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特開2024-127599多孔質セラミックス層、多孔質セラミックス積層体及び分離膜
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  • 特開-多孔質セラミックス層、多孔質セラミックス積層体及び分離膜 図1
  • 特開-多孔質セラミックス層、多孔質セラミックス積層体及び分離膜 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127599
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】多孔質セラミックス層、多孔質セラミックス積層体及び分離膜
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20240912BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20240912BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20240912BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20240912BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20240912BHJP
   C04B 35/111 20060101ALI20240912BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/02
B01D69/00
C04B35/111
C04B41/85 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036853
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 亮暢
(72)【発明者】
【氏名】原 秀作
(72)【発明者】
【氏名】内藤 翔太
【テーマコード(参考)】
4D006
4G019
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA41
4D006HA21
4D006HA77
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA21
4D006MA27
4D006MA40
4D006MC01
4D006MC03X
4D006MC07
4D006NA39
4D006PA01
4G019FA11
4G019FA13
(57)【要約】
【課題】機能層を上に積層した際に機能層の抵抗を小さくできる多孔質セラミックス層及び多孔質セラミックス積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】セラミックス骨梁と空隙で構成される多孔質セラミックス層であって、厚み方向をz軸とした際に、3次元Mean Intercept Length法によって前記空隙を解析して求めた回転楕円体近似長軸とz軸がなす角度である細孔角度θが68°~112°である多孔質セラミックス層。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス骨梁と空隙で構成される多孔質セラミックス層であって、
厚み方向をz軸とした際に、3次元Mean Intercept Length法によって前記空隙を解析して求めた回転楕円体近似長軸とz軸がなす角度である細孔角度θが68°~112°である多孔質セラミックス層。
【請求項2】
第1多孔質層と、前記第1多孔質層表面に積層された第2多孔質層とを有する多孔質セラミックス積層体であって、
前記第1多孔質層の細孔径0.0036~200μmの範囲で測定したlog微分細孔容量の値が最大となる細孔径DLD-max(1)は、前記第2多孔質層の細孔径0.0036~200μmの範囲で測定したlog微分細孔容量の値が最大となる細孔径DLD-max(2)よりも大きく、
前記第1多孔質層及び第2多孔質層はいずれも金属酸化物を含み、
前記第2多孔質層が請求項1に記載の多孔質セラミックス層である多孔質セラミックス積層体。
【請求項3】
前記金属酸化物はアルミナを含む請求項2に記載の多孔質セラミックス積層体。
【請求項4】
チューブ状またはモノリス状である請求項2または3に記載の多孔質セラミックス積層体。
【請求項5】
請求項2または3に記載の多孔質セラミックス積層体を含む分離膜。
【請求項6】
