(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128074
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240912BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01L21/30 562
H01L21/30 569
H01L21/30 564
H01L21/30 567
H01L21/68 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024112001
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2020195437の分割
【原出願日】2020-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 剛史
(72)【発明者】
【氏名】土山 正志
(72)【発明者】
【氏名】榎木田 卓
(72)【発明者】
【氏名】山本 太郎
(57)【要約】
【課題】基板処理装置の占有床面積を抑制すること。
【解決手段】基板を格納するキャリアが載置されるキャリアブロックと、前記キャリアブロックから前記基板が搬送される一の処理ブロックと、前記一の処理ブロックに対して重なると共に、前記キャリアブロックへ前記基板を搬送する他の処理ブロックと、横方向に伸びる軸と、前記基板に対向して支持する支持面を備え、第1の処理ブロック搬送機構に対して前記基板を受け渡す位置と、第2の処理ブロックに対して基板を受け渡す位置との間で前記軸及び前記支持部を昇降させる昇降移載機構と、昇降移載部が前記第1の領域及び前記第2の領域に位置するときには前記支持面が第1の向きとなり、第1の領域と第2の領域との間を昇降するときには前記支持面が前記第1の向きよりも水平面に対する傾きが大きい第2の向きとなるように、前記軸周りに前記支持部を回動させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を各々処理する複数の第1の処理モジュールと、前記複数の第1の処理モジュールに共用されて前記基板を搬送する第1の搬送機構と、を備える一の処理ブロックと、
前記基板を各々処理する複数の第2の処理モジュールと、前記複数の第2の処理モジュールに共用されて前記基板を搬送する第2の搬送機構と、を備え、前記一の処理ブロックに対して重なる他の処理ブロックと、
横方向に伸びる軸と、前記基板に対向して支持する支持面を備えると共に前記軸の伸長方向に対して交差する方向に当該軸から伸長する支持部と、を備え、前記第1の搬送機構に対して前記基板を受け渡すための第1の位置と、前記第2の搬送機構に対して前記基板を受け渡すための第2の位置との間で前記軸及び前記支持部を昇降させる昇降移載機構と、
前記支持部の向きについて、前記第1の位置、前記第2の位置の各々で前記基板を受け渡すための第1の向きと、前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動するために前記第1の向きよりも前記支持面の水平面に対する傾きが大きい第2の向きと、の間で変化するように、前記軸周りに前記支持部を回動させる回動機構と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記一の処理ブロックは、前記第1の搬送機構に対して前記基板を受け渡すために当該基板が載置される第1の基板載置部を備え、
前記他の処理ブロックは、前記第2の搬送機構に対して前記基板を受け渡すために当該基板が載置される第2の基板載置部を備え、
前記第1の位置、前記第2の位置は、前記第1の基板載置部、前記第2の基板載置部に前記基板を夫々受け渡す位置である請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第2の向きは、前記支持面についての前記軸側である基端側が先端側に対して下方に位置すると共に、鉛直面に対して傾いた向きである請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記支持部において前記支持面に対する基端側は当該支持面に対して盛り上がり、前記支持面の基端側からの前記基板の落下を防止する落下防止部を形成する請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記支持面には、前記基板を吸引して保持するための吸引孔が開口する請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記吸引孔に接続される吸引路と、前記吸引路の圧力を検出する圧力検出部と、前記検出された圧力に基づいて前記基板の保持についての異常の有無を検出する保持異常検出部と、を備える請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記支持部は前記軸から前後の一方側に伸長し、
前記第1の搬送機構によって前記基板が搬送される第1の搬送領域は、前記軸に対して前後の一方側に位置すると共に左右の一方側に伸長し、当該第1の搬送領域の伸長方向に沿って前記複数の第1の処理モジュールが各々設けられ、
前記第2の搬送機構によって前記基板が搬送される第2の搬送領域は、前記軸に対して前後の一方側に位置すると共に左右の一方側に伸長し、当該第2の搬送領域の伸長方向に沿って前記複数の第2の処理モジュールが各々設けられる請求項1ないし6のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記軸に対する前後の他方側には、前記第1の処理モジュールまたは第2の処理モジュールの付帯設備が設けられる請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記一の処理ブロックは、前記複数の第1の処理モジュール、前記第1の搬送機構を各々備え、互いに前記基板を受け渡すことができるように左右に並ぶ一の左側処理ブロック、一の右側処理ブロックにより構成され、
前記他の処理ブロックは、前記複数の第2の処理モジュール、前記第2の搬送機構を各々備え、互いに前記基板を受け渡すことができるように左右に並ぶ他の左側処理ブロック、他の右側処理ブロックにより構成され、
一の左側処理ブロックと他の左側処理ブロックとが互いに重なり、一の右側処理ブロックと他の右側処理ブロックとが互いに重なる請求項1ないし8のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記複数の第1の処理モジュールは、前記基板に塗布液を供給して第1の塗布膜を形成する第1の塗布膜形成モジュールと、前記第1の塗布膜が形成された前記基板を加熱する第1の加熱モジュールと、を備え、
前記複数の第2の処理モジュールは、前記基板に塗布液を供給して、前記第1の塗布膜に積層される第2の塗布膜を形成する第2の塗布膜形成モジュールと、前記第2の塗布膜が形成された前記基板を加熱する第2の加熱モジュールと、を備える請求項1ないし9のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項11】
