(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128729
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】調味料組成物、調味料組成物の使用及び食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240913BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20240913BHJP
A23L 7/109 20160101ALN20240913BHJP
【FI】
A23L27/00 C
A23L27/10 C
A23L7/109 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037892
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】田伏 義彦
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 奎太
【テーマコード(参考)】
4B046
4B047
【Fターム(参考)】
4B046LA05
4B046LB01
4B046LC17
4B046LE15
4B046LG02
4B046LG16
4B046LG33
4B046LG42
4B046LG43
4B046LG44
4B046LG51
4B046LP80
4B047LB09
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4B047LF03
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4B047LG39
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4B047LG45
4B047LG52
4B047LG56
4B047LG61
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】本開示の目的は、鶏卵の存在下で花椒の特徴的な香りを示す調味料組成物を提供すること、上記調味料組成物の使用を提供すること、及び上記調味料組成物を用いる食品の製造方法を提供することを含む。
【解決手段】鶏卵と共に食材に風味を付与するために使用される調味料組成物であって、花椒と、八角と、を含み、上記花椒の総質量に対する上記八角の総質量の比率が、1質量%~13質量%の範囲内である、調味料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏卵と共に食材に風味を付与するために使用される調味料組成物であって、
花椒と、
八角と、を含み、
前記花椒の総質量に対する前記八角の総質量の比率が、1質量%~13質量%の範囲内である、
調味料組成物。
【請求項2】
前記鶏卵の総質量に対する前記花椒の総質量の比率が0.4質量%~2質量%の範囲内となるように前記鶏卵に対して使用される、請求項1に記載の調味料組成物。
【請求項3】
ローレルを更に含み、前記花椒の総質量に対する前記ローレルの総質量の比率が、1.5質量%~13質量%の範囲内である、請求項1に記載の調味料組成物。
【請求項4】
ショウガを更に含み、前記花椒の総質量に対する前記ショウガの総質量の比率が、30質量%~100質量%の範囲内である、請求項1に記載の調味料組成物。
【請求項5】
ローレルと、ショウガと、を更に含み、前記花椒の総質量に対する前記ローレルの総質量の比率が、1.5質量%~13質量%の範囲内であり、前記花椒の総質量に対する前記ショウガの総質量の比率が、30質量%~100質量%の範囲内である、請求項1に記載の調味料組成物。
【請求項6】
前記食材が、麺、米、野菜、豆腐、パン、挽肉、オートミール及び納豆からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の調味料組成物。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の調味料組成物と、鶏卵と、食材とを混ぜることを含む、食品の製造方法。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の調味料組成物と、鶏卵と、食材とを混ぜることと、
