(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128847
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】マルチ2次電子ビームの位置合わせ方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/22 20060101AFI20240913BHJP
H01J 37/04 20060101ALI20240913BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240913BHJP
G03F 1/86 20120101ALI20240913BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/04 B
H01J37/28 B
G03F1/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038101
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】石井 浩一
(72)【発明者】
【氏名】三上 翔平
【テーマコード(参考)】
2H195
5C101
【Fターム(参考)】
2H195BD04
2H195BD14
5C101AA03
5C101EE03
5C101EE53
5C101FF02
5C101GG37
5C101HH03
5C101HH11
5C101HH21
5C101HH23
5C101HH25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コーナービームが写っている画像の情報の他にコーナービームが写っていない画像の情報も利用してマルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの全体の位置合わせが可能な手法を提供する。
【解決手段】手法は、コーナービームが存在するエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する工程と、ビーム番号が付与されたコーナービームが存在するエレメント画像を用いて隣接する検出エレメントによって得られたコーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する工程と、画像内の各ビームにビーム番号が付与されたコーナービームの存在が不明だったエレメント画像を用いてコーナービームの存在が不明だったエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する工程と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ上の対象物面から放出されるマルチ2次電子ビームで、マルチ検出器の格子状に配列された複数の検出エレメント上を走査する工程と、
前記複数の検出エレメントで前記マルチ2次電子ビームを検出する工程と、
前記複数の検出エレメントの検出信号に基づいて得られる複数のエレメント画像のエレメント画像毎に、当該エレメント画像内の複数のビームの座標を算出する工程と、
前記エレメント画像毎に、当該エレメント画像内の複数のビームの各ビームに対して前記マルチ2次電子ビームのコーナーに位置するコーナービームかどうかを判定する工程と、
前記コーナービームが存在するエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する工程と、
画像内の各ビームにビーム番号が付与された、前記コーナービームが存在するエレメント画像を用いて、前記コーナービームが存在するエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られた前記コーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する工程と、
画像内の各ビームにビーム番号が付与された、前記コーナービームの存在が不明だったエレメント画像を用いて、前記コーナービームの存在が不明だったエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られた前記コーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する工程と、
前記座標と前記ビーム番号とが得られた前記コーナービームが存在する前記エレメント画像と前記コーナービームの存在が不明だった前記エレメント画像を用いて、前記マルチ2次電子ビームと前記複数の検出エレメントとの全体位置関係を算出する工程と、
前記全体位置関係に基づいて、前記複数の検出エレメントと前記マルチ2次電子ビームとを位置合わせするように、前記マルチ検出器を前記マルチ2次電子ビームに対して相対的に移動させる工程と、
を備えたことを特徴とするマルチ2次電子ビームの位置合わせ方法。
【請求項2】
前記コーナービームが存在する前記エレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、
前記複数の検出エレメントと前記マルチ2次電子ビームとの設計上の位置関係を定義した位置関係テーブルを用いて、前記コーナービームにビーム番号を付与し、
前記位置関係テーブルを用いて、前記コーナービームに隣接する2つのビームにビーム番号を付与し、
前記コーナービームに付与されたビーム番号と前記コーナービームに隣接する2つのビームに付与されたビーム番号とに基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する、
ことを特徴とする請求項1記載のマルチ2次電子ビームの位置合わせ方法。
【請求項3】
前記コーナービームが存在する前記エレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られた前記コーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、
隣接する検出エレメントのエレメント画像同士の組み合わせ毎に、前記複数の検出エレメントの配置角度を可変にして得られたエレメント画像同士間のビームアレイの相対回転角度と平行移動距離とが定義された隣接画像関係テーブルを用いて、画像内の各ビームにビーム番号が付与された前記コーナービームが存在するエレメント画像と共通する共通ビームにビーム番号を付与し、
前記共通ビームに付与されたビーム番号に基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のマルチ2次電子ビームの位置合わせ方法。
【請求項4】
前記コーナービームの存在が不明だった前記エレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られた前記コーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、
前記隣接画像関係テーブルを用いて、画像内の各ビームにビーム番号が付与された前記コーナービームの存在が不明だったエレメント画像と共通する共通ビームにビーム番号を付与し、
前記共通ビームに付与されたビーム番号に基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する、
ことを特徴とする請求項3記載のマルチ2次電子ビームの位置合わせ方法。
【請求項5】
前記コーナービームが存在する前記エレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られた前記コーナービーム存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、
当該エレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、前記コーナービームが存在するエレメント画像を含む、画像内の各ビームにビーム番号が付与された3つのエレメント画像を用いて、共通する共通ビームにビーム番号を付与し、
前記共通ビームに付与されたビーム番号に基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のマルチ2次電子ビームの位置合わせ方法。
【請求項6】
前記コーナービーム存在が不明だった前記エレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られた前記コーナービーム存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、
当該エレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、前記コーナービームの存在が不明だったエレメント画像を含む、画像内の各ビームにビーム番号が付与された3つのエレメント画像を用いて、共通する共通ビームにビーム番号を付与し、
前記共通ビームに付与されたビーム番号に基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する、
ことを特徴とする請求項5記載のマルチ2次電子ビームの位置合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ2次電子ビームの位置合わせ方法に関し、例えば、マルチ1次電子ビームを基板に照射して、基板から放出されるマルチ2次電子ビームを検出して画像を得る手法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになっている。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。その他、歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクのパターンの画像を例えば電子ビームを使って取得し、得られた画像を用いて転写用マスクの欠陥が検査される。
【0003】
例えば、電子ビームを使ったマルチビームを検査対象基板に照射して、検査対象基板から放出される各ビームに対応する2次電子を検出して、パターン画像を撮像する。そして撮像された測定画像と、設計データ、あるいは基板上の同一パターンを撮像した測定画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。
【0004】
マルチビームで各ビーム画像を同時に取得する装置では、マルチ2次電子ビームと2次電子検出器の複数の検出エレメントとの位置合わせが重要となる。そのためには、まず、マルチ2次電子ビームの4隅のコーナービームを特定することが求められる。そして、コーナービームが画像内に存在するコーナー部の検出エレメントの画像とコーナー部のビーム群との位置関係を使って、マルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの全体の位置関係を算出し、かかる全体位置関係に基づいてマルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの全体の位置合わせを行う(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上述した手法ではコーナービームが写っていない画像の情報は使用していない。そのため、コーナービームが写っていない画像の情報も併せて利用する場合に比べて、情報量が少なく位置合わせ精度が低くなってしまうといった問題があった。今後、ビーム数が増加すると、使用する情報量の割合がさらに少なくなり、位置合わせ精度がさらに低くなってしまう。よって、マルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの位置合わせに、コーナービームが写っていない画像の情報も併せて利用することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、コーナービームが写っている画像の情報の他にコーナービームが写っていない画像の情報も利用して、マルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの全体の位置合わせが可能な手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のマルチ2次電子ビームの位置合わせ方法は、
ステージ上の対象物面から放出されるマルチ2次電子ビームで、マルチ検出器の格子状に配列された複数の検出エレメント上を走査する工程と、
複数の検出エレメントでマルチ2次電子ビームを検出する工程と、
複数の検出エレメントの検出信号に基づいて得られる複数のエレメント画像のエレメント画像毎に、当該エレメント画像内の複数のビームの座標を算出する工程と、
エレメント画像毎に、当該エレメント画像内の複数のビームの各ビームに対してマルチ2次電子ビームのコーナーに位置するコーナービームかどうかを判定する工程と、
コーナービームが存在するエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する工程と、
画像内の各ビームにビーム番号が付与された、コーナービームが存在するエレメント画像を用いて、コーナービームが存在するエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する工程と、
