(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128459
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】土壌改良材、土壌改良材の製造方法、及び土壌の改良方法
(51)【国際特許分類】
C09K 17/14 20060101AFI20240913BHJP
C09K 17/32 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C09K17/14 H ZAB
C09K17/32 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037444
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】山本 恭介
(72)【発明者】
【氏名】船守 晴帆
【テーマコード(参考)】
4H026
【Fターム(参考)】
4H026AA10
4H026AA17
4H026AB03
4H026AB04
(57)【要約】
【課題】優れた土壌改良効果を有し、施用時の作業負担が少なく、有効成分含量が安定化し、製造コストの削減を実現し得る技術を提供すること。
【解決手段】糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓と、バイオマスと、を含有し、比重が0.55kg/L以下である、土壌改良材を提供する。また、糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓と、バイオマスと、を混合する混合工程と、前記混合工程後の混合物を乾燥する乾燥工程と、を含み、前記混合工程及び/又は前記乾燥工程において、土壌改良材の比重が0.55kg/L以下となるように前記土壌改良材を調製する、土壌改良材の製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓と、
バイオマスと、
を含有し、
比重が0.55kg/L以下である、土壌改良材。
【請求項2】
水分含有量が、15質量%以下である、請求項1に記載の土壌改良材。
【請求項3】
前記バイオマスの含有量が、25質量%以上75質量%以下である、請求項1に記載の土壌改良材。
【請求項4】
前記バイオマスが、穀物類バイオマスである、請求項1に記載の土壌改良材。
【請求項5】
前記穀物類バイオマスが、脱脂米ぬか、大豆皮、小麦ふすま、グルテンフィードから選択される1以上の穀物類バイオマスである、請求項4に記載の土壌改良材。
【請求項6】
糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓と、バイオマスと、を混合する混合工程と、
前記混合工程後の混合物を乾燥する乾燥工程と、
を含み、
前記混合工程及び/又は前記乾燥工程において、土壌改良材の比重が0.55kg/L以下となるように前記土壌改良材を調製する、土壌改良材の製造方法。
【請求項7】
糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓を土壌に施用する糖化ろ滓施用工程と、
バイオマスを土壌に施用するバイオマス施用工程と、
を含み、
前記糖化ろ滓と前記バイオマスを合わせた場合の比重が0.55kg/L以下となるように、前記糖化ろ滓及び/又は前記バイオマスを調製する、土壌の改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、土壌改良材に関する。より詳細には、土壌改良材、該土壌改良材の製造方法、及び土壌の改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌中の病原微生物を抑制するための土壌消毒が広く行われているが、化学的防除の例としては、クロルピクリンなどを用いるガス消毒など、耕種的防除の例としては、高温の蒸気を用いる蒸気消毒、太陽熱消毒、還元消毒などが知られている。
【0003】
中でも還元消毒は、化学薬剤を使わない環境への負荷が低減された土壌消毒法として実施され、土壌中の病原微生物の種類にかかわらず高い効果が期待できる。還元消毒では、具体的には、米ぬかや小麦フスマなどの有機物を圃場に散布し、ロータリーなどで耕起して土壌に混和し、灌水を行った後、樹脂製フィルムなどで地表面を被覆し、3~4週間程度地温を25~30℃以上に保つことによって、土壌微生物を急激に増殖させて土壌を急激な還元状態にする。病原微生物は酸素を必要とするため、土壌を還元状態にすることによって、土壌中の病原微生物を減少・死滅させることができる。
【0004】
還元消毒に用いる有機物として、食品製造における副生物を利用することが検討されている。例えば、特許文献1には、小麦フスマ及び/又は末粉から主としてなる造粒物を土壌に混合して発酵させ、還元状態にすることにより土壌を消毒する方法が記載されている。非特許文献1~2では、食品工場から排出されるタピオカ澱粉由来のアミノ酸生成過程の副生物を還元消毒に用いることが検討されており、糖含有珪藻土と糖蜜吸着資材を含む資材を土壌還元消毒に用いてトマトの青枯病を防除することが試験されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-61003号公報
【特許文献2】特開2020-204019号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「新規資材を用いた土壌還元消毒によるトマト青枯病の防除」(農業試験場ニュースNo128、和歌山農業試験場、平成29年1月発行)