前記調味料組成物と、前記鶏卵と、前記食材と、を含む混合物を加熱することと、を含む、
食品の製造方法。
【請求項9】
鶏卵と共に食材に風味を付与するための調味料組成物の使用であって、
前記調味料組成物が、花椒と、八角と、を含み、
前記花椒の総質量に対する前記八角の総質量の比率が、1質量%~13質量%の範囲内である、
調味料組成物の使用。
【請求項10】
前記調味料組成物が、前記鶏卵の総質量に対する前記花椒の総質量の比率が0.4質量%~2質量%の範囲内となるように前記鶏卵に対して使用される、請求項9に記載の調味料組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調味料組成物、調味料組成物の使用及び食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サンショウ属に属する植物は、香辛料として様々な食品に使用されている。例えば、下記特許文献1は、サンショウ属に属する植物である山椒を含む組成物を開示している。具体的に、特許文献1は、山椒100質量部に対して1~20質量部の乾燥生姜を含む、山椒組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サンショウ属に属する植物である花椒も様々な食品に使用されているが、鶏卵を使用する食品において、花椒の特徴的な香りが十分に得られないことがある。鶏卵は、コクを提供する一方で、味及び香りをまろやかにする傾向があるため、花椒の香りは、鶏卵の存在下で弱くなりやすい。例えば、鶏卵を使用しない場合と比較すると、鶏卵の存在下で花椒の香りを十分に得るためには、より多くの花椒が必要になる。
【0005】
本開示の目的は、鶏卵の存在下で花椒の特徴的な香りを示す調味料組成物を提供すること、上記調味料組成物の使用を提供すること、及び上記調味料組成物を用いる食品の製造方法を提供することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の実施形態を包含する。
<1> 鶏卵と共に食材に風味を付与するために使用される調味料組成物であって、花椒と、八角と、を含み、上記花椒の総質量に対する上記八角の総質量の比率が、1質量%~13質量%の範囲内である、調味料組成物。
<2> 上記鶏卵の総質量に対する上記花椒の総質量の比率が0.4質量%~2質量%の範囲内となるように上記鶏卵に対して使用される、<1>に記載の調味料組成物。
<3> ローレルを更に含み、上記花椒の総質量に対する上記ローレルの総質量の比率が、1.5質量%~13質量%の範囲内である、<1>又は<2>に記載の調味料組成物。
<4> ショウガを更に含み、上記花椒の総質量に対する上記ショウガの総質量の比率が、30質量%~100質量%の範囲内である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の調味料組成物。
<5> ローレルと、ショウガと、を更に含み、上記花椒の総質量に対する上記ローレルの総質量の比率が、1.5質量%~13質量%の範囲内であり、上記花椒の総質量に対する上記ショウガの総質量の比率が、30質量%~100質量%の範囲内である、<1>又は<2>に記載の調味料組成物。
<6> 上記食材が、麺、米、野菜、豆腐、パン、挽肉、オートミール及び納豆からなる群から選択される少なくとも1つを含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の調味料組成物。
<7> <1>~<6>のいずれか1項に記載の調味料組成物と、鶏卵と、食材とを混ぜることを含む、食品の製造方法。
<8> <1>~<6>のいずれか1項に記載の調味料組成物と、鶏卵と、食材とを混ぜることと、上記調味料組成物と、上記鶏卵と、上記食材と、を含む混合物を加熱することと、を含む、食品の製造方法。
<9> 鶏卵と共に食材に風味を付与するための調味料組成物の使用であって、上記調味料組成物が、花椒と、八角と、を含み、上記花椒の総質量に対する上記八角の総質量の比率が、1質量%~13質量%の範囲内である、調味料組成物の使用。