画像内の各ビームにビーム番号が付与された、コーナービームの存在が不明だったエレメント画像を用いて、コーナービームの存在が不明だったエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する工程と、
座標とビーム番号とが得られたコーナービームが存在するエレメント画像とコーナービームの存在が不明だったエレメント画像を用いて、マルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの全体位置関係を算出する工程と、
全体位置関係に基づいて、複数の検出エレメントとマルチ2次電子ビームとを位置合わせするように、マルチ検出器をマルチ2次電子ビームに対して相対的に移動させる工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、コーナービームが存在するエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、
複数の検出エレメントとマルチ2次電子ビームとの設計上の位置関係を定義した位置関係テーブルを用いて、コーナービームにビーム番号を付与し、
位置関係テーブルを用いて、コーナービームに隣接する2つのビームにビーム番号を付与し、
コーナービームに付与されたビーム番号とコーナービームに隣接する2つのビームに付与されたビーム番号とに基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する、と好適である。
【0010】
また、コーナービームが存在するエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、
隣接する検出エレメントのエレメント画像同士の組み合わせ毎に、前記複数の検出エレメントの配置角度を可変にして得られたエレメント画像同士間のビームアレイの相対回転角度と平行移動距離とが定義された隣接画像関係テーブルを用いて、画像内の各ビームにビーム番号が付与されたコーナービームが存在するエレメント画像と共通する共通ビームにビーム番号を付与し、
共通ビームに付与されたビーム番号に基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する、と好適である。
【0011】
また、コーナービームの存在が不明だったエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、
上述した隣接画像関係テーブルを用いて、画像内の各ビームにビーム番号が付与されたコーナービームの存在が不明だったエレメント画像と共通する共通ビームにビーム番号を付与し、
共通ビームに付与されたビーム番号に基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する、と好適である。
【0012】
或いは、コーナービームが存在するエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービーム存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、
当該エレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、コーナービームが存在するエレメント画像を含む、画像内の各ビームにビーム番号が付与された3つのエレメント画像を用いて、共通する共通ビームにビーム番号を付与し、
共通ビームに付与されたビーム番号に基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する、と好適である。
【0013】
或いは、コーナービーム存在が不明だったエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービーム存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、
当該エレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、コーナービームの存在が不明だったエレメント画像を含む、画像内の各ビームにビーム番号が付与された3つのエレメント画像を用いて、共通する共通ビームにビーム番号を付与し、
共通ビームに付与されたビーム番号に基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する、と好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、コーナービームが写っている画像の情報の他にコーナービームが写っていない画像の情報も利用して、マルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの全体の位置合わせができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1における検査装置の構成を示す構成図である。
【
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
【
図3】実施の形態1における検出画像の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1における検出画像の他の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1における検査方法の一例の要部工程を示すフローチャート図である。
【
図6】実施の形態1における2次電子ビームアレイの一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1における位置合わせ回路の内部構成の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1におけるエレメント画像の一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1におけるエレメント画像内のビームアレイの一例を示す図である。
【
図10】実施の形態1におけるコーナービームが存在するエレメント画像のナンバリング処理(1)工程の内部工程の一例を示す図である。
【
図11】実施の形態1におけるマルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの対応関係の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1におけるコーナービームのビーム番号が付与された後のエレメント画像内のビームアレイの一例を示す図である。
【
図13】実施の形態1における2つの近傍ビームのビーム番号が付与された後のエレメント画像内のビームアレイの一例を示す図である。
【
図14】実施の形態1におけるビーム番号が付与されたエレメント画像内のビームアレイの一例を示す図である。
【
図15】実施の形態1におけるナンバリング処理(2)工程の内部工程の一例を示すフローチャート図である。
【
図16】実施の形態1における隣接画像間のビームアレイの相対回転角度の一例と平行移動距離との一例を示す図である。
【
図17】実施の形態1における隣接画像関係テーブルの一例を示す図である。
【
図18】実施の形態1における推定座標系変換を説明するための図である。
【
図19】実施の形態1における共通ビームがナンバリングされたコーナービーム不明画像内のビームアレイの一例を示す図である。
【
図20】実施の形態1におけるナンバリングが終了したコーナービーム不明画像内のビームアレイの一例を示す図である。
【
図21】実施の形態1の変形例におけるナンバリング処理(2)の一例及びナンバリング処理(3)の一例の内部工程を示すフローチャート図である。
【
図22】実施の形態1の変形例における位置合わせ回路の内部構成の一例を示す図である。
【
図23】実施の形態1の変形例における座標変換を説明するための図である。
【
図24】実施の形態1における全体位置関係の一例を示す図である。
【
図25】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
【
図26】実施の形態1における検査処理を説明するための図である。
【
図27】実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態では、マルチビーム画像取得装置の一例として、マルチ電子ビームを用いた検査装置について説明する。但し、これに限るものではない。マルチ1次電子ビームで基板を照射して、基板から放出されるマルチ2次電子ビームをマルチ検出器で検出する装置であればよい。
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における検査装置の構成を示す構成図である。
図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。また、検査装置100は、マルチビーム画像取得装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)及び検査室103を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、偏向器208、偏向器209、E×B分離器214(ビームセパレーター)、偏向器218、偏向器226、電磁レンズ224、検出器ステージ229、検出器アパーチャアレイ基板225、及びマルチ検出器222が配置されている。電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、偏向器208、及び偏向器209によって1次電子光学系151(照明光学系)を構成する。また、電磁レンズ207、E×B分離器214、偏向器218、偏向器226、及び電磁レンズ224によって2次電子光学系152(検出光学系)を構成する。マルチ検出器222は、2次座標系のx,y方向及び回転(θ)方向に移動可能な検出器ステージ229上に配置される。検出器ステージ229は、2次座標系の回転ステージ227、及び2次座標系のx,yステージ228を有している。
【0018】
検査室103内には、少なくともXY方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。また、ステージ105上には、基板101表面と高さ位置を合わせたマーク部材111が配置される。マーク部材111は、一度にマルチ1次電子ビーム20の照射を受けることが可能な領域サイズに形成される。マーク部材111の表面には、複数のマークパターン、例えば、複数の十字パターンが形成される。或いは、マーク部材111は、パターンが形成されずに、マルチ1次電子ビーム20の照射を受けて単にマルチ2次電子ビーム300を放出する反射板として機能しても構わない。
【0019】
また、マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0020】
マルチ検出器222は、アレイ状(格子状)に配置される複数の検出エレメントを有する。検出器アパーチャアレイ基板225には、複数の検出エレメントの配列ピッチで複数の開口部が形成される。複数の開口部は、例えば、円形に形成される。各開口部の中心位置は、対応する検出エレメントの中心位置に合わせて形成される。また、開口部のサイズは、検出エレメントの電子検出面の領域サイズよりも小さく形成される。
【0021】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、検出器ステージ制御回路130、E×B制御回路133、位置合わせ回路134、磁気ディスク装置等の記憶装置109、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,149、及び電源(VPS)148に接続される。DACアンプ146は、偏向器208に接続され、DACアンプ144は、偏向器209に接続される。電源148は、偏向器218に接続される。DACアンプ149は、偏向器226に接続される。
【0022】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108と位置合わせ回路134とに接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYθ方向にステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビーム20の光軸に直交する面に対して、1次座標系のX方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0023】
検出器ステージ229は、検出器ステージ制御回路130の制御の下に駆動機構132により駆動される。駆動機構132では、例えば、ステージ座標系におけるx方向、y方向、θ方向に駆動する3軸(x-y-θ)モータの様な駆動系が構成され、x、y方向にx,yステージ228が、θ方法に回転ステージ227が移動可能となっている。
