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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128448
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】疎水化処理物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20240913BHJP
   C01F 7/021 20220101ALI20240913BHJP
【FI】
C01B33/18 C
C01F7/021
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037428
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】有福 征宏
(72)【発明者】
【氏名】曽根 圭太
(72)【発明者】
【氏名】永田 龍太郎
【テーマコード(参考)】
4G072
4G076
【Fターム(参考)】
4G072AA28
4G072BB05
4G072CC10
4G072GG03
4G072HH17
4G072JJ15
4G072UU01
4G076AA02
4G076AB02
4G076BA12
4G076BD01
4G076BD02
4G076CA02
4G076DA02
(57)【要約】
【課題】無機酸化物を疎水化することが可能な新規な疎水化処理物の製造方法を提供すること。
【解決手段】本開示の一側面に係る疎水化処理物の製造方法は、無機酸化物を表面に有する被処理物及び水を含む酸性の反応液を水熱処理することで上記無機酸化物を疎水化する工程を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物を表面に有する被処理物及び水を含む酸性の反応液を水熱処理することで前記無機酸化物を疎水化する工程を備える、疎水化処理物の製造方法。
【請求項2】
前記無機酸化物が、アルミナである、請求項1に記載の疎水化処理物の製造方法。
【請求項3】
前記無機酸化物が、シリカである、請求項1又は2に記載の疎水化処理物の製造方法。
【請求項4】
前記無機酸化物が、セリアである、請求項1又は2に記載の疎水化処理物の製造方法。
【請求項5】
前記水熱処理が、温度110~300℃の条件で行われる、請求項1又は2に記載の疎水化処理物の製造方法。
【請求項6】
前記水熱処理が、温度110~190℃、処理時間5分~24時間の条件で行われる、請求項1又は2に記載の疎水化処理物の製造方法。
【請求項7】
前記被処理物が、粒子である、請求項1又は2に記載の疎水化処理物の製造方法。
【請求項8】
前記被処理物が、半導体ウエハである、請求項1又は2に記載の疎水化処理物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、疎水化処理物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカやアルミナなどの酸化物粒子は、電子材料や自動車向けの樹脂部材の無機充填剤として広く使用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-132753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無機酸化物には疎水性が高いことが求められる場合がある。
【0005】
本開示は、無機酸化物を疎水化することが可能な新規な疎水化処理物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、無機酸化物を表面に有する被処理物及び水を含む酸性の反応液を水熱処理することで無機酸化物を疎水化する工程を備える、疎水化処理物の製造方法である。
【0007】
[1]無機酸化物を表面に有する被処理物及び水を含む酸性の反応液を水熱処理することで上記無機酸化物を疎水化する工程を備える、疎水化処理物の製造方法。
[2]上記無機酸化物が、アルミナである、[1]に記載の疎水化処理物の製造方法。
[3]上記無機酸化物が、シリカである、[1]又は[2]に記載の疎水化処理物の製造方法。
[4]上記無機酸化物が、セリアである、[1]~[3]のいずれかに記載の疎水化処理物の製造方法。
[5]上記水熱処理が、温度110~300℃の条件で行われる、[1]~[4]のいずれかに記載の疎水化処理物の製造方法。
[6]上記水熱処理が、温度110~190℃、処理時間5分~24時間の条件で行われる、[1]~[5]のいずれかに記載の疎水化処理物の製造方法。
[7]上記被処理物が、粒子である、[1]~[6]のいずれかに記載の疎水化処理物の製造方法。
