IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧 ▶ 豊田通商株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-匂い放出装置及び匂い検査装置 図1
  • 特開-匂い放出装置及び匂い検査装置 図2
  • 特開-匂い放出装置及び匂い検査装置 図3
  • 特開-匂い放出装置及び匂い検査装置 図4
  • 特開-匂い放出装置及び匂い検査装置 図5
  • 特開-匂い放出装置及び匂い検査装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128863
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】匂い放出装置及び匂い検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20240913BHJP
   G01N 1/38 20060101ALI20240913BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G01N1/00 F
G01N1/38
A61B10/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038127
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】今枝 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】早川 和美
(72)【発明者】
【氏名】中条 朱希
(72)【発明者】
【氏名】西出 智
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AB25
2G052AD22
2G052AD42
2G052CA04
2G052CA12
2G052EB11
2G052FD01
2G052HC09
2G052HC22
2G052HC23
2G052HC24
2G052HC28
2G052JA15
(57)【要約】
【課題】小型化が可能な匂い放出装置を提供する。
【解決手段】匂い放出装置は、匂い物質を空気と混合して放出する装置であって、前記匂い物質が任意の倍率に希釈されるように、前記匂い物質を前記空気で希釈する希釈ブロックを備え、前記希釈ブロックは、内部に流路が形成された金属製のブロックであり、前記匂い物質が進入する流路と、前記空気が進入する流路が、前記希釈ブロックの内部で合流することにより、前記匂い物質が希釈されて前記希釈ブロックから排出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
匂い物質を空気と混合して放出する匂い放出装置であって、
前記匂い物質が任意の倍率に希釈されるように、前記匂い物質を前記空気で希釈する希釈ブロックを備え、
前記希釈ブロックは、内部に流路が形成された金属製のブロックであり、
前記匂い物質が進入する流路と、前記空気が進入する流路が、前記希釈ブロックの内部で合流することにより、前記匂い物質が希釈されて前記希釈ブロックから排出される、
匂い放出装置。
【請求項2】
前記流路の内表面の少なくとも一部に、前記匂い物質が吸着するのを低減させるための表面処理加工が施された、
請求項1に記載の匂い放出装置。
【請求項3】
前記希釈ブロックを加熱するための加熱機構を備える、
請求項1又は請求項2に記載の匂い放出装置。
【請求項4】
前記希釈ブロックは、アルミニウム又は銅を含む、
請求項1又は請求項2に記載の匂い放出装置。
【請求項5】
前記流路の内径は、0.5mm~4.35mmである、
請求項1又は請求項2に記載の匂い放出装置。
【請求項6】
前記希釈ブロック内において前記匂い物質と前記空気が合流する位置と、希釈された前記匂い物質を前記希釈ブロックから排出させる位置との距離が6cm以下である、
請求項1又は請求項2に記載の匂い放出装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の匂い放出装置が放出した匂いを嗅いだ被検査者に、匂いの選択肢を提示する提示部を備える、
匂い検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、匂い放出装置及び匂い検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の嗅覚機能を検査するための技術が提案されている。それに伴い、匂いを希釈又は混合して検査に用いるための匂いを発生させる匂い放出装置や、当該匂い放出装置を備えた匂い検査装置(嗅覚検査装置ともいう)が開発されている。
【0003】
特許文献1には、キャリアガス流路に開閉弁を介してバイアルを多数並列に設置し、各バイアルに連通させた排出管を選択混合部の各対応ポートに連結させると共に、該ポートを排出ポートに連通させる一方、各ポートに連通した配管にメイクアップガスポートより分岐した分岐管を接続した揮発性成分の計測装置が開示されている。
