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特開2024-128690電極、電気化学素子、デバイス、移動体、電極の製造方法、及び電極の製造装置
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  • 特開-電極、電気化学素子、デバイス、移動体、電極の製造方法、及び電極の製造装置 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128690
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電極、電気化学素子、デバイス、移動体、電極の製造方法、及び電極の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240913BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240913BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20240913BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20240913BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/139
H01G11/24
H01G11/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037823
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鷹氏 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘規
(72)【発明者】
【氏名】野勢 大輔
(72)【発明者】
【氏名】阿部 奈緒人
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078BB30
5H050AA07
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050FA04
5H050FA08
5H050FA09
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA09
(57)【要約】
【課題】優れた耐圧縮強度を有し、高い容量維持率を実現できる電気化学素子が得られる電極の提供。
【解決手段】電極基体と、前記電極基体上に、活物質を含む電極合材層と、前記電極合材層上に、前記電極合材層と一体化して形成された多孔質絶縁層と、を有し、前記多孔質絶縁層が樹脂を骨格とする多孔質構造であり、前記多孔質絶縁層における樹脂骨格(a)と無機酸化物(b)の面積比(a:b)が99.9%以下:0.1%以上~90%以上:10%以下である電極。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極基体と、
前記電極基体上に、活物質を含む電極合材層と、
前記電極合材層上に、前記電極合材層と一体化して形成された多孔質絶縁層と、
を有し、
前記多孔質絶縁層が樹脂を骨格とする多孔質構造であり、
前記多孔質絶縁層における樹脂骨格(a)と無機酸化物(b)の面積比(a:b)が99.9%以下:0.1%以上~90%以上:10%以下であることを特徴とする電極。
【請求項2】
前記無機酸化物の少なくとも一部が、前記樹脂骨格中に存在している、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記無機酸化物がアルミニウム、ケイ素、及びジルコニウムから選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記多孔質絶縁層中における前記無機酸化物の平均一次粒子径が500nm以下である、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記多孔質絶縁層中における前記無機酸化物の平均分散粒子径が900nm以下である、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記多孔質絶縁層の平均厚みが3μm以上50μm以下である、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記多孔質絶縁層の平均空隙率が30%以上である、請求項1に記載の電極。
【請求項8】
前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層から10%の範囲における平均空隙率と、
前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層と逆側から10%の範囲における平均空隙率との差が±20%以内である、請求項1に記載の電極。
【請求項9】
前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層から10%の範囲における前記無機酸化物の面積比と、
前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層と逆側から10%の範囲における前記無機酸化物の面積比との差が±3%以内である、請求項1に記載の電極。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の電極を有することを特徴とする電気化学素子。
【請求項11】
請求項10に記載の電気化学素子を有することを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項10に記載の電気化学素子を有することを特徴とする移動体。
【請求項13】
請求項1から9のいずれかに記載の電極を製造する電極の製造装置であって、
電極合材層上に、無機酸化物、重合性化合物及び溶媒を含有する多孔質絶縁層用液体組成物を付与する付与手段と、
付与された前記多孔質絶縁層用液体組成物を硬化させる硬化手段と、
を有することを特徴とする電極の製造装置。
【請求項14】
前記付与手段は、前記多孔質絶縁層用液体組成物をインクジェット方式で吐出する手段である、請求項13に記載の電極の製造装置。
【請求項15】
請求項1から8のいずれかに記載の電極を製造する電極の製造方法であって、
電極合材層上に、無機酸化物、重合性化合物及び溶媒を含有する多孔質絶縁層用液体組成物を付与する付与工程と、
付与された前記多孔質絶縁層用液体組成物を硬化させる硬化工程と、
を含むことを特徴とする電極の製造方法。
【請求項16】
前記付与工程は、前記多孔質絶縁層用液体組成物をインクジェット方式で吐出する工程である、請求項15に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極、電気化学素子、デバイス、移動体、電極の製造方法、及び電極の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子、例えばリチウムイオン二次電池等の二次電池は、高出力化、高容量化、高寿命化の需要が高まっているが、電池のエネルギー密度が増加するに伴い、熱暴走などの安全性に関わる様々な課題が存在している。例えば、このような熱暴走反応を抑制するには、電極間の絶縁性を確保することが重要となる。
【0003】
電極間の絶縁性を確保するため、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンを主成分として含むセパレータが電極間絶縁層として用いられている。このようなセパレータは繰り返しの圧縮荷重により変形が生じるため、熱硬化性樹脂繊維を添加して耐圧縮性を高める技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)
しかし、この提案のセパレータは電極に密着した構成ではないため、外部からの衝撃により電池が変形する場合、又は釘等の導電性異物が貫通した場合に、セパレータと電極にずれが生じ、短絡する可能性があるという問題がある。
【0004】
前記課題を解決する手段としては、例えば、電極合材層の外表面に耐熱性の架橋樹脂により形成されたイオン透過性多孔質絶縁層を密着させた状態で設けて安全性を高める技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この提案の樹脂単独で形成された多孔質絶縁層は電池内部で圧縮された際に空隙が潰れてイオン透過性が低下し、電池性能が低下してしまうという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた耐圧縮強度を有し、高い容量維持率を実現できる電気化学素子が得られる電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の電極は、電極基体と、前記電極基体上に、活物質を含む電極合材層と、前記電極合材層上に、前記電極合材層と一体化して形成された多孔質絶縁層と、を有し、前記多孔質絶縁層が樹脂を骨格とする多孔質構造であり、前記多孔質絶縁層における樹脂骨格(a)と無機酸化物(b)の面積比(a:b)が99.9%以下:0.1%以上~90%以上:10%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、優れた耐圧縮強度を有し、高い容量維持率を実現できる電気化学素子が得られる電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、多孔質絶縁層の一例を示す平面模式図である。
図1B図1Bは、多孔質絶縁層の一例を示す断面模式図である。
図2図2は、多孔質絶縁層の空隙率の分布状態の一例を示す断面模式図である。
図3図3は、本実施形態の電極の製造方法の一例を示す模式図である。
図4図4は、本実施形態の電極の製造装置の一例を示す模式図である。
図5図5は、本実施形態の電極の製造装置の他の一例を示す模式図である。
図6図6は、本実施形態の電極の製造方法の他の一例を示す模式図である。
図7図7は、液体吐出装置の変形例の一例を示す模式図である。
図8図8は、本実施形態の電極の製造方法の他の一例を示す模式図である。
図9図9は、液体吐出装置の変形例の一例を示す模式図である。
図10図10は、本実施形態の負極の一例を示す断面図である。
図11図11は、本実施形態の正極の一例を示す断面図である。
図12図12は、本実施形態の電気化学素子に用いる電極素子の一例を示す断面図である。
図13図13は、本実施形態の電気化学素子の一例を示す断面図である。
図14図14は、本実施形態の電気化学素子の一例である全固体電池を搭載した移動体の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(電極)
本発明の電極は、電極基体と、前記電極基体上に、活物質を含む電極合材層と、前記電極合材層上に、前記電極合材層と一体化して形成された多孔質絶縁層とを有し、更に必要に応じてその他の層を有する。
【0010】
<電極基体>
電極基体には負極に用いられる負極用基体と、正極に用いられる正極用基体とがある。
負極用基体及び正極用基体は、集電体として利用可能な基体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
電極基体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、板状又は箔状であると表面と裏面の両方に活物質を塗布して電極化するだけでなく、複数の電極を積層して電気化学素子の容量を増加させることができるため好ましい。
電極基体を構成する材料としては、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。
