお、
図4に示す例では、ソーマーク12は、ウェーハ1の裏面8の中心から外周端部に向かって伸びているとともに、中心と外周端部との間で互いに同方向に湾曲している。また、ソーマーク12は、
図4では省略するが、ウェーハ1の裏面8に形成された凹部11の底の中心に円形に形成されている。
【0034】
(離間ステップ)
図6は、
図2に示されたウェーハの研削方法の離間ステップにおいて研削ホイールをウェーハから離間させた状態を模式的に示す斜視図である。
図7は、
図2に示されたウェーハの研削方法の離間ステップにおいて研削ホイールを回転軸回りに他方の方向に回転させた状態を模式的に示す斜視図である。
【0035】
離間ステップ1022は、膜研削ステップ1021の後、且つウェーハ研削ステップ1023の前に、研削ユニット30とチャックテーブル21とをスピンドル32の回転軸33方向に相対的に離間させるステップである。実施形態1において、離間ステップ1022では、研削装置20は、
図6に示すように、スピンドル32を上昇させて、研削ホイール31をウェーハ1の裏面8から遠ざける。
【0036】
実施形態2において、離間ステップ1022では、研削装置20は、
図7に示すように、研削ユニット30のスピンドル32即ち研削ホイール31を回転軸33回りに一方の方向331の逆向きの他方の方向332に回転する。なお、このとき、実施形態1では、スピンドル32の回転速度は、膜研削ステップ1021のスピンドル32の回転速度と異なり、本発明では、離間ステップ1022において逆向きの回転させたスピンドル32の回転速度を膜研削ステップ1021のスピンドル32の回転速度よりも速くても良く、遅くても良い。また、本発明では、離間ステップ1022において逆向きの回転させたスピンドル32の回転速度を膜研削ステップ1021のスピンドル32の回転速度と等しくしても良い。
【0037】
(ウェーハ研削ステップ)
図8は、
図2に示されたウェーハの研削方法のウェーハ研削ステップを模式的に示す斜視図である。
図9は、
図2に示されたウェーハの研削方法のウェーハ研削ステップ中のウェーハと研削ホイールの研削砥石を模式的に示す平面図である。
【0038】
ウェーハ研削ステップ1023は、スピンドル32を研削砥石36がウェーハ1の外周端部から中心に向かって接触する方向に回転させた状態で、研削ユニット30とチャックテーブル21とをスピンドル32の回転軸33方向に相対的に接近させることによって、酸化膜9が除去されたウェーハ1を研削しウェーハ1に円形凹部13とリング状補強部14とを形成するステップである。
【0039】
実施形態1において、ウェーハ研削ステップ1023では、研削装置20は、
図8及び
図9に示すように、研削液ノズルから研削液を供給しつつ、研削ホイール31の研削砥石36をウェーハ1の少なくともデバイス領域4の裏面8に形成された凹部11の底に当接させてチャックテーブル21に所定の送り速度で近づけて、研削砥石45でウェーハ1のデバイス領域4の裏面8に形成された凹部11の底を研削加工する。なお、実施形態1において、膜研削ステップ1021のスピンドル32の回転速度と離間ステップ1022のスピンドル32の他方の方向332の回転速度とが異なるので、膜研削ステップ1021とウェーハ研削ステップ1023とは、異なる回転速度でスピンドル32を回転させる。
【0040】
また、ウェーハ研削ステップ1023において、研削装置20は、研削ホイール31の複数の研削砥石36のウェーハ1の径方向に2等分された研削砥石36のうちの一方側の研削砥石361(
図9中に実線で示す)がウェーハ1のデバイス領域4の裏面8に形成された凹部11の底に当接して凹部11の底を研削し、他方側の研削砥石362(
図9中に破線で示す)がウェーハ1のデバイス領域4の裏面8に形成された凹部11の底から間隔をあけて裏面8に形成された凹部11の底を研削しない。
【0041】