<10> 上記調味料組成物が、上記鶏卵の総質量に対する上記花椒の総質量の比率が0.4質量%~2質量%の範囲内となるように上記鶏卵に対して使用される、<9>に記載の調味料組成物の使用。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態は、鶏卵の存在下で花椒の特徴的な香りを示す調味料組成物を提供する。本開示の一実施形態は、上記調味料組成物の使用を提供する。本開示の一実施形態は、上記調味料組成物を用いる食品の製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。下記の少なくとも1つの実施形態は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更されてもよい。
【0009】
<調味料組成物>
本開示における調味料組成物は、鶏卵と共に食材に風味を付与するために使用される調味料組成物である。調味料組成物は、花椒と、八角と、を含む。調味料組成物において、花椒の総質量に対する八角の総質量の比率は、1質量%~13質量%の範囲内である。上記のような特徴を有する調味料組成物は、鶏卵の存在下で花椒の特徴的な香りを示す。この効果は、花椒の特徴的な香り、特に、甘くて重い香りを強化する八角の使用に起因すると推定される。
【0010】
(花椒)
調味料組成物は、花椒を含む。花椒は、主に中国に分布するサンショウ属に属する植物であり、香辛料として四川料理に一般的に使用される。花椒の例は、青花椒(学名:Zanthoxylum schinifolium)及び紅花椒(学名:Zanthoxylum bungeanum)を含む。好ましい実施形態において、花椒は、青花椒及び紅花椒からなる群から選択される少なくとも1つを含む。好ましい実施形態において、花椒は、青花椒を含む。好ましい実施形態において、花椒は、紅花椒を含む。好ましい実施形態において、花椒は、青花椒及び紅花椒を含む。花椒が青花椒及び紅花椒を含む場合、青花椒の総質量と紅花椒の総質量との比(すなわち、青花椒の総質量:紅花椒の総質量)は、好ましくは60:40~97:3、より好ましくは70:30~90:10、更に好ましくは75:25~85:15の範囲内である。
【0011】
調味料組成物に使用される花椒の部位の例は、実、果皮及び葉を含む。好ましい実施形態において、花椒は、花椒の実及び花椒の果皮からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0012】
調味料組成物において、花椒の少なくとも一部は、粉末の形態であってもよい。調味料組成物において、すべての花椒は、粉末の形態であってもよい。例えば、花椒粉末は、花椒の実又は果皮を蒸気殺菌によって乾燥し、次に粉砕することによって得られる。殺菌方法は、蒸気殺菌に制限されない。
【0013】
好ましい実施形態において、花椒の総質量を基準として花椒の少なくとも85%、90%又は95%は、粉末の形態である。花椒の総質量を基準として花椒の100%は、粉末の形態であってもよい。好ましい実施形態において、花椒の総質量を基準として花椒の少なくとも85%、90%又は95%は、980μmの目開きを有する篩を通過する粉末の形態である。好ましい実施形態において、花椒の総質量を基準として花椒の100%は、980μmの目開きを有する篩を通過する粉末の形態である。
【0014】
花椒は、乾燥花椒であってもよい。花椒の含水率は、20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下又は13質量%以下であってもよい。花椒の含水率の下限は、0質量%又は4質量%であってもよい。例えば、花椒の含水率は、0質量%~20質量%の範囲内であってもよい。花椒の含水率は、公知の水分計を用いる常圧加熱乾燥法によって測定される。
【0015】
鶏卵の存在下で花椒の特徴的な香りが得られる限り、調味料組成物における花椒の含有量は制限されない。例えば、花椒の含有量は、目標の風味及び一食分の鶏卵又は食材に対する調味料組成物の使用量を考慮して決定されてもよい。好ましい実施形態において、調味料組成物の総質量に対する花椒の総質量の比率は、0.7質量%~34質量%の範囲内である。上記比率を0.7質量%以上に設定することは、花椒の香りを更に強調できる。花椒の香りの強調は、花椒の香り自体が強いことだけでなく、他の香辛料と比較して、花椒の香りが相対的に強いことを含む。上記比率を34質量%以下に設定することは、花椒に由来の苦味及び渋味を低減できる。上記比率の下限は、1質量%、1.2質量%又は1.5質量%であってもよい。上記比率の上限は、12質量%、8質量%又は3質量%であってもよい。
