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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128626
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/00 20060101AFI20240913BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B24B53/00 D
B24B53/00 K
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037701
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】美山 遼
【テーマコード(参考)】
3C047
5F063
【Fターム(参考)】
3C047AA26
3C047AA32
5F063AA22
5F063AA40
5F063DD02
5F063DD22
(57)【要約】
【課題】修正する切削ブレードの形状に合わせた形状の電極を準備する必要がないとともに、品種にかかわらず切削ブレードの形状の修正を行うことができること。
【解決手段】切削装置1は、被加工物を保持面11で保持するチャックテーブル10と、砥粒と砥粒を結合する結合材とを含む切り刃24を備える切削ブレード21を先端に装着可能なスピンドル23を有する切削ユニット20と、被加工物と切削ブレード21とが接触する領域に加工水を供給する加工水供給ユニットと、切削ブレード21の切り刃24の先端形状を修正する先端形状修正ユニット70と、を備え、先端形状修正ユニット70は、プラズマ71を生成するプラズマ生成器72と、プラズマ生成器72が生成したプラズマ71を切り刃24に向かって噴射する噴射口74とを含み構成され、先端形状修正ユニット70から噴射されるプラズマ71によって切り刃24の先端形状を修正する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を切削する切削装置であって、
該被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、
少なくとも砥粒と該砥粒を結合する結合材とを含む切削部を備える切削ブレードを先端に装着可能なスピンドルを有する切削ユニットと、
該被加工物と該切削ブレードとが接触する領域に加工水を供給する加工水供給ユニットと、
該切削ブレードの先端形状を修正する先端形状修正ユニットと、を備え、
該先端形状修正ユニットは、
プラズマを生成するプラズマ生成器と、
該プラズマ生成器が生成したプラズマを該切削部に向かって噴射する噴射口と、を含み構成され、
該先端形状修正ユニットから噴射されるプラズマによって、該切削部の先端形状を修正することを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該切削ユニットと該噴射口とを該保持面と直交する方向に相対的に移動するZ軸移動ユニット、を更に備え、
該切削ブレードの径方向に対して噴射口の位置を相対的に調整可能なことを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該切削ユニットと該噴射口とを該保持面と平行方向に相対的に移動するY軸移動ユニット、を更に備え、
該切削部と該噴射口との距離を相対的に調整可能なことを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハや光デバイスウエーハ等のストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれる切削装置によって行われている。この切削装置は、半導体ウェーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削するための切削ブレードを備えた切削手段と、切削ブレードに加工水を供給する加工水供給手段を具備し、該加工水供給手段によって切削水を回転する切削ブレードに供給することにより切削ブレードを冷却するとともに、切削ブレードによる被加工物の切削部に加工水を供給しつつ切削作業を実施する。
【0003】
このような切削ブレードは、用途によって先端の形状を変更する必要がある。例えば、ベベルブレードでは切削したチップの表面上角部のチッピング対策に使用される。しかしながら、切削ブレードは、切削加工を継続すると切削部の消耗により形状が維持されない。
【0004】
その場合、形状が修正されている切削ブレードの交換作業、もしくはドレスボードを使用したドレス作業が発生する。
【0005】
また、切削ブレード付近に電極を位置付け、電極と切削ブレードを放電することによって形状を修正する手法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1-1211170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された方法では、修正したい切削ブレードの形状に対応した形状の電極を準備する必要がある。また、特許文献1に記載された方法では、切削ブレードが放電作用の起こるメタルブレードに限定される。
【0008】
