(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127581
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両の監視装置
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240912BHJP
B60R 1/27 20220101ALI20240912BHJP
B60R 1/29 20220101ALI20240912BHJP
H04N 23/698 20230101ALI20240912BHJP
H04N 23/90 20230101ALI20240912BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20240912BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/27
B60R1/29
H04N7/18 E
H04N7/18 K
H04N23/698
H04N23/90
H04N23/60 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036823
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】303002158
【氏名又は名称】三菱ふそうトラック・バス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 佳
(72)【発明者】
【氏名】木下 正昭
(72)【発明者】
【氏名】平野 和弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 賢二
(72)【発明者】
【氏名】立川 法義
【テーマコード(参考)】
5C054
5C122
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054FC12
5C054FD03
5C054FD07
5C054FF06
5C054FF07
5C054HA30
5C122DA11
5C122DA14
5C122DA30
5C122EA55
5C122EA56
5C122FA02
5C122FA18
5C122FH10
5C122FH11
5C122FH14
5C122GE05
5C122GE11
5C122HA82
5C122HA83
5C122HB05
(57)【要約】
【課題】カメラの設置数を抑制しつつ、カメラを利用した車両機能の向上を実現させることができる車両の監視装置を提供する。
【解決手段】車両1に装備され、全方位カメラ60a,60bによって撮影範囲内の監視対象を撮影する、車両の監視装置であって、全方位カメラ60a,60bは、キャブ3のコーナー部3Cに支持された支持部材70に取り付けられると共に、キャブ3の側面よりも外方であり、且つ、フロントガラス33の上端から下端の範囲内に配置され、全方位カメラ60a,60bの撮影範囲は、少なくともキャブ3の室内を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装備された全方位カメラによって撮影範囲内の監視対象を撮影する、車両の監視装置であって、
前記全方位カメラは、キャブの前部コーナー部に取り付けられると共に、前記キャブの側面よりも外方であり、且つ、フロントガラスの上端から下端の範囲内に配置され、
前記全方位カメラの前記撮影範囲は、少なくとも前記キャブの室内を含んでいる
ことを特徴とする、車両の監視装置。
【請求項2】
前記全方位カメラは、前記キャブの左右の前部コーナー部にそれぞれ設置され、
それぞれの前記全方位カメラのうち、運転席側の前記全方位カメラは、前記キャブの前端面よりも後方及び前記キャブの側面よりも外方に配置され、助手席側の前記全方位カメラは、前記キャブの前記前端面よりも前方及び前記キャブの側面よりも外方若しくは前記キャブの側面の延長線上に配置されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【請求項3】
前記車両はフロントガラス用のワイパー装置を備えており、
前記全方位カメラの前記撮影範囲は、少なくとも前記ワイパー装置の可動範囲を含めている
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【請求項4】
前記全方位カメラによって撮影された前記監視対象の画像情報に基づき、自車両に装備された車載装置を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記全方位カメラによって撮影された前記監視対象の画像情報に基づき、前記車載装置を制御する
こと特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【請求項5】
前記全方位カメラは、前記キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、
前記監視対象は前記キャブの室内のドライバーを含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された前記ドライバーの画像情報がドライバーモニタリング装置の制御入力情報として利用される
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【請求項6】
前記ドライバーが監視対象となっている場合、前記運転席側の前記全方位カメラで撮影された前記ドライバーの顔に関する画像情報および前記助手席側の前記全方位カメラで撮影された前記ドライバーの姿勢変化に関する画像情報が前記ドライバーモニタリング装置の制御入力情報として利用される
ことを特徴とする、請求項5に記載の車両の監視装置。
【請求項7】
前記全方位カメラは、前記キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、
前記監視対象は車両側部後方を含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された車両側部後方の画像情報が車両後方表示モニタの表示画像として利用される
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【請求項8】
前記全方位カメラは、前記キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、
前記監視対象は自車両前方の先行車を含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された前記先行車の画像情報が先行車追従走行制御の制御入力情報として利用される
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【請求項9】
前記全方位カメラは、前記キャブの前記運転席側及び前記助手席側それぞれに設けられ、
