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特開2024-12800環状ウレア化合物製造用触媒成形物、及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012800
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】環状ウレア化合物製造用触媒成形物、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/10 20060101AFI20240124BHJP
   B01J 38/02 20060101ALI20240124BHJP
   B01J 23/92 20060101ALI20240124BHJP
   C07D 233/34 20060101ALI20240124BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
B01J23/10 Z
B01J38/02
B01J23/92 Z
C07D233/34
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114529
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮太郎
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA10
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA05B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169CB38
4G169DA06
4G169EB18Y
4G169EC03Y
4G169FC05
4G169FC07
4G169FC08
4G169GA01
4H039CA42
4H039CG10
(57)【要約】
【課題】 従来公知の触媒については、比較的低温での加熱再生処理が困難であるという課題、及び触媒基材を必須とする点で、二酸化炭素を利用した環状ウレア化合物の製造方法への適合性が悪いという課題があった。
【解決手段】
酸化セリウムを含む触媒と、シリカゾル、及びアルミナ化合物からなる群より選ばれる無機バインダとからなる環状ウレア化合物製造用触媒成形物であって、前記無機バインダの含有量が、酸化セリウム 100重量部に対して、15~60重量部であって、触媒成形物の形状が、直径0.1~5mmで長さが0.1~10mmの円柱状、又は直径が0.1~5mmの球状である環状ウレア化合物製造用触媒成形物を用いる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化セリウムを含む触媒と、シリカゾル、及びアルミナ化合物からなる群より選ばれる無機バインダとからなる環状ウレア化合物製造用触媒成形物であって、前記無機バインダの含有量が、酸化セリウム 100重量部に対して、15~60重量部であって、触媒成形物の形状が、直径0.1~5mmで長さが0.1~10mmの円柱状、又は直径が0.1~5mmの球状である環状ウレア化合物製造用触媒成形物。
【請求項2】
前記無機バインダの含有量が、酸化セリウム 100重量部に対して、15~25重量部である、請求項1に記載の環状ウレア化合物製造用触媒成形物。
【請求項3】
前記のシリカゾル、及びアルミナ化合物からなる群より選ばれる無機バインダが、NH で安定化されたシリカゾルからなる無機バインダである、請求項1に記載の環状ウレア化合物製造用触媒成形物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の環状ウレア化合物製造用触媒成形物に、アミノ基を有するカルバミン酸化合物を接触させることを特徴とする環状ウレア化合物の製造方法であって、接触させるときの温度が60~150℃の範囲であることを特徴とする、環状ウレア化合物の製造方法。
【請求項5】
前記の[4]の製造方法で使用した環状ウレア化合物製造用触媒成形物を、空気雰囲気下、300℃~500℃で加熱することを特徴とする、環状ウレア化合物製造用触媒成形物の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ウレア化合物の製造用触媒成形物、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因の一つとして、温室効果ガスの排出が挙げられる。温室効果ガスとしては、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、フロン類(CFCs等)等が挙げられる。温室効果ガスの中でも、二酸化炭素の影響は大きく、二酸化炭素(火力発電所、製鉄所等のプラントから排出される二酸化炭素等)の削減が緊急の課題となっている。