【0004】
匂いの希釈や混合を行う匂い放出装置や匂い検査装置では、匂いを含む気体が通過する流路内における匂い物質の吸着を抑制することは、装置の精度を確保するための重要な観点である。吸着し易い物質を使用する場合には、吸着を抑制するために、流路の加熱や流路の不活性処理などが行われる。流路の加熱方法としては、ステンレス、銅、又はテフロン(登録商標)チューブ等で形成された配管にヒータを巻き付ける方法や、配管全体を加熱する方法がある。しかし、流路の分岐が多い装置では、配管に適切にヒータを巻き付けることが困難であり、クーリングポイント(他所より温度が低い箇所)が発生することが懸念される。そのため、流路(すなわち配管)全体を加熱できるように、オーブン内に配管を組み付ける構成が取られることが多い(例えば、特許文献1、オーブン14)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6086677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、オーブンで流路(すなわち配管)全体を加熱できるように構成するためには、流路全体を包含するサイズのオーブンが必要となり、匂い放出装置自体を大型化させる要因となっている。そこで、本発明は、小型化が可能な匂い放出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一の態様に係る匂い放出装置は、匂い物質を空気と混合して放出する匂い放出装置であって、前記匂い物質が任意の倍率に希釈されるように、前記匂い物質を前記空気で希釈する希釈ブロックを備え、前記希釈ブロックは、内部に流路が形成された金属製のブロックであり、前記匂い物質が進入する流路と、前記空気が進入する流路が、前記希釈ブロックの内部で合流することにより、前記匂い物質が希釈されて前記希釈ブロックから排出される。
【0008】
前記流路の内表面の少なくとも一部は、前記匂い物質が吸着するのを低減させるための表面処理加工が施されてもよい。
【0009】
匂い放出装置は、前記希釈ブロックを加熱するための加熱機構を備えてもよい。
【0010】
前記希釈ブロックは、アルミニウム又は銅を含んでもよい。
【0011】
前記流路の内径は、0.5mm~4.35mmであってもよい。
【0012】
前記希釈ブロック内において前記匂い物質と前記空気が合流する位置と、希釈された前記匂い物質を前記希釈ブロックから排出させる位置との距離が6cm以下であってもよい。例えば、希釈ブロックの長手方向に平行な直線において6cm以下であってもよい。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の他の態様に係る匂い検査装置は、前記匂い放出装置が放出した匂いを嗅いだ被検査者に、匂いの選択肢を提示する提示部を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内部に流路が形成された金属製の希釈ブロックを用いることにより、匂い物質を空気と混合して排出する部分が小型化されるため、結果として匂い放出装置全体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る匂い放出装置の構成例を示す図である。
図2】実施形態に係る匂い検査装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る匂い検査装置の機能構成例を示すブロック図である。
図4】他の実施形態に係る匂い放出装置の構成例を示す図である。
図5】異なる流路径を有する希釈ブロックにおける希釈後の気体の濃度の安定性を示すグラフである。
図6】希釈倍率と匂い成分の濃度との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
[匂い放出装置10]
図1は、本実施形態に係る匂い放出装置を例示する、匂い放出装置10の概略構成を示す図である。匂い放出装置10を参照して、以下に匂い放出装置を詳細に説明する。
【0018】
匂い放出装置10は、嗅覚検査を受ける被検査者に対して匂いを放出する装置である。匂い放出装置10は、嗅覚検査の際に、香料等の匂いの素となる匂い物質がガス化した気体(以後、匂い成分とする)を所定の倍率に希釈して放出する。
【0019】
匂い放出装置10は、制御部110、匂い供給部120、希釈部130、排出部140、及び匂い放出部150を備える。
【0020】
制御部110は、任意の流量に調整したエアー(空気)を匂い供給部120及び希釈部130に供給する。制御部110は、エアーが流れるパイプ111、パイプ111に流れるエアーの流量を計測する流量計112、パイプ111に流れるエアーの流量を調整する電磁バルブ113、及び希釈部130の最終段に加湿したエアーを供給する加湿装置114を備える。
【0021】
