(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128563
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】乾燥装置、乾燥方法及び造形システム
(51)【国際特許分類】
F26B 25/10 20060101AFI20240913BHJP
F26B 3/04 20060101ALI20240913BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20240913BHJP
B29C 64/35 20170101ALI20240913BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240913BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20240913BHJP
B29C 64/25 20170101ALI20240913BHJP
【FI】
F26B25/10
F26B3/04
B29C64/165
B29C64/35
B33Y10/00
B33Y40/00
B29C64/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037589
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 健治
(72)【発明者】
【氏名】武藤 敏之
【テーマコード(参考)】
3L113
4F213
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB02
3L113AC23
3L113AC69
3L113AC72
3L113BA32
3L113CB15
3L113DA02
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL55
4F213WL72
4F213WL87
4F213WW05
4F213WW17
4F213WW38
4F213WW45
(57)【要約】
【課題】乾燥によるエネルギーを低減する。
【解決手段】粉体結合物50を収容する収容部41と、収容部41に収容された粉体結合物50を乾燥させる乾燥部40と、を備え、収容部41は、端部を除く底部48に通気孔60を有する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体結合物を収容する収容部と、
前記収容部に収容された前記粉体結合物を乾燥させる乾燥部と、
を備え、
前記収容部は、端部を除く底部に通気孔を有することを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記通気孔は、前記底部の中央領域に前記通気孔を含む請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記通気孔は、前記底部の一端から他端の間に前記通気孔を含む請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記粉体結合物は、粉体を含む粉体層を形成する造形部と、前記粉体層に造形液を付与し、造形層を形成する造形液付与部と、を含む造形装置で造形される請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記収容部は、上部が開口している請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記乾燥部は、前記収容部を含む領域を減圧する減圧部と、前記減圧部で減圧されることによって気化された液体を回収する回収部と、を含む請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記底部は、鉛直方向に昇降可能である請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記収容部は、粉体が一緒に前記粉体結合物が収容される請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記底部は、前記通気孔と多孔質材を有し、
前記多孔質材が、前記通気孔を覆う請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記底部は、前記通気孔と多孔質材を有し、
前記多孔質材は、前記通気孔よりも小さい孔を有する請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項11】
前記通気孔の大きさは、粉体及び気体を通す大きさである請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項12】
前記多孔質材の孔は、前記粉体を通さず、気体を通す大きさである請求項10に記載の乾燥装置。
【請求項13】
前記多孔質材は、前記粉体結合物が造形される造形領域と重なるように配置される請求項10に記載の乾燥装置。
【請求項14】
前記通気孔は、千鳥状に配置されている請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項15】
前記通気孔は、溝部と、前記底部を上下方向に貫通する孔部を含む請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項16】
前記多孔質材は、可撓性を有するシート状の部材により構成される請求項10に記載の乾燥装置。
【請求項17】
前記多孔質材の上に、前記多孔質材よりも密度が大きい材料により構成される押え部材が配置される請求項10に記載の乾燥装置。
【請求項18】
前記多孔質材の上に、当該多孔質材を押さえる押え部材と、
前記押え部材を貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記多孔質材の孔を介して前記通気孔と連通する請求項10に記載の乾燥装置。
【請求項19】
収容部に収容された粉体結合物を乾燥させる乾燥方法であって、
前記収容部は、端部を除く底部に通気孔を有し、
前記粉体結合物から気化された液体を前記底部から回収することを特徴とする乾燥方法。
【請求項20】
粉体結合物を造形する造形装置と、
収容部に収容される前記粉体結合物を乾燥させる乾燥装置と、
を含む造形システムであって、
前記収容部は、端部を除く底部に通気孔を有することを特徴とする造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置、乾燥方法及び造形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
造形物を造形する方法として、例えば、粉体積層造形方式(バインダージェッティング方式)による方法が知られている。
【0003】
