(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128461
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電動ブレーキ用ケーブル
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20240913BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B60T13/74 G
B60T17/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037447
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江島 弘高
(72)【発明者】
【氏名】村山 知之
(72)【発明者】
【氏名】早川 良和
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 進治
(72)【発明者】
【氏名】石橋 陸
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
【Fターム(参考)】
3D048BB03
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH58
3D048HH61
3D048HH66
3D048HH68
3D048HH70
3D048QQ07
3D048RR13
3D048RR17
3D048RR25
3D048RR29
3D049BB02
3D049CC07
3D049HH44
3D049HH45
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH51
3D049QQ04
3D049RR06
3D049RR08
3D049RR10
3D049RR11
(57)【要約】
【課題】電動ブレーキ装置に電流を供給できなくなる事態の発生を抑制することが可能な電動ブレーキ用ケーブルを提供する。
【解決手段】電動ブレーキ用ケーブル3は、電動モータ201を動力源とする電動ブレーキ装置2の電動モータ201に三相交流電流を供給する。電動ブレーキ用ケーブル3は、第1U相電線311、第1V相電線312、及び第1W相電線313を備えた第1電線群31と、第2U相電線321、第2V相電線322、及び第2W相電線323を備えた第2電線群32と、第1電線群31及び第2電線群32を撚り合わせた撚合体30の外周に巻き付けられたテープ部材33と、テープ部材34の外周を被覆するシース34と、を備える。第1電線群31及び第2電線群32は、共に電動モータ201に冗長的に接続されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを動力源とする電動ブレーキ装置の前記電動モータに三相交流電流を供給する電動ブレーキ用ケーブルであって、
第1U相電線、第1V相電線、及び第1W相電線を備えた第1電線群と、
第2U相電線、第2V相電線、及び第2W相電線を備えた第2電線群と、
前記第1電線群及び前記第2電線群を撚り合わせた撚合体の外周に巻き付けられたテープ部材と、
前記テープ部材の外周を被覆するシースと、を備え、
前記第1電線群及び前記第2電線群が共に前記電動モータに冗長的に接続されている、
電動ブレーキ用ケーブル。
【請求項2】
前記第1U相電線、前記第1V相電線、前記第1W相電線、前記第2U相電線、前記第2V相電線、及び前記第2W相電線がケーブル周方向に並んで配置されており、
前記第1U相電線、前記第1V相電線、及び前記第1W相電線が前記ケーブル周方向に互いに隣り合い、
前記第2U相電線、前記第2V相電線、及び前記第2W相電線が前記ケーブル周方向に互いに隣り合っている、
請求項1に記載の電動ブレーキ用ケーブル。
【請求項3】
前記第1U相電線、前記第1V相電線、前記第1W相電線、前記第2U相電線、前記第2V相電線、及び前記第2W相電線がケーブル周方向に並んで配置されており、
前記第1電線群を構成する前記第1U相電線、前記第1V相電線、前記第1W相電線の何れかの電線と、前記第2電線群を構成する前記第2U相電線、前記第2V相電線、前記第2W相電線の何れかの電線とが、前記ケーブル周方向に沿って交互に配置されている、
請求項1に記載の電動ブレーキ用ケーブル。
