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特開2024-12851隠し情報を有する印刷物及び隠し情報を有する印刷物に使用される画像データの作成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012851
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】隠し情報を有する印刷物及び隠し情報を有する印刷物に使用される画像データの作成方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20240124BHJP
   B42D 25/305 20140101ALI20240124BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/305
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114614
(22)【出願日】2022-07-19
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 一矢
(72)【発明者】
【氏名】嘉手苅 弘昂
(72)【発明者】
【氏名】松下 芙佐子
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HB10
2C005HB13
2C005JA09
2C005JB22
2C005JB27
2C005JB33
2H113AA04
2H113AA06
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB10
2H113BB22
2H113CA34
2H113CA39
2H113FA24
(57)【要約】
【課題】意匠的な模様を固有情報に関連付け、それを散らし模様のように配置することで、模様が隠し情報であることを悟らせないようにした印刷物を提供する。
【解決手段】基材上に、少なくとも固有情報印刷部と、複数の隠し情報要素から成る隠し情報印刷部を備えた印刷物であって、固有情報印刷部は、印刷物に関する固有情報を有し、隠し情報印刷部は、隠し情報要素を、固有情報を基に生成した疑似乱数を用いて複数配置して成る散らし模様を有することを特徴とした印刷物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも固有情報印刷部及び隠し情報印刷部を備えた印刷物であって、
前記固有情報印刷部は、前記印刷物に関する固有情報を有し、
前記隠し情報印刷部は、隠し情報要素を、前記固有情報を基に生成した疑似乱数を用いて複数配置して成る散らし模様を有することを特徴とする印刷物。
【請求項2】
基材上に、少なくとも固有情報印刷部及び隠し情報印刷部を備えた印刷物であって、前記固有情報印刷部は、前記印刷物に関する固有情報を有し、前記隠し情報印刷部は、隠し情報要素を、前記固有情報を基に生成した疑似乱数を用いて複数配置して成る散らし模様を有する前記印刷物における前記隠し情報印刷部に使用される画像データの作成方法であって、
前記隠し情報要素の基画像データである隠し情報要素データを配置する、複数の座標位置を有するアートボードを生成するステップと、
前記アートボードに前記隠し情報要素データを配置する、角度、大きさ及び密度の設定値を取得するステップと、
前記隠し情報要素データを取得するステップと、
前記座標位置に、前記隠し情報要素データを配置する基準点を生成するステップと、
前記固有情報を取得するステップと、
前記固有情報を基に、前記疑似乱数を生成する乱数種を設定するステップと、
前記乱数種を用いて前記疑似乱数を生成した後、前記疑似乱数及び前記設定値を用いて前記アートボードにおける前記座標位置に、前記隠し情報要素データを複数配置するステップとを備え、
前記複数配置した前記隠し情報要素データにより前記隠し情報印刷部の基画像データである隠し情報画像が形成されることを特徴とする画像データの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価証券、商品券、入場券、チケット等の偽造や変造の防止が求められるセキュリティ印刷物の分野において、特定の条件下で確認可能となる隠し情報が配されていることを容易に悟ることができない印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンターやスキャナーといった電子機器の普及に伴い有価証券を無許可で複製する横行が社会問題と化しており、偽造防止を簡易かつ有効に行える技術が待望されている。これについて、様々な偽造防止技術が提案されており、その中で、パール印刷、ホログラム等、光沢のある素材は、目視でその存在が確認可能であり、かつ、真偽の判別が容易であることから、有価証券類の偽造防止技術として採用されてきた。
【0003】
しかし、これらの技術は、製造工程や材料が特殊なため、一般的なプリンターでは印刷できず、例えば、コンビニエンスストアでプリンターを用いて発券するチケットに付与することは困難であることから、一般にはプリンターで付与可能な偽造防止技術として、通し番号や、通行券のIDなどの固有情報が採用されている。
【0004】
プリンターを用いて固有情報を印刷する方法として、バーコードや二次元コードなどがある。これらは特殊材料を用いることなく固有情報を印刷できるが、設計仕様が公開情報であるため、解読及び改変が比較的容易であり、悪意ある第三者に解読及び改変される恐れがあった。よって、何らかの形で固有情報を隠し情報として印刷する技術が待望されていた。
【0005】
また、バーコードや二次元コードは、光学的に読み取ることで、付与された情報を読み取る。そして、読み取りのためには、一定以上の面積の確保が必要であるため、デザインの自由度を下げる要因の一つとなっており、固有情報をデザインの一部に組み込ませる技術が待望されていた。
【0006】