前記監視対象は自車両前方の先行車を含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された前記先行車の画像情報が先行車衝突防止制御の制御入力情報として利用される
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【請求項10】
前記全方位カメラは、キャブの前記運転席側及び前記助手席側それぞれに設けられ、
前記監視対象は自車両が走行している道路の車線を含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された前記車線の画像情報がレーンキープ制御の制御入力情報として利用される
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【請求項11】
前記全方位カメラは、前記キャブの前記助手席側に設けられ、
前記監視対象は走行中の前記車両の前記助手席側の車両外部領域を含み、前記全方位カメラによって撮影された前記車両の左側方の領域の画像情報が左折巻き込み防止制御の制御入力情報として利用される
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【請求項12】
前記全方位カメラは、前記キャブの前部コーナー部に支持された支持部材に取り付けられ、
前記支持部材は、前記キャブの前部コーナー部におけるフロントパネルとフロントピラーとの接続部に支持される
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【請求項13】
前記全方位カメラは、前記キャブの前部コーナー部に支持された支持部材に取り付けられ、
前記支持部材は、前記キャブの前部コーナー部におけるルーフパネルとフロントピラーとの接続部に支持される
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【請求項14】
前記全方位カメラは、前記キャブの前部コーナー部に支持された支持部材に取り付けられ、
前記支持部材は、前記キャブの前部コーナー部におけるフロントピラーの中間部に支持される
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【請求項15】
前記車両は、前記キャブの前方にボンネットを備えない車両である
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の技術が進むにつれ、バン、トラック、バスなどの車両においても車両内外の物体をカメラやレーダなどにより認知し、その情報に基づいて、車両に装備される装置を機能させる技術が普及している。
【0003】
例えば、特許文献1には、車室内のステアリングコラムに、ドライバーの運転状態を監視するドライバモニタカメラを設置すると共に、ミリ波レーダ等の前方監視センサを車両に設置して、ドライバモニタカメラで得られるドライバーの視線が、前方監視センサで得られる前方の道路状況に対して適切であるか、即ち、脇見運転をしていないかを監視する装置が開示されている。この場合、車内を監視するドライバモニタカメラと、車外を監視する前方監視センサとが必要になる。
【0004】
特にカメラの技術に着目すると、例えば、車室内のインストルメントパネルなどに設置したカメラでドライバーを撮影し、ドライバーの体調急変やわき見運転を検知したり、車両前方を撮影して先行車との衝突の危険性を検知したりする技術が開発されており、さらには、車両後方を撮影するデジタルミラーなど利用範囲は拡大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両の内外をカメラで認知して、その画像情報に基づいて制御する、車両の装置が増えていくと、利便性や安全性など向上できる一方で、カメラの数が増加していき、コスト増や画像処理の複雑化を招くことになる。また、カメラを車室内に設置する場合にはその設置スペースも必要となるため、カメラ用の取付カバーの設置などによりドライバーの視界が狭くなることもある。
【0007】
本発明は、このような課題に着目して創案されたもので、カメラの設置数を抑制しつつ、カメラを利用した車両機能の向上を実現させることができる車両の監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
(1)本適用例に係る車両の監視装置は、車両に装備された全方位カメラによって撮影範囲内の監視対象を撮影する、車両の監視装置であって、前記全方位カメラは、キャブの前部コーナー部に取り付けられると共に、前記キャブの側面よりも外方であり、且つ、フロントガラスの上端から下端の範囲内に配置され、前記全方位カメラの前記撮影範囲は、少なくとも前記キャブの室内を含んでいることを特徴としている。
【0009】
本適用例によれば、全方位カメラは、キャブの外方に配置されるので、車両のほぼ全周について車両の周囲状況を撮影でき、しかも、全方位カメラの撮影範囲はキャブの室内を含んでいるので、キャブの室内に別途カメラを設けることなく、キャブの室内、例えばドライバーの状況を撮影することができる。したがって、カメラの設置数を抑制しつつ、カメラを利用した車両機能の向上を実現させることが可能になる。
【0010】
(2)本適用例において、前記全方位カメラは、前記キャブの左右の前部コーナー部にそれぞれ設置され、それぞれの前記全方位カメラのうち、運転席側の全方位カメラは、前記キャブの前端面よりも後方及び前記キャブの側面よりも外方に配置され、助手席側の全方位カメラは、前記キャブの前端面よりも前方及び前記キャブの側面よりも外方若しくは前記キャブの側面の延長線上に配置されていることが好ましい。
このような構成により、運転席側の状況を2つのカメラで共同して撮影できると共に、助手席側の全方位カメラでキャブの直前の空間についても撮影することができる。
【0011】
(3)本適用例において、前記車両はフロントガラス用のワイパー装置を備えており、前記全方位カメラの撮影範囲は、少なくとも前記ワイパー装置の可動範囲を含めていることが好ましい。
このような構成により、フロントガラスに雨や雪が付着した場合でも、フロントガラスのワイパー装置を可動させることによって、全方位カメラでキャブの室内を精度良く撮影することができる。
【0012】
(4)本適用例において、前記全方位カメラによって撮影された前記監視対象の情報に基づき、前記車載装置を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記全方位カメラによって撮影された前記監視対象の情報に基づき、自車両に装備された車載装置を制御することが好ましい。
このような構成により、全方位カメラによって撮影された監視対象の情報に基づき、自車両に搭載される種々の車載装置を制御することができる。
【0013】
