(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128725
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】電流制御装置
(51)【国際特許分類】
H02H 5/04 20060101AFI20240913BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H02H5/04 140
H02H7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037888
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 達哉
(72)【発明者】
【氏名】安井 崇博
【テーマコード(参考)】
5G053
【Fターム(参考)】
5G053AA01
5G053AA14
5G053BA06
5G053CA01
5G053EC03
5G053FA05
(57)【要約】
【課題】比較的部品点数が少ない簡易な構成かつ比較的小さい実装面積にて急峻な電流変化から電線を保護することができる電流制御装置を提供すること。
【解決手段】電源から電線を経由して負荷に供給する供給電流を制御する電流制御装置であって、オン状態のときに前記供給電流を流し、オフ状態のときに前記供給電流を遮断するスイッチ部と、前記供給電流に応じた第1電流が入力され、前記第1電流に応じて、前記電線の電線温度と前記電線の環境温度との温度差に応じた第1電圧信号を出力するように前記電線の温度特性を模擬する温度特性模擬部と、前記供給電流に応じた第2電流が入力され、前記第2電流によって発生した磁場によって前記第2電流に応じた第3電流を発生する電流発生部と、前記第1電圧信号の電圧が第1電圧閾値以上の場合または前記第3電流が第1電流閾値以上の場合に前記スイッチ部をオフ状態に制御する駆動部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から電線を経由して負荷に供給する供給電流を制御する電流制御装置であって、
オン状態のときに前記供給電流を流し、オフ状態のときに前記供給電流を遮断するスイッチ部と、
前記供給電流に応じた第1電流が入力され、前記第1電流に応じて、前記電線の電線温度と前記電線の環境温度との温度差に応じた第1電圧信号を出力するように前記電線の温度特性を模擬する温度特性模擬部と、
前記供給電流に応じた第2電流が入力され、前記第2電流によって発生した磁場によって前記第2電流に応じた第3電流を発生する電流発生部と、
前記第1電圧信号の電圧が第1電圧閾値以上の場合または前記第3電流が第1電流閾値以上の場合に前記スイッチ部をオフ状態に制御する駆動部と、
を備える
電流制御装置。
【請求項2】
前記第2電流は前記供給電流の少なくとも一部または前記第1電流の少なくとも一部である
請求項1に記載の電流制御装置。
【請求項3】
前記電流発生部はコモンモードチョークコイルを備える
請求項1に記載の電流制御装置。
【請求項4】
前記電流発生部は、前記第2電流が入力される第1導体と、前記第1導体に隣接して設けられ、前記第3電流が流れる第2導体と、を備える
請求項1に記載の電流制御装置。
【請求項5】
前記電流発生部は、前記第1導体と前記第2導体とが導体パターンとして形成されている基板を備える
請求項4に記載の電流制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電線を流れる電線電流に基づいて、電線の電線温度を算出し、算出した電線温度が所定温度以上の温度となった場合、電線を介した電流の通電を遮断する技術が知られている。この技術によれば、電線温度が異常な温度に上昇することが防止されるので、電線を保護することができる。また、電線温度に関する算出を行うことなく、電線温度が異常な温度に上昇することを防止することができる給電制御装置が開示されている(特許文献1)。この給電制御装置によれば、電線の電線温度と電線周辺の環境温度との温度差が大きい程、高い電圧を出力する温度差回路を用いることによって、処理能力が高い高価なマイコンを用いて電線温度に関する算出を行うことなく、電線温度が異常な温度に上昇することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるような温度差回路では、短絡などによって急に大電流が電線に流れるような急峻な電流変化に追従できない。そのため、特許文献1に開示される給電制御装置は、たとえば電流の遮断に用いるスイッチなどの保護のために、所定の電流閾値で電流を遮断するための回路(第2電流出力回路)が設けられている。
【0005】