したがって、切削装置には、切削ブレード形状に合わせた電極の準備削減、さらにメタルブレード以外の品種の切削ブレード(レジンブレード、ビトリファイドブレード等)での形状を修正する手法の確立、という解決すべき課題がある。
【0009】
本発明の目的は、修正する切削ブレードの形状に合わせた形状の電極を準備する必要がないとともに、品種にかかわらず切削ブレードの形状の修正を行うことができる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置は、被加工物を切削する切削装置であって、該被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、少なくとも砥粒と該砥粒を結合する結合材とを含む切削部を備える切削ブレードを先端に装着可能なスピンドルを有する切削ユニットと、該被加工物と該切削ブレードとが接触する領域に加工水を供給する加工水供給ユニットと、該切削ブレードの先端形状を修正する先端形状修正ユニットと、を備え、該先端形状修正ユニットは、プラズマを生成するプラズマ生成器と、該プラズマ生成器が生成したプラズマを該切削部に向かって噴射する噴射口と、を含み構成され、該先端形状修正ユニットから噴射されるプラズマによって、該切削部の先端形状を修正することを特徴とする。
【0011】
前記切削装置では、該切削ユニットと該噴射口とを該保持面と直交する方向に相対的に移動するZ軸移動ユニット、を更に備え、該切削ブレードの径方向に対して噴射口の位置を相対的に調整可能でも良い。
【0012】
前記切削装置では、該切削ユニットと該噴射口とを該保持面と平行方向に相対的に移動するY軸移動ユニット、を更に備え、該切削部と該噴射口との距離を相対的に調整可能でも良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、修正する切削ブレードの形状に合わせた形状の電極を準備する必要がないとともに、品種にかかわらず切削ブレードの形状の修正を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された切削装置の要部を一部断面で示す模式的に示す正面図である。
図3図3は、図1に示された切削装置の先端形状修正ユニットが切削ブレードの切り刃の先端形状を修正する状態を模式的に示す正面図である。
図4図4は、図3に示された先端形状修正ユニットが切削ブレードの切り刃の先端形状を修正する状態の他の例を模式的に示す正面図である。
図5図5は、実施形態2に係る切削装置の要部を模式的に示す正面図である。
図6図6は、実施形態3に係る切削装置の先端形状修正ユニットが切削ブレードの切り刃の先端形状を修正する状態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削装置を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示された切削装置の要部を一部断面で示す模式的に示す正面図である。図3は、図1に示された切削装置の先端形状修正ユニットが切削ブレードの切り刃の先端形状を修正する状態を模式的に示す正面図である。図4は、図3に示された先端形状修正ユニットが切削ブレードの切り刃の先端形状を修正する状態の他の例を模式的に示す正面図である。
【0017】
(被加工物)
実施形態1に係る図1に示す切削装置1は、被加工物200を切削加工する加工装置である。実施形態1では、切削装置1の加工対象の被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素、又はSiC(炭化ケイ素)等などを基板とする円板状の半導体ウェーハ等や光デバイスウェーハのウェーハである。被加工物200は、表面201に互いに格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって格子状に区画された領域にデバイス203が形成されている。
【0018】
デバイス203は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)又は半導体メモリ(半導体記憶装置)である。
【0019】
被加工物200は、表面201の裏側の裏面204に被加工物200よりも大径な円板状の粘着テープ209が貼着され、粘着テープ209の外縁部に円環状の環状フレーム210が貼着されて、環状フレーム210に支持される。なお、本発明では、被加工物200は、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等の種々の被加工物でも良い。
【0020】
(切削装置)
図1及び図2に示された切削装置1は、被加工物200をチャックテーブル10で保持し分割予定ライン202に沿って切削ブレード21で切削加工(加工に相当)して、被加工物200を個々のデバイス203に分割する加工装置である。切削装置1は、図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10で保持された被加工物200を切削ブレード21で切削加工する加工ユニットである切削ユニット20と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮像する図示しない撮像ユニットと、制御ユニット100とを備える。
【0021】
