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特開2024-127655非接触式通信媒体、磁気テープカートリッジ、磁気テープドライブ、及び非接触式通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127655
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】非接触式通信媒体、磁気テープカートリッジ、磁気テープドライブ、及び非接触式通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/48 20240101AFI20240912BHJP
   G11B 23/107 20060101ALI20240912BHJP
   G11B 23/30 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H04B5/02
G11B23/107
G11B23/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036996
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 謙二
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AB03
5K012AC08
5K012AC10
(57)【要約】
【課題】非接触式通信媒体を作動させる電力の安定化と、交流電圧の波形の歪みの抑制とを両立させることができる非接触式通信媒体、磁気テープカートリッジ、磁気テープドライブ、及び非接触式通信システムを提供する。
【解決手段】非接触式通信媒体は、アンテナコイルによって誘起された誘導電流を用いて共振することで交流電圧を生成する共振回路と、制御回路と、を備える。共振回路は、アンテナコイルに対して並列に接続された可変コンデンサと、アンテナコイルに対して並列に接続された可変抵抗と、を有する。制御回路は、可変コンデンサの容量を調整することで共振回路を既定共振周波数で共振させ、かつ、可変抵抗の抵抗値を調整することでQ値を調整する。非接触通信媒体は、交流電圧が整流化されて得られた直流電圧に基づく電力を用いて作動する。通信は、交流電圧の波形に対応する信号を用いた通信である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置から与えられた磁界を介して前記外部装置と非接触で通信を行う非接触通信媒体であって、
前記磁界がアンテナコイルに作用することで前記アンテナコイルによって誘起された誘導電流を用いて共振することで交流電圧を生成する共振回路と、
制御回路と、を備え、
前記共振回路は、
前記アンテナコイルに対して並列に接続された可変コンデンサと、
前記アンテナコイルに対して並列に接続された可変抵抗器と、を有し、
前記制御回路は、前記可変コンデンサの容量を調整することで前記共振回路を既定共振周波数で共振させ、かつ、前記可変抵抗器の抵抗値を調整することでQ値を調整し、
前記非接触通信媒体は、前記交流電圧が整流化されて得られた直流電圧に基づく電力を用いて作動し、
前記通信は、前記交流電圧の波形に対応する信号を用いた通信である
非接触式通信媒体。
【請求項2】
前記制御回路は、前記交流電圧の電圧値と前記直流電圧の電圧値との比較結果に応じて前記容量を調整することで前記共振回路を前記既定共振周波数で共振させ、かつ、前記比較結果に応じて前記抵抗値を調整することで前記Q値を調整する
請求項1に記載の非接触式通信媒体。
【請求項3】
前記制御回路は、前記交流電圧の電圧値が前記直流電圧の電圧値よりも大きい場合に、前記抵抗値を高めることで前記Q値を低くする
請求項1に記載の非接触式通信媒体。
【請求項4】
前記制御回路は、前記交流電圧の電圧値が前記直流電圧の電圧値よりも大きい場合に、前記容量を調整することで前記直流電圧を最大にする
請求項1に記載の非接触式通信媒体。
【請求項5】
前記交流電圧を整流化することで前記直流電圧を生成する整流回路と、
前記直流電圧に基づいて前記電力を生成するレギュレータと、
前記電力が供給されることで作動する処理回路と、を備える
請求項1に記載の非接触式通信媒体。
【請求項6】
前記電力が供給されることで作動する処理回路を備え、
前記信号は、前記外部装置から送信されたコマンド信号を含み、
前記処理回路は、前記コマンド信号に応じた処理を実行する
請求項1に記載の非接触式通信媒体。
【請求項7】
メモリを備え、
前記処理は、前記コマンド信号に応じて定められた第1情報を前記メモリに書き込む書込処理、及び/又は、前記コマンド信号に応じて定められた第2情報を前記メモリから読み出す読出処理を含む
請求項6に記載の非接触式通信媒体。
【請求項8】
前記既定共振周波数は、前記直流電圧を最大にする共振周波数である
請求項1に記載の非接触式通信媒体。
【請求項9】
前記非接触式通信媒体は、磁気テープカートリッジに搭載されている
請求項1に記載の非接触式通信媒体。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れか一項に記載の非接触式通信媒体と、
磁気テープと、を備える磁気テープカートリッジであって、
前記非接触通信媒体は、メモリを有し、
前記メモリには、前記磁気テープに関する情報が格納されている
磁気テープカートリッジ。
【請求項11】
請求項1から請求項9の何れか一項に記載の非接触式通信媒体と、磁気テープとを有する磁気テープカートリッジと、
前記磁気テープカートリッジが装填されており、前記磁気テープに対して記録処理及び/又は再生処理を行う磁気ヘッドと、を備える
磁気テープドライブ。
【請求項12】
請求項1から請求項9の何れか一項に記載の非接触式通信媒体と、
前記非接触式通信媒体と非接触で通信を行う通信装置と、を備える
非接触式通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、非接触式通信媒体、磁気テープカートリッジ、磁気テープドライブ、及び非接触式通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁気記録テープカートリッジに備える磁気テープに記録されたデータの関連情報を、磁気記録テープカートリッジに備える非接触メモリICタグに記録する技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、調整用コンデンサと共振用のコンデンサとが並列接続され、共振回路の中に含まれているRFIDタグが開示されている。
【0004】
特許文献3には、外部ノイズからの影響による通信信号のS/N比の悪化を回避するために、Q値を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-323918号公報
【特許文献2】特許第4466678号