基板を各々処理する複数の第1の処理モジュールと、前記複数の第1の処理モジュールに共用されて前記基板を搬送する第1の搬送機構と、を備える一の処理ブロックと、
前記基板を各々処理する複数の第2の処理モジュールと、前記複数の第2の処理モジュールに共用されて前記基板を搬送する第2の搬送機構と、を備え、前記一の処理ブロックに対して重なる他の処理ブロックと、があり、
横方向に伸びる軸と、前記基板に対向して支持する支持面を備えると共に前記軸の伸長方向に対して交差する方向に当該軸から伸長する支持部と、を備える昇降移載機構について、前記第1の搬送機構に対して前記基板を受け渡すための第1の位置と、前記第2の搬送機構に対して前記基板を受け渡すための第2の位置との間で昇降させる工程と、
回動機構により前記軸周りに前記支持部を回動させる工程と、
前記支持部の向きについて、前記第1の位置、前記第2の位置の各々で前記基板を受け渡すための第1の向きと、前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動するために前記第1の向きよりも前記支持面の水平面に対する傾きが大きい第2の向きと、の間で変化させる工程と、
を備える基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)が、各種の処理モジュール間を搬送されることで液処理や加熱処理などの各処理が行われる。特許文献1には、複数の処理モジュールが各々設けられると共に互いに積層される複数の単位ブロックと、処理モジュール間でウエハを搬送するために単位ブロック毎に設けられるメインアームと、を各々備える処理ブロック含む塗布装置について記載されている。この例ではSOC膜、反射防止膜、レジスト膜を形成する単位ブロックが下層側から2層ずつ積層されて構成されている。そしてSOC膜を形成する単位ブロック、反射防止膜を形成する単位ブロック、レジスト膜を形成する単位ブロックの順番に下層から上層に向けてウエハを搬送して3種の膜を積層して成膜することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理装置の占有床面積を抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の基板処理装置は、基板を格納するキャリアが載置されるキャリアブロックと、
前記基板を各々処理する複数の第1の処理モジュールと、前記複数の第1の処理モジュールに共用されて前記基板を搬送する第1の搬送機構と、を備え、前記キャリアブロックから前記基板が搬送される一の処理ブロックと、
前記基板を各々処理する複数の第2の処理モジュールと、前記複数の第2の処理モジュールに共用されて前記基板を搬送する第2の搬送機構と、を備え、前記一の処理ブロックに対して重なると共に、前記キャリアブロックへ前記基板を搬送する他の処理ブロックと、
横方向に伸びる軸と、前記基板に対向して支持する支持面を備えると共に前記軸の伸長方向に対して交差する方向に当該軸から伸長する支持部と、を備え、前記第1の搬送機構に対して前記基板を受け渡すための第1の位置と、前記第2の搬送機構に対して前記基板を受け渡すための第2の位置との間で前記軸及び前記支持部を昇降させる昇降移載機構と、
前記支持部の向きについて、前記第1の位置、前記第2の位置の各々で前記基板を受け渡すための第1の向きと、前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動するために前記第1の向きよりも前記支持面の水平面に対する傾きが大きい第2の向きと、の間で変化するように、前記軸周りに前記支持部を回動させる回動機構と、
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、基板処理装置の占有床面積を抑制することができることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態に係る基板処理装置の横断平面図である。
【
図7】前記基板処理装置に設けられる昇降移載機構を示す側面図である。
【
図9】前記昇降移載機構の動作を示す説明図である。
【
図10】前記昇降移載機構の動作を示す説明図である。
【
図11】前記昇降移載機構の動作を示す説明図である。
【
図12】前記昇降移載機構の動作を示す説明図である。
【
図13】前記昇降移載機構の動作を示す説明図である。
【
図14】前記昇降移載機構の動作を示す説明図である。
【
図15】前記基板処理装置における搬送経路の概略図である。
【
図16】本開示の実施形態の他の例に係る基板処理装置の横断平面図である。
【
図18】前記昇降移載機構の他の配置例を示す説明図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態に係る基板処理装置1の一例について、
図1の横断平面図、
図2、
図3の縦断正面図を夫々参照して説明する。
図2、
図3については装置の異なる位置の断面を示している。基板処理装置1は、キャリアブロックD1と、第1の処理ブロックD2と、第2の処理ブロックD3と、がこの順で横方向に直線状に配列され、隣り合うブロック同士が互いに接続されている。これらのブロック(キャリアブロック、第1及び第2の処理ブロック)D1~D3は各々筐体を備えて互いに区画されており、各筐体の内部に基板であるウエハWの搬送領域が形成されている。
【0009】
以降の説明にあたり、これらブロックD1~D3の配列方向を左右方向とし、キャリアブロックD1側を左側、第2の処理ブロックD3を右側とする。また、装置の前後方向について、キャリアブロックD1を左に見たときの手前を前方、奥を後方とする。
【0010】
ブロックD1~D3の各々について詳細に説明する前に、基板処理装置1の概略構成を述べる。基板処理装置1には、例えばFOUP(Front Opening Unify Pod)と呼ばれるキャリアCに格納された状態でウエハWが搬送される。基板処理装置1は、ウエハWに液処理として各種の塗布液を塗布することによる塗布膜の形成や、塗布膜形成後のウエハWの加熱などの各種の処理を行う処理モジュールを備えている。
【0011】
第1の処理ブロックD2及び第2の処理ブロックD3は、各々縦方向において2分割されるように区画されている。そのように互いに区画された第1の処理ブロックD2の下側、上側を夫々第1の下側処理ブロックD21、第1の上側処理ブロックD22とする。また、互いに区画された第2の処理ブロックD3の下側、上側を夫々第2の下側処理ブロックD31、第2の上側処理ブロックD32とする。従って、第1の下側処理ブロックD21及び第1の上側処理ブロックD22は互いに積層され、第2の下側処理ブロックD31及び第2の上側処理ブロックD32は互いに積層される。そして、第1の下側処理ブロックD21及び第1の上側処理ブロックD22が互いに隣接し、第2の下側処理ブロックD31及び第2の上側処理ブロックD32が互いに隣接する。
【0012】