電極基体を構成する材料としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などが挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、電極基体表面の金属類をエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔、又はリチウムイオンキャパシターに用いられる穴あき電極基体等を用いることができる。また、上記に加えてガラス又はプラスチック等の平面基体上に、導体膜又は半導体薄膜を形成したもの、あるいは導電性電極膜を薄く蒸着したものなどを用いることができる。
【0011】
<電極合材層>
電極合材層は、正極活物質又は負極活物質等の活物質を含有し、導電助剤及びバインダを含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0012】
-正極活物質-
正極活物質としては、アルカリ金属イオンを挿入又は放出することが可能であれば、特に制限はないが、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選択される1種以上の元素とリチウムとを含む複合酸化物等のリチウム含有遷移金属化合物が挙げられる。
リチウム含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが挙げられる。
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、結晶構造中にXO四面体(X=P、S、As、Mo、W、Si等)を有するポリアニオン化合物も用いることができる。これらの中でも、サイクル特性の点から、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム等のリチウム含有遷移金属リン酸化合物が好ましく、リチウム拡散係数及び出力特性の点から、リン酸バナジウムリチウムが特に好ましい。
なお、ポリアニオン化合物は、電子伝導性の点から、炭素材料等の導電助剤により表面が被覆されて複合化されていることが好ましい。
【0013】
-負極活物質-
負極活物質としては、アルカリ金属イオンを挿入又は放出することが可能であれば、特に制限はないが、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を用いることができる。
炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)などが挙げられる。
炭素材料以外の負極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム、酸化チタンなどが挙げられる。
また、電気化学素子のエネルギー密度の点から、負極活物質としては、例えば、シリコン、スズ、シリコン合金、スズ合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化スズ等の高容量材料を用いることが好ましい。
【0014】
活物質のモード径は、0.5μm以上10μm以下が好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましい。活物質のモード径が0.5μm以上10μm以下であると、液体組成物を液体吐出方法により吐出する場合に、吐出不良を起こしにくい。また、活物質のモード径が3μm以上10μm以下であると、より良好な電気特性の電極が得られる。計測された液体組成物における活物質の粒度分布の中で分布の極大値である径をモード径として算出した。
活物質のモード径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ISO 13320:2009に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、マルバーン社製)などが挙げられる。
【0015】
活物質の最大粒子径Dmaxは、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。活物質の最大粒子径Dmaxが30μm以下であると、液体組成物を液体吐出方法により吐出する場合に、吐出不良を起こしにくい。
活物質の最大粒子径Dmaxの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ISO 13320:2009に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、マルバーン社製)などが挙げられる。
【0016】
活物質のメジアン径D50は、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。活物質のメジアン径D50が15μm以下であると、塗工効率の向上と電池特性の向上を図ることができる。
活物質のメジアン径D50の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ISO 13320:2009に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、マルバーン社製)などが挙げられる。
【0017】
-導電助剤-
導電助剤としては、例えば、ファーネス法、アセチレン法、ガス化法等により製造されている導電性カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粉末等の炭素材料、アルミニウム等の金属粒子、金属繊維などが挙げられる。なお、導電助剤は、予め活物質と複合化されていてもよい。
【0018】
-バインダ-
バインダとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド化合物、ポリイミド化合物、ポリアミドイミド化合物、エチレン-プロピレン-ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソプレンゴム、ポリイソブテン、ポリエチレングリコール、ポリメチルメクリル酸(PMMA)、ポリエチレンビニルアセテート(PEVA)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
-その他の成分-
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散剤、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤などが挙げられる。
【0020】
負極合材層の平均厚みは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。また450μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。負極合材層の平均厚みが10μm以上であると、電気化学素子のエネルギー密度が向上する。また450μm以下であると、電気化学素子のサイクル特性が向上する。
正極合材層の平均厚みは、10μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。また300μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。正極合材層の平均厚みが20μm以上であると、電気化学素子のエネルギー密度が向上する。また300μm以下であると、電気化学素子の負荷特性が向上する。
【0021】
<多孔質絶縁層>
多孔質絶縁層は、電極合材層と一体化させた状態で形成され、樹脂を骨格とする多孔質構造であり、無機酸化物は樹脂骨格と、その一部又は全てが一体化している状態で分散しており、多孔質絶縁層の厚み方向の空隙率は均一であることが好ましい。
前記多孔質絶縁層は、樹脂、及び無機酸化物を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0022】
-樹脂-
樹脂としては、後述する多孔質絶縁層用液体組成物に含まれる重合性化合物を重合させてなる樹脂が用いられる。
前記樹脂としては、例えば、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂、エン-チオール反応を活用した樹脂などが挙げられる。これらの中でも、重合性化合物のラジカル重合を利用して樹脂骨格の形成が容易な点から、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。
前記樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度が100℃以上では形成された多孔質絶縁層が高温時においても形状変化を起こすことなく、絶縁性が維持される点から好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上が更に好ましい。
【0023】
-無機酸化物-
無機酸化物としては、電気的に絶縁性の高い金属酸化物などが挙げられる。無機酸化物は粒子状であり、例えば、工業的に合成又は粉砕加工された粒子、セラミックス、鉱物資源由来の粒子などが目的に応じて適宜使用できる。
無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、チタン酸バリウム、二酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化マンガン、二酸化バナジウム、二酸化ケイ素、コージェライト、ステアタイト、フォルステライト、ムライト、ゼオライトなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、電気抵抗の大きさ及び安定性の観点から、高純度の合成品が好ましく、高純度の酸化アルミニウム(α-アルミナ)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムがより好ましく、酸化アルミニウムが特に好ましい。
【0024】
前記酸化アルミニウムとしては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、AKP-15、AKP-20、AKP-30、AKP-50、AKP-53、AKP-700、AKP-3000、AA-03、AA-04、AA-05、AA-07、AA-1.5、AKP-G07、AKP-G15(住友化学株式会社製);LS-235、LS-235C、LS-711、LS-711C、LS-500、LS-250(日本軽金属株式会社製);SERATH00610、SERATH02025(キンセイマテック株式会社製);TM-DA、TM-DAR、TM-5D(大明化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0025】
-その他の成分-
多孔質絶縁層におけるその他の成分は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散剤、粘度調整剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0026】
ここで、図1A及び図1Bは、多孔質絶縁層を模式的に示す図であり、図1Aは平面模式図、図1Bは断面模式図である。なお、図1A及び図1Bでは、多孔質絶縁層13を模式的に示すが、明細書本文中の多孔質絶縁層と表記されるものにおいては同様の構造である。
多孔質絶縁層13は、樹脂を主成分とした骨格で形成され、分散した無機酸化物の全て又は一部が樹脂骨格に一体化した形で形成される。ここで、樹脂を主成分とするとは、多孔質絶縁層を構成する全物質の50質量%以上を樹脂が占めることを意味する。
多孔質絶縁層13の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二次電池に限っては電解質の浸透性及び良好なイオン導電性の確保の観点から、樹脂の硬化物を骨格として三次元方向に分岐を有する網目構造(共連続構造)と連通した空隙を有することが好ましい。ここで、「共連続構造」とは、2種以上の物質が、それぞれ連続構造を有し、界面を形成しない構造を意味し、本実施形態においては、樹脂相と、空孔相又は液体からなる液相と、が共に三次元分岐網目連続相となっている構造を意味する。このような構造は、例えば、重合性化合物(モノマー)を含む多孔質絶縁層用液体組成物を重合誘起相分離法によって重合することにより形成することができる。