図1の例では、回転ステージ227上にx,yステージ228が配置される場合を示している。これらの、図示しないxモータ、yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。検出器ステージ229は、xyθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。ステージ座標系は、例えば、マルチ2次電子ビーム300の光軸に直交する面に対して、2次座標系のx方向、y方向、θ方向が設定される。或いは、検出器ステージ229の移動の代わりに、例えばアライメントコイルを配置して光学的にマルチ2次電子ビーム300を移動して、マルチ2次電子ビーム300とマルチ検出器222との相対位置を調整しても良い。
【0024】
電磁レンズ202、電磁レンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ207、及び電磁レンズ224は、レンズ制御回路124により制御される。E×B分離器214は、E×B制御回路133により制御される。また、一括偏向器212は、2極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。偏向器209は、4極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器208は、4極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。また、偏向器226は、4極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎にDACアンプ149を介して偏向制御回路128により制御される。
【0025】
偏向器218(ベンダー)は、例えば、円弧状に曲がった筒状に形成された対向する複数の電極により構成され、各電極の電位は電源148を介して偏向制御回路128により制御される。或いは、偏向器218は、2極以上の平板電極により構成され、各電極の電位は電源148を介して偏向制御回路128により制御されるようにしても良い。
【0026】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメント(カソード)と引出電極(アノード)間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、別の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0027】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0028】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m
1列×縦(y方向)n
1段(m
1,n
1は2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。
図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。次に、2次電子画像を取得する場合における画像取得機構150の動作について説明する。1次電子光学系151は、基板101をマルチ1次電子ビーム20で照射する。具体的には、以下のように動作する。
【0029】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、
図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0030】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの中間像面に配置されたE×B分離器214を通過して電磁レンズ207(対物レンズ)に進む。
【0031】
マルチ1次電子ビーム20が電磁レンズ207(対物レンズ)に入射すると、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101にフォーカスする。対物レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)たマルチ1次電子ビーム20は、偏向器208及び偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。なお、一括ブランキング偏向器212によって、マルチ1次電子ビーム20全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板213の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板213によってマルチ1次電子ビーム20全体が遮蔽される。一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチ1次電子ビーム20は、
図1に示すように制限アパーチャ基板213の中心の穴を通過する。かかる一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。このように、制限アパーチャ基板213は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチ1次電子ビーム20を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板213を通過したビーム群により、画像取得用のマルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0032】
基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。
【0033】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207を通って、E×B分離器214に進む。E×B分離器214は、コイルを用いた2極以上の複数の磁極と、2極以上の複数の電極とを有する。例えば、90°ずつ位相をずらした4極の磁極(電磁偏向コイル)と、同じく90°ずつ位相をずらした4極の電極(静電偏向電極)とを有する。そして、例えば対向する2極の磁極をN極とS極とに設定することで、かかる複数の磁極によって指向性の磁界を発生させる。同様に、例えば対向する2極の電極に符号が逆の電位Vを印加することで、かかる複数の電極によって指向性の電界を発生させる。具体的には、E×B分離器214は、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(軌道中心軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。E×B分離器214に上側から侵入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、E×B分離器214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離する。
【0034】
斜め上方に曲げられたマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって、さらに曲げられ、電磁レンズ224によって、屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、検出器アパーチャアレイ基板225の開口部を通過して投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、マルチ検出器222の検出面において、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子ビームに対応する検出エレメントに衝突して、電子を増幅発生させ、2次電子画像データを画素毎に生成する。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。各1次電子ビームは、基板101上における自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域内に照射され、当該サブ照射領域内を走査(スキャン動作)する。
【0035】
2次電子画像の取得は、上述したように、マルチ1次電子ビーム20で基板101を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222で検出する。検出されるマルチ2次電子ビーム300には、反射電子が含まれていても構わない。或いは、反射電子は、2次電子光学系152を移動中に分離され、マルチ検出器222まで到達しない場合であっても構わない。マルチ検出器222によって検出された各1次電子ビームの個別照射領域(サブ照射領域)内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた2次電子画像データ(2次電子画像1のデータ)は、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に出力される。
【0036】
各1次電子ビームのサブ照射領域内の画像を得るためには、各1次電子ビームに対応する2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出エレメントで検出する必要がある。よって、マルチ1次電子ビーム20に対応するマルチ2次電子ビーム300とマルチ検出器222の複数の検出エレメントとの位置合わせが必要となる。
【0037】
図3は、実施の形態1における検出画像の一例を示す図である。
図4は、実施の形態1における検出画像の他の一例を示す図である。
得られた画像におけるビームの位置関係は様々なケースが存在する。例えば、
図3の例では、ある検出エレメントの画像に、例えば、9つのビームが映っている場合を示している。
図3の例では、左上の角のビームについて、上下左右に隣接する4つのビームのうち、下隣のビームと右隣のビームが存在し、上隣のビームと左隣のビームが存在しない。よって、かかるビームはコーナービームであることがわかる。一方、
図4の例では、ある検出エレメントの画像に、例えば、6つのビームが映っている場合を示している。しかし、
図4の例では、コーナービームの存在が確認できない。
【0038】
ここで、上述したように、従来、コーナービームが映っている複数の検出エレメントの画像の各検出エレメントと各コーナー部のビーム群との位置関係を使って、マルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの全体の位置関係を算出していた。
【0039】
しかしながら、上述した手法ではコーナービームが写っていない画像の情報は使用できない。将来的に、ビーム本数は増える方向にあり、コーナービームが映らない画像の割合が増えることになる。そのため、コーナービームが写っていない画像の情報も併せて利用する場合に比べて、情報量が少なく位置合わせ精度が低くなってしまうといった問題があった。マルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの位置合わせ精度を向上させるためには、コーナービームが写っていない画像の情報も併せて利用することが求められる。そこで、実施の形態1では、コーナービームが写っていない画像についても、画像内のビームがどのビームなのかを特定し、マルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの全体の位置関係の算出に利用する。以下、具体的に説明する。
【0040】
図5は、実施の形態1における検査方法の一例の要部工程を示すフローチャート図である。
図5において、実施の形態1における検査方法は、マルチ2次ビームスキャン及び画像取得工程(S102)と、ビーム座標取得工程(S104)と、コーナービーム判定工程(S106)と、判定工程(S108)と、ナンバリング処理(1)工程(S110)と、判定工程(S120)と、判定工程(S122)と、ナンバリング処理(2)工程(S130)と、判定工程(S139)と、ナンバリング処理(3)工程(S140)と、全体位置関係特定工程(S150)と、位置合わせ工程(S152)と、検査処理工程(S160)と、いう一連の工程を実施する。
【0041】
かかる一連の工程のうち、実施の形態1における位置合わせ方法として、マルチ2次ビームスキャン及び画像取得工程(S102)と、ビーム座標取得工程(S104)と、コーナービーム判定工程(S106)と、判定工程(S108)と、ナンバリング処理(1)工程(S110)と、判定工程(S120)と、判定工程(S122)と、ナンバリング処理(2)工程(S130)と、判定工程(S139)と、ナンバリング処理(3)工程(S140)と、全体位置関係特定工程(S150)と、位置合わせ工程(S152)と、を実施する。
【0042】
マルチ2次ビームスキャン及び画像取得工程(S102)として、ステージ105上の対象物面から放出されるマルチ2次電子ビーム300で、マルチ検出器222の格子状に配列された複数の検出エレメント上を走査する。マルチ2次電子ビーム300を放出する対象物として、例えば、マーク部材111、或いは、マルチ2次電子ビーム300の位置合わせ用の評価基板等が挙げられる。具体的には以下のように動作する。画像取得機構150は、マルチ1次電子ビーム20を停止した状態のステージ105上に照射する。その際、偏向器208及び偏向器209は、マルチ1次電子ビーム20の中心をマルチ1次電子ビームの軌道中心軸の位置に合わせる。偏向しなくてもマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に位置する場合には偏向無しでも良い。これにより、各1次電子ビームは、各自の1次電子ビームの走査範囲のスキャン中心位置に連続照射されることになる。