【非特許文献2】大谷洋子「トマト青枯病菌に対する糖含有珪藻土と糖蜜吸着資材を用いた土壌還元消毒の処理条件の検討」(関西病虫研報(60):71-76, 2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1のように、食品製造で副生する小麦フスマを用いて土壌の還元消毒を行うことが提案されていたが、土壌の深層部まで還元消毒を行うことが難しい場合があった。また、還元消毒のために用いる有機物に窒素分が多いと、還元消毒によってドブのような臭い(ドブ臭)が発生するという問題もあった。これを解決するために、本願出願人は、トウモロコシなどを原料として糖質を製造する際に副生する糖化ろ滓を用いて還元消毒を行うことによって、効果的に土壌を還元状態にして病原微生物を抑制できることを見出し、先に特許出願を行っている(特許文献2)。
【0008】
本技術では、更なる技術の発展を目指し、特許文献2に記載の土壌改良材の効果に加えて、施用時の作業負担が少なく、組成の振れが小さくなるため有効成分含量が安定化しやすく、製造コストの削減を実現し得る技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術では、まず、糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓と、
バイオマスと、
を含有し、
比重が0.55kg/L以下である、土壌改良材を提供する。
本技術に係る土壌改良材の水分含有量は、15質量%以下とすることができる。
本技術に係る土壌改良材において、前記バイオマスの含有量は、25質量%以上75質量%以下とすることができる。本技術に係る土壌改良材において、前記バイオマスとしては、穀物類バイオマスを用いることができる。この場合、前記穀物類バイオマスとしては、脱脂米ぬか、大豆皮、小麦ふすま、グルテンフィードから選択される1以上の穀物類バイオマスを用いることができる。
【0010】
本技術では、次に、糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓と、バイオマスと、を混合する混合工程と、
前記混合工程後の混合物を乾燥する乾燥工程と、
を含み、
前記混合工程及び/又は前記乾燥工程において、土壌改良材の比重が0.55kg/L以下となるように前記土壌改良材を調製する、土壌改良材の製造方法を提供する。
【0011】
本技術では、更に、糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓を土壌に施用する糖化ろ滓施用工程と、
バイオマスを土壌に施用するバイオマス施用工程と、
を含み、
前記糖化ろ滓と前記バイオマスを合わせた場合の比重が0.55kg/L以下となるように、前記糖化ろ滓及び/又は前記バイオマスを調製する、土壌の改良方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例において、土壌改良材の評価に用いた実験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
1.土壌改良材
本技術に係る土壌改良材は、糖化ろ滓と、バイオマスと、を含有し、比重が0.55kg/L以下であることを特徴とする。以下、本技術に係る土壌改良材の詳細を説明する。
【0015】
(1)糖化ろ滓
本技術で用いる糖化ろ滓とは、糖質原料を糖化する糖化工程で生じる副生物である。具体的には、糖化ろ滓とは、例えば、コーンスターチ、水あめ、粉あめ、オリゴ糖、麦芽糖、異性化糖、ぶどう糖などの糖化製品を製造する際に副生するものであり、糖化工程における不純物の除去や脱色を行うろ過工程で排出され、主として、ろ材と糖質を含有する。
【0016】
本技術で用いる糖化ろ滓の原料となる糖質原料としては、本技術の作用効果を損なわない限り、糖化を行うことができる植物原料を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。糖質原料としては、例えば、トウモロコシ、菜種、米、小麦、大麦、ライ麦、オーツ麦、大豆、小豆、エンドウ豆、ヒマワリ種、綿実、ジャガイモ、サツマイモ、サトウキビ、ビート、トマト、ミカン等が挙げられる。
【0017】
本技術で用いる糖化ろ滓に含まれるろ材としても、本技術の作用効果を損なわない限り、糖化工程における不純物の除去や脱色を行うろ過工程で用いることができるろ材を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。ろ材としては、多孔質構造を有するろ材が好ましく、例えば、珪藻土、パーライト、活性炭、ゼオライト等が挙げられる。珪藻土、パーライト、活性炭等は、食品製造の糖化工程などにおいて、食品を精製するためのろ材として用いられ、使用後に糖化ろ滓として排出される。
【0018】
珪藻土は、単細胞藻類の一種である珪藻が堆積してできた岩石を乾燥、粉砕、分級して精製し、必要に応じて焼成や分級などをして製造される。珪藻土は、空隙率が大きいため、液体の吸収能力やろ過能力が良好で、ろ材として広く利用されている。パーライトは、ガラス質の火山岩を加熱して製造され、多孔質構造を有する。活性炭は、植物質、石炭質、石油質、動物質などの有機物を原材料とし、水蒸気や二酸化炭素、空気などのガス又は塩化亜鉛などの化学薬品を用いて炭化させて製造される。活性炭は多孔質構造を有する物質であり、多くの物質を吸着させる性質があることから、脱臭や水質浄化など、有害物質や不純物の吸着に利用されている。
【0019】
本技術で用いるろ材は、分級等によって粒度を揃えたろ材を好適に使用することができる。ろ材の形態は、本技術の作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。ろ材の平均粒子径の下限としては、例えば1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。ろ材の平均粒子径の下限をこの範囲とすることで、土壌改良材を用いた土壌改良作業時の作業性を向上することができる。
