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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128293
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】光通信システム及び光給電方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/03 20130101AFI20240913BHJP
   H04B 10/275 20130101ALI20240913BHJP
   H04B 10/071 20130101ALI20240913BHJP
   H04B 10/80 20130101ALI20240913BHJP
【FI】
H04B10/03
H04B10/275
H04B10/071
H04B10/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037203
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】黒田 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】川野 友裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 ひろし
(72)【発明者】
【氏名】片山 和典
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 哲也
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA44
5K102AD01
5K102AH02
5K102AH26
5K102AL02
5K102AN02
5K102AN03
5K102LA06
5K102LA15
5K102LA22
5K102LA52
5K102LA56
5K102MA01
5K102MB11
5K102MB20
5K102MH02
5K102MH15
5K102MH22
5K102PD13
5K102PH01
5K102PH31
5K102PH41
5K102PH47
5K102PH48
5K102PH49
5K102PH50
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】ネットワークに断線が生じても当該ネットワークに設置されたノードを動作させることが可能な光通信システム及び光給電方法を提供する。
【解決手段】リング型のネットワーク11における光通信システム10は、ネットワーク11における第1方路14Aへの第1レーザ光15Aの出力と、ネットワーク11における第2方路14Bへの第2レーザ光15Bの出力とを切り替え可能に実行する親ノード12と、第1レーザ光15Aまたは第2レーザ光15Bからの光給電によって動作する複数の子ノード13とを備え、第1レーザ光15Aと第2レーザ光15Bの波長は互いに異なり、親ノード12から各子ノード13に向かう第1レーザ光15Aと第2レーザ光15Bの進行方向は互いに異なる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング型のネットワークにおける光通信システムであって、
前記ネットワークにおける第1方路への第1レーザ光の出力と、前記ネットワークにおける第2方路への第2レーザ光の出力とを切り替え可能に実行する親ノードと、
前記第1レーザ光または前記第2レーザ光からの光給電によって動作する複数の子ノードと
を備え、
前記第1レーザ光と前記第2レーザ光の波長は互いに異なり、
前記親ノードから各前記子ノードに向かう前記第1レーザ光と前記第2レーザ光の進行方向は互いに異なる
光通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の光通信システムであって、
前記ネットワークにおける第3方路に出力する試験光を用いて前記ネットワークの断線を検出する光試験器を更に備え、
前記光試験器が前記ネットワークの断線を検出したとき、前記親ノードは前記第1レーザ光と前記第2レーザ光のうちの一方から他方に出力を切り替える
光通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の光通信システムであって、
前記ネットワークにおける第3方路に出力する試験光を用いて前記ネットワークの断線を検出する光試験器を更に備え、
前記光試験器が前記ネットワークの断線を検出したとき、前記親ノードは前記第1レーザ光と前記第2レーザ光を出力する
