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特開2024-128262赤外線反射膜、赤外線反射塗料、赤外線反射シート、赤外線反射体、及び該赤外線反射体を備えるパーティション若しくはアウトドアグッズ又は建築物若しくは乗り物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128262
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】赤外線反射膜、赤外線反射塗料、赤外線反射シート、赤外線反射体、及び該赤外線反射体を備えるパーティション若しくはアウトドアグッズ又は建築物若しくは乗り物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/26 20060101AFI20240913BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240913BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240913BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20240913BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240913BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240913BHJP
【FI】
G02B5/26
B32B7/023
B32B27/20 A
C09D5/33
C09D201/00
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037148
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】山田 保誠
(72)【発明者】
【氏名】胡 致維
【テーマコード(参考)】
2H148
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
2H148FA04
2H148FA05
2H148FA12
4F100AB10
4F100AB10A
4F100AK01A
4F100AK21
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DE01
4F100DE01A
4F100EH46
4F100EH46A
4F100GB07
4F100GB32
4F100GB84
4F100GB87
4F100JD10
4F100JD10A
4F100JN06
4F100JN06A
4F100YY00A
4J038CE021
4J038HA066
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA19
4J038PB05
4J038PC10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属光沢のない赤外線反射膜、当該赤外線反射膜が得られる赤外線反射塗料、当該赤外線反射膜を備える赤外線反射シート又は赤外線反射体、当該赤外線反射体を備えるパーティション若しくはアウトドアグッズ又は建築物若しくは乗り物を、安価に提供する。
【解決手段】アルミニウムと、バインダーと、を含む赤外線反射膜であって、前記アルミニウムの形状は、球状であり、前記アルミニウムの平均粒径は、20μm以上700μm以下であり、前記アルミニウムの含有量は、前記アルミニウムと前記バインダーとの合計に対して、92.0mass%以上99.9mass%である、赤外線反射膜。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムと、バインダーと、を含む赤外線反射膜であって、
前記アルミニウムの形状は、球状であり、
前記アルミニウムの平均粒径は、20μm以上700μm以下であり、
前記アルミニウムの含有量は、前記アルミニウムと前記バインダーとの合計に対して、92.0mass%以上99.9mass%である、
赤外線反射膜。
【請求項2】
前記赤外線反射膜の放射率は0.25以下である、請求項1に記載の赤外線反射膜。
【請求項3】
前記アルミニウムの放射率は0.2以下である、請求項1に記載の赤外線反射膜。
【請求項4】
アルミニウム、バインダー、及び媒体を含む赤外線反射塗料であって、
前記アルミニウムの形状は、球状であり、
前記アルミニウムの平均粒径は、20μm以上700μm以下であり、
前記アルミニウムの含有量は、前記アルミニウムと前記バインダーとの合計に対して、92.0mass%以上99.9mass%である、
赤外線反射塗料。
【請求項5】
請求項1から3いずれかに記載の赤外線反射膜を備える、赤外線反射シート。
【請求項6】
請求項1から3いずれかに記載の赤外線反射膜を備える、赤外線反射体。
【請求項7】
請求項6に記載の赤外線反射体を備える、パーティション又はアウトドアグッズ。
【請求項8】