制御部110は、電磁バルブ113を調整することで、希釈部130に供給するエアーの量を調整する。例えば、匂い供給部120に置かれている匂い成分を1000倍に希釈する場合、制御部110は、匂い供給部120の匂い成分を1000倍に希釈するよう、希釈部130に供給するエアーの量を調整する。
【0022】
匂い供給部120は、匂い成分の基となる液体の匂い物質121が置かれている。液体の匂い物質121は、制御部110からのエアーの供給に応じて匂い成分が希釈部130に供給される。匂い供給部120は所定の温度、例えば室温より数度~10数度程度高い温度に加熱されてもよい。匂い供給部120が所定の温度に加熱されることで、加熱しない場合と比較して、匂い成分が希釈部130に供給されやすくなる。
【0023】
なお、液体の匂い物質121は、バブリングなどにより揮発量が制御されてもよい。また、液体の匂い物質121の成分のうち、閾値が低く吸着しやすい成分は、吸着体に保持させた上で、成分が保持された吸着体にエアーを通し、匂い供給部120から放出させてもよい。
【0024】
希釈部130は、匂い供給部120から供給される匂い成分を、制御部110から供給されるエアーにより所定の倍率に希釈する。希釈部130は、匂い供給部120から供給される匂い成分と、制御部110から供給されるエアーとを混合する希釈ブロック131と、不要な匂い成分を除去する活性炭132と、匂い成分とエアーとが混合された気体を匂い放出部150から放出させるバルブ133と、を備える。バルブ133には、加湿装置114で加湿された空気が供給され、気体が加湿された状態で匂い放出部150から放出される。気体が加湿された状態で匂い放出部150から放出されることで、気体が加湿されない場合と比較して、被検査者の検査時の鼻腔の乾燥を抑えることができる。
【0025】
図1では、希釈部130は、匂い供給部120から供給される匂い成分を、3つの希釈ブロック131により3段階に混合することで、順に匂い濃度を低下させる。希釈ブロック131の数は係る例に限定されるものではない。例えば、1つの希釈ブロック131で3段階の混合を行ってもい。また、制御部110に設けられるパイプ111の分岐の数は、希釈ブロック131の流路の数に応じて設けられる。また、希釈ブロック131において混合された気体は、前段の匂い供給部120又は希釈ブロック131に逆流しない様に弁が設けられ得る。
【0026】
ここで、希釈ブロック131について詳細に説明する。希釈ブロック131は、内部に流路が形成された熱伝導性のブロックである。熱伝導性のブロックとは、熱伝導性の材料の塊であり、その形状は特に限定されない。例えば、角柱、円柱、又は直方体の角材であってもよい。図1の希釈ブロック131では、熱伝導性のブロック内に、制御部110から供給されるエアーのための流路と、匂い供給部120から供給される匂い成分のための流路が、それぞれ少なくとも1つ形成される。更に、両流路がブロック内で合流し、匂い成分とエアーとが混合された気体を排出するための流路が形成される。更に、不要な匂い成分を除去するための流路が少なくとも1つ形成される。希釈ブロック131内に形成される流路の数は特に限定されない。なお、図1では希釈ブロック131は、それぞれが別個のブロックで形成されているが、希釈機能を1つの希釈ブロック131で形成してもよい。内部に複数の分岐を有する希釈ブロックの例は、図4を用いて後述する。このように、匂い成分の希釈を、配管ではなく流路が形成されたブロック内で行うことにより、匂い放出装置を小型化することができる。
【0027】
希釈ブロック131は、熱伝導性を有する材料から形成されることが好ましい。例えば、希釈ブロックは金属製とすることができる。特に、熱伝導性に優れたアルミニウム又は銅から形成されることが好ましい。このように、希釈ブロック131を、熱伝導性を有するブロックで形成すると、流路の加熱が必要な場合にはブロック自体を加熱すればよく、内部に形成された流路を均一に加熱することができる。よって、流路の途中にクーリングポイントが発生するのを回避できる。また、加熱を必要とする部位をブロック内に集約させているため、ヒータの小型化等、加熱機構を簡素化できる。その結果、匂い放出装置全体の構成を小型化できるとともに、加熱に要するエネルギーを低減させることができる。
【0028】
希釈ブロック131に形成された流路の内表面は、少なくとも一部に表面処理加工が施されてもよい。例えば、アモルファスシリカ層のコーティングを施してもよい。具体的には、ジーエルサイエンス社製のInert Maskを挙げることができる。表面処理加工により流路の内表面を改質して不活性化させ、非吸着性を向上させることができる。また、表面処理加工により匂い成分同士の反応も抑制することができる。
【0029】