光通信システム。
【請求項4】
請求項2に記載の光通信システムであって、
前記親ノードは前記第3方路に第3レーザ光を出力し、
各前記子ノードは前記第3レーザ光からの光給電によって得られた電力を蓄電する
光通信システム。
【請求項5】
請求項3に記載の光通信システムであって、
前記親ノードは前記第3方路に第3レーザ光を出力し、
各前記子ノードは前記第3レーザ光からの光給電によって得られた電力を蓄電する
光通信システム。
【請求項6】
請求項1~5のうちの何れか一項に記載の光通信システムであって、
各前記子ノードは、前記親ノードとの通信によって得られた制御信号に基づき、各前記子ノードに接続した外部装置を制御する
光通信システム。
【請求項7】
リング型のネットワークにおける光給電方法であって、
前記ネットワークの第1方路を介した親ノードから複数の子ノードへの第1レーザ光の出力と、前記ネットワークの第2方路を介した前記親ノードから各前記子ノードへの第2レーザ光の出力とを切り替え可能に実行し、
各前記子ノードにおいて、前記第1レーザ光又は第2レーザ光を電力に変換し、
前記第1レーザ光と前記第2レーザ光の波長は互いに異なり、
前記親ノードから各前記子ノードに向かう前記第1レーザ光と前記第2レーザ光の進行方向は互いに異なる
光給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光通信システム及び光給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバネットワークの利用環境の変化に応えるため、光ファイバの方路変更や増設等の工事が一定の頻度で行われている。この工事は現地に赴いた工事作業者が行っていたが、近年、このような工事を遠隔操作で遂行する技術が提案されている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】R. Helkey et.al., “Remotely powered optical switch for remote subscriber aggregation and OTDR measurement in PON”, 33rd European Conference and Exhibition of Optical Communication (2007)
【非特許文献2】川野友裕、真鍋哲也、黒田晃弘、中江和英、渡辺汎、片山和典、“遠隔光路切替ノードの直列接続方式に関する一検討”、電子情報通信学会総合大会2022、B-13-28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1及び2に記載のネットワークは、制御装置と、1又は複数のノードとを備えている。制御装置と複数のノードは、1本の光ファイバによって構成された方路を介して接続されている。即ち、制御装置、複数のノード、及びこれらを接続する方路はバス型ネットワークを構築している。制御装置は、バス型ネットワークを介して各ノードへ光給電すると共に、各ノードとの光通信を行う。これにより各ノードの動作が制御される。
【0005】
1本の光ファイバで構築されたバス型ネットワークにおいて当該光ファイバが断線した場合、当該ネットワークに設置されたノードは制御信号などを伝達する光通信が不可能となる。その結果、ノードは与えられた機能を発揮できなくなる。また、光通信がノードへの光給電を伴っている場合は、当該ノードの電力が失われてしまう。
【0006】
本開示は上述の事情を鑑みて成されたものであり、ネットワークに断線が生じても当該ネットワークに設置されたノードを動作させることが可能な光通信システム及び光給電方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る光通信システムは、リング型のネットワークにおける第1方路への第1レーザ光の出力と、前記ネットワークにおける第2方路への第2レーザ光の出力とを切り替え可能に実行する親ノードと、前記第1レーザ光または前記第2レーザ光からの光給電によって動作する複数の子ノードとを備え、前記第1レーザ光と前記第2レーザ光の波長は互いに異なり、前記親ノードから各前記子ノードに向かう前記第1レーザ光と前記第2レーザ光の進行方向は互いに異なる。
【0008】