このとき、実施形態1において、ウェーハ研削ステップ1023では、チャックテーブル21即ちウェーハ1と研削ホイール31即ち研削砥石36が、回転軸23,33回りに同じ向きに回転しているので、裏面8を研削する一方側の研削砥石361がウェーハ1の外周端部から中心に向かうこととなる。このように、裏面8を研削する一方側の研削砥石361がウェーハ1の外周端部から中心に向かう研削加工を、以下、外内研削加工という。こうして、ウェーハ研削ステップ1023では、研削装置20は、スピンドル32を一方側の研削砥石361がウェーハ1の外周端部から中心に向かって接触する方向に回転させる。
【0042】
実施形態1において、ウェーハ研削ステップ1023では、一方側の研削砥石361が、研削ホイール31が回転する他方の方向332の最も上流側の位置でウェーハ1の裏面8に形成された凹部11の底の研削加工を開始する。実施形態1において、ウェーハ研削ステップ1023では、一方側の研削砥石36の他方の方向332の最も上流側で研削加工を開始する位置の研削砥石361(以下、符号361-2で示す)が回転する他方の方向332と、チャックテーブル21即ちウェーハ1が回転する一方の方向231とが互いに同じ向きになる。このため、ウェーハ研削ステップ1023では、研削砥石36でウェーハ1の裏面8に形成された凹部11の底の基板2を研削する際に、膜研削ステップ1021で基板2に与えるダメージよりも抑制することができる。
【0043】
こうして、実施形態1において、ウェーハ研削ステップ1023では、研削装置20は、研削ホイール31の研削砥石36で凹部11の底を研削加工して、円形凹部13を形成する。実施形態1において、ウェーハ研削ステップ1023では、研削装置20が、ウェーハ1のデバイス領域4の厚さが所定の厚さになると、研削ホイール31をウェーハ1の裏面8から遠ざけて、ウェーハの研削方法を終了する。
【0044】
こうして、実施形態1において、ウェーハ研削ステップ1023では、研削装置20は、
図8及び
図9に示すように、ウェーハ1の裏面8の中央即ちデバイス領域4の裏面8に円形凹部13を形成するとともに、円形凹部13を囲繞するリング状補強部14を形成する。このように、実施形態1に係るウェーハの研削方法の研削ステップ102は、円形凹部13とリング状補強部14とをウェーハ1に形成するステップである。
【0045】
円形凹部13は、裏面8のデバイス領域4と厚さ方向に重なる領域に形成され、リング状補強部14は、裏面8の外周余剰領域5と厚さ方向に重なる領域に形成される。リング状補強部14の厚さは、研削ステップ102前のウェーハ1の厚さと同じである。このように、実施形態1に係るウェーハの研削方法が施されたウェーハ1の裏面8は、中央に形成された円形凹部13と、円形凹部13を囲うリング状補強部14とを有して、デバイス領域4と外周余剰領域5との間に段差が形成されている。また、ウェーハ1の表面3は、デバイス領域4と外周余剰領域5とに亘って同一平面に形成されている。
【0046】
こうして、実施形態1に係るウェーハの研削方法により円形凹部13が形成されたウェーハ1は、分割予定ライン6に沿って、個々のデバイス7へと分割される。
【0047】
従来から用いられてきた所謂外内研削加工で円形凹部13を形成すると、研削加工の開始位置の研削砥石361-2の移動方向である他方の方向332とウェーハ1の回転方向である一方の方向231とが同じ向きとなるため、研削砥石361-2の底面が酸化膜9に食い付くように研削を開始するため、酸化膜9を研削しにくく食い付き難い。研削砥石361-2の側面でのそぎ落としが、研削砥石36間の隙間分しかないためと考えられる。
【0048】
このような従来の研削方法に比べ、以上説明した実施形態1に係るウェーハの研削方法は、膜研削ステップ1021においてウェーハ1の中心から外周端部に向かって研削を実施する内外研削加工を行う。内外研削加工は、研削を開始する中心の位置の研削砥石361-1の移動方向である一方の方向331とウェーハ1の移動方向である一方の方向231とが直交する方向となるため、研削砥石361-1の側面で膜をそぎ落としながら研削砥石361-1の底面が食い付くように研削を開始するため研削砥石361-1の底面が食い付きやすい。