前述のような背景を鑑みて、固有情報を文字、記号、図柄のいずれかの要素を複数組み合わせたパターン情報に変換し、黒色、赤色及び藍色で画線状又は図柄に隠し情報として印刷した後、カラーフィルターを用いて隠し情報を確認する印刷物が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0007】
隠し情報の鑑定方法は、まず、青色のカラーフィルターを取り付けた読み取り部により、印刷物の隠し情報である文字や図柄を1つずつ光学的に読み取る。
【0008】
隠し情報の黒色の部分は、最も反射濃度が低い部分として「黒」と判定し、赤色の部分は、次に反射濃度が低い部分として「赤」と判定し、藍色の部分は、最も反射濃度が高い部分として「藍」と判定する。光学鑑定装置は、隠し情報である文字や図柄の1つずつ印刷したピッチに合わせて反射濃度の高低を検知することで、印刷物の真贋鑑定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6036039号公報
【特許文献2】特許第5991095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に記載の印刷物は、画線上にパターン情報が印刷されるため、隠し情報の存在が容易に判ってしまい、依然として解読及び改変される可能性があるという問題があった。
【0011】
また、特許文献2に記載の印刷物は、図柄に隠し情報を組み込ませることで、目視ではデザインの一部のように見えるので、画線と比べて、隠し情報の隠ぺい性が向上しているが、デザインの一部に隠し情報を付与する領域が必要となり、組み込む領域を考慮したデザインをしなければならないという問題があった。
【0012】
本発明は、上記課題の解決のため、図柄に隠し情報を組み込む際に、隠し情報が配されていることを容易に悟ることができず、かつ、解読や改変への耐性が高い印刷物とその作成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の印刷物は、基材上に、少なくとも固有情報印刷部と、複数の隠し情報要素から成る隠し情報印刷部を備えた印刷物であって、固有情報印刷部は、印刷物に関する固有情報を有し、隠し情報印刷部は、隠し情報要素を、固有情報を基に生成した疑似乱数を用いて複数配置して成る散らし模様を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の画像データの作成方法は、基材上に、少なくとも固有情報印刷部及び隠し情報印刷部を備えた印刷物であって、固有情報印刷部は、印刷物に関する固有情報を有し、隠し情報印刷部は、隠し情報要素を、固有情報を基に生成した疑似乱数を用いて複数配置して成る散らし模様を有する印刷物における隠し情報印刷部に使用される画像データの作成方法であって、隠し情報要素の基画像データである隠し情報要素データを配置する、複数の座標位置を有するアートボードを生成するステップと、アートボードに隠し情報要素データを配置する、角度、大きさ及び密度の設定値を取得するステップと、隠し情報要素データを取得するステップと、座標位置に、隠し情報要素データを配置する基準点を生成するステップと、固有情報を取得するステップと、固有情報を基に、疑似乱数を生成する乱数種を設定するステップと、乱数種を用いて疑似乱数を生成した後、疑似乱数及び設定値を用いてアートボードにおける座標位置に、隠し情報要素データを複数配置するステップとを備え、複数配置した隠し情報要素データにより隠し情報印刷部の基画像データである隠し情報画像が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、図柄に隠し情報を組み込む際、固有情報を、疑似乱数を用いた散らし模様として生成した後、それを隠し情報とするため、隠し情報が配されていることを容易に悟ることができず、解読や改変への耐性が高い。
【0016】
また、固有情報を散らし模様として背景(例えば、地紋模様等)に組み合わせることが可能であるため、従来のように、デザインの一部に隠し情報を付与する領域が必要ないため、デザインの自由度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明における固有情報を有する印刷物(12)を示す平面図。
図2】本発明における隠し情報画像(2)を生成するフローチャート。
図3】本発明における隠し情報要素データ(1)の一例を示す平面図。
図4】本発明におけるアートボード(4)上に生成された仮想グリッド(5)の一例を示す平面図。
図5】本発明における仮想グリッド(5)のグリット形状がピラミッド状の仮想グリッド(5)の一例を示す平面図。
図6】本発明における仮想グリッド(5)のグリット形状がハニカム状の仮想グリッド(5)の一例を示す平面図。
図7】本発明におけるs07の隠し情報要素データ(1)の配置方法を詳細に説明するフローチャート。
図8】本発明における隠し情報画像(2)の一例を示す平面図。
図9】本発明における印刷物(12)の印刷方法及び印刷物群(12g)の作成方法の例を示す模式図。
図10】本発明における印刷用PDF群(10g)を生成するための組版データ(6)の一例を示す平面図。
図11】本発明における固有情報画像(9i)及び固有情報画像群(9ig)の生成方法の一例を示す模式図。
図12】本発明における隠し情報画像(2)及び隠し情報画像群(2g)の生成方法の一例を示す模式図。
図13】本発明における固有情報画像群(9ig)と隠し情報画像群(2g)を用いて印刷用PDF群(10g)を生成する方法の一例を示す模式図。
図14】本発明における仮想グリッド(5)の一例を示す模式図。
図15】本発明における照合用仮想グリッド(14)の一例を示す平面図。
図16】本発明における隠し情報画像(2)を生成する第1のアプリ(18)と、照合装置である照合用仮想グリッド(14)を生成する第2のアプリ(20)の師従関係を示す概要図。
図17】本発明における隠し情報画像(2)を復元して印刷物(12)の真偽判別を行う照合装置(M)を示すブロック図。
図18】本発明における隠し情報を照合するフローチャート。
図19】本発明における図形配置位置(15)のマークを示す概要図。
図20】本発明における照合用仮想グリッド(14)の生成のフローチャート。
