(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127815
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】偏光板及びこれを含む光学表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240912BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240912BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031017
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】10-2023-0030402
(32)【優先日】2023-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミンジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨジン
(72)【発明者】
【氏名】ウィ,ジヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウンミ
(72)【発明者】
【氏名】ジョ,アラ
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB13
2H149BA02
2H149CA02
2H149EA12
2H149FA02X
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2H291FA22X
2H291FA22Z
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2H291LA04
5G435AA12
5G435AA14
5G435BB05
5G435BB12
5G435FF05
5G435GG43
5G435HH02
(57)【要約】
【課題】著しく低い含有量で金属陽イオンを含みながら、高温での信頼性に優れた偏光子を備える偏光板を提供する。
【解決手段】偏光子、及び前記偏光子の少なくとも一面に積層された保護層を備えており、前記偏光子は、二色性物質を含有するポリビニルアルコール系フィルムで構成され、前記偏光子は、亜鉛陽イオン及びナトリウム陽イオンを含み、前記偏光子は、前記亜鉛陽イオンに対する前記ナトリウム陽イオンの比率が0.1乃至0.96で、前記亜鉛陽イオンと前記ナトリウム陽イオンとの総和は500ppm乃至1500ppmである偏光板を構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子、及び前記偏光子の少なくとも一面に積層された保護層を備えており、
前記偏光子は、二色性物質を含有するポリビニルアルコール系フィルムで構成され、
前記偏光子は、亜鉛陽イオン及びナトリウム陽イオンを含み、
前記偏光子は、前記亜鉛陽イオンに対する前記ナトリウム陽イオンの比率が0.1乃至0.96で、前記亜鉛陽イオンと前記ナトリウム陽イオンとの総和は500ppm乃至1500ppmである、偏光板。
【請求項2】
前記偏光子中には、前記ナトリウム陽イオンが100ppm乃至1000ppmであり、前記亜鉛陽イオンが200ppm以上1500ppm未満である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記ナトリウム陽イオンおよび前記亜鉛陽イオンの合計量は、前記偏光子に含有された全金属陽イオンの合計含有量(ppmベース)に対して8%以上である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項4】
前記ナトリウム陽イオンは、硫酸ナトリウム(Na2SO4)から由来し、前記亜鉛陽イオンは、硫酸亜鉛(ZnSO4)から由来するものである、請求項1に記載の偏光板。
【請求項5】
前記偏光子は、カリウム陽イオンをさらに含むものである、請求項1に記載の偏光板。
【請求項6】
前記カリウム陽イオンに対する前記ナトリウム陽イオンの比率は、0.02乃至0.15である、請求項5に記載の偏光板。
【請求項7】
前記カリウム陽イオンと前記ナトリウム陽イオンとの総和は、3000ppm乃至10000ppmである、請求項5に記載の偏光板。
【請求項8】
カリウム陽イオンに対する前記ナトリウム陽イオンと前記亜鉛陽イオンとの総和の比率は、0.1乃至0.2である、請求項5に記載の偏光板。
【請求項9】
前記ナトリウム陽イオン、前記亜鉛陽イオン及び前記カリウム陽イオンの合計量は、前記偏光子に含有された全金属陽イオンの合計含有量(ppmベース)に対して90%以上である、請求項5に記載の偏光板。
【請求項10】
前記偏光子は、ホウ素陽イオンをさらに含むものである、請求項5に記載の偏光板。
【請求項11】
前記ポリビニルアルコール系フィルムは、親水性官能基及び疎水性官能基を全て含有するポリビニルアルコール系フィルムである、請求項1に記載の偏光板。
【請求項12】
前記保護層は、前記偏光板の最外郭に配置されるものである、請求項1に記載の偏光板。
【請求項13】
前記保護層は、95重量%以上の有機成分である組成物で形成されるものである、請求項12に記載の偏光板。
【請求項14】
前記有機成分は、樹脂、オリゴマー、及びモノマーのうち1種以上を含むものである、請求項13に記載の偏光板。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項の偏光板を含むものである、光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板及びこれを含む光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、通常、発光表示装置又は液晶表示装置で使用される。偏光板は、偏光子を必須的に備えており、偏光子は偏光機能を提供する。偏光機能は、ヨード系又は二色性染料などを含む二色性物質によって実現され得る。
【0003】
偏光板は、一般に、高温で長期間放置した後の高い信頼性が要求される。特に、偏光板は、高温で長期間放置した後、色相値as、色相値bs、偏光度及び光透過の全ての変化量が低くなる必要がある。