この方法においては、得られた造形物に含まれる溶媒などを乾燥させる必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2016-68334号公報)においては、造形物を乾燥させる乾燥装置として、ファンからの送風を造形ステージ上へ送ることにより、造形ステージ上の造形物(造形層)を乾燥させる構成が提案されている。詳しくは、造形ステージの端部に孔部が設けられており、この孔部には、粉体を通さず、空気を通すことのできるスポンジが設けられている。しかしながら、特許文献1の乾燥装置は、乾燥によるエネルギー消費を低減することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明においては、乾燥によるエネルギー消費を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、粉体結合物を収容する収容部と、前記収容部に収容された前記粉体結合物を乾燥させる乾燥部と、を備え、前記収容部は、端部を除く底部に通気孔を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乾燥によるエネルギー消費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る乾燥装置が搭載される造形システムの概略図である。
【
図3】造形装置の制御部の一例を示すブロック図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る乾燥装置の全体構成を示す図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る収容部を上方から見た平面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る構成と、これとは異なる比較例とにおいて、乾燥処理の早さを調べるために行った試験結果を示すグラフである。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る収容部の平面図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係る収容部の平面図である。
【
図15】本発明の第4実施形態に係る収容部の平面図である。
【
図16】本発明の第5実施形態に係る収容部の断面図である。
【
図17】本発明の第5実施形態に係る収容部の平面図である。
【
図18】本発明の第6実施形態に係る収容部の断面図である。
【
図19】本発明の第7実施形態に係る収容部の断面図である。
【
図20】本発明の第8実施形態に係る収容部の断面図である。
【
図21】本発明の第9実施形態に係る収容部の平面図である。
【
図22】本発明の第10実施形態に係る収容部の断面図である。
【
図23】本発明の第11実施形態に係る収容部の断面図である。
【
図24】本発明の第12実施形態に係る収容部の断面図である。
【
図25】本発明の第13実施形態に係る収容部の断面図である。
【
図26】本発明の第14実施形態に係る収容部の断面図である。
【
図27】本発明の第15実施形態に係る収容部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る乾燥装置の実施形態について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付し、一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
<造形システムの構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る乾燥装置が搭載される造形システムの概略図である。
【0011】
図1に示されるように、造形システム1000は、造形装置100と、乾燥装置200と、粉体除去装置300と、焼結装置400と、を備えている。
【0012】
造形装置100は、粉体(粉末)を用いて造形処理を行う造形装置である。粉体としては、アルミニウム、その他の金属のほか、セラミックス、ガラスなどを用いることができる。造形装置100は、粉体を含む粉体層を形成する工程と、粉体層に造形液を付与する工程とを繰り返し行うことにより、粉体が結合された複数の造形層から成る造形物を造形する。
【0013】
乾燥装置200は、造形装置100によって造形された造形物の乾燥処理を行う。乾燥処理によって、造形物中に残存する溶媒などの液体成分が気化して除去される。
【0014】
粉体除去装置300は、乾燥処理後に、造形物に付着している余剰粉体を除去する。余剰粉体を除去する方法としては、エアブローによって造形物から余剰粉体を除去する方法、造形物を除去液に浸漬させることによって余剰粉体を除去する方法などが挙げられる。
【0015】
焼結装置400は、余剰粉体除去処理後の造形物を加熱することにより、造形物中に含まれる樹脂成分を脱脂すると共に粉体を焼結させる。これにより、造形物を形成する粉体が一体化され、焼結体が得られる。なお、脱脂処理と焼結処理は、同一の装置を用いて連続して行われてもよいし,別々の装置を用いて行われてもよい。
【0016】
また、造形システム1000は、上記各装置のほか、後処理装置などを備えてもよい。後処理装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。後処理装置として、例えば、余剰粉体除去処理後の造形物に対して表面保護処理を行う表面保護処理装置、余剰粉体除去処理後の造形物に対して塗装を行う塗装装置などが挙げられる。
【0017】
<造形装置の構成>
次に、
図2を参照しつつ、造形装置100の一例について説明する。
【0018】
図2は、造形装置100の一例を示す。造形装置100は、一例として、粉体積層造形方式(バインダージェッティング方式)を示す。この造形装置100は、造形部1と、造形液付与部5と、を備えている。造形部1は、粉体20を含む粉体層31を形成する。造形液付与部5は、粉体層31に造形液10を付与し、粉体20が結合された造形層30を形成する。
【0019】
造形部1は、粉体槽11と、積層ユニット16と、を備えている。粉体槽11には、供給槽21と、造形槽22と、余剰粉体槽25と、が含まれる。供給槽21、造形槽22及び余剰粉体槽25は、いずれも上面が開放された箱状に形成されている。
【0020】
供給槽21は、造形槽22に供給するための粉体20が収容される槽である。供給槽21の底部は、鉛直方向(
図2におけるZ方向)に昇降可能な供給ステージ23として構成されている。
【0021】
造形槽22は、粉体層31と、粉体層31に造形液10が付与された造形層30とが形成される槽である。造形槽22の底部48は、鉛直方向(
図2におけるZ方向)に昇降可能な造形ステージ24として構成されている。
【0022】
余剰粉体槽25は、造形槽22へ供給される粉体20のうち、造形槽22からあふれる余剰の粉体20が収容される槽である。
【0023】
積層ユニット16は、平坦部12と、粉体除去部13と、を備えている。
【0024】
平坦部12は、水平方向(
図2におけるY方向)へ往復移動することにより、供給槽21から造形槽22へ粉体20を供給しながら平坦化して粉体層31を形成する手段である。
図2に示される例においては、平坦部12として、リコーターと称される回転体を用いている。また、平坦部12として、板状のブレード又はバーなどを用いてもよい。
【0025】
粉体除去部13は、平坦部12に付着した粉体20を除去する手段である。
図2に示される例においては、粉体除去部13として、平坦部12に接触して粉体20を除去する板状の部材が用いられている。粉体除去部13は、平坦部12に接触した状態で、平坦部12と一緒に往復移動する。
【0026】
造形液付与部5は、ヘッド52と、キャリッジ51と、を備えている。
【0027】