【0043】
そして、偏向器226(2次系偏向器)は、マルチ1次電子ビーム20の照射によって例えばマーク部材111の表面から放出されるマルチ2次電子ビーム300でマルチ検出器222の複数の検出エレメント上を走査する。具体的には以下のように動作する。マーク部材111から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、2次電子光学系152により検出器アパーチャアレイ基板225を介してマルチ検出器222に投影される。かかる状態で偏向器226によってマルチ2次電子ビーム300に対して予め設定された2次ビーム走査範囲のスキャン動作を行う。
【0044】
マルチ検出器222は、マーク部材111をマルチ1次電子ビーム20で照射することによってマーク部材111から放出されたマルチ2次電子ビーム300を検出し、検出された画像データを出力する。言い換えれば、マルチ検出器222は、格子状に配列された複数の検出エレメントでマルチ2次電子ビーム300を検出する。これにより、各検出エレメントでは、検出器アパーチャアレイ基板225のアパーチャ像が撮像される。
【0045】
図6は、実施の形態1における2次電子ビームアレイの一例を示す図である。
図6の例では、例えば、5×5本のマルチ2次電子ビーム300が示されている。偏向器226でマルチ2次電子ビーム300を一括走査する場合に、
図6に示すようにマルチ2次電子ビーム300のビーム間ピッチPの4倍以上の走査範囲(スキャン範囲)を走査する。
図6では、実線で、左コーナービームを中心に見たときマルチ2次電子ビーム300のビーム間ピッチPの4倍のスキャン範囲を示す。これにより、マルチ2次電子ビーム300をスキャンした場合に、各スキャン範囲内に少なくとも2×2のビーム群を含めることができる。よって、各検出エレメントでは、少なくとも2×2のビーム群を撮像できる。
【0046】
図7は、実施の形態1における位置合わせ回路の内部構成の一例を示す図である。
図7において、位置合わせ回路134内には、磁気ディスク装置等の記憶装置61,62、ビーム座標取得部63、コーナービーム判定部64、判定部65,66,67,68、コーナービーム有画像ナンバリング処理部70、コーナービーム不明画像ナンバリング処理部80、全体位置関係特定部90、位置合わせパラメータ算出部94、及び位置合わせ部96が配置される。
【0047】
また、コーナービーム有画像ナンバリング処理部70内には、コーナービームナンバリング処理部72、隣接ビームナンバリング処理部74、及び残ビームナンバリング処理部76が配置される。
【0048】
また、コーナービーム不明画像ナンバリング処理部80内には、角度算出部82、パラメータ取得部84、推定座標系変換部86、共通ビームナンバリング処理部88、及び非共通ビームナンバリング処理部89が配置される。
【0049】
ビーム座標取得部63、コーナービーム判定部64、判定部65,66,67,68、コーナービーム有画像ナンバリング処理部70(コーナービームナンバリング処理部72、隣接ビームナンバリング処理部74、及び残ビームナンバリング処理部76)、コーナービーム不明画像ナンバリング処理部80(角度算出部82、パラメータ取得部84、推定座標系変換部86、共通ビームナンバリング処理部88、及び非共通ビームナンバリング処理部89)、全体位置関係特定部90、位置合わせパラメータ算出部94、及び位置合わせ部96といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。ビーム座標取得部63、コーナービーム判定部64、判定部65,66,67,68、コーナービーム有画像ナンバリング処理部70(コーナービームナンバリング処理部72、隣接ビームナンバリング処理部74、及び残ビームナンバリング処理部76)、コーナービーム不明画像ナンバリング処理部80(角度算出部82、パラメータ取得部84、推定座標系変換部86、共通ビームナンバリング処理部88、及び非共通ビームナンバリング処理部89)、全体位置関係特定部90、位置合わせパラメータ算出部94、及び位置合わせ部96内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0050】
ビーム座標取得工程(S104)として、ビーム座標取得部63は、複数の検出エレメントの検出信号に基づいて得られる複数のエレメント画像のエレメント画像毎に、当該エレメント画像内の複数のビーム像(ビームとも言う。以下、同じ)の座標を算出する。
【0051】
図8は、実施の形態1におけるエレメント画像の一例を示す図である。マルチ検出器222には、マルチ2次電子ビーム300のビームアレイに対応する複数の検出エレメントが配置される。
図8の例では、5×5本のビームアレイで構成されるマルチ2次電子ビーム300に対応する5×5個の複数の検出エレメントPijが配置される場合を示している。iは2次ビーム座標系のx方向のインデックスを示し、jは、2次ビーム座標系のy方向のインデックスを示す。
図8の例では、マルチ2次ビームスキャン及び画像取得工程(S102)によって、2次電子ビームB15に対応する、検出エレメントP15で撮像されたエレメント画像の一例を示している。ビーム座標取得部63は、かかるエレメント画像に映るアパーチャ像(ビーム像)に正規化相関等のテンプレートマッチングや、2値化処理した後のブロブ解析等によって、ビーム像の重心位置を算出する。
【0052】
ここで、各検出エレメントPijの出力画像(エレメント画像)はマルチ2次ビーム300で複数の検出エレメント上をスキャンした時、画像内の各ビームのスキャン中心と検出エレメントPijとの位置関係を示すものであるから、逆に検出エレメントPijから見た時の当該エレメント画像内の各ビームの位置(座標)を求めることができる。検出画像の画像中心の位置は、対応する検出エレメントの位置である。かかる画像中心から各ビームまでの位置から各ビームの位置(座標)を求めることができる。或いは、画像の左上を座標(0,0)とした時、画像の左上から各ビームの重心位置までの画素数を求めることで座標を算出しても良い。
【0053】
各画像(検出エレメント)に対する各ビーム像の座標が分かれば、全体位置関係を特定することが可能とはなるが、できるだけ精度を高くすべく、実施の形態1ではすべてのビーム像のビーム番号を特定する。まずは、コーナービームから特定する。以下、具体的に説明する。
【0054】
コーナービーム判定工程(S106)として、コーナービーム判定部64は、エレメント画像毎に、当該エレメント画像内の複数のビームの各ビームに対してマルチ2次電子ビームのコーナーに位置するコーナービームかどうかを判定する。例えば、対象ビームの上下左右に隣接するはずの各ビームのうち、上下方向の一方と左右方向の一方だけが存在し、上下方向の他方と左右方向の他方が存在しないことが画像から見てすぐにわかる場合には、そのビームはコーナービームと判定できる。例えば、上述した
図8の例では、左上角に位置するビームの下方向と右方向にはそれぞれ隣接するビームが存在するが、上方向と左方向には共に隣接するビームが存在しない。よって、かかる左上角に位置するビームはコーナービームであると判定できる。
【0055】
しかし、対象のビームが画像の外周近くに映っている場合、直ちにコーナービームと判定しかねる場合もあり得る。
【0056】
図9は、実施の形態1におけるエレメント画像内のビームアレイの一例を示す図である。
図9の例では、検出エレメントP15のエレメント画像内のビームアレイの一例を示している。
図9において、対象ビーム13は、隣接する近傍ビームb1と近傍ビームb2は画像から把握できる。近傍ビームb1と近傍ビームb2は、対象ビーム13を通る直交する2方向の一方と他方に隣接する。そして、対象ビーム13と近傍ビームb2を結ぶ直線上において、近傍ビームb2とは反対側に隣接する近傍ビームb3が存在しないことがわかる。しかし、対象ビーム13と近傍ビームb1を結ぶ直線上において、近傍ビームb1とは反対側に隣接する近傍ビームb4の存在が画像外となるため不明である。よって、かかる対象ビーム13が直ちにコーナービームかどうかは判定できない。
【0057】
そこで、コーナービーム判定部64は、以下のルールに沿って対象とするビームがコーナービームかどうかを判定する。
(1)対象ビーム13を通る直交する2方向に隣接する4つの近傍ビームb1,b2,b3,b4のうち、隣合った2つの近傍ビームb1,b2が存在し、残りの2つの近傍ビームb3,b4が画像外或いは1つの近傍ビームは画像外でもう1つの近傍ビームは存在しないこと、
(2)対象ビーム13を最も近くで取り囲む8つの周囲ビームb1~b8のうち、画像内に存在する近傍ビームb1,b2に挟まれた周囲ビームb5は存在すること、
(3)画像内に存在する近傍ビームb1,b2について、対象ビーム13を最も近くで取り囲む8つの周囲ビームb1~b8のうち、近傍ビームb1,b2に挟まれた周囲ビームb5とは反対側に位置するビームb6,b7が存在しないこと、及び
(4)対象ビーム13を最も近くで取り囲む8つの周囲ビームb1~b8のうちの4つの近傍ビームb1,b2,b3,b4以外の周囲ビームb5,b6,b7,b8のうち、残りの周囲ビームb8が画像外であること。
【0058】
コーナービーム判定部64は、かかる(1)~(4)のすべてにて適合する対象ビームをコーナービームと判定する。
【0059】
このように、コーナービーム判定部64は、すべてのエレメント画像内のすべてのビーム像について、コーナービームかどうかを判定する。
【0060】
判定工程(S108)として、判定部65は、エレメント画像毎に、コーナービームが存在する画像かどうかを判定する。これにより、コーナービームが写っているエレメント画像(コーナービーム有画像)を特定できる。残りのエレメント画像は、コーナービームを特定できず、コーナービームが存在するかどうかが不明なコーナービーム不明画像となる。コーナービーム有画像は、ナンバリング処理(1)工程(S110)に進む。残りのコーナービーム不明画像は、判定工程(S120)に進む。
【0061】
ナンバリング処理(1)工程(S110)として、コーナービーム有画像ナンバリング処理部70は、コーナービームが存在するエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する。
【0062】
図10は、実施の形態1におけるコーナービームが存在するエレメント画像のナンバリング処理(1)工程の内部工程の一例を示す図である。
図10において、ナンバリング処理(1)工程(S110)は、コーナービームが存在するエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、その内部工程として、コーナービームナンバリング工程(S112)と、隣接ビームナンバリング工程(S114)と、残ビームナンバリング工程(S116)と、を実施する。
【0063】
コーナービームナンバリング工程(S112)として、コーナービームナンバリング処理部72は、複数の検出エレメントPijとマルチ2次電子ビームBijとの設計上の位置関係を定義した位置関係テーブルを用いて、コーナービームにビーム番号を付与(ナンバリング)する。
【0064】
図11は、実施の形態1におけるマルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの対応関係の一例を示す図である。
図11の例では、5×5本のビームアレイで構成されるマルチ2次電子ビームBijと対応する5×5個の複数の検出エレメントPijとの関係を示している。iは2次ビーム座標系のx方向のインデックスを示し、jは、2次ビーム座標系のy方向のインデックスを示す。マルチ2次ビームスキャン及び画像取得工程(S102)によって、各検出エレメントPijには、対応する2次電子ビームBijを含む複数のビームが撮像される。
図11の例では、例えば、検出エレメントP11には、2次電子ビームB11を含む複数のビームが撮像される。同様に、例えば、検出エレメントP15には、2次電子ビームB15を含む複数のビームが撮像される。同様に、例えば、検出エレメントP12には、2次電子ビームB12を含む複数のビームが撮像される。同様に、例えば、検出エレメントP33には、2次電子ビームB33を含む複数のビームが撮像される。
【0065】
かかる複数の検出エレメントPijとマルチ2次電子ビームBijとの設計上の位置関係を定義した位置関係テーブルは、予め、検査装置100外から入力され、記憶装置62に格納される。
【0066】
よって、コーナービームナンバリング処理部72は、記憶装置62に格納された位置関係テーブルを参照して、例えば、検出エレメントP15で撮像されたエレメント画像内で特定されたコーナービームに対して、ビーム番号B15をナンバリングする。例えば、検出エレメントP11で撮像されたエレメント画像内で特定されたコーナービームに対して、ビーム番号B11をナンバリングする。例えば、検出エレメントP51で撮像されたエレメント画像内で特定されたコーナービームに対して、ビーム番号B51をナンバリングする。例えば、検出エレメントP55で撮像されたエレメント画像内で特定されたコーナービームに対して、ビーム番号B55をナンバリングする。その他、コーナービームに対応する検出エレメントに隣接する検出エレメント等でもコーナービームが撮像され、その結果、コーナービームが特定される場合がある。かかるエレメント画像は、コーナービーム有画像となる。よって、例えば、検出エレメントP15に隣接する検出エレメントP14で撮像されたエレメント画像内でコーナービームが特定された場合には、特定されたコーナービームに対して、ビーム番号B15をナンバリングする。コーナービーム対応の検出エレメント以外の検出エレメントのエレメント画像でコーナービームが特定された場合は、コーナービームに対応する近傍の検出エレメントで撮像されるコーナービームのビーム番号を付与すればよい。