また、切削装置1は、図2に示すように、チャックテーブル10を切削ユニット20に対して相対的に移動させる移動ユニット40を備える。移動ユニット40は、チャックテーブル10を水平方向と平行なX軸方向に加工送りするX軸移動ユニット41と、切削ユニット20を水平方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動ユニット42と、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りするZ軸移動ユニット43と、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット44とを備える。
【0022】
X軸移動ユニット41は、チャックテーブル10を加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。Y軸移動ユニット42は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット43は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。回転移動ユニット44はX軸移動ユニット41によりチャックテーブル10とともにX軸方向に移動される。
【0023】
X軸移動ユニット41、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじと、ボールねじを軸心回りに回転させてチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動させる周知のモータと、チャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールとを備える。回転移動ユニット44は、チャックテーブル10を軸心回りに回転する周知のモータ等を備える。
【0024】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニット41により切削ユニット20の下方の加工領域と、切削ユニット20の下方から離間して被加工物200が搬入出される搬入出領域とに亘ってX軸方向に移動自在に設けられ、かつ回転移動ユニット44によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。
【0025】
チャックテーブル10は、保持面11が図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、保持面11に載置された被加工物200を吸引保持する。実施形態1では、チャックテーブル10は、粘着テープ209を介して被加工物200の裏面204側を吸引保持する。また、チャックテーブル10の周囲には、図2に示すように、環状フレーム210をクランプするクランプ部12が複数設けられている。
【0026】
切削ユニット20は、チャックテーブル10で保持された被加工物200を切削加工する切削ブレード21を着脱自在に装着した加工ユニットである。切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット42によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット43によりZ軸方向に移動自在に設けられている。切削ユニット20は、X軸移動ユニット41、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0027】
切削ユニット20は、図1及び図2に示すように、切削ブレード21と、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転自在に設けられ、切削ブレード21を先端に装着可能なスピンドル23と、スピンドル23を軸心回りに回転する図示しないスピンドルモータとを有する。
【0028】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード21は、図3及び図4に示すように、被加工物200を切削する円環状の切り刃24(切削部に相当)と、切り刃を外縁に支持しかつスピンドル23に着脱自在に装着される円環状の環状基台25とを備えている。切り刃24は、少なくともダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、砥粒を結合する結合材とを含み、所定厚みに形成されている。なお、本発明では、切削ブレード21は、切り刃24のみからなる所謂ワッシャーブレードでも良い。切削ブレード21の切り刃24は、被加工物200を切削加工すると、特に先端が摩耗して先端の形状が変化する。
【0029】
スピンドルハウジング22は、Z軸移動ユニット43によりZ軸方向に移動自在に支持され、Z軸移動ユニット43を介してY軸移動ユニット42によりY軸方向に移動自在に支持されている。スピンドルハウジング22は、スピンドル23の先端部を除く部分及び図示しないスピンドルモータ等を収容し、スピンドル23を軸心回りに回転可能に支持する。
【0030】
スピンドル23は、切削ブレード21が先端部に装着されるものである。スピンドル23は、図示しないスピンドルモータにより回転されるとともに、先端部がスピンドルハウジング22の先端面より突出している。スピンドル23の先端部は、先端に向かうにしたがって徐々に細く形成されており、切削ブレード21が装着される。切削ユニット20のスピンドル23及び切削ブレード21の軸心は、Y軸方向と平行である。