(5)本適用例において、前記全方位カメラは、前記キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、前記監視対象は前記キャブの室内のドライバーを含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された前記ドライバーの画像情報がドライバーモニタリング装置の制御入力情報として利用されることが好ましい。
このような構成により、キャブの室内にドライバーの顔や姿勢を撮影するカメラを設けることなく、ドライバーモニタリング装置を機能させることができる。
【0014】
(6)本適用例において、前記ドライバーが監視対象となっている場合、前記運転席側の全方位カメラで撮影された前記ドライバーの顔に関する画像情報及び前記助手席側の全方位カメラで撮影された前記ドライバーの姿勢変化に関する画像情報が前記ドライバーモニタリング装置の制御入力情報として利用されることが好ましい。
このような構成により、ドライバーに対してより近い運転席側の全方位カメラによって、ドライバーの瞼の動きや口元など顔に関する画像情報がドライバーモニタリング装置の制御入力情報として利用されるため、ドライバーの眠気や疲労状態を早期に把握することができる。また、助手席側の全方位カメラによって、ドライバーの姿勢変化に関する画像情報がドライバーモニタリング装置の制御入力情報として利用されるため、ドライバーが何らかの理由によって安全に運転できない状況に陥ったことを早期に把握することができる。
【0015】
(7)本適用例において、前記全方位カメラは、前記キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、前記監視対象は車両側部後方を含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された車両側部後方の画像情報が車両後方表示モニタの表示画像として利用されることが好ましい。
このような構成により、全方位カメラによって、キャブ室内の撮影以外に、車両後方表示モニタの表示画像用のカメラにも利用することができる。
【0016】
(8)本適用例において、前記全方位カメラは、前記キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、前記監視対象は自車両前方の先行車を含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された前記先行車の画像情報が先行車追従走行制御の制御入力情報として利用されることが好ましい。
このような構成により、全方位カメラによって、キャブ室内の撮影以外に、先行車追従走行制御の制御入力情報にも利用することができる。
【0017】
(9)本適用例において、さらに、前記全方位カメラは、前記キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、前記監視対象は自車両前方の先行車を含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された前記先行車の画像情報が先行車衝突防止制御の制御入力情報として利用されることが好ましい。
このような構成により、全方位カメラによって、キャブ室内の撮影以外に、先行車衝突防止制御の制御入力情報にも利用することができる。
【0018】
(10)本適用例において、さらに、前記全方位カメラは、キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、前記監視対象は自車両が走行している道路の車線を含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された前記車線の画像情報がレーンキープ制御の制御入力情報として利用されることが好ましい。
このような構成により、全方位カメラによって、キャブ室内の撮影以外に、レーンキープ制御の制御入力情報にも利用することができる。
【0019】
(11)本適用例において、さらに、前記全方位カメラは、前記キャブの助手席側に設けられ、前記監視対象は走行中の自車両の助手席側の車両外部領域を含み、前記全方位カメラによって撮影された前記自車両左側方の領域の画像情報が左折巻き込み防止制御の制御入力情報として利用されることが好ましい。
このような構成により、1つの全方位カメラによって、キャブ室内の撮影以外に、ドライバーにとって死角側(助手席側)の巻き込み(左折巻き込み)の防止制御の制御入力情報にも利用することができる。
【0020】
(12)本適用例において、前記全方位カメラは、前記キャブの前部コーナー部に支持された支持部材に取り付けられ、前記支持部材は、前記キャブの前部コーナー部におけるフロントパネルとフロントピラーとの接続部に支持されることが好ましい。
このような構成により、例えば中小型のトラックの場合に、支持部材を大型化することなく、キャブの室内のドライバー等を撮影することができる。
【0021】
(13)本適用例において、前記全方位カメラは、前記キャブの前部コーナー部に支持された支持部材に取り付けられ、前記支持部材は、前記キャブの前部コーナー部におけるルーフパネルとフロントピラーとの接続部に支持されることも好ましい。
このような構成により、例えば大型のトラックの場合に、支持部材を大型化することなく、キャブの室内のドライバー等を撮影することができる。
【0022】
(14)本適用例において、前記全方位カメラは、前記キャブの前部コーナー部に支持された支持部材に取り付けられ、前記支持部材は、前記キャブの前部コーナー部におけるフロントピラーの中間部に支持されることも好ましい。
このような構成により、例えば大型バスのように、フロントウインドウがドライバーの上方及び下方の広い範囲にわたって大きく設けられている場合に、支持部材を大型化することなく、キャブの室内のドライバー等を撮影することができる。
【0023】
(15)本適用例において、前記車両は、前記キャブの前方にボンネットを備えない車両であることも好ましい。
このような構成により、例えば、従来キャブの前部コーナー部にサイドミラーが取り付けられるようなトラックやバスなどの車両に適用する場合、大幅な構造変更することなく、全方位カメラを取り付けることができる。
【発明の効果】
【0024】
本件によれば、カメラの設置数を抑制しつつ、カメラを利用した車両機能の向上を実現させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る車両を左前方から見た斜視図である。
【
図2】実施形態に係る全方位カメラを示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す全方位カメラの撮影領域を説明する側面図である。
【
図4】
図1に示す車両のキャブの右側(ドライバ側)のコーナー部に配置された全方位カメラを示す斜視図である。
【
図5】
図1に示す車両のキャブの左側(助手席側)のコーナー部に配置された全方位カメラを示す斜視図である。
【
図6】
図1に示す車両のキャブの右側(ドライバ側)の側面図である。
【
図7】
図1に示す車両のキャブの前部の平面図である。
【
図8】