【0067】
隣接ビームナンバリング工程(S114)として、隣接ビームナンバリング処理部74は、位置関係テーブルを用いて、コーナービームに隣接する2つのビームにビーム番号を付与する。
【0068】
図12は、実施の形態1におけるコーナービームのビーム番号が付与された後のエレメント画像内のビームアレイの一例を示す図である。
図12の例では、検出エレメントP15のエレメント画像の一例が示されている。コーナービームと特定されたビームb0には、ビーム番号B15がナンバリングされている。ここで、位置関係テーブルに従うと、ビームB15を通る直交する2方向に隣接する近傍ビームb1,b2の一方がビームB14で他方がビームB25となる。そこで、ビームB15を通る直交する2方向に隣接する近傍ビームb1,b2のビーム番号を特定する。
【0069】
近傍ビームb1,b2は、ビームB15に設計上は最も近いビームである。よって、隣接ビームナンバリング処理部74は、実際のエレメント画像P15を用いて、ビームB15に最も近いビームを近傍ビームb1とし、その次に近いビームを近傍ビームb2とする。かかる3つのビームb1,b0,b2の順の配列が時計回りであれば、位置関係テーブルにおいて時計回りの配列であるビームB14,B15,B25の順の配列のはずである。3つのビームb1,b0,b2の順の配列が反時計回りであれば、逆の、ビームB25,B15,B14の順の配列になる。
【0070】
そこで、隣接ビームナンバリング処理部74は、各ビームの座標を用いて、ビームb1からビームb0に向かうベクトル(b0-b1)とビームb0からビームb2に向かうベクトル(b2-b0)との外積を計算する。外積の計算結果が正であれば3つのビームb1,b0,b2の順の配列が時計回り、負であれば反時計回り、ゼロであれば直線となる。
図12の例では、外積の計算結果が正になるので時計回りの配列になり、3つのビームb1,b0,b2は、位置関係テーブルにおいて時計回りの配列であるビームB14,B15,B25の順の配列と特定できる。
【0071】
図13は、実施の形態1における2つの近傍ビームのビーム番号が付与された後のエレメント画像内のビームアレイの一例を示す図である。
図13の例では、検出エレメントP15のエレメント画像内のビームアレイの一例が示されている。上述した外積の計算結果から、
図13に示すように、隣接ビームナンバリング処理部74は、近傍ビームb1にビーム番号B14をナンバリングし、近傍ビームb2にビーム番号B25をナンバリングする。
【0072】
同様に、コーナービームB11が特定されたエレメント画像では、2つの近傍ビームにビーム番号B21,B12をナンバリングする。同様に、コーナービームB51が特定されたエレメント画像では、2つの近傍ビームにビーム番号B52,B41をナンバリングする。同様に、コーナービームB55が特定されたエレメント画像では、2つの近傍ビームにビーム番号B45,B54をナンバリングする。
【0073】
残ビームナンバリング工程(S116)として、残ビームナンバリング処理部76は、コーナービームに付与されたビーム番号とコーナービームに隣接する2つのビームに付与されたビーム番号とに基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する。
【0074】
図14は、実施の形態1におけるビーム番号が付与されたエレメント画像内のビームアレイの一例を示す図である。
図14の例では、検出エレメントP15のエレメント画像内のビームアレイの一例が示されている。残ビームナンバリング処理部76は、マルチ2次電子ビームBijとの設計上の位置を定義する座標系を対象となるエレメント画像の座標系に投影するための変換を行う。座標系の変換は、例えば、変換元の座標系の座標を所望の座標系に変換して投影するアフィン変換を用いると好適である。アフィン変換は、以下の式(1)で定義できる。
【0075】
【0076】
図14の例では、エレメント画像の座標系は、設計上の座標系から右方向に回転している。残ビームナンバリング処理部76は、設計上のマルチ2次電子ビームBijのうちエレメント画像内で既にナンバリングされたビームの座標をエレメント画像内の実際のナンバリングされたビームの座標に投影するように、設計上の座標系をエレメント画像の座標系に変換する。そして、設計上のマルチ2次電子ビームBijをエレメント画像内のビームアレイに投影する。そして、残ビームナンバリング処理部76は、エレメント画像内のまだビーム番号が付与されていないビームについて、設計上のマルチ2次電子ビームBijのうち最も近いビームのビーム番号を付与する。これにより、
図14に示すように、検出エレメントP15のエレメント画像に対し、すべてのビームにビーム番号を付与できる。同様に、すべてのコーナービーム有画像に対し、すべてのビームにビーム番号を付与する。これにより、コーナービーム有画像については、すべてのビームにビーム番号の付与を完了する。
【0077】
判定工程(S120)として、判定部66は、まだビーム番号の付与がなされていないエレメント画像(コーナービーム不明画像)について、エレメント画像毎に、コーナービーム有画像と隣接するかどうかを判定する。コーナービーム有画像と隣接するエレメント画像の場合には、判定工程(S122)に進む。コーナービーム有画像と隣接するエレメント画像ではない場合には、判定工程(S139)に進む。
【0078】
判定工程(S122)として、判定部67は、隣接するコーナービーム有画像内のビームアレイのナンバリングが終了しているかどうかを判定する。まだ終了していない場合には、判定工程(S108)に戻り、隣接するコーナービーム有画像内のビームアレイのナンバリングが終了するまで、判定工程(S108)から判定工程(S122)までの各工程を繰り返す。隣接するコーナービーム有画像内のビームアレイのナンバリングが終了した場合には、ナンバリング処理(2)工程(S130)に進む。
【0079】
ナンバリング処理(2)工程(S130)として、コーナービーム不明画像ナンバリング処理部80は、画像内の各ビームにビーム番号が付与された、コーナービームが存在するエレメント画像を用いて、コーナービームが存在するエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する。
【0080】
図15は、実施の形態1におけるナンバリング処理(2)工程の内部工程の一例を示すフローチャート図である。
図15において、実施の形態1におけるナンバリング処理(2)工程(S130)は、コーナービームが存在するエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、隣接画像間ビームアレイ角度算出工程(S132)と、隣接画像パラメータ取得工程(S134)と、推定座標系変換(S136)と、共通ビームナンバリング工程(S138)と、非共通ビームナンバリング工程(S139)と、を実施する。
【0081】
図16は、実施の形態1における隣接画像間のビームアレイの相対回転角度の一例と平行移動距離との一例を示す図である。
図16の例では、コーナービーム有画像である検出エレメントP15のエレメント画像と、検出エレメントP15に隣接する検出エレメントP25のコーナービーム不明画像であるエレメント画像とを一例として示している。
【0082】
予め、マルチ2次電子ビーム300と複数の検出エレメントとの全体位置関係が分かっている条件下で、隣接する検出エレメント同士毎に、マルチ検出器222の角度を変えながら、角度毎の、画像内のビームアレイ同士の相対回転角度Δθと位置合わせのための平行移動距離(ΔX,ΔY)とを測定する。具体的には、以下のように動作する。
【0083】
例えば、従来の手法で、マルチ2次電子ビーム300と複数の検出エレメントとの全体位置関係を取得しておく。
【0084】
まず、マルチ検出器222の角度毎に、マルチ2次ビームスキャン及び画像取得工程(S102)と同様の動作を行い、マルチ検出器222の角度毎の各検出エレメントのエレメント画像を取得する。マルチ検出器222の角度は、回転ステージ227を回転させることで変更できる。また、各エレメント画像内のビームアレイについては、マルチ2次電子ビーム300と複数の検出エレメントとの全体位置関係が分かっているので、得られるエレメント画像内のビームアレイについては、それぞれ、どのビームなのかがわかる。
【0085】
そして、マルチ検出器222の角度毎に、隣接する両エレメント画像内に共通する1つの基準ビームを設定し、かかる基準ビームに最も近いビームとその次に近いビームを選択する。最も近いビームとその次に近いビームは、基準ビームを通る直交する2方向の一方の直線上と他方の直線上に存在するものを選択する。言い換えれば、近接する4近傍のうち直線上に無い2つのビームを選択する。
【0086】
そして、マルチ検出器222の角度毎に、隣接する両エレメント画像間で、かかる直交する2方向同士の相対回転角度Δθを測定する。また、隣接する両エレメント画像間で、基準ビーム同士間の平行移動距離(ΔX,ΔY)を測定する。
図16の例では、マルチ検出器222の角度が、0°、10°、及び20°の場合について示している。マルチ検出器222の角度の変更幅は、10°毎に限るものではなく、もっと小さい変更幅であっても良いし、もっと大きい変更幅であっても構わない。偏向幅の間の角度に対応するパラメータは、線形補間等により求めればよい。
【0087】
図17は、実施の形態1における隣接画像関係テーブルの一例を示す図である。
図17において、隣接画像関係テーブルには、隣接する検出エレメントのエレメント画像同士の組み合わせ毎に、複数の検出エレメントの配置角度(マルチ検出器222の角度θ)を可変にして得られたエレメント画像同士間のビームアレイの相対回転角度Δθと平行移動距離(ΔX,ΔY)とが定義される。すべての隣接する検出エレメントのエレメント画像同士について、かかる隣接画像関係テーブルを予め作成しておく。そして、作成された隣接画像関係テーブルは、記憶装置62に格納される。
【0088】
実施の形態1では、以上のようにして予め作成しておいた隣接画像関係テーブルを用いて、例えば、マルチ検出器222を交換した場合のように、マルチ2次電子ビーム300と複数の検出エレメントとの全体位置関係が分かっていないコーナービーム不明画像であるエレメント画像内のビームアレイのナンバリングを行う。
【0089】
隣接画像間ビームアレイ角度算出工程(S132)として、角度算出部82は、まず、既にナンバリングが完了しているコーナービーム有画像内のビームアレイの1つを基準ビームにして、基準ビームに最も近いビームとその次に近いビームを選択する。最も近いビームとその次に近いビームは、基準ビームを通る直交する2方向の一方の直線上と他方の直線上に存在するものを選択する。言い換えれば、近接する4近傍のうち直線上に無い2つのビームを選択する。そして、角度算出部82は、基準ビームから、2つの近傍ビームへの2方向(回転されたx,y方向)を測定する。
同様に、角度算出部82は、ナンバリングがなされていないコーナービーム不明画像内のビームアレイの1つを基準ビームにして、基準ビームに最も近いビームとその次に近いビームを選択する。最も近いビームとその次に近いビームは、基準ビームを通る直交する2方向の一方の直線上と他方の直線上に存在するものを選択する。言い換えれば、近接する4近傍のうち直線上に無い2つのビームを選択する。そして、角度算出部82は、基準ビームから、2つの近傍ビームへの2方向(回転されたx,y方向)を測定する。
【0090】
そして、角度算出部82は、
図16の上部の図に示すように、隣接するエレメント画像同士間のビームアレイの相対回転角度Δθを算出する。言い換えれば、それぞれ得られたx方向同士間の相対角度を相対回転角度Δθとして算出する。
【0091】
隣接画像パラメータ取得工程(S134)として、パラメータ取得部84は、記憶装置62に格納された隣接画像関係テーブルを参照して、対象となる隣接するエレメント画像同士間について、相対回転角度Δθが最も近い値に関連する平行移動距離(ΔX,ΔY)を取得する。
【0092】
推定座標系変換(S136)として、推定座標系変換部86は、算出された相対回転角度Δθと取得された平行移動距離(ΔX,ΔY)とを用いて、推定元となるコーナービーム有画像の座標系を推定先となるコーナービーム不明画像の座標系に変換する。
【0093】
図18は、実施の形態1における推定座標系変換を説明するための図である。
図18の例では、推定元の検出エレメントP15のエレメント画像から推定先の検出エレメントP25のエレメント画像に座標系を変換する場合を示している。具体的には、