前記第2多孔質層と機能層とが積層されている請求項5に記載の分離膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質セラミックス層、多孔質セラミックス積層体及び分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質セラミックス体は、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、ガス分離膜などの、気体又は液体である流体の分離、濃縮または濾過等の機能を有する膜として様々な分野で利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1にはAl含有量が所定範囲であるアルミナ質基体管表面に、Al含有量、モード径、及び最大細孔径が所定範囲であるセラミック膜を成膜したセラミックフィルターであり、その気孔率が35%以上であるセラミックフィルターが開示されている。また、特許文献2には、基材と、最表層と、前記基材と前記最表層の間に配置され、前記最表層に接する支持層と、を備え、前記支持層の気孔率に対する前記最表層の気孔率の比、及び前記支持層の厚みに対する前記最表層の厚みの比が所定範囲である多孔質支持体が記載され、基材、支持層及び最表層の平均細孔径、基材、支持層及び最表層を構成する粒子の平均粒径等についても記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-283219号公報
【特許文献2】WO2017/169591
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多孔質セラミックス体は、最表層に機能層を備えることによって、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、ガス分離膜などとして用いることができ、この際に機能層を流体が透過する際の抵抗が低いことが望まれる。
【0006】
本発明は、機能層を上に積層した際に機能層の抵抗を小さくできる多孔質セラミックス層及び多孔質セラミックス積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成した本発明は以下の通りである。
[1]セラミックス骨梁と空隙で構成される多孔質セラミックス層であって、
厚み方向をz軸とした際に、3次元Mean Intercept Length法によって前記空隙を解析して求めた回転楕円体近似長軸とz軸とがなす角度である細孔角度θが68°~112°である多孔質セラミックス層。
[2]第1多孔質層と、前記第1多孔質層表面に積層された第2多孔質層とを有する多孔質セラミックス積層体であって、
前記第1多孔質層の細孔径0.0036~200μmの範囲で測定したlog微分細孔容量の値が最大となる細孔径DLD-max(1)は、前記第2多孔質層の細孔径0.0036~200μmの範囲で測定したlog微分細孔容量の値が最大となる細孔径DLD-max(2)よりも大きく、
前記第1多孔質層及び第2多孔質層はいずれも金属酸化物を含み、
前記第2多孔質層が[1]に記載の多孔質セラミックス層である多孔質セラミックス積層体。
[3]前記金属酸化物はアルミナを含む[2]に記載の多孔質セラミックス積層体。
[4]チューブ状またはモノリス状である[2]または[3]に記載の多孔質セラミックス積層体。
[5][2]~[4]のいずれかに記載の多孔質セラミックス積層体を含む分離膜。
[6]前記第2多孔質層と機能層とが積層されている[5]に記載の分離膜。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多孔質セラミックス層及び多孔質セラミックス積層体によれば、機能層など最表面層を流体が透過する際の抵抗を低くできる。また本発明の多孔質セラミックス層及び多孔質セラミックス積層体を水処理用途等固液分離に用いれば、堆積するケーク層の抵抗を低くすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の細孔角度θの測定手順の一部を説明する図である。
図2】本発明の細孔角度θの測定要領を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)多孔質セラミックス層
本発明の多孔質セラミックス層は、セラミックス骨梁と空隙で構成される。空隙は、すなわち多孔質セラミックス層における細孔であり、細孔は通常、多孔質セラミックス層中で3次元に広がっている。細孔が3次元に広がっているとは、細孔が不定形であること、または細孔が直線的でないことであるとも言える。本発明の多孔質セラミックス層において、厚み方向をz軸とした際に、3次元Mean Intercept Length法(MIL法)によって前記空隙を解析して求めた回転楕円体近似長軸とz軸がなす角度である細孔角度θが68°~112°である。このような細孔角度θのもとで、細孔が3次元に広がっていることによって抵抗の低減と欠陥の抑制が実現でき、流路の閉塞を防げるため好ましい。
【0011】