【0027】
多孔質絶縁層13は多数の空隙13xを有しており、一の空隙13xが一の空隙13xの周囲の他の空隙13xと連結して三次元的に広がっている(連通性を有する)ことが好ましい。多孔質絶縁層の空隙が連通することで、電解質の浸透性及びイオン透過性が高くなるため、電気化学素子のサイクル特性が向上する。
多孔質絶縁層13の有する空隙の断面形状は、略円形状、略楕円形状、略多角形状等の様々な形状及び様々な大きさでよく、単独又は複数の形状が混在していてもよい。
【0028】
-多孔質絶縁層の平均厚み-
多孔質絶縁層の平均厚みは、多孔質絶縁層と電極合材層との境界領域において多孔質絶縁層の割合が50%以上となるような境界部分から、電極基体から視た多孔質絶層表面が最も遠い部分までの平均の厚みである。
多孔質絶縁層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm以上であることが好ましく、また50μm以下であることが好ましい。多孔質絶縁層の平均厚みが3μm以上であると、多孔質絶縁層の電気絶縁性が向上するため好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。多孔質絶縁層の平均厚みが50μm以下であると、正極と負極の間隔が小さくなるためイオンの移動が容易になり電気化学素子のサイクル特性が向上するため好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。
また、多孔質絶縁層の少なくとも一部は電極合材層表面の凹凸に追従、空隙に浸透又は一体化し、多孔質絶縁層の平均厚みに対して0.5%以上電極合材層の内部に存在している状態が好ましい。0.5%以上であると電極合材層と多孔質絶縁層の間にアンカー効果が得られ、圧縮による多孔質絶縁層の剥離やズレを抑制するため好ましく、1.0%以上が更に好ましい。
【0029】
-多孔質絶縁層の平均空隙率-
多孔質絶縁層の有する空隙の割合(平均空隙率)は、多孔質絶縁層の断面写真を画像解析することにより求められる。
多孔質絶縁層の平均空隙率は30%以上が好ましく、30%以上60%以下がより好ましく、35%以上50%以下が更に好ましい。平均空隙率が30%以上であると、イオン透過性が向上する。一方、平均空隙率が60%以下であると、多孔質絶縁層の骨格となる樹脂が強くなり耐圧縮性が向上する。
【0030】
-平均空隙率の分布-
多孔質絶縁層の平均空隙率は厚み方向に均一であることが好ましい。具体的には、図2に示すように、多孔質絶縁層の厚みを、多孔質絶縁層と電極合材層との境界領域において、多孔質絶縁層の割合が50%以上となるような境界を0とし、電極基体から視た多孔質絶層表面が最も遠い位置を100とし、0~100の領域を2の領域に分割したとき、0~50の領域に含まれ平面方向に前記多孔質絶縁層の厚みと同じ長さの計測領域1と、50~100の領域に含まれ平面方向に前記多孔質絶縁層の厚みと同じ長さの計測領域2とを比較し、前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層から10%の範囲における平均空隙率と、前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層と逆側から10%の範囲における平均空隙率との差が±20%以内であることが好ましく、±10%以内がより好ましい。前記差が±20%以内であると、多孔質絶縁層の平均空隙率が厚み方向に均一に分布していることになる。
平均空隙率の分布はクロスセクションポリッシャーにより断面を作製した後、走査型電子顕微鏡(SEM)での観察画像を、画像解析を行うことで算出することができる。なお、画像解析については樹脂骨格と無機酸化物とが区別できる手法又は条件であればよい。画像解析としては、色や明度に基づく解析の他、元素マッピングなどによる解析を用いてもよい。
【0031】
-空隙の大きさ-
多孔質絶縁層の有する空隙の大きさは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、二次電池においては空隙の大きさは0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。また10μm以下であることが好ましく、5μm以下がより好ましい。空隙の大きさが0.1μm以上であると、多孔質絶縁層及び電極への電解液浸透性が向上する。また10μm以下であると、多孔質絶縁層の耐圧縮性が向上する。
ここで、空隙の大きさとは、多孔質絶縁層の断面形状における1つの空隙部分のうち最も長い部分の長さを指すものとする。空隙の大きさは、例えば、カミソリ、イオンミリング、マイクロミクロトームなどを用いて断面を形成した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した断面写真から求めることができる。
【0032】
-多孔質絶縁層の被覆率-
多孔質絶縁層は電極合材層の表面を合計90%以上被覆していることが好ましい。被覆率が90%以上であると多孔質絶縁層の耐圧縮性が向上するため好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上が更に好ましく、99%以上が特に好ましい。
前記被覆率は、例えば表面の観察画像を取得し、画像解析や分析結果から被覆部分の割合を計算することにより測定することができる。表面の観察画像の取得には、明度、色相、電子線の反射、元素の分布など、多孔質絶縁層と電極合材層を明確に区別可能な装置や分析手法を使用する。具体的には、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分析(EDS)を用いることができる。
【0033】
本発明においては、多孔質絶縁層における樹脂骨格(a)と無機酸化物(b)の面積比(a:b)は99.9%以下:0.1%以上~90%以上:10%以下であり、99.8%以下:0.2%以上~92%以上:8%以下が好ましく、99.6%以下:0.4%以上~94%以上:6%以下がより好ましい。無機酸化物の面積比(含有量)が0.1%以上であると、多孔質絶縁層の耐圧縮強度が向上する。また10%以下であると、電気化学素子を繰り返し充電した際に多孔質絶縁層の空隙が閉塞し難くなり電気化学素子の性能が向上する。
【0034】
-平均一次粒子径-
多孔質絶縁層中における無機酸化物の平均一次粒子径は、多孔質絶縁層の断面における凝集していない無機酸化物の平均直径を指すものとする。無機酸化物が球形以外の粒子の場合、そのアスペクト比に関わらず粒子の直径の最も長い部分を一次粒子径とする。断面の観察は、例えば、カミソリ、イオンミリング、マイクロミクロトームなどを用いて断面を形成した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した断面写真から画像解析で求めることができる。
多孔質絶縁層中における無機酸化物の一次粒子径は500nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、300nm以下が更に好ましい。平均一次粒子径が500nm以下であると無機酸化物の少量の添加によって多孔質絶縁層の耐圧縮強度を向上させることができる。
【0035】
前記無機酸化物の一次粒子の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、球、楕円球、又はこれらが連結や組み合わさった無定形であることが好ましい。粒子に平らな面の少ない形状、例えば球、楕円球、無定形では、粒子どうしの接点が小さく、多孔質絶縁層に均一に分散しやすいため少量の添加で耐圧縮性が向上する。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において無機酸化物の形状は、一次粒子のxyz方向の長さうち最も小さいものをx=1としたとき、y=1かつz=1であるものを球、y=1かつz≧1.1であるものを楕円球、y=1かつz≧4であるものを棒状又は針状、y≧4かつz≧4であるものを板状と定義する。
【0036】
-平均分散粒子径-
多孔質絶縁層中における無機酸化物の平均分散粒子径は、多孔質絶縁層の断面における無機酸化物の単体及び凝集体の平均直径を指すものとする。平均分散粒子径は上記平均一次粒子径と同様に走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した断面写真から画像解析で求めることができる。
多孔質絶縁層中における無機酸化物の平均分散粒子径は900nm以下が好ましく、600nm以下がより好ましく、500nm以下が更に好ましい。
無機酸化物の平均分散粒子径が900nm以下であると、無機酸化物の少量の添加によって多孔質絶縁層の耐圧縮強度を向上させることができると共に、無機酸化物によって樹脂骨格が寸断されないため、多孔質絶縁層の耐圧縮強度及び耐屈曲性が向上する。
【0037】
-無機酸化物の分布-
無機酸化物は多孔質絶縁層の厚み方向に均一に分散していることが好ましい。無機酸化物の分散性は多孔質絶縁層の断面で分散した無機酸化物の厚み方向の分布から調べることができる。
具体的には、図2に示すように、多孔質絶縁層の厚みを、多孔質絶縁層と電極合材層との境界領域において、多孔質絶縁層の割合が50%以上となるような境界を0とし、電極基体から視た多孔質絶層表面が最も遠い位置を100とし、0~100の領域を2の領域に分割したとき、0~50の領域に含まれ平面方向に前記多孔質絶縁層の厚みと同じ長さの計測領域1と、50~100の領域に含まれ平面方向に前記多孔質絶縁層の厚みと同じ長さの計測領域2とを比較し、前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層から10%の範囲における前記無機酸化物の面積比と、前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層と逆側から10%の範囲における前記無機酸化物の面積比(含有量)との差が±3%以内であることが好ましく、±1%以内がより好ましく、±0.5%以内が更に好ましい。面積比の差が±3%以内であり、無機酸化物の分散が均一であると多孔質絶縁層への荷重が均一に分散し、厚み方向の耐圧縮性が向上する。
無機酸化物の分布はクロスセクションポリッシャーにより断面を作製した後、走査型電子顕微鏡(SEM)での観察画像を、画像解析を行うことで算出することができる。なお、画像解析については多孔質絶縁層と無機酸化物とが区別できる手法又は条件であればよい。画像解析としては、色や明度に基づく解析の他、元素マッピングなどによる解析を用いてもよい。
【0038】
<その他の層>
電極におけるその他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護層などが挙げられる。
【0039】
(電極の製造方法及び電極の製造装置)
本発明の電極の製造方法は、本発明の電極を製造する電極の製造方法であって、付与工程と、硬化工程とを含み、加熱工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0040】
本発明の電極の製造装置は、本発明の電極を製造する電極の製造装置であって、付与手段と、硬化手段とを有し、加熱手段を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0041】
多孔質絶縁層を形成する方法としては、例えば、多孔質絶縁層用液体組成物で電極合材層を被覆するように付与して層を形成する方法が挙げられる。多孔質絶縁層用液体組成物を電極合材層に付与した後に活性エネルギー線などを照射し、重合性化合物を反応させて重合誘起相分離を発生させる。反応直後は空隙を形成するためにポロジェンと呼ばれる液体を塗膜中に含むが、このポロジェンを加熱などで除去することによって連通した空孔を作製できる。