図18に示すように、推定元の座標系を相対回転角度Δθだけ回転させ、さらに、平行移動距離(ΔX,ΔY)だけ移動させる。そして、座標系が変換されたコーナービーム有画像内のビームアレイを推定先となるコーナービーム不明画像内のビームアレイに投影する。
【0094】
共通ビームナンバリング工程(S138)として、共通ビームナンバリング処理部88は、隣接画像関係テーブルを用いて、画像内の各ビームにビーム番号が付与されたコーナービームが存在するエレメント画像と共通する共通ビームにビーム番号を付与する。言い換えれば、投影された推定元のコーナービーム有画像内のビームアレイはナンバリングされているので、推定先のコーナービーム不明画像内のビームアレイについては、投影されたビームアレイの各ビームに最も近いビームに同じビーム番号を付与する。
【0095】
図19は、実施の形態1における共通ビームがナンバリングされたコーナービーム不明画像内のビームアレイの一例を示す図である。
図19の例では、コーナービーム有画像が得られる検出エレメントP15に隣接した検出エレメントP25のエレメント画像内のビームアレイの一例を示す。
図19の例では、検出エレメントP25のエレメント画像内のビームアレイのうち、1つ以外は共通ビームであった場合を示している。
【0096】
非共通ビームナンバリング工程(S139)として、非共通ビームナンバリング処理部89は、共通ビームに付与されたビーム番号に基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する。
【0097】
図20は、実施の形態1におけるナンバリングが終了したコーナービーム不明画像内のビームアレイの一例を示す図である。
図20の例では、コーナービーム有画像が得られる検出エレメントP15に隣接した検出エレメントP25のエレメント画像内のビームアレイの一例を示す。複数の共通ビームのナンバリングがなされているので、非共通ビームナンバリング処理部89は、かかる複数の共通ビームのビーム番号からエレメント画像の座標系を算出する。そして、
図14に示した場合と同様、非共通ビームナンバリング処理部89は、マルチ2次電子ビームBijとの設計上の位置を定義する座標系を対象となるエレメント画像の座標系に投影するための変換を行う。座標系の変換は、例えば、アフィン変換を用いると好適である。
【0098】
非共通ビームナンバリング処理部89は、設計上のマルチ2次電子ビームBijの座標系をエレメント画像の座標系に変換した上で、設計上のマルチ2次電子ビームBijをエレメント画像に投影する。
【0099】
そして、非共通ビームナンバリング処理部89は、エレメント画像内のまだビーム番号が付与されていないビームについて、設計上のマルチ2次電子ビームBijのうち最も近いビームのビーム番号を付与する。これにより、
図20に示すように、検出エレメントP25のエレメント画像に対し、すべてのビームにビーム番号を付与できる。同様に、すべてのコーナービーム有画像に隣接するコーナービーム不明画像に対し、すべてのビームにビーム番号を付与する。これにより、コーナービーム有画像に隣接するコーナービーム不明画像については、すべてのビームにビーム番号の付与を完了する。
【0100】
判定工程(S139)として、判定部68は、隣接するコーナービーム不明画像だったエレメント画像内のビームアレイのナンバリングが終了しているかどうかを判定する。まだ終了していない場合には、ナンバリング処理(2)工程(S130)に戻り、隣接するコーナービーム不明画像だったエレメント画像内のビームアレイのナンバリングが終了するまで、判定工程(S130)から判定工程(S139)までの各工程を繰り返す。隣接するコーナービーム不明画像だったエレメント画像内のビームアレイのナンバリングが終了した場合には、ナンバリング処理(3)工程(S140)に進む。
【0101】
ナンバリング処理(3)工程(S140)として、コーナービーム不明画像ナンバリング処理部80は、画像内の各ビームにビーム番号が付与された、コーナービームの存在が不明だったエレメント画像を用いて、コーナービームの存在が不明だったエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する。
【0102】
実施の形態1におけるナンバリング処理(3)工程の内部工程の一例は、
図15に示されたフローチャート図と同様である。言い換えれば、
図15において、実施の形態1におけるナンバリング処理(3)工程(S140)は、コーナービームの存在が不明だったエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービームの存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、隣接画像間ビームアレイ角度算出工程(S142)と、隣接画像パラメータ取得工程(S144)と、推定座標系変換(S146)と、共通ビームナンバリング工程(S148)と、非共通ビームナンバリング工程(S149)と、を実施する。
【0103】
隣接画像間ビームアレイ角度算出工程(S142)として、角度算出部82は、まず、既にナンバリングが完了しているコーナービーム不明画像だったエレメント画像内のビームアレイの1つを基準ビームにして、基準ビームに最も近いビームとその次に近いビームを選択する。最も近いビームとその次に近いビームは、基準ビームを通る直交する2方向の一方の直線上と他方の直線上に存在するものを選択する。言い換えれば、近接する4近傍のうち直線上に無い2つのビームを選択する。そして、角度算出部82は、基準ビームから、2つの近傍ビームへの2方向(回転されたx,y方向)を測定する。
同様に、角度算出部82は、ナンバリングがなされていないコーナービーム不明画像内のビームアレイの1つを基準ビームにして、基準ビームに最も近いビームとその次に近いビームを選択する。最も近いビームとその次に近いビームは、基準ビームを通る直交する2方向の一方の直線上と他方の直線上に存在するものを選択する。言い換えれば、近接する4近傍のうち直線上に無い2つのビームを選択する。そして、角度算出部82は、基準ビームから、2つの近傍ビームへの2方向(回転されたx,y方向)を測定する。
【0104】
そして、角度算出部82は、
図16の上部の図に示すように、隣接するエレメント画像同士間のビームアレイの相対回転角度Δθを算出する。言い換えれば、それぞれ得られたx方向同士間の相対角度を相対回転角度Δθとして算出する。
【0105】
隣接画像パラメータ取得工程(S144)として、パラメータ取得部84は、記憶装置62に格納された隣接画像関係テーブルを参照して、対象となる隣接するエレメント画像同士間について、相対回転角度Δθが最も近い値に関連する平行移動距離(ΔX,ΔY)を取得する。
【0106】
推定座標系変換(S146)として、推定座標系変換部86は、算出された相対回転角度Δθと取得された平行移動距離(ΔX,ΔY)とを用いて、推定元となるコーナービーム不明画像だったエレメント画像の座標系を推定先となるコーナービーム不明画像の座標系に変換する。具体的には、推定元の座標系を相対回転角度Δθだけ回転させ、さらに、平行移動距離(ΔX,ΔY)だけ移動させる。そして、座標系が変換されたコーナービーム有画像内のビームアレイを推定先となるコーナービーム不明画像内のビームアレイに投影する。
【0107】
共通ビームナンバリング工程(S148)として、共通ビームナンバリング処理部88は、隣接画像関係テーブルを用いて、隣接する検出エレメントのエレメント画像同士の組み合わせ毎に、隣接画像関係テーブルを用いて、画像内の各ビームにビーム番号が付与されたコーナービームの存在が不明だったエレメント画像と共通する共通ビームにビーム番号を付与する。言い換えれば、投影された推定元のエレメント画像内のビームアレイはナンバリングされているので、推定先のコーナービーム不明画像内のビームアレイについては、投影されたビームアレイの各ビームに最も近いビームに同じビーム番号を付与する。
【0108】
非共通ビームナンバリング工程(S149)として、非共通ビームナンバリング処理部89は、共通ビームに付与されたビーム番号に基づいて、当該エレメント画像内の残りのビームにビーム番号を付与する。複数の共通ビームのナンバリングがなされているので、非共通ビームナンバリング処理部89は、かかる複数の共通ビームのビーム番号からエレメント画像の座標系を算出する。そして、
図14に示した場合と同様、非共通ビームナンバリング処理部89は、マルチ2次電子ビームBijとの設計上の位置を定義する座標系を対象となるエレメント画像の座標系に投影するための変換を行う。座標系の変換は、例えば、アフィン変換を用いると好適である。
【0109】
非共通ビームナンバリング処理部89は、設計上のマルチ2次電子ビームBijの座標系をエレメント画像の座標系に変換した上で、設計上のマルチ2次電子ビームBijをエレメント画像に投影する。
【0110】
そして、非共通ビームナンバリング処理部89は、エレメント画像内のまだビーム番号が付与されていないビームについて、設計上のマルチ2次電子ビームBijのうち最も近いビームのビーム番号を付与する。これにより、当該エレメント画像内のすべてのビームにビーム番号を付与できる。
【0111】
以降、同様に、外側の検出エレメントのナンバリングがなされたエレメント画像を使って、内側の検出エレメントに向かって順にコーナービーム不明画像内のすべてのビームのナンバリングを行う。検出エレメントのナンバリングがなされたエレメント画像があれば、隣接画像関係テーブルを用いることで、隣接する検出エレメントのナンバリングがなされていないエレメント画像内のビームアレイのナンバリングができる。
【0112】
コーナービーム不明画像内のビームアレイのナンバリングの仕方については、上述した隣接画像関係テーブルを用いた手法に限るものではない。
【0113】
図21は、実施の形態1の変形例におけるナンバリング処理(2)の一例及びナンバリング処理(3)の一例の内部工程を示すフローチャート図である。
図21において、実施の形態1の変形例におけるナンバリング処理(2)工程(S130)は、コーナービームが存在するエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービーム存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、その内部工程として、判定工程(S133)と、合成座標系変換工程(S135)と、共通ビームナンバリング工程(S137)と、非共通ナンバリング工程(S139)と、を実施する。また、
図21において、実施の形態1の変形例におけるナンバリング処理(3)工程(S140)は、コーナービーム存在が不明だったエレメント画像が得られた検出エレメントに隣接する検出エレメントによって得られたコーナービーム存在が不明なエレメント画像内の複数のビームにビーム番号を付与する際、その内部工程として、判定工程(S143)と、合成座標系変換工程(S145)と、共通ビームナンバリング工程(S147)と、非共通ナンバリング工程(S149)と、を実施する。
【0114】
図22は、実施の形態1の変形例における位置合わせ回路の内部構成の一例を示す図である。
図22において、コーナービーム不明画像ナンバリング処理部80内に、角度算出部82、パラメータ取得部84、推定座標系変換部86、及び共通ビームナンバリング処理部88の代わりに、周囲ナンバリング判定部83、合成座標系変換部85、及び共通ビームナンバリング処理部87が配置された点、以外は
図7と同様である。
【0115】
ビーム座標取得部63、コーナービーム判定部64、判定部65,66,67,68、コーナービーム有画像ナンバリング処理部70(コーナービームナンバリング処理部72、隣接ビームナンバリング処理部74、及び残ビームナンバリング処理部76)、コーナービーム不明画像ナンバリング処理部80(周囲ナンバリング判定部83、合成座標系変換部85、共通ビームナンバリング処理部87、及び非共通ビームナンバリング処理部89)、全体位置関係特定部90、位置合わせパラメータ算出部94、及び位置合わせ部96といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。ビーム座標取得部63、コーナービーム判定部64、判定部65,66,67,68、コーナービーム有画像ナンバリング処理部70(コーナービームナンバリング処理部72、隣接ビームナンバリング処理部74、及び残ビームナンバリング処理部76)、コーナービーム不明画像ナンバリング処理部80(周囲ナンバリング判定部83、合成座標系変換部85、共通ビームナンバリング処理部87、及び非共通ビームナンバリング処理部89)、全体位置関係特定部90、位置合わせパラメータ算出部94、及び位置合わせ部96内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0116】
判定工程(S133)として、周囲ナンバリング判定部83は、コーナービーム不明画像である対象となるエレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、コーナービームが存在するエレメント画像を含む、各ビームのナンバリングが終了した3つのエレメント画像が存在するかどうかを判定する。存在しない場合には、存在するまで待機する。但し、コーナービーム不明画像である対象となるエレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、3つのエレメント画像が、コーナービーム有画像でない場合には、ナンバリング不能として終了する。存在する場合には合成座標系変換工程(S135)に進む。