本発明における細孔角度θは、構造異方性を評価する方法として提案されているMean Intercept Length法を用いて評価する。図1は、3次元直交座標において多孔質セラミックス層の厚み方向(z軸)を含み、x軸から角度φ傾いた一の面P(φ)における空隙を示す図であり、http://oshiro.bpe.es.osaka-u.ac.jp/thesis/master/2005/katsuhara.pdfに、示された図に、厚み方向(z軸)、直線m、直線n群及び切線の表示を加えた図である。図1において、灰色で表示される部分がセラミックス多孔質体の空隙に相当する。前記厚み方向(z軸)と角度θをなす直線mに垂直な直線n群によって前記空隙が区切られる各切線の長さL(φ,θ,n)を平均してLave(φ,θ)を得る。そして、その結果を偏角(θ,φ)と、原点からの距離Laveからなる極座標にプロットし、プロット結果を回転楕円体に近似し、回転楕円体の長軸とz軸とのなす角度を細孔角度θとする。細孔角度θは3次元的に解析されるが、極座標にプロットした際の様子を2次元に表した図2(出典:http://oshiro.bpe.es.osaka-u.ac.jp/thesis/master/2005/katsuhara.pdf)を参考までに示す。図2に示すように回転楕円体の長軸とz軸のなす角度が細孔角度θである。
【0012】
細孔角度θは、多孔質セラミックス層の厚み方向に垂直な断面を所定間隔に複数面、電子顕微鏡にて観察した画像から、画像解析ソフトにより3次元像を取得して解析することができる。FIB-SEMとしては、細孔径が150~500nmの時はFEI製HELIOS600を、細孔径が30~150nmの時はHELIOS G4を用いることができる。画像解析ソフトとしては、Visualization Sciences Group製のAvizo ver.6.0を用いることができる。厚さ方向に垂直な断面の電子顕微鏡による観察は、後述する水銀圧入法による細孔径が150~500nmの時は厚さ方向に17~23nm程度の間隔ごとに、細孔径が30~150nmの時は、厚さ方向に7~13nm程度の間隔ごとに行えばよい。前記断面での観察領域は多孔質セラミックス層全体の細孔角度を把握するために十分な領域を適宜設定すればよく、HFWは、例えば15μm以上とすればよい。また、画像分解能は細孔径が150~500nmの時、X軸方向及びY軸方向に15~25nm/pix程度とし、細孔径が30~150nmの時は、X軸方向及びY軸方向に3~10nm/pix程度とすればよい。
【0013】
多孔質セラミックス層の3次元像を、X、Y、及びZ方向に区切る際の間隔は、後述する水銀圧入法による細孔径が150~500nmの時は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向でいずれも15~25nm/pix程度とし、細孔径が30~150nmの時は、X軸方向及びY軸方向で3~10nm/pix程度、Z軸方向で8~12nm/pix程度とすればよい。得られた3次元像の解析には、ラトックシステムエンジニアリング製の定量解析ソフト、TRI/3D-BON-FCSを用いることができる。
【0014】
前記細孔角度θは、68°~112°であり、このようにすることで、細孔が多孔質セラミックス層の厚み方向に向かって伸びていることとなり、多孔質セラミックス層の上に積層される機能層の抵抗を小さくできる。また、細孔角度θが前記範囲であることで、バブルポイント試験を行った際の気泡発生を抑制できるという効果も有する。細孔角度θは70°以上が好ましく、より好ましくは72°以上であり、更に好ましくは80°以上であり、また110°以下が好ましく、より好ましくは108°以下であり、更に好ましくは100°以下である。
【0015】
多孔質セラミックス層の水銀圧入法により測定される細孔径は、0.04μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、更に好ましくは0.13μm以上であり、一層好ましくは0.15μm以上であり、また0.7μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下であり、更に好ましくは0.4μm以下である。当該細孔径は、横軸を細孔径、縦軸をlog微分細孔容量とするグラフにおいてピークを示す細孔径を意味する。
【0016】
(2)多孔質セラミックス積層体
本発明は、第1多孔質層と、前記第1多孔質層表面に積層された第2多孔質層とを有する多孔質セラミックス積層体であって、前記第1多孔質層の細孔径0.0036~200μmの範囲で測定したlog微分細孔容量の値が最大となる細孔径DLD-max(1)は、前記第2多孔質層の細孔径0.0036~200μmの範囲で測定したlog微分細孔容量の値が最大となる細孔径DLD-max(2)よりも大きく、前記第1多孔質層及び第2多孔質層はいずれも金属酸化物を含み、前記第2多孔質層が請求項1または2に記載の多孔質セラミックス層である多孔質セラミックス積層体も含む。
【0017】
前記した「第1多孔質層表面に積層されている」とは、第1多孔質層と第2多孔質層が隣接して(すなわち、他の層を介することなく)積層されていてもよいし、第1多孔質層と第2多孔質層の間に第3の多孔質層を介してもよい。この第3の多孔質層は複数層があってもよい。第1多孔質層と第2多孔質層が隣接して積層されている場合、第2多孔質層は、その一部が第1多孔質層と接していれば、残りの部分は、第1多孔質層の表面に存在する細孔に起因して、存在する空気を介して第1多孔質層に積層されていてもよい。第2多孔質層と第1多孔質が接している箇所は、第1多孔質層の表面に存在する細孔の孔部であってもよい。
【0018】