【0049】
その結果、実施形態1に係るウェーハの研削方法は、膜研削ステップ1021において内外研削加工を行うために、酸化膜9を安定的に研削することができるという効果を奏する。
【0050】
また、実施形態1に係るウェーハの研削方法は、内外研削加工ではウェーハ1の中心の位置で研削砥石361-1が研削を開始するため、ウェーハ1の中心に円形のソーマーク12が顕著に形成されるために品質が低下する傾向があるところ、膜研削ステップ1021後のウェーハ研削ステップ1023では外内研削加工を実施するので、ウェーハ1に与えるダメージを抑制しながらもウェーハ1の基板2を研削加工することができる。
【0051】
次に、本発明の発明者は、実施形態1に係るウェーハの研削方法の効果を確認した。結果を
図10に示す。
図10は、本発明と比較例のウェーハの研削方法のスピンドル電流値
を示す図である。
【0052】
図10に結果を示す確認では、実施例1から実施例13のウェーハ1の裏面8を本発明1、本発明2、比較例1及び比較例2のウェーハの研削方法で研削した際のスピンドル電流値を測定した。なお、スピンドル電流値とは、スピンドル32を回転軸33回りに回転するスピンドルモータに供給される電流の値である。スピンドル電流値は、研削時の値が低い程、研削時の抵抗が少なく、スムーズにウェーハ1を研削することを示している。
【0053】
また、実施例1から実施例3は、基板2のみで形成されたウェーハ1であり、実施例4から実施例13は、裏面8に酸化膜9が形成されたウェーハ1である。
【0054】
本発明1は、前述した実施形態1のウェーハの研削方法の膜研削ステップ1021でウェーハ1の裏面8を研削加工する方法である。本発明2は、前述した実施形態1のウェーハの研削方法の膜研削ステップ1021においてチャックテーブル21即ちウェーハ1を一方の方向231の逆向きの他方の方向232(
図4等に示す)に回転してウェーハ1の裏面8を研削加工する方法である。
【0055】
比較例1は、チャックテーブル21即ちウェーハ1を一方の方向231に回転しながらスピンドル32即ち研削砥石36を他方の方向332に回転してウェーハ1の裏面8を研削加工する方法である。比較例2は、チャックテーブル21即ちウェーハ1を他方の方向232に回転しながらスピンドル32即ち研削砥石36を他方の方向332に回転してウェーハ1の裏面8を研削加工する方法である。
【0056】
図10によれば、実施例4から実施例13のウェーハ1の裏面8を研削加工する際に、比較例1及び比較例2のスピンドル電流値よりも本発明1及び本発明2のスピンドル電流値が低かった。
【0057】
よって、
図10によれば、内外研削を行う膜研削ステップ1021を実施することで、ウェーハ1の酸化膜9が形成された裏面8をスムーズに研削加工でき、酸化膜9を安定的に研削加工することができることが明らかとなった。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明は、膜研削ステップ1021及びウェーハ研削ステップ1023において、チャックテーブル21即ちウェーハ1を一方の方向231の逆向きの他方の方向232に回転させても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 ウェーハ
8 裏面(表面)
9 酸化膜(膜)
13 円形凹部
14 リング状補強部
21 チャックテーブル
22 保持面
23 回転軸
30 研削ユニット
31 研削ホイール
32 スピンドル
33 回転軸
34 基台
35 下面(一面)
36 研削砥石
101 保持ステップ
102 研削ステップ
1021 膜研削ステップ
1022 離間ステップ
1023 ウェーハ研削ステップ