【請求項4】
前記第1U相電線、前記第1V相電線、前記第1W相電線が撚り合わされた状態で第1シールド導体に覆われた第1三相交流ケーブルと、
前記第2U相電線、前記第2V相電線、前記第2W相電線が撚り合わされた状態で第2シールド導体に覆われた第2三相交流ケーブルと、を有する、
請求項1に記載の電動ブレーキ用ケーブル。
【請求項5】
前記撚合体は、前記第1三相交流ケーブルと、前記第2三相交流ケーブルと、複数の信号線とを有し、
前記複数の信号線が冗長化されている、
請求項4に記載の電動ブレーキ用ケーブル。
【請求項6】
前記複数の信号線が撚り合わされて信号線ケーブルを構成し、
前記信号線ケーブルと、前記第1三相交流ケーブルと、前記第2三相交流ケーブルと、が撚り合わされて前記撚合体を構成している、
請求項5に記載の電動ブレーキ用ケーブル。
【請求項7】
複数の前記信号線ケーブル、前記第1三相交流ケーブル、及び前記第2三相交流ケーブルがケーブル周方向に並んで配置されており、
ケーブル周方向において、前記第1三相交流ケーブルと前記第2三相交流ケーブルとの間に少なくとも1本の前記信号線ケーブルが介在している、
請求項6に記載の電動ブレーキ用ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電動ブレーキ用ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧式のブレーキ装置に代わり、例えば特許文献1、2に記載されているような電動モータを動力源とする電動ブレーキ装置が広く用いられるようになりつつある。このような電動ブレーキ装置は、エンジンによって生成される負圧、又は電動バキュームポンプによって生成される負圧が不要になるため、特に電気自動車や所謂ハイブリッド車に採用することが検討されている。特許文献1、2に記載のものでは、電動モータとして、インバータによって生成される三相交流電流が供給される三相モータが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2019/187805
【特許文献2】特開2017-1559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電動ブレーキ装置は、車体側との間に掛け渡されたケーブルによって三相交流電流が供給される。このケーブルが例えば飛び石や長期の使用による屈曲疲労によって損傷すると、当該ケーブルが接続された電動ブレーキ装置によって制動される車輪の制動力が不十分になるおそれがあるため、信頼性の向上が求められる。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動ブレーキ装置に電流を供給できなくなる事態の発生を抑制することが可能な電動ブレーキ用ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、電動モータを動力源とする電動ブレーキ装置の前記電動モータに三相交流電流を供給する電動ブレーキ用ケーブルであって、第1U相電線、第1V相電線、及び第1W相電線を備えた第1電線群と、第2U相電線、第2V相電線、及び第2W相電線を備えた第2電線群と、前記第1電線群及び前記第2電線群を撚り合わせた撚合体の外周に巻き付けられたテープ部材と、前記テープ部材の外周を被覆するシースと、を備え、前記第1電線群及び前記第2電線群が共に前記電動モータに冗長的に接続されている、電動ブレーキ用ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電動ブレーキ用ケーブルによれば、電動ブレーキ装置に電流を供給できなくなる事態の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る電動ブレーキシステムを有する車両を示す外観図である。(b)は、車両の複数の車輪のうち一つの車輪の周辺部を示す構成図である。
【
図2】電動ブレーキシステムの電動ブレーキ装置、インバータ回路、及び切替回路の構成例を示す概略構成図である。
【
図3】(a)は、電源線ケーブルの構成を示す側面図である。(b)は、(a)のA-A線における電源線ケーブルの断面図である。
【
図4】第2の実施の形態に係る電源線ケーブルの断面図である。
【