前記多孔質セラミックス積層体の形状は特に限定されず、例えば板状、チューブ状、又はモノリス状などが挙げられ、特にチューブ状又はモノリス状であることが好ましい。なお、モノリス状とは、軸方向に貫通した孔を複数有する柱(円柱、角柱、楕円柱など)形状を意味する。前記多孔質セラミックス積層体がチューブ状である場合、第2多孔質層はチューブの内周面のみ、外周面のみ、又は内周面と外周面の両方に形成されていることが好ましく、内周面のみ又は外周面のみに形成されていることがより好ましく、内周面のみに形成されていることが更に好ましい。前記多孔質セラミックス体がモノリス状である場合、モノリス形状が有する各貫通孔の内部表面のみに第2多孔質層が形成されていることが好ましい。
【0019】
多孔質セラミックス積層体の厚み(平均値)は、例えば450~10000μmであり、より好ましくは500~6000μmである。前記多孔質セラミックス積層体がモノリス状である場合の厚みとは、軸に垂直な平面での、隣り合う貫通孔の最近接距離の平均値であってもよい。また、多孔質セラミックス積層体の長手方向の長さは例えば50~5000mmである。長手方向の長さとは、例えば板状の場合には長辺の長さ、チューブ状またはモノリス状の場合には軸方向の長さを意味する。
【0020】
(2-1)第1多孔質層
第1多孔質層のlog微分細孔容量のピークの細孔径、すなわちlog微分細孔容量の値が最大となる細孔径DLD-max(1)は、細孔径0.0036~200μmの内、5~25μmの範囲に存在していることが好ましく、より好ましくは5~20μm、さらに好ましくは5~15μm、最も好ましくは5~12μmである。
【0021】
また第1多孔質層の厚みは400~8000μmであることが好ましい。
【0022】
第1多孔質層は金属酸化物を含み、該金属酸化物は例えばLiO、BeO、B、NaO、MgO、Al、SiO、KO、CaO、ScO、TiO、V、Cr、ZnO、Ga、GeO、As、RbO、SrO、Y、ZrO、Nb、AgO、CdO、In、SnO、Sb、TeO、CsO、BaO、La、Ta、WO、HgO、TlO、PbO、PbO、及びThOよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。金属酸化物としてAl、ZrO、MgO、Cr、及びYの少なくとも1種が含まれることが好ましく、Alが含まれることがより好ましい。第1多孔質層にはAlと、Al以外の1種以上の金属酸化物が含まれていることがより好ましい。第1多孔質層に含まれることが好ましいAl以外の1種以上の金属酸化物は、上記で例示した金属酸化物から任意に選択することができ、第1多孔質層はAlとSiOを含むガラスであることが特に好ましい。なお、本明細書における「金属」とは、Si等の半金属も含む意味で用いる。
【0023】
(2-2)第2多孔質層
第2多孔質層のlog微分細孔容量のピークの細孔径、すなわちlog微分細孔容量の値が最大となる細孔径DLD-max(2)は、細孔径0.0036~200μmの内、0.01~5μmの範囲に存在していることが好ましく、より好ましくは0.01~1μm、さらに好ましくは0.01~0.7μm、一層好ましくは0.05~0.5μmで、最も好ましくは0.1~0.4μmである。
【0024】
第2多孔質層の厚みは、3~300μmであることが好ましい。第2多孔質層の厚みは、以下の手順で求めることができる。まず、第1多孔質層と第2多孔質層の積層方向に平行な断面を作成し、その断面の画像を取得する。前記画像において、第2多孔質層の、第1多孔質層側表面の合計長さが、第1多孔質層のDLD-max(1)の10倍以上となるように画像を取得し、第2多孔質層と第1多孔質層の界面から、第2多孔質層の第1多孔質層と反対側の界面までの長さを測定した。なお、第2多孔質層の界面が波打っている場合は、画像中の波の山と谷の頂点に接する長手方向と平行な線を引き、その間の空間を2等分する2つの線に平行な中央線を引いた。そして、この中央線を界面とみなして、膜厚を測定した。第2多孔質層の第1多孔質層と反対側の界面についても、第2多孔質層の界面が波打っている場合は、画像中の波の山と谷の頂点に接する長手方向と平行な線を引き、その間の空間を2等分する2つの線に平行な中央線を引き、その中央線を界面とみなした。
【0025】
第2多孔質層もまた、金属酸化物を含み、該金属酸化物としては第1多孔質層における金属酸化物として例示したものと同じものを挙げることができる。第2多孔質層には、金属酸化物として、Al、ZrO、MgO、Cr、及びYの少なくとも1種を含むことが好ましく、Alを含むことがより好ましく、金属酸化物中のAl含有割合としては80質量%以上が好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。第1多孔質層と第2多孔質層がともにAlを含むことが更に好ましい。
【0026】
(3)多孔質セラミックス層及び多孔質セラミックス積層体の製造方法
【0027】