【特許文献3】特開2011-097389号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の技術に係る一つの実施形態は、非接触式通信媒体を作動させる電力の安定化と、交流電圧の波形の歪みの抑制とを両立させることができる非接触式通信媒体、磁気テープカートリッジ、磁気テープドライブ、及び非接触式通信システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術に係る第1の態様は、外部装置から与えられた磁界を介して外部装置と非接触で通信を行う非接触通信媒体であって、磁界がアンテナコイルに作用することでアンテナコイルによって誘起された誘導電流を用いて共振することで交流電圧を生成する共振回路と、制御回路と、を備え、共振回路が、アンテナコイルに対して並列に接続された可変コンデンサと、アンテナコイルに対して並列に接続された可変抵抗器と、を有し、制御回路が、可変コンデンサの容量を調整することで共振回路を既定共振周波数で共振させ、かつ、可変抵抗器の抵抗値を調整することでQ値を調整し、非接触通信媒体が、交流電圧が整流化されて得られた直流電圧に基づく電力を用いて作動し、通信が、交流電圧の波形に対応する信号を用いた通信である、非接触式通信媒体である。
【0008】
本開示の技術に係る第2の態様は、制御回路が、交流電圧の電圧値と直流電圧の電圧値との比較結果に応じて容量を調整することで共振回路を既定共振周波数で共振させ、かつ、比較結果に応じて抵抗値を調整することでQ値を調整する、第1の態様に係る非接触式通信媒体である。
【0009】
本開示の技術に係る第3の態様は、制御回路が、交流電圧の電圧値が直流電圧の電圧値よりも大きい場合に、抵抗値を高めることでQ値を低くする、第1の態様又は第2の態様に係る非接触式通信媒体である。
【0010】
本開示の技術に係る第4の態様は、制御回路が、交流電圧の電圧値が直流電圧の電圧値よりも大きい場合に、容量を調整することで直流電圧を最大にする、第1の態様から第3の態様の何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体である。
【0011】
本開示の技術に係る第5の態様は、交流電圧を整流化することで直流電圧を生成する整流回路と、直流電圧に基づいて電力を生成するレギュレータと、電力が供給されることで作動する処理回路と、を備える、第1の態様から第4の態様の何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体である。
【0012】
本開示の技術に係る第6の態様は、電力が供給されることで作動する処理回路を備え、信号が、外部装置から送信されたコマンド信号を含み、処理回路が、コマンド信号に応じた処理を実行する、第1の態様から第5の態様の何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体である。
【0013】
本開示の技術に係る第7の態様は、メモリを備え、処理が、コマンド信号に応じて定められた第1情報をメモリに書き込む書込処理、及び/又は、コマンド信号に応じて定められた第2情報をメモリから読み出す読出処理を含む、第6の態様に係る非接触式通信媒体である。
【0014】
本開示の技術に係る第8の態様は、既定共振周波数が、直流電圧を最大にする共振周波数である、第1の態様から第6の態様の何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体である。
【0015】
本開示の技術に係る第9の態様は、非接触式通信媒体が、磁気テープカートリッジに搭載されている、第1の態様から第8の態様の何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体である。
【0016】
本開示の技術に係る第10の態様は、第1の態様から第9の態様の何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体と、磁気テープと、を備える磁気テープカートリッジであって、非接触通信媒体が、メモリを有し、メモリには、磁気テープに関する情報が格納されている、磁気テープカートリッジである。
【0017】
本開示の技術に係る第11の態様は、第1の態様から第9の態様の何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体と、磁気テープとを有する磁気テープカートリッジと、磁気テープカートリッジが装填されており、磁気テープに対して記録処理及び/又は再生処理を行う磁気ヘッドと、を備える、磁気テープドライブである。
【0018】
本開示の技術に係る第12の態様は、第1の態様から第9の態様の何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体と、非接触式通信媒体と非接触で通信を行う通信装置と、を備える非接触式通信システムである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】磁気テープシステムの構成の一例を示す概念図である。
図2】磁気テープカートリッジの外観の一例を示す概略斜視図である。
図3】磁気テープドライブのハードウェア構成の一例を示す概略構成図である。
図4】磁気テープカートリッジの下側からリーダライタによって磁界が放出されている態様の一例を示す概略斜視図である。
図5】磁気テープカートリッジに搭載されているカートリッジメモリの電気系のハードウェア構成の一例を示す概念図である。
図6】カートリッジメモリに含まれる各種回路の構成例、及び歪みのない波形を有する信号の波形例を示す概念図である。
図7】歪みのある波形を有する信号の波形例を示す概念図である。
図8図5に示すカートリッジメモリの電気系の詳細なハードウェア構成の一例を示す概念図である。
図9】電力最大化処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】歪み抑制処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】電力補充処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本開示の技術に係る非接触式通信媒体、磁気テープカートリッジ、磁気テープドライブ、及び非接触式通信システムの実施形態の一例について説明する。
【0021】
先ず、以下の説明で使用される文言について説明する。
【0022】
CPUとは、“Central Processing Unit”の略称を指す。RAMとは、“Random Access Memory”の略称を指す。DRAMとは、“Dynamic Random Access Memory”の略称を指す。NVMとは、“Non-Volatile Memory”の略称を指す。EEPROMとは、“Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory”の略称を指す。SSDとは、“Solid State Drive”の略称を指す。HDDとは、“Hard Disk Drive”の略称を指す。ASICとは、“Application Specific Integrated Circuit”の略称を指す。PLDとは、“Programmable Logic Device”の略称を指す。FPGAとは、“Field-Programmable Gate Array”の略称を指す。SoCとは、“System-on-a-Chip”の略称を指す。ICとは、“Integrated Circuit”の略称を指す。RFIDとは、“Radio Frequency Identifier”の略称を指す。UIとは、“User Interface”の略称を指す。