図21】本発明における印刷物(12)の入力方法の例を示す模式図。
図22】本発明における入力画像(22)の比較用画像(23)への変換を示す概要図。
図23】本発明における照合用仮想グリッドと比較用画像(23)の位置合わせを示す概要図。
図24】本発明における照合用仮想グリッドと比較用画像(23)の照合方法のフローチャート。
図25】本発明におけるアンカーポイント(3)の直下に黒画素(24)があるかどうかの判定を示す概要図。
図26】本発明におけるアンカーポイント(3)の直下に白画素(25)があるかどうかの判定を示す概要図。
図27】本発明における照合結果の画面表示の例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明するが、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
【0019】
(印刷物)
図1は、本発明における固有情報を有する印刷物(12)を示す平面図である。
【0020】
印刷物(12)は、基材(26)上に、固有情報印刷部(9p)と隠し情報印刷部(2p)を有する。基材(26)は、固有情報印刷部(9p)と隠し情報印刷部(2p)が形成可能な面を備えていればよく、上質紙、コート紙、プラスティック、金属等、材質は特に限定されない。
【0021】
固有情報印刷部(9p)は、チケットの通し番号や、通行券のID番号、身分証明書における保有者の氏名等、複数存在する印刷物(12)において、一つの印刷物(12)を特定するための固有情報が、基材(26)に印刷された部分であり、図1においては、印刷物(12)である招待券の通し番号「123456」としている。
【0022】
隠し情報印刷部(2p)は、印刷物(12)の固有情報を散らし模様に変換し、隠し情報として基材(26)に印刷された部分であり、1枚の桜の花びらである隠し情報要素(1p)が複数印刷されて形成される。本発明において隠し情報とは、印刷物(12)の固有情報のことである。散らし模様とは、任意の図形を無作為に回転及び拡大縮小した後、無作為に配置して作成する模様のことであり、図1では、桜の花びらが複数配置して成る。散らし模様は、桜の花びらが散る様子や、夜空に星が輝く様子などを表現するために使用される。隠し情報印刷部(2p)に付与される隠し情報は、固有情報と一対一の関係となる。
【0023】
本発明の印刷物(12)は、利用者にとって、桜の花びらが印刷された招待券として認識されるが、実際には、隠し情報印刷部(2p)に、固有情報印刷部(9p)である招待券の通し番号「123456」が隠し情報として付与されている。
【0024】
(隠し情報印刷部(2p)を作成するための隠し情報画像(2)の生成方法)
次に、本発明の印刷物(12)の作成方法について説明する。
【0025】
本発明は、隠し情報印刷部(2p)の作成方法に特徴があることから、まず、隠し情報印刷部(2p)を基材(26)に形成するために用いる画像データである、隠し情報画像(2)の生成方法について説明する。
【0026】
図2は、本発明における隠し情報画像(2)を生成するフローチャートである。
【0027】
まず、s01として、隠し情報印刷部(2p)を構成する隠し情報要素(1p)の基画像データである、隠し情報要素データ(1)を配置するためのアートボード(4)を生成する。
【0028】
なお、本発明において、印刷物(12)における、隠し情報印刷部(2p)を、印刷物(12)を形成するための画像データでは、隠し情報画像(2)という。併せて、印刷物(12)における、隠し情報要素(1p)を、印刷物(12)を形成するための画像データでは、隠し情報要素データ(1)という。
【0029】
アートボード(4)とは、隠し情報画像(2)となる仮想の印刷領域のことである。アートボード(4)に隠し情報要素データ(1)を配置することで、隠し情報画像(2)となる。アートボード(4)は、例えばAdobe社のIllustratorのような、描画ソフトウェアを用いて、任意のファイルサイズを選択して新規生成をすることで、任意のサイズのアートボード(4)を持つ印刷領域がファイルとして生成される。
【0030】
次に、s02として、隠し情報要素データ(1)を取得する。
【0031】
図3は、本発明における隠し情報要素データ(1)の一例を示す平面図である。
【0032】
図1において、隠し情報要素(1p)は複数の桜の花びらのうち、一つの花びらを指す。複数の隠し情報要素(1p)を配置することで、隠し情報印刷部(2p)となる。つまり、隠し情報要素データ(1)は、一つの花びらを指す画像データであり、複数の隠し情報要素データ(1)をアートボード(4)に配置することで、隠し情報画像(2)となる。
【0033】
本発明における実施の形態では、図3に示すように、あらかじめ、例えばAdobe社のIllustratorのような、描画ソフトウェアを用いて生成された隠し情報要素データ(1)を用いる。隠し情報要素データ(1)は、図3(a)の花びらの形状、図3(b)の星の形状、図3(c)の紅葉の形状及び図3(d)の雪の結晶形状など、任意の形状とすることが可能であるが、疑似乱数を用いて配置され、隠し情報画像(2)となった際に、散らし模様として認知されやすいものが好ましい。
【0034】
一般的に、乱数とは規則性のない数値で、次にどの数値が来るのか予測困難な数列のことを指し、「自然乱数」という。これに対し、本発明では、乱数に見せかけた規則性のある数値である「疑似乱数」を隠し情報要素データ(1)を配置に用いることを特徴とする。よって、ユーザには「自然乱数」で形成した模様と同様に視認されるが、実際には、隠し情報が付与された模様として形成することが可能となる。
【0035】
なお、隠し情報要素データ(1)は、隠し情報を認証する際に、読取エラーが発生しない大きさで、適宜形成することが可能である。また、隠し情報要素データ(1)は、一つの隠し情報画像(2)の中で異なる形状を複数組み合わせてもよい。
【0036】
次に、s03として、アートボード(4)に隠し情報要素データ(1)を配置するための設定値を取得する。
【0037】
表1は、隠し情報要素データ(1)をアートボード(4)に配置する際の各種設定値を示す表である。