請求項6に記載の赤外線反射体を内部空間に備える、建築物又は乗り物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線反射膜、当該赤外線反射膜が得られる赤外線反射塗料、当該赤外線反射膜を備える赤外線反射シート又は赤外線反射体、当該赤外線反射体を備えるパーティション若しくはアウトドアグッズ又は建築物若しくは乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物や乗り物の内部空間の遠赤外線の反射率を高めることで、効率的な放射冷暖房を行うことが検討されている。遠赤外線の反射率を高める方法としては、例えば、赤外線反射塗膜を有する内装材や建材を用いることが挙げられる。
【0003】
赤外線反射膜としては、アルミ箔(特許文献1)、基材の表面にスパッタリングにより堆積されたアルミニウム膜(特許文献2)、遠赤外線反射性顔料としてアルミニウム粒子を含む塗料から形成された層(特許文献3)、及びアルミニウムからなるコアフレークを透明材料で被覆した赤外線反射フレークを含む塗料から形成された層(特許文献4)等のアルミニウムを用いたものが報告されている。また、ポリエチレンジオキシチオフェン等の導電性ポリマーを含む層(特許文献5)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-268377号公報
【特許文献2】特開2017-119377号公報
【特許文献3】特開2015-124360号公報
【特許文献4】特表2007-526930号公報
【特許文献5】特開2015-147345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたアルミ箔からなる赤外線反射膜、及び特許文献2に記載されたアルミニウムのスパッタリング膜からなる赤外線反射膜は、遠赤外線の反射率が高く断熱性に優れる。しかしながら、表面にアルミニウム金属が露出しているため塗膜に金属光沢があり、使用の場面によっては相応しくない場合があった。
【0006】
特許文献3に記載のアルミニウム粒子を含む塗料から形成された層は、アルミニウム粒子の配合量が少ないため、遠赤外線の反射率がそれほど高いものとなっていなかった。
【0007】
また、特許文献4に記載された赤外線反射フレークを含む塗料から形成された層、及び特許文献5に記載された透明酸化物による導電膜は、高価になりすぎるものであった。
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、金属光沢のない赤外線反射膜、当該赤外線反射膜が得られる赤外線反射塗料、当該赤外線反射膜を備える赤外線反射シート又は赤外線反射体、当該赤外線反射体を備えるパーティション若しくはアウトドアグッズ又は建築物若しくは乗り物を、安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた。そして、特定範囲の粒径と形状を有するアルミニウムを特定の比率で含む赤外線反射膜は、安価であり、金属光沢が抑制されたものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1]
アルミニウムと、バインダーと、を含む赤外線反射膜であって、
前記アルミニウムの形状は、球状であり、
前記アルミニウムの平均粒径は、20μm以上700μm以下であり、
前記アルミニウムの含有量は、前記アルミニウムと前記バインダーとの合計に対して、92.0mass%以上99.9mass%である、
赤外線反射膜。
[2]
前記赤外線反射膜の放射率は0.25以下である、態様[1]に記載の赤外線反射膜。
[3]
前記アルミニウムの放射率は0.2以下である、態様[1]又は[2]に記載の赤外線反射膜。
[4]
アルミニウム、バインダー、及び媒体を含む赤外線反射塗料であって、
前記アルミニウムの形状は、球状であり、
前記アルミニウムの平均粒径は、20μm以上700μm以下であり、
前記アルミニウムの含有量は、前記アルミニウムと前記バインダーとの合計に対して、92.0mass%以上99.9mass%である、
赤外線反射塗料。
[5]
態様[1]から[3]のいずれかに記載の赤外線反射膜を備える、赤外線反射シート。
[6]
態様[1]から[3]のいずれかに記載の赤外線反射膜を備える、赤外線反射体。
[7]
態様[6]に記載の赤外線反射体を備える、パーティション又はアウトドアグッズ。
[8]
態様[6]に記載の赤外線反射体を内部空間に備える、建築物又は乗り物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の赤外線反射膜は、安価に形成されるとともに、金属光沢が抑制された赤外線反射膜となる。また、本発明の赤外線反射膜からは、赤外線反射膜を備える赤外線反射シート又は赤外線反射体を得ることができ、これらは避難所におけるパーティションや、テント等のアウトドアグッズ、又は建築物若しくは乗り物の内部空間に適用することができる。
【0012】
本発明の赤外線反射膜を備えるシート又は反射体は、既存の建物や乗り物に設置する場合に、壁、天井又は床の取外し及び取付けといった大がかりな工事を必要とすることなく設置することができる。したがって、本発明の赤外線反射膜を放射冷暖房と組み合わせて用いることで、省エネで快適な温熱環境を創成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】参考例1のアルミニウム粉体の観察像である。