【0016】
鶏卵の存在下で花椒の特徴的な香りが得られる限り、調味料組成物は、花椒に加えて、又は花椒の代わりに、花椒抽出物を含んでもよい。抽出方法の例は、溶剤抽出法、水蒸気蒸留法及び超臨界抽出方法を含む。調味料組成物が花椒及び花椒抽出物を含む場合、本開示における「花椒の総質量」は、適宜、「花椒の総質量と花椒抽出物の原料換算の総質量との合計」に読み替えられてもよい。「花椒抽出物の原料換算の総質量」は、対象の花椒抽出物を得るために抽出に使用される花椒の総質量を意味する。調味料組成物が花椒の代わりに花椒抽出物を含む場合、本開示における「花椒の総質量」は、「花椒抽出物の原料換算の総質量」に読み替えられる。香辛料抽出物と比べて、香辛料粉末は一般的に安価であり、鶏卵に対してより多くの香辛料粉末が使用可能である。したがって、香辛料粉末は、鶏卵の存在下で、香辛料抽出物よりも均一かつ強い香りを提供できる。調味料組成物は、花椒抽出物を含まない調味料組成物であってもよい。
【0017】
(八角)
調味料組成物は、八角を含む。八角は、トウシキミ(学名:Illicium verum)の果実であり、香辛料又は生薬として広く利用される。八角の香りは、花椒の特徴的な香り、特に、甘くて重い香りを強化する。例えば、八角は、花椒の使用量を著しく増やさなくても、花椒の特徴的な香りを表現できる。
【0018】
調味料組成物において、八角の少なくとも一部は、粉末の形態であってもよい。調味料組成物において、すべての八角は、粉末の形態であってもよい。
【0019】
好ましい実施形態において、八角の総質量を基準として八角の少なくとも85%、90%又は95%は、粉末の形態である。八角の総質量を基準として八角の100%は、粉末の形態であってもよい。好ましい実施形態において、八角の総質量を基準として八角の少なくとも85%、90%又は95%は、600μmの目開きを有する篩を通過する粉末の形態である。好ましい実施形態において、八角の総質量を基準として八角の100%は、600μmの目開きを有する篩を通過する粉末の形態である。
【0020】
八角は、乾燥八角であってもよい。八角の含水率は、20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下又は12質量%以下であってもよい。八角の含水率の下限は、0質量%又は4質量%であってもよい。例えば、八角の含水率は、0質量%~20質量%の範囲内であってもよい。八角の含水率は、既述の花椒の含水率の測定方法と同じ方法によって測定される。
【0021】
花椒の総質量に対する八角の総質量の比率は、1質量%~13質量%の範囲内である。上記比率を1質量%~13質量%の範囲内に設定することは、花椒の香りを強化する。上記範囲内での上記比率の増加は、花椒の香りを強化できる。上記範囲内での上記比率の減少は、花椒の香りを強化しつつ、八角自体の香りを相対的に弱くし、結果的に、花椒の香りを強調できる。さらに、花椒の香りの強化は、鶏卵由来の好ましくない風味の低減にも寄与できる。上記比率の下限は、好ましくは1.3質量%、より好ましくは1.5質量%、更に好ましくは1.8質量%である。上記比率の上限は、好ましくは10質量%、より好ましくは6質量%、更に好ましくは3質量%である。
【0022】
好ましい実施形態において、調味料組成物の総質量に対する八角の総質量の比率は、0.001質量%~4.3質量%の範囲内である。上記比率を0.001質量%~4.3質量%の範囲内に設定することは、花椒の香りを強調できる。上記比率の下限は、0.01質量%、0.02質量%又は0.03質量%であってもよい。上記比率の上限は、1質量%、0.5質量%、0.1質量%であってもよい。
【0023】
鶏卵の存在下で花椒の特徴的な香りが得られる限り、調味料組成物は、八角に加えて、又は八角の代わりに、八角抽出物を含んでもよい。抽出方法の例は、溶剤抽出法、水蒸気蒸留法及び超臨界抽出方法を含む。調味料組成物が八角及び八角抽出物を含む場合、本開示における「八角の総質量」は、適宜、「八角の総質量と八角抽出物の原料換算の総質量との合計」に読み替えられてもよい。「八角抽出物の原料換算の総質量」は、対象の八角抽出物を得るために抽出に使用される八角の総質量を意味する。調味料組成物が八角の代わりに八角抽出物を含む場合、本開示における「八角の総質量」は、「八角抽出物の原料換算の総質量」に読み替えられる。八角抽出物と比べて、一般的に八角粉末の香りの力価は弱いので、八角の香りが立ち過ぎないようにしながらも、鶏卵に対してより多くの八角粉末が使用可能である。したがって、八角粉末は、鶏卵の存在下で、八角抽出物よりも均一に花椒の香りを強化できる。調味料組成物は、八角抽出物を含まない調味料組成物であってもよい。