図5】第3の実施の形態に係る電動ブレーキ用ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る電動ブレーキシステム2を有する車両1を示す外観図である。
図1(b)は、車両1の複数の車輪10のうち一つの車輪10の周辺部を示す構成図である。電動ブレーキシステム2は、電動ブレーキ装置20と、インバータ回路21と、電源線切替回路22及び信号線切替回路23と、インバータ回路21ならびに電源線切替回路22及び信号線切替回路23を制御する制御装置24と、電動ブレーキ装置20に三相交流電流を供給する電源線ケーブル3と、電動ブレーキ装置20と制御装置24との間で信号を伝送する一対の信号線ケーブル41,42と、を有して構成されている。電源線ケーブル3は、本発明の電動ブレーキ用ケーブルの一態様である。
【0010】
電動ブレーキ装置20は、懸架装置12を介してナックル13及びハブユニット14と共に車体11に対して上下方向に移動可能に支持されている。ハブユニット14は、複数のボルト140によってナックル13に固定された外輪141と、外輪141に対して回転自在に支持されたハブ輪142とを有している。ハブ輪142には、車輪取付フランジ142aが設けられており、この車輪取付フランジ142aに車輪10及びブレーキロータ15が複数のハブボルト143によって取り付けられている。電動ブレーキ装置20は、ブレーキロータ15にブレーキパッド200を押し付けて摩擦力を発生させ、車輪10を制動する。
【0011】
車両1には、インバータ回路21に直流電圧を出力する直流電源100が搭載されており、インバータ回路21は、直流電源100から出力される直流電圧をスイッチングして三相交流電流を生成する。生成された三相交流電流は、電源線ケーブル3によって電動ブレーキ装置20に供給される。
【0012】
図2は、電動ブレーキシステム2の電動ブレーキ装置20、インバータ回路21、電源線切替回路22、及び信号線切替回路23の構成例を示す概略構成図である。電動ブレーキ装置20は、動力源として電動モータ201を有している。電動モータ201は、U相巻線、V相巻線、及びW相巻線を固定子に有する三相交流モータである。本実施の形態では、電動ブレーキシステム2が、一つの車輪10に対応して一つのインバータ回路21及び一つの電動モータ201を有している。また、電動ブレーキ装置20は、電動モータ201の回転をブレーキパッド200の直線運動に変換する運動変換機構202を有している。運動変換機構202は、例えばボールねじ機構やラックアンドピニオン機構によって構成されている。
【0013】
また、電動ブレーキ装置20は、電動モータ201の固定子に対する回転子の回転角を検出する角度センサ203、ブレーキパッド200に作用するブレーキロータ15の押し付け反力を検出する荷重センサ204、及び電動モータ201の温度を検出する温度センサ205を有している。制御装置24は、これらのセンサの検出信号に基づいて電動モータ201を制御する。
【0014】
インバータ回路21は、三相ブリッジ接続された6個のスイッチング素子211と、各スイッチング素子211に並列に接続された還流ダイオード212とを有している。各スイッチング素子211は、制御装置24からのPWM(Pulse Width Modulation)信号によってオン状態とオフ状態とが切り替わる。制御装置24は、角度センサ203の検出信号に基づくPWM制御により、電動ブレーキ装置20の電動モータ201に供給する三相交流電流を生成する。
【0015】
電源線切替回路22は、一例として、3連のリレー回路によって構成されている。制御装置24は、電源線切替回路22を制御し、インバータ回路21によって生成される三相交流電流を、後述する電源線ケーブル3の第1電線群31によって電動モータ201に供給するか、第2電線群32によって電動モータ201に供給するかを切り替える。なお、本実施の形態では、インバータ側で切り替えを行っているが、キャリパー側で切り替えることも可能である。また、切り替えることを行わないで、2重系システムとすることも可能である。
【0016】
電源線ケーブル3ならびに第1及び第2の信号線ケーブル41,42は、車体11に対する車輪10の上下動及び転舵による捩りに対応できるよう、長手方向の一部が電動ブレーキ装置20と車体11との間に弛んだ状態で架線されている。角度センサ203、荷重センサ204、及び温度センサ205の検出信号は、一対の信号線ケーブル41,42の何れかを介して制御装置24に伝送される。