ヘッド52は、造形槽22に形成される粉体層31に対して造形液10を付与する手段である。ヘッド52は、例えば、インクジェットヘッドであり、複数のノズルが配列されるノズル列を有する。造形液の付与の方式としては、インクジェット方式のほか、ディスペンサ方式としてもよい。また、ヘッド52を4つ設け、シアンの造形液、マゼンタの造形液、イエローの造形液、ブラックの造形液などを付与することにより、カラー造形物を造形可能に構成してもよい。
【0028】
キャリッジ51は、ヘッド52を搭載し、ヘッド52を水平面上の互いに直交する2方向(
図2におけるX方向及びY方向)と鉛直方向(
図2におけるZ方向)とに往復移動させる手段である。
【0029】
図3は、造形装置100の制御部の一例を示すブロック図である。
【0030】
図3に示される制御部500は、CPU501(Central Processing Unit)と、制御を実行させるためのプログラム及びその他の固定データを格納するROM502(Read Only Memory)と、造形データなどを一時格納するRAM503(Random Access Memory)と、を有している。また、制御部500は、外部のコンピュータなどの造形データ作成装置600から造形データを受信する。 造形データ作成装置600は、最終形態の造形物を造形層30ごとにスライスした造形データを作成し、制御部500は、造形データに基づいて造形層30ごとの造形動作の制御を行う。なお、造形データ作成装置600は、造形装置100と別体であってもよいし、一体であってもよい。また、制御部500は、造形装置100の内部にあってもよいし、造形装置100の外部にあってもよい。
【0031】
<造形工程>
続いて、
図4~
図9を参照しつつ、造形装置100による造形動作(造形工程)について説明する。
【0032】
まず、
図4に示されるように、供給槽21に粉体20が収容された状態において、その粉体20の上面が供給槽21の上面レベルよりも所定厚さだけ上方に位置するように、供給ステージ23の高さを調整する。一方、造形槽22の造形ステージ24は、造形槽22の上面レベルから所望の粉体層31の厚さ分だけ下方へ位置するように高さ調整される。
【0033】
上記のように、供給ステージ23と造形ステージ24との高さ調整が行われた状態において、
図5に示されるように、平坦部12を回転させながら水平方向に移動させると、供給槽21の上面レベルよりも上方に位置する粉体20が平坦部12によって押し動かされる。
【0034】
そして、
図6に示されるように、平坦部12が供給槽21から造形槽22へ移動すると、粉体20が造形ステージ24上へ供給される。このとき、平坦部12は、造形ステージ24のステージ面(上面)と平行に移動することにより、造形ステージ24上の粉体20が平坦部12によって均され、
図7に示されるように、造形ステージ24上に均一な厚さの粉体層31が形成される。
【0035】
また、
図7に示されるように、平坦部12が造形槽22の端まで移動すると、平坦部12の移動が停止される。これにより、造形ステージ24の全体に渡って粉体層31が形成される。また、造形槽22からあふれた余剰の粉体20は、余剰粉体槽25へ落下し収容される。その後、平坦部12は、
図8に示されるように、反対方向に移動され、初期位置へ戻される。
【0036】
続いて、
図9に示されるように、ヘッド52から粉体層31へ造形液10が付与されることにより、粉体20が結合され、造形層30が形成される。詳しくは、樹脂を含有する造形液10が粉体20に付着することにより、粉体20同士が結合して造形層30が形成される。樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)あるいはポリビニルピロリドン(PVP)などが用いられる。また、造形液10は、このような樹脂を含有するものに限らず、架橋剤及び有機溶剤を含有するものを用いてもよい。その場合、造形液10が粉体20に付与されると、粉体20を被覆する樹脂が溶解すると共に架橋することにより、粉体20が結合される。
【0037】
このように、1層目の造形層30が形成された後、再度上記と同じように、供給ステージ23と造形ステージ24の高さ調整を行い、平坦部12を往復移動させることにより、造形ステージ24上に2層目の粉体層31が形成される。そして、2層目の粉体層31に対してヘッド52から造形液10が付与されることにより、2層目の造形層30が形成される。その後、同様の工程を繰り返し行うことより、複数の造形層30が積層され、造形物(立体造形物)が造形される。
【0038】
また、余剰粉体槽25に収容される余剰の粉体20は、供給槽21へ戻されてもよい。例えば、余剰粉体槽25内の粉体20を、供給槽21上部に配置される粉体供給装置へ戻し、造形の初期動作時及び供給槽21の粉体量が減少した場合に、粉体供給装置内に貯蔵される粉体20を供給槽21へ供給するようにしてもよい。粉体供給装置へ粉体20を戻す手段としては、スクリューを利用したスクリューコンベア方式、エアーを利用した空気輸送方式などが挙げられる。
【0039】
<乾燥装置の全体構成>
続いて、
図10に基づき、本発明の第1実施形態に係る乾燥装置200の全体構成について説明する。
【0040】
図10に示されるように、乾燥装置200は、収容部41と、乾燥部40と、を備えている。乾燥部40は、処理室42と、減圧部43と、回収部44と、を含む。
【0041】
収容部41は、粉体を含む造形物が収容される。本実施形態においては、収容部41として、造形装置100が備える造形槽22が用いられる。収容部41は、供給槽21及び余剰粉体槽25から分離可能に構成されている。また、収容部41は上部が開口する箱状に形成されている。具体的に、収容部41は、乾燥装置200の設置面に対して水平に設けられる底部48と、その底部48から上方へ伸びるように設けられる側壁部49と、を有する。底部48と側壁部49との間には、粉体20の落下を防止するシール部材55が設けられている。収容部41が分離可能に構成されているため、上記造形工程を経て造形槽22内に造形物が造形されると、造形物をそのまま収容部41ごと処理室42内に収容することができる。なお、収容部41は、造形槽22と同じ容器である場合に限らず、造形槽22とは別の容器であってもよい。また、造形槽22に替えて、造形ステージ24を造形装置100から乾燥装置200に移動させ、収容部41の底部48に設置してもよい。また、収容部41の底部48は、造形槽22の造形ステージ24と同様に、鉛直方向に昇降可能である。
【0042】
処理室42は、収容部41が収容されるのに十分な空間を有し、気密性を確保できるように構成されている。処理室42には、ヒータなどの加熱源が設けられており、加熱源によって処理室42内を加熱することができる。また、ヒータなどの加熱源に代えて、処理室42内へ温風を送る温風発生装置を設けてもよい。
【0043】
減圧部43は、収容部41を含む処理室42内を減圧する手段である。処理室42内を減圧する手段としては、例えば、真空ポンプが挙げられる。また、真空ポンプに限らず、処理室42内の圧力を制御できるその他の公知の機器を用いてもよい。減圧することによって、収容部41に含まれる溶媒などの液体が気化し、収容部41の外へ送ることができる。
【0044】
回収部44は、処理室42内において気化した溶媒を冷却して回収する手段である。回収部44は、減圧部43で減圧されることによって気化された液体を回収する。回収部44は、処理室42と減圧部43とを接続する流路の途中に設けられている。