希釈ブロック131は、長手方向の長を5cm~30cmとすることができる。好ましくは10cm~15cmである。このように、希釈機能の大幅な小型化が可能となる。また、流路の内径は、0.5mm~4.35mmである。好ましくは、0.5mm~2.18mmであり、特に好ましくは1.0mm~2.18mmである。流路の内径が0.5mm以上であると通気抵抗が少なく、かつ匂い成分とエアーとの混合が十分に行われるため好ましい。流路の内径が4.35mm以下であると時間の経過に対して希釈後の匂い成分の濃度が安定的であるため好ましい。
【0030】
希釈ブロック131は、所定の温度、例えば室温より数度~350数度程度高い温度に加熱されてもよく、好ましくは、室温より150度~200度程度高い温度に加熱されてもよい。加熱方法は特に限定されず、希釈ブロック131が例えばヒータ(不図示)を備えてもよい。なお、匂い供給部120と希釈ブロック131の温度は、別々に制御されてもよく、共に制御されてもよい。
【0031】
排出部140は、希釈部130に残留したエアーを排出する。希釈部130に残留したエアーを排出するのは、連続して嗅覚検査を行う際に、希釈部130にエアーが残っていると正確な倍率で希釈が出来ない可能性があるからである。排出部140は、パイプ141に流れるエアーの流量を計測する流量計142、パイプ141に流れるエアーの流量を調整する電磁バルブ143、及びパイプ141のエアーを外部に放出するポンプ144を備える。パイプ141、流量計142、電磁バルブ143及びポンプ144は、希釈部130のラインのそれぞれに対して設けられる。図1に示した例では、パイプ141、流量計142、電磁バルブ143及びポンプ144は、それぞれ4つ設けられている。従って、排出部140は、希釈部130のラインのそれぞれに残留した、匂い成分を含んだエアーを独立して排出させることができる。なお、排出部140が排出したエアーは、図示しない容器などに蓄積させてもよい。
【0032】
匂い放出部150からは希釈部130で希釈された匂い成分が放出される。被検査者は、匂い放出部150に鼻腔部を当てることで、匂い放出部150から放出される匂いを嗅ぐことができる。
【0033】
このように、匂い放出装置10は、図1示した構成を有することで、任意の倍率に希釈された匂い成分を匂い放出部150から放出させることができる。なお、制御部110と匂い供給部120、制御部110と希釈部130、希釈部130と排出部140は、それぞれコネクタで接続されており、取り外しが可能であるよう構成されてもよい。
【0034】
[匂い検査装置20]
続いて、匂い放出装置10を用いて被検査者の嗅覚検査を行う匂い検査装置20の構成例を説明する。
【0035】
匂い検査装置20は、被検査者の嗅覚検査に用いられる装置であり、例えばパーソナルコンピュータ、ワークステーション等のコンピュータである。匂い検査装置20は、匂い放出装置10が放出した匂いがどんな匂いであるかを被検査者に回答させることで、被検査者の嗅覚を検査するための装置である。匂い検査装置20は、被検査者に匂いの選択肢を提示する。匂い検査装置20は、被検査者の回答に応じて、匂い放出装置10から放出する匂いの濃度を上げたり、被検査者の嗅覚の判定を行ったりすることができる。
【0036】
図2は、匂い検査装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0037】
図2に示すように、匂い検査装置20は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、ストレージ24、入力部25、表示部26及び通信インタフェース(I/F)27を有する。各構成は、バス29を介して相互に通信可能に接続されている。
【0038】
CPU21は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU21は、ROM22又はストレージ24からプログラムを読み出し、RAM23を作業領域としてプログラムを実行する。CPU21は、ROM22又はストレージ24に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM22又はストレージ24には、被検査者の嗅覚検査を行う嗅覚検査プログラムが格納されている。
【0039】
ROM22は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM23は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ24は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリ等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0040】
入力部25は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0041】
表示部26は、たとえば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部26は、タッチパネル方式を採用して、入力部25として機能しても良い。
【0042】