【0042】
多孔質絶縁層用液体組成物は無機酸化物が予め溶媒中に均一に分散されていることが好ましい。無機酸化物が均一に分散されていることにより、多孔質絶縁層の樹脂骨格中に無機酸化物が一体化し、耐圧縮強度が向上する。
【0043】
<多孔質絶縁層用液体組成物>
多孔質絶縁層用液体組成物は、無機酸化物、及び重合性化合物を含有し、溶媒、重合開始剤、分散剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0044】
-無機酸化物-
前記無機酸化物は、上述した多孔質絶縁層における無機酸化物と同様である。
前記無機酸化物の含有量は、多孔質絶縁層用液体組成物の全量に対して10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0045】
-重合性化合物-
重合性化合物は多孔質絶縁層の骨格を形成するための樹脂の前駆体に該当し、光の照射や熱によって架橋性の構造体形成が可能な化合物である。
重合性化合物はラジカル重合性官能基を有することが好ましい。例えば、1官能、2官能、又は3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー、ラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐圧縮強度の点から、2官能以上のラジカル重合性化合物が好ましい。
【0046】
前記1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、2,2,5,5-テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
-重合開始剤-
重合開始剤としては、例えば、光ラジカル発生剤を用いることができる。
前記光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体、α-ヒドロキシ-もしくは、α-アミノセトフェノン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、pp’-ジクロロベンゾフェン、pp’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、ゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインn-プロピル等のベンゾインアルキルエ-テルやエステル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンモノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド又はチタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントン又はキサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物又はジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。更に、ビスアジド化合物のような光架橋型ラジカル発生剤や、熱でラジカルを発生させる熱重合開始剤、光照射により酸を発生する光酸発生剤などを使用してもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
-溶媒-
溶媒は無機酸化物を除く多孔質絶縁層用液体組成物の成分を溶解可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能である。更に、ポロジェンとして機能するものが含まれることが好ましく、硬化後の多孔質絶縁層中に空孔を形成するために混合される。
ポロジェンとしては、重合性化合物が重合していく過程で、相分離を生じさせることが可能な液状物質であれば任意に選択可能である。
溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール等の高級アルコール類;γブチロラクトン等のラクトン類;炭酸プロピレン、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル等のエステル類;N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン等の炭化水素類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
-分散剤-
無機酸化物を溶媒中に均一に分散させるため、界面活性剤又は吸着基を有する高分子化合物などの分散剤を用いてもよい。高分子化合物の分散剤としては、無機酸化物に親和性の高い吸着基と、溶媒に親和性の高い分散基を有する共重合体(コポリマー)を用いることが好ましい。
【0052】
分散剤としては市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、メガファックF173、メガファックF444、メガファックF470(DIC株式会社製);マリアリムAAB-0851、マリアリムAFB-1521、マリアリムAKM-0531、マリアリムAWS-0851、マリアリムHKM-50A、マリアリムSC-0708A、マリアリムSC-0505K、マリアリムSC-1015F(日油株式会社製);ディスパーBYK103、ディスパーBYK2000(BYK-Chemie社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
-その他の成分-
前記多孔質絶縁層用液体組成物は、粘度の調整、表面張力の調整、溶剤の蒸発制御、添加剤の溶解性向上、無機酸化物の分散性向上、殺菌などを目的に応じて、その他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤などが挙げられる。
【0054】
多孔質絶縁層用液体組成物の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散機を使用して無機酸化物の分散液を得た後、多孔質構造を形成するための重合性化合物、及びその他の成分を加えて製造することができる。具体的には、溶媒、無機酸化物、分散剤を予備撹拌した後、分散機を使用し無機酸化物の分散液を得る。分散機としては、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、ビーズミル、キャビテーションミル等を目的に応じて用いることができる。
【0055】
<付与工程及び付与手段>
付与工程は、電極合材層上に、無機酸化物、重合性化合物、及び溶媒を含有する多孔質絶縁層用液体組成物を付与する工程であり、付与手段により行われる。
付与方法としては、特に限定されないが、電極合材層に均一に液体を塗布可能な方法が好ましい。付与方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ディスペンサ法、ノズルコート法、インクジェット法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、などが挙げられる。これらの中でも、吐出位置の制御が可能でありかつ電極合材層に非接触で多孔質絶縁層用液体組成物を付与可能であるという理由から、インクジェット法、スプレーコート法、ディスペンサ法等の液体吐出法が好ましく、インクジェット法が特に好ましい。
【0056】
前記インクジェット法としては、例えば、多孔質絶縁層用液体組成物に力学的エネルギーを付与する方式、多孔質絶縁層用液体組成物に熱エネルギーを付与する方式などが挙げられる。これらの中でも、多孔質絶縁層用液体組成物に力学的エネルギーを付与する方法が分散安定性の点で好ましい。
前記力学的エネルギーを付与する方法としては、液室に密着したピエゾ素子に電圧をかけて液室を変形させることでノズルから多孔質絶縁層用液体組成物を押し出すことで吐出するピエゾ方式などが挙げられる。
前記熱エネルギーを付与する方法としてヒーター等で多孔質絶縁層用液体組成物に熱を急速に加えて、多孔質絶縁層用液体組成物が沸騰した際に発生した泡を利用するサーマル方法などが挙げられる。
なお、液体吐出法を用いる場合は、公知の液体吐出装置の液体吐出原理を用いた技術を応用すればよい。この場合は、液体吐出装置に設置される流路及び液体吐出ヘッドのノズルの耐性がある溶媒を用いることが好ましい。
【0057】
<硬化工程及び硬化手段>
硬化工程は、付与された多孔質絶縁層用液体組成物を硬化させる工程であり、硬化手段により行われる。
硬化工程は付与された多孔質絶縁層用液体組成物に対して、活性エネルギー線を照射することで行うことが好ましい。
活性エネルギー線としては、紫外線(UV)、電子線(EB)、X線(X-Ray)等の、多孔質絶縁層用液体組成物中の重合性化合物の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されないが、硬化性の観点から紫外線を用いることが好ましい。
【0058】
活性エネルギー線照射手段として用いる紫外線光源としては、反応性物質等の吸収スペクトルに合わせて適宜選択してよい。光源の例としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、UV-LEDなどが適用可能である。
【0059】
活性エネルギー線照射装置を用いる場合は、酸素など大気中の気体による照射強度低下や副反応が発生するため、不活性気体中もしくは真空中で照射可能な設備等が具備されていることが好ましい。
照射における照度(ランプ強度、ランプ照度などとも称される)としては、多孔質絶縁層用液体組成物中の成分の反応性の観点から1.0W/cm以上であることが好ましい。
【0060】
<加熱工程及び加熱手段>
加熱工程は、多孔質絶縁層用液体組成物を硬化せた後、加熱を行い、乾燥させる工程であり、加熱手段により行われる。
加熱手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抵抗加熱ヒーター、赤外線ヒーター、ファンヒーター等で吐出面を加熱する方法、ホットプレート、ドラムヒータ等の塗工面の裏側から乾燥させる方法などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、吐出面を均一に加熱乾燥する観点から、吐出面を非接触で乾燥可能な抵抗加熱ヒーター、赤外線ヒーター、ファンヒーターが好ましい。
【0061】
加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70℃以上150℃以下であることが好ましい。加熱温度が70℃以上であると多孔質絶縁層中の溶媒を十分に除去可能なだけでなく、加熱により耐圧縮強度が増加するため好ましい。加熱温度が150℃以下であると電極合材層の劣化や多孔質絶縁層用液体組成物の突沸によるピンホールの発生を防ぎ、絶縁性が向上するため好ましい。
【0062】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の工程としては、例えば、電極合材層形成工程、制御工程などが挙げられる。
前記その他の手段としては、例えば、電極合材層形成手段、制御手段などが挙げられる。
【0063】
-電極合材層形成工程及び電極合材層形成手段-
前記電極合材層は、電極基体上に、電極合材層用液体組成物を用いて形成することができる。
電極合材層用液体組成物は、活物質、導電助剤、溶媒、及び分散剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記活物質及び導電助剤は、上述した電極合材層における活物質及び導電助剤と同様である。
【0064】
-溶媒-
溶媒としては、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール等の水性分散媒;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、メシチレン、2-n-ブトキシメタノール、2-ジメチルエタノール、N,N-ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