ところが、上記の第2電流回路は、比較的複雑な構成を有しているため、部品点数が多かったり、実装に必要な面積が大きかったりするという課題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、比較的部品点数が少ない簡易な構成かつ比較的小さい実装面積にて急峻な電流変化から電線を保護することができる電流制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、電源から電線を経由して負荷に供給する供給電流を制御する電流制御装置であって、オン状態のときに前記供給電流を流し、オフ状態のときに前記供給電流を遮断するスイッチ部と、前記供給電流に応じた第1電流が入力され、前記第1電流に応じて、前記電線の電線温度と前記電線の環境温度との温度差に応じた第1電圧信号を出力するように前記電線の温度特性を模擬する温度特性模擬部と、前記供給電流に応じた第2電流が入力され、前記第2電流によって発生した磁場によって前記第2電流に応じた第3電流を発生する電流発生部と、前記第1電圧信号の電圧が第1電圧閾値以上の場合または前記第3電流が第1電流閾値以上の場合に前記スイッチ部をオフ状態に制御する駆動部と、を備える電流制御装置である。
【0008】
前記第2電流は前記供給電流の少なくとも一部または前記第1電流の少なくとも一部でもよい。
【0009】
前記電流発生部はコモンモードチョークコイルを備えてもよい。
【0010】
前記電流発生部は、前記第2電流が入力される第1導体と、前記第1導体に隣接して設けられ、前記第3電流が流れる第2導体と、を備えてもよい。
【0011】
前記電流発生部は、前記第1導体と前記第2導体とが導体パターンとして形成されている基板を備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、比較的部品点数が少ない簡易な構成かつ比較的小さい実装面積にて急峻な電流変化から電線を保護する電流制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る電流制御装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電流制御装置の動作特性の一例を示すタイムチャートである。
【
図3】
図3は、
図1に示す電流制御装置の供給電流遮断特性を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る電流制御装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素については適宜同一の符号を付し、重複説明を適宜省略する。
【0015】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電流制御装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。電気装置1000は、実施形態1に係る電流制御装置100と、電源200と、電線300と、負荷400と、を備えている。
【0016】
電気装置1000は、たとえば車両に搭載されている。電源200は、たとえば車両に搭載されるバッテリである。電源200から出力された電流は、電流制御装置100を経由し、さらに電線300を経由して負荷400に供給される。電線300は、たとえば車両に搭載されているワイヤーハーネスなどに含まれる、給電用の電線である。負荷400は、たとえば車両に搭載されている電気機器であり、電源200から供給される供給電流によって動作する。
【0017】
電流制御装置100は、負荷400に供給される供給電流を制御する。電流制御装置100は、
図1に示すように、主線1と、スイッチ部2と、駆動部3と、制御部4と、スイッチ温度検出部5と、電流出力部6と、ダイオード7と、電流発生部8と、抵抗部9と、温度特性模擬部10と、比較部11と、基準電圧発生部12と、を備えている。
【0018】
主線1は、電源200と電線300とを電気的に接続しており、たとえば導体を含む電線からなる。主線1には、負荷400に供給される供給電流Isが流れる。
【0019】
スイッチ部2は、主線1の途中に設けられている。スイッチ部2は、オン状態のときに供給電流Isを流し、オフ状態のときに供給電流Isを遮断する。スイッチ部2は、たとえば半導体スイッチ素子を備えている。半導体スイッチ素子は、たとえばFET(Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
【0020】
駆動部3は、スイッチ部2の動作状態をオン状態とオフ状態とで切り換える。駆動部3は、たとえばアナログ回路で構成されており、制御部4から入力される制御信号に基づいて、スイッチ部2の動作状態をオン状態またはオフ状態にする駆動信号をスイッチ部2に出力する。駆動信号は、たとえばスイッチ部2のゲート端子に印加される電圧信号である。