本発明の多孔質セラミックス層は、細孔角度θを本発明の範囲に調整できれば特に制限はないが、体積基準の累積50%相当アスペクト比AR50が1.8~2.7であり、(AR90―AR10)/AR50が0.67以上1.0以下かつAR90が3.00以上4.00以下である無機粒子を含むスラリーを調製し、該スラリーを基材に塗布して熱処理して製造される。なお、ここでいうAR(数値)とは後述する3次元粒子形状解析において得られるアスペクト比の分布に関するパラメーターである。このように累積50%相当アスペクト比AR50が一定の範囲の粒子でも、アスペクト比の大きい粒子がある一定割合で存在することによって、細孔角度θが68°~112°である本発明の多孔質セラミックス層を製造できる。アスペクト比は、後述する実施例で示す通り、3次元粒子形状解析によって算出できる。
【0028】
上記のような無機粒子は、バイコウスキー社製のCR-6や、CR-15などの市販の無機粒子を使用してもよく、ベーマイトとAlF粉末と種々の粒径を有するαアルミナ種結晶を混合した粒子の混合物を熱処理することによって調製したものを用いてもよい。この際、AlFの含有率は0.1質量%以上で2.7質量%以下の範囲で増やすことが好ましく、0.11質量%以上で2.0質量%以下がより好ましく、0.12質量%以上で1.5質量%以下がさらに好ましい。AlFの含有率を本範囲に制御することによって粒子の異方成長を促進することで、アスペクト比を大きくし、所定のアスペクト比の分布に制御することができる。αアルミナ種結晶の平均粒径は、例えば0.1~0.5μmの範囲の混合物を用いることができ、また、αアルミナ種結晶の添加量40質量%以下0.01質量%以上の範囲で増やすことによって、得られる粒子の粒径を0.1~3μmの範囲に制御することができる。前記粒子の混合物の熱処理は、耐圧容器を用いて密閉系の容器中で750~1800℃にて行う。高温になるほどアスペクト比が小さくなるため、上記温度の範囲に制御することで所定のアスペクト比分布のものが得られる。焼成時間は粒成長を促進させる観点から、1時間以上100時間以下が好ましく、12時間以上48時間以下がより好ましい。熱処理後に、得られたアルミナ粒子の解砕処理を行い、粒子の凝集を解してもよい。粒子解砕方法としては例えばボールミルが挙げられる。
【0029】
スラリーに含まれる無機粒子は、金属酸化物であることが好ましく、金属酸化物としては第1多孔質層における金属酸化物として例示した金属酸化物と同様のものを挙げることができる。スラリーに含まれる金属酸化物は、本発明の多孔質セラミックス体に含まれる金属酸化物として例示したものから選択することができ、特にAl、ZrO、MgO、Cr、及びYの少なくとも1種が含まれることが好ましく、Alが含まれることがより好ましい。Al含有割合としては80質量%以上が好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。スラリー中の金属酸化物濃度は、例えば2質量%以上、15質量%以下であり、好ましくは4質量%以上、13質量%以下である。スラリーに含まれる金属酸化物は、金属酸化物の水和物であってもよい。
【0030】
スラリーには、金属酸化物の他、溶剤及び増粘剤が含まれることが好ましい。
溶剤としては、水または有機系溶剤が挙げられる。
増粘剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられ、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることが特に好ましい。前記増粘剤のスラリー中の濃度は、例えば0.5質量%以上、5質量%以下であり、好ましくは1質量%以上、3質量%以下である。
【0031】
前記増粘剤を溶剤に溶解する際の冷却条件を調整することも好ましく、3℃以上10℃以下まで冷却して、10分以上1時間未満攪拌することが好ましい。冷却することによって、溶け残る増粘剤の粒形や形状を変化させることができるので、細孔角度θを調整することができる。
【0032】
スラリーに含まれる無機粒子の体積基準の累積50%相当径は、0.1~3μmであることが好ましい。前記累積50%相当径は、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0033】
スラリーの塗布方法は限定されないが、塗布の際にスラリーに圧を極力与えない方法を用いることによってより粉末の形状を反映した細孔角度を実現できる。この観点から、スプレーコート、ディップコート、吸引コート、超音波噴霧、吹き付け塗布が好ましく、スプレーコート、ディップコート、超音波噴霧、吹き付け塗布がより好ましく、スプレーコート、ディップコート、吹き付け塗布がさらに好ましく、スプレーコート、ディップコートが最も好ましい。スラリーを塗布した後は、熱処理することで多孔質セラミックス層が形成でき、熱処理温度は例えば1000℃以上、1500℃以下であり、熱処理時間は例えば1時間以上、8時間以下である。
【0034】
また、前記スラリーを塗布する基材として、前記スラリーから形成される多孔質層(第2多孔質層)よりもDLD-maxが大きく金属酸化物を含む基材(第1多孔質層)を用い、この基材に撥水撥油処理をした後に、スラリーを塗布して熱処理することで本発明の多孔質セラミックス層(第2多孔質層)を基材上に形成することができ、本発明の多孔質セラミックス積層体を製造できる。
【0035】