-分散剤-
分散剤としては、電極合材層用液体組成物中の活物質の分散性を向上させることが可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンオキシド系、ポリプロピレンオキシド系、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール系、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子分散剤、ポリリン酸塩系分散剤等の無機分散剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
-その他の成分-
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バインダ、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤などが挙げられる。
【0067】
電極合材層用液体組成物の付与方法としては、特に制限はなく、例えば、インクジェット法、スプレーコート法、ディスペンサ法等の液体吐出法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット法が特に好ましい。インクジェット法を用いると、電極を非接触、自由な形状で製造できる。その結果、電極の生産過程における型抜きによる活物質の損失が少ない等の利点がある。
【0068】
[印刷基体(基体上に電極合材層が設けられた電極)上に多孔質絶縁層用液体組成物を直接吐出して多孔質絶縁層を形成する実施形態]
図3は、本実施形態に係る電極の製造方法の一例を示す模式図である。
多孔質絶縁層用液体組成物112Aは、液体吐出装置300のタンク307に貯蔵されており、タンク307からチューブ308を経由して液体吐出ヘッド306に供給される。なお、液体吐出装置の個数は、1個に限定されず、2個以上であってもよい。
電極を製造する際には、ステージ310上に、電極基体111を設置した後、液体吐出ヘッド306から、多孔質絶縁層用液体組成物112Aの液滴を電極基体111に吐出する。このとき、ステージ310が移動してもよく、液体吐出ヘッド306が移動してもよい。吐出された多孔質絶縁層用液体組成物112Aは多孔質絶縁層112となる。
また、液体吐出装置300は、多孔質絶縁層用液体組成物112Aが液体吐出ヘッド306から吐出されていない際に、乾燥を防ぐため、ノズルをキャップする機構が設けられていてもよい。
【0069】
図4は、本実施形態の電極の製造方法を実現するための電極の製造装置(液体吐出装置)の一例を示す模式図である。
電極の製造装置は、上記多孔質絶縁層用液体組成物を用いて電極を製造する装置である。電極の製造装置は、印刷基体(基体上に電極合材層が設けられた電極)4上に、多孔質絶縁層用液体組成物を付与して液体組成物層を形成する付与工程を実施する印刷部110と、液体組成物層を加熱し、液体組成物層に残存する液体を除去することで多孔質絶縁層を得る加熱工程を実施する加熱部30を備える。電極の製造装置は、印刷基体4を搬送する搬送部5を備え、搬送部5は、印刷部110、加熱部30の順に印刷基体4をあらかじめ設定された速度で搬送する。
【0070】
-印刷部110-
印刷部110は、印刷基体(基体上に電極合材層が設けられた電極)4上に多孔質絶縁層用液体組成物を付与する付与工程を実現する付与手段の一例である印刷装置1aと、多孔質絶縁層用液体組成物を収容する収容容器1bと、収容容器1bに貯留された多孔質絶縁層用液体組成物を印刷装置1aに供給する供給チューブ1cを備える。
収容容器1bは、多孔質絶縁層用液体組成物7を収容し、印刷部110は、印刷装置1aから多孔質絶縁層用液体組成物7を吐出して、印刷基体4上に多孔質絶縁層用液体組成物7を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器1bは、電極の製造装置と一体化した構成であってもよいが、電極の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、電極の製造装置と一体化した収容容器や電極の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
収容容器1bや供給チューブ1cは、多孔質絶縁層用液体組成物7を安定して貯蔵及び供給できるものであれば任意に選択可能である。収容容器1bや供給チューブ1cを構成する材料は、紫外及び可視光の比較的短波長領域において遮光性を有することが好ましい。これにより、多孔質絶縁層用液体組成物7が重合可能な化合物を含む場合、外光により重合開始されることが防止される。
【0071】
-加熱部30-
加熱部30は、図4に示すように、加熱装置3aを有し、印刷部110により形成した液体組成物層を加熱装置3aにより加熱して、液体組成物層中に残存する液体を乾燥させて除去する液体除去工程を行う。これにより多孔質絶縁層を形成することができる。加熱部30は、液体除去を減圧下で実施してもよい。
また、加熱部30は、多孔質絶縁層用液体組成物7が重合可能な化合物を含む場合、液体組成物層を加熱装置3aにより加熱して、重合反応を更に促進させる重合促進工程、及び液体組成物層に残存する光重合開始剤を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する開始剤除去工程を行ってもよい。なお、これらの重合促進工程及び開始剤除去工程は、液体除去工程と同時ではなく、液体除去工程の前又は後に実施されてもよい。
更に、加熱部30は、多孔質絶縁層用液体組成物7が重合可能な化合物を含む場合、液体除去工程後に、液体組成物層を減圧下で加熱する重合完了工程を行ってもよい。加熱装置3aは、上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えばIRヒーターや温風ヒーターなどが挙げられる。
また、加熱温度や時間に関しては、液体組成物層に含まれる液体の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0072】
図5は、本実施形態の電極の製造方法を実現するための電極の製造装置(液体吐出装置)の他の一例を示す模式図である。
液体吐出装置300’は、ポンプ310と、バルブ311、312を制御することにより、多孔質絶縁層用液体組成物が液体吐出ヘッド306、タンク307、チューブ308を循環することが可能である。
また、液体吐出装置300’は、外部タンク313が設けられており、タンク307内の多孔質絶縁層用液体組成物が減少した際に、ポンプ310と、バルブ311、312、314を制御することにより、外部タンク313からタンク307に多孔質絶縁層用液体組成物を供給することも可能である。
前記電極の製造装置を用いると、付与対象物の狙ったところに多孔質絶縁層用液体組成物を吐出することができる。
【0073】
本実施形態の電極の製造方法の他の例を図6に示す。
印刷基体(基体上に電極合材層が設けられた電極)上に多孔質絶縁層が設けられた電極の製造方法は、液体吐出装置300’を用いて、印刷基体111上に、上記多孔質絶縁層用液体組成物112Aを、順次吐出する工程を含む。
まず、細長状の印刷基体111を準備する。そして、印刷基体111を筒状の芯に巻き付け、多孔質絶縁層を形成する側が、図6中、上側になるように、送り出しローラ304と巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304と巻き取りローラ305は、反時計回りに回転し、印刷基体111は、図6中、右から左の方向に搬送される。そして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305の間の印刷基体111の上方に設置されている液体吐出ヘッド306から、図3と同様にして、多孔質絶縁層用液体組成物112Aの液滴を、順次搬送される印刷基体111上に吐出する。
なお、液体吐出ヘッド306は、印刷基体111の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に、複数個設置されていてもよい。次に、多孔質絶縁層用液体組成物112Aの液滴が吐出された印刷基体111は、送り出しローラ304と巻き取りローラ305によって、加熱部309に搬送される。その結果、多孔質絶縁層112が形成され、印刷基体111上に多孔質絶縁層112が設けられた積層構造体が得られる。その後、積層構造体は、打ち抜き加工等により、所望の大きさに切断される。
加熱部309は、印刷基体111の上下の何れか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
【0074】
また、図7のように、タンク307Aは、タンク307Aに接続されたタンク313Aから多孔質絶縁層用液体組成物を供給してもよく、液体吐出ヘッド306は、複数の液体吐出ヘッド306A、306Bを有してもよい。
【0075】
[印刷基体(基体上に電極合材層が設けられた電極)上に液体組成物層乃至多孔質絶縁層を間接的に形成する実施形態]
図8図9は、本実施形態の電極の製造装置としての、付与手段としてインクジェット方式、及び転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、図8は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部、図9は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す構成図である。
図8に示した印刷部400’は、中間転写体4001を介して印刷基体(基体上に電極合材層が設けられた電極)に液体組成物層乃至多孔質絶縁層を転写することで印刷基体上に液体組成物層乃至多孔質絶縁層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0076】
印刷部400’は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004及び清掃ユニット4005を備える。
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001に液体組成物を吐出し、中間転写体4001上に液体組成物層を形成する。各ヘッド101は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの印刷基体の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。ヘッド101は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0077】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド101による多孔質絶縁層用液体組成物の吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、多孔質絶縁層用液体組成物の粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物層から液体成分を吸収する。加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物層を加熱する。液体組成物層を加熱することで、液体組成物層が含む液体が除去され、印刷基体への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインク又はごみ等の異物を除去する。
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基体が通過するときに、中間転写体4001上の多孔質絶縁層が印刷基体に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基体の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