【0017】
信号線切替回路23は、角度センサ203、荷重センサ204、及び温度センサ205の検出信号を、一対の信号線ケーブル41,42の何れによって制御装置24に伝送するかを切り替え可能である。信号線切替回路23は、例えばリレー回路により構成されている。本実施の形態では、このようにして信号線ケーブル41,42が冗長化されている。
【0018】
例えば信号線ケーブル41,42のうち一方の信号線ケーブル41を常用系とした場合には、他方の信号線ケーブル42が予備系となる。この場合、制御装置24は、一方の信号線ケーブル41に異常が発生したときに信号線切替回路23を制御し、他方の信号線ケーブル42によって角度センサ203、荷重センサ204、及び温度センサ205の検出信号が制御装置24に伝送される状態とする。なお、制御装置24は、例えば角度センサ203、荷重センサ204、及び温度センサ205の何れかの検出信号が一方の信号線ケーブル41によって正常に送られてこなくなったとき、当該一方の信号線ケーブル41に異常が発生したことを検知する。
【0019】
図3(a)は、電源線ケーブル3の構成を示す側面図である。
図3(b)は、
図3(a)のA-A線における電源線ケーブル3の断面図である。電源線ケーブル3は、複数の電線を撚り合わせた撚合体30と、撚合体30の外周に巻き付けられたテープ部材33と、テープ部材33の外周を被覆するシース34と、を備えている。撚合体30は、第1電線群31と第2電線群32とを撚り合わせてなり、撚合体30の中心部にはスフ糸(ステープルファイバ)やケブラー(登録商標)等の繊維状体からなる介在300が配置されている。テープ部材33は、例えば不織布や紙、あるいは樹脂からなる帯状のものを用いることができる。シース34は、例えばウレタン樹脂からなる。
【0020】
第1電線群31及び第2電線群32は、共に電動モータ201に冗長的に接続されている。第1電線群31は、第1U相電線311、第1V相電線312、及び第1W相電線313を備えている。第2電線群32は、第2U相電線321、第2V相電線322、及び第2W相電線323を備えている。第1U相電線311、第1V相電線312、第1W相電線313、第2U相電線321、第2V相電線322、及び第2W相電線323は、電源線ケーブル3の中心軸線C1を中心とするケーブル周方向に並んで配置されている。
【0021】
第1U相電線311、第1V相電線312、第1W相電線313、第2U相電線321、第2V相電線322、及び第2W相電線323は、それぞれ、導体301と、導体301を被覆する絶縁体302とを有している。導体301は、例えば複数本の金属素線を撚り合わせてなる撚線である。この金属素線としては、例えば錫めっき銅線、錫めっき銅合金線、銀めっき銅線、又は銀めっき銅合金線を好適に用いることができる。絶縁体302は、フッ素樹脂等の絶縁性の樹脂材料からなる。第1U相電線311、第1V相電線312、第1W相電線313、第2U相電線321、第2V相電線322、及び第2W相電線323の導体断面積や外径等は共通である。なお、これらの各電線は、絶縁体302の色がそれぞれ異なることにより、端末処理において区別が可能である。
【0022】
本実施の形態では、第1U相電線311、第1V相電線312、及び第1W相電線313がケーブル周方向に互いに隣り合い、第2U相電線321、第2V相電線322、及び第2W相電線323がケーブル周方向に互いに隣り合っている。より具体的には、第1U相電線311、第1V相電線312、第1W相電線313、第2U相電線321、第2V相電線322、及び第2W相電線323が、この順でケーブル周方向に並んでいる。
【0023】
切替回路22は、第1電線群31によって電動モータ201に電流を供給するか、第2電線群32によって電動モータ201に電流を供給するかを切り替え可能である。本実施の形態では、第1電線群31を常用系とすると共に第2電線群32を予備系とし、常用系の第1電線群31に異常が発生したときに予備系の第2電線群32に切り替えて電動モータ201に三相交流電流を供給する。なお、これとは逆に、第1電線群31を予備系とし、第2電線群32を常用系としてもよい。
【0024】