【0031】
撮像ユニットは、チャックテーブル10で保持された被加工物200を撮像し、撮像画像を取得するものである。撮像ユニットは、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20に固定されている。撮像ユニットは、チャックテーブル10に保持された被加工物200の表面201を撮像する撮像素子を複数備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニットは、チャックテーブル10の保持面11に保持された被加工物200を撮像して、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0032】
また、切削装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットと、チャックテーブル10の軸心回りに角度を検出する角度検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。角度検出ユニットは、周知のロータリエンコーダ等により構成される。
【0033】
X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。角度検出ユニットは、チャックテーブル10の軸心回りの基準位置からの角度を制御ユニット100に出力する。なお、実施形態1では、切削装置1の各構成要素のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない基準位置を基準とした位置で定められる。
【0034】
また、切削装置1は、切削前後の被加工物200を収容するカセット51が載置されかつカセット51をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ50と、切削加工後の被加工物200を洗浄する図示しない洗浄ユニットと、被加工物200をカセット51、チャックテーブル10及び洗浄ユニットの間で搬送する図示しない搬送ユニットとを備える。
【0035】
カセット51は、被加工物200をZ軸方向に間隔をあけて複数収容可能な収容容器であり、被加工物200を出し入れ可能とする出し入れ口52を備えている。カセットエレベータ50は、搬入出領域に位置付けられたチャックテーブル10のY軸方向の一方側の隣に配置され、搬入出領域に位置付けられたチャックテーブル10側に出し入れ口52を位置付けて、カセット51が載置される。
【0036】
また、切削装置1は、図1に示すように、被加工物200と切削ブレード21とが接触する領域に加工水を供給する加工水供給ユニット60を備えている。加工水供給ノズル61は、切削ブレード21の切り刃24の下端部に加工水を供給する加工水供給ノズル61と、加工水供給ノズル61に加工水を供給する図示しない加工水供給源とを備える。
【0037】
制御ユニット100は、切削装置1の各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものでもある。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の各構成要素に出力する。
【0038】
制御ユニット100は、加工動作の状態や撮像画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット101と、オペレータが加工条件などを登録する際に用いる入力ユニット102と、報知ユニット103とに接続されている。入力ユニット102は、表示ユニット101に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。報知ユニット103は、音と光の少なくとも一方を発して、オペレータに報知するものである。
【0039】
また、切削装置1は、図2に示すように、切削ブレード21の切り刃24の先端形状を修正する先端形状修正ユニット70を備える。先端形状修正ユニット70は、プラズマ71を生成するプラズマ生成器72と、プラズマ生成器72か生成したプラズマ71を切削ブレード21の切り刃24の先端に向けて噴射する噴射ノズル73とを含み構成されている。
【0040】
プラズマ生成器72は、酸素ガス(O)、SF等のフッ素系ガスを供給するガス供給源と、ガス供給源から供給されたガスを通して噴射ノズル73に供給する供給管と、供給管内を流れるガスにマイクロ波を照射して、プラズマ化するアプリケータ等を備える。なお、プラズマ生成器72は、大気圧中でガスをプラズマ化する所謂大気圧プラズマ装置でもよく、減圧中でガスをプラズマ化する所謂減圧プラズマ装置でもよい。
【0041】
噴射ノズル73は、切削ブレード21の切り刃24の先端に対向して、プラズマ生成器72が生成したプラズマ71を切削ブレード21の切り刃24の先端に向けて噴射する噴射口74を備える。実施形態1では、噴射ノズル73は、切削ブレード21のY軸方向の隣に一つのみ配置され、噴射口74がY軸方向に沿って切削ブレード21の切り刃24の先端に対向する。即ち、実施形態1では、噴射ノズル73は、切削ブレード21のY軸方向の片側のみに配置されている。