【0078】
図9に示した印刷部400’’は、中間転写ベルト4006を介して印刷基体(基体上に電極合材層が設けられた電極)に液体組成物層乃至多孔質絶縁層を転写することで印刷基体上に液体組成物層乃至多孔質絶縁層を形成する、インクジェットプリンタである。
印刷部400’’は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド101から多孔質絶縁層用液体組成物の液滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上に液体組成物層乃至多孔質絶縁層を形成する。中間転写ベルト4006に形成された液体組成物層乃至多孔質絶縁層は、中間転写ベルト4006上で膜化する。
【0079】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化した液体組成物層乃至多孔質絶縁層は印刷基体に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c,4009d,4009e,4009f、及び複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図9中矢印方向に移動する。ヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド101からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0080】
<負極>
図10は、本実施形態の負極の一例を示す断面図である。図10を参照すると、負極10は、負極用基体11と、負極用基体11上に形成された負極合材層12と、負極合材層12上に形成された多孔質絶縁層13と、を有する構造である。負極10の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状などが挙げられる。
負極10において、多孔質絶縁層13の少なくとも一部が負極合材層12の内部に存在し、負極合材層12を構成する活物質の表面に一体化されている。ここで、一体化とは、下層上に上層として単にフィルム形状等の部材を積層した状態ではなく、上層の一部が下層に入り込み、界面が明確でない状態で上層を構成する物質の表面と下層を構成する物質の表面とが結着している状態である。
なお、負極合材層12は、模式的に球状の粒子を積層した構造に描かれているが、負極合材層12を構成する粒子は球状又は非球状であり、様々な形状や様々な大きさの粒子が混在している。
【0081】
<正極>
図11は、本実施形態の正極の一例を示す断面図である。図11を参照すると、正極20は、正極用基体21と、正極用基体21上に形成された正極合材層22と、正極合材層22上に形成された多孔質絶縁層23とを有する構造である。正極20の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状などが挙げられる。
正極20において、多孔質絶縁層23の少なくとも一部が正極合材層22の内部に存在し、正極合材層22を構成する活物質の表面に一体化されている。
なお、正極合材層22は、模式的に球状の粒子を積層した構造に描かれているが、正極合材層22を構成する粒子は球状又は非球状であり、様々な形状や様々な大きさの粒子が混在している。
【0082】
(電気化学素子)
本発明の電気化学素子は、本発明の電極を有し、更に必要に応じてその他の構成を有する。
【0083】
前記電気化学素子は、正極と、負極と、固体電解質層又は電解液との他に、セパレータと、外装とを有することができる。前記電気化学素子における正極及び負極の少なくとも1つが本発明の電極である。
なお、固体電解質又はゲル電解質を用いる場合は、セパレータは不要である。
【0084】
前記集電体は、上記した集電体(電極基体)と同様である。
活物質、バインダ、及び分散剤は、上記した電極における活物質、バインダ、及び分散剤と同様である。
【0085】
なお、本発明の電気化学素子は、本実施形態の電極を用いたものである。また、以下では、電気化学素子の一例として、リチウムイオン二次電池である場合について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
【0086】
<電極>
前記二次電池に使用し得る、上述した本実施形態の電極以外の電極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、二次電池の製造に用いられている既知の電極を用いることができる。具体的には、既知の製造方法を用いて集電体上に電極合材層と、電極合材層上に多孔質絶縁層とを形成してなる電極を用いることができる。
【0087】
<電解質>
前記二次電池に使用し得る電解質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、二次電池の製造に用いられている既知の固体電解質又は電解液を用いることができる。
【0088】
[電解液]
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。リチウムイオン二次電池の支持電解質としては、例えば、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示す点から、LiPF、LiClO、CFSOLiが好ましく、LiPFがよりに好ましい。なお、通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0089】
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いので、カーボネート類が好ましく、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物がより好ましい。
なお、電解液中の電解質の濃度は必要に応じて適宜調節することができる。また、電解液には、既知の添加剤、例えばビニレンカーボネートなどを添加することができる。
【0090】
<セパレータ>
電気化学素子は、多孔質絶縁層とは別にセパレータを備えていてもよい。セパレータはイオン透過性を有し、かつ電子伝導性を持たない絶縁層である。セパレータの材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。セパレータの大きさは、電気化学素子に使用することが可能であれば制限はなく、必要に応じて電極間以外に、電極の周囲などを被覆していてもよい。
セパレータとしては、特に限定されることなく、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトブロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、マイクロポア膜等が挙げられる。セパレータの構造は、単層構造であっても積層構造であってもよい。
【0091】
<外装>
外装は、電極と、電解質と、セパレータ、固体電解質又はゲル電解質とを封止することができれば特に制限はない。
【0092】
<電気化学素子の製造装置及び電気化学素子の製造方法>
本実施形態の電気化学素子の製造装置は、上記した本発明の電極の製造装置により電極を製造する電極製造部を含み、必要に応じて、更にその他の構成を含む。
本実施形態の電気化学素子の製造方法は、上記した本発明の電極の製造方法により電極を製造する工程を含み、必要に応じて、更にその他の構成を含む。
【0093】
本実施形態の電気化学素子の製造装置及び電気化学素子の製造方法は、上記した電極製造部及び電極を製造する工程を本発明のものとする以外は、公知の手段及び方法を適宜選択することができる。
【0094】
本実施形態の電気化学素子は、例えば、正極と、負極とを、必要に応じてセパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。
【0095】
図12は、本実施形態の電気化学素子に用いる電極素子の一例を示す断面図である。図12を参照すると、電極素子は、負極10と正極20とが負極用基体11及び正極用基体21を外側に向けて積層された構造である。負極用基体11には負極引き出し線41が接続されている。正極用基体21には正極引き出し線42が接続されている。
【0096】
図13は、本実施形態の電気化学素子の一例を示す断面図である。図13を参照すると、電気化学素子は、電極素子40に非水電解液を注入して電解質層51を形成し、外装52で封止した構造である。電気化学素子において、負極引き出し線41及び正極引き出し線42は、外装52の外部に引き出されている。電気化学素子は、必要に応じてその他の部材を有してもよい。
電気化学素子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非水電解液二次電池、非水電解液キャパシタ等が挙げられる。
電気化学素子の形状については、特に制限はなく、一般的に採用されている各種形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができる。例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプなどが挙げられる。
【0097】
<電気化学素子の用途>
電気化学素子の用途としては、特に制限はなく、例えば、車両等の移動体;スマートフォン、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の電気機器などが挙げられる。これらの中でも、車両、電気機器が特に好ましい。
前記移動体としては、例えば、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、トラック、大型自動二輪車、普通自動二輪車などが挙げられる。
【0098】
[移動体]
図14に、本実施形態の電気化学素子の一例である全固体電池を搭載した移動体の一例を示す。移動体550は、例えば電気自動車である。移動体550はモーター551と、電気化学素子552と、移動手段の一例としての車輪553を備える。電気化学素子552は、上述した本実施形態の電気化学素子である。電気化学素子552は、モーター551に電力を供給することでモーター551を駆動する。駆動されたモーター551は、車輪553を駆動させることができ、その結果、移動体550は移動することができる。
以上の構成によれば、耐圧縮強度及び容量維持率に優れる電気化学素子からの電力により駆動するので、安全かつ効率よく移動体を移動させることができる。
移動体550は電気自動車に限られず、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)、又はディーゼルエンジンと電気化学素子とを併用して走行可能な機関車やバイクであってもよい。又、移動体は、電気化学素子のみ、又はエンジンと電気化学素子とを併用して走行可能な、工場等で使用される搬送用ロボットであってもよい。また、移動体は、その物体全体が移動せず、一部のみが移動するもの、例えば、工場の製造ラインに配される、電気化学素子のみ、又はエンジンと電気化学素子とを併用してアーム等が動作可能な組立ロボットであってもよい。
【実施例0099】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0100】
(調製例1)
<多孔質絶縁層用液体組成物1の調製>
ガラス容器に、溶媒として2-エチルヘキサノール380質量部、及び分散剤としてマリアリムAAB-0851(日油株式会社製)20質量部を入れ、撹拌しながらアルミナ粉末としてAKP-30(住友化学株式会社製)400質量部を添加した。十分に撹拌した後、直径5mmのジルコニアビーズを960質量部加え、回転数35rpmのボールミルにて96時間分散処理を行い、無機酸化物粒子の固形分50%の無機酸化物粒子分散液を得た。