【0021】
また、駆動部3は、後述するように、スイッチ温度検出部5や抵抗部9や比較部11から入力される電圧信号に基づいて、スイッチ部2の動作状態をオン状態またはオフ状態にする駆動信号をスイッチ部2に出力する。
【0022】
制御部4は、たとえばマイクロコントローラを備えている。制御部4は、負荷400に供給電流Isを流して負荷400を動作させる場合には、スイッチ部2をオン状態にするための制御信号を駆動部3に出力する。また、制御部4は、負荷400への供給電流Isを遮断して負荷400の動作を停止される場合には、スイッチ部2をオフ状態にするための制御信号を駆動部3に出力する。
【0023】
スイッチ温度検出部5は、スイッチ部2の近傍に設けられている。スイッチ温度検出部5は、スイッチ部2の温度に応じた電圧信号を駆動部3に出力する。たとえば、スイッチ温度検出部5が出力する電圧信号は、スイッチ部2の温度が高いほど電圧値が大きい。スイッチ温度検出部5は、たとえばサーミスタを含むアナログ回路で構成されている。
【0024】
電流出力部6は、主線1に接続されている。電流出力部6は、主線1に流れる供給電流Isに応じた電流をダイオード7に出力する。たとえば、電流出力部6が出力する電流は、供給電流Isが大きいほど大きい。電流出力部6は、たとえばアナログ回路で構成されており、特許文献1に記載の第1電流回路のように構成されていてもよい。
【0025】
ダイオード7は、電流出力部6から電流発生部8を経由して温度特性模擬部10に電流を流し、温度特性模擬部10側から電流出力部6に電流が逆流することを防止する。
【0026】
電流発生部8は、一次コイル8aと二次コイル8bとを備えている。一次コイル8aの一端はダイオード7に接続されており、一次コイル8aの別の一端は温度特性模擬部10に接続されている。二次コイル8bの一端は抵抗部9に接続されており、二次コイル8bの別の一端はグランドに接続されている。本実施形態では、電流発生部8はコモンモードチョークコイルを備えている。
【0027】
ダイオード7から入力した電流が一次コイル8aに流れると、この電流によって発生した磁場によって相互誘導起電力が発生する。この相互誘導起電力によって二次コイル8bにおいて電流が発生して二次コイル8bを流れる。すなわち、電流発生部8は、供給電流Isに応じた第2電流が入力され、第2電流によって発生した磁場によって第2電流に応じた第3電流を発生する電流発生部の一例である。ダイオード7から入力した電流は第2電流の一例であり、二次コイル8bにおいて発生する電流は第3電流の一例である。たとえば、第2電流は、供給電流Isが大きいほど大きく、第3電流は、第2電流の時間的な変化が大きいほど大きい。
【0028】
抵抗部9の一端は二次コイル8bの一端に接続されており、抵抗部9の別の一端はグランドに接続されている。また、抵抗部9と二次コイル8bとの接続点は駆動部3に接続されている。二次コイル8bにおいて発生した電流が抵抗部9に流れると、駆動部3にはその電流と抵抗部9の抵抗値とに応じた電圧信号が入力される。
【0029】
温度特性模擬部10は、電流発生部8に接続されている。温度特性模擬部10は、ダイオード7と電流発生部8とを流れて入力された電流に基づいて、電線300に供給電流Isが流れた場合の温度特性を模擬し、電線300の電線温度と電線300の環境温度との温度差に応じた電圧信号を比較部11に出力する。温度特性模擬部10は、供給電流Isに対応した第1電流が入力され、第1電流に応じて、電線300の電線温度と電線300の環境温度との温度差に応じた第1電圧信号を出力するように電線300の温度特性を模擬する温度特性模擬部の一例である。
【0030】
温度特性模擬部10は、熱モデルを採用したアナログ回路によって構成することができる。このような回路は熱等価回路とも呼ばれる。熱等価回路では、電線300の熱抵抗が電気抵抗で表され、熱容量がコンデンサで表される。熱等価回路としては、たとえばCauer型やFoster型を採用することができる。
【0031】
比較部11は、温度特性模擬部10から入力された電圧信号が基準電圧発生部12から入力される基準電圧値以上である場合にハイレベルの電圧信号を駆動部3に出力し、温度特性模擬部10から入力された電圧信号が基準電圧値未満である場合にローレベルの電圧信号を駆動部3に出力する。
【0032】
基準電圧値は、たとえば、温度特性模擬部10が出力する電圧信号の電圧値が、電線300の電線温度と電線300の環境温度との温度差の閾値に相当する電圧値に設定される。電線300の電線温度と電線300の環境温度との温度差の閾値とは、たとえば当該温度差がそれ以上になると、電線300が発煙したり発火したりするなどの不具合が発生する値である。基準電圧値は、第1電圧閾値の一例である。
【0033】