【0023】
一例として図1に示すように、磁気テープシステム10は、磁気テープカートリッジ12及び磁気テープドライブ14を備えている。磁気テープドライブ14には、磁気テープカートリッジ12が装填される。磁気テープカートリッジ12は、磁気テープMTを収容している。磁気テープドライブ14は、装填された磁気テープカートリッジ12から磁気テープMTを引き出し、引き出した磁気テープMTを走行させながら、磁気テープMTに対してデータを記録したり、磁気テープMTからデータを読み取ったりする。
【0024】
本実施形態において、磁気テープドライブ14は、本開示の技術に係る「磁気テープドライブ」及び「非接触式通信システム」の一例である。また、本実施形態において、磁気テープMTは、本開示の技術に係る「磁気テープ」の一例である。また、本実施形態において、磁気テープカートリッジ12は、本開示の技術に係る「磁気テープカートリッジ」の一例である。
【0025】
次に、図2図4を参照しながら、磁気テープカートリッジ12の構成の一例について説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図2図4において、磁気テープカートリッジ12の磁気テープドライブ14への装填方向を矢印Aで示し、矢印A方向を磁気テープカートリッジ12の前方向とし、磁気テープカートリッジ12の前方向の側を磁気テープカートリッジ12の前側とする。以下に示す構造の説明において、「前」とは、磁気テープカートリッジ12の前側を指す。
【0026】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図2図4において、矢印A方向と直交する矢印B方向を右方向とし、磁気テープカートリッジ12の右方向の側を磁気テープカートリッジ12の右側とする。以下に示す構造の説明において、「右」とは、磁気テープカートリッジ12の右側を指す。
【0027】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図2図4において、矢印B方向と逆の方向を左方向とし、磁気テープカートリッジ12の左方向の側を磁気テープカートリッジ12の左側とする。以下に示す構造の説明において、「左」とは、磁気テープカートリッジ12の左側を指す。
【0028】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図2図4において、矢印A方向及び矢印B方向と直交する方向を矢印Cで示し、矢印C方向を磁気テープカートリッジ12の上方向とし、磁気テープカートリッジ12の上方向の側を磁気テープカートリッジ12の上側とする。以下に示す構造の説明において、「上」とは、磁気テープカートリッジ12の上側を指す。
【0029】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図2図4において、磁気テープカートリッジ12の前方向と逆の方向を磁気テープカートリッジ12の後方向とし、磁気テープカートリッジ12の後方向の側を磁気テープカートリッジ12の後側とする。以下に示す構造の説明において、「後」とは、磁気テープカートリッジ12の後側を指す。
【0030】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図2図4において、磁気テープカートリッジ12の上方向と逆の方向を磁気テープカートリッジ12の下方向とし、磁気テープカートリッジ12の下方向の側を磁気テープカートリッジ12の下側とする。以下に示す構造の説明において、「下」とは、磁気テープカートリッジ12の下側を指す。
【0031】
一例として図2に示すように、磁気テープカートリッジ12は、平面視略矩形であり、かつ、箱状のケース16を備えている。ケース16には、磁気テープMTが収容されている。
【0032】
ケース16の内部には、送出リール22が回転可能に収容されている。送出リール22には、磁気テープMTが巻き回されている。ケース16の右壁16Aの前側には、開口16A1が形成されている。磁気テープMTは、開口16A1から引き出される。
【0033】
ケース16には、磁気テープMT以外の格納媒体として、カートリッジメモリ24が収容されている。カートリッジメモリ24には、NVMを有するICチップが搭載されている。本実施形態では、いわゆるパッシブ型のRFIDタグがカートリッジメモリ24として採用されており、カートリッジメモリ24に対しては非接触で各種情報の読み書き(すなわち、各種情報の取得と格納)が行われる。
【0034】
カートリッジメモリ24には、磁気テープカートリッジ12を管理する管理情報15が格納されている。管理情報15には、例えば、カートリッジメモリ24に関する情報、磁気テープMTに関する情報、及び磁気テープドライブ14に関する情報等が含まれている。本実施形態において、カートリッジメモリ24は、本開示の技術に係る「非接触式通信媒体」の一例である。また、本実施形態において、管理情報15は、本開示の技術に係る「第1情報」、「第2情報」、及び「磁気テープに関する情報」の一例である。
【0035】
一例として図3に示すように、磁気テープドライブ14は、コントローラ25、搬送装置26、磁気ヘッド28、及びUI系装置29を備えている。コントローラ25は、処理装置30及びストレージ32を備えている。
【0036】
磁気テープドライブ14には、矢印A方向に沿って磁気テープカートリッジ12が装填される。磁気テープドライブ14では、磁気テープMTが磁気テープカートリッジ12から引き出されて用いられる。磁気テープドライブ14は、カートリッジメモリ24に格納されている管理情報15等を用いて磁気テープカートリッジ12及び磁気テープドライブ14内の各部を制御する。
【0037】
磁気テープドライブ14は、磁気テープMTを走行させた状態で磁気テープMTの表面31に対して磁気ヘッド28を用いて磁気的処理を行う。表面31は、データが記録される記録面である。磁気的処理とは、磁気ヘッド28が磁気テープMTの表面31に対してデータの記録を行う記録処理、及び磁気ヘッド28が磁気テープMTの表面31からデータの再生を行う再生処理を指す。磁気テープドライブ14は、磁気ヘッド28を用いて記録処理と再生処理とを選択的に行う。すなわち、磁気テープドライブ14は、磁気テープカートリッジ12から磁気テープMTを引き出し、引き出した磁気テープMTの表面31に対して磁気ヘッド28を用いてデータの記録を行ったり、引き出した磁気テープMTの表面31から磁気ヘッド28を用いてデータの再生を行ったりする。
【0038】
