(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127609
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電気接続箱、ジョイント部の固定部材
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20240912BHJP
H01R 13/42 20060101ALI20240912BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20240912BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
H02G3/16
H01R13/42 G
H01R11/01 B
B60R16/02 610A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036872
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 康也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 寛
【テーマコード(参考)】
5E087
5G361
【Fターム(参考)】
5E087FF02
5E087FF12
5E087GG16
5E087MM05
5E087QQ03
5E087QQ04
5E087RR04
5G361BA07
5G361BB01
5G361BC01
5G361BC02
(57)【要約】
【課題】 電気接続箱を大型化することなく、電線のジョイント部を効率よく収容することが可能な電気接続箱等を提供する。
【解決手段】 電気接続箱1のケース3の内部に配置されるハウジング5には、ヒューズやリレー等の複数の電気部品7が搭載される。電気接続箱1の内部には、複数の電線が収容されたケーブル11が配置され、ケーブル11から取り出された複数の電線15が集合して一体化されたジョイント部13が設けられる。電気部品7が配置される領域において、電気部品7の端子17と接続される端子部9を除く部位のハウジング5の電気部品7が配置される面の裏面側には、ジョイント部13を固定することが可能な固定部10が形成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気部品が収容される電気接続箱であって、
複数の電線が集合して一体化されたジョイント部が設けられ、
電気部品が搭載されるハウジングにおいて、前記電気部品が配置される領域の、前記電気部品と接続される端子部を除く部位の前記ハウジングの電気部品が配置される面の裏面側に、前記ジョイント部を固定することが可能な固定部が形成されることを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
前記ジョイント部には端子が固定され、端子挿入部を有する固定部材に前記端子が挿入され、前記固定部には前記固定部材を固定可能であることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記固定部材には、隣り合う前記端子挿入部の前記端子同士を短絡させる導通部材を挿抜可能であることを特徴とする請求項2記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記ジョイント部には端子が固定され、前記固定部には端子挿入部が設けられ、前記端子挿入部に前記端子を挿入可能であることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項5】
本体部と、前記本体部に開閉可能な蓋部を有する固定部材が用いられ、前記蓋部の下面には電線押さえ部が設けられ、前記ジョイント部を前記本体部に配置して前記蓋部を閉じることで、前記電線押さえ部で前記電線を押さえて前記ジョイント部を固定可能であり、
前記固定部には前記固定部材を固定可能であることを特徴とする請求項1記載の電気接続箱。
【請求項6】
前記本体部には、複数の前記ジョイント部を配置可能であり、前記蓋部の下面は、隣り合う前記ジョイント部同士を短絡させる導通部材を取付け可能であることを特徴とする請求項5記載の電気接続箱。
【請求項7】
複数の電線が集合して一体化されたジョイント部を複数収容可能な固定部材であって、
前記ジョイント部が収容される本体部と、前記本体部に対して開閉可能な蓋部と、を具備し、
前記蓋部の下面には、電線押さえ部が設けられ、
前記本体部に、複数の前記ジョイント部を配置した状態で前記蓋部を閉じることで、前記電線押さえ部で前記電線を押さえて前記ジョイント部を固定可能であることを特徴とするジョイント部の固定部材。