【0020】
また、ろ材の平均粒子径の上限としては、例えば120μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。ろ材の平均粒子径の上限をこの範囲とすることで、土壌改良材の土壌改良効果を向上することができる。
【0021】
ろ材の空隙率(空間率)も特に限定されず、例えば、空隙率(空間率)は約80~90%のろ材を用いることができる。
【0022】
本技術に用いる糖化ろ滓は、多孔質構造を有するろ材に糖質等の成分が吸着しているため、これを用いた土壌改良材を土壌に混合すると、適切な速度で土壌中に均一に成分を行き渡らせることが可能である。また、本技術に係る土壌改良材は、土壌改良作業時に水によって、ろ材に吸着している糖質等の成分が溶出するとともに土壌深層部に浸透していくため、土壌改良材と土壌との混和域のみならず、混和域よりも深い土壌深層部においても優れた土壌改良効果を奏することができる。
【0023】
また、本技術に用いる糖化ろ滓はろ材を含んでいるため、米ぬかや小麦フスマのみを用いた還元消毒と比較して、ろ材に含まれる鉄、カルシウムなどのミネラル成分を土壌に多く補給することができる。
【0024】
本技術に用いる糖化ろ滓中のろ材の量は、本技術の作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。糖化ろ滓中のろ材の含有量の下限としては、乾燥重量あたり、例えば5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。糖化ろ滓中のろ材の含有量の下限をこの範囲とすることで、土壌改良効果をより向上させることができる。
【0025】
糖化ろ滓中のろ材の含有量の上限としては、乾燥重量あたり、例えば90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、よりさらに好ましくは60質量%以下である。糖化ろ滓中のろ材の含有量の上限をこの範囲とすることで、過量のろ材による有効成分含量の低下を防止できる。
【0026】
また、本技術に係る土壌改良材中のろ材の量は、本技術の作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。土壌改良材中のろ材の含有量の下限としては、乾燥重量あたり、例えば1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上である。土壌改良材中のろ材の含有量の下限をこの範囲とすることで、土壌改良効果をより向上させることができる。
【0027】
本技術に係る土壌改良材中のろ材の含有量の上限としては、乾燥重量あたり、例えば55質量%以下、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。土壌改良材中のろ材の含有量の上限をこの範囲とすることで、過量のろ材による有効成分含量の低下を防止できる。
【0028】
本技術に用いる糖化ろ滓は、以上説明したろ材1トン当たりのろ過量が50m3以上となるように糖化物をろ過したものが好ましく、ろ材1トン当たりのろ過量が100m3以上となるように糖化物をろ過したものがより好ましく、ろ材1トン当たりのろ過量が200m3以上となるように糖化物をろ過したものが更に好ましい。
【0029】
本技術に用いる糖化ろ滓中の糖質の量は、本技術の作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。糖化ろ滓中の糖質の含有量の下限としては、乾燥重量あたり、例えば10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。糖化ろ滓中の糖質の含有量の下限をこの範囲とすることで、土壌改良効果をより向上させることができる。
【0030】
糖化ろ滓中の糖質の含有量の上限としては、乾燥重量あたり、例えば50質量%以下、好ましくは48質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。糖化ろ滓中の糖質の含有量の上限をこの範囲とすることで、過量の糖質による土壌中への糖質の残留を防ぐことができ、消毒後土壌における植物の生育障害を回避できる。
【0031】
また、本技術に係る土壌改良材中の糖質の量は、本技術の作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。なお、本技術において、土壌改良材中の糖質の含有量とは、後述する穀物類バイオマスに含まれる糖質も包含した量である。
【0032】
土壌改良材中の糖質の含有量の下限としては、乾燥重量あたり、例えば10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。土壌改良材中の糖質の含有量の下限をこの範囲とすることで、土壌改良効果をより向上させることができる。
【0033】
本技術に係る土壌改良材中の糖質の含有量の上限としては、乾燥重量あたり、例えば90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。土壌改良材中の糖質の含有量の上限をこの範囲とすることで、過量の糖質によって土壌中への糖質の残留を防ぐことができやすく、消毒後土壌における植物の生育障害を回避できる。
【0034】