本開示の一態様に係る光給電方法は、リング型のネットワークにおいて、前記ネットワークの第1方路を介した親ノードから複数の子ノードへの第1レーザ光の出力と、前記ネットワークの第2方路を介した前記親ノードから各前記子ノードへの第2レーザ光の出力とを切り替え可能に実行し、各前記子ノードにおいて、前記第1レーザ光又は第2レーザ光を電力に変換し、前記第1レーザ光と前記第2レーザ光の波長は互いに異なり、前記親ノードから各前記子ノードに向かう前記第1レーザ光と前記第2レーザ光の進行方向は互いに異なる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ネットワークに断線が生じても当該ネットワークに設置されたノードを動作させることが可能な光通信システム及び光給電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施形態に係る光通信システムの概略図である。
図2A図2Aは、光通信システムの動作の一例を説明するための図である。
図2B図2Bは、光通信システムの動作の一例を説明するための図である。
図3図3は、親ノード及び子ノードの具体的な構成の第1例を示す図である。
図4図4は、親ノード及び子ノードの具体的な構成の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る光通信システム及び光給電方法について説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
まず、光通信システム10の概要について説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る光通信システム10の概略図である。図1に示すように、光通信システム10は、ネットワーク11に設けられた親ノード(所内ノード)12及び複数の子ノード(所外ノード)13とを備える。図1は、説明の便宜上、4つの子ノード13A、13B、13C、13Dを示している。しかしながら、子ノード13の数は4に限られず、ネットワーク11の規模や用途に応じて適宜設定される。
【0013】
ネットワーク11は、親ノード12と各子ノード13間の光伝送路である第1方路14A及び第2方路14Bによって構築される。第1方路14A及び第2方路14Bは、複数の子ノード13を順番に経由し、所謂リング型のネットワークを形成する。第1方路14A及び第2方路14Bを構成する複数の光ファイバは、子ノード13間において束ねられた状態で所定の経路に敷設され、例えば1本の光ケーブル(図示せず)として敷設されている。
【0014】
親ノード12は、通信事業者の収容局又は中継局などの比較的大規模な通信施設に設置され、商用電源等の外部電力によって動作する。親ノード12は、第1レーザ光15Aを第1方路14Aに出力する。また、親ノード12は、第2レーザ光15Bを第2方路14Bに出力する。第1レーザ光15A及び第2レーザ光15Bは何れも、子ノード13との光通信及び子ノード13への光給電のために用いられる。
【0015】
親ノード12は、第1レーザ光15Aの出力と第2レーザ光15Bの出力とを切り替え可能に実行する。例えば、親ノード12は、第1方路14Aへの第1レーザ光15Aの出力と第2方路14Bへの第2レーザ光15Bの出力とを交互に切り替える。この切り替えは、予め設定された周期に基づいて行なってもよく、ネットワーク11の断線の検出後に行なってもよい。なお、親ノード12は、第1レーザ光15Aと第2レーザ光15Bの両方を出力することも可能である。第1レーザ光15Aと第2レーザ光15Bの両方の出力は、例えば、ネットワーク11の断線の検出後に行われる。
【0016】
図1に示すように、親ノード12から各子ノード13に向かう第1レーザ光15A及び第2レーザ光15Bの進行方向は互いに異なるように設定される。即ち、これら2つの進行方向は互いに逆である。例えば図1に示すように、第1レーザ光15Aは親ノード12からネットワーク11の一端に入射し、第1方路14Aを時計回りに進行する。一方、第2レーザ光15Bは親ノード12からネットワーク11の他端に入射し、第2方路14Bを反時計回りに進行する。
【0017】
第1レーザ光15Aと第2レーザ光15Bの波長は互いに異なっている。但し、波長は異なるものの、第1レーザ光15A及び第2レーザ光15Bは何れも、各子ノード13を光給電するために十分な強度(エネルギー)を有する。更に、子ノード13との通信を行うために、各レーザ光は、変調器(後述する第1変調器22又は第2変調器27(図3参照))によってオンオフ変調される場合もある。オンオフ変調されたレーザ光は光信号として扱われ、例えば、子ノード13に接続する外部装置(後述)の制御信号を示すように変調される。
【0018】