【請求項8】
前記蓋部の下面には、隣り合う前記ジョイント部同士を短絡させる導通部材を取付け可能であることを特徴とする請求項7記載のジョイント部の固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車に搭載される電気接続箱等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、内部にヒューズやリレー等が収容された電気接続箱が設置される。電気接続箱は、例えばアッパーカバーとケースとロアカバー(又はアッパーカバーとロアケース)からなり、ケース内部のハウジングには、各種の電気部品が配置される。
【0003】
このような電気接続箱の内部には水が浸入する場合があるため、電気接続箱の下部には水を排出するための排水口が設けられる場合がある。しかし、このような排水口から電気接続箱の内部に水が流入する恐れがある。このため、ハウジングは、ロアカバーの下方から所定の距離をあけて配置され、排出口から水が多少流入して吹き上がったとしても、ハウジング(電気部品)に水がかからないように設計される。すなわち、ハウジングの下方には空間が形成される。
【0004】
一方、各種の電気部品を接続するため、複数の電線を集合させて連結したジョイント部が形成される場合がある。例えば、電気接続箱の下方には複数の電線からなる幹線ケーブルが配置され、幹線ケーブルから取り出された所定の電線同士が溶接等によって接続されてジョイント部が形成される。
【0005】
このようなジョイント部を電気接続箱の内部に配置する際には、従来、幹線ケーブルの周囲であって、前述したハウジング下方の空間に押し込まれて配置される場合があった。しかし、前述したように、ロアカバーの下方には水が浸入する恐れがあるため、電気接続箱の下方にジョイント部を配置する場合には、ジョイント部への防水加工が必要となる。
【0006】
防水処理としては、例えば、電線同士を集合させて一体化させた後、ジョイント部を保護するキャップの内部に防水材を充填して乾燥固形化するなどの処理が行われる。また、ジョイント部に保護キャップが取り付けられる場合があるが、保護キャップの向きによっては、キャップ内に水が溜まり、ジョイント部の腐食が進行する恐れがある。
【0007】
特に、異種金属からなる電線(例えば銅線とアルミニウム線)を集合させる場合には、アルミニウムと銅との標準電極電位差が大きいため、接触部への水の飛散等の影響により、電気的に卑であるアルミニウム側の腐食が進行するいわゆる電食が発生する恐れがある。このため、十分な防水処理が必要となり、作業性の悪化の要因となっていた。
【0008】
これに対し、ハウジング上にジョイント部のキャップを固定するための収容部を複数形成した電気接続箱が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1によれば、ジョイント部がハウジングの上方の収容部に固定される。このため、前述したようなロアカバー内部への水の浸入に対する高い防水処理は不要となると考えられる。
【0011】
しかし、電気接続箱には高密度に電気部品が配置されており、通常は配置される電気部品に応じてできるだけ小型化となるように設計がなされる。このため、電気部品が配置されておらず、自由に使用可能なスペースはほとんどない。したがって、ハウジング上にジョイント部を収容するための収容部を確保しようとすると、電気部品に対して必要なサイズに対して電気接続箱が大型化するという問題がある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、電気接続箱を大型化することなく、電線のジョイント部を効率よく収容することが可能な電気接続箱等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、複数の電気部品が収容される電気接続箱であって、複数の電線が集合して一体化されたジョイント部が設けられ、電気部品が搭載されるハウジングにおいて、前記電気部品が配置される領域の、前記電気部品と接続される端子部を除く部位の前記ハウジングの電気部品が配置される面の裏面側に、前記ジョイント部を固定することが可能な固定部が形成されることを特徴とする電気接続箱である。
【0014】
前記ジョイント部には端子が固定され、複数の端子挿入部を有する固定部材に前記端子が挿入され、前記固定部には前記固定部材を固定可能であってもよい。
【0015】
前記固定部材には、隣り合う前記端子挿入部の前記端子同士を短絡させる導通部材を挿抜可能であってもよい。
【0016】
前記ジョイント部には端子が固定され、前記固定部には端子挿入部が設けられ、前記端子挿入部に前記端子を挿入可能であってもよい。