[8]上記被処理物が、半導体ウエハである、[1]~[6]のいずれかに記載の疎水化処理物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一側面によれば、無機酸化物を疎水化することが可能な新規な疎水化処理物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成される限り、他の工程と明確に区別できない工程も含む。本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
(疎水化処理物の製造方法)
本実施形態に係る疎水化処理物の製造方法は、無機酸化物を表面に有する被処理物及び水を含む酸性の反応液を水熱処理することで無機酸化物を疎水化する工程を備える。
【0012】
被処理物の表面に占める無機酸化物の面積割合は、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は100%であってよい。
【0013】
被処理物の形状は、密閉容器に収容可能であり、被処理物の表面に水及び酸が接触可能であれば特に限定されない。被処理物の形状は、例えば、筒状、柱状、球状、不定形及び板状が挙げられる。被処理物は、粒子であってよい。被処理物は、半導体ウエハであってよい。
【0014】
無機酸化物は酸素より電気陰性度が低い元素で、少なくとも1つの二価以上のイオンとなる元素で構成されている。
【0015】
無機酸化物としては、例えば、シリカ、セリア、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等、酸化スズ、酸化スカンジウム、酸化バナジウム及び酸化クロムがあげられる。無機酸化物は、2種以上の金属からなる複酸化物でもよい。このような複酸化物としては、例えば、チタン酸リチウム、チタン酸バリウム及び酸化マグネシウムアルミニウムが挙げられる無機酸化物は、例えば、溶融法、ゾル-ゲル法及び液相法等により作製してよい。
【0016】
反応液は酸性である。酸性とは、pHが7.0未満であることを意味する。反応液は酸を水に添加することで酸性に調整されてよい。酸の飽和蒸気圧は、密閉容器の耐圧性を低くできる傾向があることから、水よりも低いことが好ましい。飽和蒸気圧が水より高い酸としては、例えば、硫酸及び酢酸が挙げられる。飽和蒸気圧が水より低い酸としては、例えば、塩酸が挙げられる。また、表面に酸性処理を施したゼオライトのような固体酸触媒を酸として用いてもよい。
【0017】
反応液のpHは、7.0未満であり、6.0以下、5.0以下、4.0以下又は3.0以下であってよい。
【0018】
水熱処理は、水及び酸と共に被処理物を耐圧性の密閉容器内に封入し、密閉したまま100℃を超える温度で加熱することで行うことができる。被処理物及び水を含む反応液が密閉容器内で加熱されることで、密閉容器内が加熱及び加圧環境となり、水熱処理(水熱合成)が行われる。
【0019】
水熱処理は、上記密閉容器内に外部から水蒸気(スチーム)を供給することで行われてもよい。水蒸気を外部から供給することで、密閉容器内を短時間で昇温昇圧することができ、水熱処理環境を容易に形成及び維持することができる。水蒸気の供給は、例えば、ボイラーを用いて行うことができる。水蒸気の供給は、被処理物及び水を含む反応液を密閉容器内で加熱する方法と組み合わせて行ってもよい。水蒸気の供給量は、密閉容器内が所定の温度及び圧力となるように適宜調整される。
【0020】
水熱処理は、反応液を撹拌しながら行ってもよい。耐圧性の密閉容器としては、水熱処理に使用可能な公知の容器を特に制限なく用いることができる。耐圧性の密閉容器としては、例えば、オートクレーブを用いることができる。
【0021】
反応液における被処理物の含有量は、水熱処理を行うのに十分な量の水を確保できれば特に制限されないが、水100体積部に対して、10体積部以上、20体積部以上又は50体積部以上であってよく、300体積部以下、200体積部以下又は100体積部以下であってもよい。反応液における被処理物の含有量は、反応液の粘度が高くなりすぎず攪拌しやすく処理効率が向上する傾向があることから、100体積部以下であることが好ましい。
【0022】
水熱処理の反応条件は特に限定されないが、例えば、110~300℃で0.5分~24時間とすることができる。反応温度が110℃以上であると、水熱反応がより良好に発生しやすい傾向があり、300℃以下であると、反応液中のイオン濃度が高く、反応が短時間で進行する傾向がある。反応温度は、170℃以上であることが好ましく、260℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましい。反応時間は、5分~24時間であることが好ましく、0.5~24時間であることがより好ましく、5~15時間であることが更に好ましい。反応時間が24時間以下であると、反応の進行とコストとのバランスがとりやすくなる傾向がある。