以上説明した糖化ろ滓の土壌改良材中の含有量は、本技術の作用効果を損なわない限り、自由に設定することができるが、糖化ろ滓に含まれる有効成分である糖質の量を考慮して設定することが好ましい。土壌改良材中の糖化ろ滓の含有量の下限としては、例えば10質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。土壌改良材中の糖化ろ滓の含有量の下限をこの範囲とすることで、土壌改良効果をより向上させることができる。
【0035】
本技術に係る土壌改良材中の糖化ろ滓の含有量の上限としては、例えば90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。土壌改良材中の糖化ろ滓の含有量の上限をこの範囲とすることで、有効成分含量が安定化し、製造コストの削減にも寄与することができる。
【0036】
(2)糖化ろ滓の製造方法
糖質原料を糖化する場合、糖質原料からデンプンを抽出した後、アミラーゼなどの酵素を用いて液化し、次いで、グルコアミラーゼ等の糖化酵素を用いて糖化が行われる。そして、糖化後の反応液について、珪藻土や活性炭などのろ材を用いてろ過が行われ、その際に、上述したような糖化ろ滓が排出される。
【0037】
本技術に用いる糖化ろ滓は、食品製造の糖化工程におけるろ過の際に排出されるが、ろ過の方法は特に制限されず、一般的なろ過方法を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。ろ過装置を用いる場合は、圧力をかけたり、連続式で処理してもよい。本技術に用いる糖化ろ滓は、ろ過直後はケーキ状であることが多いが、これに限定されず、例えば、粉状、粒状、顆粒状、フレーク状にすることができる。また、脱水、乾燥、粉砕、造粒などの加工を行うことによって、糖化ろ滓の性状を調整することも可能である。
【0038】
脱水や乾燥を行う場合、脱水後や乾燥後の糖化ろ滓の水分量は、用いる土壌改良材に性状等に応じて、自由に設定することができる。糖化ろ滓の水分含量としては、例えば50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは15%以下である。なお、本技術においては、糖化ろ滓の状態で予備乾燥を行い、土壌改良材を製造する際に、目的の水分量まで乾燥することも可能である。
【0039】
(3)バイオマス
本技術に係る土壌改良材は、バイオマスを含有することを特徴とする。バイオマスとは、化石資源を除いた再生可能な動植物由来の有機性資源をいい、例えば、植物由来の物質、穀物由来の物質、食料、資材、燃料、資源等を挙げることができる。
【0040】
特に植物由来のバイオマスは、比重が低いため、土壌の表層部(深さ0cm~25cm付近)に留まりやすく、表層部において土壌還元効果を発揮し易い。本技術では、深層部における土壌還元効果の高い糖化ろ滓と、表層部における土壌還元効果の高いバイオマスとを併用することで、土壌の表層部から深層部までバランスの良い土壌還元効果を実現できる。
【0041】
また、バイオマスと糖化ろ滓を混合することにより、土壌改良材中に空気を取り込み、空気を含んだ(空隙のある)土壌改良材となる。このため灌水時には、土壌改良材の空隙に水が均一に入り込み、従来の土壌改良材に比べて、土壌還元効果が発揮されやすいといった特徴がある。
【0042】
本技術に用いるバイオマスとしては、本技術の作用効果を損なわない限り、あらゆる動植物由来の有機性資源を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。特に、本技術では、穀物由来の穀物類バイオマスを用いることが好ましい。穀物類バイオマスとしては、例えば、脱脂米ぬか、大豆皮、小麦ふすま、グルテンフィード等が挙げられる。
【0043】
本技術に係る土壌改良材中のバイオマスの含有量は、本技術の作用効果を損なわない限り、自由に設定することができるが、バイオマスに含まれる有効成分の量を考慮して設定することが好ましい。具体的には、例えば、穀物類バイオマスを用いる場合は、穀物類バイオマスに含まれる有効成分である糖質の量を考慮して設定することが好ましい。土壌改良材中のバイオマスの含有量の下限としては、例えば10質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。土壌改良材中のバイオマスの含有量の下限をこの範囲とすることで、有効成分含量が安定化し、製造コストの削減にも寄与することができる。
【0044】
本技術に係る土壌改良材中のバイオマスの含有量の上限としては、例えば80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。土壌改良材中のバイオマスの含有量の上限をこの範囲とすることで、土壌改良効果をより向上させることができる。
【0045】
(4)比重
本技術に係る土壌改良材は、比重が0.55kg/L以下であることを特徴とする。土壌改良材の比重が0.55kg/L以下であることで、体積当たりの重量が軽くなるため、施用時の作業負担を軽減することができる。本技術に係る土壌改良材は、糖化ろ滓と穀物類バイオマスとを併用することで、糖質含量が安定化し、土壌深層部の消毒効果の振れを減らすことができる。そのため単位面積当たりの施用量が減少しても十分な土壌改良効果を発揮することができる。
【0046】
本技術において、土壌改良材の比重は0.55kg/L以下であればよいが、好ましくは0.53kg/L以下、より好ましくは0.52kg/L以下、更に好ましくは0.50kg/L以下である。土壌改良材の比重を小さくすることで、施用時の作業負担を更に軽減することができる。
【0047】
本技術において、土壌改良材の比重の下限値は、本技術の作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術に係る土壌改良材の比重の下限は、例えば0.30kg/L以上、好ましくは0.35kg/L以上、より好ましくは0.38kg/L以上である。土壌改良材の比重の下限をこの範囲に設定することで、施用時の作業性が向上すると共に、土壌改良効果が損なわれるのを防止することができる。