【0017】
本体部と、前記本体部に開閉可能な蓋部を有する固定部材が用いられ、前記蓋部の下面には電線押さえ部が設けられ、前記ジョイント部を前記本体部に配置して前記蓋部を閉じることで、前記電線押さえ部で前記電線を押さえて前記ジョイント部を固定可能であり、前記固定部には前記固定部材を固定可能であってもよい。
【0018】
前記本体部には、複数の前記ジョイント部を配置可能であり、前記蓋部の下面は、隣り合う前記ジョイント部同士を短絡させる導通部材を取付け可能であってもよい。
【0019】
第1の発明によれば、ハウジング上面側において、高密度に配置された電気部品に対して、ハウジングの裏面側には、電気部品の端子部以外の部位にはスペースが生じるため、このスペースを利用して、ジョイント部を固定することができる。このため、ハウジングの上面側において、電気部品の配置される部位以外のスペースが不要であり、電気接続箱の大型化を抑制することができる。
【0020】
また、ハウジングの裏面側にジョイント部を固定することで、電気接続箱の底部からジョイント部までの十分な高さを確保することができる。このため、ロアカバー内部へジョイント部を押し込む場合と比較して、高い防水処理は不要となる。
【0021】
この際、ジョイント部に端子を接続し、複数の端子を挿入可能な固定部材を用い、固定部材をハウジング裏面の固定部に固定することで、ジョイント部の固定が容易である。
【0022】
また、固定部材に、隣り合う端子挿入部の端子同士を短絡させる導通部材を挿抜可能とすることで、固定部材をジョイントコネクタとして機能させて、ジョイント部同士を導通させることができる。
【0023】
また、固定部に端子挿入部を設けることで、端子を直接固定部に固定することもできる。
【0024】
また、本体部と蓋部を有する固定部材を用い、蓋部の裏面に電線押さえ部を配置し、ジョイント部を本体部に配置して蓋部を閉じることで、蓋部に形成された電線押さえ部で電線を押さえてジョイント部を固定することができる。また、固定部にはこの固定部材を固定可能とすることで、ジョイント部を容易にハウジングに固定することができる。
【0025】
また、蓋部の下面に、隣り合うジョイント部同士を短絡させる導通部材を取付け可能とすることで、固定部材をジョイントコネクタとして機能させて、ジョイント部同士を導通させることができる。
【0026】
第2の発明は、複数の電線が集合して一体化されたジョイント部を複数収容可能な固定部材であって、前記ジョイント部が収容される本体部と、前記本体部に対して開閉可能な蓋部と、を具備し、前記蓋部の下面には、電線押さえ部が設けられ、前記本体部に、複数の前記ジョイント部を配置した状態で前記蓋部を閉じることで、前記電線押さえ部で前記電線を押さえて前記ジョイント部を固定可能であることを特徴とするジョイント部の固定部材である。
【0027】
前記蓋部の下面には、隣り合う前記ジョイント部同士を短絡させる導通部材を取付け可能であってもよい。
【0028】
第2の発明によれば、ジョイント部を効率よく連結して保護することができる。また、蓋部の下面に、隣り合うジョイント部同士を短絡させる導通部材を取付け可能とすることで、固定部材をジョイントコネクタとして機能させて、ジョイント部同士を導通させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、電気接続箱を大型化することなく、電線のジョイント部を効率よく収容することが可能な電気接続箱等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図3】(a)は、
図2のA部拡大図、(b)は、
図2のB部拡大図。
【
図4】(a)は、電気接続箱1の内部構造を示す概略図、(b)は、固定部10近傍の拡大図。
【
図6】固定部材23に端子21を挿入した状態を示す図。
【
図7】(a)は、固定部材23に導通部材31を取り付ける工程を示す図、(b)は導通部材31を固定部材23に取り付けた状態を示す固定部材透視図。
【
図8】(a)は、固定部10aに固定部材23を固定した状態を示す図、(b)、固定部10bに端子21を固定した状態を示す図。
【
図9】(a)は、固定部材23aを示す斜視図、(b)は固定部材23aの蓋部35を閉じた状態の電線押さえ部37における断面図、(c)は固定部材23aの蓋部35を閉じた状態の導通部材31aにおける断面図。
【
図10】固定部10cに固定部材23aを固定した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態にかかる電気接続箱について説明する。