【0038】
【表1】
【0039】
図4は、本発明におけるアートボード(4)上に生成された仮想グリッド(5)の一例を示す平面図である。
【0040】
なお、仮想グリッド(5)は、隠し情報要素データ(1)の配置後、隠し情報画像(2)として保存される際には保持されない一時的な情報であるため、(仮想)グリッド(5)と呼称している。
【0041】
次に、図4の各項目について説明する。項目「グリッド形状」とは、隠し情報要素データ(1)をアートボード(4)に配置する仮想的な基準線である、仮想グリッド(5)の形状を設置する項目である。仮想グリッド(5)は、図4に示す、仮想的な基準点である、アンカーポイント(3)間を結ぶ点線を指す。図4において、グリット形状は格子状としているが、隠し情報の照合時に座標位置が読み取りやすい形状であれば、格子状のものに限らない。
【0042】
図5は、本発明における仮想グリッド(5)のグリット形状がピラミッド状の仮想グリッド(5)の一例を示す平面図であり、図6は、本発明における仮想グリッド(5)のグリット形状がハニカム状の仮想グリッド(5)の一例を示す平面図である。
【0043】
例えば、図5に示すような、グリット形状がピラミッド状のものや、図6に示すようなグリット形状がハニカム状のものでもよい。
【0044】
項目「アンカーポイント数」とは、仮想グリッド(5)における、アンカーポイント(3)の個数であり、設定値「n個(nは自然数とする)」とは、1以上の整数とする。
【0045】
アンカーポイント(3)とは、仮想グリッド(5)の角や交点に配置される仮想的な基準点であり、図4では仮想グリッド(5)の交点に配置されている。
【0046】
項目「密度」とは、隠し情報要素データ(1)がアートボード(4)に配置される密度(個数)であり、設定値「x%」とは、x>0(小数点含む)である。
例えば、アートボード(4)内のアンカーポイント数が100個で、密度の設定値「20%」とした場合、隠し情報要素データ(1)は、アンカーポイント数100個の20%である20個をアートボード(4)に配置する。
【0047】
項目「拡大縮小率の範囲」とは、隠し情報要素データ(1)を配置する際に、隠し情報要素データ(1)の大きさを拡大または縮小を行う際の拡大縮小率の範囲であり、設定値「50%~150%」の場合、半分(50%)に縮小から1.5倍(150%)に拡大までとなる。
【0048】
項目「角度の範囲」とは、隠し情報要素データ(1)を配置する際に、隠し情報要素データ(1)を回転する際の回転角度の範囲であり、設定値「0°~180°」において、例えば180°ならば、右に半回転となる。
【0049】
以上、表の各項目についての説明を行ったが、これらは、隠し情報要素データ(1)と背景(例えば、地紋模様等)を形成する画像データに応じて、適宜変更する。
【0050】
s04として、前述した図4に示すように、アートボード(4)の中に、n個のアンカーポイント(3)を持つ仮想グリッド(5)を生成する。図4では、正方形状のアートボード(4)の中に、X方向に8個、Y方向に8個、合計64個のアンカーポイント(3)を持つ仮想グリッド(5)を生成している。
【0051】
s05として、固有情報を取得する。
【0052】
固有情報とは、チケットの通し番号や、通行券のIDなどであり、直接入力するほか、あらかじめ生成したデータベース(DB)からの取得等がある。
【0053】
s06として、s05で取得した固有情報を基に乱数種を設定する。
【0054】
乱数種とは、隠し情報要素データ(1)の配置に用いる疑似乱数を生成するための種となる数値のことである。プログラム上で疑似乱数を生成する場合には、必ず乱数種が必要となる。
【0055】
例えば、任意の疑似乱数を生成する関数を生成し、その関数に、任意の乱数種を入力することで、演算結果として疑似乱数を生成することが可能となる。入力する乱数種が同じだった場合、生成される乱数は同じになることが一般的である。乱数種には、多くの場合「西暦何年何月何日何時何分何秒」といった時間を数値化したものが使用される。これは、同じ時間は二度とないため、固有の値の乱数値となるからである。本発明においては、「固有情報」を「乱数種」として使用する。乱数種は、任意の自然数を用いる。
【0056】
s07として、疑似乱数に従ってアートボード(4)に隠し情報要素データ(1)を配置する。
【0057】
図7は、本発明におけるs07の隠し情報要素データ(1)の配置方法を詳細に説明するフローチャートである。
【0058】
隠し情報要素データ(1)を配置するため、以下s11からs14を、アートボード(4)のアンカーポイント(3)の数(n)だけ繰り返す。例えば、前述した図4においては、アートボード(4)にアンカーポイント(3)が64個配置されていたことから、隠し情報要素データ(1)を配置するため、64回繰り返す必要がある。
【0059】
まず、s11として、乱数種を基に疑似乱数を生成する。
【0060】
前述のとおり、本発明では疑似乱数(例えば、XorShift法、メルセンヌツイスタ法)を用いる。自然乱数を用いると、生成側と照合側で動作環境が異なる場合(例えば、生成側ではC++、照合側ではjavaを用いるなど)、生成される乱数値に差異が生じ、認証できない可能性があるためである。
【0061】
s12として、生成した疑似乱数が設定値以下であるかを判定する。
【0062】
設定値は、前述した表1に示した密度である。s12で判定に使用する設定値を密度とする理由は、s12の判定をもとに、次のステップであるs13でi番目のアンカーポイント(3)に、隠し情報要素データ(1)を配置する。その際、s12の判定が、密度でない場合、生成者が意図する密度で隠し情報要素データ(1)を配置した散らし模様を作ることができないからである。
【0063】
例えば、疑似乱数xの取りうる範囲が0≦1であるとし、設定値(密度)が20%(0.2)であるとした場合、s11で生成した疑似乱数がx≦0.2の場合、次のステップであるs13で隠し情報要素データ(1)を配置し、x>0.2の場合、次のステップであるs13で隠し情報要素データ(1)を配置しないとしたときに、仮想グリッド(5)上に20%の割合で隠し情報要素データ(1)が配置される。