子ノード13は、親ノード12から離れたネットワーク11上の所定箇所に設置され、第1レーザ光15A及び第2レーザ光15Bを受光する。子ノード13は、第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bによる光給電によって動作し、状況に応じて第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bを用いて親ノード12との通信を行う。子ノード13の動作に必要な電力は第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bから得られるため、子ノード13は蓄電部47以外の電力供給源を必要としない。つまり、本実施形態に係る光通信システムでは、電池の交換作業や、子ノード13への電力線の敷設工事を省略できる。
【0019】
子ノード13は、互いに波長の異なる第1レーザ光15Aと第2レーザ光15Bを用いて、通信及び電力変換が可能なように構成されている。具体的には、子ノード13は、波長の異なる第1レーザ光15Aと第2レーザ光を1つの光電変換素子45に導くため、WDMカプラ42を採用している。従って、子ノード13が第1レーザ光15Aと第2レーザ光15Bを同時に受光したとしても、両者の波長が異なるため、互いの光干渉による光パワーの減衰を防止することができる。換言すれば、各レーザ光を用いて適切に電力変換を遂行することができ、電力不足による子ノード13の不測の停止を防止することができる。
【0020】
子ノード13には、当該子ノード13によって制御される外部装置(図示せず)が接続されている。この外部装置は、例えば、情報通信ネットワーク間の接続、遮断を行う光スイッチやポート監視デバイスなどの方路制御装置、監視システムに利用される温度計や水位計などの計測装置である。ただし、子ノード13に制御される外部装置は上記の装置に限られず、子ノード13によって駆動可能な装置である限り、光通信システム10の用途に応じて任意に選択できる。
【0021】
上記の外部装置の動作は、変調された第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bによって生成された制御信号に基づいている。この制御信号を生成するためのレーザ光の変調は親ノード12が実行する。つまり、外部装置の動作は、子ノード13を介した親ノード12からの遠隔操作によって制御される。従って、外部装置を操作するために、作業者が子ノード13の設置場所まで赴く必要は無い。例えば、外部装置が上述の方路制御装置である場合、方路の切り替えは収容局等の通信施設から実行することができる。
【0022】
次に、光通信システム10の動作、即ち本実施形態に係る光給電方法について説明する。
図2A及び図2Bは、光通信システム10の動作の一例を説明するための図である。本実施形態に係る光通信システム10は、光給電方法の一工程として、第1方路14Aへの第1レーザ光15Aの出力と、第2方路14Bへの第2レーザ光15Bの出力とを切り替え可能に実行する。例えば、第1レーザ光15Aの出力と第2レーザ光15Bの出力を交互に繰り返す。これに対して、各子ノード13は、光給電方法の一工程として、第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bを電力に変換する。変換された電力は、子ノード13の駆動電力として使用される。従って、ネットワーク11に断線が生じていても、第1レーザ光15Aの出力と第2レーザ光15Bの出力のうちの一方から他方への切り替えによって、親ノード12と各子ノード13との間の光通信および各子ノード13への光給電を継続させることができる。
【0023】
例えば図2Aに示すように、第1レーザ光15Aが親ノード12から第1方路14Aに出力されている状況を想定する。第1レーザ光15Aは第1方路14Aを時計回りに進行する。この状況から、子ノード13Bと子ノード13Cの間のA点でネットワーク11の断線が発生したとする。断線の発生は、例えば、第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bを用いた親ノード12と複数の子ノード13の何れかとの通信の不通によって親ノード12が判断できる。なお、親ノード12が複数の子ノード13との通信を方路に沿って順番に試みることにより、断線が発生した場所を特定することもできる。
【0024】
A点で断線が発生すると、親ノード12は、点Aよりもネットワーク11の下流側に位置していた2つの子ノード13C、13Dのそれぞれに対して光通信及び光給電が不可能となる。そこで、図2Bに示すように、親ノード12はレーザ光の方路を、これまで用いていた第1方路14Aから第2方路14Bに切り替え、第2レーザ光15Bを出力する。第2レーザ光15Bは、第2方路14Bを反時計回りに進行するので、親ノード12と子ノード13C、13Dのそれぞれとの間の光通信および子ノード13C、13Dへの光給電が復活する。このとき、親ノード12は、断線の発生をオペレータ等に通知してもよい。