【0048】
なお、本技術において、比重は、以下の方法で測定された値である。
[比重の測定方法]
3.5meshの篩(目開き5.6mm,線径1.6mm)を通した資材を、内径10cm四方の升に入れ(容量1L)、2,3回約5cmの高さから打ち付け均一にならし、すりきり、計測を行う。
【0049】
(5)水分含有量
本技術に係る土壌改良材は、混合する土壌中の水分含量、土壌の透水性や保水性、混合後の給水の有無などに応じてその水分含量を調整することができる。
【0050】
本発明に係る土壌改良材の水分含有量は、本技術の作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術に係る土壌改良材の水分含有量の上限は、例えば20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。本技術に係る土壌改良材の水分含有量をこの範囲に設定することで、施用時の作業性が向上すると共に、土壌改良材の保存性を向上することができる。
【0051】
本技術に係る土壌改良材の水分含有量の下限は、例えば3質量%以上、好ましくは5質量%以上である。土壌改良材の水分含有量が少なすぎると、施用時に土壌改良材が飛散しやすくなったり、成型加工がし難くなったりすることがあるが、本技術に係る土壌改良材の水分含有量をこの範囲に設定することで、施用時の作業性が向上すると共に、土壌改良材の成型加工性を向上させることができる。
【0052】
(6)形状・大きさ
本技術に係る土壌改良材の形状としては、本技術の作用効果を損なわない限り特に限定されず、目的に応じて自由に設計することができる。本技術に係る土壌改良材の形状としては、例えば、粉状、粒状、顆粒状、フレーク状、円柱形のペレット状、楕円体形のペレット状、角柱状、球状、立方体状、これらの形状を1種又は2種以上組み合わせた形状等に成形することができる。このような形状であれば、農業機械を用いて圃場に散布しやすいため、広範囲の土壌消毒にも適用しやすい。
【0053】
また、本技術に係る土壌改良材は、前記のように成形して用いる場合には、その成形品が多孔質構造を有していることが好ましい。多孔質構造を呈する土壌改良材は、その立体形状が土壌中で崩壊しやすくなり、より速やかに発酵して、土壌の還元化(還元消毒)を促進することができる。
【0054】
本技術に係る土壌改良材を成形して造粒物とする場合、その大きさも、本技術の作用効果を損なわない限り、自由に設計することができる。本技術に係る土壌改良材は、最大サイズ部分の寸法が2~25mmの範囲内、特に3~20mmの範囲内とすることが好ましく、最小サイズ部分の寸法は1~15mmの範囲内、特に1~10mmの範囲内とすることが好ましい。ここで、「最大サイズ部分」とは1個の造粒物における最も寸法の大きな部分(例えば造粒物の長さ、径、辺などのうちの最長部分)をいい、また「最小サイズ部分」とは1個の造粒物における最も寸法の小さな部分(例えば造粒物の長さ、径、辺などのうちの最短部分)をいう。例えば、造粒物が円柱形のペレットであるときに、直径の方が長さよりも小さい場合、「最大サイズ部分」はペレットの長さ、「最小サイズ部分」はペレットの直径を意味し、逆にペレットの直径の方が長さよりも大きい場合は、「最大サイズ部分」はペレットの直径を、「最小サイズ部分」はペレットの長さを意味する。
【0055】
(7)使用量
土壌への土壌改良材の使用量は、土壌の種類、pH、含水量、保水性、透水性、土壌中に含まれることが予想される有害微生物の種類などによって適宜調整することができる。本技術に係る土壌改良材の使用量の下限は、土壌の面積に対して、土壌改良材の乾燥重量あたり、例えば0.1t/10a(アール)以上、好ましくは0.2t/10a以上、より好ましくは0.5t/10a以上である。土壌改良材の使用量の下限をこの範囲に設定することで、土壌中での発酵不良を防止し、土壌改良効果を向上させることができる。
【0056】
本技術に係る土壌改良材の使用量の上限は、土壌の面積に対して、土壌改良材の乾燥重量あたり、例えば10t/10a以下、好ましくは8t/10a以下、より好ましくは5t/10a以下である。土壌改良材の使用量の下限をこの範囲に設定することで、土壌中での発酵不良を防止し、土壌改良効果を向上させることができると共に、施用時の作業性が向上し、コスト削減に貢献することができる。
【0057】
(8)その他の成分
本技術に係る土壌改良材には、本技術の作用効果を損なわない限り、微生物資材や他の成分を含有させることもできる。例えば、微生物資材と併用することによって、土壌中における土壌改良材の発酵がより促進されるため、土壌の還元化及びそれに伴う土壌の消毒を一層促進することができる。
【0058】
本技術で用いることができる微生物資材としては、例えば、土壌で生育させようとする植物に対して無害であり、人やその他の動物などに対しても無害で、土壌温度が上昇しても死滅しない微生物又は該微生物を含有する資材であると好ましい。具体的には、例えば、耐熱性菌(例えば、80℃の温度で20分間処理した後でも生存可能な耐熱性菌)などを好適に使用することができる。更に具体的には、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)などのバチルス属微生物、サーモアクチノミセス・ブルガリス(Thermoactinomyces vulgaris)、サーモモノスポーラ・カーバラ(Thermomonospora curvara)などの好温・好熱性の放線菌、フミコーラ・インソケンス(Humicola insokens)、タラロマイセス・デユポンティ(Talaromyces dupontii)などの好熱性の糸状菌等を挙げることができる。