【0064】
なお、別の例として、設定値(密度)が15%(0.15)であるとした場合、s11で生成した疑似乱数がx≦0.15の場合、次のステップであるs13で隠し情報要素データ(1)を配置し、x>0.15の場合、次のステップであるs13で隠し情報要素データ(1)を配置しないとしたときに、仮想グリッド(5)上に15%の割合で隠し情報要素データ(1)が配置される。
【0065】
以上の工程によって、設定値(密度)を判定基準とすることにより、生成者が意図する密度で隠し情報要素データ(1)を配置した散らし模様を生成できる。
【0066】
s13として、s12の判定が、設定値(密度)以下であれば、i番目のアンカーポイント(3)に隠し情報要素データ(1)を配置する。設定値(密度)を超えた場合、i番目のアンカーポイント(3)に隠し情報要素データ(1)を配置しない。併せて、次のステップであるs14も行わない。
【0067】
s14として、アンカーポイント(3)に配置した隠し情報要素データ(1)に対して、疑似乱数を基に、設定値(拡大縮小率の範囲)に従った拡大縮小率の算出及び適用と、設定値(角度の範囲)に従った角度の算出及び適用を行う。各算出値の適用により、複数の隠し情報要素データ(1)をアートボード(4)上に配置することで、隠し情報画像(2)を生成する。
【0068】
図8は、本発明における隠し情報画像(2)の一例を示す平面図である。具体的には、s07として、疑似乱数に従ってアートボード(4)に配置した隠し情報要素データ(1)を示す平面図である。
【0069】
前述した図3(a)に示す花びらの形状の隠し情報要素データ(1)を用いた場合、図8(a)の隠し情報画像(2)が生成される。また、前述した図3(b)に示す星の形状の隠し情報要素データ(1)を用いた場合、図8(b)の隠し情報画像(2)が生成される。また、前述した図3(c)に示す、紅葉の形状の隠し情報要素データ(1)を用いた場合、図8(c)の隠し情報画像(2)が生成される。更に、前述した図3(d)に示す、雪の結晶形状の隠し情報要素データ(1)を用いた場合、図8(d)の隠し情報画像(2)が生成される。なお、図8(a)から図8(d)は、全て異なる乱数種を用いて生成された一例であるため、隠し情報要素データ(1)の配置が異なる。
【0070】
最後に、s08として、画像データである隠し情報画像(2)を保存する。
なお、隠し情報画像(2)を保存する際のデータ形式は、印刷物用データとして出力可能なデータであれば特に限定はなく、TIFF形式、PDF形式、BMP形式等のラスターデータや、Ai形式等のベクターデータとすることが可能である。また、印刷用データの保存先は、コンピュータ上の保存領域と、ネットワーク上の保存領域のどちらでも構わない。
【0071】
なお、隠し情報画像(2)を保存する際のデータ形式は、印刷物用データとして出力可能なデータであれば特に限定はなく、TIFF形式、PDF形式、BMP形式等のラスターデータや、Ai形式等のベクターデータとすることが可能である。また、印刷用データの保存先は、コンピュータ上の保存領域と、ネットワーク上の保存領域のどちらでも構わない。
【0072】
(印刷物の作成)
図9は、本発明における印刷物(12)の印刷方法及び印刷物群(12g)の作成方法の例を示す模式図である。
【0073】
次に、図2から図7の作成方法によって得られた、図8に示す隠し情報画像(2)を用いた印刷物(12)の作成方法について説明する。
【0074】
印刷物(12)の作成方法の一例として、図9に示すように、複数データである印刷用PDF群(10g)より、単一データである印刷用PDF(10)を取得し、同時に複数の基材である基材群(26g)より、単一の基材である基材(26)を取得して、印刷機(11)で基材(26)に印刷用PDF(10)を印刷し、単一の印刷物(12)を作成する。また、図9に示す破線内を固有情報の数だけ繰り返して、複数の印刷物(12)である印刷物群(12g)を作成する。
【0075】
次に、印刷物群(12g)を作成するための、各工程について説明する。
【0076】
まず、図9に示す、印刷用PDF群(10g)を生成する工程について説明する。
【0077】
図10は、本発明における印刷用PDF群(10g)を生成するための組版データ(6)の一例を示す平面図である。
【0078】
組版データ(6)とは、固有情報印刷部(9p)の画像データである固有情報画像(9i)を画像データとして挿入する固有情報挿入部(9v)と、隠し情報印刷部(2p)の画像データであり、図8に示す隠し情報画像(2)を挿入する隠し情報挿入部(2v)を保持する基データである。組版データ(6)に挿入する固有情報画像(9i)及び隠し情報画像(2)を、固有情報に応じて差し替えることで、固有情報を可変情報とした複数データである印刷用PDF群(10g)を生成することが可能である。
【0079】
図11は、本発明における固有情報画像(9i)及び固有情報画像群(9ig)の生成方法の一例を示す模式図である。
【0080】
複数の固有情報である固有情報群(9g)が格納されたデータベース(DB)から、単一の固有情報である固有情報(9)を取得し、画像化を行い、固有情報画像(9i)として保存する。また、図11破線内を固有情報の数だけ繰り返し、固有情報画像群(9ig)を生成する。
【0081】
図12は、本発明における隠し情報画像(2)及び隠し情報画像群(2g)の生成方法の一例を示す模式図である。
【0082】
複数の固有情報である固有情報群(9g)が格納されたデータベース(DB)から、単一の固有情報である固有情報(9)を取得し、固有情報(9)を基に、図2のフローチャートに従い、隠し情報要素データ(1)を配置し、隠し情報画像(2)を生成する。また、図12破線内を固有情報の数だけ繰り返し、隠し情報画像群(2g)を生成する。
【0083】
図13は、本発明における固有情報画像群(9ig)と隠し情報画像群(2g)を用いて印刷用PDF群(10g)を生成する方法の一例を示す模式図である。
【0084】