【0045】
<乾燥工程>
乾燥処理を行う場合は、造形装置100によって造形された造形物を乾燥部40によって乾燥させる。具体的には、造形装置100によって造形された造形物を収容部41ごと取り出し、その収容部41を処理室42内に収容し、処理室42を密閉状態にする。ここで、乾燥処理が行われる造形物は、焼結処理が行われる前の造形物であり、粉体20同士が造形液10によって結合した状態の造形物である。以下、乾燥部40によって乾燥処理が行われる造形物、すなわち、焼結処理前の粉体20同士が結合した造形物を「粉体結合物」と称することにする。
【0046】
図10に示されるように、処理室42内に収容される収容部41内には、粉体結合物50のほか、造形液10が付与されていない粉体20も一緒に収容されている。これによって、粉体結合物50の形状を保持したまま、乾燥することができる。なお、粉体結合物50が単純形状などの場合には、収容部41は粉体結合物50のみとし、造形液10が付与されていない粉体20は収容しなくてもよい。処理室42を密閉状態にしてから、処理室42内を加熱源によって加熱すると共に、減圧部43によって減圧すると、粉体結合物50に含まれる溶媒又は水分などの液体成分が気化する。これにより、粉体結合物50から液体成分が除去され、粉体結合物50が乾燥する。なお、減圧しない大気圧下において処理室42内を加熱して乾燥処理を行ってもよいが、処理室42内の減圧を行うことにより、液体成分の沸点を下げることができるため、液体成分の気化が促進し、乾燥処理の時間を短くすることができる。
【0047】
粉体結合物50の液体成分が気化した結果、生じる蒸気は、粉体結合物50の周囲に存在する粉体20を通過し、収容部41の上部の開口などから放出される。そして、蒸気は、回収部44において冷却されて液化し、回収部44内に回収される。
【0048】
ここで、本実施形態に係る収容部41は、上部が開口しているため、乾燥処理時に粉体結合物50から生じる蒸気は、主に収容部41の上部の開口を通して放出される。しかしながら、このとき、蒸気の放出の効率が悪いと、収容部41内の蒸気の濃度が高まり、粉体結合物50からの液体成分の気化が抑制される。その場合、粉体結合物50の乾燥速度が遅くなり、乾燥処理に要する時間が長くなる。従って、乾燥効率を高めるには、収容部41内の蒸気を効率良く放出することが好ましい。このほか、加熱と送風で乾燥させる方法もあるが、条件次第では送風で粉末が舞い上がったり、造形物にひびが入って造形品質が低下したりする虞がある。また、造形液として特に沸点の高い有機溶媒を用いる場合、減圧しながら乾燥しないと乾燥のエネルギーが低下してしまう。例えば、常圧で200℃以上に加熱して乾燥する場合には、エネルギー効率低下のみならず、造形液などに含まれる樹脂が劣化してしまう可能性もある。
【0049】
斯かる観点から、本実施形態においては、収容部41内の蒸気を効率良く放出できるように、収容部41を次のような構成としている。以下、本実施形態に係る収容部41の構成について詳しく説明する。
【0050】
<収容部の構成>
図10に示されるように、本実施形態においては、収容部41は、通気孔60を含む底部48を有する。通気孔60は、底部48の端部を除く部分に設けられている。つまり、通気孔60は、底部48の一端から他端の間に設けられている。さらに言い換えれば、通気孔60は、底部48の中央領域に設けられている。収容部41の通気性を向上させるため、通気孔60は、収容部41の底部48に複数あることが好ましい。通気孔60は、底部48を上下方向に貫通するように設けられており、通気孔60を介して収容部41の内部と外部が連通している。また、通気孔60の大きさは、粉体20及び気体を通す大きさに形成されている。
【0051】
このため、本実施形態においては、乾燥処理時に収容部41内において蒸気が生じると、蒸気は、収容部41の上部開口部のほか、通気孔60からも放出される。通気孔60から放出された蒸気は、収容部41(底部48)の下面と処理室42の床面との間の隙間を通って、回収部44へ至り、回収部44において液化して回収される。
【0052】
このように、本実施形態においては、収容部41の底部48に通気孔60を設けることにより、この通気孔60からも蒸気を放出できるようになるため、上部の開口のみから蒸気が放出される場合に比べて、蒸気の放出量を多くすることができる。また、通気孔60が、収容部41の上部の開口と対向する底部48に設けられていることにより、乾燥時の減圧を効果的に行える。これにより、粉体結合物50の乾燥を促進させることができる。なお、通気孔60が側壁部49に設けられる場合であっても、通気孔60からの蒸気の放出が可能であるが、底部48が鉛直方向に昇降可能である場合は、底部48の昇降によって側壁部49が劣化する。このため、通気孔60は、側壁部49よりも底部48に設けられることが好ましい。
【0053】
また、底部48は、通気孔60と多孔質材61を含む。多孔質材61は、通気孔60を覆うように収容部41に設置される。このため、通気孔60の粉体20による目詰まりを防止する。多孔質材61は、通気孔60の上に配置される板状の部材である。万が一、通気孔60が目詰まりすると、通気性が低下して蒸気を効率良く放出することができなくなるため、粉体結合物50の乾燥速度が遅くなる。その場合、通気孔60から粉体20を除去するなどの通気性を回復させるメンテナンス作業が必要となるが、通気孔60からの粉体20の除去作業は容易ではないことが予想される。従って、万が一、通気孔60が目詰まりした場合は、底部48又は底部48を含む収容部41全体を交換することが必要となり、交換作業が面倒になることに加え、交換費用も高くなるといった問題がある。
【0054】
そのため、本実施形態においては、通気性を確保しつつ、メンテナンス性を向上させるため、多孔質材61を収容部41内に配置している。
【0055】
図11は、本発明の第1実施形態に係る収容部41を上方から見た平面図である。多孔質材61は、通気孔60を覆うように配置される。
図11では、底部48に設けられる複数の通気孔60が、全て多孔質材61によって覆われている。なお、
図11は、縦方向に並ぶ通気孔60の列は互いに等間隔に配置されており、横方向に並ぶ通気孔60の列も互いに等間隔に配置されている。
【0056】
このように、多孔質材61が通気孔60を覆うように配置された状態においては、多孔質材61の多数の孔が通気孔60に対して連通するように配置されるため、通気孔60の通気性が確保される。これにより、乾燥処理時に収容部41内において粉体結合物50から生じる蒸気は、多孔質材61の孔と底部48の通気孔60とを順に通過して、収容部41外へ放出される。
【0057】
また、多孔質材61は、通気孔60よりも小さい孔を有する。このため、通気孔60の粉体20による目詰まりを防止できる。一方、多孔質材61の孔は、粉体20が入り込むことにより目詰まりする虞がある。しかしながら、多孔質材61が目詰まりしたとしても、その多孔質材61を新しい別の多孔質材61と交換することにより、通気性を簡単に回復できる。多孔質材61は、収容部41とは別体で、かつ、収容部41から取り外し可能に構成されているため、多孔質材61を簡単に交換できる。従って、本実施形態に係る構成によれば、目詰まりした孔から粉体を除去したり、底部48又は底部48を含む収容部41全体を交換したりする作業が不要となるため、メンテナンス性が向上する。
【0058】