制御装置24は、例えば第1U相電線311、第1V相電線312、及び第1W相電線313の何れかに流れる電流の大きさがPWM制御のデューティー比等に応じて想定される電流値よりも小さい場合に断線等の異常が発生したと判定し、切替回路22を制御して予備系である第2電線群32によって電動モータ201に電流を供給する状態に切り替える。また、制御装置24は、切替回路22を制御して予備系に切り替えたとき、車両1の運転者に異常の発生を報知するための信号を出力する。
【0025】
(第1の実施の形態の効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、第1電線群31の第1U相電線311、第1V相電線312、及び第1W相電線313の何れかに例えば断線や半断線が発生した場合でも、第2電線群32の第2U相電線321、第2V相電線322、及び第2W相電線323によって電動モータ201に電流を供給することができる。これにより、電動ブレーキ装置20に適切な電流を供給できなくなる事態の発生を抑制することが可能となる。
【0026】
また、第1の実施の形態によれば、第1電線群31の第1U相電線311、第1V相電線312、及び第1W相電線313と、第2電線群32の第2U相電線321、第2V相電線322、及び第2W相電線323とが1本の電源線ケーブル3に含まれているので、第1電線群31の各電線と第2電線群32の各電線とをそれぞれ別個のケーブルとした場合に比較して、配線の工数を低減することができる。
【0027】
また、第1の実施の形態によれば、第1U相電線311、第1V相電線312、及び第1W相電線313がケーブル周方向に互いに隣り合い、第2U相電線321、第2V相電線322、及び第2W相電線323がケーブル周方向に互いに隣り合っているので、電源線ケーブル3の端末加工の際に第1電線群31と第2電線群32とを分離しやすく、端末加工が容易となる。
【0028】
またさらに、第1の実施の形態によれば、信号線ケーブル41,42が冗長化されているので、例えば一方の信号線ケーブル41を常用系として使用している際に信号線ケーブル41に断線や半断線が発生した場合でも、信号線切替回路23を制御して予備系の信号線ケーブル42に切り替えることにより、電動ブレーキ装置20を適切に制御できなくなるような事態の発生を抑制することが可能となる。
【0029】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、
図4を参照して説明する。
図4は、第2の実施の形態に係る電源線ケーブル3の断面図である。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、第1U相電線311、第1V相電線312、第1W相電線313、第2U相電線321、第2V相電線322、及び第2W相電線323が周方向に並んで配置されているが、その順序が第1の実施の形態と異なっている。
【0030】
本実施の形態では、第1電線群31を構成する第1U相電線311、第1V相電線312、及び第1W相電線313の何れかの電線と、第2電線群32を構成する第2U相電線321、第2V相電線322、及び第2W相電線323の何れかの電線とが、ケーブル周方向に沿って交互に配置されている。より具体的には、第1U相電線311が第2W相電線323と第2U相電線321との間に、第1V相電線312が第2U相電線321と第2V相電線322との間に、第1W相電線313が第2V相電線322と第2W相電線323との間に、それぞれ配置されている。
【0031】
本実施の形態に係る電源線ケーブル3及び電動ブレーキシステム2のその他の構成は、第1の実施の形態と同じであり、第1U相電線311、第2U相電線321、第1V相電線312、第2V相電線322、第1W相電線313、及び第2W相電線323を撚り合わせてなる撚合体30の外周にテープ部材33が巻き付けられ、テープ部材33の外周がシース34によって被覆されている。また、第1電線群31及び第2電線群32の一方が常用系として用いられ、他方が予備系として用いられる。
【0032】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様に、電動ブレーキ装置20に適切な電流を供給できなくなる事態の発生を抑制することが可能となる。また、車体11に対して電動ブレーキ装置20が車輪10と共に上下に動いたとき、第1電線群31及び第2電線群32の一方に応力が集中してしまうことを抑制することができる。またさらに、常用系の電線(例えば第1U相電線311、第1V相電線312、第1W相電線313)の間に予備系の電線(例えば第2U相電線321、第2V相電線322、第2W相電線323)が介在するので、電流が流れる電線間の距離を離すことができて温度上昇が抑えられ、より大きな電流を流すことが可能となり、あるいは各電線の導体断面積や外径を小さくすることが可能となる。