図1に示す車両のキャブの前部の前面図である。
【
図9】
図1に示す車両の全方位カメラの撮影領域を示す模式的な平面図である。
【
図10】変形例に係る車両の全方位カメラの撮影領域を示す模式的な平面図である。
【
図11】実施形態に係る全方位カメラの検出情報の処理系統を説明する制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0027】
なお、以下の説明では、車両の前進方向を前方とし、その反対方向(車両の後退方向)を後方とし、車両が前方を向いた状態を基準にして左右を定める。また、前後方向を車長方向ともいい、左右方向を車幅方向ともいう。さらに、車長方向と車幅方向とのいずれにも直交する方向を上下方向という。車両は、水平な路面上にあり、上下方向が鉛直方向と一致する(下方向が重力の作用方向と一致する)姿勢であるものとする。この姿勢で、鉛直上方を高さ方向とする。
【0028】
[1.構成]
[1.1.車両の構成]
まず、本実施形態に係る車両の監視装置6を装備した車両について説明する。
図1に示すように、本車両1は、キャブの前方にボンネットを備えない車両、いわゆる、非ボンネット車両であり、ここでは、中型あるいは小型のトラックを例示している。
車両1は、フレーム2と、フレーム2上の前部に搭載されたキャブ3と、フレーム2上のキャブ3の後方に搭載された荷箱4とを備えている。また、フレーム2の下部には、図示しないサスペンション機構を介して車輪5が装備されている。
【0029】
キャブ3は、前面に、フロントパネル31とフロントパネル31の上方の左右に設けられたフロントピラー32,32とを備え、左右のフロントピラー32,32間にフロントガラス33を備えている。また、キャブ3の左右両側面には、ドア34を備え、各ドア34は、ドアガラス35を備えている。キャブ3内には、車両右側に運転席36aが設けられ、車両左側に助手席36bが設けられる。
このような車両1のキャブ3において、フロントピラー32,32が設けられる前部コーナー部3Cに、監視装置6に装備される全方位カメラ60が配備されている。本実施形態では、左右の前部コーナー部3Cに、それぞれ、全方位カメラ60が配備されている。
【0030】
[1.2.全方位カメラ]
ここで、全方位カメラ60について説明する。
全方位カメラ60は、360度すべてを撮影範囲とする全天球カメラが適用されている。本実施形態の全方位カメラ60は、
図2,3に示すように、ケース61の一側(車両右側、運転席36a側)及び他側(車両左側、助手席36b側)に2枚のレンズ62a,62bが搭載され、1枚のレンズで片面(180度+d、
図3に角度α1,α2で示す)ずつ画面を捉えて、2つの映像を合成し、360度撮影できる構成となっている。
図2,3には示さないが、全方位カメラ60には、各レンズ62a,62bで捉えた被写体を撮影し、アナログ電気信号の画像データに変換する撮像素子63(
図11参照)と撮像素子63で変換された画像データをデジタル化処理する画像処理回路64(
図11参照)とが装備されている。
【0031】
このような全方位カメラ60は、
図1及び
図4~
図8に示すように、支持部材70を介してキャブ3に取り付けられている。本実施形態では、支持部材70は、キャブ3の各コーナー部3Cにおいて、フロントパネル31とフロントピラー32,32との接続部37に取り付けられたブラケット71と、ブラケット71に基部を取り付けられたアーム部72と、アーム部72の先端に装備された取付台座73とを備えている。なお、以下の説明では、運転席側の全方位カメラ60を符号60aで示し、助手席側の全方位カメラ60を符号60bで示す。
【0032】
アーム部72は、水平にブラケット71に形成された水平の取付座面71aからほぼ水平に延在する基端側部分72aと、基端側部分72aから屈曲部72bを介してほぼ鉛直上方に延びた先端側部分72cとを備える。基端側部分72aの形状や長さ等により、取付台座73に取り付けられる全方位カメラ60のキャブ3に対する平面位置が決まる。また、先端側部分72cの長さ等により、取付台座73に取り付けられる全方位カメラ60のキャブ3に対する高さ位置が決まる。
【0033】
運転席36a側の支持部材70のアーム部72は、基端側部分72aがキャブ3の側面(ドア34の外面パネル)よりも外方で且つキャブ3の前面(フロントパネル31)よりも後方に延びており、
図7に示すように、全方位カメラ60は、キャブ3の側面よりも外方で且つキャブ3の前面よりも後方に位置する。このように、運転席36a側の全方位カメラ60aの平面位置をキャブ3の側面よりも外方に設定するのは、車両の後方を撮影範囲に含めるためである。また、運転席36a側の全方位カメラ60aの平面位置をキャブ3の前面よりも後方に設定するのは、ドアガラス35を通して、運転席36aに着座したドライバー8の顔の表情等をより近くから撮影するためである。
【0034】
助手席36b側の支持部材70のアーム部72は、基端側部分72aがキャブ3の側面(ドア34の外面パネル)よりも外方で且つキャブ3の前面(フロントパネル31)よりも前方に延びており、全方位カメラ60は、
図7に示すように、キャブ3の側面よりも外方で且つキャブ3の前面よりも前方に位置する。このように、助手席36b側の全方位カメラ60bの平面位置をキャブ3の側面よりも外方に設定するのは、車両の後方を撮影範囲に含めるためである。また、助手席36b側の全方位カメラ60bの平面位置をキャブ3の前面よりも前方に設定するのは、キャブ3の直前を撮影範囲に含めると共に、フロントガラス33を通して、運転席36aに着座したドライバー8の顔の表情等を撮影するためである。
【0035】
運転席36a側及び助手席36b側の支持部材70のアーム部72の先端側部分72cは、
図6に示すように、所定の高さまで延びている。この高さは、運転席36aに着座したドライバー8の顔の表情等を撮影し易い高さである。本実施形態では、運転席36a側の全方位カメラ60aと助手席36b側の全方位カメラ60bとの両方でドライバー8の状況を捉えるため、このように設定されるが、例えば、ドライバー8の状況を運転席36a側の全方位カメラ60aでのみ捉えるように構成する場合、助手席36b側の全方位カメラ60bの高さ位置は別の観点から設定することができる。
【0036】
図7,
図8に示すように、助手席36b側の全方位カメラ60bでは、フロントガラス33を通して、キャブ3内のドライバー8を撮影する。天候が雨天や積雪などの状況下では、フロントガラス33に雨滴や着雪することが考えられる。これに対し、助手席36b側の全方位カメラ60bの撮影範囲は、少なくともフロントガラス33用の図示しないワイパー装置の可動範囲37を含めている。したがって、フロントガラス33に雨や雪が付着している場合にも、ワイパー装置を作動させることにより、キャブ3内のドライバー8を撮影することが可能となる。なお、
図7において、助手席36b側の全方位カメラ60bの撮影範囲に地模様をつけて示している。また、
図8において、フロントガラス33におけるワイパー装置の可動範囲37以外の部分に地模様をつけて示している。