【0003】
前記課題の解決策の一つとして、排ガス二酸化炭素の産業素材への転換が挙げられ、例えば二酸化炭素と、ジアミン化合物を高温高圧下で反応させて、環状ウレア化合物を合成する方法が報告されている(例えば、非特許文献1)。また、別の解決策として、溶媒及び酸化セシウム存在下、二酸化炭素とジアミン化合物を反応させて、環状ウレア化合物を合成する方法が報告されている(例えば、非特許文献2)。
【0004】
非特許文献1や非特許文献2で報告される環状ウレア化合物の合成において、プラントから排出される二酸化炭素を原料として使用すれば、二酸化炭素の削減が期待できる。
【0005】
二酸化炭素を利用した環状ウレア化合物の製造方法については、特許文献1等で報告されている。当該製造法に利用される酸化セリウム触媒については、特許文献2等で報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-113158号公報
【特許文献2】国際公開2020/03135号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Green Chemistry, 12, 1811-1816(2010)
【非特許文献2】Green Chemistry, 15, 1567-1577(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の触媒については、比較的低温での加熱再生処理が困難であるという課題があった。
【0009】
特許文献2の触媒については、触媒基材を必須とする点で、二酸化炭素を利用した環状ウレア化合物の製造方法への適合性が悪いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、鋭意検討を重ねた結果、下記の環状ウレア化合物製造用触媒成形物が上記課題を解決することを見出し、本願発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示す環状ウレア化合物製造用触媒成形物、及びその用途に係る。
【0012】
[1]
酸化セリウムを含む触媒と、シリカゾル、及びアルミナ化合物からなる群より選ばれる無機バインダとからなる環状ウレア化合物製造用触媒成形物であって、前記無機バインダの含有量が、酸化セリウム 100重量部に対して、15~60重量部であって、前記触媒成形物の形状が、直径0.1~5mmで長さが0.1~10mmの円柱状、又は直径が0.1~5mmの球状である環状ウレア化合物製造用触媒成形物。
【0013】
[2]
前記無機バインダの含有量が、酸化セリウム 100重量部に対して、15~25重量部である、前記の[1]に記載の環状ウレア化合物製造用触媒成形物。
【0014】
[3]
前記のシリカゾル、及びアルミナ化合物からなる群より選ばれる無機バインダが、NH で安定化されたシリカゾルからなる無機バインダである、前記の[1]に記載の環状ウレア化合物製造用触媒成形物。
【0015】
[4]
前記の[1]乃至[3]のいずれかに記載の環状ウレア化合物製造用触媒成形物に、アミノ基を有するカルバミン酸化合物を接触させることを特徴とする環状ウレア化合物の製造方法であって、接触させるときの温度が60~150℃の範囲であることを特徴とする、環状ウレア化合物の製造方法。
【0016】
[5]
前記の[4]の製造方法で使用した環状ウレア化合物製造用触媒成形物を、空気雰囲気下、200℃~500℃で加熱することを特徴とする、環状ウレア化合物製造用触媒成形物の再生方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来公知の触媒と比べて、低温での加熱再生処理が可能な触媒成形物を提供することができ、省エネで連続生産性に優れる環状ウレア化合物製造プロセスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明は以下に示す環状ウレア化合物製造用触媒成形物、及びその用途に係る。
【0020】
本発明の環状ウレア化合物製造用触媒成形物は、酸化セリウムを含む触媒と、シリカゾル、及びアルミナ化合物からなる群より選ばれる無機バインダとからなるものであって、前記無機バインダの含有量が、酸化セリウム 100重量部に対して、15~60重量部であって、形状が、直径0.1~5mmで長さが0.1~10mmの円柱状、又は直径が0.1~5mmの球状であることを特徴とする。