【0033】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、
図5を参照して説明する。
図5は、第3の実施の形態に係る電動ブレーキ用ケーブル5の断面図である。第1の実施の形態では、電動モータ201に電流を供給する電源線ケーブル3と各センサの検出信号を伝送する信号線ケーブル41,42が分かれていたが、第3の実施の形態では、電源線ケーブル3の各電線と信号線ケーブル41,42の各電線とが1本の電動ブレーキ用ケーブル5に集約されている。
【0034】
電動ブレーキ用ケーブル5は、第1三相交流ケーブル51と、第2三相交流ケーブル52と、複数の信号線ケーブル53~55と、1本のツイストペアケーブル56とを有し、これらのケーブルが撚り合わされて撚合体50を構成している。第1三相交流ケーブル51、第2三相交流ケーブル52、及び複数の信号線ケーブル53~55は、電動ブレーキ用ケーブル5の中心軸線C2を中心とするケーブル周方向に並んで配置されている。ツイストペアケーブル56は、一対の信号線561を有し、信号線ケーブル54と信号線ケーブル55との間の谷間に配置されている。
【0035】
また、電動ブレーキ用ケーブル5は、撚合体50の外周に巻き付けられたテープ部材57と、テープ部材57の外周を被覆するシース58と、撚合体50の周囲に配置された介在59と、を備えている。テープ部材57、シース58、及び介在59の材質は、第1の実施の形態と同様である。
【0036】
第1三相交流ケーブル51は、第1電線群510としての第1U相電線511、第1V相電線512、及び第1W相電線513と、第1シールド導体514とを有し、第1U相電線511、第1V相電線512、及び第1W相電線513が撚り合わされた状態で第1シールド導体514に覆われている。第2三相交流ケーブル52は、第2電線群520としての第2U相電線521、第2V相電線522、及び第2W相電線523と、第2シールド導体524とを有し、第2U相電線521、第2V相電線522、及び第2W相電線523が撚り合わされた状態で第2シールド導体524に覆われている。
【0037】
第1U相電線511、第1V相電線512、及び第1W相電線513、ならびに第2U相電線521、第2V相電線522、及び第2W相電線523は、第1の実施の形態と同様、導体501と、導体501を被覆する絶縁体502とを有している。導体501は、例えば複数本の金属素線を撚り合わせてなる撚線であり、絶縁体502は、フッ素樹脂等の絶縁性の樹脂材料からなる。第1シールド導体514及び第2シールド導体524は、例えば複数のシールド素線を格子状に編み組みしてなる編組シールドである。
【0038】
各信号線ケーブル53~55は、それぞれ複数のシールド付きツイストペア線6を撚り合わせて構成されている。本実施の形態では、各信号線ケーブル53~55が、それぞれ3本のシールド付きツイストペア線6を有している。それぞれのシールド付きツイストペア線6は、撚り合わされた一対の信号線61,61と、一対の信号線61,61を覆うシールド導体62とを有している。
【0039】
一対の信号線61,61は、それぞれ、信号線導体611と、信号線導体611を被覆する絶縁体612とを有している。信号線導体611は、例えば複数本の金属素線を撚り合わせてなる撚線であり、絶縁体612は、フッ素樹脂等の絶縁性の樹脂材料からなる。シールド導体62は、例えば複数のシールド素線を格子状に編み組みしてなる編組シールドである。
【0040】
以下、信号線ケーブル53~55のそれぞれを、第1信号線ケーブル53、第2信号線ケーブル54、及び第3信号線ケーブル55という。一例として、第1信号線ケーブル53は、荷重センサ204の検出信号を伝送する。第2信号線ケーブル54及び第3信号線ケーブル55は、角度センサ203の検出信号を伝送する。また、ツイストペアケーブル56は、温度センサ205の検出信号を伝送する。
【0041】