【0037】
図9は、運転席36a側の全方位カメラ60aと助手席36b側の全方位カメラ60bとによる撮影範囲を示す平面図である。本実施形態では、各全方位カメラ60a,60bの一方のレンズ62aを車両前方向きに配向し、他方のレンズ62bを車両後方向きに配向したものとする。ただし、レンズ62a,62bの配向設定はこの限りではない。
【0038】
図9に示すように、運転席36a側の全方位カメラ60aの前方向きのレンズ62aはα11が撮影範囲となり、運転席36a側の全方位カメラ60aの後方向きのレンズ62bはα12が撮影範囲となる。また、助手席36b側の全方位カメラ60bの前方向きのレンズ62aはα21が撮影範囲となり、助手席36b側の全方位カメラ60bの後方向きのレンズ62bはα22が撮影範囲となる。
【0039】
図9では、少なくとも何れかのレンズで撮影できる領域をグレーで示している。また、この撮影できる領域のうち、複数のレンズで撮影できる領域はグレーの濃度を濃くして表示している。濃度に添付する数字は撮影できるレンズの数であり、このグレー濃度は、1枚のレンズのみで撮影できる領域(添付数字1)と、2枚のレンズで撮影できる領域と、3枚のレンズで撮影できる領域(添付数字2)と、3枚のレンズで撮影できる領域(添付数字3)との3段階で示している。また、網掛けで示す領域は、運転席36a側の全方位カメラ60aの前方レンズ62aと、助手席36b側の全方位カメラ60aの前方レンズ62aとでステレオ計測できる範囲を示す。
【0040】
なお、キャブ3の後面の後方は撮影できない範囲とし、キャブ3のドアガラス35は側面全域と仮定する。ただし、ドアガラス35を2枚越しで存在する領域は、撮影できない範囲とする。また、ピラー32の影は撮影できない範囲とするが、運転席36aや助手席36bやドライバー8等の乗員の存在は無視している。
【0041】
図9に示すように、各全方位カメラ60a,60bの側方直近にケース61の影で撮影できない僅かな領域と、車両後方に車両の影となって撮影できない領域はあるが、全方位カメラ60a,60bにより車両の周囲のほぼ全域を撮影することができる。
【0042】
[1.3.カメラ情報の処理系統の構成]
図11に示すように、全方位カメラ60a,60bは、それぞれ、レンズ62a,62bで捉えた被写体を撮影し、アナログ電気信号の画像データに変換する撮像素子63と、撮像素子63が変換した画像データをA/D変換後、デジタル電気信号に変換処理する画像処理回路64とを備えている。なお、ここでは、画像データは電気信号の画像情報であり、アナログ電気信号の画像データと、デジタル電気信号の画像データとがある。
【0043】
画像処理回路64で処理されたデジタル信号の画像データは、球面データであり、周縁部ほど大きな歪みが生じているので、これを補正して各方向の平面データを得るために、画像データ処理装置80が接続される。この画像データ処理装置80では、球面データを各方向の平面データに変換する。この際、側方画像は、2つの画像のつなぎ目が含まれるので、例えばステッチング処理を利用して両画像を結合して、側方の平面画像を得ることができる。
【0044】
このように画像データ処理装置80の変換処理により各方向の平面データが得られるので、所要の監視対象の平面データを得ることができる。車両には、全方位カメラ60a,60bで撮影された画像から得られる監視対象の状況に応じて車両に装備された車載装置を制御する何らかの制御装置が装備されているので、画像処理回路64で処理された監視対象の情報に基づき、これらの制御装置を制御することができる。
【0045】
例えば、本車両1が、ドライバー8の顔や姿勢に基づいて脇見や居眠り運転状況を監視して、ドライバーへ報知するドライバーモニタリング装置81を備える場合、画像データ処理装置80から出力される画像データ(ドライバー画像A,Bの画像データ)をドライバーモニタリング装置81の制御入力情報として利用することができる。
【0046】
具体的には、運転席36a側の全方位カメラ60aの後方レンズ62bの画像データを画像データ処理装置80で処理して得られるドライバー画像Aの画像データと、助手席36b側の全方位カメラ60bの後方レンズ62bの画像データを画像データ処理装置80で処理して得られるドライバー画像Bの画像データをそれぞれドライバーモニタリング装置81の制御入力情報として利用する。
【0047】
なお、この場合、運転席36a側の全方位カメラ60aでドライバー8の顔を撮影対象として設定し、助手席36b側の全方位カメラ60bでドライバーの姿勢変化を撮影対象として設定する。これにより、ドライバー8により近い運転席36a側の全方位カメラ60aによって、ドライバー8の瞼の動き(
図8の二点鎖線を参照)や口元など顔に関する画像情報(画像データ)がドライバーモニタリング装置81の制御入力情報として利用されるため、ドライバー8の脇見や眠気や疲労などが発生している状態を早期かつ正確に把握することができる。
【0048】
また、助手席36b側の全方位カメラ60bによって、ドライバー8の上半身などの姿勢変化に関する画像情報(画像データ)がドライバーモニタリング装置81の制御入力情報として利用されるため、ドライバー8の居眠りによる姿勢変化などを早期に把握することができる。
【0049】
ドライバー画像A,Bに基づいて、ドライバー8が脇見や居眠りをしているか否かを判定し、ドライバー8が脇見や居眠りをしていると判定したら、ドライバー8に報知することにより、脇見運転や居眠り運転を防止することができる。
【0050】
また、本車両1が、ドライバーに急病等の健康上の異常を判定したら、車両1を路側に停止させたりドライバー8の異常を外部に発信したりする異常時制御を実施する異常時制御装置82を備えている場合、ドライバー画像A,Bに基づいて、ドライバー8の異常を判定し、ドライバー異常時制御を実施することができる。
【0051】
また、本車両1が、車両前方の画像情報に基づいて先行車両に追従走行する追従走行制御を行う追従走行制御装置83を備えている場合、画像データ処理装置80から出力される画像データ(前方画像A,Bの画像データ)を車追従走行制御の制御入力情報として利用することができる。つまり、全方位カメラ60aの前方レンズ62aの画像データを画像データ処理装置80で処理して得られる前方画像Aの画像データと、全方位カメラ60bの前方レンズ62aの画像データを画像データ処理装置80で処理して得られる前方画像Bの画像データとをステレオカメラデータ(ステレオカメラの画像データ)として用いて先行車両の位置を判定し、追従走行制御を実施することができる。
【0052】
また、本車両1が、車両前方の画像情報に基づいて先行車両への追突を防止する追突防止制御を行う追突防止制御装置84を備えている場合、画像データ処理装置80から出力される画像データ(前方画像A,Bの画像データ)を先行車衝突防止制御の制御入力情報として利用することができる。つまり、全方位カメラ60a,60bの各前方レンズ62aの画像データを画像データ処理装置80で処理して得られる前方画像A及び前方画像Bの画像データをステレオカメラデータとして用いて先行車両の位置を判定し、先行車衝突防止制御を実施することができる。