【0025】
更に、第1方路14Aへの第1レーザ光15Aの出力と第2方路14Bへの第2レーザ光15Bの出力とを交互に繰り返してもよい。これにより、親ノード12と全ての子ノード13との間の光通信と、全ての子ノード13への光給電とを継続して実行することができる。即ち、ネットワーク11に断線が生じても当該ネットワーク11に設置された子ノード13を動作させることが可能な光通信システム10を構築することができる。
【0026】
なお、親ノード12は、ネットワーク11の断線の有無に関わりなく、第1レーザ光15Aの出力と第2レーザ光15Bの出力を交互に繰り返してもよい。この場合も、各子ノードに第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bが継続的に入力される。従って、親ノード12と全ての子ノード13との間の光通信および全ての子ノード13への光給電を継続させることができる。なお、第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bを用いた親ノード12と子ノード13間の通信によって、断線の発生とその発生個所の特定も可能である。
【0027】
また、親ノード12は、ネットワーク11の断線を判断したとき、第1レーザ光15Aと第2レーザ光15Bの両方を出力してもよい。この場合も、各子ノードに第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bが継続的に入力される。従って、親ノード12と全ての子ノード13との間の光通信および全ての子ノード13への光給電を継続させることができる。
【0028】
次に親ノード12の具体的な構成について説明する。
図3は、親ノード12及び子ノード13の具体的な構成の第1例を示す図である。図3に示すように、親ノード12は、第1レーザ光源21、第1変調器22と、第1光サーキュレータ23と、第1受光器24と、制御部25とを備えている。制御部25は、所謂マイクロコンピュータであり、メモリ等に予め記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、親ノード12に設けられた第1レーザ光源21等の各構成要素の統括制御を行う。
【0029】
第1レーザ光源21は第1レーザ光15Aを生成し、生成された第1レーザ光15Aを第1方路14Aに出力する。第1レーザ光15Aの波長は、光ファイバネットワークのPONシステムで用いられる、1310nm、1490nm、又は1550nmなどの波長を採用することができる。
【0030】
第1変調器22は所謂電子シャッターであり、制御部25からの制御信号に応じて第1レーザ光15Aに対してオンオフ変調を行い、子ノード13に向けた光信号を生成する。第1変調器22は、第1レーザ光15Aを用いた親ノード12と子ノード13の間の通信を行う際に動作する。
【0031】
第1光サーキュレータ23は、第1レーザ光源21から出力された第1レーザ光15Aを第1方路14Aに出力する。第1光サーキュレータ23を通過した第1レーザ光15Aは、ネットワーク11の一端に位置する第1方路14Aの端部に入射する。また、第1光サーキュレータ23は、子ノード13から第1方路14Aを介して戻ってきた第1レーザ光15Aの反射光を、第1受光器24に出力する。
【0032】
第1受光器24は、第1光サーキュレータ23を介して到達した第1レーザ光15Aの反射光を電気信号に変換し、制御部25に出力する。なお、第1レーザ光15Aの反射光は、子ノード13に設けられたMEMS光スイッチ46によってオンオフ変調されている。
【0033】
親ノード12は、第2レーザ光源26、第2変調器27と、第2光サーキュレータ28と、第2受光器29とを更に備える。
【0034】
第2レーザ光源26は第2レーザ光15Bを生成し、生成された第2レーザ光15Bを第2方路14Bに出力する。第2レーザ光15Bの波長は、第1レーザ光15Aの波長と同じく、1310nm、1490nm、又は1550nmなどの波長を採用することができる。但し、上述の通り、第2レーザ光15Bの波長は、第1レーザ光15Aの波長と異なる値に設定される。
【0035】
また、第1変調器22と同じく、第2変調器27も所謂電子シャッターであり、制御部25からの制御信号に応じて第2レーザ光15Bに対してオンオフ変調を行い、子ノード13に向けた光信号を生成する。第2変調器27は、第2レーザ光15Bを用いた親ノード12と子ノード13の間の通信を行う際に動作する。
【0036】