第1信号線ケーブル53には、合計6本の信号線61が含まれており、このうち半数にあたる3本の信号線61が常用系として用いられ、残りの3本の信号線61が予備系として用いられる。第2信号線ケーブル54及び第3信号線ケーブル55には、合計12本の信号線61が含まれており、このうち半数にあたる6本の信号線61が常用系として用いられ、残りの6本の信号線61が予備系として用いられる。また、ツイストペアケーブル56は、一対の信号線561のうち一方が常用系として用いられ、他方が予備系として用いられる。これらの信号線は、第1の実施の形態と同様、例えばリレー回路によって構成される信号線切替回路によって常用系と予備系とが切り替えられる。
【0042】
第1三相交流ケーブル51と第2三相交流ケーブル52とは、ケーブル周方向に隣り合っていない。
図5では、第1三相交流ケーブル51と第2三相交流ケーブル52とを図面左右方向に並べて示しており、第1信号線ケーブル53が第1三相交流ケーブル51と第2三相交流ケーブル52との間の図面上側に配置され、第2信号線ケーブル54及び第3信号線ケーブル55が第1三相交流ケーブル51と第2三相交流ケーブル52との間の図面下側に配置されている。すなわち、第1三相交流ケーブル51と第2三相交流ケーブル52との間には、第1乃至第3信号線ケーブル53~55のうちの少なくとも1本の信号線ケーブルが介在している。
【0043】
第1三相交流ケーブル51の第1電線群510、及び第2三相交流ケーブル52の第2電線群520は、共に電動ブレーキ装置20の電動モータ201に冗長的に接続され、第1の実施の形態と同様に、一方が常用系として用いられると共に他方が予備系として用いられ、例えばリレー回路によって構成される電源線切替回路によって切り替えられる。例えば、通常時には、第1電線群510の第1U相電線511、第1V相電線512、及び第1W相電線513によって三相交流電流を電動モータ201に供給し、第1電線群510に異常が発生した際には、第2電線群520の第2U相電線521、第2V相電線522、及び第2W相電線523によって三相交流電流を電動モータ201に供給する。これにより、第1の実施の形態と同様に、電動ブレーキ装置20に適切な電流を供給できなくなる事態の発生を抑制することが可能となる。
【0044】
また、本実施の形態では、第1電線群510の第1U相電線511、第1V相電線512、及び第1W相電線513を第1シールド導体514により一括して覆って第1三相交流ケーブル51が構成され、第2電線群520の第2U相電線521、第2V相電線522、及び第2W相電線523を第2シールド導体524により一括して覆って第2三相交流ケーブル52が構成されているので、電動モータ201に供給される電流による輻射ノイズが第1シールド導体514及び第2シールド導体524の外部の第1乃至第3信号線ケーブル53~55に及ぼす影響を抑制することができると共に、電動ブレーキ用ケーブル5の端末加工の際に第1三相交流ケーブル51と第2三相交流ケーブル52とを分離しやすくなっている。
【0045】
また、本実施の形態では、第1乃至第3信号線ケーブル53~55のそれぞれの一対の信号線61がシールド導体63に覆われているので、複数のシールド付きツイストペア線6の間のクロストークが抑制されると共に、電動モータ201に供給される電流による輻射ノイズの影響を抑制することができる。
【0046】
またさらに、本実施の形態では、ケーブル周方向において、第1信号線ケーブル53と第2信号線ケーブル54との間に第1三相交流ケーブル51が配置され、第1信号線ケーブル53と第3信号線ケーブル55との間に第2三相交流ケーブル52が配置されているので、第1信号線ケーブル53と第2信号線ケーブル54及び第3信号線ケーブル55との間のクロストークが抑制される。
【0047】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した第1乃至第3の実施の形態から把握される技術思想について、各実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0048】