【0053】
また、本車両1が、車両前方の白線の画像情報に基づいて自車両を走行中のレーン内にキープするレーンキープ制御を行うレーンキープ制御装置85を備えている場合、画像データ処理装置80から出力される画像データ(前方画像A,Bのデータ画像)から得られる白線の画像情報をレーンキープ制御の制御入力情報として利用することができる。つまり、全方位カメラ60a,60bの各前方レンズ62aの画像データを画像データ処理装置80で処理して得られる前方画像A及び前方画像Bの画像データをステレオカメラデータとして用いて車両前方の白線の位置を判定し、レーンキープ制御を実施することができる。
【0054】
また、本車両1が、旋回時(特に、助手席側の車両側方がドライバーの死角になる左旋回時)に車両側方の画像情報に基づいて人や物体等を巻き込まないように警告を行う巻き込み防止制御装置86を備えている場合、画像データ処理装置80から出力される画像データ(側方画像A,Bの画像データ)から得られる車両側方の各画像情報(側方画像情報)を巻き込み防止制御の制御入力情報として利用することができる。つまり、全方位カメラ60a,60bの何れかの前方レンズ62a及び後方レンズ62bの画像データを画像データ処理装置80で処理して得られる右側方画像A或いは左側方画像Bの画像データを用いて巻き込み対象の有無を判定し、巻き込み防止制御を実施することができる。
【0055】
また、本車両1が、側方画像情報に基づいて車両側方の状況を側方モニタに表示する側方表示装置87を備える場合、画像データ処理装置80から出力される画像データ(側方画像A,Bの画像データ)から得られる各側方画像情報を側方画像表示制御の制御入力情報として利用することができる。つまり、右側方画像Aの画像データに基づいて右側方画像を表示することができ、左側方画像Bの画像データに基づいて左側方画像を側方モニタに表示することができる。
【0056】
また、本車両1が、車両後方の画像情報に基づいて車両後方の状況を後方モニタに表示する後方表示装置88を備える場合、画像データ処理装置80から出力される画像データ(後方画像A,Bのデータ)から得られる各後方画像情報を後方画像表示制御の制御入力情報として利用することができる。つまり、全方位カメラ60aの後方レンズ62bの画像データを画像データ処理装置80で処理して得られる右後方画像Aの画像データと、全方位カメラ60bの後方レンズ62bの画像データを画像データ処理装置80で処理して得られる左後方画像Bの画像データとを合成して車両後方の状況を後方モニタに表示することができる。また、右後方用と左後方用として2つの後方モニタを設けて、右後方画像Aの画像データに基づいて右後方画像を右後方用の後方モニタに表示し、左後方画像Bの画像データに基づいて左後方画像を左後方用の後方モニタに表示することもできる。
【0057】
[2.作用及び効果]
本実施形態に係る車両の監視装置6は、上述のように構成されているので、以下のような作用及び効果を得ることができる。
【0058】
(1)本監視装置6では、全方位カメラ60a,60bが、キャブ3の前部コーナー部3Cに支持された支持部材70に取り付けられ、キャブ3の側面よりも外方であり、且つ、フロントガラス33の上端から下端の範囲内に配置され、全方位カメラ60a,60bの撮影範囲は、少なくともキャブ3の室内を含んでいる。全方位カメラ60a,60bがキャブ3の外方に配置されるので、車両1のほぼ全周について車両1の周囲状況を撮影でき、しかも、全方位カメラ60a,60bの撮影範囲はキャブの室内を含んでいるので、キャブ3の室内に別途カメラを設けることなく、キャブの室内のドライバー8の状況を撮影することができる。したがって、カメラの設置数を抑制しつつ、カメラを利用した車両機能の向上を実現させることが可能になる。
【0059】
(2)本実施形態では、運転席36a側の全方位カメラ60aは、キャブ3の前端面よりも後方及びキャブ3の側面よりも外方に配置され、助手席36b側の全方位カメラ60bは、キャブ3の前端面よりも前方及びキャブ3の側面よりも外方に配置されているので、運転席36a側の全方位カメラ60aを主体として、運転席36a側の状況を2つの全方位カメラ60a,60bで共同して撮影できると共に、助手席36b側の全方位カメラ60bでキャブ3の直前の空間についても撮影することができる。したがって、運転席36aの状況も把握することができる。
【0060】
(3)本実施形態では、全方位カメラ60の撮影範囲は、少なくともフロントガラスのワイパー装置37の可動範囲を含めているため、フロントガラスに雨滴や着雪があった場合でも、フロントガラスのワイパー装置37を可動させることによって、全方位カメラ60でキャブ3の室内やドライバー8の状況を精度良く撮影することができる。
【0061】
(4)本実施形態では、全方位カメラ60a,60bによって撮影された監視対象の情報を利用して制御装置を作動させることで、車両に装備された種々の車載装置を制御することができ,汎用性が高い。
【0062】
(5)本実施形態では、全方位カメラ60a,60bの監視対象はキャブ3の室内のドライバー8を含み、全方位カメラ60a,60bによって撮影されたドライバー8の画像データが、ドライバー8の脇見や居眠りなどを検出してドライバー8へ報知するドライバーモニタリング装置81の制御入力情報として利用されるので、キャブ3の室内にドライバーを撮影するカメラを設けることなく、ドライバーモニタリング装置81を機能させることができる。
【0063】
(6)本実施形態では、全方位カメラ60a,60bの監視対象としてキャブ3の室内のドライバー8がなっている場合、運転席36a側の全方位カメラ60aで撮影されたドライバー8の顔に関する画像情報と、助手席36b側の全方位カメラ60bで撮影されたドライバー8の姿勢変化に関する画像情報とをドライバーモニタリング装置81の制御入力情報として利用することにより、ドライバー8により近い運転席36a側の全方位カメラ60aによってドライバー8の眠気や疲労状態を早期に把握することができる。また、助手席36b側の全方位カメラ60bによって、ドライバー8の姿勢変化に関する画像情報がドライバーモニタリング装置の制御入力情報として利用されるため、ドライバー8の居眠りによる姿勢変化などを早期に把握することができる。
【0064】
(7)本実施形態では、全方位カメラ60a,60bの監視対象は車両側部後方を含み、運転席36a側及び助手席36b側の全方位カメラ60a,60bによって撮影された車両側部後方の画像情報が車両後方表示モニタの表示画像として利用されるので、全方位カメラによって、キャブ3室内の撮影以外に、車両後方表示モニタの表示画像用のカメラとしても利用することができる。
【0065】