【0059】
また、本技術に係る土壌改良材には、必要に応じて、例えば、バーミキュライト、パーライト、ゼオライト、珪藻土等の鉱物や、生石灰(CaO)等の防臭剤を、更に含有させることができる。また、他の土壌改良材、普通肥料、特殊肥料等と混合することも可能である。
【0060】
(9)対象土壌
本技術に係る土壌改良材を用いることができる土壌の種類は特に限定されない。例えば、通常の黒土、赤土、砂質土壌、粘土質土壌、それらの混合物からなる土壌、またpH調整された、酸性土壌、中性土壌、アルカリ性土壌のいずれに対しても適用できる。
【0061】
(10)防除対象微生物
本技術に係る土壌改良材は、土壌を還元状態にすることによって、土壌中の有害な微生物などを防除することができる。本技術に係る土壌改良材の防除対象微生物としては、植物の土壌病害を引き起こす病原体となりうる微生物、即ち、土壌中の線虫、植物病原菌(糸状菌、細菌を含む)、昆虫の幼虫及び成虫、植物ウイルス等が挙げられる。
【0062】
線虫としては、ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ等が挙げられる。植物病原菌としては、土壌伝染性のものであれば特に限定されないが、例えば、青枯病菌(Ralstonia solanacearum)、軟腐病菌(Erwinia carotovora)、苗立枯病菌(Pythium spp.)、疫病菌(Phytophthora spp.)、半身萎凋病菌(Verticillium dahliae)、つる割病菌(Fusarium oxysporum)、萎凋病菌(Fusarium oxysporum)、根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)、立枯病菌(Gaeumanomyces gramineum)、白絹病菌(Athelia rolfsii)、紫紋羽病菌(Helicobasidium mompa)、白紋羽病菌(Rosellinia necatrix)、根腐病菌(Aphanomyces euteiches)、根くびれ病菌(Aphanomyces raphani)、黒腐菌核病菌(Sclerotium cepivorum)、粉状そうか病菌(Spongospora subterranea)、そうか病菌(Streptomyces scabies)、根頭がんしゅ病菌(Agrobacterium tumefaciens)、条斑病菌(Cephalosporium gramineum)、落葉病菌(Cephalosporium gregatum)、葉枯病菌(Helminthosporium sativum)、黒根病菌(Thielaviopsis basicola)、苗立枯病菌(Rhizoctonia solani)等が挙げられる。昆虫の幼虫としては、ハリガネムシ、ネキリムシ、コガネムシの幼虫、ハムシの幼虫等が挙げられる。植物ウイルスとしては、線虫媒介ウイルス、微生物媒介ウイルス等が挙げられる。
【0063】
2.土壌改良材の製造方法
本技術に係る土壌改良材の製造方法は、混合工程と、乾燥工程と、を少なくとも行う方法である。また、本技術に係る土壌改良材の製造方法では、必要に応じて、粉砕や造粒などの加工工程を行うこともできる。以下、各工程について説明する。
【0064】
(1)混合工程
混合工程は、糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓と、バイオマスと、を混合する工程である。混合工程では、前述した本技術に係る土壌改良材に用いることができる他の成分も混合することができる。なお、糖化ろ滓、バイオマス、及びその他の成分についての詳細は、前述と同様のため、ここでは説明を割愛する。
【0065】
(2)乾燥工程
乾燥工程は、混合工程後の混合物を乾燥する工程である。乾燥工程を行うことで、本技術に係る土壌改良材を、前述した所望の水分含有量に、調整することができる。乾燥方法は特に限定されず、一般的な土壌改良材の乾燥に用いることができる方法を、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0066】
本技術では、糖化ろ滓とバイオマスとを併用することで、後述する実施例で示すように、土壌改良材の製造時の乾燥効率が高いことを特徴とする。そのため、前述した所望の水分含有量まで、短時間で効率よく乾燥を行うことが可能である。
【0067】
本技術に係る土壌改良材の製造方法では、以上説明した混合工程及び/又は乾燥工程において、土壌改良材の比重が0.55kg/L以下となるように土壌改良材を調製することを特徴とする。具体的には、例えば、糖化ろ滓とバイオマスとの混合比率を工夫することで土壌改良材の比重を調整したり、乾燥工程において混合工程後の混合物の水分含有量を調整することで、土壌改良材の比重を調整することができる。また、糖化ろ滓とバイオマスとの混合比率を工夫することで土壌改良材の比重を調整した上で、乾燥工程において水分含有量を調整することで、土壌改良材の比重を更に細かく調整することができる。
【0068】
(3)その他の工程
本技術に係る土壌改良材の製造方法では、必要に応じて、粉砕や造粒などの加工工程を行うこともできる。粉砕方法や造粒方法は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な土壌改良材の製造時に用いることが可能な粉砕方法や造粒方法を、1種又は2種以上自由に組み合わせて用いることができる。
【0069】
造粒時に用いる装置としては、例えば、押出式ペレットマシーン、エキスパンダー、エクストルーダーなどの押出式造粒装置、圧縮造粒装置、転動式造粒装置等を好適に用いることができる。