第2光サーキュレータ28は、第2レーザ光源26から出力された第2レーザ光15Bを第2方路14Bに出力する。第2光サーキュレータ28を通過した第2レーザ光15Bは、ネットワーク11の他端に位置する第2方路14Bの端部に入射する。また、第2光サーキュレータ28は、子ノード13から第2方路14Bを介して戻ってきた第2レーザ光15Bの反射光を、第2受光器29に出力する。
【0037】
第1レーザ光15Aが、ネットワーク11の一端に位置する第1方路14Aの端部に入射する一方、第2レーザ光15Bは、ネットワーク11の他端に位置する第2方路14Bの端部に入射する。従って、親ノード12から各子ノード13に向かう第1レーザ光15Aと第2レーザ光15Bは、ネットワーク11上で互いに逆方向に進行する。
【0038】
第2受光器29は、第2光サーキュレータ28を介して到達した第2レーザ光15Bの反射光を電気信号に変換し、制御部25に出力する。なお、第2レーザ光15Bの反射光は、子ノード13に設けられたMEMS光スイッチ46によってオンオフ変調されている。
【0039】
次に子ノード13の具体的な構成について説明する。
各子ノード13は、光カプラ40と、光カプラ41と、WDMカプラ42と、光サーキュレータ43と、光カプラ44と、光電変換素子(第1光電変換素子)45と、MEMS光スイッチ46と、蓄電部47と、制御部48とを備える。
【0040】
光カプラ40は、第1方路14Aを通過した第1レーザ光15Aを2本のレーザ光に分岐し、当該2本のレーザ光のうちの一方をWDMカプラ42に出力する。また、光カプラ40は、当該2本のレーザ光のうちの他方を、隣の(即ち、第1レーザ光15Aの進行方向において下流側に位置する)子ノード13の光カプラ40に出力する。
【0041】
光カプラ41は、第2方路14Bを通過した第2レーザ光15Bを2本のレーザ光に分岐し、当該2本のレーザ光のうちの一方をWDMカプラ42に出力する。また、光カプラ41は、当該2本のレーザ光のうちの他方を、隣の(即ち、第2レーザ光15Bの進行方向において下流側に位置する)子ノード13の光カプラ41に出力する。
【0042】
WDMカプラ42は、波長の異なる第1レーザ光15A及び第2レーザ光15Bを光サーキュレータ43に出力する。即ち、光カプラ40から出力された第1レーザ光15Aを光サーキュレータ43に出力する。また、WDMカプラ42は、光カプラ41から出力された第2レーザ光15Bを光サーキュレータ43に出力する。
【0043】
光サーキュレータ43は、WDMカプラ42から出力された第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bを、光カプラ44に出力する。また、光サーキュレータ43は、光カプラ44から出力され、MEMS光スイッチ46によって反射された第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bを、WDMカプラ42に出力する。
【0044】
光カプラ44は、光サーキュレータ43から出力された第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bを2本のレーザ光に分岐し、当該2本のレーザ光のうちの一方を光電変換素子45に出力する。また、光カプラ44は、当該2本のレーザ光のうちの他方を、MEMS光スイッチ46に出力する。
【0045】
光電変換素子45は、光カプラ44から出力された第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bを電気エネルギーに変換する。変換された電気エネルギーは蓄電部47に出力される。光電変換素子45は、変換された電気エネルギーの一部を電気信号として制御部48に出力する。第1レーザ光15Aが親ノード12の第1変調器22によってオンオフ変調されている場合、光電変換素子45からは同一のシーケンスでオンオフ変調された電気信号が出力される。制御部48は、この電気信号を受信し、親ノード12からの種々の情報を取得する。第2レーザ光15Bが親ノード12の第2変調器27によってオンオフ変調されている場合も同様であり、親ノード12からの種々の情報を取得することができる。
【0046】
蓄電部47は例えば周知のキャパシタであり、光電変換素子45から出力された電気エネルギーを蓄積する。蓄電部47は、子ノード13の電力供給源として機能する。蓄電部47の電力は制御部48に供給され、これにより制御部48は動作する。
【0047】