図2】参考例1のアルミニウム粉体のFTIRによる赤外スペクトルである。
図3】参考例2のアルミニウム粉体の観察像である。
図4】参考例2のアルミニウム粉体のFTIRによる赤外スペクトルである。
図5】参考例3のアルミニウム粉体の観察像である。
図6】参考例3のアルミニウム粉体のFTIRによる赤外スペクトルである。
図7】参考例4のアルミニウム粉体の観察像である。
図8】参考例4のアルミニウム粉体のFTIRによる赤外スペクトルである。
図9】参考例5のアルミニウム粉体の観察像である。
図10】参考例5のアルミニウム粉体のFTIRによる赤外スペクトルである。
図11】参考例6のアルミニウム粉体の観察像である。
図12】参考例6のアルミニウム粉体のFTIRによる赤外スペクトルである。
図13】参考例7のアルミニウム粉体の観察像である。
図14】参考例7のアルミニウム粉体のFTIRによる赤外スペクトルである。
図15】参考例8のアルミニウム粉体の観察像である。
図16】参考例8のアルミニウム粉体のFTIRによる赤外スペクトルである。
図17】参考例9のアルミニウム粉体の観察像である。
図18】参考例9のアルミニウム粉体のFTIRによる赤外スペクトルである。
図19】実施例1で作製した塗膜のFTIRによる赤外スペクトルである。
図20】実施例2で作製した塗膜のFTIRによる赤外スペクトルである。
図21】実施例3で作製した塗膜のFTIRによる赤外スペクトルである。
図22】実施例4で作製した塗膜のFTIRによる赤外スペクトルである。
図23】比較例2で作製した塗膜のFTIRによる赤外スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0015】
≪赤外線反射膜≫
本実施形態の赤外線反射膜は、アルミニウムと、バインダーとを必須成分として含む。以下、本開示の赤外線反射膜を構成する成分について説明する。
【0016】
<アルミニウム>
本実施形態の赤外線反射膜の成分となるアルミニウムは、表面に不動態の酸化膜を形成し、これにより、大気中での赤外線の反射率の変化を抑制することができる。また、本実施形態の赤外線反射膜において、アルミニウムは、膜の主成分である。したがって、本実施形態の赤外線反射膜は、安価に形成されるとともに、金属光沢が抑制されたものとなる。
【0017】
[形状]
アルミニウムの形状は、球状である。一方、アルミニウムの形状が不定形の場合には、アルミニウム粒子の放射率を0.2以下とすることが困難となる。更に、アルミニウムが球状であることで、赤外線反射膜中で可視光線を散乱し、眩しさを低減する効果も付与することができる。
【0018】
[平均粒径]
アルミニウムの平均粒径は、20μm以上700μm以下である。アルミニウムの平均粒径は、30μm以上150μm以下であることが好ましく、40μm以上100μm以下であることが更に好ましい。
【0019】
本明細書において平均粒径とは、赤外線反射膜から採取したアルミニウム粒子、又は赤外線反射塗料から採取したアルミニウム粒子について、卓上顕微鏡(Miniscope TM3030plus、SEM、日立ハイテク社)で観察し、観察像から任意に100個以上の粒子について視野内の最大径を測定し、その平均値を意味する。
【0020】
平均粒径が20μm以上であれば、アルミニウム粒子の25℃における放射率を0.2以下とすることができる。一方、平均粒径が700μmより大きい場合には、赤外線反射膜が金属光沢を呈するようになるため、好ましくない。
【0021】
[含有量]
アルミニウムの含有量は、赤外線反射膜を構成しているアルミニウムとバインダーとの合計に対して、92.0mass%以上99.9mass%以下である。アルミニウムの含有量は、95mass%以上99.9mass%以下であることが好ましく、97mass%以上99.9mass%以下であることが更に好ましい。
【0022】
アルミニウムの含有量が92.0mass%未満であれば、赤外線反射膜の放射率を0.25以下とすることが困難となる。一方、アルミニウムの含有量が99.9mass%を超えると、バインダーの含有量が0.1mass%未満となるため、アルミニウム粒子間における十分な密着性を確保することが困難となる。
【0023】
[アルミニウム粒子の放射率]
アルミニウム粒子の25℃における放射率は、0.2以下であることが好ましい。放射冷暖房の効率は、赤外線反射膜の25℃における放射率が0.25以下になると、急激に向上する。このため、赤外線反射膜の成分であるアルミニウム粒子のみで測定する場合には、25℃における放射率は、0.2以下であることが好ましい。
【0024】
(放射率の測定方法)
本明細書において放射率(ε)は、赤外線を照射した場合の、波長5μm~25μmの赤外線反射率(ρ)を測定し、JISR3106(1998)(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)に準じて、以下の計算式により算出した数値とする。赤外線反射率(ρ)の測定には、FT-IRフーリエ変換近赤外/中赤外/遠赤外分光分析装置(パーキンエルマージャパン社製、Frontier)を用いた。なお、本明細書において放射率は、アルミニウム粒子に対するものと、赤外線反射膜に対するものとの2種類がある。