多孔質材61の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタアクリレート、フッ素樹脂などの樹脂材料のほか、アルミナ、ジルコニア、シリカ、炭化ケイ素(SiC)、あるいはこれらの複合材料から成るセラミックス、さらには、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅、チタン、あるいはこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、多孔質材61の耐熱性及び強度を確保する点から、セラミックス又は金属材料が好ましい。また、多孔質材61が金属材料によって構成される場合は、粉体結合物50へ熱を効率良く伝えることができるため、粉体結合物50の乾燥を促進させることができる。特に、アルミニウム、銅、あるいはこれらの合金は、熱伝導性が良いため、好ましい。
【0059】
多孔質材61の孔は、粉体20を通さず、気体を通す大きさであることが好ましい。例えば、粉体20として、平均粒径が55μmのアルミニウム合金の金属粉を用い、多孔質材61を、平均気孔径が60μm、気孔率が40%以上45%以下、厚さが5mmのアルミナ板を用いた場合でも、多孔質材61に対する粉体20の通過を防止できた。この場合、平均粒径が55μmである粉体20には、多孔質材61の平均気孔径(60μm)よりも小さい粒径(55μm以下)の粉体も含まれるが、多孔質材61が厚み(この場合5mm)を有しているため、小さい粒径の粉体の通過も抑制できた。また、多孔質材61の厚みが5mmであったため、多孔質材61の剛性も得られた。
【0060】
なお、多孔質材61の気孔率は、重量気孔率法によって測定された値である。また、多孔質材61の平均気孔径は、例えば、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて観察することが可能である。
【0061】
また、収容部41は、造形物が造形される造形領域Aを有する。多孔質材61は、通気孔60を有する壁面(底部48)に対して直交する方向から見て、粉体結合物50が造形される造形領域Aと重なるように配置されることが好ましい。ただし、
図10(b)に示されるように、通気孔60は、造形領域Aの中心Bに無くてもよい。すなわち、通気孔60が設けられる底部48の中央領域は、造形領域Aの内側であればよく、造形領域Aの中心Bに必ずしもある必要はない。また、多孔質材61が造形領域Aと重なるように配置される。これにより、収容部41内において生じる蒸気をさらに効率良く放出できる。なお、ここでいう造形領域Aとは、実際に粉体結合物50が造形されている領域だけではなく、粉体結合物50が造形され得る領域、すなわち、造形液10を付与することができる領域を意味する。
【0062】
このように、通気孔60及び多孔質材61が造形領域Aと重なるように配置されることにより、粉体結合物50から生じる蒸気を多孔質材61及び通気孔60を通して効率良く放出することができるようになる。
図11においては、全部の通気孔60及び多孔質材61全体が、造形領域Aと重なるように配置されているが、一部の通気孔60のみ、又は、多孔質材61の一部のみが造形領域Aと重なるように配置されてもよい。
【0063】
また、通気孔60の大きさ及び数は、底部48上に載置される多孔質材61の剛性及び所望の通気性を考慮して適宜決定すればよい。例えば、多孔質材61の剛性が小さい場合に、通気孔60が大きいと、多孔質材61が収容部41内の粉体20の重量によって通気孔60の箇所において撓むなどの変形が生じる虞がある。その場合、通気孔60の大きさは小さい方が好ましい。また、通気孔60を小さくした場合は、通気孔60の数を増やすことにより、通気性を確保できる。また、通気孔60の形状は、円形に限らず、矩形又は多角形など種々の形状を採用できる。
【0064】
図12は、本発明の第1実施形態に係る構成と、これとは異なる比較例とにおいて、乾燥処理の早さを調べるために行った試験結果を示すグラフである。
【0065】
比較例においては、収容部41として、通気孔60と多孔質材61とを有しないものを用いた。それ以外は、本発明の実施形態と同じである。そして、本発明の第1実施形態に係る収容部41と、比較例に係る収容部41との、各収容部41内の粉体結合物50に対して、同じ条件で乾燥処理を行い、乾燥処理中に回収部44によって回収される液体(液化した蒸気)の量を液面レベル測定計により測定した。
【0066】
図12において、実線により示されるグラフが本発明の第1実施形態の結果であり、破線により示されるグラフが比較例の結果である。
図12に示されるように、本発明の第1実施形態の場合、比較例に比べて、回収部44において回収される液量の増加タイミングが早くなった。これにより、本発明の第1実施形態においては、回収部44によって回収される液体の飽和時間が、比較例の飽和時間(約36時間)に比べて10時間ほど短い約26時間となった。その結果、本発明の第1実施形態においては、比較例に比べて、10時間ほど(約28%の割合で)乾燥時間が短くなった。このことから、本発明の第1実施形態においては、比較例よりも早い段階で蒸気が発生し、乾燥が促進されたといえる。
【0067】
以上のように、本発明の第1実施形態によれば、収容部41の通気性を向上させることにより、粉体結合物50中の液体成分の気化を促進させ、乾燥処理の時間を短くすることができるので、エネルギー消費を低減できる。さらに、本発明の第1実施形態によれば、多孔質材61を交換するだけで通気性を簡単に回復させることができるので、メンテナンス性に優れる乾燥装置を提供できるようになる。
【0068】
<国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献>
本発明の各実施形態は、エネルギー消費を低減できるので、SDGsの目標12、13に貢献できる。
【0069】
続いて、本発明の第1実施形態とは異なる他の実施形態について説明する。以下、主に本発明の第1実施形態とは異なる部分について説明し、同じ部分については適宜説明を省略する。
【0070】
<本発明の第2実施形態>
図13は、本発明の第2実施形態に係る収容部41の平面図である。
【0071】
図13の通気孔60は、千鳥状に配置されている。すなわち、
図13において縦方向に並ぶ通気孔60の列うち、横方向に隣り合う列同士の通気孔60が縦方向にずれて配置されている。
【0072】
このように、通気孔60が千鳥状に配置されることにより、通気孔60を縦方向と横方向とにずれないように配置する構成(
図11参照)と比べて、通気孔60を密に配置できるようになる。これにより、単位面積当たりの通気孔60の開口面積を増加させることができる、通気性が向上する。
【0073】
<本発明の第3実施形態>
図14は、本発明の第3実施形態に係る収容部41の平面図である。
【0074】
図14の通気孔60は、横方向に伸びる長孔により構成されている。なお、
図14では、通気孔60が横方向に伸びる長孔となっているが、通気孔60が縦方向に伸びる長孔としてもよい。
【0075】
通気孔60が長孔により構成されることにより、単位面積当たりの通気孔60の開口面積を増加させることができ、通気性が向上する。また、通気孔60がこのような長孔により構成される場合であっても、多孔質材61の厚さを厚くしたり、多孔質材61を構成の高い材料により構成したりすることにより、多孔質材61の剛性を確保でき、粉体20の重量による多孔質材61の変形を防止できるようになる。