制御部48は、所謂マイクロコンピュータであり、メモリ等に予め記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、MEMS光スイッチ46を制御し、第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bを用いた親ノード12との通信を行う。また、制御部48は、この通信によって得られた親ノード12からの制御信号に基づき、子ノード13に接続した外部装置を制御する。上述の通り、この外部装置は方路制御装置や計測装置などである。なお、蓄電部47は、外部装置に電力を供給してもよい。この場合、子ノード13だけでなく、外部装置についても電力線の敷設が不要になる。
【0048】
MEMS光スイッチ46は、半導体への微細加工によって形成された多数の微小ミラーを有する。微小ミラーの角度は制御部48によって調整できる。MEMS光スイッチ46は、光カプラ44から出力された第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bを、制御部48の制御によってオンオフ変調させつつ、光サーキュレータ43に出力する。
【0049】
MEMS光スイッチ46に反射された第1レーザ光15A又は第2レーザ光15Bは、光サーキュレータ43を通過し、再びWDMカプラ42に入射する。WDMカプラ42を入射したレーザ光は、その波長に応じて光カプラ40又は光カプラ41に出力される。
【0050】
具体的には、光サーキュレータ43を通過した第1レーザ光15AがWDMカプラ42に入射した場合、第1レーザ光15Aは光カプラ40に出力される。その後、第1レーザ光15Aは、第1方路14A(と他の子ノード13の光カプラ40)を経由し、更に、親ノード12の第1光サーキュレータ23を経由して、親ノード12の第1受光器24に受光される。第1受光器24が受光した第1レーザ光15AがMEMS光スイッチ46によるオンオフ変調を受けている場合、親ノード12は、この変調が示した種々の情報を取得する。
【0051】
一方、光サーキュレータ43を通過した第2レーザ光15BがWDMカプラ42に入射した場合、第2レーザ光15Bは光カプラ41に出力される。その後、第2レーザ光15Bは、第2方路14B(と他の子ノード13の光カプラ41)を経由し、更に、親ノード12の第2光サーキュレータ28を経由して、親ノード12の第2受光器29に受光される。第2受光器29が受光した第2レーザ光15BがMEMS光スイッチ46によるオンオフ変調を受けている場合、親ノード12は、この変調が示した種々の情報を取得する。
【0052】
図4は、親ノード12及び子ノード13の具体的な構成の第2例を示す図である。図4に示すように、第2例に係る親ノード12は、第1例に係る上述の構成に加え、光試験器30と、光チャネルセレクタ31とを更に備える。なお、光試験器30は親ノード12に接続する別の装置として設けられていてもよい。
【0053】
光試験器30は、光時間領域反射率計(OTDR: Optical Time Domain Reflectometer)である。光試験器30は、検査対象の光ファイバにパルス化された試験光を入射させ、試験光のレイリー散乱に由来する後方散乱光やフレネル反射光の強度と往復時間に基づき、光ファイバの断線の有無及び断線箇所を特定する。
【0054】
本例に係る光試験器30は、ネットワーク11に設けた第3方路14Cに光チャネルセレクタ31を介して試験光52を定期的に入射し、第3方路14Cの断線を検出する。第3方路14Cは、第1方路14A及び第2方路14Bに沿って敷設され、第1方路14A及び第2方路と同じく全ての子ノード13を経由する。光チャネルセレクタ31は、試験光52の光路を定期的に切り替え、当該試験光52を第3方路14Cの一端と他端に交互に入射させる。これにより、試験光52の光路を交互に切り替えない場合と比べて、光試験器30から断線の発生個所までの最大距離が半分に短縮される。従って、断線の検出感度を向上させることができる。
【0055】
第3方路14Cは、子ノード13間で第1方路14A及び第2方路14Bに近接している。例えば第3方路14Cは、第1方路14A及び第2方路14Bと共に、1本の光ファイバケーブルに収容されている。従って、第3方路14Cが断線した場合は、第1方路14A及び第2方路14Bも断線している可能性が非常に高い。そこで、光試験器30が第3方路14Cの断線を検出した場合、親ノード12の制御部25は、第1方路14A及び第2方路14Bも断線していると判断する。親ノード12はこの判断に基づいて、出力するレーザ光を、第1レーザ光15Aと第2レーザ光15Bのうちの一方から他方に切り替える。例えば親ノード12は、第1レーザ光15Aの出力と第2レーザ光15Bの出力とを交互に繰り返すことを開始してもよい。
【0056】