【0070】
3.土壌改良方法
本技術に係る土壌改良方法は、糖化ろ滓施用工程と、バイオマス施用工程と、を少なくとも行う方法である。本技術に係る土壌改良方法では、必要に応じて、その他の成分施用工程、水分供給工程、土壌温度調整工程等のその他の工程を行うこともできる。以下、各工程について説明する。
【0071】
(1)糖化ろ滓施用工程
糖化ろ滓施用工程は、糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓を土壌に施用する工程である。糖化ろ滓の土壌への施用方法としては、糖化ろ滓を土壌表面へ散布するだけでも良いが、土壌表面から例えば60cmまでの深さに施用することが好ましい。また、糖化ろ滓と土壌とを混和して施用してもよい。なお、糖化ろ滓についての詳細は、前述と同様のため、ここでは説明を割愛する。
【0072】
(2)バイオマス施用工程
バイオマス施用工程は、バイオマスを土壌に施用する工程である。バイオマスの土壌への施用方法としては、バイオマスを土壌表面へ散布するだけでも良いが、土壌表面から例えば60cmまでの深さに施用すること好ましい。また、バイオマスと土壌とを混和して施用してもよい。なお、バイオマスについての詳細は、前述と同様のため、ここでは説明を割愛する。
【0073】
以上説明した糖化ろ滓施用工程及びバイオマス施用工程は、それぞれ別々に行うこともできるが、同時に行うことも可能である。同時に行う場合は、糖化ろ滓とバイオマスとを混合して土壌改良材とした上で、土壌に施用することもできる。
【0074】
本技術では、糖化ろ滓と前記バイオマスを合わせた場合の比重が0.55kg/L以下となるように、糖化ろ滓及び/又はバイオマスを調製することを特徴とする。具体的には、例えば、糖化ろ滓とバイオマスとの施用比率を工夫することで比重を調整したり、予め比重の調整された糖化ろ滓及び/又は予め比重の調整されたバイオマスを施用することで比重を調整することができる。
【0075】
(3)その他の工程
本技術に係る土壌の改良方法では、前述した本技術に係る土壌改良材に用いることができるその他の成分を土壌に施用する施用工程、土壌へ水分を供給する水分供給工程、土壌温度調整工程等のその他の工程を行うことができる。
【0076】
その他の成分施用工程は、糖化ろ滓施用工程及びバイオマス施用工程とは別々に行うことも可能であるし、糖化ろ滓施用工程及び/又はバイオマス施用工程と同時に行うこともできる。同時に行う場合は、糖化ろ滓及び/又はバイオマスと、その他の成分とを混合した上で、土壌に施用することもできる。
【0077】
水分供給工程は、土壌に水分を供給する工程である。土壌の還元消毒に当たっては、土壌中に十分な水分を含有させた状態で土壌改良材を使用することで、発酵が円滑に行われて土壌の還元化を促進させることができる。水分供給工程では、湛水状態となるまで灌水することが好ましい。土壌の水分含量は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、35質量%以上が更に好ましい。
【0078】
なお、土壌の水分含量が元々多い場合、本技術の土壌改良材を単に混合するだけで還元消毒を十分に行うことができるため、水分供給工程は行う必要がない。水分供給工程を行う場合、水分の供給は、糖化ろ滓施用工程、バイオマス施用工程、及びその他の成分施用工程を行う前、糖化ろ滓施用工程、バイオマス施用工程、及びその他の成分施用工程から選択される一以上の工程と同時、又は糖化ろ滓施用工程、バイオマス施用工程、及びその他の成分施用工程を行った後のいずれの時点で行ってもよい。
【0079】
なお、本技術において、土壌の水分含量は、土壌を100℃で5時間乾燥した場合の乾燥前後の重量から、下式で求めることができる。
土壌の水分含量(%)=(1-乾燥後の土壌重量/乾燥前の土壌重量)×100
【0080】
土壌温度調整工程は、糖化ろ滓施用工程、バイオマス施用工程、及びその他の成分施用工程を行った後の土壌の温度を調整する工程である。例えば、還元消毒期間中に温度上昇策を講じることで、還元消毒効果を一層高めることができる。具体的には、例えば、発酵熱の見込めない場合に、ビニールハウスの閉め切りやシート被覆などの太陽熱による温度上昇策等を採用することができる。
【0081】
本技術に係る土壌改良方法は、畑地、水田、公園、花壇等のような土壌がある場所に出向いて行うことができる。その場合、土壌を耕す際に、糖化ろ滓や穀物類バイオマス、必要に応じて他の成分を混合することで、施用作業を簡便に行うことができる。また、本技術に係る土壌改良方法は、あらかじめ用意しておいた採取土壌や調整土壌等に対しても行うことができる。
【0082】
4.改良土壌
本技術に係る土壌改良材や、本技術に係る土壌改良方法を用いて、還元消毒した土壌は、土壌中に含まれていた有害な微生物、昆虫類などの生物が低減している。そのため、植物の生育用土壌等に好適に用いることができる。例えば、有害生物の防除済みの改良土壌として、適当な容器に充填して流通、販売することができる。
【0083】
なお、本技術は、以下のように構成することも可能である。
(1)
糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓と、
バイオマスと、
を含有し、
比重が0.55kg/L以下である、土壌改良材。
(2)
水分含有量が、15質量%以下である、(1)に記載の土壌改良材。
(3)
前記バイオマスの含有量が、25質量%以上75質量%以下である、(1)又は(2)に記載の土壌改良材。
(4)
前記バイオマスが、穀物類バイオマスである、(1)から(3)のいずれかに記載の土壌改良材。
(5)