【0021】
前記環状ウレア化合物とは、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(3)
【0022】
【化1】
【0023】
(上記一般式中、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を示す。nは0~5の整数を示す。)
で示される環状ウレア化合物を例示することができる。
【0024】
当該一般式(3)で示される環状ウレア化合物については、下記一般式(2)
【0025】
【化2】
【0026】
(上記一般式中、R~R、及びnは、一般式(3)におけるR~R、及びnと同義である。)
で示される、アミノ基を有するカルバミン酸化合物と本発明の環状ウレア化合物製造用触媒成形物を接触させることで製造することができる。
【0027】
なお、前記一般式(2)で示されるアミノ基を有するカルバミン酸化合物は、下記一般式(1)
【0028】
【化3】
【0029】
(上記一般式中、R~R、及びnは、一般式(3)におけるR~R、及びnと同義である。)
で示されるジアミン化合物と二酸化炭素を接触させて反応させることにより製造することができる。
【0030】
上記の一般式(1)、(2)、及び(3)において、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0031】
前記の炭素数1~4のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、又はシクロブチル基等を例示することができる。
【0032】
上記のR~Rについては、触媒反応効率に優れる点で、各々独立して、水素原子、又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0033】
上記のnは、0~5の整数を示すが、触媒反応効率に優れる点で、0、1、2、又は3であることが好ましく、0、又は1であることがより好ましい。
【0034】
なお、上記の一般式(1)で示されるジアミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、又は1,6-ヘキサンジアミン等を例示することができる。これらのうち、エチレンジアミンが好ましい。
【0035】
上記の一般式(2)で示されるアミノ基を有するカルバミン酸化合物、及び一般式(3)で示される環状ウレア化合物については、当該一般式(1)で示されるジアミン化合物の誘導体として具体的に表すことができる。上記の一般式(2)で示されるアミノ基を有するカルバミン酸化合物については、エチレンジアミンカルバミン酸であることが好ましい。また、上記の一般式(3)で示される環状ウレア化合物については、2-イミダゾリジノンであることが好ましい。
【0036】
本発明の環状ウレア化合物製造用触媒成形物と接触させる一般式(2)で示されるアミノ基を有するカルバミン酸化合物については、反応効率に優れる点で、単離品又は高純度品であることが好ましいが、必ずしも単離品や高純度品である必要はない。なお、一般式(2)で示されるアミノ基を有するカルバミン酸化合物は、上記の一般式(1)で示されるジアミン化合物と二酸化炭素を接触、反応させて製造することができる。この際、一般式(2)で示されるアミノ基を有するカルバミン酸化合物は、前記のジアミン化合物、二酸化炭素、及び過剰反応が進んだジカルバミン酸化合物を含んだ生成物として得られる。本発明の環状ウレア化合物製造用触媒又は環状ウレア化合物製造用触媒成形物と接触させる一般式(2)で示されるアミノ基を有するカルバミン酸化合物については、このような混合物から単離精製されて高純度化されたものを用いることが好ましいが、前記のジアミン化合物、二酸化炭素、及び過剰反応が進んだジカルバミン酸化合物を含んだ混合物としてのものを用いることもできる。なお、前記のジアミン化合物については、後述する希釈媒体として利用することができ、省エネの観点で、希釈媒体として利用することが好ましい。
【0037】
本発明に用いられる酸化セリウムを含む触媒については、酸化セリウムを含有することを特徴とし、特に限定するものではないが、酸化セリウムとは異なる異種金属を含有していてもよい。
【0038】
前記の酸化セリウムについては、触媒活性に優れる点で、平均粒子径(D50)が1~300nmの範囲のものが好ましく、平均粒子径が5~250nmの範囲のものがより好ましく、平均粒子径が10~200nmの範囲のものがより好ましい。
【0039】