次に、別のガラス容器に、ポロジェンとして2-エチルヘキサノール39質量部、モノマーとしてトリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート40質量部、及び重合開始剤としてIrgacure184(BASF社製)1.0質量部を添加し、混合してベース液とした。
得られたべース液を撹拌しながら、上記無機酸化物粒子分散液20質量部を少量ずつ添加し、撹拌した後、平均孔径5μmのメンブレンフィルターで粗大粒子を除去し、多孔質絶縁層用液体組成物1を調製した。
【0101】
(調製例2~20)
<多孔質絶縁層用液体組成物2~20の調製>
調製例1において、表1―1~表1-3に示すように組成を変更した以外は、調製例1と同様にして、多孔質絶縁層用液体組成物2~20を調製した。
【0102】
【表1-1】
【0103】
【表1-2】
【0104】
【表1-3】
【0105】
表1-1~表1-3中における無機酸化物粒子及び分散剤の詳細な内容については下記の通りである。
-無機酸化物粒子-
・AKP-30、住友化学株式会社製、不定形アルミナ粒子
・AA-03、住友化学株式会社製)、球形アルミナ粒子
・LS-711C、日本軽金属株式会社製、不定形アルミナ粒子
・AA-05、住友化学株式会社製、球形アルミナ粒子
・AKP-3000、住友化学株式会社製、不定形アルミナ粒子
・AA-07、住友化学株式会社製、球形アルミナ粒子
・SERATH02025、キンセイマテック株式会社製、板状アルミナ粒子
【0106】
-分散剤-
・マリアリムAAB-0851、日油株式会社製
・マリアリムSC-0708A、日油株式会社製
・マリアリムAKM-0531、日油株式会社製
【0107】
(実施例1)
<電気化学素子の作製>
-負極の作製-
2本ロールダイレクトコート方式のコンマコーターを用いて負極用基体としての銅箔の両面に、負極活物質(SCMG-XRs、昭和電工株式会社製)、水、及びポリフッ化ビニリデン(Solef 5130、ソルベイ株式会社製)を混錬して得た負極合材層用スラリーを塗布した後、乾燥させて、負極合材層を形成した。その後、エアーハイドロ式10tロールプレス装置を使用して250mmΦのローラで負極合材層に10,000kgの圧力を加え、負極を作製した。
【0108】
-正極の作製-
2本ロールダイレクトコート方式のコンマコーターを用いて正極用基体としてのアルミニウム箔の両面に、正極活物質(ニッケル酸リチウム503H、JFEミネラル株式会社製)、N-メチルピロリドン、及びポリフッ化ビニリデン(Solef 5130、ソルベイ株式会社製)を混錬して得た正極合材層用スラリーを塗布した後、乾燥させて、正極合材層を形成した。その後、エアーハイドロ式10tロールプレス装置を使用して、250mmΦのローラで正極合材層に10,000kgの圧力を加え、正極を作製した。
【0109】
-多孔質絶縁層の形成-
液体吐出装置(EV2500、株式会社リコー製)及び液体吐出ヘッド(MH5421F、株式会社リコー製)を用い、多孔質絶縁層用液体組成物1を上記負極の負極合材層上に吐出した。その際、過度な浸透を抑制するため、吐出直前にポロジェンとして2-エチルヘキサノールで負極合材層を湿潤させた。その後、多孔質絶縁層用液体組成物1を膨潤した負極合材層に吐出した。吐出から10秒間以内に、窒素雰囲気下で紫外線照射により重合性化合物としてのモノマーを重合させ、120℃のホットプレートにて吐出面と逆側から1分間加熱してポロジェンの除去を行い、実施例1の負極合材層上に多孔質絶縁層を形成した負極を作製した。
【0110】
(実施例2~14)
実施例1において、表2-1及び表2-2に示すように、多孔質絶縁層用液体組成物1を多孔質絶縁層用液体組成物2~14に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2~14の負極合材層上に多孔質絶縁層を形成した負極を作製した。
【0111】
(実施例15~18)
実施例1において、液体吐出ヘッドからの多孔質絶縁層用液体組成物1の吐出量を調節し、多孔質絶縁層の平均厚みを表2-1及び表2-2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして実施例15~18の負極合材層上に多孔質絶縁層を形成した負極を作製した。
【0112】
(実施例19~22)
実施例1において、多孔質絶縁層用液体組成物1を多孔質絶縁層用液体組成物15~18に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、実施例19~22の負極合材層上に多孔質絶縁層を形成した負極を作製した。
【0113】
(実施例23)
実施例1において、多孔質絶縁層用液体組成物1を多孔質絶縁層用液体組成物16と17に置き換えて吐出を実施した。
負極合材層上に多孔質絶縁層用液体組成物16を乾燥後の平均厚みが10μmとなるように吐出し、吐出から10秒以内に、窒素雰囲気下で紫外線照射によりモノマーを重合させ、1層目の多孔質絶縁層を形成した。
更に、1層目の多孔質絶縁層上に多孔質絶縁層用液体組成物17を乾燥後の平均厚みが10μmとなるように吐出し、同様に紫外線照射して2層目の多孔質絶縁層を形成した。その後、120℃のホットプレートにて吐出面と逆側から1分間加熱してポロジェンの除去を行い、実施例23の負極合材層上に多孔質絶縁層を形成した負極を作製した。
【0114】
(実施例24)
実施例23において、多孔質絶縁層用液体組成物16と17の吐出順序を入れ替えた以外は、実施例23と同様にして、実施例24の負極合材層上に多孔質絶縁層を形成した負極を作製した。
【0115】
(実施例25)
実施例23において、多孔質絶縁層用液体組成物16を多孔質絶縁層用液体組成物7に入れ替え、更に多孔質絶縁層用液体組成物17を多孔質絶縁層用液体組成物1に入れ替えた以外は、実施例23と同様にして、実施例25の負極合材層上に多孔質絶縁層を形成した負極を作製した。
【0116】
(実施例26)
実施例25において、多孔質絶縁層用液体組成物7と1の吐出順序を入れ替えた以外は、実施例25と同様にして、実施例26の負極合材層上に多孔質絶縁層を形成した負極を作製した。
【0117】
(比較例1~2)
実施例1において、多孔質絶縁層用液体組成物1を多孔質絶縁層用液体組成物19~20に置き換えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1~2の負極合材層上に多孔質絶縁層を形成した負極を作製した。
【0118】
<試験片の作製>
次に、実施例1~26及び比較例1~2について、負極用基体としての銅箔上に、上記負極の作製と同様の条件で多孔質絶縁層を片面に形成した各試験片を作製し、以下のようにして、多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の平均一次粒子径、多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の平均分散粒子径、多孔質絶縁層の平均厚み、多孔質絶縁層の平均空隙率及びその分布、並びに多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の面積比及びその分布を測定した。結果を表2-1及び表2-2に示した。
【0119】
<多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の平均一次粒子径>
多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の平均一次粒子径は各試験片における断面観察画像から測定した。
2液型エポキシ樹脂(埋込用エポキシ樹脂53型、株式会社三啓製)を混合後に真空脱泡した液に、多孔質絶縁層を形成した電極(上記試験片)を5mm角に切り出したものを含浸した。エポキシ樹脂が浸透した電極を平滑なポリテトラフルオロエチレン板で挟み、40℃の恒温槽で12時間硬化させた。エポキシ樹脂が硬化した後、電極をガラス板上にマスキングテープで固定し、断面を観察する多孔質絶縁層と逆側の面に76カミソリ(日新EM株式会社製)の刃を垂直に押し当てて切断した。更に、切断した試料の断面にクロスセクションポリッシャー(SM-09010、日本電子株式会社製)を用い、加速電圧5.0kV、ビーム電流120μA、加工時間180分の条件で仕上げ加工を行った。
走査型電子顕微鏡(SEM)(Merlin、カールツァイス株式会社製)を用いて、TLD、反射電子組成像、倍率2500倍、WD5.0mm、加速電圧2.0kV、視野幅50.8μmの条件で断面を撮影した。
撮影した画像をTIFF画像にて出力し、画像処理ソフトウェアImage J(オープンソースソフトウェア)にて視野内の単独の粒子の長軸の長さの画素数を計測し、1ピクセルあたりの大きさから一次粒子を算出した。視野範囲内の50個(それ以下の場合はすべて)の粒子を計測し、上位3%以上と下位3%以下を除く結果の平均値を測定値とした。
【0120】
<多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の平均分散粒子径>
多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の平均分散粒子径は各試験片における断面観察画像から測定した。
多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の平均分散粒子径は、上記多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の平均一次粒子径と同様の方法で多孔質絶縁層の断面を撮影し、撮影した画像をTIFF画像にて出力し、画像処理ソフトウェアImage J(オープンソースソフトウェア)に取り込み、Image JのメニューのTypeから8ビットを選択、Image JのメニューのAdjustからThresholdを選択して、256階調における最小値を100、最大値を255に設定して2値化し、分散した無機酸化物粒子のみ抽出した画像を作成した。AnalyzeメニューのAnalyze Particlesを選択して個々の分散した無機酸化物粒子の面積S(px)を算出した。画像の1ピクセルあたりの長さをA(nm/px)とし、分散した無機酸化物粒子の断面を円形とみなして下記の計算式より無機酸化物粒子の平均分散粒子径を求めた。
平均分散粒子径(nm)=2A(S/π)(1/2)
なお、視野範囲内の50個(それ以下の場合はすべて)の粒子を計測し、上位3%以上と下位3%以下を除く結果の平均値を測定値とした。
【0121】
<多孔質絶縁層の平均厚みの測定>
多孔質絶縁層の平均厚みは各試験片における断面観察画像から測定した。
多孔質絶縁層の平均厚みは、上記多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の平均一次粒子径と同様の方法で多孔質絶縁層の断面を撮影し、撮影した画像をTIFF画像にて出力し、
画像編集ソフトウェアGIMP 2.10.32(GNU GPL)を用い、画像の明度差で多孔質絶縁層部分の面積を算出し、面積を膜厚と垂直方向の画素数で除することにより厚みを算出した。視野範囲を変えた画像5枚の算出結果の平均値を測定値とした。
【0122】
<多孔質絶縁層の平均空隙率及びその分布の測定>
多孔質絶縁層の平均空隙率及びその分布は各試験片における断面観察画像から測定した。
多孔質絶縁層の平均空隙率は、上記多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の平均一次粒子径と同様の方法で多孔質絶縁層の断面を撮影し、撮影した画像をTIFF画像にて出力し、
画像編集ソフトウェアGIMP 2.10.32(GNU GPL)を用い、樹脂骨格部分と空隙部分の画像の明暗から多孔質絶縁層内の空隙部分の割合である平均空隙率を算出した。
なお、GIMPの操作画面において多孔質絶縁層が厚み方向にすべて含まれるように範囲選択して明度をヒストグラム化し、256階調における最小値を0、最大値を70(しきい値)に設定して該当する明度の画素数の割合をパーセントで算出し、視野範囲を変えた画像5枚の算出結果の平均値を測定値とした。