まず、図11において前述した固有情報画像群(9ig)から、単一の画像である固有情報画像(9i)を取得する。同時に、図12において隠し情報画像群(2g)から、単一の画像である隠し情報画像(2)を取得する。この時、固有情報画像(9i)と隠し情報画像(2)は、同一の固有情報を基に生成されたものである。
【0085】
前述の方法で取得した固有情報画像(9i)を、図10において説明した組版データ(6)内の固有情報挿入部(9v)に挿入し、同時に、前述の方法で取得した隠し情報画像(2)を組版データ(6)内の隠し情報挿入部(2v)に挿入し、印刷用PDF(10)として保存する。この時、印刷用PDF(10)内の固有情報画像(9i)が配置された箇所を固有情報保有部(9c)と呼称し、また、印刷用PDF(10)内の隠し情報画像(2)が配置された箇所を隠し情報保有部(2c)と呼称する。図13破線内を固有情報の数だけ繰り返し、印刷用PDF群(10g)を生成する。
【0086】
次に、生成した印刷用PDF群(10g)は、図9に示したように、印刷用PDF群(10g)から、単一データである印刷用PDF(10)を取得し、同時に複数の基材(26)である基材群(26g)より、単一の基材(26)を取得して、印刷機(11)で基材(26)に印刷用PDF(10)を印刷し、単一の印刷物(12)を作成する。最後に、図9の破線内を固有情報の数だけ繰り返して、複数の印刷物(12)である印刷物群(12g)を作成する。
【0087】
具体的には、図9において、印刷機(11)をプリンターとした場合、生成した印刷用PDF群(10g)を、プリンターとネットワークを介して接続したPC(図示せず)に格納したのち、単一データである印刷用PDF(10)を取得し、同時に複数の基材(26)である基材群(26g)をプリンターの用紙格納部(カセット)に格納しておく。PCから出力の指示がされた場合、プリンターは、単一(1枚)の基材(26)を供給して、基材(26)上に印刷用PDF(10)を出力し、単一の印刷物(12)を作成する。最後に、図9の破線内を固有情報の数だけ繰り返してPCから出力の指示を行うことで、複数の印刷物(12)である印刷物群(12g)を作成する。
【0088】
(隠し情報の照合)
次に、図9から図13の生成方法によって得られた、印刷物(12)に付与された隠し情報を照合する方法について説明する。
【0089】
図14は、本発明における仮想グリッド(5)の一例を示す模式図であり、図15は、本発明における照合用仮想グリッド(14)の一例を示す平面図である。
【0090】
隠し情報の照合は、図1に示すような、印刷物(12)の隠し情報印刷部(2p)と、図15に示すような照合用仮想グリッド(14)を重ね合わせることで行われる。この照合用仮想グリッド(14)は、物理的な判別具ではなく、図14に示すような、デジタルデータとして仮想空間(13)上に生成された、仮想グリッド(5)に、図15に示すような図形配置位置(15)及び図形非配置位置(16)をマークする処理を施したものである。
【0091】
図16は、本発明における隠し情報画像(2)を生成する第1のアプリ(18)と、照合装置である照合用仮想グリッド(14)を生成する第2のアプリ(20)の師従関係を示す概要図である。
【0092】
第1のアプリ(18)とは、前述した図2から図7の作成方法をアプリケーションソフトウェア化したプログラムである。第2のアプリ(20)とは、詳細については後述するが、隠し情報画像(2)の認証方法をアプリケーションソフトウェア化したプログラムである。
【0093】
師従関係とは、PC(19)にインストールした隠し情報画像(2)を生成する第1のアプリ(18)を「師」、スマートフォン(21)にインストールした、照合用仮想グリッド(14)を生成する第2のアプリ(20)を「従」としたとき、第2のアプリ(20)が、第1のアプリ(18)と同様のアルゴリズムを用いたプログラムであることをいう。
【0094】
よって、第2のアプリ(20)が第1のアプリ(18)と同じ設定値を読み込んで、照合用仮想グリッド(14)を生成すると、第1のアプリ(18)の仮想グリッド(5)と同じグリッド形状及びアンカーポイント(3)の数を以って照合用仮想グリッド(14)が生成されることをいう。
【0095】
具体的には、図16の上に示すルートでは、設定値(17)から、PC(19)にインストールした第1のアプリ(18)が、アートボード(4)内に仮想グリッド(5)を生成する。また、図16の下に示すルートでは、同じ設定値(17)から、スマートフォン(21)にインストールした第2のアプリ(20)が、仮想空間(13)内に仮想グリッド(5)を生成する。
【0096】
仮想空間(13)とは、第2のアプリ(20)が仮想グリッド(5)を生成する場所であり、スマートフォン(21)のメモリ等に確保するデータ領域を指す。仮想空間(13)は、第1のアプリ(18)が仮想グリッド(5)を生成する場所である、アートボード(4)と対応しているもので、アートボード(4)をより一般的な呼称にしたものが仮想空間(13)となる。つまり、アートボード(4)は、広義には仮想空間(13)に相当する。
【0097】
ここでは、図16に示すように、PC(19)にインストールした隠し情報画像(2)を生成する第1のアプリ(18)と、スマートフォン(21)にインストールした照合用仮想グリッド(14)を生成する第2のアプリ(20)は師従関係にあり、いずれも同じ設定値(17)を共有している。
【0098】
なお、この設定値(17)は、表1と同じものである。そのため、隠し情報画像(2)生成時に第1のアプリ(18)で生成される仮想グリッド(5)と、照合用仮想グリッド(14)生成時に第2のアプリ(20)で生成される仮想グリッド(5)は、同じグリッド形状及びアンカーポイント(3)の数を以って生成される。
【0099】
図17は、本発明における隠し情報画像(2)を復元して印刷物(12)の真偽判別を行う照合装置(M)を示すブロック図である。なお、一例として、照合装置(M)は、図16に示した第2のアプリ(20)をインストールしたスマートフォン(21)として説明するが、コンピュータシステムで構成してもよい。
【0100】