処理装置30は、磁気テープドライブ14の全体を制御する。本実施形態において、処理装置30は、ASICによって実現されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、処理装置30は、FPGA及び/又はPLDによって実現されるようにしてもよい。また、処理装置30は、CPU、フラッシュメモリ(例えば、EEPROM、及び/又は、SSD等)、及びRAMを含むコンピュータによって実現されるようにしてもよい。また、ASIC、FPGA、PLD、及びコンピュータのうちの2つ以上を組み合わせて実現されるようにしてもよい。すなわち、処理装置30は、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現されるようにしてもよい。
【0039】
ストレージ32は、処理装置30に接続されており、処理装置30は、ストレージ32に対する各種情報の書き込み、及びストレージ32からの各種情報の読み出しを行う。ストレージ32の一例としては、フラッシュメモリ及び/又はHDDが挙げられる。フラッシュメモリ及びHDDは、あくまでも一例に過ぎず、磁気テープドライブ14に搭載可能な不揮発性メモリであれば如何なるメモリであってもよい。
【0040】
UI系装置29は、ユーザからの指示を示す指示信号を受け付ける受付機能と、ユーザに対して情報を提示する提示機能とを有する装置である。受付機能は、例えば、タッチパネル、ハードキー(例えば、キーボード)、及び/又はマウス等によって実現される。提示機能は、例えば、ディスプレイ、プリンタ、及び/又はスピーカ等によって実現される。UI系装置29は、処理装置30に接続されている。処理装置30は、UI系装置29によって受け付けられた指示信号を取得する。UI系装置29は、処理装置30の制御下で、ユーザに対して各種情報を提示する。
【0041】
搬送装置26は、磁気テープMTを既定経路に沿って順方向及び逆方向に選択的に搬送する装置であり、送出モータ36、巻取リール38、巻取モータ40、及び複数のガイドローラGRを備えている。なお、ここで、順方向とは、磁気テープMTの送り出し方向を指し、逆方向とは、磁気テープMTの巻き戻し方向を指す。
【0042】
送出モータ36は、処理装置30の制御下で、磁気テープカートリッジ12内の送出リール22を回転させる。処理装置30は、送出モータ36を制御することで、送出リール22の回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
【0043】
巻取モータ40は、処理装置30の制御下で、巻取リール38を回転させる。処理装置30は、巻取モータ40を制御することで、巻取リール38の回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
【0044】
磁気テープMTが巻取リール38によって巻き取られる場合には、処理装置30は、磁気テープMTが既定経路に沿って順方向に走行するように送出モータ36及び巻取モータ40を回転させる。送出モータ36及び巻取モータ40の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール38に対して磁気テープMTを巻き取らせる速度に応じて調整される。また、送出モータ36及び巻取モータ40の各々の回転速度及び回転トルク等が処理装置30によって調整されることで、磁気テープMTに対して張力が付与される。また、磁気テープMTに付与される張力は、送出モータ36及び巻取モータ40の各々の回転速度及び回転トルク等が処理装置30によって調整されることによって制御される。
【0045】
磁気テープMTを送出リール22に巻き戻す場合には、処理装置30は、磁気テープMTが既定経路に沿って逆方向に走行するように送出モータ36及び巻取モータ40を回転させる。
【0046】
複数のガイドローラGRの各々は、磁気テープMTを案内するローラである。既定経路、すなわち、磁気テープMTの走行経路は、複数のガイドローラGRが磁気テープカートリッジ12と巻取リール38との間において磁気ヘッド28を跨ぐ位置に分けて配置されることによって定められている。
【0047】
磁気ヘッド28は、磁気素子ユニット42及びホルダ44を備えている。磁気素子ユニット42は、走行中の磁気テープMTに接触するようにホルダ44によって保持されている。磁気素子ユニット42は、複数の磁気素子を有する。
【0048】
磁気素子ユニット42は、搬送装置26によって搬送される磁気テープMTにデータを記録したり、搬送装置26によって搬送される磁気テープMTからデータを再生したりする。
【0049】
磁気テープドライブ14は、リーダライタ46を備えている。リーダライタ46は、磁気テープカートリッジ12が装填された状態の磁気テープカートリッジ12の下側にてカートリッジメモリ24の裏面に正対するように配置されており、カートリッジメモリ24と非接触で通信(例えば、カートリッジメモリ24に対する情報の読み書き)を行う。本実施形態において、リーダライタ46は、本開示の技術に係る「外部装置」及び「通信装置」の一例である。
【0050】
一例として図4に示すように、リーダライタ46は、処理装置30に接続されている。処理装置30は、コマンド信号48をリーダライタ46に出力する。コマンド信号48は、カートリッジメモリ24に対する指令を示す信号である。リーダライタ46は、処理装置30から入力されたコマンド信号48に従って磁界MFを生成し、磁気テープカートリッジ12の下側からカートリッジメモリ24に向けて磁界MFを放出する。リーダライタ46から放出された磁界MFは、カートリッジメモリ24を貫通する。本実施形態において、磁界MFは、本開示の技術に係る「磁界」の一例である。
【0051】
リーダライタ46は、処理装置30の制御下で、コマンド信号48をカートリッジメモリ24に空間伝送する。コマンド信号がリーダライタ46からカートリッジメモリ24に空間伝送される場合、磁界MFには、処理装置30からの指示に従ってリーダライタ46によってコマンド信号48が含まれる。換言すると、磁界MFには、コマンド信号48が重畳される。すなわち、リーダライタ46は、処理装置30の制御下で、磁界MFを介してコマンド信号48をカートリッジメモリ24に送信する。
【0052】
リーダライタ46は、磁界MFを介してカートリッジメモリ24と非接触で通信を行うことにより、カートリッジメモリ24に対して、コマンド信号48に応じた処理を行わせる。例えば、リーダライタ46は、カートリッジメモリ24に対してコマンド信号48を送信することで、カートリッジメモリ24に書込処理及び/又は読出処理等を含む処理を行わせる。書込処理とは、例えば、管理情報15(図2参照)のうちのコマンド信号48に応じて定められた情報をカートリッジメモリ24内の格納領域に書き込む処理を指す。読出処理とは、例えば、カートリッジメモリ24内の格納領域に格納されている管理情報15のうちのコマンド信号48に応じて定められた情報を格納領域から読み出す処理を指す。
【0053】