【0004】
本発明の背景技術は、韓国公開特許第2020-0115071号などに開示されている。これによると、偏光板の赤化を解消するためには、耐赤化層などの色相変化抑制層を偏光子に積層する方法が考慮され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第2020-0115071号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、著しく低い含有量で金属陽イオンを含みながら、高温での信頼性に優れた偏光子を備える偏光板を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、高温で放置した後、色相値as、色相値bs、偏光度及び光透過の全ての変化量が低く、黄変の発生がないため高温での信頼性に優れた偏光板を提供することにある。
【0008】
本発明の更に他の目的は、亜鉛及びナトリウムのうち1種以上の析出がない偏光板を提供することにある。
【0009】
本発明の更に他の目的は、通常の偏光子用保護フィルムのみを備えた場合にも、高温での信頼性に優れた偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によると、偏光板が提供される。
【0011】
前記偏光板は、偏光子、及び前記偏光子の少なくとも一面に積層された保護層を備えており、前記偏光子は、二色性物質を含有するポリビニルアルコール系フィルムで構成され、前記偏光子は、亜鉛陽イオン及びナトリウム陽イオンを含有し、前記偏光子は、前記亜鉛陽イオンに対する前記ナトリウム陽イオンの比率が0.1乃至0.96で、前記亜鉛陽イオンと前記ナトリウム陽イオンとの総和は500ppm乃至1500ppmである。
【0012】
他の実施形態によると、光学表示装置が提供される。
【0013】
前記光学表示装置は前記偏光板を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、著しく低い含有量で金属陽イオンを含みながら、高温での信頼性に優れた偏光子を備える偏光板を提供することができる。
【0015】
本発明によると、高温で放置した後、色相値as、色相値bs、偏光度及び光透過の全ての変化量が低く、黄変の発生がないため高温での信頼性に優れた偏光板を提供することができる。
【0016】
本発明によると、亜鉛及びナトリウムのうち1種以上の析出がない偏光板を提供することができる。
【0017】
本発明によると、通常の偏光子用保護フィルムのみを備えた場合にも、高温での信頼性に優れた偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施例に係る偏光板の断面図である。
【
図2】本発明の他の実施例に係る偏光板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面及び添付の実施例により、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明を詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態に実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0020】
ここで使用される用語は、例示的な各実施形態を説明するために使用されたものに過ぎず、本発明を限定するためのものではない。単数の表現は、文脈上、明らかに異なる意味を有さない限り、複数の表現を含む。
【0021】
本明細書において、数値範囲を記載するとき、「X乃至Y」は、X以上Y以下を意味する。
【0022】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0023】
本明細書において、「偏光子中の陽イオン」、例えば、亜鉛陽イオン(例えば、Zn2+)、ナトリウム陽イオン(例えば、Na+)、カリウム陽イオン(例えば、K+)、ホウ素陽イオン(例えば、B3+)などは、以下の方法で測定されてもよい。
【0024】
[偏光子中の陽イオンの測定方法]
偏光子中の陽イオンの含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)によって測定することができる。
【0025】
本明細書において、偏光板の「色相値as」及び「色相値bs」は、波長380nm乃至780nmで測定された、L*a*b*に変換された値であって、「L*」、「a*」、「b*」は、CIE 1976を基準にした色相値を意味する。「色相値as」及び「色相値bs」は、測定装置V-7100(Jasco社)を用いて測定されてもよく、これに制限されない。
【0026】
本明細書において、偏光板の「偏光度(PE)」は、波長380nm乃至780nmで測定された値である。
【0027】
本明細書において、偏光板の「光透過率(Ts)」は、波長380nm乃至780nmで測定された光透過率の平均値であって、全光線透過率を意味する。
【0028】
本明細書において、「亜鉛陽イオン」は、亜鉛から由来した陽イオンであって、例えば、Zn2+になってもよい。本明細書において、「ナトリウム陽イオン」は、ナトリウムから由来した陽イオンであって、例えば、Na+になってもよい。本明細書において、「カリウム陽イオン」は、カリウムから由来した陽イオンであって、例えば、K+になってもよい。本明細書において、「ホウ素陽イオン」は、ホウ素から由来した陽イオンであって、例えば、B3+になってもよい。
【0029】
本発明は、偏光子中に低い含有量で金属陽イオンを含みながら、高温での信頼性に優れた偏光板を提供した。偏光子中の金属陽イオンの含有量が著しく低いので、金属陽イオンから由来する金属、例えば、亜鉛及びナトリウムのうち1種以上が偏光子から析出されない。本発明の偏光板は、高温で長期間放置した後、色相値as、色相値bs、偏光度及び光透過率の全ての変化量が低く、黄変の発生がないため高温での信頼性に優れている。本発明は、通常の偏光子用保護フィルムのみを備えた場合にも、高温での信頼性に優れた偏光板を提供する。
【0030】