光試験器30による断線の検出感度は、第1レーザ光15Aを用いた通信及び第2レーザ光を用いた通信による断線の検出感度よりも遥かに高い。つまり、高感度で各方路の断線を検出することができ、全ての子ノード13に対してより確実に光給電を行うことができる。なお、光試験器30が断線箇所を特定した場合、親ノード12はその結果をオペレータ等に通知してもよい。
【0057】
図4に示すように、第2例に係る親ノード12は、第3レーザ光源32と、光カプラ33とを更に備えてもよい。この場合、子ノード13は、第1例に係る上述の構成に加え、光カプラ49と、第2光電変換素子50と、第3光電変換素子51とを備える。
【0058】
第3レーザ光源32は、子ノード13への光給電に用いる第3レーザ光15Cを生成し、光カプラ33及び光チャネルセレクタ31を介して、第3方路14Cに出力する。第3レーザ光15Cも、第1レーザ光15Aの波長と同じく、1310nm、1490nm、又は1550nmなどの波長を採用することができる。
【0059】
上述の通り、光チャネルセレクタ31は、定期的に光路を切り替える。従って、第3方路14Cにおける第3レーザ光15Cの進行方向も定期的に逆転する。説明の便宜上、第3レーザ光15Cの2つの進行方向のうちの一方を第1の進行方向、他方を第2の進行方向と称する。第1の進行方向と第2の進行方向は互いに逆である。
【0060】
光カプラ49は所謂2x2光カプラであり第3方路14C上に配置される。光カプラ49は、第1の進行方向に進行する第3レーザ光15Cを2本のレーザ光に分岐し、当該2本のレーザ光の一方を、第2光電変換素子50に出力する。また、光カプラ49は、当該2本のレーザ光の他方を、隣の(即ち、第3レーザ光15Cの第1の進行方向において下流側に位置する)子ノード13の光カプラ49に出力する。
【0061】
光チャネルセレクタ31によって、第3レーザ光15Cの進行方向が第2の進行方向に逆転した場合、光カプラ49は第2の進行方向に進行する第3レーザ光15Cを2本のレーザ光に分岐し、当該2本のレーザ光の一方を、第3光電変換素子51に出力する。また、光カプラ49は、当該2本のレーザ光の他方を、隣の(即ち、第3レーザ光15Cの第2の進行方向において下流側に位置する)子ノード13の光カプラ49に出力する。
【0062】
第2光電変換素子50は、光カプラ49から出力された第3レーザ光15Cを電気エネルギーに変換し、蓄電部47に出力する。同様に、第3光電変換素子51も、光カプラ49から出力された第3レーザ光15Cを電気エネルギーに変換し、蓄電部47に出力する。第3レーザ光15Cが何れの進行方向に切り替えられても、第2光電変換素子50及び第3光電変換素子51のうちの何れかが光電変換を実行し、継続的な蓄電を可能にする。つまり、第3方路を断線の検査用に用いるだけでなく、子ノード13への光給電に活用させることができる。従って、比較的消費電力の高い外部機器も子ノード13からの供給電力だけで賄うことができる。
【0063】
なお、光カプラ49は所謂2x2光スイッチでもよい。この場合、子ノード13の制御部25は、2x2光スイッチ内の光路を定期的に切り替える。
【0064】
本実施形態によれば、親ノード12を起点として複数の子ノード13が並んだリング型のネットワーク11が構築される。ネットワーク11を構成する2つの方路、即ち、2本の光ファイバの断線を直接的又は間接的に検出し、光給電及び光通信の経路を切り替えることで子ノード13への光給電と光通信を維持することができる。また、子ノード13の構成要素にWDMカプラ42が採用されている。その結果、異なる波長の光を使った2方向の光通信と光給電が可能となり、且つ、通信干渉を回避できる冗長系を光給電による駆動で実現することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 光通信システム
11 ネットワーク
12 親ノード(所内ノード)
13 子ノード(所外ノード)
13A~13D 子ノード
14A 第1方路
14B 第2方路
14C 第3方路
15A 第1レーザ光
15B 第2レーザ光
15C 第3レーザ光
21 第1レーザ光源
22 第1変調器
23 第1光サーキュレータ
24 第1受光器
25 制御部
26 第2レーザ光源
27 第2変調器
28 第2光サーキュレータ
29 第2受光器
30 光試験器
31 光チャネルセレクタ
32 第3レーザ光源
33 光カプラ
40 光カプラ
41 光カプラ
42 WDMカプラ
43 光サーキュレータ
44 光カプラ
45 光電変換素子(第1光電変換素子)
46 MEMS光スイッチ
47 蓄電部
48 制御部
49 光カプラ
50 第2光電変換素子
51 第3光電変換素子
52 試験光
図1
図2A
図2B
図3
図4