照合装置(M)は、処理部(27)、記憶部HDD(28)、記憶部メモリ(29)、入力部1(30)、入力部2(31)及び出力部(32)から構成される。
【0101】
処理部(27)は、入力部1(30)から固有情報(9)を、入力部2(31)から入力画像(22)をそれぞれ受け取り、出力部(32)から照合結果を出力する。処理部(27)は、記憶部HDD(28)から設定値を読み出す。なお、この設定値は、表1と同じものである。その後、設定値を基に仮想グリッド(5)を生成し、仮想グリッド(5)が格納されるに足る容量のデータ領域(メモリ)を、仮想空間(13)として記憶部メモリ(29)内に確保し、仮想空間(13)として確保された記憶部メモリ(29)のデータ領域内に仮想グリッド(5)を格納する。
処理部(27)は、入力部1(30)から受け取った固有情報(9)を、記憶部メモリ(29)内に格納する。
【0102】
処理部(27)は、記憶部メモリ(29)内に格納された固有情報(9)と仮想グリッド(5)を読み出し、記憶部HDD(28)から設定値、疑似乱数生成手順及び仮想グリッド変更手順を読み出す。疑似乱数生成手順は、前述した図7の作成方法と同様に、例えば、XorShift法、メルセンヌツイスタ法等、公知の生成方法を用いる。なお、仮想グリッド変更手順は、図20を用いて後述する。その後、表1と同じ設定値、疑似乱数生成手順、仮想グリッド変更手順及び固有情報(9)を用いて、仮想グリッド(5)を照合用仮想グリッド(14)に変換し、仮想空間(13)として記憶部メモリ(29)内に確保したメモリ領域内に格納する。このとき、仮想グリッド(5)が格納されていたデータ領域に、データを上書き保存する形で照合用仮想グリッド(14)を格納してもよい。処理部(27)は、入力部2(31)から受け取った入力画像(22)を、記憶部メモリ(29)内に格納する。
【0103】
処理部(27)は、記憶部メモリ(29)内に格納された入力画像(22)を読み出し、記憶部HDD(28)より後述する入力画像変換手順を読み出す。その後、入力画像変換手順を用いて入力画像(22)を比較用画像(23)に変換し、記憶部メモリ(29)に格納する。このとき、入力画像(22)が格納されていたデータ領域に、データを上書き保存する形で比較用画像(23)を格納してもよい。
【0104】
処理部(27)は、記憶部メモリ(29)内に格納された照合用仮想グリッド(14)と比較用画像(23)を読み出し、記憶部HDD(28)より、図24を用いて後述する照合手順を読み出す。その後、照合手順を用いて照合用仮想グリッド(14)と比較用画像(23)の照合を行い、出力部(32)から照合結果を出力する。
【0105】
記憶部HDD(28)は、表1と同じ設定値、疑似乱数生成手順、仮想グリッド生成手順、仮想グリッド変更手順、入力画像変換手順及び照合手順が記憶され、内容は参照されるのみで変更は行われない。
【0106】
記憶部メモリ(29)は、処理部(27)によって各種手順中に生成される、仮想空間(13)、仮想グリッド(5)、照合用仮想グリッド(14)、固有情報(9)、疑似乱数、入力画像(22)及び比較用画像(23)が記録されるものである。
【0107】
入力部1(30)は、利用者が手入力等によって固有情報(9)を入力するための機構であり、操作パネル、キーボード等である。
【0108】
入力部2(31)は、利用者が撮影等によって入力画像(22)を入力するための機構であり、カメラ、スキャナー等である。
【0109】
出力部(32)は、処理部(27)が照合結果を表示するための機構であり、ディスプレイ等である。
【0110】
図18は、本発明における隠し情報を照合するフローチャートである。図17の照合装置(M)を用いた隠し情報の照合方法について、以下説明する。
【0111】
まず、s21として、隠し情報画像(2)生成の際に使用した、表1に示す設定値(17)を読み込む。
【0112】
s22として、照合用仮想グリッド(14)を生成するための仮想空間(13)を生成する。
【0113】
仮想空間(13)は、第2のアプリ(20)が、仮想グリッド(5)を生成する際に、必要となるスマートフォン(21)のメモリのデータ領域を確保することで生成する。
【0114】
s23として、前述した図14に示すように、仮想空間(13)上にn個のアンカーポイント(3)を持つ仮想グリッド(5)を生成する。
【0115】
この仮想グリッド(5)は、隠し情報画像(2)生成の際に使用された仮想グリッド(5)と同じグリッド形状、及び同じアンカーポイント(3)の数を持つ仮想グリッド(5)となる。
【0116】
s24として、固有情報(9)を取得する。
【0117】
例えば、印刷物(12)の固有情報印刷部(9p)を目視し、手入力する等して、固有情報(9)を取得し、それを乱数種とする。なお、固有情報印刷部(9p)は、印刷されているチケットの通し番号、通行券のID、二次元バーコード等である。
【0118】
s25として、固有情報(9)を基に乱数種を設定する。ここでは、s24で取得した固有情報(9)を乱数種に設定する。
【0119】
図19は、本発明における図形配置位置(15)のマークを示す概要図である。
【0120】
s26として、図19に示すように、疑似乱数に従ってアンカーポイント(3)に図形配置位置(15)をマークする。なお、図形配置位置(15)ではないアンカーポイント(3)は、図形非配置位置(16)としてマークする。
【0121】
図20は、本発明における照合用仮想グリッド(14)の生成のフローチャートである。
【0122】
図形配置位置(15)及び図形非配置位置(16)をマークする方法については、図20のフローチャートを参照する。図形配置位置(15)及び図形非配置位置(16)をマークするため、以下s31からs34をアンカーポイント(3)の数だけ繰り返す。
【0123】
s31として、乱数種を基に疑似乱数を生成する。
【0124】
s32として、設定値(密度)以下であるかを判定する。
【0125】
s32の判定が、設定値(密度)以下であれば、s33として、i番目のアンカーポイント(3)を図形配置位置(15)としてマークする。s32の判定が、設定値(密度)以下でなければ、s34として、i番目のアンカーポイント(3)を図形非配置位置(16)としてマークする。全てのアンカーポイント(3)に対して、処理を終えた仮想グリッド(5)は、前述した図15のような状態になり、これを照合用仮想グリッド(14)と呼称する。