【0042】
先端形状修正ユニット70は、切削ブレード21の結合材が炭素(C)を含む場合、酸素ガスをプラズマ化して生成されたプラズマ71を切削ブレード21の切り刃24の先端に向けて噴射する。すると、切削ブレード21の切り刃24の結合材が、COとなって揮発し、切削ブレード21の切り刃24の先端を所望の形状に修正することとなる。
【0043】
また、先端形状修正ユニット70は、切削ブレード21の結合材がSiOを含む場合、SFをプラズマ化して生成されたプラズマ71を切削ブレード21の切り刃24の先端に向けて噴射する。すると、切削ブレード21の切り刃24の結合材のSiがSiFとなって揮発し、切削ブレード21の切り刃24の先端を所望の形状に修正することとなる。こうして、実施形態1において、切削装置1は、先端形状修正ユニット70の噴射口74から噴射されるプラズマ71によって切り刃24の先端形状を修正する。
【0044】
なお、切削装置1は、先端形状修正ユニット70がプラズマ71を切削ブレード21の切り刃24の先端に噴射して、先端形状を修正する場合、Y軸移動ユニット42とZ軸移動ユニット43とが切削ユニット20をY軸方向及びZ軸方向に移動させる。例えば、図3に実線で示すように、切り刃24が先端に向かうに沿った徐々に薄くなりかつ先端が尖った所謂ベベルブレードである場合、先端に向かうにしたがってプラズマ71の噴射時間を徐々に長くする。なお、図3に示すベベルブレードは、切り刃24の片面のみ鉛直方向に対して傾斜した所謂片側ベベルブレードである。ベベルブレードは、例えば、被加工物200の表面201のチッピングを防ぐために、所謂ステップカット時の最初の切削で用いられる。
【0045】
また、図4に実線で示すように、切り刃24の先端が軸心に沿って平坦な所謂フラットブレードである場合、噴射ノズル73の噴射口74をZ軸方向に移動させずに、プラズマ71を噴射する。なお、図4に示すフラットブレードは、例えば、厚みが2mmから3mmに形成されて、被加工物200の外縁部を円形に除去する所謂エッジトリミングの際に、切削して形成した溝を表面201に対して直角にするために用いられる。
【0046】
このように、切削装置1は、切削ブレード21の切り刃24にプラズマ71を噴射する時間と、噴射する位置をY軸移動ユニット42とZ軸移動ユニット43により調整して、切削ブレード21の切り刃24の先端形状を修正する。こうして、実施形態1において、Z軸移動ユニット43は、切削ユニット20と噴射口74とを保持面11と直交するZ軸方向に相対的に移動して、切削ブレード21の切り刃24の径方向に対して噴射口74の位置を相対的に調整可能である。また、Y軸移動ユニット42は、切削ユニット20と噴射口74とを保持面11と平行なY軸方向に相対的に移動して、切削ブレード21の切り刃24と噴射口74とのY軸方向の距離を相対的に調整可能である。
【0047】
前述した構成の切削装置1は、入力ユニット102等からオペレータが入力した加工条件を制御ユニット100が受け付けて登録し、切削加工前の被加工物200を収容したカセット51がカセットエレベータ50に設置される。切削装置1が、入力ユニット102等からオペレータが入力した加工開始指示を制御ユニット100が受け付けると、加工動作を開始する。加工動作を開始すると、切削装置1は、制御ユニット100が切削ブレード21を軸心回りに回転するとともに、加工水供給ユニット60の加工水供給ノズル61から加工水を切削ブレード21に供給する。
【0048】
加工動作では、切削装置1は、制御ユニット100が、搬送ユニットを制御してカセット51から被加工物200を1枚取り出させて、チャックテーブル10の保持面11に載置させ、チャックテーブル10の保持面11に粘着テープ209を介して被加工物200を吸引保持し、クランプ部12で環状フレーム210をクランプさせる。加工動作では、切削装置1は、制御ユニット100が、移動ユニット40を制御して、チャックテーブル10を加工領域まで移動ささせて、撮像ユニットで被加工物200を撮像させて、切削ブレード21の切り刃24と分割予定ライン202との位置合わせを行うアライメントを遂行する。
【0049】
加工動作では、切削装置1は、制御ユニット100が移動ユニット40を制御して、チャックテーブル10と切削ユニット20の切削ブレード21とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させ加工水を加工水供給ノズル61から供給しながら分割予定ライン202に切削ブレード21を粘着テープ209に到達するまで切り込ませて、被加工物200を分割予定ライン202に沿って切削加工する。実施形態1において、加工動作では、切削装置1は、制御ユニット100がチャックテーブル10で保持された被加工物200の全ての分割予定ライン202を切削すると、X軸移動ユニット41をしてチャックテーブルを搬入出領域まで移動し、保持面11の吸引保持を停止する。
【0050】
加工動作では、切削装置1は、制御ユニット100が搬送ユニットを制御して被加工物200を洗浄ユニットに搬送し、洗浄ユニットで洗浄した後、カセット51に収容する。切削装置1は、加工条件に基づいてカセット51内の被加工物200の全てを切削加工すると、加工動作を終了する。
【0051】