本発明の偏光板は、偏光子、及び前記偏光子の少なくとも一面に積層された保護層を備えており、前記偏光子は、二色性物質を含有するポリビニルアルコール系フィルムで構成され、前記偏光子は、亜鉛陽イオン及びナトリウム陽イオンを含み、前記偏光子中の前記亜鉛陽イオンに対する前記ナトリウム陽イオンの比率は0.1乃至0.96で、前記亜鉛陽イオンと前記ナトリウム陽イオンとの総和は500ppm乃至1500ppmである。
【0031】
本発明の偏光板は、偏光子、及び前記偏光子の少なくとも一面に積層された保護層を備えている。偏光板は、下記で説明する偏光子を備えることによって、著しく低い含有量で金属陽イオンを含みながら高温での信頼性に優れ、高温で放置した後、色相値as、色相値bs、偏光度及び光透過率の変化量も低く、黄変の発生がなく、一般的な偏光子用保護フィルムのみを備えた場合にも、高温での信頼性に優れている。
【0032】
一実施形態において、偏光子中の金属陽イオンの総含有量は、20000ppm以下、例えば、1000ppm乃至10000ppm、3000ppm乃至8000ppmであってもよい。前記範囲で、偏光子中の金属陽イオンの含有量が低いため、偏光子の偏光に影響を与えることを防止でき、高品質な画面を実現することができる。このとき、「金属陽イオン」は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、遷移後金属、及びそれぞれから由来した陽イオン全体を意味する。
【0033】
一実施形態において、偏光板は、下記式1の色相値asの変化量の絶対値が1.5以下、例えば、1.2以下、例えば、0.9乃至1.2で、下記式2の色相値bsの変化量の絶対値が4以下、例えば、3.6以下、例えば、2.5乃至3.6であってもよい。前記範囲で、偏光板の高温においても高い信頼性を有することができる。
【0034】
[式1]
色相値asの変化量=|asII-asI|
(前記式1において、asIは、偏光板の初期色相値asであり、
asIIは、偏光板を105℃で500時間放置した後の偏光板の色相値asである。)
【0035】
[式2]
色相値bsの変化量=|bsII-bsI|
(前記式2において、bsIは、偏光板の初期色相値asで、
bsIIは、偏光板を105℃で500時間放置した後の偏光板の色相値asである。)
【0036】
一実施形態において、偏光板は、下記式3における偏光度の変化量の絶対値が0.05%以下、例えば、0%乃至0.05%、0.01%乃至0.04%になってもよい。前記範囲で、偏光板の高温での信頼性に優れ、高温で長期間放置された後にも高品質な画面を実現することができる。
【0037】
[式3]
偏光度の変化量=|PII-PI|
(前記式3において、PIは、偏光板の初期偏光度(単位:%)で、
PIIは、偏光板を105℃で500時間放置した後の偏光板の偏光度(単位:%)である。)
【0038】
一実施形態において、偏光板は、下記式4における光透過率の変化量の絶対値が0.5%以下、例えば、0%乃至0.5%、0.3%乃至0.4%になってもよい。前記範囲で、偏光板の高温での信頼性に優れ、高温で長期間放置された後にも高品質な画面を実現することができる。
【0039】
[式4]
光透過率の変化量=|TII-TI|
(前記式4において、TIは、偏光板の初期光透過率(単位:%)で、
TIIは、偏光板を105℃で500時間放置した後の偏光板の光透過率(単位:%)である。)
【0040】
前記色相値asの変化量、色相値bsの変化量、偏光度の変化量及び光透過率の変化量は、主に偏光子によって決定され、保護層は、これらに実質的に影響を与えない。
【0041】
以下、まず、偏光子に対して詳細に説明する。
【0042】
偏光子は、線形光吸収型偏光子であって、入射された光のうち一方向の光のみを透過させ、一方向に対して垂直方向の光は吸収させることによって偏光機能を提供することができる。
【0043】
偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム偏光子である。ここで、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール樹脂自体のみならず、ポリビニルアルコールの誘導体樹脂を含むこともできる。例えば、偏光子は、ポリビニルアルコールの誘導体樹脂を含んだり、ポリビニルアルコールの誘導体樹脂のみからなるポリビニルアルコール系フィルムを備える偏光子であってもよい。
【0044】
一実施形態において、ポリビニルアルコールの誘導体は、親水性官能基及び疎水性官能基を含有する。疎水性官能基は、ポリビニルアルコールに存在する親水性官能基である水酸基(OH基)以外に追加的に存在する。疎水性官能基は、ポリビニルアルコール誘導体樹脂の主鎖及び側鎖のうち1種以上に存在し得る。前記「主鎖」は、前記ポリビニルアルコール誘導体の主な骨格を形成する部分を意味し、前記「側鎖」は、前記主鎖に連結された骨格を意味する。好ましくは、疎水性官能基は、ポリビニルアルコール誘導体の主鎖に存在し得る。
【0045】
親水性官能基及び疎水性官能基が導入されたポリビニルアルコール誘導体は、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、酢酸イソプロフェニルなどのビニルエステル1種又は2種以上の単量体と、疎水性官能基を提供する単量体とを重合して製造されてもよい。好ましくは、前記ビニルエステル単量体は、酢酸ビニルを含むことができる。前記疎水性官能基を提供する単量体は、エチレン、プロピレンなどを含む炭化水素の反復単位を提供する単量体を含むことができる。
【0046】
ポリビニルアルコール系フィルムは、軟化点が66℃乃至70℃、例えば、67℃乃至69℃になってもよい。前記範囲内であれば、延伸工程で溶融及び破断することがなく、及び本発明の偏光子を容易に形成することができる。
【0047】
ポリビニルアルコール系フィルムは、フィルムの長さ方向(machine direction)に測定された引張強度が95MPa乃至105MPa、好ましくは97MPa乃至99MPaになってもよい。前記範囲で、ポリビニルアルコール系フィルムは、延伸工程で溶融及び破断がなく、ポリビニルアルコール分子鎖が効果的に配向されることによって偏光度が高くなり得ると共に、本発明の偏光子を容易に形成することができる。ポリビニルアルコール系フィルムの引張強度は、25℃でUTM(Universal Testing Machine)を用いてASTM D882規格で測定されてもよい。