【0024】
(ローレル(Laurel))
好ましい実施形態において、調味料組成物は、ローレルを更に含む。本開示におけるローレルは、ゲッケイジュ(月桂樹)(学名:Laurus nobilis)の葉を指す。ローレルは、ローリエ又はベイリーブスともよばれ、香辛料として古代よりヨーロッパを中心に広く利用される。ローレルの香りは、花椒の特徴的な香り、特に、柑橘のような爽やかな香りを強化できる。したがって、八角及びローレルの使用は、花椒の特徴的な香りを更に強化できる。
【0025】
調味料組成物において、ローレルの少なくとも一部は、粉末の形態であってもよい。調味料組成物において、すべてのローレルは、粉末の形態であってもよい。
【0026】
好ましい実施形態において、ローレルの総質量を基準としてローレルの少なくとも85%、90%又は95%は、粉末の形態である。ローレルの総質量を基準としてローレルの100%は、粉末の形態であってもよい。好ましい実施形態において、ローレルの総質量を基準としてローレルの少なくとも85%、90%又は95%は、355μmの目開きを有する篩を通過する粉末の形態である。好ましい実施形態において、ローレルの総質量を基準としてローレルの100%は、355μmの目開きを有する篩を通過する粉末の形態である。
【0027】
ローレルは、乾燥ローレルであってもよい。ローレルの含水率は、16質量%以下、14質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、8質量%以下又は6.5質量%以下であってもよい。ローレルの含水率の下限は、0質量%又は2質量%であってもよい。例えば、ローレルの含水率は、0質量%~16質量%の範囲内であってもよい。ローレルの含水率は、既述の花椒の含水率の測定方法と同じ方法によって測定される。
【0028】
好ましい実施形態において、花椒の総質量に対するローレルの総質量の比率は、1.5質量%~13質量%の範囲内である。上記比率を1.5質量%~13質量%の範囲内に設定することは、花椒の香りを更に強化できる。上記範囲内での上記比率の増加は、花椒の香りを強化しつつ、花椒由来の苦味及び渋味を低減できる。上記範囲内での上記比率の減少は、花椒の香りを強化しつつ、ローレル自体の香りを相対的に弱くし、結果的に、花椒の香りを強調できる。上記比率の下限は、好ましくは1.6質量%、より好ましくは1.8質量%、更に好ましくは2質量%である。上記比率の上限は、好ましくは10質量%、より好ましくは7質量%、更に好ましくは4質量%である。
【0029】
好ましい実施形態において、調味料組成物の総質量に対するローレルの総質量の比率は、0.01質量%~4質量%の範囲内である。上記比率を0.01質量%~4質量%の範囲内に設定することは、花椒の香りを強調できる。上記比率の下限は、0.02質量%、0.03質量%又は0.04質量%であってもよい。上記比率の上限は、0.8質量%、0.5質量%又は0.3質量%であってもよい。
【0030】
鶏卵の存在下で花椒の特徴的な香りが得られる限り、調味料組成物は、ローレルに加えて、又はローレルの代わりに、ローレル抽出物を含んでもよい。抽出方法の例は、溶剤抽出法、水蒸気蒸留法及び超臨界抽出方法を含む。調味料組成物がローレル及びローレル抽出物を含む場合、本開示における「ローレルの総質量」は、適宜、「ローレルの総質量とローレル抽出物の原料換算の総質量との合計」に読み替えられてもよい。「ローレル抽出物の原料換算の総質量」は、対象のローレル抽出物を得るために抽出に使用されるローレルの総質量を意味する。調味料組成物がローレルの代わりにローレル抽出物を含む場合、本開示における「ローレルの総質量」は、「ローレル抽出物の原料換算の総質量」に読み替えられる。ローレル抽出物と比べて、一般的にローレル粉末の香りの力価は弱いので、ローレルの香りが立ち過ぎないようにしながらも、鶏卵に対してより多くのローレル粉末が使用可能である。したがって、ローレル粉末は、鶏卵の存在下で、ローレル抽出物よりも均一に花椒の香りを強化できる。調味料組成物は、ローレル抽出物を含まない調味料組成物であってもよい。