ε=1-ρ
【0025】
<バインダー>
本実施形態の赤外線反射膜の必須成分であるバインダーは、赤外線反射膜を構成するアルミニウム粒子同士密着のために用いられる。
【0026】
バインダーとしては、上記の目的を果たすことができれば、特に限定されるものではない。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル等のアクリル酸エステルの重合体を水に分散させたエマルジョン、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸アルキル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸2-エトキシエチル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,6-ヘキサンジオール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、フタル酸2-メタクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-メタクリロイルオキシエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル等のメタクリル酸エステルの重合体を水に分散させたエマルジョン、ポリビニルアルコール(PVA)、4-[(3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]ブタン-1-スルホン酸、及びN,N-ビス(2-アクリルアミドエチル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0027】
中では、ポリビニルアルコール(PVA)、又は4-[(3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]ブタン-1-スルホン酸とN,N-ビス(2-アクリルアミドエチル)アクリルアミドとを1:1のモル比として適用することが好ましい。
【0028】
[含有量]
本実施形態の赤外線反射膜において、バインダーの含有量は、赤外線反射膜を構成しているアルミニウムとバインダーとの合計に対して、0.1mass%以上8.0mass%以下である。バインダーの含有量は、0.1mass%以上5.0mass%以下であることが好ましく、0.1mass%以上3.0mass%以下であることが更に好ましい。
【0029】
バインダーの含有量が8.0mass%を超える場合には、赤外線反射膜の放射率を0.25以下とすることが困難となる。一方、バインダーの含有量が0.1mass%未満の場合には、赤外線反射膜を構成するアルミニウム粒子間における十分な密着性を確保することが困難となる。
【0030】
<その他の成分>
本実施形態の赤外線反射膜は、アルミニウムとバインダー以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、接着剤、抗菌剤、消泡剤、芳香剤、消臭剤、乳化剤、エマルジョン安定剤、フィルム形成剤、防虫剤、分散剤、及び粘度調整剤や、着色するための着色剤等が挙げられる。
【0031】
<赤外線反射膜の物性>
[赤外線反射膜の放射率]
赤外線反射膜の25℃における放射率は、0.25以下であることが好ましい。赤外線反射膜の25℃における放射率が0.25以下であると、放射冷暖房の効率を急激に向上させることができる。
【0032】
[平均厚み]
赤外線反射膜の平均厚みは、用いるアルミニウム粒子の平均粒径の2倍以上であることが好ましい。平均厚みを用いるアルミニウム粒子の平均粒径の2倍以上とすることで、優れた赤外線反射性能が得られる。平均厚みは、用いるアルミニウム粒子の平均粒径の3倍以上とすることが更に好ましく、用いるアルミニウム粒子の平均粒径の4倍以上とすることが特に好ましい。平均厚みの上限値は特に限定されないが、材料コストを抑える点からは用いるアルミニウム粒子の平均粒径の10倍以下とすることが好ましく、用いるアルミニウム粒子の平均粒径の8倍以下とすることがより好ましく、用いるアルミニウム粒子の平均粒径の6倍以下とすることが更に好ましい。
【0033】
(平均厚みの測定方法)
赤外線反射膜の平均厚みは、膜の断面を電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡で観察し、画像処理することで算出することができる。赤外線反射膜を構成するアルミニウム粒子の平均粒径が判っている場合には、得られた赤外線反射膜の平均厚みとアルミニウム粒子の平均粒径との関係を確認することができる。赤外線反射膜を構成するアルミニウム粒子の平均粒径が判っていない場合には、観察像から任意に100個以上の粒子について視野内の最大径を測定し、その平均値をアルミニウム粒子の平均粒径として、赤外線反射膜の平均厚みとの関係を確認する。
【0034】
≪赤外線反射塗料≫