【0048】
ポリビニルアルコール系フィルムは、厚さが50μm以下、例えば、10μm乃至50μmになってもよい。前記範囲で、フィルムの延伸時、フィルムの溶融及び破断がないようにすることができる。
【0049】
ポリビニルアルコール系フィルムとしては、TS-#4500(以上、日本クラレイ社)PVAフィルムを使用できるが、これに制限されない。
【0050】
偏光子は、二色性物質を含有する。具体的には、二色性物質は、偏光子に染着してもよい。二色性物質は、ヨード系物質又は非ヨード系物質であって、アゾ染料などの二色性染料を含むことができる。一般に、偏光子は、ヨード系物質を含有する偏光子をヨード系偏光子として、二色性染料を含有する偏光子を染料系偏光子として区分することができる。必ずしもそうではないが、ヨード系偏光子は、染料系偏光子と比べたとき、ヨード系物質が高温及び/又は高温高湿で分解されるためI2物質を容易に発生させ、これは、可視光領域での不適切な吸収を通じて色相の変化を誘発する原因となる。
【0051】
本発明は、著しく低い含有量で金属陽イオン、特に、亜鉛陽イオン及びナトリウム陽イオンを含むことによって、偏光子の製造後に亜鉛及びナトリウムの析出がなく、高温で長期間放置した後、偏光度の変化率及び光透過率の変化率などで信頼性に優れ、高温で長期間放置した後、色相値as及び色相値bsの全ての変化量が低いため高温での信頼性に優れ、偏光板に色相変化抑制層などを追加的に備えることなく、通常の偏光子用保護フィルムのみを偏光子に積層した場合にも高温での高い信頼性を確保することができる。
【0052】
これと関連して、偏光子は、亜鉛陽イオン及びナトリウム陽イオンを含み、偏光子内の亜鉛陽イオンに対するナトリウム陽イオンの比率は0.1乃至0.96で、亜鉛陽イオンとナトリウム陽イオンとの総和は500ppm乃至1500ppmである。
【0053】
ここで、「比率」は、上述した方法によって偏光子で測定された亜鉛陽イオン及びナトリウム陽イオンに基づいて計算された値であって、亜鉛陽イオン及びナトリウム陽イオンのそれぞれの偏光子中のそれぞれの含有量(重量)に基づいて計算された値である。
【0054】
本発明では、偏光子の高温及び/又は高温高湿での信頼性を高めるために、通常添加される亜鉛陽イオン、及び偏光子の製造過程における染着、延伸、架橋、及び/又は補色工程で通常使用されるカリウム陽イオン以外に、ナトリウム陽イオンを追加的に含ませ、前記比率及び前記陽イオンの総和を調節することによって本発明の効果を得た。
【0055】
偏光子を高温で加熱する場合、ナトリウム陽イオンは、偏光子内のI3
-又はI5
-との間で結合し、安定的なキレート化合物を形成することによってI5
-又はI3
-がI3
-又はI-に変化することを抑制したり、ポリビニルアルコール系物質と安定的な化合物を形成したり、ホウ酸とのイオン結合によって耐久性の改善に有利になり得ると考えられるが、これに制限されない。
【0056】
前記比率が0.1未満であると、ナトリウム塩から得ようとする効果が微々たるものとなり、黄変の発生などの問題があり得る。前記比率が0.96を超えると、光透過率の変化量が高く、耐久性が低く、亜鉛陽イオンとの相乗効果が減少するという問題があり得る。例えば、前記比率は、0.2乃至0.96、0.3乃至0.96、0.5乃至0.96、0.6乃至0.96、0.65乃至0.96、0.85乃至0.96, 0.8乃至0.96になってもよい。
【0057】
偏光子中のナトリウム陽イオンと亜鉛陽イオンとの総和は、500ppm乃至1500ppmである。本発明者は、偏光子中のナトリウム陽イオンと亜鉛陽イオンとの間の比率が0.1乃至0.96であっても、ナトリウム陽イオンと亜鉛陽イオンとの総和が500ppm乃至1500ppmになったときに本発明の全ての効果を実現できることを確認した。前記総和が500ppm未満であると、高温で放置した後、黄変が発生しやすくなり、金属塩の添加による効果の低下などの問題があり得る。前記総和が1500ppmを超えると、亜鉛及びナトリウムが析出して、偏光板の外観が悪くなるという問題があり得る。例えば、ナトリウム陽イオンと亜鉛陽イオンとの総和は、500ppm乃至1300ppm、500ppm乃至1200ppm、500ppm乃至1000ppm、500ppm乃至950ppm、500ppm乃至900ppmになってもよい。
【0058】
一実施形態において、偏光子中のナトリウム陽イオンは、100ppm乃至1000ppm、例えば、200ppm乃至500ppm、200ppm乃至400ppm、200ppm乃至300ppmで含まれてもよい。前記範囲で、偏光子は、本発明の比率及び総和に容易に到達することができ、高温で高い信頼性を有することができる。
【0059】
一実施形態において、偏光子中の亜鉛陽イオンは、200ppm以上1500ppm未満、例えば、200ppm乃至1000ppm、200ppm乃至900ppm、200ppm乃至700ppm、200ppm乃至600ppm、200ppm乃至500ppm、200ppm乃至400ppmで含まれてもよい。前記範囲で、偏光子は、本発明の比率及び総和に容易に到達することができ、高温で高い信頼性を有することができる。
【0060】
ナトリウム陽イオンと亜鉛陽イオンの全体は、ppmを基準にして偏光子に含有された全体の金属陽イオン中に8%以上、例えば、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、特に、8%乃至20%又は10%乃至20%で含有されてもよい。前記範囲で、本発明の効果を良好に得ることができる。前記「金属陽イオン」は、偏光子に含有されたアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、遷移後金属、半金属のそれぞれから由来した陽イオンの総和を意味する。
【0061】
ナトリウム陽イオン及び亜鉛陽イオンのうち1種以上は、偏光子の表面のうち少なくとも一部に存在したり、偏光子内に存在することもある。好ましくは、ナトリウム陽イオン及び亜鉛陽イオンのうち1種以上が偏光子内に存在することによって、信頼性の提供期間を容易に延長させることができる。