【0076】
<本発明の第4実施形態>
図15は、本発明の第4実施形態に係る収容部41の平面図である。
【0077】
図15の通気孔60は、1つの大きい孔により構成されている。つまり、1つの通気孔60が、複数の粉体結合物50の下部の領域を全て跨ぐようには位置される。
【0078】
この場合も、単位面積当たりの通気孔60の開口面積を大きくすることができるため、通気性が向上する。また、通気孔60がこのような大きい孔により構成される場合であっても、多孔質材61の厚さを厚くしたり、多孔質材61を構成の高い材料により構成したりすることにより、多孔質材61の変形を防止することが可能である。
【0079】
<本発明の第5実施形態>
図16は、本発明の第5実施形態に係る収容部41の断面図、
図17は、当該第5実施形態に係る収容部41の平面図である。
【0080】
図16及び
図17の通気孔60は、溝部60aと孔部60bを有する。溝部60aは、底部48の上面に設けられ、通気孔60の凹部を形成する領域で、底部48の上下方向に貫通していない。孔部60bは、通気孔60の開口している領域で、底部48の中央を上下方向に貫通している。溝部60aは、通気孔60に複数ある。複数の溝部60aのうち1つは、底部48の上面中央で、孔部60bが設けられる位置の上部と共通する領域となっている。溝部60aは、底部48の中央において孔部60bと連通している。このため、収容部41内において蒸気が発生すると、蒸気が溝部60aを通って孔部60bから放出される。複数の溝部60aのうち残りは、底部48の広い範囲に渡って設けられている。これらの溝部60aは、孔部60bとは連通しておらず、底部48の上下方向に貫通もしていない。
【0081】
このため、溝部60aは、底部48を貫通する通気孔60を複数形成する場合に比べて、底部48の剛性の低下を抑制できる。従って、本実施形態に係る構成は、底部48の厚み、収容部41の大きさによっては剛性を確保しにくいので、特に底部48の剛性を確保しにくい場合に好適である。
【0082】
<本発明の第6実施形態>
図18は、本発明の第6実施形態に係る収容部41の断面図である。
【0083】
図18の多孔質材61は、可撓性を有するシート状の部材により構成されている。
【0084】
このように、多孔質材61がシート状の部材により構成されることにより、多孔質材61の交換作業をより簡単に行えるようになると共に、交換コストも低減できる。シート状の多孔質材61としては、セルロース、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、PET、フッ素樹脂、アラミドなどの材料から成る不織布、メッシュ、細孔構造、多孔質構造を有するフィルムを用いることができる。あるいは、このような材料及び構造の複合材を用いてもよい。高温で加熱乾燥処理を行う場合は、耐熱性が高いフッ素樹脂、アラミドから成るシートを用いることが好ましい。また、フィルター、ろ紙などの市販のシートを用いてもよい。
【0085】
<本発明の第7実施形態>
図19は、本発明の第7実施形態に係る収容部41の断面図である。
【0086】
図19の多孔質材61は、粘着テープなどの固定部材56によって底部48に固定されている。
【0087】
上記造形工程において、収容部41上に粉体層31が形成される際(
図6参照)、底部48上に多孔質材61が配置されていると、多孔質材61が、平坦部12の水平移動に伴い押し動かされる粉体20の影響を受けて、所定の位置からずれる虞がある。特に、多孔質材61が、
図19に示されるようなシート状の部材により構成される場合は軽いため位置ずれしやすい。そのため、本実施形態のように、多孔質材61の端部を固定部材56によって底部48に固定することにより、多孔質材61の位置ずれを抑制できるようになる。
【0088】
例えば、
図19において、左側から右側へ向かって平坦部12が粉体20を押し動かす場合、多孔質材61の左端部(平坦部12の移動方向における上流端部)のみを、固定部材56により固定してもよい。なお、多孔質材61の固定箇所は、多孔質材61の縁全体、一部の辺、又は角部など、位置ずれが生じる状態によって適宜変更してもよい。
【0089】
<本発明の第8実施形態>
図20は、本発明の第8実施形態に係る収容部41の断面図である。
【0090】
上記のように、多孔質材61がシート状である場合、多孔質材61が底部48から浮き上がることがある。このような多孔質材61の浮き上がりの原因としては、多孔質材61自体の撓み、温度及び湿度などの周辺環境の変化に伴う多孔質材61の膨張又は変形などがある。その場合、底部48と多孔質材61との間に隙間が生じるため、通気孔60を通して粉体20が漏れ出る虞がある。
【0091】
そのため、
図20に示される第8実施形態においては、多孔質材61の上に、多孔質材61よりも密度が大きい材料により構成される押え部材57を配置している。密度は単位体積当たりの質量である。これにより、押え部材57の重量によって多孔質材61の浮き上がりを抑制できる。また、押え部材57によって多孔質材61が押さえられることにより、平坦部12の水平移動に伴う多孔質材61の位置ずれも抑制できる。押え部材57の材料としては、ステンレス、アルミニウムなどの金属材料などのある程度重量がある材料が好ましい。
【0092】
また、押え部材57は、押え部材57を貫通する複数の貫通孔58を有する。このため、押え部材57が多孔質材61の上に配置されたとしても、通気性を確保できる。すなわち、押え部材57の貫通孔58が、多孔質材61の孔を介して底部48の通気孔60と連通することにより、貫通孔58と多孔質材61の孔とを介して通気孔60から収容部41内の蒸気を放出できる。
【0093】
<本発明の第9実施形態>
図21は、本発明の第9実施形態に係る収容部41の平面図である。
【0094】
図21の押え部材57の貫通孔58の位置が、底部48の通気孔60の位置と対応するように配置されている。貫通孔58と通気孔60の数は、同じである。
【0095】
つまり、押え部材57の貫通孔58を、底部48に対して直交する方向から見て、貫通孔58が通気孔60と重なるように配置されている。これによって、通気性を良好に確保できるようになる。さらに、貫通孔58は、通気孔60よりも大きく形成される。つまり、貫通孔58の直径d1を通気孔60の直径d2よりも大きくしている。これによって、通気性を向上させることができる。
【0096】
<本発明の第10実施形態>
図22は、本発明の第10実施形態に係る収容部41の断面図である。
【0097】
図22に示される第10実施形態においては、底部48の上面端部に、突き当て部64が突出するように設けられている。突き当て部64は、底部48の上面を切削するなどにより底部48と一体に構成されるほか、別体を底部48の上面に固定して構成されてもよい。
【0098】
突き当て部64は、押え部材57に突き当てられる部材であり、押え部材57の水平方向の移動(位置ずれ)を規制する規制部として機能する。より具体的には、粉体層形成時に、押え部材57が平坦部12の移動に伴う水平方向の力を受けても、突き当て部64が押え部材57に突き当てられることによって、押さえ部材57の水平方向の移動(位置ずれ)を規制できる。すなわち、押え部材57が水平方向へ移動しても、押え部材57が突き当て部64に突き当たることによって、押え部材57の移動が規制される。これにより、押え部材57の位置ずれに伴う多孔質材61の位置ずれも抑制できるようになる。