【0117】
合成座標系変換工程(S135)として、合成座標系変換部85は、当該エレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、コーナービームが存在するエレメント画像を含む、画像内の各ビームにビーム番号が付与された3つのエレメント画像を用いて、ビーム番号が付与された3つのエレメント画像のうちの1つのエレメント画像内のビームアレイの座標系を当該エレメント画像内のビームアレイの座標系に変換する。
【0118】
図23は、実施の形態1の変形例における座標変換を説明するための図である。
図23では、検出エレメントP15と検出エレメントP25と検出エレメントP14との各コーナービーム有画像の一例と、これらと2×2の配列を構成する、検出エレメントP24のコーナービーム不明画像の一例と、を示している。
図23の例に示す、検出エレメントP25のエレメント画像と検出エレメントP14のエレメント画像では、コーナービーム判定工程(S106)においてコーナービームを特定できないかもしれないが、ここでは、検出エレメントP25のエレメント画像と検出エレメントP14のエレメント画像が、コーナービームを特定できたコーナービーム有画像であるとする。
【0119】
図23において、例えば、コーナーに位置する検出エレメントP15のエレメント画像の座標系を検出エレメントP24のエレメント画像の座標系に変換することは、
図23に示すように、検出エレメントP15のエレメント画像の座標系から検出エレメントP25のエレメント画像の座標系への変換と、検出エレメントP15のエレメント画像の座標系から検出エレメントP14のエレメント画像の座標系への変換との合成変換と同義となる。すべての変換がアフィン変換で表される場合についてこれを式で表記すると、P14、P15,P24、P25の座標系を、それぞれ(x
14,y
14)、(x
15,y
15)、(x
24,y
24)、(x
25,y
25)としたときに、P15→P14の変換は、以下の式(2)で定義できる。
【0120】
【0121】
また、P25→P15の変換は、以下の式(3)で定義できる。
【0122】
【0123】
P15→P24の変換は、これらの合成変換、すなわち、以下の式(4)で定義できる。
【0124】
【0125】
そこで、合成座標系変換部85は、既にナンバリングが終了した検出エレメントP15のエレメント画像の座標系から検出エレメントP25のエレメント画像の座標系への変換処理を行う。同様に、既にナンバリングが終了した検出エレメントP15のエレメント画像の座標系から検出エレメントP14のエレメント画像の座標系への変換処理を行う。変換処理は、上述したアフィン変換を用いると好適である。そして、両変換を合成することで、検出エレメントP15のエレメント画像の座標系から検出エレメントP25のエレメント画像の座標系への変換処理を行う。
【0126】
共通ビームナンバリング工程(S137)として、共通ビームナンバリング処理部87は、当該エレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、コーナービームが存在するエレメント画像を含む、画像内の各ビームにビーム番号が付与された3つのエレメント画像を用いて、共通する共通ビームにビーム番号を付与する。具体的には、かかる3つのエレメント画像のうち、座標系が当該エレメント画像の座標系に変換されたエレメント画像内のナンバリングされたビームアレイを当該エレメント画像のビームアレイに投影する。そして、共通する共通ビームに同じビーム番号を付与する、或いは最も近いビームと同じビーム番号を付与する。
【0127】
非共通ナンバリング工程(S139)の内容は上述した通りである。
【0128】
同様に、コーナービーム不明画像である対象となるエレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、コーナービームが存在する、各ビームのナンバリングが終了した3つのエレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成するすべてのコーナービーム不明画像について、すべてのビームにビーム番号の付与を実施する。例えば、検出エレメントP15と共に2×2の配列を構成する検出エレメントのコーナービーム不明画像の他に、例えば、検出エレメントP11と共に2×2の配列を構成する検出エレメントのコーナービーム不明画像、検出エレメントP51と共に2×2の配列を構成する検出エレメントのコーナービーム不明画像、及び検出エレメントP55と共に2×2の配列を構成する検出エレメントのコーナービーム不明画像が対象となり得る。さらに多くの検出エレメントでコーナービーム有画像が得られる場合には、対象はさらに広がり得る。
【0129】
次に、実施の形態1の変形例におけるナンバリング処理(3)について説明する。
【0130】
判定工程(S143)として、周囲ナンバリング判定部83は、コーナービーム不明画像である対象となるエレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、コーナービームの存在が不明だったエレメント画像を含む、各ビームのナンバリングが終了した3つのエレメント画像が存在するかどうかを判定する。存在しない場合には、存在するまで待機する。但し、コーナービーム不明画像である対象となるエレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、3つのエレメント画像のうち、コーナービームの存在が不明だったエレメント画像のナンバリングができずに終了した場合には、ナンバリング不能として終了する。存在する場合には合成座標系変換工程(S145)に進む。
【0131】
合成座標系変換工程(S145)として、合成座標系変換部85は、当該エレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、コーナービームの存在が不明だったエレメント画像を含む、画像内の各ビームにビーム番号が付与された3つのエレメント画像を用いて、ビーム番号が付与された3つのエレメント画像のうちの1つのエレメント画像内のビームアレイの座標系を当該エレメント画像内のビームアレイの座標系に変換する。合成座標系変換工程(S145)の内容は、合成座標系変換工程(S135)と同様である。
【0132】
共通ビームナンバリング工程(S147)として、共通ビームナンバリング処理部87は、当該エレメント画像と共に隣接した2×2の配列を構成する、コーナービームの存在が不明だったエレメント画像を含む、画像内の各ビームにビーム番号が付与された3つのエレメント画像を用いて、共通する共通ビームにビーム番号を付与する。具体的には、かかる3つのエレメント画像のうち、座標系が当該エレメント画像の座標系に変換されたエレメント画像内のナンバリングされたビームアレイを当該エレメント画像のビームアレイに投影する。そして、共通する共通ビームに同じビーム番号を付与する、或いは最も近いビームと同じビーム番号を付与する。
【0133】
非共通ナンバリング工程(S149)の内容は上述した通りである。
【0134】
ナンバリング処理(2)とナンバリング処理(3)については、隣接画像関係テーブルを用いた手法よりも、実施の形態1の変形例で説明した手法の方が、精度が高い。よって、実施の形態1の変形例で説明した手法を用いることができる場合には、優先して実施の形態1の変形例で説明した手法を実施すると好適である。隣接した2×2の配列を構成する3つの周囲のナンバリングが終わったエレメント画像が存在せずに、実施の形態1の変形例で説明した手法を用いることが困難な場合に、隣接画像関係テーブルを用いた手法を実施するようにしても好適である。
【0135】
以上のようにして、各エレメント画像のビームアレイの座標とナンバリングができる。
【0136】
全体位置関係特定工程(S150)として、全体位置関係特定部90は、座標とビーム番号とが得られたコーナービームが存在するエレメント画像(例えば、検出エレメントP15等のエレメント画像)とコーナービームの存在が不明だったエレメント画像(例えば、中央部の検出エレメントP33等のエレメント画像)を用いて、マルチ2次電子ビーム300と複数の検出エレメントとの全体位置関係を算出する。具体的には、以下のように動作する。
【0137】
図24は、実施の形態1における全体位置関係の一例を示す図である。ナンバリングされた共通するビームの位置を合わせるように、各検出エレメントPijの位置を合成する。2次座標系は、マルチ2次電子ビーム300の中心位置を中心とする座標系である。よって、2次座標系においてマルチ2次電子ビーム300の各2次電子ビームの座標は特定できる。よって、2次座標系における検出エレメントの座標は、各ビームとの位置関係がわかっていれば特定できる。これにより、
図24に示すように、5×5個の検出エレメントの全体の位置に対する5×5本のマルチ2次電子ビーム300全体の位置を特定できる。
【0138】
位置合わせ工程(S152)として、まず、位置合わせパラメータ算出部94は、位置合わせ用のパラメータを算出する。ここで、マルチ2次電子ビーム300と複数の検出エレメントとの位置合わせには、回転量θと、シフト量Rとが必要となる。2次座標系は、マルチ2次電子ビーム300の中心位置を中心(原点)とする座標系としているので、マルチ検出器222の回転中心座標(rx,ry)を2次座標系の原点(0,0)にシフトする量、或いはその逆方向の量が位置合わせ用のシフト量Rとなる。よって、パラメータとして、回転量θと回転中心座標(rx,ry)を求める。パラメータは、全体位置関係を用いて算出する。具体的には以下のように動作する。
【0139】
位置合わせ後の検出エレメントPijの座標(Xij,Yij)は、位置合わせ前の検出エレメントPijの座標(xij,yij)と、マルチ検出器222の回転中心座標(rx,ry)と、回転角度θと、を用いて、次の式(5)で定義できる。
【0140】
【0141】
なお、座標(Xij,Yij)は、回転中心座標(rx,ry)と、回転角度θとが実際と一致するときに、位置合わせ後に実際に測定した検出エレメントPijの座標(X0ij,Y0ij)に一致するはずである。或いは、位置合わせ後の検出エレメントPijの座標(Xij,Yij)は、対応する2次電子ビームの座標(X0ij,Y0ij)に一致するはずである。よって、位置合わせ後の検出エレメントPijの座標(X0ij,Y0ij)或いは2次電子ビームの座標(X0ij,Y0ij)を用いて、以下の式(6)に示す差分二乗和を算出する。
【0142】
【0143】
実施の形態1では、全体位置関係を用いて、ビームbijと検出エレメントPijの各組について、式(5)及び式(6)を計算する。5×5個の検出エレメントであれば、25点を使って式(1)を計算すると好適である。そして、式(6)で得られた各組のSijの合計ΣSijが最小となるように、回転中心座標(rx,ry)と、回転角度θと、を算出することにより最適化する。最適化問題のアルゴリズムを使って最適化すると良い。例えば、最急降下法が簡便である。
【0144】
位置合わせ部96は、全体位置関係に基づいて、複数の検出エレメントPijとマルチ2次電子ビーム300とを位置合わせするように、マルチ検出器222をマルチ2次電子ビーム300に対して相対的に移動させる。
【0145】
具体的には、検出器ステージ制御回路130は、駆動機構132を制御して、回転ステージ227を回転量θだけ回転させる。これにより、回転ステージ227は、マルチ検出器222を回転量θだけ回転させる。また、検出器ステージ制御回路130は、駆動機構132を制御して、x,yステージ228(移動機構)を座標(rx,ry)から原点(0,0)までの距離だけ移動させる。これにより、x,yステージ228は、マルチ検出器222をマルチ2次電子ビーム300に対して相対的に移動させる。具体的には、マルチ検出器222を(-rx,-ry)だけ平行移動させる。例えば、マルチ検出器222を機械的に移動させる。
【0146】
上述した例では、マルチ検出器222を移動させてマルチ2次電子ビーム300に位置合わせする例を説明したが、これに限るものではない。マルチ2次電子ビーム300を移動させてマルチ検出器222に位置合わせしても構わない。かかる場合、例えば、図示しないアライメントコイルによりマルチ2次電子ビーム300をシフト量Rだけ平行移動しても良い。そして、電磁レンズ224により、マルチ2次電子ビーム300を回転量θだけ回転させても良い。
【0147】
以上により、マルチ2次電子ビーム300とマルチ検出器222の複数の検出エレメントとの位置合わせができる。
【0148】
検査処理工程(S160)として、位置合わせが行われた検査装置100を用いて、基板101を検査する。
【0149】
図25は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図25において、基板101が半導体基板(ウェハ)である場合、半導体基板(ウェハ)の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。1チップ分のマスクパターンは、一般に、複数の図形パターンにより構成される。
【0150】