また、切削装置1は、チャックテーブル10に被加工物200を積み替える間等に、先端形状修正ユニット70の噴射ノズル73の噴射口74からプラズマ71を切削ブレード21の切り刃24に噴射して、切り刃24の先端形状を修正する。なお、本発明では、切削装置1は、チャックテーブル10に被加工物200を積み替える間に限らず、例えば、加工動作を実施していない得等の種々のタイミングで先端形状修正ユニット70で切削ブレード21の切り刃24の先端形状を修正しても良い。また、切削装置1は、先端形状修正ユニット70で切削ブレード21の切り刃24の先端形状を修正した直後、チャックテーブル10等に保持されたプリカットボードや、被加工物200のデバイス203が形成されていない外周余剰領域に切削ブレード21を所定回数切削させて、余分な砥粒を切り刃24から除去してから被加工物200の分割予定ライン202を切削加工するのが望ましい。
【0052】
以上説明したように、実施形態1に係る切削装置1は、先端形状修正ユニット70がプラズマ71を噴射口74から切削ブレード21の切り刃24に向けて噴射して、切削ブレード21の切り刃24の結合材を揮発させることができるので、先端形状修正ユニット70がプラズマ71を噴射口74から切削ブレード21の切り刃24に向けて噴射して、切り刃24の形状を修正することができる。このために、実施形態1に係る切削装置1は、放電加工用の電極を用いることなく、結合材が種々の切削ブレード21の切り刃24の先端形状を修正することができる。
【0053】
その結果、実施形態1に係る切削装置1は、修正する切削ブレード21の形状に合わせた形状の電極を準備する必要がないとともに、品種にかかわらず切削ブレード21の形状の修正を行うことができるという効果を奏する。
【0054】
〔実施形態2〕
実施形態2に係る切削装置を図面に基づいて説明する。図5は、実施形態2に係る切削装置の要部を模式的に示す正面図である。なお、図5は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
実施形態2に係る切削装置1は、図5に示すように、第2Z軸移動ユニット45(Z軸移動ユニットに相当)を備えている。第2Z軸移動ユニット45は、噴射ノズル73をZ軸方向に移動させることで、切削ユニット20と噴射口74とを保持面11と直交するZ軸方向に相対的に移動して、切削ブレード21の切り刃24の径方向に対して噴射口74の位置を相対的に調整可能である。
【0056】
実施形態2に係る切削装置1は、先端形状修正ユニット70で切削ブレード21の切り刃24の先端形状を修正する際には、Z軸移動ユニット43とY軸移動ユニット42に加え、第2Z軸移動ユニット45が切削ブレード21と噴射ノズル73との相対的な位置を調整して、プラズマ71を切削ブレード21の切り刃24に噴射する。
【0057】
実施形態2に係る切削装置1は、実施形態1と同様に、先端形状修正ユニット70を備えているので、修正する切削ブレード21の形状に合わせた形状の電極を準備する必要がないとともに、品種にかかわらず切削ブレード21の形状の修正を行うことができるという効果を奏する。
【0058】
〔実施形態3〕
実施形態3に係る切削装置を図面に基づいて説明する。図6は、実施形態3に係る切削装置の先端形状修正ユニットが切削ブレードの切り刃の先端形状を修正する状態を模式的に示す正面図である。なお、図6は、実施形態1及び実施形態2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
実施形態3に係る切削装置1は、図6に示すように、先端形状修正ユニット70が噴射ノズル73を2つ備え、2つの噴射ノズル73が互いの間に切削ブレード21の切り刃24の先端を位置付け、各噴射ノズル73の噴射口74がY軸方向に沿って切削ブレード21の切り刃24に相対している。実施形態3に係る切削装置1は、噴射ノズル73が切削ブレード21のY軸方向の両側に配置されている。
【0060】
実施形態3に係る切削装置1の先端形状修正ユニット70は、図6に実線で示すように、切り刃24が先端に向かうに沿った徐々に薄くなりかつ先端が尖っているとともに切り刃の両表面が鉛直方向に介して交差した断面山形の所謂両側ベベルブレードである場合、先端に向かうにしたがって各噴射ノズル73からのプラズマ71の噴射時間を徐々に長くする。また、実施形態3において、切削装置1は、各噴射ノズル73と切削ブレード21とを相対的にZ軸方向に移動させる際には、第2Z軸移動ユニット45で各噴射ノズル73をZ軸方向に移動させるのが望ましい。
【0061】
実施形態3に係る切削装置1は、実施形態1及び実施形態2と同様に、先端形状修正ユニット70を備えているので、修正する切削ブレード21の形状に合わせた形状の電極を準備する必要がないとともに、品種にかかわらず切削ブレード21の形状の修正を行うことができるという効果を奏する。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 切削装置
10 チャックテーブル
11 保持面
20 切削ユニット
21 切削ブレード
23 スピンドル
24 切り刃(切削部)
42 Y軸移動ユニット
43 Z軸移動ユニット
45 第2Z軸移動ユニット(Z軸移動ユニット)
60 加工水供給ユニット
70 先端形状修正ユニット
71 プラズマ
72 プラズマ生成器
74 噴射口
200 被加工物
図1
図2
図3
図4
図5
図6