【0099】
突き当て部64は、粉体20を押し動かす際の平坦部12の移動方向における、押え部材57の上流側及び下流側に設けられてもよいし、下流側のみに設けられてもよい。また、突き当て部64は、平坦部12の移動方向における押え部材57の上流側及び下流側のほか、その移動方向とは直交する方向における上流側及び下流側に設けられてもよい。
【0100】
<本発明の第11実施形態>
図23は、本発明の第11実施形態に係る収容部41の断面図である。
【0101】
図23に示される第11実施形態においては、押え部材57の水平方向の位置ずれを規制する規制部として、ピン65を用いている。ピン65は、例えば、底部48の上面に挿入されることにより取り付けられる。
【0102】
この場合、突き当て部64を底部48に設ける場合に比べて、底部48の設計及び加工が簡便になる。また、ピン65は、突き当て部64と同じように、平坦部12の移動方向(粉体20を押し動かす方向)における押え部材57の上流側及び下流側に配置されてもよいし、下流側のみに配置されてもよい。さらに、ピン65は、平坦部12の移動方向における上流側及び下流側に加えて、その移動方向とは直交する方向における上流側及び下流側に配置されてもよい。
【0103】
<本発明の第12実施形態>
図24は、本発明の第12実施形態に係る収容部41の断面図である。
【0104】
図24に示される第12実施形態においては、ピン66を用いて押え部材57を底部48に固定している。すなわち、この場合、ピン66は、押え部材57を固定する固定部として機能し、
図23に示される実施形態とは、押え部材57にピン66が挿通されるピン孔が形成されている点において異なっている。
【0105】
このように、押え部材57をピン66によって固定することにより、平坦部12の水平移動に伴う押え部材57及び多孔質材61のそれぞれの位置ずれをより効果的に抑制できるようになる。
【0106】
<本発明の第13実施形態>
図25は、本発明の第13実施形態に係る収容部41の断面図である。
【0107】
図25に示される第13実施形態においては、押え部材57を底部48に対して固定するする固定部として、ねじ67を用いている。ねじ67は、押え部材57に設けられる挿通孔に挿通されて、底部48の上面に設けられるねじ孔にねじ込まれて固定される。
【0108】
このように、固定部としてねじ67を用いた場合も、押え部材57を底部48に対して確実に固定でき、平坦部12の水平移動に伴う押え部材57及び多孔質材61のそれぞれの位置ずれをより効果的に抑制できるようになる。
【0109】
<本発明の第14実施形態>
図26は、本発明の第14実施形態に係る収容部41の断面図である。
【0110】
図26に示される第14実施形態においては、押え部材57を底部48に対して固定するする固定部として、ヒンジ部材68を用いている。この場合、押え部材57がヒンジ部材68を介して底部48に固定されているため、ヒンジ部材68が開閉することにより、押え部材57のヒンジ部材68側とは反対側の端部が上下方向に揺動する。多孔質材61を押え部材57の下に配置するときは、
図26中の二点鎖線にて示されるように、押え部材57を上方へ揺動させればよい。ヒンジ部材68の取付位置は、平坦部12の移動方向(粉体20を押し動かす方向)における押え部材57の下流側であってもよいが、押え部材57の位置ずれをより確実に抑制するには、押え部材57の上流側であることが好ましい。
【0111】
このように、固定部としてヒンジ部材68を用いた場合も、押え部材57を底部48に対して確実に固定でき、平坦部12の水平移動に伴う押え部材57及び多孔質材61のそれぞれの位置ずれをより効果的に抑制できるようになる。また、ピン66(
図24参照)又はねじ67(
図25参照)を用いて押え部材57を固定する構成に比べて(ピン66又はねじ67の着脱を行わなくてよいので)、多孔質材61の交換作業を容易に行えるようになる。
【0112】
<本発明の第15実施形態>
図27は、本発明の第15実施形態に係る収容部41の断面図である。
【0113】
図27に示される第15実施形態においては、上記各実施形態とは異なり、通気孔60が、底部48ではなく、側壁部49に設けられている。そして、この場合、多孔質材61が通気孔60を覆うように側壁部49に取り付けられている。側壁部49に対する多孔質材61の取付方法は、ねじによる固定など、適宜選択可能である。
【0114】
このように、通気孔60が側壁部49に設けられ、その通気孔60を覆うように多孔質材61が設けられることによっても、上記実施形態と同じように、収容部41内の蒸気を多孔質材61の孔と通気孔60とを通して外部へ放出することができる。このため、通気性の向上を図れる。また、多孔質材61の目詰まりが生じた場合は、多孔質材61のみを交換すれば通気性を回復させることができるため、メンテンナンス性にも優れる。
【0115】
また、本実施形態においても、通気孔60及び多孔質材61は、通気孔60が形成される側壁部49の壁面に対して直交する方向から見て、造形領域A(
図11参照)と重なるように配置されることが好ましい。これにより、上記実施形態と同じように、粉体結合物50から生じる蒸気を多孔質材61及び通気孔60を通して効率良く放出することができるようになる。
【0116】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明に係る乾燥装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。
【0117】
上記各実施形態においては、通気孔60及び多孔質材61が、底部48と側壁部49のいずれか一方のみに設けられる構成を例に説明したが、通気孔60及び多孔質材61は、底部48と側壁部49の両方に設けられてもよい。通気孔60及び多孔質材61が底部48と側壁部49の両方に設けられる場合は、通気性がより一層向上し、乾燥時間のより一層の短縮化を期待できる。
【0118】
また、本発明に係る乾燥装置は、
図2に示されるような粉体積層造形方式の造形装置100を備える造形システムに限らず、
図28に示されるようなハイスピードシンタリング方式(HSS)の造形装置100を備える造形システムにも適用可能である。
【0119】
<他の造形装置の構成>
以下、
図28を参照しつつ、HSS方式の造形装置の構成について簡単に説明する。
【0120】
図28に示されるように、HSS方式の造形装置100は、
図2に示される造形装置100とは異なり、造形液付与部5が、放射エネルギー吸収剤を含む造形液10を付与するヘッド52と、放射エネルギー照射部80と、反射部81と、を備えている。
【0121】
放射エネルギー照射部80は、放射エネルギー吸収剤を活性化させる放射エネルギーを照射する手段である。放射エネルギーとしては、放射エネルギー吸収剤を活性化させるものであればよく、例えば、光、電磁放射線などが挙げられる。また、放射エネルギー照射部80としては、例えば、ハロゲンランプ、LED、LD、フラッシュランプ、キセノンランプ、球状灯などの光源が挙げられる。また、放射エネルギー照射部80は、水平面上の互いに直交する2方向(
図28におけるX方向及びY方向)と鉛直方向(
図28におけるZ方向)とに往復移動可能に構成されている。なお、放射エネルギー照射部80は、ヘッド52を搭載するキャリッジ51に設けられ、ヘッド52と一体に移動してもよいし、ヘッド52とは独立して個別に移動してもよい。また、放射エネルギー照射部80は、