キャリアブロックD1→第1の下側処理ブロックD21→第2の下側処理ブロックD31→第2の上側処理ブロックD32→第1の上側処理ブロックD22→キャリアブロックD1の順でウエハWが搬送される。従って、キャリアブロックD1を基準にすると、第1の下側処理ブロックD21及び第2の下側処理ブロックD31がウエハWの往路を形成し、第1の上側処理ブロックD22及び第2の上側処理ブロックD32がウエハWの復路を形成している。往路をなす下側の処理ブロックをまとめて下側処理ブロックG1、復路をなす上側の処理ブロックをまとめて上側処理ブロックG2として夫々記載する場合がある。
【0013】
そして、そのように往路、復路を搬送されることで、ウエハWには3種の塗布膜が順次、成膜されて、互いに積層される。これらの塗布膜のうち最上層の膜はレジスト膜であり、その下側の膜を中間膜、さらにその下側の膜を下層膜と記載する。下層膜は往路の処理モジュールにて、中間膜及びレジスト膜は復路の処理モジュールにて夫々成膜される。なお、モジュールとは搬送機構以外でのウエハWが載置される場所である。ウエハWに処理を行うモジュールを、上記のように処理モジュールとして記載するが、この処理としては検査のために画像を取得することも含む。
【0014】
以下、キャリアブロックD1について、
図4の側面図も参照しながら説明する。基板処理装置1が設置されるクリーンルーム内に設けられる図示しないキャリア用の搬送機構(外部搬送機構)によって、当該キャリアブロックD1に対してキャリアCが搬入出される。キャリアブロックD1は当該キャリアCに対してウエハWの搬入出を行うブロックである。
【0015】
キャリアブロックD1を構成する既述の筐体を11とする。当該筐体11は角型に形成されており、その下部側は左方へと突出して支持台12を形成している。また支持台12の上側における筐体11の左側面について、縦方向に互いに離間した2箇所が左方に突出し、各々支持台13、14を形成している。下方側の支持台、上方側の支持台を夫々13、14とする。
【0016】
支持台12~14については例えば4つずつ、前後方向に間隔を空けてキャリアCを載置することが可能であり、そのように各々キャリアCを載置するステージが設けられており、当該ステージについては左方から見て、例えば3×4の行列状に配置される。なお、支持台12の左端部は支持台13、14よりも左方側に突出しており、支持台12におけるステージは当該支持台12の右側で、支持台13、14の下方位置に設けられている。支持台12の内部は、既述のように第1の処理ブロックD2及び第2の処理ブロックD3における液処理用の処理液が貯留されたボトルが格納される領域とされる。
【0017】
後述するキャリア移載機構21により、各ステージ間でのキャリアCの移載が可能である。この各ステージについて述べると、支持台12、13の各々の前方側の2つのステージは、装置に対してウエハWの搬入出を行うためにキャリアCが載置される移動ステージ15として構成されている。従って、移動ステージ15は左方から見て2×2の行列状に配置されている。当該移動ステージ15は、上記のウエハWの搬入出を行うための右方側のロード位置と、キャリア移載機構21との間でキャリアCの受け渡しを行うための左方側のアンロード位置との間で移動する。本例では、支持台12の移動ステージ15は装置内へ未処理のウエハWを払い出すためにキャリアCを載置するステージ(ローダー)、支持台13の移動ステージ15は装置にて処理済みのウエハWを格納するためにキャリアCを載置するステージ(アンローダー)として、用途が区別される。ただし一つの移動ステージ15が、ローダーとアンローダーとを兼用してもよい。
【0018】
他のステージについて述べると、支持台12、13における後側の2つのステージ及び支持台14における2つのステージは仮置きステージ16として構成されている。また、支持台14における他の2つのステージは搬入ステージ17、搬出ステージ18として構成されている。例えば、支持台14の後端側のステージ、前端側のステージが夫々、搬入ステージ17、搬出ステージ18である。これらの搬入ステージ17、搬出ステージ18は、既述した外部搬送機構が当該基板処理装置1に対してキャリアCの搬入、搬出を夫々行うために当該キャリアCが載置されるステージである。
【0019】
キャリアCは、搬入ステージ17→支持台12の移動ステージ15→支持台13の移動ステージ15→搬出ステージ18の順で移載される。このように各ステージ間でキャリアCを移載するにあたり、移載先のステージが空いてなければ(他のキャリアCにより占有されていれば)、当該キャリアCは当該移載先のステージが空くまで、仮置きステージ16に載置されて待機する。
【0020】
支持台12の左側の上方には、キャリア移載機構21が設けられる。キャリア移載機構21は、キャリアCの上部に設けられた被保持部を保持することができる多関節アーム22と、当該多関節アーム22を昇降移動及び前後移動させることができる移動機構23と、を備え、既述したようにステージ間でキャリアCを移載することができる。
【0021】
筐体11の左側壁には、ウエハWの搬入出を行うための搬送口24が形成されており、上記の移動ステージ15の配置に合わせて2×2の行列状に形成されている。各搬送口24にはドア25が設けられている。当該ドア25は上記のロード位置における移動ステージ15上のキャリアCの蓋を保持可能であると共に、当該蓋を保持した状態で移動して搬送口24を開閉可能である。
【0022】
上記の搬送口24は、筐体11内に形成されるウエハWの搬送領域31に面しており、当該搬送領域31は、平面視、前後に長い直線状に形成されている。当該搬送領域31の前方側には、搬送機構32が設けられている。当該搬送機構32は前後移動自在、昇降自在、且つ鉛直軸まわりに回動自在な基台と、基台上を進退自在なウエハWの保持部と、を備える。当該搬送機構32は、既述のロード位置における移動ステージ15上のキャリアCと、後述のモジュール積層体T1及び処理前検査モジュール41と、にアクセスしてウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0023】
キャリアブロックD1には処理前検査モジュール41が設けられており、当該処理前検査モジュール41は、基板処理装置1による処理前のウエハWの表面を撮像する。その撮像により得られた画像データが後述の制御部10に送信され、当該制御部10により当該画像データに基づいてウエハWの異常の有無の判定が行われる。処理前検査モジュール41は左右に細長で扁平な直方体形状に構成されており、右側が搬送領域31の前後の中央部に位置し、左側は筐体11の左側壁を貫き、当該筐体11の外側に突出している。
【0024】
処理前検査モジュール41は、当該モジュール内を左右で移動自在なステージ42と、ステージ42の移動路の上方に設けられたハーフミラー43と、ハーフミラー43を介して下方に光を照射する照明部44と、ハーフミラー43の左方に設けられたカメラ45と、を備える(
図3参照)。モジュール内の右側に位置するステージ42に対して搬送機構32によりウエハWが受け渡される。そのようにウエハWが受け渡されたステージ42が左側へ移動してハーフミラー43の下方を通過中に、照明部44により光が照射されると共に、カメラ45によるハーフミラー43に映ったウエハWの撮像が行われ、上記の画像データが取得される。
【0025】
そして、