【0023】
水熱処理は、低温(例えば250℃未満)且つ長時間(例えば1時間以上)の条件で行うことが、疎水性が一層向上することから好ましい。反応温度が250℃未満であると、反応後の冷却時に反応液の突沸が生じにくく、突沸で反応液が容器の外に飛散して疎水化処理物の収率が低下することを抑制できる傾向がある。反応温度が250℃未満であると反応液の冷却時間を短縮して作業効率が向上できる傾向がある。また、反応時間が1時間以上であることで低温であっても疎水化の反応を十分に進行できる傾向がある。
【0024】
水熱処理時の容器内の圧力は、上記反応温度に対応する飽和蒸気圧又はそれ以上であればよいが、装置の耐圧性の観点から、飽和蒸気圧であることが好ましい。密閉容器内に水蒸気を供給する場合、上述した反応温度の飽和水蒸気を供給することが好ましい。
【0025】
(ハンセン溶解度指数(HSP)による疎水性評価)
本明細書において無機酸化物が疎水化されているとは、未処理の無機酸化物と比較して、ハンセン溶解度指数の分極力項(δp1)と水素結合力項(δh1)のうち少なくとも一方の項の値が2以上低くなっていることを意味する。
【0026】
これまで無機酸化物表面の水酸基濃度や疎水性評価法は表面赤外スペクトル測定法や水素化金属、有機金属化合物による滴定法などが知られているが、精度や求められる湿度、水分量管理の厳密さなどが原因で再現性が低いことや定量性が乏しいという問題があった。そこで、発明者らは鋭意検討した結果、以下に示すHSP測定法で定量性、再現性を満足可能な疎水性評価法となることを見出した。
【0027】
具体的には、一般的に使用される物質のδ、δ及びδはデータベース等の公知の情報源があるため、例えば、データベースを参照することによって所望の物質のδ、δ及びδを入手することができる。データベースに登録されていない物質のパラメータは、例えば、HSPiP(Hansen Solubility Parameter in Practice;written by Prof. Steven Abbott and Dr. Yamamoto Hiroshi)等のコンピュータソフトウェアを用いて算出できる。
【0028】
例えば、無機酸化物の粒子のδd1、δp1及びδh1は、次の手順で算出できる。まず、パラメータ(δ、δ及びδ)が公知の16種類の評価用溶媒を準備する。次に、各評価用溶媒に対する評価対象の粒子の分散性試験を行い、各評価用溶媒が「分散性が優れる溶媒」及び「分散性が劣る溶媒」のいずれであるかを判定する。分散性試験は、後述の実施例に示す方法により行うことができる。続いて、δ、δ及びδを座標軸とする三次元空間(ハンセン空間)に各評価用溶媒をプロットした後、「分散性が劣る溶媒」の全てを包含することなく「分散性が優れる溶媒」の全てを包含する仮想の真球を三次元空間に作成する。そして、真球の中心のδ、δ及びδを粒子のδd1、δp1及びδh1として得ることができる。
【0029】
δd1、δp1及びδh1は、粒子の材料種、粒径、粒度分布(粒径の変動係数)、表面処理内容(表面処理剤の種類、表面処理剤の使用量、表面処理方法等)などに応じて変化する。例えば、粒径が大きいほど、δd1は増加する傾向があり、δp1及びδh1は減少する傾向がある。また、粒径の変動係数が大きいほど、δp1は増加する傾向があり、δh1は減少する傾向がある。表面処理後の粒子のδd1、δp1及びδh1は、表面処理の影響を考慮した表面処理後の粒子全体を対象とする。δd1、δp1及びδh1としては、25℃における数値を用いることができる。
【実施例0030】
以下、実施例及び比較例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
被処理物としてシリカ粒子(日本触媒(株)製、商品名「KE-S50」)を準備した。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた実像観察に基づき、当該粒子の粒径D50(以下、「粒径A」という)及び粒径D100を得た。粒径Aは、0.5μmであった。
【0032】
当該シリカ粒子(粒径A:0.5μm)18gを超純水162gに分散させ、pH計(As One社製)で分散液のpHを確認しながら硫酸を所定量加えることでpH2の反応液1を調整した。これを容量200mlのテフロン(登録商標)容器に封入し、更にそのテフロン(登録商標)容器をステンレス製耐圧容器に収め、耐圧容器を密閉した。密閉した耐圧容器内で、テフロン(登録商標)容器内の溶液を、マグネティックスターラーを用いて回転数700rpmで撹拌しながら、反応液の温度が180℃となるようにヒーターで加熱した。180℃到達後、撹拌を続けながら180℃で5時間水熱処理を行った。その後、加熱及び撹拌を止めて常温(25℃)まで自然冷却した。なお、水熱処理中の最高到達温度は181℃であった。冷却後、テフロン(登録商標)容器内の溶液及び固形分をビーカーに取り出し、超純水を加えて800mlに希釈し、1晩放置してシリカ粒子を沈降させ、上澄み液をスポイトで分離した。上澄み液のpHが7になるまで希釈と分離を繰り返した。その後、上澄み液を130℃で3時間、オーブンで乾燥し、粉末状の酸性水熱反応シリカ1を15.6g得た。