本実施形態の赤外線反射塗料は、本開示の赤外線反射膜を得るための塗料である。本実施形態の赤外線反射塗料は、アルミニウム、バインダー、及び媒体を必須成分として含む。以下に、赤外線反射塗料の成分等について説明する。
【0035】
<アルミニウム>
赤外線反射塗料の成分となるアルミニウムは、上述した本開示の赤外線反射膜に用いられるアルミニウムと同様である。
【0036】
<バインダー>
赤外線反射塗料の成分となるバインダーは、上述した本開示の赤外線反射膜に用いられるバインダーと同様である。
【0037】
<媒体>
媒体は、主として、赤外線反射塗料の粘度の調整のために用いられる。媒体としては、水系溶媒であっても、有機系溶媒であってもよく、特に限定されるものではない。例えば、水、メタノール、エタノール、トルエン、ベンゼン、アセトン等を挙げることができ、中では、環境や人体への悪影響が小さく安価な点で、水が好ましい。
【0038】
<その他の成分>
本実施形態の赤外線反射塗料は、上記した必須成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、接着剤、抗菌剤、消泡剤、芳香剤、消臭剤、乳化剤、エマルジョン安定剤、フィルム形成剤、防虫剤、分散剤、及び粘度調整剤や、着色するための着色剤等が挙げられる。
【0039】
[着色剤]
本実施形態の赤外線反射塗料に配合できる着色料について説明する。赤外線反射塗料が着色剤を含有する場合には、所望の色彩を有する赤外線反射膜を形成することができる。したがって、赤外線反射膜の用途に応じて、好ましい着色剤を選択して用いればよい。
【0040】
着色料としては特に限定されるものではなく、例えば、天然鉱物着色料、合成無機着色料、有機着色料(多環顔料(polycyclicpigment)、アゾ顔料)等が挙げられる。
【0041】
色別に着色料を例示すると、白色系としては、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム及びバライト粉等が挙げられる。赤色系としては、鉛丹、酸化鉄赤、キナクリドン、ジケトピロロピロール、アントラキノン、ペリレン、ペリノン及びインジゴイド等が挙げられる。黄色系としては、黄鉛、亜鉛黄、イソインドリノン、イソインドリン、アゾメチン、アントラキノン、アントロン及びキサンテン等が挙げられる。青色系としては、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)、フタロシアニン、アントラキノン及びインジゴイド等が挙げられる。橙色系としては、ジケトピロロピロール、ペリレン、アントラキノン(アントロン)、ペリノン、キナクリドン及びインジゴイド等が挙げられる。緑色系としては、フタロシアニン、アゾメチン及びペリレン等が挙げられる。紫色系としては、ジオキサジン、キナクリドン、ペリレン、インジゴイド、アントラキノン(アントロン)及びキサンテン等が挙げられる。黒色系としては、カーボンブラック等が挙げられる。
【0042】
≪赤外線反射膜の用途≫
<赤外線反射シート>
本開示の赤外線反射シートは、基材シート上に、上述した本開示の赤外線反射膜を備える。
【0043】
赤外線反射シートを構成する基材シートとしては、特に限定されず、赤外線反射シートの用途の応じて様々なものを適用することができる。赤外線反射シートを構成する基材シートとしては、例えば、ガラス、金属、セラミック、プラスチック、紙、段ボール、又は布等が挙げられる。
【0044】
赤外線反射シートは、シートの上に、上述した本開示の赤外線反射塗料を供給し、遠赤外線反射膜を製膜することで得られる。あるいは、シートに、上述した本開示の赤外線反射塗料を含浸させて遠赤外線反射膜を製膜することで得られる。基材への赤外線反射塗料の供給方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ドロップコート法、オフセット印刷法、グラビア印刷法及びフレキソ印刷法、刷毛による塗布、左官仕上げ等が挙げられる。
【0045】
<赤外線反射体>
本開示の赤外線反射体は、基材上に、上述した本開示の赤外線反射膜、又は赤外線反射シートを備える。
【0046】
赤外線反射体の基材の材料としては、特に限定されず、例えば、ガラス、石、金属、セラミック、紙、段ボール、布、又はプラスチック等が使用できる。これらのうち、プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂等が例示される。また、プラスチック基材として、セロハンテープ等を用いてもよい。
【0047】
基材の形状も特に限定されず、例えば、板状、筒状、球状、及び多面体状等の各種形状であってよく、表面に凹凸を有するものであってもよい。
【0048】
赤外線反射体は、基材の上に、上述した本開示の赤外線反射塗料を供給し、遠赤外線反射膜を製膜することで得られる。基材への赤外線反射塗料の供給方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ドロップコート法、オフセット印刷法、グラビア印刷法及びフレキソ印刷法、刷毛による塗布、左官仕上げ等が挙げられる。
【0049】