図1は、複数の電気部品が収容された電気接続箱1のケース3の平面図(アッパーカバーを外した状態を示す電気接続箱1の平面図)、
図2は、電気接続箱1のケース3の底面図(ロアカバーを外した状態を示す電気接続箱1の底面)である。なお、電気接続箱1の形態や電気部品7のレイアウトは、図示した例には限られず、特に限定されない。
【0032】
電気接続箱1のケース3の内部に配置されるハウジング5には、ヒューズやリレー等の複数の電気部品7が搭載される。電気部品7はそれぞれ端子を有し、ハウジング5に配置される端子部9(
図2参照)において端子と接続される。
【0033】
図3(a)は、
図2のA部拡大図である。図において、ハウジング5の上面側の電気部品7の配置を点線で示す。例えばリレーなどの電気部品7の下方には複数の端子が配置され、ハウジング5には、この端子と接続される端子部9が配置される。一方、端子部9を除く部位には、電気部品7の下方のハウジング5の裏面側にスペースが形成される(図中Cのハッチング部)。
【0034】
同様に、
図3(b)は、
図2のB部拡大図である。図において、ハウジング5の上面側の電気部品7の配置を点線で示す。例えばマルチヒューズ等の電気部品7についても、電気部品7の下方には複数の端子が形成され、ハウジング5には、この端子と接続される端子部9が配置されるが、端子部9を除く部位には、電気部品7の下方のハウジング5の裏面側にスペースが形成される(図中Dのハッチング部)。
【0035】
このように、ハウジング5の上面側においては電気部品7が高密度に実装されている場合でも、電気部品7の下方におけるハウジング5の裏面側には、端子部9等が配置されていないスペースが存在する場合がある。本実施形態では、このスペースをジョイント部の固定部として利用するものである。
【0036】
図4(a)は、電気接続箱1の内部構造を示す側方断面概略図であり、
図4(b)は、
図4(a)のC部拡大図である。前述したように、電気接続箱1のケース3の内部には、電気部品7が搭載されたハウジング5が配置される。また、電気接続箱1の内部には、複数の電線が収容されたケーブル11が配置され、ケーブル11から取り出された複数の電線15が集合して一体化されたジョイント部13が設けられる。なお、図示した例では、ジョイント部13にはジョイント部13を保護するキャップ19が配置される。
【0037】
電気部品7が配置される領域において、電気部品7の端子17と接続される端子部9を除く部位のハウジング5の電気部品7が配置される面の裏面側には、ジョイント部13を固定することが可能な固定部10が形成される。図示した例では、固定部10は、略円筒状であり、キャップ19を挿入可能である。
【0038】
なお、固定部10の形態は図示した例には限られない。例えば円筒形ではなく、対向する壁面同士の間にジョイント部(キャップ)を挿入するようにしてもよく、クリップ状にしてもよい。また、ジョイント部13には、必ずしもキャップ19が必要ではなく、ジョイント部13の保護が可能であれば、他の部材を用いてもよい。また、固定部10において、キャップ19等の抜け止めとなる固定構造を設けてもよい。
【0039】
以上、本実施形態によれば、ハウジング5の上面側に電気部品7が高密度に実装されてスペースが無い場合であっても、一部の電気部品7の下方において、端子部9以外の部位に固定部10を形成することができる。このため、電気接続箱1のサイズを大きくすることなく、ジョイント部13をハウジング5に固定することができる。
【0040】
また、ハウジング5の電気部品7が配置される部位までは、水が入り込まないように設計されているため、固定部10(ジョイント部13)に水がかかることがない。また、仮に水が浸入した場合でも、ジョイント部13(キャップ19)を全て上方に向けて固定することができるため、例えばキャップ19の内部に水が溜まることがない。
【0041】
次に、第2の実施形態について説明する。
図5は、固定部材23を示す斜視図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能を発揮する構成については
図1~
図4と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0042】
固定部材23は、例えば樹脂製であり、端子挿入部25を有する。なお、図示した例では端子挿入部25が二つ形成される例を示すが、端子挿入部25の数は特に限定されない。
【0043】
複数の電線15が一体化されたジョイント部13aには、端子21が固定される。例えば、端子21に対して、複数の電線15が一体で溶接される。端子21には、爪部27が形成される。
図6に示すように、固定部材23に端子21を挿入すると、爪部27が固定部材23の係合部29に係止されて端子21が固定部材23に固定される。