【0062】
ナトリウム陽イオンは、偏光子の製造工程中に投入される物質から由来し得る。例えば、ナトリウム陽イオンは、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、及びリン酸ナトリウム(Na3PO4)のうち1種以上から由来し得る。例えば、ナトリウム陽イオンが硫酸ナトリウムから由来することによって、本発明の前記比率及び総和に容易に到達することができる。
【0063】
亜鉛陽イオンは、偏光子の製造工程中に投入される物質から由来し得る。例えば、亜鉛陽イオンは、硫酸亜鉛(ZnSO4)、塩化亜鉛(ZnCl2)、ヨウ化亜鉛(ZnI2)、硝酸亜鉛(Zn(NO3)2)、及び酢酸亜鉛(Zn(CH3CO2)2)のうち1種以上から由来し得る。亜鉛陽イオンが硫酸亜鉛から由来することによって、本発明の前記比率及び総和に容易に到達することができる。
【0064】
偏光子は、カリウム陽イオン(K+)をさらに含むことができる。カリウム陽イオンは、偏光子の高温での信頼性をさらに高めることを助けることができる。カリウム陽イオンとナトリウム陽イオンは、同一にアルカリ金属陽イオンであって、偏光子中に適正な比率で含有されることによって、本発明の効果をより容易に実現することができる。
【0065】
一実施形態において、カリウム陽イオンに対するナトリウム陽イオンの比率は、0.02乃至0.15、例えば、0.03乃至0.10、0.05乃至0.10、0.05乃至0.09、0.05乃至0.08になってもよい。前記範囲で、本発明の効果をより容易に実現することができる。ここで、「比率」は、上述した方法によって偏光子内で測定された(例えば、ICP-OES)ナトリウム陽イオン及びカリウム陽イオンに基づいて計算された値であって、ナトリウム陽イオン及びカリウム陽イオンのそれぞれの重量に基づいて計算された値である。
【0066】
一実施形態において、カリウム陽イオンとナトリウム陽イオンとの総和は、3000ppm乃至10000ppm、例えば、3000ppm、4000ppm、5000ppm、6000ppm、7000ppm、8000ppm、9000ppm、10000ppm、3000ppm 乃至8000ppm、4000ppm乃至6000ppmになってもよい。前記範囲で、本発明の効果をより容易に実現することができる。
【0067】
一実施形態において、カリウム陽イオンに対するナトリウム陽イオンと亜鉛陽イオンとの総和の比率は、0.1乃至0.2、例えば、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、 0.1以上0.2未満、0.1乃至0.15になってもよい。前記範囲で、本発明の効果をより容易に実現することができる。ここで、「比率」は、上述した方法によって偏光子内で測定された(例えば、ICP-OES)ナトリウム陽イオン、亜鉛陽イオン及びカリウム陽イオンに基づいて計算された値であって、それぞれの陽イオンの重量に基づいて計算された値である。
【0068】
ナトリウム陽イオン、亜鉛陽イオン及びカリウム陽イオンの全体は、ppmを基準にして偏光子に含有された全体の金属陽イオン中に90%以上、例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、特に95%乃至100%で含有されてもよい。前記範囲で、本発明の効果がうまく実現され得る。前記「金属陽イオン」は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、遷移後金属、半金属のそれぞれから由来した陽イオンの総和を意味する。
【0069】
偏光子は、ホウ素をさらに含むことができる。ホウ素は、ナトリウム陽イオンに対して適正な含有量で含まれることによって、本発明の効果を実現することを助けることができる。
【0070】
一実施形態において、ホウ素陽イオン(B3+)に対するナトリウム陽イオン(Na+)の比率は、0.01乃至0.10、例えば、0.01乃至0.03になってもよい。前記範囲で、本発明の効果をより容易に実現することができる。ここで、「比率(Na+/B3+)」は、上述した方法によって偏光子内で測定されたナトリウム陽イオン及びホウ素陽イオンに基づいて計算された値であって、ナトリウム陽イオン及びカリウム陽イオンのそれぞれの重量に基づいて計算された値である。
【0071】
一実施形態において、ホウ素陽イオンとナトリウム陽イオンとの総和は、15000ppm乃至30000ppm、例えば、20000ppm乃至25000ppmになってもよい。前記範囲で、本発明の効果をより容易に実現することができる。
【0072】
一実施形態において、偏光子中のホウ素陽イオン(B3+)は、10000ppm乃至30000ppm、例えば、20000ppm乃至25000ppmになってもよい。前記範囲で、本発明の効果をより容易に実現することができる。
【0073】
偏光子は、厚さが20μm以下、例えば、0μmを超えて30μm以下、例えば、10μm乃至25μmになってもよい。前記範囲で、偏光子が偏光板に使用され得る。
【0074】
以下、偏光子の製造方法を詳細に説明する。
【0075】
偏光子は、染着工程、延伸工程、架橋工程及び補色工程を含む製造方法によって製造されてもよい。一実施形態において、偏光子は、染着工程、延伸工程、架橋工程、及び補色工程の順に製造されてもよい。このとき、染着工程及び延伸工程の順序は変更されてもよく、延伸工程及び架橋工程の順序は変更されてもよい。
【0076】
本発明において、ナトリウム陽イオン及び亜鉛陽イオンは、偏光子の製造工程のうち染着工程、延伸工程、架橋工程又は補色工程に使用される物質から由来し得る。好ましくは、ナトリウム陽イオン及び亜鉛陽イオンは、偏光子の製造工程のうち補色工程に使用される物質から由来し得る。偏光子中のナトリウム陽イオン及び亜鉛陽イオンの含有量及び比率は、偏光子の製造工程全体及び/又は補色工程で使用される物質の含有量を調節することによって実現され得る。
【0077】
[染着工程]