第1多孔質層に撥水撥油処理し、撥水撥油処理面にスラリーを塗布することで、基材の孔にスラリーが入りこむことを防止できる。撥水撥油処理の方法は、スプレーコート、ディップコート、バーコート、吸引コート、超音波噴霧、刷毛塗り、スキージ塗布、吹き付け塗布等が挙げられる。撥水剤及び撥油剤の組成は限定されないが、例えばパラフィン系撥水撥油剤、フッ素系撥水撥油剤、ポリシロキサン系撥水撥油剤を用いることができる。フッ素系撥水撥油剤としては、パーフルオロアルキル基を有するもの、パーフルオロポリエーテル構造を有するものなどが挙げられる。
【0036】
第1多孔質層としては、例えば上述の第1多孔質層のDLD-max(1)を有し、金属酸化物を有する多孔質体を用いることができ、好ましい金属酸化物は第1多孔質層について説明したものを参照すればよい。このような基材は、例えばアルミナとSiOを含む市販品の基材を用いることができ、萩ガラス社製のアルミナ基材A-13などが挙げられる。
【0037】
(4)分離膜
本発明の多孔質セラミックス積層体は、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜として用いることができ、必要に応じて更に機能層を積層して、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、ガス等の分離膜として用いることができる。分離膜において、本発明の多孔質セラミックス積層体の第2多孔質層と機能層とが積層されていることが好ましく、第2多孔質層と機能層とが直接積層されていることがより好ましい。
【0038】
上記機能層としては、ゼオライト、MOF(Metal Organic Frameworks)、多孔質シリカ膜、多孔質アルミナ膜等が挙げられる。
【0039】
本発明の多孔質セラミックス積層体の第2多孔質層表面に、機能層を構成する無機粒子またはMOFを含む液を塗布し、熱処理することで、機能層を備えた分離膜を製造できる。熱処理条件は、積層する機能層に応じて適宜選択可能であるが、例えば80~800℃で1~10時間熱処理することで分離膜を製造できる。機能層を構成する無機粒子またはMOFを含む液中の無機粒子またはMOFの量は、1~10質量%とすることが好ましい。
【0040】
(5)機能層の抵抗
本発明の多孔質セラミックス層、及び多孔質セラミックス積層体によれば、これらの上に積層される機能層の抵抗を低くできる。
【実施例0041】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0042】
実施例1
第1多孔質層として、アルミナとSiOを含む萩ガラス社製アルミナ基材A-13を用いた。前記基材A-13の形状は、内径が7.2mm、外径が9.8mm、長さが9.75cmの円筒形であった。株式会社コロンブス製の撥水剤SHコンクに前記基材A-13をディップし、乾燥させた。次に、Baikowski社製のアルミナ粉末CR-6と、増粘剤として信越化学工業株式会社製のヒドロキシプロピルメチルセルロース65SH-30000を、それぞれ、4wt%、1.05wt%の濃度で水に混合してスラリーを用意した。前記アルミナ粉末CR-6とヒドロキシプロピルメチルセルロースを水に添加し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解させるときには30分以上攪拌し、5℃まで冷却した。前記基材A-13の内周面に前記スラリーが入り込まないように、前記基材A-13の上端及び下端を封止して、前記スラリーで前記基材A-13をディップコートした。その後、前記外周面に前記スラリーが塗布された前記基材A-13を1200℃で3時間熱処理し、多孔質セラミックス積層体を得た。
A-13にCR-6を塗布・焼成して得られた多孔質セラミックス積層体への機能層の塗布は、ベーマイトゾルを塗布し600℃で3時間熱処理することによって行った。ベーマイトゾルは川研ファインケミカル株式会社製アルミゾル-10Aを用い、ベーマイト濃度が2wt%となるように調製した。
【0043】
実施例2
アルミナ粉末にBaikowski社製のCR-15を用いた以外は、実施例1と同じ方法で多孔質セラミックス積層体及びこれに更に機能層を積層した積層体を作製した。
【0044】
比較例1
アルミナ粉末に住友化学株式会社製のAKP-20を用いたこと、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース溶解時の冷却を行わなかったこと以外は、実施例1と同じ方法で多孔質セラミックス積層体及びこれに更に機能層を積層した積層体を作製した。
【0045】
(1)細孔角度θの測定
セラミックス多孔質体はFIB-SEMを用いて評価することができる。使用する装置は、特に制限はないが、FIB-SEM(FEI製;HELIOS600)を用いて評価を行うことができる。