[1]電動モータ(201)を動力源とする電動ブレーキ装置(2)の前記電動モータ(201)に三相交流電流を供給する電動ブレーキ用ケーブル(3,5)であって、第1U相電線(311,511)、第1V相電線(312,512)、及び第1W相電線(313,513)を備えた第1電線群(31,510)と、第2U相電線(321,521)、第2V相電線(322,522)、及び第2W相電線(323,523)を備えた第2電線群(32,520)と、前記第1電線群(31,510)及び前記第2電線群(32,520)を撚り合わせた撚合体(30,50)の外周に巻き付けられたテープ部材(33,57)と、前記テープ部材(33,57)の外周を被覆するシース(34,58)と、を備え、前記第1電線群(31,510)及び前記第2電線群(32,520)が共に前記電動モータ(201)に冗長的に接続されている、電動ブレーキ用ケーブル(3,5)。
【0049】
[2]前記第1U相電線(311)、前記第1V相電線(312)、前記第1W相電線(313)、前記第2U相電線(321)、前記第2V相電線(322)、及び前記第2W相電線(323)がケーブル周方向に並んで配置されており、前記第1U相電線(311)、前記第1V相電線(312)、及び前記第1W相電線(313)が前記ケーブル周方向に互いに隣り合い、前記第2U相電線(321)、前記第2V相電線(322)、及び前記第2W相電線(323)が前記ケーブル周方向に互いに隣り合っている、上記[1]に記載の電動ブレーキ用ケーブル(3)。
【0050】
[3]前記第1U相電線(311)、前記第1V相電線(312)、前記第1W相電線(313)、前記第2U相電線(321)、前記第2V相電線(322)、及び前記第2W相電線(323)がケーブル周方向に並んで配置されており、前記第1電線群(31)を構成する前記第1U相電線(311)、前記第1V相電線(312)、前記第1W相電線(313)の何れかの電線と、前記第2電線群(32)を構成する前記第2U相電線(321)、前記第2V相電線(322)、前記第2W相電線(323)の何れかの電線とが、前記ケーブル周方向に沿って交互に配置されている、上記[1]に記載の電動ブレーキ用ケーブル(3)。
【0051】
[4]前記第1U相電線(511)、前記第1V相電線(512)、前記第1W相電線(513)が撚り合わされた状態で第1シールド導体(514)に覆われた第1三相交流ケーブル(51)と、前記第2U相電線(521)、前記第2V相電線(522)、前記第2W相電線(523)が撚り合わされた状態で第2シールド導体(524)に覆われた第2三相交流ケーブル(52)と、を有する、上記[1]に記載の電動ブレーキ用ケーブル(5)。
【0052】
[5]前記第1三相交流ケーブル(51)と、前記第2三相交流ケーブル(52)と、複数の信号線(61)とを有し、前記複数の信号線(61)が冗長化されている、上記[4]に記載の電動ブレーキ用ケーブル(5)。
【0053】
[6]前記複数の信号線(61)が撚り合わされて信号線ケーブル(53~55)を構成し、前記信号線ケーブル(53~55)と、前記第1三相交流ケーブル(51)と、前記第2三相交流ケーブル(52)と、が撚り合わされて前記撚合体(50)を構成している、上記[5]に記載の電動ブレーキ用ケーブル(5)。
【0054】
[7]複数の前記信号線ケーブル(53~55)、前記第1三相交流ケーブル(51)、及び前記第2三相交流ケーブル(52)がケーブル周方向に並んで配置されており、ケーブル周方向において、前記第1三相交流ケーブル(51)と前記第2三相交流ケーブル(52)との間に少なくとも1本の前記信号線ケーブル(53~55)が介在している、上記[6]に記載の電動ブレーキ用ケーブル(5)。
【0055】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0056】
2…電動ブレーキシステム 20…電動ブレーキ装置
201…電動モータ 22…切替回路
3…電源線ケーブル(電動ブレーキ用ケーブル) 30…撚合体
31…第1電線群 311…第1U相電線
312…第1V相電線 313…第1W相電線
32…第2電線群 321…第2U相電線
322…第2V相電線 323…第2W相電線
33…テープ部材 34…シース
5…電動ブレーキ用ケーブル 50…撚合体
51…第1三相交流ケーブル 510…第1電線群
511…第1U相電線 512…第1V相電線
513…第1W相電線 514…第1シールド導体
52…第2三相交流ケーブル 520…第2電線群
521…第2U相電線 522…第2V相電線
523…第2W相電線 524…第2シールド導体
53~55…信号線ケーブル 57…テープ部材
58…シース 61…信号線