図1に示すように搬送領域31において、平面視、処理前検査モジュール41の後方に位置するように搬送機構33が設けられている。当該搬送機構33は、昇降自在、且つ鉛直軸まわりに回動自在な基台と、基台上を進退自在なウエハWの保持部と、を備え、後述のモジュール積層体T1に対して、ウエハWを受け渡し可能である。
【0026】
続いて、モジュール積層体T1について説明する。このモジュール積層体T1は、ウエハWを仮置きする受け渡しモジュールTRSと、温度調整モジュールSCPLと、が縦方向に重なることで構成されており、搬送領域31の前後の中央部に設けられている。従って、当該モジュール積層体T1は平面視、搬送機構32、33によって前後方向に挟まれると共に、処理前検査モジュール41の右側に重なって配置される。受け渡しモジュールTRSについては、例えば横方向に並んだ複数のピンを備え、搬送機構の昇降動作によって当該ピンに対してウエハWが受け渡される。SCPLについては例えばウエハWが載置されるプレートに冷媒の流路が接続されることで載置されたウエハWが冷却される構成とされており、搬送機構の昇降動作によって当該プレートに対してウエハWが受け渡される。
【0027】
なお、SCPLはキャリアブロックD1以外のブロックにも設けられており、D1以外のブロックのSCPLについても、例えばキャリアブロックD1のSCPLと同様の構成である。そしてTRSについてもD1以外のブロックにも設けられている。以降は各所のSCPL、TRSを互いに区別するために、SCPL、TRSの後に数字を付して示す。そして、各所のTRS、SCPLは例えば複数、積層されて設けられる。つまり同じ数字を付すTRS、SCPLについて各々複数ずつ設けられるが、図示の便宜上、一つのみ表示する。なお、本明細書においてモジュールの積層体とは平面視、重なって設けられるモジュールのことを意味するものであり、モジュール同士が互いに離れていてもよいし、接していてもよい。
【0028】
モジュール積層体T1を構成するモジュールの一部は、処理前検査モジュール41の下側に、他の一部は処理前検査モジュール41の上側に夫々設けられている。例えば下側から上側に向けてTRS1、TRS2、SCPL1、TRS3の順で設けられており、SCPL1とTRS3との間に処理前検査モジュール41が位置している(
図3参照)。そして、例えばTRS1、TRS2、SCPL1については、第1の下側処理ブロックD21の高さに各々位置し、TRS3については、第1の上側処理ブロックD22の高さに各々位置している。搬送機構33はこれらのモジュール積層体T1を構成する各モジュールにアクセスすることが可能であり、搬送機構32は、TRS1、TRS2にアクセスすることが可能である。
【0029】
TRS1、TRS2は、搬送機構32、33間でのウエハWの受け渡しに用いられる。SCPL1は、第1の下側処理ブロックD21とキャリアブロックD1との間でのウエハWの受け渡しに用いられる。従ってSCPL1には、後述する第1の下側処理ブロックD21の搬送機構6Aもアクセス可能である。また、TRS3は、第1の上側処理ブロックD22とキャリアブロックD1との間でのウエハWの受け渡しに用いられる。従ってTRS3には後述の第1の上側処理ブロックD22の搬送機構6Bもアクセス可能である。
【0030】
搬送機構33の後方側には、塗布膜の形成前にウエハWに処理ガスを供給して疎水化処理を行う疎水化処理モジュール30が設けられている。例えば、疎水化処理モジュール30は第2の上側処理ブロックD32の高さに例えば積層されて設けられており、搬送機構33により当該疎水化処理モジュール30に対してウエハWの受け渡しが行われる。疎水化処理モジュール30は、後述する加熱モジュール54に設けられる熱板55と同様にウエハWを載置する熱板と、当該熱板を覆う昇降自在なカバーとを含み、当該カバーによって形成される熱板上の密閉空間に処理ガスが供給されることで、ウエハWに疎水化処理が行われる。
【0031】
続いて、第1の処理ブロックD2について、縦断側面図である
図5も参照して説明する。第1の処理ブロックD2の前方側は縦方向において区画されることで8つの階層が形成されており、各階層について下側から上側に向けてE1~E8とする。下側のE1~E4の階層が第1の下側処理ブロックD21に、上側のE5~E8の階層が第1の上側処理ブロックD22に夫々含まれる。各階層は、液処理モジュールを設置可能な領域をなす。
【0032】
先ず、第1の上側処理ブロックD22について説明する。階層E5~E8には液処理モジュールとして、レジスト塗布モジュール51が各々設けられている。レジスト塗布モジュール51は、左右に並ぶと共にウエハWを各々収納する2つのカップ52と、ノズル(不図示)と、を備えており、図示しないポンプによって上記のボトルから供給されるレジスト液をウエハWの表面に供給して処理を行う。
【0033】
階層E5~E8の後方側にはウエハWの搬送領域53が設けられており、上側処理ブロックD22の左端から右端に亘って、平面視直線状に形成されている。従って、搬送領域53の伸長方向は、キャリアブロックD1の搬送領域31の伸長方向に直交している。なお、搬送領域53は階層E5の高さから階層E8の高さに亘って形成されている。つまり、搬送領域53は、階層E5~E8毎に区画されていない。
【0034】
そして搬送領域53の後方には、処理モジュールが例えば縦方向に7段に積層されて設けられており、その処理モジュールの積層体が2つ、左右に並んで配列されている。即ち、この処理モジュールの積層体及び上記のカップ52の各々は、搬送領域53の伸長方向に沿って設けられている。
【0035】
上記の左右に並んだ処理モジュールの積層体を後部側処理部50とする。この後部側処理部50を構成する処理モジュールとして、複数の加熱モジュール54が含まれる。第1の上側処理ブロックD22における加熱モジュール54は、塗布膜中の溶剤除去用のモジュールであり、ウエハWを載置して加熱する熱板55と、ウエハWの温度調整を行う冷却プレート56と、を備えている。冷却プレート56は、後述の搬送機構6Bの昇降動作によりウエハWが受け渡される前方位置と、熱板55に重なる後方位置との間を移動可能である。熱板55が備える図示しないピンの昇降動作と、冷却プレート56の当該移動との協働により、熱板55と冷却プレート56との間でウエハWが受け渡される。
【0036】
主搬送路である搬送領域53には既述した主搬送機構である搬送機構6Bが設けられており、搬送機構6Bは左右移動自在、昇降自在、且つ鉛直軸まわりに回動自在な基台61と、基台61上を進退自在なウエハWの保持部62と、を備える。なお、この搬送機構6Bを含む基板処理装置1内における各搬送機構の保持部は2つずつ設けられ、基台上を互いに独立して進退可能である。
【0037】
上記の搬送機構6Bの基台61を左右移動させるための移動機構63が後部側処理部50の下方に設けられている。上記の搬送機構6Bは、第1の上側処理ブロックD22内の各処理モジュール、上記のキャリアブロックD1のTRS3、及び後述の第2の上側処理ブロックD32のSCPLに対してウエハWの受け渡しを行うことができる。従って、これらのモジュールに対して、搬送機構6Bは共用される。
【0038】