前記の平均粒子径(D50)については、特に限定するものではないが、例えば、一般的な電解放出形走査型電子顕微鏡(例えば、商品名:S4500、日立製作所製)を用いて形状観察したうえで、定量することができる。
【0040】
前記の酸化セリウムについては、特に限定するものではないが、酸化セリウム(IV)であることが好ましく、非特許文献(Green Chemistry,15,1567-1577(2013))に記載の方法により、第一希元素社製のHSグレードの三k差セリウム(IV)を600℃で3時間焼成したものであることがより好ましい。
【0041】
前記の酸化セリウムについては、BET比表面積が10m/g以上であるものが好ましく、30m/g以上であるものがより好ましく、80m/g以上であるものがより好ましい。また、上限として、BET比表面積が1000m/g以下であるものが好ましく、800m/g以下であるものがより好ましく、500m/g以下であるものがより好ましい。
【0042】
すなわち、前記の酸化セリウムについては、BET比表面積が10~1000m/g以上であるものが好ましく、30~800m/g以上であるものがより好ましく、80~500m/g以上であるものがより好ましい。
【0043】
BET比表面積とはBET法により求めた固体試料の比表面積であり、BET法とは固体試料表面に吸着占有面積が既知の分子を低温で吸着させ、その量から固体試料の比表面積を求める比表面積分析の一手法である。
【0044】
本発明において、BET比表面積はJIS8830(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準じた測定方法によって測定できる。当該測定は吸着ガスとして窒素を使用し、相対圧p/p0(以下、「p/p0」とする。)=0.30での1点法でBET比表面積を求められる。
【0045】
本発明の実施例においては、一般的な比表面積測定装置(商品名:フローソープIII、島津製作所製)を用いた。前処理として固体試料(本発明の環状ウレア化合物製造用触媒成形物)を300℃で2時間保持した。前処理後の試料についてBET比表面積を測定した。処理ガスとして、窒素 30体積%、ヘリウム 70体積%からなる混合ガスを用いた。
【0046】
前記の異種金属としては、特に限定するものではないが、例えば、マグネシウム、モリブデン、ニオブ、ランタン、イットリウム、コバルト、ニッケル、鉄、ジルコニウム、マンガン、亜鉛、タングステン、及びアルミニウムからなる群より選ばれる1種類又は2種類以上であることが好ましく、マグネシウム、ニオブ、ランタン、イットリウム、鉄、ジルコニウム、マンガン、及び亜鉛からなる群より選ばれる1種類又は2種類以上であることがより好ましい。
【0047】
前記の酸化セリウム及び異種金属を含有する触媒については、特に限定するものではないが、例えば、含浸法、沈殿法、錯体重合法で作製することができる。
【0048】
前記の含浸法とは、特に限定されるものではないが、例えば、酸化セリウムを異種金属の金属塩含有水溶液に分散させ、ついで水分を蒸発させることで酸化セリウムに金属塩を担持し、次いで焼成することが一般的な方法として挙げられる。
【0049】
前記の沈殿法とは、特に限定されるものではないが、例えば、セリウム塩と異種金属の金属塩が任意の割合で混合された水溶液に対して、塩基を添加して得られた沈殿をろ過、乾燥後、焼成することが一般的な方法として挙げられる。
【0050】
前記の錯体重合法とは、特に限定されるものではないが、例えば、セリウム塩と異種金属の金属塩のクエン酸錯体任意の割合で混合された溶液に対して、エチレングリコールを加えてエステル重合により得られるゲルを焼成することが一般的な方法として挙げられる。
【0051】
本発明のシリカゾル、及びアルミナ化合物からなる群より選ばれる無機バインダについては、市販品を用いることもできるし、一般公知の方法によって合成したものを用いることもできる。当該無機バインダについては、特に限定するものではないが、例えば、シリカゾル、シリカアルミナゾル、及びアルミナゾルからなる群より選ばれる無機バインダを挙げることができ、シリカゾルからなる無機バインダであることが好ましく、アルカリ性シリカゾルからなる無機バインダであることがより好ましく、Na安定型アルカリ性シリカゾル、及びNH 安定型アルカリ性シリカゾルからなる群より選ばれる無機バインダであることがより好ましい。
【0052】
本発明の環状ウレア化合物製造用触媒成形物は、前記の酸化セリウムを含有する触媒と、前記のシリカゾル、及びアルミナ化合物からなる群より選ばれる無機バインダとを、必要に応じて液状媒質を添加したうえで混合し、成形し、乾燥し、焼成することによって製造することができる。
【0053】