処理装置30は、リーダライタ46を介して、カートリッジメモリ24と非接触で通信を行うことにより、カートリッジメモリ24に対して管理情報15を書き込んだり、カートリッジメモリ24から管理情報15を読み出したりする。
【0054】
一例として図5に示すように、カートリッジメモリ24は、電力生成器50、信号処理回路52、及びコンピュータ54を備えている。電力生成器50は、共振回路50A、整流回路50B、及びレギュレータ50Cを有する。共振回路50Aは、アンテナコイル50A1及び可変コンデンサ50A2を有する。可変コンデンサ50A2は、アンテナコイル50A1に対して並列に接続されている。図5に示す例では、単一の可変コンデンサ50A2がアンテナコイル50A1に対して並列に接続されている。また、アンテナコイル50A1及び可変コンデンサ50A2は、信号処理回路52に対して並列に接続されており、整流回路50Bに対しても並列に接続されている。
【0055】
本実施形態において、共振回路50Aは、本開示の技術に係る「共振回路」の一例である。また、本実施形態において、アンテナコイル50A1は、本開示の技術に係る「アンテナコイル」の一例である。また、本実施形態において、可変コンデンサ50A2は、本開示の技術に係る「可変コンデンサ」の一例である。
【0056】
電力生成器50は、リーダライタ46(図3及び図4参照)から与えられた磁界MFがアンテナコイル50A1に対して作用することで電力60を生成する。電力60は、カートリッジメモリ24の作動用の電力である。
【0057】
電力60の生成を実現するために、共振回路50Aは、磁界MFがアンテナコイル50A1に作用することでアンテナコイル50A1によって誘起された誘導電流を用いて共振する(すなわち、共振現象を発生させる)ことで交流電圧56を生成する。共振回路50Aは、交流電圧56を整流回路50Bに出力する。
【0058】
整流回路50Bは、共振回路50Aから入力された交流電圧56を整流化することにより直流電圧58を生成する。整流回路50Bは、レギュレータ50Cに接続されており、直流電圧58をレギュレータ50Cに出力する。
【0059】
レギュレータ50Cは、カートリッジメモリ24に含まれる各種回路(図5に示す例では、信号処理回路52及びコンピュータ54等)に接続されている。レギュレータ50Cは、整流回路50Bから入力された直流電圧58に基づく電力60(例えば、直流電圧58を事前に定められた電圧値に定電圧化することで得た直流電力)を生成して、カートリッジメモリ24に含まれる各種回路に供給することで、カートリッジメモリ24に含まれる各種回路を作動させる。
【0060】
信号処理回路52は、共振回路50Aに接続されている。信号処理回路52は、復号回路(図示省略)及び符号化回路(図示省略)を有する。信号処理回路52の復号回路は、アンテナコイル50A1によって受信された磁界MFからコマンド信号48を抽出して復号し、コンピュータ54に出力する。コンピュータ54は、コマンド信号48に対する応答信号61を信号処理回路52に出力する。すなわち、コンピュータ54は、信号処理回路52から入力されたコマンド信号48に応じた処理を実行し、処理結果を示す応答信号61を信号処理回路52に出力する。信号処理回路52では、コンピュータ54から応答信号61が入力されると、信号処理回路52の符号化回路は、応答信号61を符号化することで変調して共振回路50Aに出力する。共振回路50Aは、信号処理回路52の符号化回路から入力された応答信号61を、磁界MFを介してリーダライタ46に送信する。すなわち、カートリッジメモリ24からリーダライタ46に応答信号61が送信される場合、磁界MFには、応答信号61が含まれる。換言すると、磁界MFには応答信号61が重畳される。
【0061】
信号処理回路52は、コンピュータ54との間で通信信号62の授受を行う。本実施形態において、通信信号62の概念には、コマンド信号48が信号処理回路52によって復号されて得られた信号、及び、応答信号61が含まれる。本実施形態において、コマンド信号48は、本開示の技術に係る「コマンド信号」の一例である。
【0062】
コンピュータ54は、カートリッジメモリ24の全体を制御する。一例として図6に示すように、コンピュータ54は、プロセッサ54A、NVM54B、及びRAM54Cを備えている。プロセッサ54Aは、例えば、CPUである。NVM54Bは、例えば、EEPROM及び/又は強誘電体メモリ等の不揮発性メモリである。RAM54Cは、DRAM等の揮発性メモリである。プロセッサ54A、NVM54B、及びRAM54Cは、バス64に接続されている。また、バス64には、信号処理回路52が接続されており、プロセッサ54Aと信号処理回路52との間で通信信号62の授受が行われる。本実施形態において、プロセッサ54Aは、本開示の技術に係る「処理回路」の一例である。また、本実施形態において、NVM54Bは、本開示の技術に係る「メモリ」の一例である。
【0063】
プロセッサ54Aは、コマンド信号48に応じた処理として、書込処理及び読出処理をNVM54Bに対して選択的に実行する。すなわち、プロセッサ54Aによって書込処理が行われることにより、コマンド信号48に応じて定められた情報がNVM54Bに書き込まれ、プロセッサ54Aによって読出処理が行われることにより、NVM54Bに格納されている情報のうちのコマンド信号48に応じて定められた情報がNVM54Bから読み出される。図6に示す例では、NVM54Bに管理情報15が格納されている態様例が示されており、プロセッサ54Aは、コマンド信号48に応じて、NVM54Bに管理情報15を書き込んだり、NVM54Bから管理情報15を読み出したりする。
【0064】
コマンド信号48は、波形信号であり、リーダライタ46によって磁界MFを介してカートリッジメモリ24に送信される。共振回路50Aは、リーダライタ46から送信されたコマンド信号48を受信すると共振し、交流電圧56の波形に対応する信号68を生成する。共振回路50Aによって生成された信号68は、信号処理回路52によって復号されて通信信号62としてプロセッサ54Aに出力される。プロセッサ54Aは、信号処理回路52から入力された通信信号62に応じた処理を実行する。また、プロセッサ54Aは、処理結果を通信信号62(すなわち、応答信号61(図5参照)として信号処理回路52に出力する。信号処理回路52は、プロセッサ54Aから入力された通信信号62を符号化し、共振回路50Aは、信号処理回路52によって通信信号62が符号化されて得られた信号に対応する波形の信号68を、磁界MFを介してリーダライタ46に送信する。このように、カートリッジメモリ24とリーダライタ46との間で行われる非接触の通信は、信号68が用いられることによって実現される。本実施形態において、信号68は、本開示の技術に係る「信号」の一例である。
【0065】
ところで、カートリッジメモリ24とリーダライタ46との間で非接触の通信を安定化させるためには、信号68の波形が通信方式(例えば、ISO14443若しくはISO18092等の公知の規格に準じる方式、又は、ECMA319のLTO仕様に準じる方式)に準じた歪みのない波形であることが望ましい。信号68の波形が歪みのない波形であれば、プロセッサ54Aは、コマンド信号48の内容を正確に特定することができ、リーダライタ46は、応答信号61の内容を正確に特定することができる。