(8)本実施形態では、全方位カメラ60a,60bの監視対象は車両前方の先行車を含み、運転席36a側及び助手席36b側の全方位カメラ60a,60bによって撮影された先行車の画像情報が先行車追従走行制御の制御入力情報として利用されるので、全方位カメラ60a,60bによって、キャブ3の室内の撮影以外に、先行車追従走行制御の制御入力情報にも利用することができる。
【0066】
(9)本実施形態では、全方位カメラ60a,60bの監視対象は自車両前方の先行車を含み、運転席36a側及び助手席36b側の全方位カメラ60a,60bによって撮影された先行車の画像情報が先行車衝突防止制御の制御入力情報として利用されるので、全方位カメラ60a,60bによって、キャブ3の室内の撮影以外に、先行車衝突防止制御の制御入力情報にも利用することができる。
【0067】
(10)本実施形態では、全方位カメラ60a,60bの監視対象は自車両が走行している道路の車線を含み、運転席36a側及び助手席36b側の全方位カメラ60a,60bによって撮影された車線の画像情報がレーンキープ制御の制御入力情報として利用されるので、全方位カメラ60a,60bによって、キャブ3の室内の撮影以外に、全レーンキープ制御の制御入力情報にも利用することができる。
【0068】
(11)本実施形態では、助手席36b側の全方位カメラ60bの監視対象は走行中の自車両の助手席36b側の車両外部領域を含み、全方位カメラ60bによって撮影された自車両左側方の領域の画像情報が左折巻き込み防止制御の制御入力情報として利用されるので。1つの全方位カメラ60bによって、キャブ3室内の撮影以外に、ドライバーにとって死角側(助手席側)の巻き込み(左折巻き込み)の防止制御の制御入力情報にも利用することができる。
【0069】
(12)本実施形態では、支持部材70は、キャブ3のコーナー部3Cにおけるフロントパネル31とフロントピラー32との接続部37に支持されるので、中小型のトラックにおいて、支持部材70を大型化することなく、キャブ3の室内のドライバー8等を撮影することができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、全方位カメラ60a,60bの監視対象はキャブ3の室内のドライバー8を含み、全方位カメラ60a,60bによって撮影されたドライバー8の画像情報が、ドライバー8の異常を判定する情報としても利用されるので、カメラやセンサを追加することなくドライバー異常時制御を実施することができる。
なお、本実施形態では、車両側方の状況を表示する側方モニタと、車両後方の状況を表示する後方モニタとを備えているが、車両前方の状況を表示する前方モニタを設けるようにしても良い。前方モニタを設けることにより、ドライバーの着座位置から死角となる車両前方直下位置での状況を把握することができる。
【0071】
[3.その他]
上記実施形態の構成は一例であって、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、キャブ3の左右のコーナー部3Cにそれぞれ全方位カメラ60a,60bを設置しているが、一方のみに設置しても良い。この場合、全方位カメラ60の情報の利用範囲は限定されるが、利用可能な制御もあり、一定の効果を得ることができる。
【0072】
また、上記実施形態では、運転席36a側の全方位カメラ60aをキャブ3の前端面よりも後方且つキャブ3の側面よりも外方に配置しているが、例えば
図10に示すように、運転席36a側の全方位カメラ60aをキャブ3の側面よりも外方で且つキャブ3の前端面の延長線上に配置しても良い。運転席36aからはやや遠くなるが、キャブ3の前端面の直前まで撮影範囲とすることができる。この場合、運転席36a側の全方位カメラ60aの撮影範囲は、少なくともフロントガラス33用のワイパー装置37の可動範囲を含めていると好適である。このようにすれば、フロントガラスに雨滴や着雪している場合、ワイパー装置37を作動させることにより、キャブ3内のドライバー8を撮影することが可能となる。
【0073】
また、上記実施形態では、助手席36b側の全方位カメラ60bをキャブ3の前端面よりも前方且つキャブ3の側面よりも外方に配置しているが、例えば
図10に示すように、助手席36b側の全方位カメラ60bをキャブ3の前端面よりも前方で且つキャブ3の側面の延長線上に配置しても良い。後方の撮影範囲は余裕がなくなるが、運転席36aに接近することができ、運転席36aのドライバー8の状況をより鮮明に撮影することが可能になる。
【0074】
なお、
図10は、
図9に対応する図であり、全方位カメラ60a,60bの配置が異なるため、各全方位カメラ60a,60bによる撮影範囲も異なっている。また、
図10の場合、1枚のレンズのみで撮影できる領域(添付数字1)と、2枚のレンズで撮影できる領域と、3枚のレンズで撮影できる領域(添付数字2)と、3枚のレンズで撮影できる領域(添付数字3)との3段階に加えて、4枚のレンズで撮影できる領域(添付数字4)が発生している。
【0075】
さらに、上記実施形態では、キャブ3の前方にボンネットを備えない中小型トラックへの適用例を説明したが、本件は、キャブ3の前方にボンネットを備えたトラックやバスや乗用車等にも適用できる。
なお、上記実施形態では、支持部材70はキャブ3のコーナー部3Cにおけるフロントパネル31とフロントピラー32との接続部に支持されているが、これに限定されるものではない。
【0076】
例えば大型のトラックのように、ドライバー8の顔がフロントパネル31の上縁よりもかなり高い位置となる車両の場合、支持部材70はキャブ3のコーナー部3Cにおけるルーフパネルとフロントピラー32との接続部に支持されることが好ましい。これにより、支持部材70を大型化することなく、キャブ3の室内のドライバー8等を撮影することができる。
【0077】
また、例えば大型バスのように、フロントガラスがドライバー8の上方及び下方の広い範囲にわたって大きく設けられている場合に、支持部材70はキャブ3のコーナー部におけるフロントピラー32の中間部に支持されることが好ましい。これにより、支持部材70を大型化することなく、キャブ3の室内のドライバー8等を撮影することができる。
【0078】
また、上記実施形態では、全方位カメラ60を支持部材70のアーム部72の先端に装備された取付台座73に取り付ける構成としているが、キャブ3の各コーナー部3C(例えば、フロントパネル31とフロントピラー32との接続部37)に全方位カメラ30を取り付けても良い。このようにすれば、車両後方確認用のミラーがドアミラーの場合にも適用することが可能となる。
【0079】
また、上記実施形態では、全方位カメラ60a、60bを2枚のレンズを使用して360度撮影できる構成としているが、例えば、レンズの1枚あたりの撮影範囲はこの限りではない。例えば、120度撮影できるレンズを3つ使用するなどしても良い。
【0080】
また、上記実施形態では、全方位カメラ60の撮影範囲は360度に設定されているが、監視対象を撮影可能であれば360度未満であっても良い。
【0081】
[4.付記]
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0082】