前記の液状媒質については、特に限定するものではないが、例えば、水又は有機溶媒を挙げることができ、水であることが好ましい。
【0054】
前記の成形については、特に限定するものではないが、例えば、回転造粒、ボール成形機による成形、押出成形、又は打錠成形等を挙げることができる。
【0055】
前記の乾燥については、前記液状媒質を蒸発させることを目的とし、その目的を達する方法・条件で行うことが好ましい。例えば、前記液体媒質が水の場合、大気下、80~120℃で1~12時間程度の条件で乾燥することが好ましい。
【0056】
前記の焼成については、特に限定するものではないが、窒素雰囲気、又は空気雰囲気でおこなわれることが好ましく、空気雰囲気でおこなわれることがより好ましい。また焼成温度については、特に限定するものではないが、例えば、200℃以上1200℃以下であることが好ましく、400℃以上1000℃以下であることがより好ましく、400℃以上800℃以下であることが特に好ましい。
【0057】
上記のような製造方法によって製造される本発明の環状ウレア化合物製造用触媒成形物については、その形状が、直径0.1~5mmで長さが0.1~10mmの円柱状、又は直径が0.1~5mmの球状であることを特徴とする。
【0058】
環状ウレア化合物製造用触媒成形物が円柱状である場合は、その断面円の直径が1~5mmの範囲であることが好ましい。また長さについては、1~10mmの範囲であることが好ましい。
【0059】
環状ウレア化合物製造用触媒成形物が球状である場合は、その直径が1~5mmの範囲であることが好ましい。
【0060】
本発明の環状ウレア化合物製造用触媒成形物については、前記の無機バインダの含有量が、酸化セリウム 100重量部に対して、15~60重量部であることを特徴とするが、前記の無機バインダの含有量については、触媒活性に優れる点で、酸化セリウム 100重量部に対して、15~50重量部であることが好ましく、るが、成形性及び触媒活性に優れる点で、酸化セリウム 100重量部に対して、15~40重量部であることがより好ましく、酸化セリウム 100重量部に対して、15~30重量部であることがより好ましく、酸化セリウム 100重量部に対して、15~25重量部であることがより好ましい。
【0061】
本発明の環状ウレア化合物製造用触媒成形物については、BET比表面積が10m/g以上であるものが好ましく、30m/g以上であるものがより好ましく、80m/g以上であるものがより好ましい。また、上限として、BET比表面積が1000m/g以下であるものが好ましく、800m/g以下であるものがより好ましく、500m/g以下であるものがより好ましい。
【0062】
すなわち、前記の環状ウレア化合物製造用触媒成形物については、BET比表面積が10~1000m/g以上であるものが好ましく、30~800m/g以上であるものがより好ましく、80~500m/g以上であるものがより好ましい。
【0063】
前述の通り、前記の前記の環状ウレア化合物製造用触媒成形物に、アミノ基を有することを特徴とする、一般式(3)で示されるカルバミン酸化合物を接触させることによって、目的とする環状ウレア化合物を製造することができる。
【0064】
前記の接触させる温度については、特に限定するものではないが、60~150℃の範囲が好ましく、70~140℃の範囲がより好ましい。
【0065】
前記の接触させる圧力については、特に限定するものではないが、ゲージ圧(大気圧を0MPaとする)が、0~10MPaの範囲が好ましく、0~5MPa未満の範囲がより好ましい。
【0066】
前記の接触については、固-液接触であってもよいし、固-気接触であってもよい。当該接触を行うときは、反応基質(例えば、上記の一般式(3)で示されるカルバミン酸化合物)を希釈媒体に希釈した状態で接触させてもよく、当該希釈媒体で希釈して接触させることが好ましい。
【0067】
前記の希釈媒体としては、特に限定するものではないが、例えば、水、窒素、二酸化炭素、前記のジアミン化合物等を挙げることができ、これらは、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0068】
上記の一般式(3)で示されるカルバミン酸化合物を希釈媒体に希釈して用いる場合は、当該カルバミン酸化合物と希釈媒体の重量比は、前記の希釈媒体 100重量部に対して、前記のカルバミン酸化合物 5~45重量部であることが好ましく、15~40重量部であることがより好ましく、20~35重量部であることがより好ましい。
【0069】
なお、前記の環状ウレア化合物製造用触媒成形物を用いた環状ウレア化合物の製造については、移動床式反応であってもよいし、固定床式反応であってもよいし、バッチ反応式で行ってもよいし、連続反応で行ってもよい。