【0126】
s27として、印刷物(12)を入力する。
【0127】
図21は、本発明における印刷物(12)の入力方法の例を示す模式図である。
【0128】
図21に示すように、印刷物(12)の隠し情報印刷部(2p)を入力する。入力には、スマートフォン(21)に付属のカメラを使用しての撮影や、スキャナーを用いた走査を用いる。
【0129】
図22は、本発明における入力画像(22)の比較用画像(23)への変換を示す概要図である。
【0130】
s28として、図22に示すように、入力画像(22)を比較用画像(23)へ変換する。これは、入力画像(22)をグレースケール化、または入力画像(22)から特定のチャンネルを抽出する、等の処理の後に二値化を行うといったものである。
【0131】
ここで、特定のチャンネルを抽出する、という処理について説明を行う。隠し情報印刷部(2p)をスマートフォン(21)に付属のカメラやデジタルカメラで撮影すると、一般的にRチャンネル、Gチェンネル及びBチャンネルの3チャンネルを保持した入力画像(22)となる。特定のチャンネルを抽出する処理とは、RGBの3チャンネルの入力画像(22)において、Rチャンネル、Gチャンネル又はBチャンネルのいずれかを抽出することである。
【0132】
特定のチャンネルを抽出する処理の実用例を挙げると、例えば、印刷物(12)に付与された隠し情報印刷部(2p)を構成する隠し情報要素(1p)が、黄色のインキで付与されていた場合に、入力画像(22)をグレースケール化すると、背景色と隠し情報要素(1p)との差が十分に得られず、二値化を行う際に情報が損失してしまい、認証に支障のある比較用画像(23)となってしまう可能性がある。入力画像(22)をグレースケール化するのではなく、特定のチャンネル(例えば黄色に対するBチャンネル)を抽出すれば、背景色と隠し情報要素(1p)との差が十分に得られるため、二値化を行う際の情報損失が避けられ、その結果、認証に支障のない比較用画像(23)を作成することが可能となる。
【0133】
図23は、本発明における照合用仮想グリッドと比較用画像(23)の位置合わせを示す概要図である。
【0134】
s29として、図23に示すように、照合用仮想グリッド(14)と比較用画像(23)の位置を合わせる。これは、アフィン変換等のアルゴリズムを用いて拡大、縮小、回転を行い、照合用仮想グリッド(14)の位置を比較用画像(23)に合わせる処理である。
【0135】
s210として、照合用仮想グリッド(14)と比較用画像(23)を照合する。
【0136】
図24は、本発明における照合用仮想グリッドと比較用画像(23)の照合方法のフローチャートである。
【0137】
照合用仮想グリッド(14)と比較用画像(23)の照合方法については、図24のフローチャートを参照する。
【0138】
s41として、照合用仮想グリッド(14)のi番目のアンカーポイント(3)が図形配置位置(15)としてマークされているかを判定する。
【0139】
図25は、本発明におけるアンカーポイント(3)の直下に黒画素(24)があるかどうかの判定を示す概要図である。
【0140】
s42として、図25に示すように、i番目のアンカーポイント(3)の直下に、比較用画像(23)の黒画素(24)があるかを判定する。
【0141】
同判定が成立する場合は、次のアンカーポイント(3)に移行し、同判定が成立しない場合には、s44として、「偽」を返して処理を終了する。
【0142】
図26は、本発明におけるアンカーポイント(3)の直下に白画素(25)があるかどうかの判定を示す概要図である。
【0143】
s43として、s41の判定が成立しない場合、図26に示すように、i番目のアンカーポイント(3)の直下に、比較用画像(23)の白画素(25)があるかを判定する。
同判定が成立する場合は、次のアンカーポイント(3)に移行し、同判定が成立しない場合には、s44として、「偽」を返して処理を終了する。全てのアンカーポイント(3)についての処理が正常に完了した場合、s45として、照合結果「真」を返す。
【0144】
s211として、照合の結果が真かを判定する。
【0145】
図27は、本発明における照合結果の画面表示の例を示す模式図である。
【0146】
s212として、s211の判定が「真」の場合は、例えば、図27(a)に示すような画面表示を行う。
【0147】
s213として、s211の判定が「偽」の場合は、例えば、図27(b)に示すような画面表示を行う。
【0148】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、実施の形態は一例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。また、本発明の実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0149】
1 隠し情報要素データ
1p 隠し情報要素
2 隠し情報画像
2g 隠し情報画像群
2v 隠し情報挿入部
2c 隠し情報保有部
2p 隠し情報印刷部
3 アンカーポイント
4 アートボード
5 仮想グリッド
6 組版データ
9 固有情報
9g 固有情報群
9i 固有情報画像
9ig 固有情報画像群
9v 固有情報挿入部
9c 固有情報保有部
9p 固有情報印刷部
10 印刷用PDF
10g 印刷用PDF群
11 印刷機
12 印刷物
12g 印刷物群
13 仮想空間
14 照合用仮想グリッド
15 図形配置位置
16 図形非配置位置
17 設定値
18 第1のアプリ
19 PC
20 第2のアプリ
21 スマートフォン
22 入力画像
23 比較用画像
24 黒画素
25 白画素
26 基材
26g 基材群
27 処理部
28 記憶部HDD
29 記憶部メモリ
30 入力部1
31 入力部2
32 出力部
M 照合装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27