染着工程は、ポリビニルアルコール系フィルムを二色性物質含有染着槽で処理することを含む。染着工程では、ポリビニルアルコール系フィルムを二色性物質含有染着槽で浸漬させるようになる。二色性物質含有染着槽は、二色性物質及びホウ素化合物を含む水溶液を含む。染着槽は、二色性物質とホウ素化合物を共に含むことによって、ポリビニルアルコール系フィルムを染着させ、後述する延伸条件で延伸された場合にも、ポリビニルアルコール系フィルムの破断がなくなり得る。
【0078】
二色性物質は、ヨードであって、ヨウ化カリウム、ヨウ化水素、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、及びヨウ化銅のうち1種以上を含むことができる。二色性物質は、染着槽、好ましくは、染着溶液中に0.5mol/ml乃至10mol/ml、例えば、0.5mol/ml乃至5mol/mlで含まれてもよい。前記範囲で、均一な染着が可能であるという効果を得ることができる。
【0079】
ホウ素化合物は、ポリビニルアルコール系フィルムの延伸時、ポリビニルアルコール系フィルムの溶融及び破断をなくすことを助けることができる。ホウ素化合物は、染着工程以降に実施される延伸工程でポリビニルアルコール系フィルムを高温及び高延伸比で延伸した場合にも、フィルムの溶融及び破断をなくすことを助けることができる。
【0080】
ホウ素化合物は、ホウ酸及びホウ砂のうち1種以上を含むことができる。ホウ素化合物は、染着槽、好ましくは、染着水溶液中に0.1重量%乃至5重量%、好ましくは、0.3重量%乃至3重量%で含まれてもよい。前記範囲で、延伸工程で溶融及び破断がなく、高信頼性を達成するという効果があり得る。
【0081】
染着溶液の温度は、20℃乃至50℃、具体的には25℃乃至40℃にすることが好ましい場合がある。染着工程では、ポリビニルアルコール系フィルムを染着槽内で30秒乃至120秒、具体的には40秒乃至80秒間浸漬させることによって行われてもよい。
【0082】
[延伸工程]
延伸工程は、染着したポリビニルアルコール系フィルムを延伸比5.7倍以上、例えば、6倍乃至7倍、延伸温度57℃以上、例えば、57℃乃至65℃で延伸することを含む。従来のポリビニルアルコール系フィルムは、上述した延伸比と延伸温度で延伸する場合、ポリビニルアルコール系フィルムの溶融及び/又は破断があるので偏光子を製造することはできない。
【0083】
延伸工程は、湿式延伸及び乾式延伸のうちいずれか一つで行われる。好ましくは、延伸工程でホウ素化合物を適用するために、延伸工程は湿式延伸を含む。湿式延伸は、ホウ素化合物を含む水溶液中でポリビニルアルコール系フィルムを機械的方向に一軸延伸することを含む。
【0084】
ホウ素化合物は、ホウ酸及びホウ砂のうち1種以上、好ましくは、ホウ酸を含むことができる。ホウ素化合物は、延伸槽、好ましくは、延伸水溶液中に0.5重量%乃至10重量%、好ましくは、1重量%乃至5重量%で含まれてもよい。前記範囲で、延伸工程で溶融及び破断がなく、高信頼性を達成するという効果があり得る。
【0085】
[架橋工程]
架橋工程は、延伸工程処理されたポリビニルアルコール系フィルムで二色性物質の吸着を強くするために処理される。架橋工程で使用する架橋溶液は、ホウ素化合物を含む。ホウ素化合物は、上述した二色性物質の吸着を強くしながら偏光子を熱衝撃下で放置した場合にも、信頼性を改善することを助けることができる。
【0086】
ホウ素化合物は、ホウ酸及びホウ砂のうち1種以上を含むことができる。ホウ素化合物は、架橋槽、好ましくは、架橋水溶液中に0.5重量%乃至10重量%、好ましくは、1重量%乃至5重量%で含まれてもよい。前記範囲で、延伸工程で溶融及び破断がなく、高信頼性を達成するという効果があり得る。架橋槽の温度は、20℃乃至50℃、具体的には、25℃乃至40℃が好ましい場合がある。架橋工程では、ポリビニルアルコール系フィルムを架橋槽内で30秒乃至120秒、具体的には40秒乃至80秒間浸漬させることによって行われ得る。
【0087】
[補色工程]
補色工程は、ポリビニルアルコール系フィルムの耐久性を良くし、本発明のナトリウム陽イオンと亜鉛陽イオンとの間の比率及び総和に容易に到逹することができる。
【0088】
補色工程は、補色槽にポリビニルアルコール系フィルムを投入して放置することによって行われ得る。補色槽は、ナトリウム陽イオン供給源及び亜鉛陽イオン供給源を含むことができる。結局、ナトリウム陽イオンと亜鉛陽イオンは、偏光子の製造時、同一の工程によって偏光子に含まれ得る。
【0089】
ナトリウム陽イオン供給源は、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムのうち1種以上になってもよい。好ましくは、ナトリウム陽イオンが硫酸ナトリウムから由来することによって、本発明の前記比率及び総和に容易に到達することができる。
【0090】
亜鉛陽イオン供給源は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硝酸亜鉛、及び酢酸亜鉛のうち1種以上になってもよい。好ましくは、亜鉛陽イオンが硫酸亜鉛から由来することによって、本発明の前記比率及び総和に容易に到達することができる。
【0091】
ナトリウム陽イオン供給源は、補色槽中に0.01重量%乃至5重量%、例えば、0.02重量%乃至3重量%で含有されてもよい。前記範囲で、本発明の偏光子に容易に到達することができる。
【0092】
亜鉛陽イオン供給源は、補色槽中に0.01重量%乃至5重量%、例えば、0.02重量%乃至3重量%で含有されてもよい。前記範囲で、本発明の偏光子に容易に到達することができる。
【0093】
補色槽は、ヨウ化カリウムをさらに含むことができる。補色槽中には、ヨウ化カリウムが0重量%を超えて10重量%以下、好ましくは、1重量%乃至5重量%で含まれてもよい。前記範囲で、本発明の偏光子に容易に到達することができる。
【0094】
染着工程の処理前に、ポリビニルアルコール系フィルムの水洗工程及び膨潤工程のうち1種以上をさらに含むことができる。
【0095】
水洗工程は、ポリビニルアルコール系フィルムを水で洗浄する工程であって、ポリビニルアルコール系フィルムに付いている異物を除去する。
【0096】
膨潤工程は、ポリビニルアルコール系フィルムを所定温度範囲の膨潤槽で浸漬させることによって、二色性物質の染着及び延伸をより容易に行うことができる。膨潤工程は、15℃乃至35℃、好ましくは、20℃乃至30℃で30秒乃至50秒間処理することを含むことができる。