【0031】
(ショウガ)
好ましい実施形態において、調味料組成物はショウガを更に含む。ショウガ(学名:Zingiber officinale)はショウガ科ショウガ属の植物であり、例えばショウガの根茎部分は香辛料又は生薬として利用される。ショウガの香りは、花椒の特徴的な香り、特に、持続性の爽やかな香りを強化できる。したがって、八角及びショウガの使用は、花椒の特徴的な香りを更に強化できる。花椒の特徴的な香りの強化の観点から、八角、ローレル及びショウガの使用が好ましい。
【0032】
調味料組成物において、ショウガの少なくとも一部は、粉末の形態であってもよい。調味料組成物において、すべてのショウガは、粉末の形態であってもよい。
【0033】
好ましい実施形態において、ショウガの総質量を基準としてショウガの少なくとも85%、90%又は95%は、粉末の形態である。ショウガの総質量を基準としてショウガの100%は、粉末の形態であってもよい。好ましい実施形態において、ショウガの総質量を基準としてショウガの少なくとも85%、90%又は95%は、770μmの目開きを有する篩を通過する粉末の形態である。好ましい実施形態において、ショウガの総質量を基準としてショウガの100%は、770μmの目開きを有する篩を通過する粉末の形態である。
【0034】
ショウガは、乾燥ショウガであってもよい。ショウガの含水率は、20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下又は12質量%以下であってもよい。ショウガの含水率の下限は、0質量%又は5質量%であってもよい。例えば、ショウガの含水率は、0質量%~20質量%の範囲内であってもよい。ショウガの含水率は、既述の花椒の含水率の測定方法と同じ方法によって測定される。
【0035】
好ましい実施形態において、花椒の総質量に対するショウガの総質量の比率は、30質量%~100質量%の範囲内である。上記比率を30質量%~100質量%の範囲内に設定することは、花椒の香りを更に強化できる。上記範囲内での上記比率の増加は、花椒の香りを強化しつつ、花椒由来の苦味及び渋味を低減できる。上記範囲内での上記比率の減少は、花椒の香りを強化しつつ、ショウガ自体の香りを相対的に弱くし、結果的に、花椒の香りを強調できる。上記比率の下限は、好ましくは33質量%、より好ましくは35質量%である。上記比率の上限は、好ましくは70質量%、より好ましくは60質量%、更に好ましくは50質量%である。
【0036】
好ましい実施形態において、調味料組成物の総質量に対するショウガの総質量の比率は、0.2質量%~34質量%の範囲内である。上記比率を0.2質量%~34質量%の範囲内に設定することは、花椒の香りを強調できる。上記比率の下限は、0.5質量%、0.6質量%又は0.7質量%であってもよい。上記比率の上限は、10質量%、5質量%又は2質量%であってもよい。
【0037】
鶏卵の存在下で花椒の特徴的な香りが得られる限り、調味料組成物は、ショウガに加えて、又はショウガの代わりに、ショウガ抽出物を含んでもよい。抽出方法の例は、溶剤抽出法、水蒸気蒸留法及び超臨界抽出方法を含む。調味料組成物がショウガ及びショウガ抽出物を含む場合、本開示における「ショウガの総質量」は、適宜、「ショウガの総質量とショウガ抽出物の原料換算の総質量との合計」に読み替えられてもよい。「ショウガ抽出物の原料換算の総質量」は、対象のショウガ抽出物を得るために抽出に使用されるショウガの総質量を意味する。調味料組成物がショウガの代わりにショウガ抽出物を含む場合、本開示における「ショウガの総質量」は、「ショウガ抽出物の原料換算の総質量」に読み替えられる。ショウガ抽出物と比べて、ショウガ粉末は一般的に安価であり、鶏卵に対してより多くのショウガ粉末が使用可能である。したがって、ショウガ粉末は、鶏卵の存在下で、ショウガ抽出物よりも均一に花椒の香りを強化できる。調味料組成物は、ショウガ抽出物を含まない調味料組成物であってもよい。
【0038】
(他の成分)
調味料組成物は、必要に応じて他の成分を更に含んでもよい。他の成分の例は、食塩、旨味調味料(例えば、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウム)、肉エキス(例えば、ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキス、カツオエキス、ホタテエキス及びカキエキス)、各種出汁(例えば、魚節、煮干し、貝、昆布及び椎茸)、デンプン(例えば、α化デンプン及びα化加工デンプン)、クリーミングパウダー、唐辛子、野菜(例えば、ローストオニオンパウダー及び白菜エキス)、甘味成分(例えば、ショ糖及びグリシン)、酵母エキス、味噌及び香料を含む。他の成分は、公知の調味料の成分から選択されてもよい。