【0066】
しかし、一例として図7に示すように、コマンド信号48が外部ノイズ等の影響により信号対雑音比が悪化すると、コマンド信号48の波形が歪み、これに伴って、信号68の波形がオーバーシュートしてしまったりアンダーシュートしてしまったりするので、信号68の波形が歪んでしまう。そうすると、プロセッサ54Aに対してコマンド信号48の内容を正確に伝達することが困難になる。また、信号68に対して外部ノイズ等が直接影響した場合であっても、信号68の波形は歪んでしまうため、カートリッジメモリ24とリーダライタ46との間で通信不良が生じる。すなわち、プロセッサ54Aに対してコマンド信号48の内容を正確に伝達したり、リーダライタ46に対して応答信号61の内容を正確に伝達したりすることが困難になる。
【0067】
一方、図7に示すように、信号68の波形が著しく減衰する期間が生じると、カートリッジメモリ24に対して安定した電力供給が困難になる。供給電力を高める方法としては、アンテナコイル50A1単体のQ値(Quality Factor)を高めに設定する方法がある。Q値とは、共振周波数における信号の鋭さを示す指標を指す。アンテナコイル50A1単体のQ値を高めに設定すると、アンテナコイル50A1によって受信される磁界MFの強度を高くすることができる(すなわち、磁界MFの供給を増やすことができる)ので、大きな電力を供給することができる。しかし、信号68の波形の歪みが生じるので、カートリッジメモリ24とリーダライタ46との間で通信不良が生じる。
【0068】
そのため、現在、信号68の波形の歪みの解消と、カートリッジメモリ24に対する安定した電力供給との両立を図ることが望まれている。
【0069】
そこで、このような事情に鑑み、本実施形態では、一例として図8に示すように、カートリッジメモリ24は、可変抵抗器50A3、監視回路70、及び制御回路72を備えている。可変抵抗器50A3は、共振回路50Aに組み込まれており、アンテナコイル50A1に対して並列に接続されている。本実施形態において、可変抵抗器50A3は、本開示の技術に係る「可変抵抗器」の一例である。また、本実施形態において、制御回路72は、本開示の技術に係る「制御回路」の一例である。
【0070】
監視回路70及び制御回路72には、レギュレータ50Cの出力端が接続されており、監視回路70及び制御回路72は、レギュレータ50Cから供給される電力60を用いて作動する。
【0071】
監視回路70には、整流回路50Bの出力端が接続されており、整流回路50Bから直流電圧58が入力される。また、監視回路70には、共振回路50Aが接続されており、共振回路50Aから交流電圧56が入力される。
【0072】
監視回路70は、共振回路50Aで生成される交流電圧56(すなわち、交流電圧56の波形そのもの)と整流回路50Bから出力される直流電圧58とを監視する。例えば、監視回路70は、交流電圧56の電圧値と直流電圧58の電圧値(例えば、直流電圧58の瞬間的な電圧値、又は、一定期間内の電圧値の統計値(例えば、平均値、中央値、最頻値、又は最大値等)とを比較し、比較結果74(例えば、交流電圧56の電圧値と直流電圧58の電圧値との大小関係を示す信号)を制御回路72に出力する。
【0073】
制御回路72は、可変コンデンサ50A2の容量を調整することで共振回路50Aを既定共振周波数で共振させ、かつ、可変抵抗器50A3の抵抗値を調整することでQ値を調整する。既定共振周波数とは、例えば、直流電圧58を最大にする共振周波数を指す。直流電圧58を最大にする共振周波数の一例としては、磁界MFの周波数に相当する周波数(例えば、13.56MHz)が挙げられる。
【0074】
制御回路72には、監視回路70から比較結果74が入力される。制御回路72は、監視回路70から入力された比較結果74に基づいて、可変コンデンサ50A2の容量を調整し、かつ、監視回路70から入力された比較結果74に基づいて、可変抵抗器50A3の抵抗値を調整することでQ値を調整する。
【0075】
より詳しく説明すると、制御回路72は、比較結果74を参照して、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きい場合に、可変抵抗器50A3の抵抗値を高めることでQ値を低くする。また、制御回路72は、比較結果74を参照して、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きい場合に、可変コンデンサ50A2の容量を調整することで直流電圧58を最大にする。例えば、制御回路72は、可変コンデンサ50A2の容量を大きくすると、やがて直流電圧58の電圧値が最大値となり、可変コンデンサ50A2の容量を更に大きくすると、直流電圧58の電圧値が最大値から降下する。このようにして、制御回路72は、可変コンデンサ50A2の容量を変化させることにより直流電圧58の電圧値の最大値を探り当てる。
【0076】
次に、磁気テープシステム10の本開示の技術に係る部分の作用について、図9及び図10を参照して説明する。
【0077】
図9には、リーダライタ46から放出された磁界MFがカートリッジメモリ24のアンテナコイル50A1に作用することによって共振回路50Aが共振した場合にカートリッジメモリ24によって行われる電力最大化処理の流れの一例を示すフローチャートが示されている。図10には、リーダライタ46から放出された磁界MFがカートリッジメモリ24のアンテナコイル50A1に作用することによって共振回路50Aが共振した場合にカートリッジメモリ24によって行われる歪み抑制処理の流れの一例を示すフローチャートが示されている。
【0078】
先ず、電力最大化処理について図9を参照して説明する。
【0079】
図9に示す電力最大化処理では、先ず、ステップST10で、共振回路50Aが、磁界MFに応じた交流電圧56の生成を開始する。ステップST10の処理が実行された後、電力最大化処理は、ステップST12へ移行する。
【0080】
ステップST12で、整流回路50Bは、ステップST10で生成された交流電圧56を整流化することにより直流電圧58の生成を開始する。ステップST12の処理が実行された後、電力最大化処理は、ステップST14へ移行する。
【0081】
ステップST14で、レギュレータ50Cは、ステップST12で生成された直流電圧58を定電圧化することで電力60の生成を開始する。そして、レギュレータ50Cは、カートリッジメモリ24に含まれる各種回路に対して電力60の供給を開始する。ステップST14の処理が実行された後、電力最大化処理は、ステップST16へ移行する。
【0082】
ステップST16で、監視回路70は、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きいか否かを判定する。ステップST16において、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きい場合は、判定が肯定されて、電力最大化処理はステップST18へ移行する。ステップST16において、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値以下の場合は、判定が否定されて、電力最大化処理はステップST22へ移行する。