前記穀物類バイオマスが、脱脂米ぬか、大豆皮、小麦ふすま、グルテンフィードから選択される1以上の穀物類バイオマスである、(4)に記載の土壌改良材。
(6)
糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓と、バイオマスと、を混合する混合工程と、
前記混合工程後の混合物を乾燥する乾燥工程と、
を含み、
前記混合工程及び/又は前記乾燥工程において、土壌改良材の比重が0.55kg/L以下となるように前記土壌改良材を調製する、土壌改良材の製造方法。
(7)
糖質原料の糖化工程において排出される糖化ろ滓を土壌に施用する糖化ろ滓施用工程と、
バイオマスを土壌に施用するバイオマス施用工程と、
を含み、
前記糖化ろ滓と前記バイオマスを合わせた場合の比重が0.55kg/L以下となるように、前記糖化ろ滓及び/又は前記バイオマスを調製する、土壌の改良方法。
(8)(1)から(5)のいずれかに記載の土壌改良材、(6)に記載の製造方法を用いて製造された土壌改良材、及び(7)の土壌の改良方法から選択される1以上が用いられた、改良土壌。
【実施例0084】
以下、実施例に基づいて本技術をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0085】
<実験例1>
実験例1では、土壌改良材に用いる材料及び比重の違いによる、還元消毒効果及びドブ臭への影響を調べた。
【0086】
(1)糖化ろ滓の製造
[糖化ろ滓1]
トウモロコシを0.3%の亜硫酸水に48時間浸漬した後、ウェットミリング法に従って、胚芽、繊維分、たん白質を分離することで精製したコーンスターチを得た。これに10質量%消石灰、水を加えて、pH5.8、30質量%のコーンスターチスラリーとした後、αアミラーゼ(ターマミル120L、ノボザイムズ社製)を、固形分(g)当たり0.2質量%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で処理してコーンスターチ液化液を得た。このコーンスターチ液化液を95℃で保温して、経時的にDE値(Dextrose Equivalent値)を測定してDE15になった時点で、55℃まで冷却し、10%塩酸でpH4.5に調整した。これにグルコアミラーゼ(グルクザイムNL4.2、天野エンザイム社製)を固形分(g)当たり0.1質量%添加して60℃で反応させることで、ぶどう糖を主成分とする糖液を調製した。得られた糖液を、濾過装置で連続的に珪藻土(平均粒子径:約53μm)を用いてろ過して、糖化ろ滓1を得た。
【0087】
[糖化ろ滓2]
前記糖化ろ滓1と同様の方法で調製した糖液を、濾過装置で粉状活性炭(200メッシュ通過重量が80%以上)を用いてろ過して、糖化ろ滓2を得た。
【0088】
(2)各種測定
表1及び2に示す土壌改良材について、比重(kg/L)、及び全炭素(%)を測定した。全炭素は、本土壌改良材の主な有効成分である糖質の含量の指標である。なお、全炭素(%)は、「肥料等試験法(2016)」(農林水産消費安全技術センター)に従って測定した。
【0089】
(3)土壌改良材の評価
ポリ塩化ビニル製のパイプ(直径20.5cm、長さ73cm)に土壌(千葉県内の黒ボク土)と菌体胞子を埋設し、土壌改良材の評価を行った(
図1参照)。菌体胞子としてはトマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum)の分生胞子(6.8Log CFU/g-perlite)の菌体バッグを用い、土壌表面から約30cmと約60cmの位置に埋設した。
【0090】
土壌表面から約25cmまでの深さの領域の土壌に対して、表1及び2に示す土壌改良材を土壌と混和し、約3.3Lの水を上部から散布した後、2週間、25℃で静置した。なお、本実験における3.3Lの注水は、100L/m2に相当する。
【0091】
[還元消毒効果]
トマト萎凋病菌の死滅率を算出し、下記の評価基準に基づいて、還元消毒効果を評価した。
◎:90%以上
〇:70%以上90%未満
△:50%以上70未満
×:50%未満
【0092】
[ドブ臭]
2週間後の土壌から発生するドブ臭について、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
4:臭いが極めて少ない
3:臭いが少ない
2:やや臭いがあるが許容範囲
1:臭いが強い
【0093】
(4)結果
結果を表1及び表2に示す。
【0094】
【0095】
【0096】
(5)考察
糖化ろ滓のみ、又は穀物類バイオマスのみを用いた参考例1~4に比べて、糖化ろ滓と穀物類バイオマスである大豆皮を用いたサンプル1~10は、還元消毒効果は同等であり、ドブ臭も許容範囲内であったが、比重が小さく、施用時の作業負担を軽減することができた。また、サンプル5~10は、参考例4に比べて、全炭素の変動係数が小さいことが分かった。この結果から、本技術に係る土壌改良材は、有効成分含量が安定化していることが確認できた。
【0097】
<実験例2>
実験例2では、土壌改良材に用いる材料の違いによる、土壌改良材製造時の乾燥時間への影響を調べた。
【0098】
(1)糖化ろ滓の製造
前記実験例1と同様の方法で糖化ろ滓1及び糖化ろ滓2を製造した。
【0099】
(2)乾燥時間の測定
下記の表3に示す配合で土壌改良材の原料を混合した後、水分量が10%になるまでの乾燥時間を測定した。
【0100】
(3)土壌改良材の評価
前記実験例1と同様の方法で還元消毒効果を評価した。
【0101】
(4)結果
結果を表3に示す。
【0102】
【0103】
(5)考察
表3に示すように、糖化ろ滓のみを用いた参考例5及び参考例6に比べて、糖化ろ滓と穀物類バイオマスである大豆皮を用いたサンプル11及びサンプル12の方が、短い乾燥時間で目的の水分量まで乾燥できることが分かった。