(付記1)
車両に装備された全方位カメラによって撮影範囲内の監視対象を撮影する、車両の監視装置であって、
前記全方位カメラは、キャブの前部コーナー部に取り付けられると共に、前記キャブの側面よりも外方であり、且つ、フロントガラスの上端から下端の範囲内に配置され、
前記全方位カメラの前記撮影範囲は、少なくとも前記キャブの室内を含んでいる
ことを特徴とする、車両の監視装置。
【0083】
(付記2)
前記全方位カメラは、前記キャブの左右の前部コーナー部にそれぞれ設置され、
それぞれの前記全方位カメラのうち、運転席側の全方位カメラは、前記キャブの前端面よりも後方及び前記キャブの側面よりも外方に配置され、助手席側の全方位カメラは、前記キャブの前端面よりも前方及び前記キャブの側面よりも外方若しくは前記キャブの側面の延長線上に配置されている
ことを特徴とする、付記1に記載の車両の監視装置。
【0084】
(付記3)
前記車両はフロントガラス用のワイパー装置を備えており、
前記全方位カメラの撮影範囲は、少なくとも前記ワイパー装置の可動範囲を含めている
ことを特徴とする、付記2に記載の車両の監視装置。
【0085】
(付記4)
前記全方位カメラによって撮影された前記監視対象の画像情報に基づき、自車両に装備された車載装置を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記全方位カメラによって撮影された前記監視対象の画像情報に基づき、前記車載装置を制御する
こと特徴とする、付記1又は付記2に記載の車両の監視装置。
【0086】
(付記5)
前記全方位カメラは、前記キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、
前記監視対象は前記キャブの室内のドライバーを含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された前記ドライバーの画像情報がドライバーモニタリング装置の制御入力情報として利用される
ことを特徴とする、付記1~付記3のいずれか1つに記載の車両の監視装置。
【0087】
(付記6)
前記ドライバーが監視対象となっている場合、前記運転席側の全方位カメラで撮影された前記ドライバーの顔に関する画像情報および前記助手席側の全方位カメラで撮影された前記ドライバーの姿勢変化に関する画像情報が前記ドライバーモニタリング装置の制御入力情報として利用される
ことを特徴とする、付記5に記載の車両の監視装置。
【0088】
(付記7)
前記全方位カメラは、前記キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、
前記監視対象は車両側部後方を含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された車両側部後方の画像情報が車両後方表示モニタの表示画像として利用される
ことを特徴とする、付記1~付記6のいずれか1つに記載の車両の監視装置。
【0089】
(付記8)
前記全方位カメラは、前記キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、
前記監視対象は自車両前方の先行車を含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された前記先行車の画像情報が先行車追従走行制御の制御入力情報として利用される
ことを特徴とする、付記1~付記7のいずれか1つに記載の車両の監視装置。
【0090】
(付記9)
前記全方位カメラは、前記キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、
前記監視対象は自車両前方の先行車を含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された前記先行車の画像情報が先行車衝突防止制御の制御入力情報として利用される
ことを特徴とする、付記1~付記8のいずれか1つに記載の車両の監視装置。
【0091】
(付記10)
前記全方位カメラは、キャブの運転席側及び助手席側それぞれに設けられ、
前記監視対象は自車両が走行している道路の車線を含み、前記運転席側及び前記助手席側の前記全方位カメラによって撮影された前記車線の画像情報がレーンキープ制御の制御入力情報として利用される
ことを特徴とする、付記1~付記9のいずれか1つに記載の車両の監視装置。
【0092】
(付記11)
前記全方位カメラは、前記キャブの助手席側に設けられ、
前記監視対象は走行中の自車両の助手席側の車両外部領域を含み、前記全方位カメラによって撮影された前記自車両左側方の領域の画像情報が左折巻き込み防止制御の制御入力情報として利用される
ことを特徴とする、付記1~付記10のいずれか1つに記載の車両の監視装置。
【0093】
(付記12)
前記支持部材は、前記キャブの前部コーナー部におけるフロントパネルとフロントピラーとの接続部に支持される
ことを特徴とする、付記1~付記11のいずれか1つに記載の車両の監視装置。
【0094】
(付記13)
前記支持部材は、前記キャブの前部コーナー部におけるルーフパネルとフロントピラーとの接続部に支持される
ことを特徴とする、付記1~付記11のいずれか1つに記載の車両の監視装置。
【0095】
(付記14)
前記支持部材は、前記キャブの前部コーナー部におけるフロントピラーの中間部に支持される
ことを特徴とする、付記1~付記11のいずれか1つに記載の車両の監視装置。
【0096】
(付記15)
前記車両は、前記キャブの前方にボンネットを備えない車両である
ことを特徴とする、付記1~付記14のいずれか1つに記載の車両の監視装置。
【符号の説明】
【0097】
1 車両(非ボンネット車両)
2 フレーム
3 キャブ
3C キャブ3の前部コーナー部
4 荷箱
5 車輪
6 監視装置
8 ドライバー
31 フロントパネル
32 フロントピラー
33 フロントガラス
34 ドア
35 ドアガラス
36a 運転席
36b 助手席
37 ワイパー装置の可動範囲
60 全方位カメラ
60a 運転席36a側の全方位カメラ
60b 助手席36b側の全方位カメラ
61 ケース
62 レンズ
62a 前方レンズ
62b 後方レンズ
63 撮像素子
64 画像処理回路
70 支持部材
71 ブラケット
71a ブラケット71の取付座面
72 アーム部
72a アーム部72の基端側部分
72b アーム部72の屈曲部
72c アーム部72の先端側部分
73 取付台座
80 画像データ処理装置
81 ドライバーモニタリング装置
82 異常時制御装置
83 追従走行制御装置
84 追突防止制御装置
85 レーンキープ制御装置
86 巻き込み防止制御装置
87 側方表示装置
88 後方表示装置
α11 全方位カメラ60aの前方向きのレンズ62aの撮影範囲
α12 全方位カメラ60aの後方向きのレンズ62bの撮影範囲
α21 全方位カメラ60bの前方向きのレンズ62aの撮影範囲
α22 全方位カメラ60bの後方向きのレンズ62bの撮影範囲