赤外線反射体は、予め形成された赤外線反射膜を、接着剤等によって基材上に貼り付けて製造してもよい。この場合には、赤外線反射膜の基材に接する側の面に、接着剤層と剥離紙又は剥離フィルムとを積層したシール構造としておき、剥離紙又は剥離フィルムを剥がして基材に貼り付けてもよい。なお、この場合には、接着剤層も基材の一部とする。
【0050】
<パーティション又はアウトドアグッズ>
本実施形態の赤外線反射膜は、赤外線反射体に備えられた後に、パーティション又はアウトドアグッズに適用することができる。
【0051】
パーティションとしては、空間を仕切ることのできる物品形態であれば、特に限定されるものではない。例えば、赤外線反射体が備えられたパーティションを室内に配置することで、遠赤外線の反射率を高めることができるため、効率的な放射冷暖房を実施することができる。また、人間から発する遠赤外線がその人間に戻るため、断熱効果の向上が期待される。例えば、避難所にパーティションを設置すれば、個別スペースの確保や目隠しになるとともに、効率的な放射冷暖房の実施や断熱の向上に寄与することができる。
【0052】
アウトドアグッズとしては、キャンプを始め、屋外での活動に用いることのできる用品であれば、特に限定されるものではない。キャンプ等の屋外で用いられる用品に赤外線反射体が備えられることで、効率的な冷暖房に寄与することができる。また、人間から発する遠赤外線がその人間に戻るため、断熱効果の向上が期待される。例えば、赤外線反射体が備えられたテントとすれば、テント内の空間の放射冷暖房を効率よく実施することができ、少ないエネルギーで快適な温度空間を形成することができる。
【0053】
<建築物又は乗り物>
本実施形態の赤外線反射膜は、赤外線反射体に備えられた後に、建築物や乗り物の内部空間に適用することができる。
【0054】
建築物としては、例えば、戸建て、集合住宅、オフィスビル、倉庫、プレハブ小屋、及びビニルハウス等が挙げられる。
【0055】
乗り物としては、例えば、自動車、飛行機、列車、船舶、内部空間を有するバイク、観覧車のかご、及びゴンドラ等が挙げられる。
【実施例0056】
以下、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0057】
≪アルミニウム粉体の分析≫
<参考例1>
アルミニウム粉体 Al-99.7-45μm(ヒカリ素材工業株式会社)を、卓上顕微鏡(Miniscope TM3030plus、SEM、日立ハイテク社)で観察した。得られた観察像を図1に示す。観察像から187粒子の平均粒径を算出した結果、平均粒径は20.7μmであった。アルミニウム粉体はほぼ球形であり、金属光沢は感じられなかった。また、拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.199であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図2に示す。
【0058】
<参考例2>
アルミニウム粉体 Al-99.7-63μm(ヒカリ素材工業株式会社)を、卓上顕微鏡(Miniscope TM3030plus、SEM、日立ハイテク社)で観察した。得られた観察像を図3に示す。観察像から103粒子の平均粒径を算出した結果、平均粒径は35.6μmであった。アルミニウム粉体はほぼ球形であり、金属光沢は感じられなかった。また、拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.175であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図4に示す。
【0059】
<参考例3>
アルミニウム粉体 Al-99.7 45~90μm(ヒカリ素材工業株式会社)を、卓上顕微鏡(Miniscope TM3030plus、SEM、日立ハイテク社)で観察した。得られた観察像を図5に示す。観察像から120粒子の平均粒径を算出した結果、平均粒径は35.4μmであった。アルミニウム粉体はほぼ球形であり、金属光沢は感じられなかった。また、拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.174であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図6に示す。
【0060】
<参考例4>
アルミニウム粉体 Al-99.7-150μm(ヒカリ素材工業株式会社)を、卓上顕微鏡(Miniscope TM3030plus、SEM、日立ハイテク社)で観察した。得られた観察像を図7に示す。観察像から116粒子の平均粒径を算出した結果、平均粒径は42.8μmであった。アルミニウム粉体はほぼ球形であり、金属光沢は感じられなかった。また、拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.135であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図8に示す。
【0061】
<参考例5>