【0083】
ステップST18で、制御回路72は、比較結果74(図8参照)を参照して、可変コンデンサ50A2の容量を調整する。ステップST18の処理が実行された後、電力最大化処理はステップST20へ移行する。
【0084】
ステップST20で、監視回路70は、直流電圧58の電圧値が最大になったか否かを判定する。ステップST20において、直流電圧58の電圧値が最大になった場合は、判定が肯定されて、電力最大化処理はステップST22へ移行する。ステップST20において、直流電圧58の電圧値が最大になっていない場合は、判定が否定されて、電力最大化処理はステップST16へ移行する。
【0085】
ステップST22で、監視回路70は、電力最大化処理が終了する条件を満足したか否かを判定する。電力最大化処理が終了する条件の一例としては、交流電圧56の電圧値又は直流電圧58の電圧値が“ゼロ”である時間が一定時間以上継続しているという条件、又は、電力最大化処理を終了させる指令がリーダライタ46からコマンド信号48として与えられたという条件が挙げられる。
【0086】
ステップST22において、電力最大化処理が終了する条件を満足していない場合は、判定が否定されて、電力最大化処理はステップST16へ移行する。ステップST22において、電力最大化処理が終了する条件を満足した場合は、判定が肯定されて、電力最大化処理が終了する。
【0087】
次に、歪み抑制処理について図10を参照して説明する。
【0088】
図10に示す歪み抑制処理では、ステップST50~ステップST54で、上述したステップST10~ステップST14と同様の処理が行われる。
【0089】
ステップST58で、監視回路70は、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きいか否かを判定する。ステップST58において、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きい場合は、判定が肯定されて、歪み抑制処理はステップST60へ移行する。ステップST58において、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値以下の場合は、判定が否定されて、歪み抑制処理はステップST64へ移行する。
【0090】
ステップST60で、制御回路72は、可変抵抗器50A3の抵抗値を大きくすることでQ値を低くする。ステップST60の処理が実行された後、歪み抑制処理はステップST62へ移行する。
【0091】
ステップST62で、監視回路70は、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値以下であるか否かを判定する。ステップST62において、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値以下である場合は、判定が肯定されて、歪み抑制処理はステップST64へ移行する。ステップST62において、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きい場合は、判定が否定されて、歪み抑制処理はステップST60へ移行する。
【0092】
ステップST64で、監視回路70は、歪み抑制処理が終了する条件を満足したか否かを判定する。歪み抑制処理が終了する条件の一例としては、交流電圧56の電圧値又は直流電圧58の電圧値が“ゼロ”である時間が一定時間以上継続しているという条件、又は、歪み抑制処理を終了させる指令がリーダライタ46からコマンド信号48として与えられたという条件が挙げられる。
【0093】
ステップST64において、歪み抑制処理が終了する条件を満足していない場合は、判定が否定されて、歪み抑制処理はステップST58へ移行する。ステップST64において、歪み抑制処理が終了する条件を満足した場合は、判定が肯定されて、歪み抑制処理が終了する。
【0094】
以上説明したように、本実施形態では、制御回路72によって可変コンデンサ50A2の容量が調整されることで共振回路50Aを既定共振周波数で共振させる。既定共振周波数とは、例えば、直流電圧58を最大にする共振周波数を指す。直流電圧58が最大になれば、カートリッジメモリ24の各種回路に対する電力60の供給の安定化を実現することができる。また、本実施形態では、制御回路72によって可変抵抗器50A3の抵抗値が調整されることでQ値が調整される。Q値が調整されることにより、交流電圧56の波形の歪みが生じ難くなる。従って、本実施形態によれば、カートリッジメモリ24を作動させる電力60の安定化と、交流電圧56の波形の歪みの抑制とを両立させることができる。
【0095】
また、本実施形態では、交流電圧56の電圧値と直流電圧58の電圧値とを比較した結果(例えば、比較結果74)に応じて、可変コンデンサ50A2の容量が調整されることで共振回路50Aを既定共振周波数で共振させる。また、本実施形態では、交流電圧56の電圧値と直流電圧58の電圧値とを比較した結果に応じて、可変抵抗器50A3の抵抗値が調整されることでQ値が調整される。従って、本実施形態によれば、カートリッジメモリ24を作動させる電力60の安定化と、交流電圧56の波形の歪みの抑制とを精度良く両立させることができる。
【0096】
また、本実施形態では、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きい場合に、制御回路72が、可変抵抗器50A3の抵抗値を高めることでQ値を低くする。これにより、交流電圧56の波形の歪みを容易に抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態では、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きい場合に、制御回路72が、可変コンデンサ50A2の容量を調整することで直流電圧58を最大にする。これにより、カートリッジメモリ24を作動させる電力60の安定化を実現することができる。また、直流電圧58は整流回路50Bによって生成され、電力60はレギュレータ50Cによって直流電圧58に基づいて生成されてプロセッサ54Aに供給される。従って、プロセッサ54Aの動作を安定させることができる。
【0098】
また、本実施形態では、信号68に対応する通信信号62にはコマンド信号48が復号された信号が含まれており、プロセッサ54Aは、コマンド信号48に応じた処理を実行する。本実施形態では、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きい場合に、可変抵抗器50A3の抵抗値が高められることによって信号68の波形の歪みは抑制されるので、プロセッサ54Aは、コマンド信号48に応じた処理の実行の確実性を高めることができる。例えば、コマンド信号48に応じて定められた情報(例えば、管理情報15)をNVM54Bに書き込む処理、及び/又は、コマンド信号48に応じて定められた情報(例えば、管理情報15)をNVM54Bから読み出す処理の確実性を高めることができる。