まず、セラミックス多孔質体にエポキシ樹脂を含浸させ、多孔質層の空隙部を埋めた後、エポキシ樹脂を硬化させた試料を作製した。硬化後、エポキシ樹脂が含浸したアルミナ粉末を含むスラリーにより形成された層(前記第2多孔質層。以下、アルミナ中間層と呼ぶ場合がある)の断面が、試料の表層になるように切断した。切断後、FIB-SEM(FEI製;HELIOS600)を用いて、試料表層から深さ方向(試料の内部に向かう方向)にFIB(Focused Ion Beam)を照射することにより、前記多孔質セラミックス層の厚み方向を垂線とする観察面を作製した。そのとき、FIB加工は、アルミナ中間層の表面に近い面から加工していき、出来る限り多孔質体の表面に近い場所で、観察領域全域に多孔質な構造が観察されるまで行った。細孔径が150~500nmの時、観察領域はHFW=19.7μmで画像分解能はX,Y=19.2nm/pixとし、細孔径が30~150nmの時は、HFW=10.6μm、X=7nm/pix、Y=9nm/pixとする。
得られた観察面に対して、加速電圧;2.1kVでSEM観察(反射電子像)を行った。上記SEM観察後、アルミナ中間層の厚さ(膜厚)方向にFIB加工して新たな観察面を作製し、その新たな観察面に対してSEM観察(反射電子像)を行った。細孔径が150~500nmの時は20nmの厚さで、細孔径が30~150nmの時は、10nmの厚さでFIB加工してさらに新たな観察面を作製し、そのさらに新たな観察面に対してSEM観察(反射電子像)を行う。このように、厚さ20nmもしくは10nm間隔でFIB加工、観察面のSEM観察を、観察領域全域に多孔質な構造が見られる範囲まで繰り返して行うことにより、多孔質体の厚さ方向の全域にわたる連続スライス像を取得する。また、得られたスライス像から細孔が三次元的に広がっていることを確認する。
そして、画像解析ソフト(Visualization Sciences Group製;Avizo ver.6.0)を用いて位置補正を行い、補正後の連続スライス像を得た。スケールは細孔径が150~500nmの時、X,Y=19.2nm/pix、Z軸20nm/pixとし、細孔径が30~150nmの時は、X=7nm/pix、Y=9nm/pix、Z軸10nm/pixとする。得られた連続スライス像を、約18μm×9μm×観察した膜厚μmの大きさにトリミングして、アルミナ中間層の空隙部の3次元定量解析を行った。
3次元定量解析には、定量解析ソフトTRI/3D-BONーFCS(ラトックシステムエンジニアリング製)を用いた。具体的には、上記ソフトを開き、Auto-LWで画像の2階調化を行い、多孔質層を構成するアルミナ部と空隙部とを識別する。これら処理を行うことによって識別された空隙部について、ソフトの骨計測オプションによる3D海綿骨計測にて、解析方向:XY、MIL有効長:0.5×Thickness、NdNd有効長=1.5×Thickness、NdTm有効長=2.0×Thicknessとして、多孔質層の細孔全体の主軸方向を示すMIL Axis :a:Theataを計測した。MIL Axis a:Thetaは、空隙部全体として、どの方向に長くなっているかを示しており、0°に近いときは膜と平行方向、90°に近いときは厚み方向に長いことを意味する。
【0046】
(2)機能層抵抗の評価
機能層の抵抗は直列抵抗モデルを用いて、機能層積層前後の多孔質セラミックス積層体の抵抗の差から計算した。まず、機能層が積層される前の多孔質セラミックス積層体試料の外側から空気を0.5m/hの一定流速で流し、前記試料の軸方向に空気を透過させ、前記試料の透過前後の圧力差を測定した。次に、前記多孔質セラミックス体試料の上に機能層を積層した、機能層積層後の多孔質セラミックス積層体試料の透過前後の圧力差の測定を同様に行った。別に、装置内に試料が無しの場合の圧力差の測定を行った。
【0047】
機能層積層前の多孔質セラミックス積層体試料の圧力差と、試料が無しの場合の圧力差を用いて、下記の式(1)によって機能層積層前の多孔質セラミックス積層体試料の抵抗を算出した。同様に、機能層積層後の多孔質セラミックス積層体試料の圧力差と、試料が無し場合の圧力差を用いて下記の式(1)によって機能層積層後の多孔質セラミックス積層体試料の抵抗を算出した。
【0048】
【数1】
【0049】
前記機能層積層後の多孔質セラミックス積層体試料の抵抗から、前記機能層積層前の多孔質セラミックス積層体試料の抵抗を差し引くことによって、機能層の見かけの抵抗を得た。
【0050】
(3)欠陥の評価法
欠陥の評価はバブルポイント法を用いて行った。円筒形の多孔質セラミックス積層体試料(機能層の積層前)の両端に治具を取り付け、水中に沈めた。その後、試料の内側に0.15MPaの空気を封入し、その際に試料から気泡が発生しなければ合格とした。なお、試験は同条件で試作した試料3本で行った。
【0051】
(4)水銀圧入法による細孔径の測定
まず、試料を120℃で4時間乾燥後、オートポアV9600(micromeritics社製)を用いて水銀圧入法により測定した。
測定条件の詳細は以下の通りである。
Adv. Contact Angle:140.0°
Rec. Contact Angle:140.0°
Mercury Temperature:21°C
Sample Mass:1.0g
Assembly Mass:1.0g
Penetrometer Volume:1.0mL
Penetrometer Mass:1.0g
Report Range:1.07 to 59,256.30psia