以上のように構成された電流制御装置100の動作の一例について説明する。制御部4は、上位の装置などから負荷400を動作させる指令信号を受けると、スイッチ部2をオン状態にするための制御信号を駆動部3に出力する。駆動部3は、スイッチ部2をオン状態にするための制御信号が入力されると、スイッチ部2をオン状態にするための駆動信号をスイッチ部2に出力する。これにより、スイッチ部2がオン状態となるので、電源200から電流制御装置100および電線300を経由して供給電流Isが負荷400に供給され、負荷400が動作する。
【0034】
また、制御部4は、上位の装置などから負荷400の動作を停止させる指令信号を受けると、スイッチ部2をオフ状態にするための制御信号を駆動部3に出力する。駆動部3は、スイッチ部2をオフ状態にするための制御信号が入力されると、スイッチ部2をオフ状態にするための駆動信号をスイッチ部2に出力する。これにより、スイッチ部2がオフ状態となるので、供給電流Isが遮断され、負荷400は動作を停止する。
【0035】
また、制御部4からの指令信号によってスイッチ部2がオン状態となっている場合に、電流制御装置100はたとえば以下のように動作する。
【0036】
駆動部3は、スイッチ温度検出部5から入力された電圧信号の電圧値が所定の電圧閾値以上である場合は、スイッチ部2の動作状態をオフ状態にする駆動信号をスイッチ部2に出力する。ここで、所定の電圧閾値は、スイッチ温度検出部5が出力する電圧信号の電圧値が、スイッチ部2の温度閾値に相当する電圧値に設定される。スイッチ部2の温度閾値とは、たとえばスイッチ部2の温度がそれ以上になると、故障などの不具合がスイッチ部2に発生する温度である。これにより、電流制御装置100においては、スイッチ部2に供給電流Isが流れることによってスイッチ部2の温度が過度になることが防止される。
【0037】
また、駆動部3は、比較部11から入力された電圧信号がハイレベルの電圧信号である場合は、スイッチ部2の動作状態をオフ状態にする駆動信号をスイッチ部2に出力する。比較部11から入力された電圧信号がハイレベルの電圧信号である場合は、温度特性模擬部10が出力する電圧信号の電圧値が、電線300の電線温度と電線300の環境温度との温度差の閾値以上になっている場合に相当する。これにより、電流制御装置100においては、電線300に供給電流Isが流れることによって電線300の電線温度と電線300の環境温度との温度差が過度になることが防止される。比較部11から入力された電圧信号がハイレベルの電圧信号である場合は、温度特性模擬部10が出力する第1電圧信号の電圧が第1電圧閾値以上である場合の一例である。
【0038】
さらに、駆動部3は、抵抗部9から入力された電圧信号の電圧値が別の所定の電圧閾値以上である場合は、スイッチ部2の動作状態をオフ状態にする駆動信号をスイッチ部2に出力する。ここで、別の所定の電圧閾値は、抵抗部9が出力する電圧信号の電圧値が、供給電流Isの電流閾値に相当する電圧値に設定される。供給電流Isの電流閾値とは、たとえばスイッチ部2や電線300にそれ以上の電流が流れると、故障などの不具合がスイッチ部2や電線300に発生する電流である。上述したように、第2電流は供給電流Isに応じた値であり、第3電流は第2電流に応じた値なので、第3電流も供給電流Isに応じた値である。抵抗部9から入力された電圧信号の電圧値が別の所定の電圧閾値以上である場合は、第3電流が第1電流閾値以上の場合に相当する。これにより、電流制御装置100においては、スイッチ部2や電線300に流れる供給電流Isが過度な値になることが防止される。
【0039】
以上のように構成された電流制御装置100によれば、スイッチ部2と電線300とが過度な温度になることが防止される。また、電流制御装置100によれば、スイッチ部2や電線300に流れる供給電流Isが過度な値になることが防止される。また、電流発生部8は、入力された第2電流によって発生した磁場によって第3電流を発生し、駆動部3は第3電流に基づいてスイッチ部2をオフ状態にするから、供給電流Isが急峻な変化をして過度な値になったとしても、温度特性模擬部10よりも早い応答でスイッチ部2をオフ状態にすることができる。さらに、電流発生部8は、コモンモードチョークコイルのような比較的部品点数が少ない簡易な構成かつ比較的小さい実装面積にて実現できる。
【0040】
図2は、
図1に示す電流制御装置の動作特性の一例を示すタイムチャートである。
図2(a)は供給電流Isを示しており、
図2(b)は電流発生部8によって抵抗部9から駆動部3に出力される電圧信号を示しており、
図2(c)は温度特性模擬部10から比較部11に出力される電圧信号を示している。
【0041】