図28におけるヘッド52の左右片方のみに配置されてもよいし、左右両側に配置されてもよい。
【0122】
反射部81は、放射エネルギー照射部80から照射される放射エネルギーを反射する手段である。例えば、反射部81は、収容部41側(
図28における下方)に向かって開口し、曲面を有する略ドーム形状に形成されている。放射エネルギー照射部80から放射エネルギーが照射されると、反射部81の曲面によって放射エネルギーが集められ、収容部41内の粉体層31へ照射される。これにより、粉体層31に照射される放射エネルギーの面積を、反射部81の開口の面積よりも小さくすることができる。
【0123】
収容部41内に粉体層31が形成された状態において、造形液付与部5は、粉体層31に対して放射エネルギー吸収剤を含む造形液10を付与する。次いで、造形液10が付与された粉体層31に対して、放射エネルギー照射部80から放射エネルギーが照射される。例えば、放射エネルギー吸収剤が、近赤外線染料(NIRD)、又は近赤外線顔料(NIRP)である場合、約800nmから約1400nmまでの波長の電磁放射線を、粉体層31に対して照射する。これにより、造形液10に含まれる放射エネルギー吸収剤が電磁放射線を吸収し、吸収したエネルギーが熱エネルギーに変換されることにより、粉体20が溶融し、結合される。造形液10には、放射エネルギー吸収剤のほか、着色剤が含まれてもよい。また、放射エネルギー吸収剤を含む造形液10を用いず、粉体20自体が放射エネルギー吸収材を含み、その粉体20に対して放射エネルギーが照射されることにより、粉体20が結合するようにしてもよい。
【0124】
このようなHSS方式の造形装置100を備える造形システムにおいても、本発明に係る乾燥装置を搭載することにより、乾燥性能(通気性)及びメンテナンス性に優れる造形システムを提供できるようになる。
【0125】
また、上記本発明の実施形態においては、乾燥装置200が造形装置100とは別体の装置として構成される場合を例に説明したが、造形装置100と乾燥装置200は一体の装置として構成されてもよい。また、造形装置100は、乾燥装置200のほか、粉体除去装置300、焼結装置400のいずれか1つ、又はこれらの複数を一体に構成されるものであってもよい。
【0126】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の構成を備える乾燥装置、乾燥方法及び造形システムが含まれる。
【0127】
[第1の構成]
第1の構成は、粉体結合物を収容する収容部と、前記収容部に収容された前記粉体結合物を乾燥させる乾燥部と、を備え、前記収容部は、端部を除く底部に通気孔を有する乾燥装置である。
【0128】
[第2の構成]
第2の構成は、前記第1の構成において、前記通気孔は、前記底部の中央領域に前記通気孔を含む乾燥装置である。
【0129】
[第3の構成]
第3の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記通気孔は、前記底部の一端から他端の間に前記通気孔を含む乾燥装置である。
【0130】
[第4の構成]
第4の構成は、前記第1から第3のいずれか1つの構成において、前記粉体結合物は、粉体を含む粉体層を形成する造形部と、前記粉体層に造形液を付与し、造形層を形成する造形液付与部と、を含む造形装置で造形される乾燥装置である。
【0131】
[第5の構成]
第5の構成は、前記第1から第4のいずれか1つの構成において、前記収容部は、上部が開口している乾燥装置である。
【0132】
[第6の構成]
第6の構成は、前記第1から第5のいずれか1つの構成において、前記乾燥部は、前記収容部を含む領域を減圧する減圧部と、前記減圧部で減圧されることによって気化された液体を回収する回収部と、を含む乾燥装置である。
【0133】
[第7の構成]
第7の構成は、前記第1から第6のいずれか1つの構成において、前記底部は、鉛直方向に昇降可能である乾燥装置である。
【0134】
[第8の構成]
第8の構成は、前記第1から第7のいずれか1つの構成において、前記収容部は、粉体が一緒に前記粉体結合物が収容される乾燥装置である。
【0135】
[第9の構成]
第9の構成は、前記第1から第8のいずれか1つの構成において、前記底部は、前記通気孔と多孔質材を有し、前記多孔質材が、前記通気孔を覆う乾燥装置である。
【0136】
[第10の構成]
第10の構成は、前記第1から第8のいずれか1つの構成において、前記底部は、前記通気孔と多孔質材を有し、前記多孔質材は、前記通気孔よりも小さい孔を有する乾燥装置である。
【0137】
[第11の構成]
第11の構成は、前記第1から第10のいずれか1つの構成において、前記通気孔の大きさは、粉体及び気体を通す大きさである乾燥装置である。
【0138】
[第12の構成]
第12の構成は、前記第10の構成において、前記多孔質材の孔は、前記粉体を通さず、気体を通す大きさである乾燥装置である。
【0139】
[第13の構成]
第13の構成は、前記第10又は第12の構成において、前記多孔質材は、前記粉体結合物が造形される造形領域と重なるように配置される乾燥装置である。
【0140】
[第14の構成]
第14の構成は、前記第1から第13のいずれか1つの構成において、前記通気孔は、千鳥状に配置されている乾燥装置である。
【0141】
[第15の構成]
第15の構成は、前記第1から第14のいずれか1つの構成において、前記通気孔は、溝部と、前記収容部の底部を上下方向に貫通する孔部を含む乾燥装置である。
【0142】
[第16の構成]
第16の構成は、前記第10、第12、第13のいずれか1つの構成において、前記多孔質材は、可撓性を有するシート状の部材により構成される乾燥装置である。
【0143】
[第17の構成]
第17の構成は、前記第10、第12、第13、第14のいずれか1つの構成において、前記多孔質材の上に、前記多孔質材よりも密度が大きい材料により構成される押え部材が配置される乾燥装置である。
【0144】
[第18の構成]
第18の構成は、前記第10、第12、第13、第14のいずれか1つの構成において、前記多孔質材の上に、当該多孔質材を押さえる押え部材と、前記押え部材を貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔は、前記多孔質材の孔を介して前記通気孔と連通する乾燥装置である。
【0145】
[第19の方法]
第19の方法は、収容部に収容された粉体結合物を乾燥させる乾燥方法であって、前記収容部は、端部を除く底部に通気孔を有し、前記粉体結合物から気化された液体を前記底部から回収する乾燥方法である。
【0146】
[第20の構成]
第20の構成は、粉体結合物を造形する造形装置と、収容部に収容される前記粉体結合物を乾燥させる乾燥装置と、を含む造形システムであって、前記収容部は、端部を除く底部に通気孔を有する造形システムである。
【符号の説明】
【0147】
1 造形部
5 造形液付与部
20 粉体
22 造形槽
40 乾燥部
41 収容部
48 底部
49 側壁部
50 粉体結合物
57 押え部材
58 貫通孔
60 通気孔
60a 溝部
60b 孔部
61 多孔質材
100 造形装置
200 乾燥装置
1000 造形システム
A 造形領域
【先行技術文献】
【特許文献】
【0148】