【0052】
具体的には、第2多孔質層が形成された基材A-13を測定して、横軸を細孔径、縦軸をlog微分細孔容量とするグラフから、ピークを示す細孔径を評価した。また、本測定では第1多孔質層に相当する基材A-13のみの測定も行った。横軸を細孔径とするlog微分細孔容量分布において、基材A-13のみの測定では1つのピークが観測され、第2多孔質層が形成された基材A-13の測定では2つのピークが観察された。基材A-13のみの測定で観測されたピークにより第1多孔質層のDLD-maxを評価し、第2多孔質層が形成された基材A-13の観測において観察された2つのピークのうち、低細孔径側のピークにより、スラリーにより形成された層(第2多孔質層)のDLD-maxを評価した。なお、細孔分布は、0.0036~200μmの細孔径の範囲で評価した。
【0053】
(5)第2多孔質層の厚み測定
円筒形の多孔質セラミックス積層体を長手方向に平行で円筒の中心を通る面で割り、樹脂に埋め込み、研磨して、軸方向に平行な断面を出して、走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)にて観察した。第2多孔質層の、第1多孔質層側表面の合計長さが軸方向に110μm以上(すなわち、第1多孔質層のDLD-max(1)の10倍以上)となるように画像を取得した。第2多孔質層と第1多孔質層の界面から、第2多孔質層の第1多孔質層と反対側の界面までの長さを測定し、第2多孔質層の厚みとした。なお、第2多孔質層の界面が波打っている場合は、画像中の波の山と谷の頂点に接する長手方向と平行な線を引き、その間の空間を2等分する2つの線に平行な中央線を引いた。そして、この中央線を界面とみなして、膜厚を測定した。第2多孔質層の第1多孔質層と反対側の界面についても、第2多孔質層の界面が波打っている場合は、画像中の波の山と谷の頂点に接する長手方向と平行な線を引き、その間の空間を2等分する2つの線に平行な中央線を引き、その中央線を界面とみなした。
【0054】
(6)粒度分布測定
実施例および比較例で使用したアルミナについて、粒度分布を、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製、マイクロトラックMT3000II、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.2wt%水溶液)を用いて測定し、体積基準の累積50%相当径を測定した。
【0055】
(7)アスペクト比の分布測定
エポキシ樹脂100重量部に、分散剤2重量部とアルミナ粒子粉末2重量部を分散させ、真空脱気した後、硬化剤12重量部を入れ、得られたアルミナ分散エポキシ樹脂をシリコン型に流し込み硬化させた。
硬化後の試料を試料台に固定後、Pt-Pd蒸着し、FIB-SEM〔日本FEI製(HELIOS600)〕にセットし、加速電圧30kVでFIB加工により断面を作製し、その断面を加速電圧2.1kVでSEM観察した。観察後、試料奥行き方向に50nmの厚さでFIB加工して新しく断面を作製し、その断面をSEM観察した。このように50nm間隔でFIB加工、断面SEM観察を一定間隔で繰り返して100枚以上の連続した像を取得し、画像解析ソフト〔Avizo ver.6.0〕で位置補正を行い、連続スライス像を得た。スケールはX、Y、Z軸50nm/pixとした。得られた連続スライス像に対し、アルミナ粒子の3次元定量解析を行い、粒子のアスペクト比を算出した。3次元定量解析には、定量解析ソフトTRI/3D-PRT(ラトックシステムエンジニアリング製)を使用した。
3次元定量解析は、まず連続スライス像をTRI/3D-PRT上で開き、メディアンフィルターを適用しノイズ除去を行い、次に3次元的に独立した粒子をそれぞれ識別してラベル化した後、測定領域外周で途切れた粒子を削除した。
上記処理で削除されずに残った粒子100個以上から、それぞれの粒子を回転させて得られる回転楕円体で長軸が最も長くなる方向のときの長軸の長さをa、その長軸方向に直交する短軸方向の長さをcとして、aをcで除した値:a/c=アスペクト比として粒子形状の特徴を示す指標として得ることができる。任意の100個以上の粒子について、粒子のアスペクト比に対する累積体積分布をとった時の累積体積50%に対応するアスペクト比を平均アスペクト比=AR50とする。累積体積10%のときをAR10、累積体積が90%のときをAR90とする。
【0056】
結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
上記(6)、(7)で測定したアルミナ粉末の特性は以下の表2に示す通りである。
【0059】
【表2】
【0060】
また、第1多孔質層(基材A-13)のDLD-maxは11μmであった。第2多孔質層のDLD-maxは、実施例1:0.22μm、実施例2:0.22μm、比較例1:0.22μmであった。また、第2多孔質層の厚みは、実施例1:25μm、実施例2:29μm、比較例1:19μmであった。
【0061】
FIB-SEM観察において、すべての実施例・比較例において細孔が三次元的に広がっていることを確認した。
図1
図2