【0097】
本発明の偏光板は、上述した偏光子を含むことによって、色相変化抑制層などを含まなく、通常の偏光子保護フィルムのみを備えた場合にも、高温で放置した後、色相値as及び色相値bsの全ての変化量が低く、黄変の発生がないので、高温での信頼性が優秀になり得る。
【0098】
図1を参照すると、偏光板は、偏光子10、偏光子10の一面に積層された第1保護層20、及び偏光子10の他の一面に積層された第2保護層30を含むことができる。
【0099】
図2を参照すると、偏光板は、偏光子10、偏光子10の一面に第1接着層40を媒介にして積層された第1保護層20、及び偏光子10の他の一面に第2接着層50を媒介にして積層された第2保護層30を含むことができる。
【0100】
偏光子10は、前記で説明したものと実質的に同一である。
【0101】
(第1保護層20及び第2保護層30)
第1保護層は、偏光子の上部面に積層され、偏光子を保護し、偏光板の機械的強度を高めることができる。第1保護層は、光学的に透明な保護フィルムを含むことができる。
【0102】
保護フィルムは、光学的に透明な、樹脂、オリゴマー、及びモノマーのうち1種以上の有機成分を含む保護フィルム用組成物を溶融及び押出することによって形成され得る。必要な場合は、延伸工程をさらに追加することもできる。前記有機成分は、トリアセチルセルロースなどを含むセルロースエステル系、非晶性環状ポリオレフィン(cyclic olefin polymer、COP)などを含む環状ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを含むポリエステル系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリアミド系、ポリイミド系、非環状ポリオレフィン系、ポリメチルメタクリレートなどを含むポリアクリレート系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂のうち一つ以上を含むことができる。
【0103】
一実施形態において、保護層は、単一層又は多重層のフィルム積層体であってもよい。
【0104】
一実施形態において、保護層は、95重量%以上の有機成分を含む組成物で形成されてもよい。
【0105】
第1保護層の厚さは、5μm乃至200μm、具体的には10μm乃至100μm、さらに具体的には60μm乃至100μmになってもよい。前記範囲で、第1保護層が偏光板に使用され得る。
【0106】
第1保護層の上部面には、機能性コーティング層、例えば、ハードコーティング層、耐指紋性層、反射防止層などがさらに形成されてもよい。
【0107】
第2保護層は、偏光子の下部面に積層され、偏光子を保護し、偏光板の機械的強度を高めることができる。第2保護層は、第1保護層と比べたとき、同一又は異種の樹脂で形成されたフィルムを含むことができる。
【0108】
一実施形態において、第1保護層がポリエチレンテレフタレート(PET)などを含むポリエステル系樹脂フィルムであるとき、第2保護層は、非晶性環状ポリオレフィン(cyclic olefin polymer、COP)などを含む環状ポリオレフィン系樹脂又はトリアセチルセルロースなどを含むセルロースエステル系樹脂フィルムであってもよい。
【0109】
他の具体例において、第1保護層がトリアセチルセルロースなどを含むセルロースエステル系樹脂フィルムであるとき、第2保護層は、トリアセチルセルロースなどを含むセルロースエステル系樹脂フィルムであってもよい。
【0110】
第2保護層は、第1保護層と比べたとき、同一又は異種の厚さを有することができる。
【0111】
図1に示すように、第1保護層及び第2保護層は、それぞれ偏光子にコーティング、塗布、硬化などによって直接形成されてもよい。しかし、
図2に示すように、第1保護層及び第2保護層は、第1接着層40及び第2接着層50によって偏光子に積層されてもよい。
【0112】
第1接着層40及び第2接着層50は、それぞれ当業者に知られている通常の偏光板用接着剤によって形成されてもよい。例えば、接着層は、水系接着剤又は光硬化性接着剤によって形成されてもよい。
【0113】
水系接着剤は、ポリビニルアルコール系接着樹脂、架橋剤などを含むことができる。
【0114】
光硬化性接着剤は、エポキシ系化合物、及び(メタ)アクリル系化合物のうち1種以上及び開始剤を含むことができる。前記開始剤は、光ラジカル開始剤、及び光陽イオン開始剤のうち1種以上、好ましくは、光ラジカル開始剤と光陽イオン開始剤との混合物を含むことができる。光硬化性接着剤は、酸化防止剤、顔料などの通常の添加剤をさらに含むことができる。
【0115】
第1接着層40及び第2接着層50は、それぞれ厚さが0.05μm乃至10μmになってもよい。前記範囲で、第1接着層40及び第2接着層50を光学表示装置に使用することができる。
【0116】
以下、本発明の一実施例に係る光学表示装置を説明する。
【0117】
本発明の光学表示装置は、本発明の偏光板を含む。
【0118】
光学表示装置は、液晶表示装置、及び発光表示装置のうち一つ以上を含むことができる。
【0119】
発光表示装置は、発光素子として、有機又は有-無機発光素子を含み、LED(light emitting diode)、OLED(organic light emitting diode)、QLED(quantum dot light emitting diode)、蛍光体などの発光物質を含む素子を意味し得る。発光表示装置は、発光素子、及び発光素子から出射される光出射面に積層される本発明の偏光板を含むことができる。
【0120】
液晶表示装置は、バックライトユニット、液晶パネル、バックライトユニットと液晶パネルの一面との間に配置される光源側偏光板、及び液晶パネルの他の一面に配置される視認側偏光板を含み、光源側偏光板及び視認側偏光板のうち1種以上は、本発明の偏光板を含むことができる。
【0121】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成及び作用をさらに詳細に説明する。ただし、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものに過ぎなく、如何なる意味でも、これによって本発明が制限されると解釈することはできない。