図2(a)に示すように、供給電流Isは線L11で示すように最初は0Aであり、通常は制御部4からの制御信号に応じて線L12のように上昇し、線L13で示すように一定の値になる。しかし、短絡などが発生すると、供給電流Isは線L14のように急峻に上昇するように変化する。この場合、温度特性模擬部10は、
図2(c)に線L3で示すように比較的緩やかに応答するので、線L14のように急峻な変化には対応できない。しかしながら、電流発生部8によって抵抗部9から駆動部3に出力される電圧信号は、
図2(b)に線L2で示すように迅速に応答する。そこで、駆動部3において、たとえば
図2(b)に線L4で示すような電圧閾値を設定すれば、線L14のように急峻に上昇する大電流を遮断することができる。
【0042】
図3は、電流制御装置100の供給電流遮断特性の一例を示すグラフである。
図3において、横軸は供給電流Isの通電時間を示し、縦軸は供給電流Isを示す。また、線L5、L6、L7、L8は、それぞれ、電線300の発煙特性、スイッチ部2の遮断特性、温度特性模擬部10の遮断特性、電流発生部8の遮断特性を示している。
【0043】
たとえば、供給電流IsがI1の場合、時刻t1において温度特性模擬部10によって供給電流Isが遮断され、電線300の発煙が防止される。また、供給電流Isが比較的大きいI2の場合、より短時間の時刻t2において電流発生部8によって供給電流Isが迅速に遮断され、電線300の発煙が防止されるととに、スイッチ部2も保護される。
【0044】
(実施形態2)
図4は、実施形態4に係る電流制御装置を備えた電気装置の構成を示すブロック図である。電気装置1000Aは、
図1に示す電気装置1000の構成において、実施形態1に係る電流制御装置100を実施形態2に係る電流制御装置100Aに置き換えた構成を有する。
【0045】
電流制御装置100Aは、電流制御装置100の構成において、電流発生部8を電流発生部8Aに置き換えた構成を有する。
【0046】
電流発生部8Aは、第1導体8Aaと、第1導体8Aaに隣接して設けられた第2導体8Abと、基板8Acとを備えている。
【0047】
第1導体8Aaは、主線1に含まれる導体の一部を構成している。第1導体8Aaの一端はスイッチ部2側に位置し、第1導体8Aaの別の一端は電線300側に位置する。第2導体8Abは、その一部が第1導体8Aaの一部と平行に配置されている。第2導体8Abの一端は抵抗部9に接続されており、第2導体8Abの別の一端はグランドに接続されている。
【0048】
また、第1導体8Aaと第2導体8Abとは、絶縁体からなる基板8Acに、導体パターンとして形成されている。
【0049】
供給電流Isがスイッチ部2から第1導体8Aaに流れると、この電流によって発生した磁場によって第2導体8Abにおいて電流が発生して第2導体8Abを流れる。すなわち、電流発生部8Aは、供給電流Isに応じた第2電流が入力され、第2電流によって発生した磁場によって第2電流に応じた第3電流を発生する電流発生部の一例である。この場合、第2電流は供給電流Isである。
【0050】
以上のように構成された電流制御装置100Aは、実施形態1に係る電流制御装置100と同様の効果を奏する。特に、電流制御装置100Aでは、電流発生部8Aが配線パターンである第1導体8Aaと第2導体8Abとによって実現されているので、さらに部品点数が少ない簡易な構成かつさらに小さい実装面積を実現できる。
【0051】
なお、上記実施形態2に係る電流制御装置100Aでは、第2導体8Abは、その一部が第1導体8Aaの一部と平行に配置されているが、第1導体8Aaに流れた電流によって発生した磁場によって第2導体8Abにおいて電流が発生する配置であれば、第2導体8Abの配置は特に限定されない。
【0052】
また、上記実施形態2に係る電流制御装置100Aでは、電流発生部8Aは、第1導体8Aaに第2電流として供給電流Isが入力されるように構成されている。ただし、電流制御装置100や電流制御装置100Aの変形例として、供給電流Isの少なくとも一部や温度特性模擬部10に入力される第1電流の少なくとも一部が第2電流として入力される電流発生部を備えるように電流制御装置を構成してもよい。すなわち、たとえば供給電流Isの一部や第1電流の一部を分岐して、電流発生部に入力してもよい。
【0053】
また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 :主線
2 :スイッチ部
3 :駆動部
4 :制御部
5 :スイッチ温度検出部
6 :電流出力部
7 :ダイオード
8、8A :電流発生部
8a :一次コイル
8b :二次コイル
8Aa :第1導体
8Ab :第2導体
8Ac :基板
9 :抵抗部
10 :温度特性模擬部
11 :比較部
12 :基準電圧発生部
100、100A:電流制御装置
200 :電源
300 :電線
400 :負荷
1000、1000A:電気装置