【0044】
また、
図7(a)に示すように、固定部材23には、必要に応じて金属製の導通部材31を取り付けることもできる。
図7(b)は、導通部材31を取り付けた状態における固定部材23の透視図である。固定部材23の先端には、導通部材31を挿入可能な開口部を有し、固定部材23の先端に導通部材31を取り付けることで、それぞれの端子挿入部25に挿入された端子21の先端に導通部材31が取り付けられて接触する。すなわち、導通部材31によって、隣り合う端子挿入部25に挿入された端子21同士を短絡させることができる。
【0045】
例えば、ジョイント部を形成する際、溶接によって1か所に接続することが可能な電線の本数やサイズには制限がある。このため、この制約を超える本数の電線を一体化するためには、複数のジョイント部に分けて一体化するとともに、他の導線を用いてジョイント部同士を接続する必要がある。しかし、ジョイント部同士を接続するための導線や、この導線同士を接続するコネクタ等が必要となりコスト増の要因となる。
【0046】
また、異種金属の電線を一体化する場合、溶接が可能な電線種の比率の制約がある。このため、この制約とは異なる比率で異種金属の電線を接合する必要がある場合には、例えば一部のアルミニウム電線を銅線に変更するなどの対応が必要となる。
【0047】
これに対し、固定部材23と導通部材31を用いることで、多数の電線15を容易に一体化することができる。また、例えば一方の端子21にアルミニウム線を溶接し、他方の端子21には銅線を溶接し、これらを固定部材23に挿入して導通部材31で導通させることで、任意の比率で電線15を接続することができる。
【0048】
図8(a)は、
図4(b)に対応する図であり、固定部10aを示す図である。電気部品7が配置される領域において、電気部品7の端子17と接続される端子部9を除く部位のハウジング5の電気部品7が配置される面の裏面側に固定部10aが形成される。固定部10aは略筒状であり、固定部材23を挿入可能である。なお、固定部10aにおいて、固定部材23等の抜け止めとなる固定構造を設けてもよい。すなわち、固定部10aに固定部材23を挿入して固定することで、固定部材23の内部のジョイント部13a(
図4(b)参照)をハウジング5に固定することができる。
【0049】
なお、上述した実施形態では、ジョイント部13aに固定部材23固定し、固定部10aに固定部材23を挿入して固定したが、固定部材23の形態自体を固定部としてもよい。
図8(b)は、固定部10bを示すである。固定部10bには、端子挿入部25が形成される。このため、端子21を端子挿入部25(固定部10b)に挿入し、図示を省略した係合部29によって端子21を係止することができる。なお、固定部10bに対しても、隣り合う端子21を導通させることが可能な導通部材を取付け可能としてもよい。
【0050】
以上、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ジョイント部13aに端子21を固定し、端子21を端子挿入部25に挿入することで、ジョイント部13aに固定部材23が固定される。このため、従来のようなジョイント部の保護用のキャップやキャップ固定用のテープ等を使用する必要が無い。
【0051】
また、導通部材31を用いれば、任意の本数の電線15であっても容易に一体化することができる。また、異種金属が混在する場合でも、その比率を気にすることなくジョイント部13aを形成することができる。また、導通部材31は、端子21を端子挿入部25に挿入した後であっても、自由に挿抜可能であるため、必要な場合に事後的に複数の端子21を導通させることもできる。
【0052】
例えば、ソフトウェアファースト設計等の思想下におけるハードアップデート対応(後からの仕様追加)において、ジョイント回路を追加したい際には、初期設計時のジョイント部13aが接続された端子21の横に、追加したい回路のジョイント部13aが接続された端子21をさらに配置し、導通部材31によって端子21同士を接続することができる。
【0053】
なお、固定部材23は、電気接続箱1以外においても利用することができる。例えば、多数のジョイント部が形成される部位において、従来のキャップに代えて使用することもできる。
【0054】
次に、第3の実施形態について説明する。
図9(a)は、ジョイント部13bが配置された固定部材23aを示す斜視図である。固定部材23aは、例えば樹脂製であり、複数の電線15を集合させて一体化したジョイント部13bを複数収容可能である。なお、図示した例では、本体部33に二つのジョイント部13bが収容される例を示すが、収容可能なジョイント部13bは一つでもよく、数は特に限定されない。