次に、多孔質絶縁層中の平均空隙率の分布は、図2に示すように、多孔質絶縁層の厚みを、多孔質絶縁層と電極合材層との境界領域において、多孔質絶縁層の割合が50%以上となるような境界を0とし、電極基体から視た多孔質絶層表面が最も遠い位置を100とし、0~100の領域を2の領域に分割したとき、0~50の領域に含まれ平面方向に前記多孔質絶縁層の厚みと同じ長さの計測領域1と、50~100の領域に含まれ平面方向に前記多孔質絶縁層の厚みと同じ長さの計測領域2とを比較し、前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層から10%の範囲における平均空隙率と、前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層と逆側から10%の範囲における平均空隙率とを求め、両者の差を算出した。
【0123】
<多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の面積比及びその分布の測定>
多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の面積比及びその分布は各試験片における断面観察画像から測定した。
多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の面積比は、上記多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の平均一次粒子径と同様の方法で多孔質絶縁層の断面を撮影し、撮影した画像をTIFF画像にて出力し、画像編集ソフトウェアGIMP 2.10.32(GNU GPL)を用い、多孔質絶縁層の厚み方向に画像を2分割し、それぞれの樹脂骨格に含まれる無機酸化物粒子の面積比を計測した。
なお、GIMPの操作画面において測定したい範囲を選択して明度をヒストグラム化した。256階調における最小値(しきい値)を100、最大値を255に設定して該当する明度の画素数の割合をパーセントで算出し、視野範囲を変えた画像5枚の算出結果の平均値を測定値とした。
次に、多孔質絶縁層中の無機酸化物粒子の面積比の分布は、図2に示すように、多孔質絶縁層の厚みを、多孔質絶縁層と電極合材層との境界領域において、多孔質絶縁層の割合が50%以上となるような境界を0とし、電極基体から視た多孔質絶層表面が最も遠い位置を100とし、0~100の領域を2の領域に分割したとき、0~50の領域に含まれ平面方向に前記多孔質絶縁層の厚みと同じ長さの計測領域1と、50~100の領域に含まれ平面方向に前記多孔質絶縁層の厚みと同じ長さの計測領域2とを比較し、前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層から10%の範囲における前記無機酸化物の面積比と、前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層と逆側から10%の範囲における前記無機酸化物の面積比(含有量)とを求め、両者の差を算出した。
【0124】
次に、多孔質絶縁層の耐圧縮性、及び電気化学素子のサイクル寿命となる容量維持率を以下のようにして評価した。結果を表2-2に示した。
【0125】
<多孔質絶縁層の耐圧縮性の評価>
実施例1~26及び比較例1~2の負極の作製と同様の条件で多孔質絶縁層を片面に形成した銅箔を25mm角に切り出し、15枚積層して四辺をテープで固定して試験片とした。
この試験片にSUS円盤(厚み1mm、面積201mm)を重ね、卓上万能力学試験機(株式会社島津製作所製、卓上形精密万能試験機AGS-X)と圧縮治具を使用して試験片に荷重を付与した。0.1mm/分の速度で徐々に圧縮を開始し、荷重が0.5MPaに到達したところを記録開始点とし、開始点到達以降は荷重を1.0MPaに維持し、その状態で60分間厚みの変化を記録した。銅箔に同様の方法で荷重を付与した場合の厚みをベースラインとし、多孔質絶縁層を形成した試験片の厚みの変化を圧縮変位(%)[(圧縮後厚み/圧縮前厚み)×100)]とした。測定は1条件につき3回以上実施し、平均値を耐圧縮性として下記の基準で評価した。なお、圧縮変位は値が小さい方が耐圧縮性に優れ、評価はAが最も優れた結果を示し、AからCを合格とした。
[評価基準]
A:圧縮変位が1.0%未満
B:圧縮変位が1.0%以上3.0%未満
C:圧縮変位が3.0%以上5.0%未満
D:圧縮変位が5.0%以上
【0126】
<リチウムイオン二次電池の作製>
実施例1~26及び比較例1~2の負極の作製と同様の条件で多孔質絶縁層を負極の電極合材層の片面に形成した後、50mm×30mm(引き出し線除く)に負極を切り出し、47mm×27mm(引き出し線除く)に切り出した正極と、それぞれの引き出し線が短絡しないように正極と負極を積層して電極素子を得た(図12参照)。
得られた電極素子をアルミニウムラミネートシート間に挟んだ後、注液口を残してラミネーターで周囲を封止し、袋状の外装を形成した。非水電解液としてLBG-00015(キシダ化学株式会社製)を外装内に注入した後、注液口部分を脱気シーラーで封止して、図13に示す電気化学素子を作製した。
【0127】
<初期素子容量の測定>
作製した各電気化学素子の正極引き出し線と負極引き出し線とを、北斗電工株式会社製充放電試験装置に接続し、最大電圧4.2V、電流レート0.2C、5時間で定電流定電圧充電し、充電完了後、40℃の恒温槽で5日間静置した。その後、電流レート0.2Cで2.5Vまで定電流放電させた。その後、最大電圧4.2V、電流レート0.2C、5時間で定電流定電圧充電し、10分間の休止を挟んで、電流レート0.2Cで2.5Vまで定電流放電させた。このときの放電容量を初期素子容量とした。
【0128】
<サイクル容量維持率の評価>
サイクル容量維持率により電気化学素子の繰り返し充電時の寿命を評価した。上記のようにして初期素子容量を測定した電気化学素子の正極引き出し線と負極引き出し線とを、北斗電工株式会社製充放電試験装置に接続し、最大電圧4.2V、電流レート1C、3時間で定電流定電圧充電し、充電完了後、電流レート1Cで2.5Vまで定電流放電させた。10分間の休止を挟んで、これを1,000サイクル繰り返した。1,000サイクル完了後、最大電圧4.2V、電流レート0.2C、5時間で定電流定電圧充電し、充電完了後、10分間の休止を挟んで、電流レート0.2Cで2.5Vまで定電流放電させた。このときの放電容量をサイクル後放電容量とし、サイクル容量維持率(サイクル後放電容量/初期放電容量×100)を算出し、以下の基準で評価した。なお、評価はAが最も優れた結果を示し、C以上が合格である。
[評価基準]
A:サイクル容量維持率が80%以上
B:サイクル容量維持率が70%以上80%未満
C:サイクル容量維持率が60%以上70%未満
D:サイクル容量維持率が60%未満
【0129】
【表2-1】
【0130】
【表2-2】
【0131】
表2-1及び表2-2の結果から、実施例1~26は多孔質絶縁層の優れた耐圧縮強度と、電気化学素子の高い容量維持率とを両立できることがわかった。
これに対して、比較例1の無機酸化物粒子を有さない多孔質絶縁層は耐圧縮強度が劣ることがわかった。また、比較例2の無機酸化物粒子の面積比(含有量)が10%を超える多孔質絶縁層を有する電極は、電気化学素子を繰り返し充電した際に多孔質絶縁層の空隙が閉塞して容量維持率が劣ることがわかった。
【0132】
本実施形態に係る態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 電極基体と、
前記電極基体上に、活物質を含む電極合材層と、
前記電極合材層上に、前記電極合材層と一体化して形成された多孔質絶縁層と、
を有し、
前記多孔質絶縁層が樹脂を骨格とする多孔質構造であり、
前記多孔質絶縁層における樹脂骨格(a)と無機酸化物(b)の面積比(a:b)が99.9%以下:0.1%以上~90%以上:10%以下であることを特徴とする電極である。
<2> 前記無機酸化物の少なくとも一部が、前記樹脂骨格中に存在している、前記<1>に記載の電極である。
<3> 前記無機酸化物がアルミニウム、ケイ素、及びジルコニウムから選択される少なくとも1種の元素を含む、前記<1>に記載の電極である。
<4> 前記多孔質絶縁層中における前記無機酸化物の平均一次粒子径が500nm以下である、前記<1>に記載の電極である。
<5> 前記多孔質絶縁層中における前記無機酸化物の平均分散粒子径が900nm以下である、前記<1>に記載の電極である。
<6> 前記多孔質絶縁層の平均厚みが3μm以上50μm以下である、前記<1>に記載の電極である。
<7> 前記多孔質絶縁層の平均空隙率が30%以上である、前記<1>に記載の電極である。
<8> 前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層から10%の範囲における平均空隙率と、
前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層と逆側から10%の範囲における平均空隙率との差が±20%以内である、前記<1>に記載の電極である。
<9> 前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層から10%の範囲における前記無機酸化物の面積比と、
前記多孔質絶縁層の厚みのうち前記電極合材層と逆側から10%の範囲における前記無機酸化物の面積比との差が±3%以内である、前記<1>に記載の電極である。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の電極を有することを特徴とする電気化学素子である。
<11> 前記<10>に記載の電気化学素子を有することを特徴とするデバイスである。
<12> 前記<10>に記載の電気化学素子を有することを特徴とする移動体である。
<13> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の電極を製造する電極の製造装置であって、
電極合材層上に、無機酸化物、重合性化合物及び溶媒を含有する多孔質絶縁層用液体組成物を付与する付与手段と、
付与された前記多孔質絶縁層用液体組成物を硬化させる硬化手段と、
を有することを特徴とする電極の製造装置である。
<14> 前記付与手段は、前記多孔質絶縁層用液体組成物をインクジェット方式で吐出する手段である、前記<13>に記載の電極の製造装置である。
<15> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の電極を製造する電極の製造方法であって、
電極合材層上に、無機酸化物、重合性化合物及び溶媒を含有する多孔質絶縁層用液体組成物を付与する付与工程と、
付与された前記多孔質絶縁層用液体組成物を硬化させる硬化工程と、
を含むことを特徴とする電極の製造方法である。
<16> 前記付与工程は、前記多孔質絶縁層用液体組成物をインクジェット方式で吐出する工程である、前記<15>に記載の電極の製造方法である。
【0133】
前記<1>から<9>のいずれかに記載の電極、前記<10>に記載の電気化学素子、前記<11>に記載のデバイス、前記<12>に記載の移動体、前記<13>から<14>のいずれかに記載の電極の製造装置、及び前記<15>から<16>のいずれかに記載の電極の製造方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0134】
10 負極
11 負極用基体
12 負極合材層
13 多孔質絶縁層
20 正極
21 正極用基体
22 正極合材層
23 多孔質絶縁層
40 電極素子
41 負極引き出し線
42 正極引き出し線
51 電解質層
52 外装
【先行技術文献】
【特許文献】
【0135】
【特許文献1】国際公開第2018/186135号
【特許文献2】国際公開第2014/106954号
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14