【0039】
(形態)
好ましい実施形態において、調味料組成物は、粉末の形態である。好ましい実施形態において、調味料組成物は、1000μmの目開きを有する篩を通過する粉末の形態である。調味料組成物の形態は、粉末に制限されない。調味料組成物は、ペーストの形態であってもよい。調味料組成物は、液体に溶解又は分散されてもよい。液体の例は、食用油を含む。
【0040】
(製造方法)
目的の調味料組成物が得られる限り、調味料組成物の製造方法は制限されない。例えば、調味料組成物は、花椒と、八角とを混ぜることによって得られる。得られた調味料組成物は、容器に密封されてもよい。容器の例は、パウチ、缶及び瓶を含む。
【0041】
(用途)
調味料組成物は、鶏卵と共に食材に風味を付与するために使用される。具体的に、本開示は、鶏卵と共に食材に風味を付与するための調味料組成物の使用も提供する。
【0042】
好ましい実施形態において、調味料組成物は、鶏卵の総質量に対する花椒の総質量の比率が0.4質量%~2質量%の範囲内となるように鶏卵に対して使用される。上記比率を0.4質量%以上に設定することは、花椒の香りを更に強調できる。上記比率を2質量%以下に設定することは、花椒由来の苦味及び渋味を低減できる。上記比率の下限は、好ましくは0.5質量%である。上記比率の上限は、好ましくは1.5質量%、より好ましくは1質量%、更に好ましくは0.8質量%である。上記比率が特定の値となるように調味料組成物を使用する方法の例は、(1)調味料組成物中の花椒の含有量を調整すること、及び(2)鶏卵に対する調味料組成物の使用量を調整することを含む。
【0043】
好ましい実施形態において、調味料組成物が食塩を含む場合、調味料組成物は、鶏卵の総質量に対する食塩の総質量の比率が0.08質量%~5質量%の範囲内となるように鶏卵に対して使用される。上記比率を0.08質量%~5質量%の範囲内に設定することは、香辛料及び鶏卵の風味をはっきりとさせ、花椒の香りの強化を認識する補助となる。上記比率の下限は、好ましくは0.12質量%、より好ましくは0.16質量%、更に好ましくは0.2質量%である。上記比率の上限は、好ましくは4.6質量%、より好ましくは4.2質量%、更に好ましくは4質量%である。
【0044】
鶏卵は、全卵、卵黄及び卵白からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。好ましい実施形態において、鶏卵は全卵である。全卵は、卵黄及び卵白から構成される。鶏卵は、卵黄又は卵白であってもよい。鶏卵は、生の鶏卵であってもよい。鶏卵は、加熱された鶏卵であってもよい。
【0045】
食材の例は、麺、米、野菜、豆腐、パン、挽肉、オートミール及び納豆を含む。1種類又は2種類以上の食材が使用されてもよい。好ましい実施形態において、食材は、麺、米、野菜、豆腐、パン、挽肉、オートミール及び納豆からなる群から選択される少なくとも1つを含む。好ましい実施形態において、食材は麺を含む。麺の例は、うどん、中華麺、パスタ、そば、そうめん、米粉麺(例えば、フォー及びビーフン)及び大豆麺を含む。
【0046】
調味料組成物は、鶏卵を用いる食品の製造方法に使用されてもよい。例えば、食品の製造方法は、調味料組成物と、鶏卵と、食材とを混ぜることを含む。各材料の添加順序は、制限されない。例えば、鶏卵、次に調味料組成物が食材に添加されてもよい。好ましい実施形態において、調味料組成物と、鶏卵と、食材とを混ぜることは、鶏卵の総質量に対する花椒の総質量の比率が0.4質量%~2質量%の範囲内となるように調味料組成物を使用することを含む。鶏卵の総質量に対する花椒の総質量の更に好ましい比率は、既述のとおりである。
【0047】
食品の製造方法は、調味料組成物と、鶏卵と、食材と、を含む混合物を加熱することを更に含んでもよい。目的の食品が得られる限り、加熱方法及び加熱条件は制限されない。混合物は、電子レンジで加熱されてもよい。電子レンジの出力は、500W~1500Wの範囲内であってもよい。電子レンジによる加熱時間は、10秒~60秒の範囲内であってもよい。