続いて、第1の下側処理ブロックD21について説明する。当該第1の下側処理ブロックD21は、既述の第1の上側処理ブロックD22と概ね同様の構成であり、以下、第1の上側処理ブロックD22との差異点を中心に説明する。階層E1には液処理モジュールは設けられておらず、階層E2~E4に液処理モジュールとして、下層膜形成用の薬液を塗布する薬液塗布モジュール47が設けられている。薬液塗布モジュール47は、ノズルからレジスト液を供給する代わりに、上記の下層膜形成用の薬液を供給することを除いて、レジスト塗布モジュール51と同様の構成である。
【0039】
搬送領域53に設けられる主搬送機構については搬送機構6Aとして示しており、既述の搬送機構6Bと同様の構成である。当該搬送機構6Aは、第1の下側処理ブロックD21の各処理モジュール、上記のモジュール積層体T1のSCPL1、及び後述の第2の下側処理ブロックD31のSCPLに対してウエハWを受け渡す。
【0040】
続いて、第2の処理ブロックD3について説明する。当該第2の処理ブロックD3は、第1の処理ブロックD2と略同様の構成であり、以下、第1の処理ブロックD2との差異点を中心に説明する。先ず、第2の上側処理ブロックD32について、階層E5には処理モジュールは設けられておらず、階層E6~E8に液処理モジュールとして中間膜形成用の薬液塗布モジュール48が設けられている。薬液塗布モジュール48は、ノズルからレジスト液を供給する代わりに中間膜形成用の薬液を供給するノズルが設けられることを除いて、レジスト塗布モジュール51と同様の構成である。第2の上側処理ブロックD32における主搬送機構を搬送機構6Dとする。当該搬送機構6Dは、後述のSCPL、TRSを含む第2の上側処理ブロックD32内に設けられる各モジュールに対してウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0041】
続いて、第2の下側処理ブロックD31について説明すると、第2の下側処理ブロックD31には液処理モジュールが設けられていない。なお、加熱モジュール54を含む後部側処理部50については、他の処理ブロックD21、D22、D32と同様に設けられている。この第2の下側処理ブロックD31における加熱モジュール54は、第1の下側処理ブロックD21の加熱モジュール54と共に段階的に下層膜を加熱することで、当該下層膜を硬化させるためのモジュールである。第2の下側処理ブロックD31における主搬送機構を搬送機構6Cとする。当該搬送機構6Cは、後述のSCPL、TRSを含む第2の下側処理ブロックD31内に設けられる各モジュールに対して、ウエハWの受け渡しを行う。
【0042】
ところで、これまで述べてきた第1の下側処理ブロックD21、第1の上側処理ブロックD22、第2の下側処理ブロックD31、第2の上側処理ブロックD32の各々における各液処理モジュールの左側は、液処理モジュール用の付帯設備設置領域91として構成されている。この付帯設備設置領域91は、各処理ブロックD21、D22、D31、D32の搬送領域53に対して前方に位置し、下側処理ブロックG1の下部から上側処理ブロックG2の上部に亘って設けられている。従って、第1の処理ブロックD2、第2の処理ブロックD3の各々に付帯設備設置領域91が設けられており、
図6の縦断側面図では、第2の処理ブロックD3における付帯設備設置領域91を示している。第1の処理ブロックD2の付帯設備設置領域91、第2の処理ブロックD3の付帯設備設置領域91には、各々の処理ブロック中の液処理モジュールに接続される排気路、排液路及び電力供給用ケーブル等が設置されている。
【0043】
そして、各処理ブロックD21、D22、D31、D32の各々における後部側処理部50の左側且つ搬送領域53の後方側は、付帯設備設置領域92として構成されている。従って、付帯設備設置領域92も付帯設備設置領域91と同様に第1の処理ブロックD2、第2の処理ブロックD3の各々に設けられており、下側処理ブロックG1の下部から上側処理ブロックG2の上部に亘る。付帯設備設置領域92の上部側は、当該付帯設備設置領域92が設けられる処理ブロック中の各処理モジュールを稼働させるための各種の電装設備(電気機器)が設置される領域をなす。そして付帯設備設置領域92の下部側は、上記のキャリアブロックD1の支持台12と同じく液処理用のボトルの設置領域をなし、当該付帯設備設置領域92が設けられる処理ブロック中の各液処理モジュールへ、当該ボトルから塗布液が供給される。
【0044】
各処理ブロックD21、D22、D31、D32間で、液処理モジュール、後部側処理部50、付帯設備設置領域91、92のレイアウトは、第2の下側処理ブロックD31に液処理モジュールが無いことを除いて同様である。また
図3、
図6に示すように、第2の上側処理ブロックD32の搬送領域53における左端部上方寄りの位置には、SCPL3、SCPL4が設けられている。また、第2の下側処理ブロックD31の搬送領域53における左端部下方寄りの位置には、SCPL2が設けられている。
【0045】
SPCL2と、SCPL3、4との間にはTRS11、TRS12が設けられ、第1の基板載置部であるTRS11は第2の下側処理ブロックD31に、第2の基板載置部であるTRS12は第2の上側処理ブロックD32に夫々位置している。これらSCPL2~SCPL4、TRS11、TRS12は平面視、互いに重なって積層体をなしており、当該積層体は付帯設備設置領域91、92に前後から挟まれて位置している。
【0046】
そしてTRS11からTRS12へ、即ち第2の下側処理ブロックD31から第2の上側処理ブロックD32へとウエハWを搬送するための昇降移載機構7が、付帯設備設置領域92の前方側に設けられている。以下、
図7の側面図、
図8の平面図も参照しながら、当該昇降移載機構7について説明する。昇降移載機構7は、例えば2本の支柱72と、回動軸73と、支持部74と、回動機構75と、を備えている。2つの支柱72は、付帯設備設置領域92の前方で当該付帯設備設置領域92に近接する位置(即ち搬送領域53の後端部)に左右に並んで配置され、各々鉛直方向に伸長している。
【0047】
一方の支柱72から他方の支柱72に向けて回動軸73が水平に、即ち横方向に伸びており、回動軸の73の一端には回動機構75が接続されている。回動機構75はモーターなどを備え、回動軸73を軸周りに回動させる。回動軸73の他端は、例えば軸受け76に接続されている。回動機構75及び軸受け76は例えば各々支柱72の内部に設けられており、支柱72は回動機構75及び軸受け76を共に鉛直に昇降させる昇降機構として構成されている。
【0048】
図7に実線で示すように、回動軸73から板状の支持部74が前方側(前後の一方側)へ水平に伸長するように形成される。従って、支持部74は、回動軸73の軸方向に交差する方向に伸びるように設けられている。伸長途中で支持部74は二股に分かれ、左右対称のフォーク形状をなす。支持部74について、そのように分岐した先端部を77、当該先端部77よりも回動軸73寄りの基部を76として示す。また、支持部74の上面は、ウエハWの下面(裏面)に対向して支持する支持面74Aをなす。
【0049】