アルミニウム粉体 Al-99.7-250μm(ヒカリ素材工業株式会社)を、卓上顕微鏡(Miniscope TM3030plus、SEM、日立ハイテク社)で観察した。得られた観察像を図9に示す。観察像から102粒子の平均粒径を算出した結果、平均粒径は122.6μmであった。アルミニウム粉体はほぼ球形であり、金属光沢は感じられなかった。また、拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.116であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図10に示す。
【0062】
<参考例6>
アルミニウム粉体 Al-99.7-38μm(ヒカリ素材工業株式会社)を、卓上顕微鏡(Miniscope TM3030plus、SEM、日立ハイテク社)で観察した。得られた観察像を図11に示す。観察像から249粒子の平均粒径を算出した結果、平均粒径は10.2μmであった。アルミニウム粉体はほぼ球形であり、金属光沢は感じられなかった。また、拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.244であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図12に示す。
【0063】
<参考例7>
アルミニウム粉体 150μm(株式会社高純度化学研究所)を、卓上顕微鏡(Miniscope TM3030plus、SEM、日立ハイテク社)で観察した。得られた観察像を図13に示す。アルミニウム粉体は球形ではなく、不定形であった。そこで、108粒子を観察し、長辺と短辺の平均長さを算出した。その結果、長辺145.5μm、短辺76.5μmであった。なお、金属光沢は感じられなかった。また、拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.245であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図14に示す。
【0064】
<参考例8>
アルミニウム粉体 300μm(株式会社高純度化学研究所)を、卓上顕微鏡(Miniscope TM3030plus、SEM、日立ハイテク社)で観察した。得られた観察像を図15に示す。アルミニウム粉体は球形ではなく、不定形であった。そこで、110粒子を観察し、長辺と短辺の平均長さを算出した。その結果、長辺300.8μm、短辺175.4μmであった。なお、金属光沢は感じられなかった。また、拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.311であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図16に示す。
【0065】
<参考例9>
アルミニウム粉体 425μm~850μm(株式会社高純度化学研究所)を、卓上顕微鏡(Miniscope TM3030plus、SEM、日立ハイテク社)で観察した。得られた観察像を図17に示す。アルミニウム粉体は球形ではなく、不定形であった。そこで、105粒子を観察し、長辺と短辺の平均長さを算出した。その結果、長辺1767.1μm、短辺731.4μmであった。この粉体は金属光沢があった。また、拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.326であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図18に示す。
【0066】
<考察>
参考例1~9で得られた結果を、表1にまとめて示す。
【0067】
【表1】
【0068】
放射暖房の効率は、赤外線反射膜の放射率が0.25以下になると、急速に向上する。このため、赤外線反射膜の放射率は、0.25以下が望ましい。赤外線反射膜の放射率は、バインダーの存在によりアルミニウム粉体の放射率よりも増加しているため、アルミニウム粉体の放射率は、0.2以下が望ましい。
【0069】
参考例1~5に示されるように、球形のアルミニウム粉体では、平均粒径が大きくなるに従って放射率は低下し、平均粒径が20μm以上であると、放射率は0.2以下となった。参考例9に示されるように、不定形アルミニウム粉体の短辺及び長辺が700μmより大きくなると、金属光沢を呈した。また、参考例7~9の不定形のアルミニウム粉体は、放射率が0.2より大きいものとなった。
【0070】
<実施例1>
参考例4で分析したアルミニウム粉体 Al-99.7-150μm(ヒカリ素材工業株式会社)に、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を、アルミニウムとバインダーの合計に対して0.2mass%添加し、適量の脱イオン水で粘度を調整して塗料を作製した。得られた塗料を壁紙に塗布し、塗膜の形成を試みたところ、塗膜は形成され、壁紙との密着性は良好であった。得られた塗膜の拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.151であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図19に示す。
【0071】
<実施例2>