【0048】
食品の例は、まぜ麺、卵かけご飯、オムレツ、卵焼き、スクランブルエッグ、フレンチトースト、チャーハン、カレーライス、麻婆豆腐、麻婆茄子、麻辣火鍋、麻辣臭豆腐、麻辣麺及び麻辣湯を含む。
【実施例0049】
以下、実施例に基づいて本開示を説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に制限されない。下記の技術的事項は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更されてもよい。
【0050】
<材料>
実施例又は比較例で使用される下記材料は、次の特徴を有する。
「花椒」:青花椒の実及び紅花椒の実(青花椒:紅花椒(質量比)=81:19)、乾燥粉末(980μmの目開きを有する篩を通過する粉末の割合:100質量%)
「八角」:乾燥粉末(600μmの目開きを有する篩を通過する粉末の割合:100質量%)
「ローレル」:乾燥粉末(355μmの目開きを有する篩を通過する粉末の割合:100質量%)
「ショウガ」:乾燥粉末(770μmの目開きを有する篩を粉末の割合:95質量%)
【0051】
<実施例E1~E11及び比較例C1~C5>
表1及び表2に記載された成分を含む調味料組成物を準備した。調味料組成物は、1000μmの目開きを有する篩を通過する粉末の形態である。鶏卵として、50gの全卵を準備した。全卵は、卵黄及び卵白から構成される。表1及び表2に記載された混合比に従って、調味料組成物及び全卵を混ぜて、混合物を得た。表1及び表2に記載された混合比は、全卵の総質量と、全卵と混ぜられる調味料組成物中の特定成分の総質量との関係を表す。
【0052】
以下の基準に従って、5人の評価者によって混合物の官能評価を実施した。以下の基準において、3、4又は5が合格水準である。官能評価の結果の平均値を四捨五入した値を、表1及び表2に示す。
【0053】
(花椒の香り)
5:強い香り
4:やや強い香り
3:やや弱い香り
2:弱くて不十分な香り
1:香りなし
【0054】
(花椒の苦味)
5:苦味なし
3:許容できる苦味
1:強くて許容できない苦味
【0055】
(花椒の香りと他の香辛料の香りとの比較)
5:他の香辛料の香りを実質的に感じず、花椒の香りを感じる。
4:他の香辛料の香りをほとんど感じず、花椒の香りを感じる。
3:他の香辛料の香りを感じるが、花椒の香りをより強く感じる。
2:花椒の香りを感じるが、他の香辛料の香りをより強く感じる。
1:花椒の香りを実質的に感じず、他の香辛料の香りを感じる。
【0056】
(花椒の風味の総合評価)
5:大変好ましい
4:好ましい
3:許容できる
2:やや好ましくない
1:好ましくない
【0057】
【0058】
実施例E1~E4及び比較例C1~C3は、花椒を含む調味料組成物に関連する。比較例C1及びC2と比較して、実施例E1~E4は、鶏卵の存在下で強い花椒の香りを示した。八角を使用せず、多くの花椒を使用した比較例C3は、鶏卵の存在下で強い花椒の香りを示したが、強い花椒の苦味を示した。比較例C3と比較して、実施例E1~E4は、全卵に対する花椒の使用量が少ないにもかかわらず鶏卵の存在下で花椒の香りを示しつつ、花椒の苦味を低減した。さらに、実施例E1~E4は、鶏卵由来の好ましくない風味も低減した。
【0059】
【0060】
比較例C4及びC5と比較して、実施例E5~E11は、鶏卵の存在下で強い花椒の香りを示した。さらに、実施例E5~E11は、鶏卵由来の好ましくない風味も低減した。
【0061】
<実施例E12>
表3に記載された成分を含む調味料組成物を準備した。調味料組成物は、1000μmの目開きを有する篩を通過する粉末の形態である。
【0062】
【0063】
調味料組成物において、花椒の総質量に対する八角の総質量の比率は、2質量%である。花椒の総質量に対するローレルの総質量の比率は、2質量%である。花椒の総質量に対するショウガの総質量の比率は、40質量%である。
【0064】
鶏卵として、50gの全卵を準備した。中華麺(太麺)を茹でて、よく水を切って、一食分(約130g)の中華麺を準備した。調味料組成物及び全卵を一食分(約130g)の中華麺に添加し、次によく混ぜた。具体的に、全卵の総質量に対する花椒の総質量の比率が0.6質量%となるように調味料組成物を使用した。得られた食品は、花椒の強い香りを有し、辛味のある濃厚な風味であった。