これまで述べた支持部74の向きを第1の向きとすると、当該第1の向きでは支持面74Aは水平であり、ウエハWは水平に支持される。上記の回動機構75により支持部74が回動軸73周りに回動し、
図7中鎖線で示すように、当該支持部74の先端側が上方に向けて起立した第2の向きとなる。従って、支持面74Aについて、基端側(回動軸73側)は先端側に対して下方に位置する。このように支持部74の向きは、第1の向きと第2の向きとで切り替わる。支持部74がこのように第2の向きであるときに支持面74Aはその先端側が基端側よりも若干前方に位置するように傾いている。従って、支持面74Aは鉛直面(
図7中に二点鎖線で表示)に対して傾いており、その鉛直面に対する支持面74Aの傾きθは後述するようにウエハWを搬送するために、例えば30°以下である。
【0050】
上記の支持面74Aにおいて、各先端部77及び基部76の各々には、ウエハWの裏面の周縁部を吸引する吸引孔81が開口し、支持部74が上記した第2の向きでも、当該支持面74AにウエハWを吸着して保持することができる。各吸引孔81は、
図7に示すように支持部74の内部に形成された吸引路82に接続されており、吸引路82の下流側は支持部74の外部に引き出され、当該吸引路82を排気する吸引部83に接続されている。支持部74の外部において、吸引路82にはバルブV82が介設されている。当該、バルブV82の開閉によって吸引孔81からの吸引状態、非吸引状態が互いに切り替えられる。支持部74にウエハWの裏面が支持されるときに吸引状態とされて、ウエハWが支持面74Aに吸着される。
【0051】
また、吸引路82には圧力検出部84が設けられており、吸引路82の圧力に対応する検出信号を後述の制御部10に送信する。その検出信号に基づいて、保持異常検出部である制御部10によりウエハWの保持の異常の有無が判定される。より詳しく述べると、上記のようにバルブV82が開放されて吸引状態となったときに、ウエハWが支持部74から脱落するなどして正常に支持されていないと、吸引孔81からの気体の吸引により、検出される圧力が比較的高くなる。従って、検出される圧力値と予め設定した閾値との比較により、上記の異常の有無の判定を行うことができる。
【0052】
また、支持部74における基部76には落下防止部85が形成されている。この落下防止部85は、支持部74のうちの支持面74Aの外側領域が当該支持面74Aに対して盛り上がることにより形成されており、支持部74が第2の向きとなったとき当該落下防止部85がウエハWの下方に位置する。この落下防止部85を設けること、既述のように第2の向きにした際に支持面74Aが鉛直面に対して傾いていることの各々により、仮に吸引孔81からの吸引に不具合が生じても、ウエハWが支持部74の基端側に向けて滑って当該支持部74から落下して破損することが防止される。
【0053】
上記した昇降移載機構7用のTRS11、TRS12について
図8を参照して補足して説明する。これらのTRS11、TRS12は、昇降移載機構7の支持部74を既述の水平な第1の向きとした際に、平面視で2つの先端部77及び基部76で囲まれる凹部に収まるように構成されると共に、ウエハWの中心部を支持する。なお、
図8には代表してTRS11のみ表示している。そのような構成により、第1の向きとして昇降する支持部74に対して、TRS11、TRS12の各々は干渉すること無くウエハWを受け渡すことができる。
【0054】
続いて、昇降移載機構7によるウエハWの搬送について、
図9~
図14を参照しながら順を追って説明する。先端が上側に向かう第2の向きの支持部74が、ウエハWが載置されたTRS11の上方から当該TRSよりも下方に向けて移動する。そのように第2の向きとなっていることで、支持部74は、当該ウエハWと干渉しない(
図9)。そして、支持部74が水平な第1の向きとなる(
図10)。なお支持部74は、この向きの変更によって、ウエハWに干渉しない位置にまで下がっているものとする。次いで、支持部74を、ウエハWが載置されたTRS11の下方から上方に移動させ、当該TRS11から支持部74にウエハWが受け渡される(
図11)。
【0055】
続いて支持部74を第2の向きとし、TRS12よりも上方へ移動させる。この際に第2の向きとなっていることで、支持部74に保持されるウエハWとTRS12とは干渉しない(
図12)。その後、支持部74を第1の向きとし(
図13)、支持部74をTRS12の上方から下方に移動させ、ウエハWが支持部74からTRS12に受け渡される。その後、支持部74を第2の向きにして、下方に移動させる(
図14)。なお支持部74は、この向きの変更によって、TRS12に載置したウエハWに干渉しない位置にまで下がっており、且つTRS11に載置されている後続のウエハWにも干渉しないように、当該向きの変更はTRS11よりも上方で行われるものとする。なお、TRS11の高さ位置は第1の位置に、TRS12の高さ位置は第2の位置に相当する。
【0056】
以降、昇降移載機構7は
図9~
図14に示した動作を繰り返し、TRS11に搬送されるウエハWを順次、TRS12に搬送する。なお、上記した支持部74の吸引孔81からの吸引及び吸引路82における圧力の検出が、支持部74がTRS11からウエハWを受け取ってからTRS12に当該ウエハWを受け渡すまでの間に行われる。
【0057】
また、基板処理装置1は、制御部10を備えている(
図1参照)。この制御部10はコンピュータにより構成されており、プログラム、メモリ、CPUを備えている。プログラムには、基板処理装置1における一連の動作を実施することができるようにステップ群が組み込まれている。ウエハWの保持についての異常の有無を検出する。そして、当該プログラムによって制御部10は基板処理装置1の各部に制御信号を出力し、当該各部の動作が制御される。具体的に搬送機構6A~6D、昇降移載機構7、各処理モジュールの動作が制御される。それにより、後述のウエハWの搬送、ウエハWの処理が行われる。また、当該プログラムにより、既述した吸引路82の圧力に基づいた保持の異常の有無の検出や、取得したウエハWの画像に基づいた異常の検出が行われる。上記のプログラムは、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、DVDなどの記憶媒体に格納されて、制御部10にインストールされる。
【0058】
なお、第1の下側処理ブロックD21(一の左側処理ブロック)及び第2の下側処理ブロックD31(一の右側処理ブロック)の各処理モジュールは第1の処理モジュールであり、下層膜(第1の塗布膜)を形成する薬液塗布モジュール47は第1の塗布膜形成モジュールである。この下層膜が形成されたウエハWを加熱する処理ブロックD21、D31の加熱モジュール54は、第1の加熱モジュールである。そして、これらの処理ブロックD21、D31の搬送機構6A、6Cは第1の搬送機構であり、これらの処理ブロックD21、D31の搬送領域53は第1の搬送領域である。第1の上側処理ブロックD22(他の右側処理ブロック)及び第2の上側処理ブロックD32(他の右側処理ブロック)の各処理モジュールは第2の処理モジュールである。そして中間膜及びレジスト膜(第2の塗布膜)を形成する薬液塗布モジュール48及びレジスト塗布モジュール51は、第2の塗布膜形成モジュールであり、これらの中間膜及びレジスト膜が形成されたウエハWを加熱する処理ブロックD22、D32の加熱モジュール54は、第2の加熱モジュールである。また、これらの処理ブロックD22、D32の搬送機構6B、6Dは第2の搬送機構であり、これらの処理ブロックD22、D32の搬送領域53は第2の搬送領域である。