【0055】
固定部材23aは、主に、ジョイント部13bが収容される本体部33と、本体部33に対して開閉可能な蓋部35からなる。本体部33にはジョイント部13bを収容可能な収容部34が設けられる。なお、ジョイント部13bは、例えば溶接等によって電線15の導体部が一体化される。収容部34には、電線15から露出して一体化された導体部と、導線を被覆する被覆部の一部が収容される。
【0056】
本体部33の一方の端部(ジョイント部13bの先端側の端部)には、ヒンジを介して蓋部35が連結される。前述したように、蓋部35は、ヒンジによって本体部33に対して開閉可能である。なお、蓋部35を閉じた状態において、蓋部35と本体部33とを固定可能な図示を省略した固定構造が設けられる。
【0057】
蓋部35の下面であって、蓋部35の先端側(ヒンジから遠い側)には、電線押さえ部37が設けられる。電線押さえ部37は、蓋部35の下面において本体部33側に突出する。
【0058】
図9(b)は、蓋部35を閉じた状態において、電線押さえ部37における断面図である。本体部33に、複数のジョイント部13bを配置した状態で蓋部35を閉じると、電線押さえ部37は、それぞれの収容部34において電線15の被覆部の部位に位置し、上方から電線押さえ部37で電線15を一括して押さえることができる。すなわち、電線押さえ部37によって、固定部材23aに対して、ジョイント部13bを固定することができる。
【0059】
また、蓋部35の下面であって、電線押さえ部37よりも基部側(ヒンジ側)には、金属製の導通部材31aが配置される。導通部材31aは一体で構成され、蓋部35の下面においてそれぞれの収容部34ごとに本体部33側に突出する。なお、導通部材31aは、蓋部35に対して脱着可能である。また、蓋部35の下面からの導通部材31aの突出量は、電線押さえ部37の突出量よりも大きい。
【0060】
図9(c)は、蓋部35を閉じた状態において、導通部材31aにおける断面図である。本体部33に、複数のジョイント部13bを配置した状態で蓋部35を閉じると、導通部材31aは、それぞれの収容部34において電線15の導体部の部位に位置し、導通部材31aとそれぞれのジョイント部13bとを接触させて導通させることができる。すなわち、蓋部35の下面には、隣り合うジョイント部13b同士を短絡させる導通部材31aを取付け可能である。
【0061】
図10は、
図4(b)に対応する図であり、固定部10cを示す図である。電気部品7が配置される領域において、電気部品7の端子17と接続される端子部9を除く部位のハウジング5の電気部品7が配置される面の裏面側に固定部10cが形成される。固定部10cは略筒状であり、固定部材23aを挿入可能である。なお、固定部10cにおいて、固定部材23a等の抜け止めとなる固定構造を設けてもよい。すなわち、固定部10cに固定部材23aを挿入して固定することで、固定部材23aの内部のジョイント部13b(
図9(a)参照)をハウジング5に固定することができる。
【0062】
以上、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ジョイント部13bを本体部33の収容部34に収容し、蓋部35を閉じることで、ジョイント部13bが固定部材23aに固定される。このため、従来のようなジョイント部の保護のためのキャップやキャップ固定用のテープ等を使用する必要が無い。
【0063】
また、導通部材31aを用いれば、任意の本数の電線15であっても容易に一体化することができる。また、異種金属が混在する場合でも、その比率を気にすることなくジョイント部13bを形成することができる。また、導通部材31aは、蓋部35に対して自由に脱着可能であるため、必要な場合にのみ導通部材31aを配置してジョイント部13b同士を短絡させることができる。
【0064】
なお、固定部材23aは、電気接続箱1以外においても利用することができる。例えば、多数のジョイント部が形成される部位において、従来のキャップに代えて使用することもできる。
【0065】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0066】
1………電気接続箱
3………ケース
5………ハウジング
7………電気部品
9………端子部
10、10a、10b、10c………固定部
11………ケーブル
13、13a、13b………ジョイント部
15………電線
17………端子
19………キャップ
21………端子
23、23a………固定部材
25………端子挿入部
27………爪部
29………係合部
31、31a………導通部材
33………本体部
34………収容部
35………蓋部
37………電線押さえ部