【実施例0122】
(実施例1)
(1)偏光子の製造
【0123】
25℃の水で水洗したポリビニルアルコールフィルム(TS-#4500、日本Kuraray社、主鎖に疎水性官能基を含有する。厚さ:45μm)を30℃の水の膨潤槽で膨潤処理した。
【0124】
膨潤槽を通過した前記フィルムを、ヨウ化カリウム1mol/ml及びホウ酸1重量%を含む水溶液を含有する30℃の染着槽で65秒間処理した。染着槽を通過した前記フィルムを、ホウ酸3重量%を含有する60℃の水溶液である湿式延伸槽で前記フィルムのMD一軸に6倍の延伸比で延伸した。前記湿式延伸槽を通過した前記フィルムを、ホウ酸3重量%を含有する25℃の水溶液を含有する架橋槽で65秒間処理した。
【0125】
架橋槽を通過した前記フィルムを、ヨウ化カリウム(KI)5重量%、硫酸ナトリウム(Na2SO4)0.5重量%、及び硫酸亜鉛(ZnSO4)1.0重量%を含有する30℃の水溶液である補色液を含む補色槽で10秒間処理し、洗浄及び乾燥させることによって偏光子(厚さ:20μm)を製造した。
【0126】
(2)偏光板の製造
前記製造した偏光子の両面に水系接着剤(ポリビニルアルコール系接着樹脂を含有する。)を塗布し、偏光子の上部面にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:80μm、Toyobo社)を合わせ、偏光子の下部面にトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:40μm、Konica社)を合わせることによって偏光板を製造した。
【0127】
(実施例2乃至実施例3)
実施例1において、染着槽、延伸槽、及び架橋槽での各成分の含有量を変更し、補色槽中の各成分の濃度を変更したことを除いては、実施例1と同一の方法で偏光子及び偏光板を製造した。
【0128】
(比較例1)
実施例1において、補色工程中に、ヨウ化カリウム5重量%、硫酸ナトリウム0重量%、及び硫酸亜鉛0重量%を含有する30℃の水溶液である補色液を含む補色槽で10秒間処理した点を除いては、実施例1と同一の方法で偏光子及び偏光板を製造した。
【0129】
(比較例2乃至比較例7)
実施例1において、染着槽、延伸槽、及び架橋槽での各成分の含有量を変更し、補色槽中の各成分の濃度を変更したことを除いては、実施例1と同一の方法で偏光子及び偏光板を製造した。
【0130】
実施例と比較例で製造した偏光板に対して下記表1の物性を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0131】
(1)偏光子中の陽イオンの濃度(単位:ppm):5100 series(Agilent社)を用いて、ICP-OES測定方法によって実施例及び比較例で製造された偏光子に対して測定された。
【0132】
(2)色相値as及び色相値bsの変化量(単位:なし):偏光板を偏光子のMD×TD(3cm×3cm)に切断し、アクリル系粘着剤(SDI社)を用いてガラス板に粘着させることによって試験片を製造した。製造された試験片に対して、色相値as及び色相値bsをV-7100(Jasco社)を用いて測定した。製造された試験片を105℃で500時間にわたって放置した後、直ぐ前記と同一の方法で色相値as及び色相値bsを測定した。前記式1及び式2を用いて、色相値as及び色相値bsの変化量をそれぞれ測定した。
【0133】
(3)偏光度の変化量(単位:%):偏光板を偏光子のMD×TD(3cm×3cm)に切断し、アクリル系粘着剤(SDI社)を用いてガラス板に粘着させることによって試験片を製造した。製造された試験片に対して、偏光度をV-7100(Jasco社)を用いて測定した。製造された試験片を105℃で500時間にわたって放置した後、直ぐ前記と同一の方法で偏光度を測定した。前記式3を用いて偏光度の変化量を測定した。
【0134】
(4)光透過率の変化量(単位:%):偏光板を偏光子のMD×TD(3cm×3cm)に切断し、アクリル系粘着剤(SDI社)を用いてガラス板に粘着させることによって試験片を製造した。製造された試験片に対して、光透過率をV-7100(Jasco社)を用いて測定した。製造された試験片を105℃で500時間にわたって放置した後、直ぐ前記と同一の方法で偏光度を測定した。前記式4を用いて光透過率の変化量を測定した。
【0135】
(5)黄変:偏光板を偏光子のMD×TD(10cm×10cm)に切断し、粘着剤がない状態で又は粘着剤を用いてガラス板に付着させ、105℃で500時間放置した後、肉眼で判定した。偏光板の黄色が視認されない場合はO、偏光板の黄色が視認される場合はXと評価した。
【0136】
(6)外観(析出):偏光子を製造した直後に、肉眼で確認した。白色物質が析出されることを確認することができる。該当の析出された物質は、ICP-OESで確認した結果、亜鉛及びナトリウムであると判断された。物質が析出されない場合はO、白色物質が析出される場合はXと評価した。
【0137】
【表1】
*ガラス板及びアクリル系粘着剤は、色相値as、色相値bs、偏光板、及び光透過率に影響を与えない。
【0138】
前記表1に示すように、本発明の偏光板は、偏光子から亜鉛及びナトリウムのうち1種以上の析出がなく、高温で長期間放置した後、色相値as、色相値bs、偏光度及び光透過率の全ての変化量が低く、黄変の発生もないので、高温での信頼性に優れていた。
【0139】
その一方で、偏光子中に金属陽イオン(亜鉛陽イオンとナトリウム陽イオンとの和)の含有量が過度に高い比較例4及び比較例6の場合は、偏光子に亜鉛及びナトリウムの析出があるという問題があった。亜鉛陽イオン及びナトリウム陽イオンのうち1種以上を含有しない比較例1乃至比較例3の場合は、析出の問題はないが、高温での信頼性が良くなかった。亜鉛陽イオン及びナトリウム陽イオンを全て含有したとしても、本発明の構成を満足しない比較例4乃至比較例7の場合は、高温での信頼性が良くなかった。
【0140】
本発明の単純な変形及び変更は、この分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。