参考例4で分析したアルミニウム粉体 Al-99.7-150μm(ヒカリ素材工業株式会社)に、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を、アルミニウムとバインダーの合計に対して0.74mass%添加し、適量の脱イオン水で粘度を調整して塗料を作製した。得られた塗料を壁紙に塗布し、塗膜の形成を試みたところ、塗膜は形成され、壁紙との密着性は良好であった。得られた塗膜の拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.198であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図20に示す。
【0072】
<実施例3>
参考例4で分析したアルミニウム粉体 Al-99.7-150μm(ヒカリ素材工業株式会社)に、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を、アルミニウムとバインダーの合計に対して4.8mass%添加し、適量の脱イオン水で粘度を調整して塗料を作製した。得られた塗料を壁紙に塗布し、塗膜の形成を試みたところ、塗膜は形成され、壁紙との密着性は良好であった。得られた塗膜の拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.247であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図21に示す。
【0073】
<実施例4>
参考例4で分析したアルミニウム粉体 Al-99.7-150μm(ヒカリ素材工業株式会社)に、バインダーとして、4-[(3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]ブタン-1-スルホン酸とN,N-ビス(2-アクリルアミドエチル)アクリルアミド1とを1:1のモル比で、アルミニウムとバインダーの合計に対して1.0mass%添加し、適量の脱イオン水で粘度を調整して塗料を作製した。得られた塗料を壁紙に塗布し、塗膜の形成を試みたところ、塗膜は形成され、壁紙との密着性は良好であった。得られた塗膜の拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.170であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図22に示す。
【0074】
<比較例1>
参考例4で分析したアルミニウム粉体 Al-99.7-150μm(ヒカリ素材工業株式会社)に、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を、アルミニウムとバインダーの合計に対して0.05mass%添加し、適量の脱イオン水で粘度を調整して塗料を作製した。得られた塗料を壁紙に塗布し、塗膜の形成を試みたところ、塗膜は形成されたが、アルミニウム粒子間の密着性が不良であり、塗膜からアルミニウム粒子が剥がれてしまった。
【0075】
<比較例2>
参考例4で分析したアルミニウム粉体 Al-99.7-150μm(ヒカリ素材工業株式会社)に、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を、アルミニウムとバインダーの合計に対して9.0mass%添加し、適量の脱イオン水で粘度を調整して塗料を作製した。得られた塗料を壁紙に塗布し、塗膜の形成を試みたところ、塗膜は形成され、壁紙との密着性は良好であった。得られた塗膜の拡散反射率をFTIRで測定し、得られた結果から25℃の放射率を算出したところ、0.491であった。FTIRによる赤外スペクトルを、図23に示す。
【0076】
<考察>
実施例1~4、及び比較例1~2で得られた結果を、表1にまとめて示す。
【0077】
【表2】
【0078】
放射暖房の効率は、赤外線反射膜の放射率が0.25以下になると、急速に向上する。このため、赤外線反射膜の放射率は、0.25以下が望ましい。アルミニウムの含有量が大きい(バインダーの含有量が小さい)と、赤外線反射膜の放射率は低くなる傾向があるが、アルミニウムの含有量が99.95mass%である比較例1は、バインダーの含有量が少なすぎるために、アルミニウム粒子間の密着性が不十分となった。一方で、実施例1~3に示されるように、アルミニウムの含有量を減少させる(バインダーの含有量を増加させる)と、壁紙との密着性は向上したが、アルミニウムの含有量が91.00mass%の比較例2は、赤外線反射膜の放射率が0.25を上回った。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の赤外線反射膜は、安価に製造することができ、金属光沢が抑制された赤外線反射膜となる。本発明の赤外線反射膜からは、赤外線反射膜を備える赤外線反射シート又は赤外線反射体を得ることができ、これらは容易に、避難所におけるパーティション若しくはテント等のアウトドアグッズ、又は建築物若しくは乗り物の内部空間に適用することができる。したがって、本発明の赤外線反射膜を放射冷暖房と組み合わせて用いることで、省エネで快適な温熱環境を創成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23