【0033】
(比較例1)
未処理のシリカ粒子(粒径A:0.5μm)を比較例1のサンプルとした。
(比較例2)
シリカ粒子(日本触媒(株)製、商品名「KE-S50」、粒径A:0.5μm)18gを超純水162gに分散させ、pH計(As One社製)で分散液のpHを確認しながら硫酸を所定量加えることでpH7の反応液2を得た。反応液1に代えて反応液2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして水熱反応シリカ粒子2を得た。
【0034】
<評価方法>
(サンプルのハンセン溶解度指数の測定)
次に、16個の容器(スクリュー瓶)のそれぞれに粒子0.02gを入れた後、16種類の有機溶媒20mLを各容器に入れることにより試験液(粒子含有量:約0.1質量%)を調製した。16種類の有機溶媒としては、MIBK(メチルイソブチルケトン)、トルエン、メタノール、シクロヘキサノール、アセトン、アセトニトリル、ホルムアミド、安息香酸ベンジル、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、エタノール、無水酢酸、γ-ブチロラクトン、MEK(メチルエチルケトン)、1-ブタノール、及び、シクロヘキサンを用いた。超音波分散装置(AS ONE株式会社製、商品名「VS-D100」)を用いて上述の試験液に5分間分散処理を施した。次に、粒度分布計(株式会社島津製作所製、商品名「SALD-7500」)を用いて試験液における粒子の粒度分布(累積粒度分布、体積分布)を測定した。上述の16種類の有機溶媒を用いた場合のそれぞれについて、この粒度分布の測定結果に基づき粒径D50(以下、「粒径B」という)を得た。なお、粒度分布が定められた標準粒子(MBP1-10)の粒度分布を事前に測定し、測定内容が妥当であることを確認した。
【0035】
上述の粒度分布の測定結果に基づき、上述の16種類の有機溶媒を用いた場合のそれぞれについて、粒径の変動係数(CV)を得た。変動係数が20以上である場合を多分散状態であると判断し、変動係数が20未満である場合を単分散状態であると判断した。上述の16種類の有機溶媒について、下記の基準で「分散性が劣る溶媒」及び「分散性が優れる溶媒」のいずれであるかを判定した。
【0036】
単分散状態における凝集の基準について、上述の粒径Aの2倍の粒径(二つの粒子が接触した際の粒径を想定)を閾値として採用し、上述の粒径Bが当該閾値以上である場合の有機溶媒を「分散性が劣る溶媒」と判定し、上述の粒径Bが当該閾値未満である場合の有機溶媒を「分散性が優れる溶媒」と判定した。
【0037】
一方、多分散状態における凝集の基準について、粒径の分布が広いため、凝集粒子を対象としやすい基準を設けることが望ましい観点から、上述の粒径D100を閾値として採用し、上述の粒径Bが当該閾値以上である場合の有機溶媒を「分散性が劣る溶媒」と判定し、上述の粒径Bが当該閾値未満である場合の有機溶媒を「分散性が優れる溶媒」と判定した。
【0038】
次に、解析ソフトHSPiP(Hansen Solubility Parameter in Practice;written by Prof. Steven Abbott and Dr. Yamamoto Hiroshi)を用いて、δ、δ及びδを座標軸とする三次元空間(ハンセン空間)に上述の16種類の有機溶媒をプロットした。各有機溶媒のδ、δ及びδとして、上述の解析ソフトのデータベースの数値を用いた。
【0039】
続いて、上述の「分散性が劣る溶媒」の全てを包含することなく上述の「分散性が優れる溶媒」の全てを包含する仮想の真球を上述の三次元空間に作成した。そして、この真球の中心のδ、δ及びδを粒子のδd1、δp1及びδh1として得た。実施例及び比較例における粒子のδd1、δp1及びδh1を表1に示す。
【表1】
【0040】
HSPの3つの項のうち、疎水化に影響する項は、分極力に起因するδp1と水素結合力に起因するδh1である。この2つの項のうち少なくとも一方の項の値が2以上低くなっていると、無機酸化物の水酸基が減少したと考えられ、ひいては疎水化したと判断できる。
【0041】
被処理物がシリカ粒子である実施例1と比較例1を比較すると、実施例1は、δp1及びδh1とも値が減少しておりδp1が2以上減少しているため、水熱処理でシリカ粒子が疎水化しているとわかる。
【0042】
一方、比較例1と比較例2とを比較するとほとんどHSPに変化が無いことから、中性での水熱処理では無機酸化物は疎水化しないことが分かる。