【0059】
そして、第1の処理ブロックD2を構成する第1の下側処理ブロックD21及び第1の上側処理ブロックD22を処理ブロックの一の組、第2の処理ブロックD3を構成する第2の下側処理ブロックD31及び第2の上側処理ブロックD32を処理ブロックの他の組とする。以上に述べてきたように、キャリアブロックD1は、これらの組の並びに沿って設けられると共に、上記の昇降移載機構7はこれらの組のうち、キャリアブロックD1からより離れた他の組(第2の下側処理ブロックD31及び第2の上側処理ブロックD32)に設けられている。そして、第2の下側処理ブロックD31及び第2の上側処理ブロックD32において、昇降移載機構7の回動軸73が設けられる位置の前方側は搬送領域53であり、この搬送領域は右側(左右の一方側)に伸長している。この搬送領域の伸長方向に沿って、処理モジュールが設けられている。
【0060】
続いて、基板処理装置1におけるウエハWの処理及び搬送について、搬送経路の概略を示した
図15を参照して説明する。
図15では、モジュール間でのウエハWの搬送を表す一部の矢印上あるいは矢印の近傍に、当該搬送に用いる搬送機構を表示している。先ず、支持台12の移動ステージ15に載置されたキャリアCから、搬送機構32によりウエハWが搬出され、ウエハWは処理前検査モジュール41に搬送されて、画像データが取得されて異常の有無が判定された後、TRS1に搬送される。然る後、ウエハWは、搬送機構33により、疎水化処理モジュール30に搬送されて疎水化処理を受けた後、SCPL1に搬送される。続いてウエハWは、搬送機構6Aにより第1の下側処理ブロックD21に取り込まれ、薬液塗布モジュール47→加熱モジュール54の順で搬送されて下層膜が形成された状態で、第2の下側処理ブロックD31のSPCL2に搬送される。
【0061】
その後、ウエハWは搬送機構6Cにより、第2の下側処理ブロックD31の加熱モジュール54に搬送されて加熱処理を受けた後、TRS11に搬送され、
図9~
図14で説明したように昇降移載機構7によって、第2の上側処理ブロックD32のTRS12に搬送される。そしてウエハWは、当該第2の上側処理ブロックD32における搬送機構6DによりSCPL3→薬液塗布モジュール48→加熱モジュール54の順で搬送されて中間膜が形成された状態で、SCPL4に搬送される。
【0062】
そしてウエハWは、搬送機構6Bにより第1の上側処理ブロックD22に取り込まれ、レジスト塗布モジュール51→加熱モジュール54の順で搬送されてレジスト膜が形成された状態で、キャリアブロックD1のTRS3に搬送される。その後、ウエハWは搬送機構33→TRS2→搬送機構32の順で搬送され、支持台13の移動ステージ15上のキャリアCに格納される。
【0063】
以上に述べたように、基板処理装置1については、第2の下側処理ブロックD31から第2の上側処理ブロックD32にウエハWを搬送するための昇降移載機構7が設けられる。そして、ウエハWを保持する昇降移載機構7の支持部74は、水平な第1の向きと、起立した第2の向きとの間で姿勢が切り替わるように回動する。仮に、昇降移載機構7の代わりに、ウエハWの保持部が基台に対して前後方向に進退自在であると共に、当該基台が昇降自在な搬送機構(即ち、搬送機構6A~6D等と同様の搬送機構)を設けて、TRS11、TRS12間のウエハWの搬送を行うとする。しかし、その場合はTRS11及びTRS12に対する前方側あるいは後方側に当該搬送機構の昇降スペースを設ける必要が有り、当該昇降スペースの前後幅は搬送機構の前後幅に相当する大きさとなる。そのため、当該昇降スペースを確保するために、後部側処理部50及び付帯設備設置領域92あるいは薬液塗布モジュール48及び付帯設備設置領域91を、既述した位置よりもその昇降スペースの左右幅の分、右側にずらして配置することになる。そのため第2の処理ブロックD3の左右の長さが大きくなり、基板処理装置1の占有床面積(フットプリント)が増大してしまう。
【0064】
しかし、昇降移載機構7については上記のように支持部74が回動する構成であるため、TRS11の各々に載置されるウエハWとの干渉を避けるために必要な前後幅が抑制されるので、付帯設備設置領域92の前方側のスペースを利用して設置することができる。従って、基板処理装置1によれば昇降移載機構7が設けられる第2の処理ブロックD3の左右の長さが抑えられるので、基板処理装置1の占有床面積を低減させることができる。なお、限られたスペースに基板処理装置1を設置するにあたり、そのように占有床面積が抑えられるということは、基板処理装置1に搭載する処理モジュールの数を低減させることなく当該スペースに基板処理装置1を設置できるということである。従って、基板処理装置1については、十分な処理モジュールの数を確保し、スループットの低減が防止されるという効果も奏する。
【0065】
また、下側処理ブロック(一の処理ブロック)G1と上側処理ブロックG2(他の処理ブロック)との間の専用の搬送機構として上記の昇降移載機構7が設けることにより、各処理ブロックの搬送機構6A~6Dの負荷が抑制される。従って、当該搬送機構6A~6Dは各処理ブロックに各々複数設けられる処理モジュールに対して速やかにウエハWを受け渡すことができるので、その観点からも基板処理装置1については、高いスループットを得ることができる。
【0066】
そして上記のように昇降移載機構7は、搬送領域53に付帯設備設置領域92の前方側に設けられている。つまり、処理モジュールが設けられない領域に臨むように設けられている。そのような配置であるため、当該昇降移載機構7を設けることで処理モジュールの設置数が低減されることもないため、より確実にスループットの低減が防止されている。
【0067】
また、昇降移載機構7は昇降動作と回動動作とのみを行うため、既述したように搬送機構6A~6Dのような構成の搬送機構を昇降移載機構7の代わりに設ける場合に比べて、駆動機構について簡素である。従って、装置の製造コストの低減を図ることができる。
【0068】
なお第2の向きとして、支持部74の先端を上方に向けることには限られず、下方に向けてもよい。ただし、支持部74の先端を上方に向ける構成によれば、仮に吸引孔81からの吸引に不具合が生じてもウエハWは後方の支柱72側に向けて滑落するので、当該支柱72に支持されることになる。従って、ウエハWの処理ブロックの床への落下による破損を防止することができる。なお、既述したように本例では落下防止部85を設けているため、このウエハWの落下による破損が、より確実に防止される。
【0069】