【0070】
前記環状ウレア化合物製造用触媒成形物を使用して、前記環状ウレア化合物製造方法に従って環状ウレア化合物を製造し、これを長時間継続すると、前記の環状ウレア化合物製造用触媒成形物にコークなどの副生物の堆積が生じて、その触媒活性が徐々に低下する。触媒活性が低下した前記環状ウレア化合物製造用触媒成形物については、空気雰囲気下、加熱することで触媒活性を回復させる(再生する)ことができる。前記の加熱温度については、工業的に、200~500℃であることが好ましく、250~400℃であることがより好ましく、250~350℃であることがより好ましい。
【実施例0071】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
以下の実験において、酸化セリウムについては、第一稀元素化学工業社製のHSグレードを用いた。当該酸化セリウムについては、BET比表面積が160m/g、平均粒子径(D50)が5nmであった。
【0073】
また、シリカゾルについては、Na安定型アルカリ性シリカゾル(ST―30、日産化学工業株式会社)、又はNH 安定型アルカリ性シリカゾル(ST―N、日産化学工業株式会社)を用いた。
【0074】
また、アルミナゾルについては、アルミナゾル200(AS-200、日産化学工業株式会社)を用いた。
【0075】
また、ジルコニアゾルについては、ナノユースZR(ZR―40BL、日産化学工業株式会社)を用いた。
【0076】
<触媒調整>
実施例1
酸化セリウムとNa安定型アルカリ性シリカゾルを、質量比(シリカゾル/酸化セリウム)が20/100になるように乳鉢に取り、混合した。得られた粉末に水を加え調湿後、押出成形機で直径1mm、長さ3mmの円柱状に押出成形した。得られた成形体を600℃で焼成し、環状ウレア化合物製造用触媒成形物を得た(以下、触媒1と記載する)。
【0077】
実施例2
前記実施例1において、Na安定型アルカリ性シリカゾルを、NH 安定型アルカリ性シリカゾルに変えた以外は同様の操作を行い、環状ウレア化合物製造用触媒成形物を得た(以下、触媒2と記載する)。
【0078】
実施例3
前記実施例2において、質量比(シリカゾル/酸化セリウム)が30/100となるようにNH 安定型アルカリ性シリカゾルを、乳鉢に取り、混合した以外は同様の操作を行い、環状ウレア化合物製造用触媒成形物を得た(以下、触媒3と記載する)。
【0079】
実施例4
前記実施例2において、質量比(シリカゾル/酸化セリウム)が40/100となるようにNH 安定型アルカリ性シリカゾルを、乳鉢に取り、混合した以外は同様の操作を行い、環状ウレア化合物製造用触媒成形物を得た(以下、触媒4と記載する)。
【0080】
実施例5
前記実施例1において、Na安定型アルカリ性シリカゾルを、アルミナゾルに変えた以外は同様の操作を行い、環状ウレア化合物製造用触媒成形物を得た(以下、触媒5と記載する)。
【0081】
比較例1
前記実施例1において、Na安定型アルカリ性シリカゾルを、ケイ酸塩鉱物であるクニピアに変えた以外は同様の操作を行い、環状ウレア化合物製造用触媒成形物を得た(以下、触媒6と記載する)。
【0082】
比較例2
実施例1において、Na安定型アルカリ性シリカゾルを、ジルコニアゾルに変えた以外は同様の操作を行い、環状ウレア化合物製造用触媒成形物の製造を試みたが、円柱状の形状を保つことができなかった。
【0083】
比較例3
実施例1において、質量比(シリカゾル/酸化セリウム)が10/100となるようにNa安定型アルカリ性シリカゾルを、乳鉢に取り、混合した以外は同様の操作を行い、環状ウレア化合物製造用触媒成形物の製造を試みたが、円柱状の形状を保つことができなかった。
<活性評価及び再生試験>
【0084】
【化4】
【0085】
実施例7
モデル反応として、エチレンジアミンカルバミン酸(下記式「EDA-CA」)から2-イミダゾリジノン(下記式「EU」)を合成する反応を用い、上記で得られた環状ウレア化合物製造用触媒成形物の触媒活性を評価した。
【0086】
まず、筒状の反応管に触媒1を1.5[g]充填し、90℃に加熱した。次に、当該反応管に、エチレンジアミンカルバミン酸(15wt%)とエチレンジアミン(85wt%)からなる原料液を、送液ポンプで、0.01[ml/min]の流速で送液し、触媒反応を行った。この時、固定証連続反応における反応時間を間接的に示す指標であるW/Fは、150g・min/mlであった。
【0087】
W/Fとは、触媒重量(W)[g]と原料液の流速(F)[ml/min]の比を表し、触媒質量[g]を供給する原料液の流速[ml/min]で除した値である。