図26は、実施の形態1における検査処理を説明するための図である。
図26に示すように、各チップ332の領域は、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。画像取得機構150によるスキャン動作は、例えば、ストライプ領域32毎に実施される。例えば、-x方向にステージ105を移動させながら、相対的にx方向にストライプ領域32のスキャン動作を進めていく。各ストライプ領域32は、長手方向に向かって複数の矩形領域33に分割される。対象となる矩形領域33へのビームの移動は、偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。
【0151】
図26の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。照射領域34が、マルチ1次電子ビーム20の視野となる。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム8は、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。各1次電子ビーム8は、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各1次電子ビーム10は、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。サブ照射領域29内の1次電子ビーム10の移動は、偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つの1次電子ビーム10で1つのサブ照射領域29内を順に照射していく。
【0152】
各ストライプ領域32の幅は、照射領域34のy方向サイズと同様、或いはスキャンマージン分狭くしたサイズに設定すると好適である。
図22の例では、照射領域34が矩形領域33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34が矩形領域33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。そして、1つのサブ照射領域29のスキャンが終了したら、偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が同じストライプ領域32内の隣接する矩形領域33へと移動する。かかる動作を繰り返し、ストライプ領域32内を順に照射していく。1つのストライプ領域32のスキャンが終了したら、ステージ105の移動或いは/及び偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射領域34が次のストライプ領域32へと移動する。以上のように各1次電子ビーム10の照射によってサブ照射領域29毎のスキャン動作および2次電子画像の取得が行われる。これらのサブ照射領域29毎の2次電子画像を組み合わせることで、矩形領域33の2次電子画像、ストライプ領域32の2次電子画像、或いはチップ332の2次電子画像が構成される。また、実際に画像比較を行う場合には、各矩形領域33内のサブ照射領域29をさらに複数のフレーム領域30に分割して、フレーム領域30毎のフレーム画像31について比較することになる。
図26の例では、1つの1次電子ビーム8によってスキャンされるサブ照射領域29を例えばx,y方向にそれぞれ2分割することによって形成される4つのフレーム領域30に分割する場合を示している。
【0153】
ここで、ステージ105が連続移動しながらマルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する場合、マルチ1次電子ビーム20の照射位置がステージ105の移動に追従するように偏向器208,209によって一括偏向によるトラッキング動作が行われる。そのため、マルチ2次電子ビーム300の放出位置がマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に対して刻々と変化する。同様に、サブ照射領域29内をスキャンする場合に、各2次電子ビームの放出位置は、サブ照射領域29内で刻々と変化する。このように放出位置が変化した各2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出領域内に照射させるように、偏向器226は、マルチ2次電子ビーム300を一括偏向する。
【0154】
以上のように、画像取得機構150は、ストライプ領域32毎に、スキャン動作をすすめていく。検査に用いる画像(2次電子画像)は、ステージ105上の被検査基板101をマルチ1次電子ビーム20で照射し、マルチ1次電子ビーム20の照射によって基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222が検出することによって取得される。検出されるマルチ2次電子ビーム300には、反射電子が含まれていても構わない。或いは、反射電子は、2次電子光学系152を移動中に分離され、マルチ検出器222まで到達しない場合であっても構わない。マルチ検出器222によって検出された各サブ照射領域29内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0155】
図27は、実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
図27において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52,56、フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58が配置される。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0156】
比較回路108内に転送された測定画像データ(ビーム画像)は、記憶装置50に格納される。
【0157】
そして、フレーム画像作成部54は、各1次電子ビーム10のスキャン動作によって取得されたサブ照射領域29の画像データをさらに分割した複数のフレーム領域30のフレーム領域30毎のフレーム画像31を作成する。そして、フレーム領域30を被検査画像の単位領域として使用する。なお、各フレーム領域30は、画像の抜けが無いように、互いにマージン領域が重なり合うように構成されると好適である。作成されたフレーム画像31は、記憶装置56に格納される。
【0158】
一方、参照画像作成回路112は、基板101に形成された複数の図形パターンの元になる設計データに基づいて、フレーム領域30毎に、フレーム画像31に対応する参照画像を作成する。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、この読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0159】
上述したように、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0160】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/28(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとなる。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0161】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに、所定のフィルタ関数を使ってフィルタ処理を施す。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データをマルチ1次電子ビーム20の照射によって得られる像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像の画素毎の画像データは比較回路108に出力される。比較回路108内に転送された参照画像データは、記憶装置52に格納される。
【0162】
次に、位置合わせ部57は、被検査画像となるフレーム画像31と、当該フレーム画像31に対応する参照画像とを読み出し、画素より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0163】
そして、比較部58は、ステージ105上に載置される基板101の2次電子画像を所定の画像と比較する。具体的には、比較部58は、フレーム画像31と参照画像とを画素毎に比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0164】
なお、上述した例では、ダイ-データベース検査について説明したが、これに限るものではない。ダイ-ダイ検査を行う場合であっても良い。ダイ-ダイ検査を行う場合、対象となるフレーム画像31(ダイ1)と、当該フレーム画像31と同じパターンが形成されたフレーム画像31(ダイ2)(参照画像の他の一例)との間で、上述した位置合わせと比較処理を行えばよい。
【0165】
以上のように、実施の形態1によれば、コーナービームが写っている画像の情報の他にコーナービームが写っていない画像の情報も利用して、マルチ2次電子ビームと複数の検出エレメントとの全体の位置合わせができる。なお、上述した例では、すべての画像の情報を利用する場合を説明したが、これに限るものではない。コーナービームが写っていない複数の画像のうち、一部の画像の情報を利用する場合であっても構わない。
【0166】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、検出器ステージ制御回路130、E×B制御回路133、位置合わせ回路134、及び偏向調整回路137は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。例えば、これらの回路内での処理を制御計算機110で実施しても良い。
【0167】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
図1の例では、1つの照射源となる電子銃201から照射された1本のビームから成形アパーチャアレイ基板203によりマルチ1次電子ビーム20を形成する場合を示しているが、これに限るものではない。複数の照射源からそれぞれ1次電子ビームを照射することによってマルチ1次電子ビーム20を形成する態様であっても構わない。
【0168】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0169】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ2次電子ビームの位置合わせ方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0170】
8 1次電子ビーム
20 マルチ1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
30 フレーム領域
31 フレーム画像
32 ストライプ領域
33 矩形領域
34 照射領域
50,52,56 記憶装置
54 フレーム画像作成部
57 位置合わせ部
58 比較部
63 ビーム座標取得部
64 コーナービーム判定部
65,66,67,68 判定部
70 コーナービーム有画像ナンバリング処理部
72 コーナービームナンバリング処理部
74 隣接ビームナンバリング処理部
76 残ビームナンバリング処理部
80 コーナービーム不明画像ナンバリング処理部
82 角度算出部
83 周囲ナンバリング判定部
84 パラメータ取得部
85 合成座標系変換部
86 推定座標系変換部
88 共通ビームナンバリング処理部
89 非共通ビームナンバリング処理部
90 全体位置関係特定部
94 位置合わせパラメータ算出部
96 位置合わせ部
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
105 ステージ
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
111 マーク部材
112 参照画像作成回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
130 検出器ステージ制御回路
132 駆動機構
133 E×B制御回路
134 位置合わせ回路
142 駆動機構
144,146,149 DACアンプ
148 電源
150 画像取得機構
151 1次電子光学系
152 2次電子光学系
160 制御系回路
201 電子銃
202 電磁レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
205,206,207,224 電磁レンズ
208 偏向器
209 偏向器
212 一括ブランキング偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 E×B分離器
216 ミラー
218 偏向器
222 マルチ検出器
224 電磁レンズ
225 検出器アパーチャアレイ基板
226 偏向器
227 回転ステージ
228 x,yステージ
229 検出器ステージ
300 マルチ2次電子ビーム
330 検査領域
332 チップ