【0099】
なお、上記実施形態では、電力最大化処理と歪み抑制処理とが並行して実行される形態例を挙げたが、例えば、カートリッジメモリ24に電力60を蓄積可能なバッテリが搭載されており、バッテリに電力60が十分に確保されている場合には、バッテリに蓄積されている電力60がカートリッジメモリ24の作動用の電力として用いられ、その間、電力最大化処理が実行されず、歪み抑制処理が実行されるようにしてもよい。そして、バッテリに電力60が不足した場合に、電力最大化処理と歪み抑制処理とが並行して実行されるようにしてもよい。
【0100】
また、バッテリに電力60が不足した場合(すなわち、カートリッジメモリ24の作動用の電力が不足した場合)、及び/又は、信号68の波形の歪みをある程度許容できる場合に、歪み抑制処理が実行されずに、一例として図11に示す電力補充処理が一定時間(例えば、バッテリに十分な電力60が蓄積されるのに要する時間)だけ実行されるようにしてもよい。図11に示す電力補充処理は、図10に示す歪み抑制処理に比べ、ステップST58の処理に代えてステップST100の処理が実行される点、ステップST60の処理に代えてステップST102の処理が実行される点、及びステップST62の処理に代えてステップST104の処理が実行される点が異なる。
【0101】
図11に示すステップST100で、監視回路70は、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値以下であるか否かを判定する。ステップST100において、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きい場合は、判定が否定されて、電力補充処理はステップST64へ移行する。ステップST100において、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値以下である場合は、判定が肯定されて、電力補充処理はステップST102へ移行する。
【0102】
ステップST102で、制御回路72は、可変抵抗器50A3の抵抗値を小さくすることでQ値を高くする。
【0103】
ステップST104で、監視回路70は、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きいか否かを判定する。ステップST104において、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値以下である場合は、判定が否定されて、電力補充処理はステップST102へ移行する。ステップST104において、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値よりも大きい場合は、判定が肯定されて、電力補充処理はステップST64へ移行する。
【0104】
このように、交流電圧56の電圧値が直流電圧58の電圧値以下の場合に、可変抵抗器50A3の抵抗値を小さくすることでQ値が高くなるので、アンテナコイル50A1によって受信される磁界MFの強度を高くすることができる(すなわち、磁界MFの供給を増やすことができる)。アンテナコイル50A1によって受信される磁界MFの強度を高くすることができれば、整流回路50Bによって直流電圧58の電圧値も大きくすることができ、この結果、レギュレータ50Cによって生成されて各種回路に供給される電力60も大きくすることができる。
【0105】
上記実施形態では、リーダライタ46と非接触で通信を行うカートリッジメモリ24を例に挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されず、カートリッジメモリ24以外の非接触式通信媒体(例えば、本技術分野とは異なる技術分野で用いられるパッシブ型のRFIDタグ)に対しても本開示の技術は適用可能である。
【0106】
上記実施形態では、磁気テープドライブ14に搭載されているリーダライタ46を例示したが、本開示の技術はこれに限定されず、リーダライタ46以外のリーダライタ(例えば、本技術分野とは異なる技術分野で用いられるリーダライタ)であってもよい。また、本開示の技術が適用された非接触式通信媒体に対して非接触で通信を行うことにより書き込み又は読み出しを行う外部装置であってもよい。
【0107】
上記実施形態では、リーダライタ46として、据え置き型のリーダライタ(すなわち、磁気テープドライブ14に搭載されているリーダライタ)を例示したが、これは、あくまでも一例に過ぎず、可搬型のリーダライタであっても本開示の技術は成立する。また、据え置き型又は可搬型のリーダライタは、本技術分野とは異なる技術分野で用いられるリーダライタであってもよい。
【0108】
上記実施形態では、磁気テープドライブ14に対して磁気テープカートリッジ12が挿脱自在な磁気テープシステム10を例示したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、磁気テープドライブ14に対して少なくとも1つの磁気テープカートリッジ12が事前に装填されている磁気テープシステム(すなわち、少なくとも1つの磁気テープカートリッジ12と磁気テープドライブ14、又は、磁気テープMTと磁気テープドライブ14とが事前(例えば、データバンドに対するデータの記録前)に一体化された磁気テープシステム)であっても本開示の技術は成立する。
【0109】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0110】
本明細書において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
【0111】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0112】
10 磁気テープシステム
12 磁気テープカートリッジ
14 磁気テープドライブ
15 管理情報
16 ケース
16A 右壁
16A1 開口
22 送出リール
24 カートリッジメモリ
25 コントローラ
26 搬送装置
28 磁気ヘッド
29 UI系装置
30 処理装置
31 表面
32 ストレージ
36 送出モータ
38 巻取リール
40 巻取モータ
42 磁気素子ユニット
44 ホルダ
46 リーダライタ
48 コマンド信号
50 電力生成器
50A 共振回路
50A1 アンテナコイル
50A2 可変コンデンサ
50A3 可変抵抗器
50B 整流回路
50C レギュレータ
52 信号処理回路
54 コンピュータ
54A プロセッサ
54B NVM
54C RAM
56 交流電圧
58 直流電圧
60 電力
61 応答信号
62 通信信号
64 バス
68 信号
70 監視回路
72 制御回路
74 比較結果
A,B,C 矢印
MF 磁界
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11