ところで、上記のように第2の下側処理ブロックD31→第2の上側処理ブロックD32でウエハWを搬送するにあたり、第2の下側処理ブロックD31にも液処理モジュールを配置し、当該液処理モジュールで処理を行った後、第2の上側処理ブロックD32にウエハWを搬送してもよい。また第1の下側処理ブロックD21、第2の下側処理ブロックD31のうちの一方にのみ加熱モジュール54を設けてもよい。その場合は、第1の下側処理ブロックD21の薬液塗布モジュール47で下層膜を形成した後は、当該加熱モジュール54で1回のみ処理を行い、昇降移載機構7により上側処理ブロックG2にウエハWを搬送すればよい。そして、加熱モジュール54を第1の下側処理ブロックD21にのみ設けた場合は、第2の下側処理ブロックD31における加熱モジュール54が設けられている領域を、付帯設備を設置する領域としてもよい。
【0070】
さらに下側処理ブロックG1に設けられるとして述べた各モジュールが上側処理ブロックG2に、上側処理ブロックG2に設けられるとして述べた下側処理ブロックG1に、夫々設けられるように基板処理装置を構成してもよい。つまり、当該基板処理装置では上側処理ブロックG2を往路、下側処理ブロックG1を復路としてウエハWを搬送し、昇降移載機構7は、ウエハWをTRS12からTRS11に向けて搬送する。従って、昇降移載機構7は、ウエハWを上方から下方へ向けて搬送する構成でもよい。なお、昇降移載機構7がウエハWを受け渡すモジュールとしてはTRSに限られず、例えばSCPLにウエハWを受け渡す構成であってもよい。さらに、昇降移載機構7はモジュールに対してウエハWを受け渡す構成とすることに限られず、例えば搬送機構6B、6Dに対して直接ウエハWを受け渡してもよい。ただし、そのように受け渡しを行うには、搬送機構6B、6DがウエハWの搬送を行えずに待機する時間が長くなると考えられるため、既述したように昇降移載機構7は、モジュールに対して受け渡しを行うことが好ましい。
【0071】
また基板処理装置は、第2の処理ブロックD3を備えず、第1の処理ブロックD2のみを備えた構成でもよい。そのような構成の基板処理装置8について、
図16の平面図、
図17の正面図を参照して説明する。この基板処理装置8は、第1の処理ブロックD2にて、ウエハWに反射防止膜、レジスト膜をこの順に形成し、第1の下側処理ブロックD21の薬液塗布モジュール48は、下層膜形成用の薬液の代わりに反射防止膜形成用の薬液をウエハWに供給する。
【0072】
この基板処理装置8では、昇降移載機構7及びTRS11、TRS12は、モジュール積層体T1と搬送機構6A、6Bとの間のウエハWの受け渡しを妨げないように、後部側処理部50よりも右側に位置している。その配置に合わせて、付帯設備設置領域91、92についても第1の処理ブロックD2の右端部に設けられている。
【0073】
この基板処理装置8では、基板処理装置1と同様にキャリアブロックD1からモジュール積層体T1のSCPL1を介して第1の下側処理ブロックD21にウエハWを搬送し、さらに薬液塗布モジュール48→加熱モジュール54の順で搬送して反射防止膜を形成する。そして、ウエハWをTRS11、昇降移載機構7、TRS12を順に介して第1の上側処理ブロックD22に搬送し、モジュール積層体T1において第1の上側処理ブロックD22の高さに設けたSCPL→レジスト塗布モジュール51→加熱モジュール54の順で搬送してレジスト膜を形成する。その後は当該ウエハWを、基板処理装置1と同様にキャリアブロックD1からキャリアCに戻す。このように装置の構成として、左右に接続される処理ブロックの数は2つであることに限られない。そして、昇降移載機構7及び昇降移載機構7用のTRS11、TRS12の位置としては、処理ブロックの構成に応じて適宜設定すればよい。
【0074】
昇降移載機構7について、既述した例のように回動軸73から前方側に支持部74が伸び出す構成には限られない。
図18に示すように搬送領域53の前方側で、付帯設備設置領域91の近傍に支柱72を設け、当該支柱72から回動軸73が左右方向に伸び、この回動軸73から搬送領域53の後方に向けて支持部74が伸び出す構成であってもよい。また
図17で述べた基板処理装置8において、搬送領域53の右端に支柱72を設け、当該支柱72から回動軸73が搬送領域53を前後に伸び、当該回動軸73から左方に向けて支持部74が伸び出す構成であってもよい。
【0075】
なお、
図9~
図14において、TRS11の近傍の高さ領域(第1の領域)、TRS12の近傍の高さ領域では支持部74を第1の向きとし、第1の領域と第2の領域との間の領域においては、支持部74は第2の向きとなるように示した。この中間領域においても、ウエハWの搬送に支障ない範囲で支持部74を第1の向きとしてもよい。つまり、TRS11とTRS12との間の昇降中、支持部74を第2の向きにし続けることには限られない。また、第2の向きについて水平面に対する支持面74Aの傾斜が比較的小さければ、吸引孔81を設けなくても、支持面74AとウエハWの裏面との摩擦力を利用してウエハWを保持することができる。その他、支持部74に押圧機構を複数設ける。各押圧機構は、ウエハWの外方からウエハWの中心側に向けて当該ウエハWを押圧する構成とされ、各押圧機構の作用によりウエハWが支持部74に保持されるようにしてもよい。従って、支持部74について、吸引孔81を設ける構成とすることには限られない。
【0076】
なお、支持部74の第1の向きについて水平であるとしたが、ウエハWを支持することができれば、水平面に対して傾いた向きであってもよい。また、板状である支持部74の上面にウエハWが接触して支持される構成を示したが、当該支持部74の上面にウエハWの支持用の部材が設けられ、この部材がウエハWの下面に対向すると共に接触してウエハWが支持されてもよい。その場合は、当該部材がウエハWの支持面を形成することになる。
【0077】
装置で行う液処理としては上記した例に限られず、薬液の塗布による既述した塗布膜とは別の塗布膜の形成や、ウエハWを互いに貼り合わせるための接着剤の塗布処理や、ウエハWの表面あるいは裏面に洗浄液を供給して洗浄する洗浄処理などが含まれていてもよい。その他に現像処理が含まれていてもよい。例えば下側処理ブロックG1で露光後の洗浄処理を行った後、上側処理ブロックG2で現像処理を行うようにしてもよい。また、上記の塗布膜としては、具体的には例えば絶縁膜や、レジスト膜上に積層される保護膜などを成膜するようにしてもよい。また、後部側処理部50に設けられる処理モジュールについて、加熱モジュール以外のモジュールを配置してもよい。例えば、レジスト膜の周縁部を露光する周縁露光モジュールを設けてもよいし、処理前検査モジュール41と同様の構成の検査モジュールを、膜が形成された後のウエハWの表面を検査するために設置してもよい。
【0078】
なお、キャリアブロックD1と処理ブロックとの並びは左右逆であってもよいし、各ブロックの構成要素のレイアウトは前後逆であってもよい。なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更及び組み合わせがなされてもよい。
【符号の説明】
【0079】
7 昇降移載機構
73 回動軸
74 支持部
75 回動機構
C キャリア
D1 キャリアブロック
D2 第1の処理ブロック
D21 第1の下側処理ブロック
D22 第1の上側処理ブロック
D3 第2の処理ブロック
D31 第2の下側処理ブロック
D32 第2の上側処理ブロック
E1~E8 階層
W ウエハ
6A、6B、6C、6D 搬送機構