【0088】
触媒反応の結果得られた留出液を分析し、2-イミダゾリジノンの収率を算出した。2-イミダゾリジノンの収率は、流通接触させたエチレンジアミンカルバミン酸の総モル量に対する、製造された2-イミダゾリジノンの総モル量の割合から算出した。
【0089】
運転開始から9時間後の収率(初期収率)は15%であった。
【0090】
運転開始から72時間後の収率は13%であった。この触媒1の外観は、未使用品に比べて明度が低下した。この触媒1を一旦反応管から取り出し、空気雰囲気下、300℃で3時間加熱したところ、触媒1の明度が未使用品同等に回復した。次いで、当該触媒を再び反応管に戻し、前記の触媒反応を行ったところ、2-イミダゾリジノンの収率は15%に回復した。
【0091】
実施例8
前記実施例7において、触媒1を触媒2に変更した以外は同様の方法で触媒反応を行った。
【0092】
運転開始から9時間後の収率(初期収率)は50%であった。
【0093】
運転開始から72時間後の収率は30%であった。この触媒2の外観は、未使用品に比べて明度が低下した。この触媒2を一旦反応管から取り出し、空気雰囲気下、300℃で3時間加熱したところ、触媒2の明度が未使用品同等に回復した。次いで、当該触媒を再び反応管に戻し、前記の触媒反応を行ったところ、2-イミダゾリジノンの収率は48%に回復した。
【0094】
実施例9
前記実施例7において、触媒1を触媒3に変更した以外は同様の方法で触媒反応を行った。
【0095】
運転開始から9時間後の収率(初期収率)は53%であった。
【0096】
運転開始から72時間後の収率は32%であった。この触媒3の外観は、未使用品に比べて明度が低下した。この触媒3を一旦反応管から取り出し、空気雰囲気下、300℃で3時間加熱したところ、触媒3の明度が未使用品同等に回復した。次いで、当該触媒を再び反応管に戻し、前記の触媒反応を行ったところ、2-イミダゾリジノンの収率は53%に回復した。
【0097】
実施例10
前記実施例7において、触媒1を触媒4に変更した以外は同様の方法で触媒反応を行った。
【0098】
運転開始から9時間後の収率(初期収率)は42%であった。
【0099】
運転開始から72時間後の収率は25%であった。この触媒4の外観は、未使用品に比べて明度が低下したところ、この触媒4を一旦反応管から取り出し、空気雰囲気下、300℃で3時間加熱した。触媒4の明度が未使用品同等に回復した。次いで、当該触媒を再び反応管に戻し、前記の触媒反応を行ったところ、2-イミダゾリジノンの収率は40%に回復した。
【0100】
実施例11
前記実施例7において、触媒1を触媒5に変更した以外は同様の方法で触媒反応を行った。
【0101】
運転開始から9時間後の収率(初期収率)は5%であった。
【0102】
運転開始から72時間後の収率は2%であった。この触媒6の外観は、未使用品に比べて明度が低下した。この触媒5を一旦反応管から取り出し、空気雰囲気下、300℃で3時間加熱したところ、触媒5の明度が未使用品同等に回復した。次いで、当該触媒を再び反応管に戻し、前記の触媒反応を行ったところ、2-イミダゾリジノンの収率は5%に回復した。
【0103】
比較例4
前記実施例7において、触媒1を触媒6に変更した以外は同様の方法で触媒反応を行った。
【0104】
運転開始から9時間後の収率(初期収率)は52%であった。
【0105】
運転開始から72時間後の収率は41%であった。この触媒7の外観は、未使用品に比べて明度が低下した。この触媒6を一旦反応管から取り出し、空気雰囲気下、300℃で3時間加熱した。実施例6の場合と異なり、触媒7が黒色化した。次いで、当該触媒を再び反応管に戻し、前記の触媒反応を行ったところ、2-イミダゾリジノンの収率は40%に低下した。すなわち、前記の条件では、触媒の再生(再活性化)はできなかった。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
本発明の触媒によって製造される環状ウレア化合物、例えば、2-イミダゾリジノン(エチレンウレア)は、合成樹脂、爆薬、又は農薬の原料として用いられるものであるが、上記の通り、本発明の触媒を用いて二酸化炭素を原料として製造することができる。この為、本発明は、排ガス二酸化炭素の有効利用・リサイクルを促進するための技術となることが期待される。
【0109】
本発明の触媒を用いた場合、従来技術に比べて、より低温で、活性を再生回復することができる。このため、従来技術に比べて、エネルギー消費量を抑えることができ、二酸化炭素排出量の削減効果が見込め、全体的な二酸化炭素リサイクル率の向上に寄与することができる。