通信インタフェース27は、匂い放出装置10等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0043】
上記の嗅覚検査プログラムを実行する際に、匂い検査装置20は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。匂い検査装置20が実現する機能構成について説明する。
【0044】
図3は、匂い検査装置20の機能構成の例を示すブロック図である。
【0045】
図3に示すように、匂い検査装置20は、機能構成として、提示部201、変更部202及び決定部203を有する。各機能構成は、CPU21がROM22又はストレージ24に記憶された嗅覚検査プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0046】
提示部201は、嗅覚検査のための画面を表示部26に提示する。提示部201が提示する嗅覚検査のための画面は、匂い放出装置10が放出する匂いの正解の選択肢、匂い放出装置10が放出した匂いではない不正解の選択肢、匂いを感じるが何の匂いか分からない旨の選択肢、匂いを感じない旨の選択肢を含んだ画面であってもよい。
【0047】
変更部202は、匂い放出装置10が放出する匂いの濃度の変更を匂い放出装置10に指示する。被検査者の嗅覚検査を行う場合は、まず匂い放出装置10が放出できる最も低い濃度の匂いを匂い放出装置10から放出させて、被検査者に匂いを嗅がせて、提示部201が提示した選択肢を被検査者に選択させる。変更部202は、提示部201が提示した選択肢の被検査者の選択に応じて、匂い放出装置10が放出する匂いの濃度の変更を匂い放出装置10に指示する。
【0048】
変更部202は、匂い放出装置10が匂い放出部150から匂いを放出している間に、当該匂いの希釈倍率を変化させてもよい。匂い放出部150から匂いを放出している間に匂いの希釈倍率を変化させることで、検査中の濃度の変化を被検査者が感じたかどうかの検査を行うことができる。
【0049】
決定部203は、提示部201が提示した選択肢に対する被検査者の選択結果に応じて、被検査者の嗅覚の検知閾値及び認知閾値を決定する。決定部203は、被検査者が匂いを感じないと回答した次の段階の濃度において、不正解の匂いの選択肢、又は匂いを感じたが何の匂いか分からないという選択肢を選択した場合、その濃度を被検査者の検知閾値とする。また、決定部203は、被検査者が不正解の匂いの選択肢、又は匂いを感じたが何の匂いか分からない選択肢を選択した次の段階の濃度において、正解の匂いの選択肢を選択した場合、その濃度を被検査者の認知閾値とする。
【0050】
匂い検査装置20は、図3に示した構成を有することで、濃度を段階的に上げながら匂い放出装置10から放出された匂いを被検査者に嗅がせて、被検査者の匂いの検知閾値及び認知閾値を一度の検査で求めることができる。匂い検査装置20は、図3に示した構成を有することで、検査において生じていた曖昧さを排除した嗅覚検査を行うことが可能となる。
【0051】
[匂い放出装置30]
図4は、他の実施形態に係る匂い放出装置を例示する、匂い放出装置30の概略構成を示す図である。上述の匂い放出装置10に代えて匂い放出装置30を匂い検査装置20と組み合わせて嗅覚検査を行ってもよい。匂い放出装置30も同様に、嗅覚検査を受ける被検査者に対して匂いを放出する装置である。匂い放出装置30もまた、嗅覚検査の際に、匂いの素となる匂い物質がガス化した気体(以後、匂い成分とする)を所定の倍率に希釈して放出する。
【0052】
匂い放出装置30は、匂い物質が収納される匂い物質313、マスフローコントローラ314、バルブ315、ポンプ316、脱臭フィルターが収納される脱臭フィルター317、匂い放出口318を備える。それぞれの構成要素は、図4に示すように、気体の流路となるパイプで接続されている。パイプは、ステンレス、銅、又はテフロン(登録商標)チューブで形成することができる。匂い放出装置30では、図4に示す希釈ブロック319の範囲が内部に流路を有する金属製のブロックで形成される。希釈ブロック319は、匂い放出装置10で説明した希釈ブロック131と同様の形状、材料で形成することができる。
【0053】
匂い放出装置30では、希釈ブロック319に供給される気体は、7つのラインに分岐したパイプ311a~311gから供給される。希釈ブロック319から排出される気体は、5つのライン(パイプ312a~312e)から排出される。パイプ311a~311cは、匂い成分を供給するラインであり、パイプ311d~311gは、匂い成分を希釈する空気を供給するラインである。また、パイプ312a~312dは、不要な匂いを排出するラインであり、パイプ312eは、被検査者が嗅ぐための匂いを匂い放出口318まで運ぶラインである。なお、希釈ブロック319の材料、寸法等について、希釈ブロック131と同様の説明は省略する。
【0054】
図4の匂い放出装置30の動作の一例を説明する。匂い放出装置30では、3種類の匂い物質から3種類の匂い成分を、単体又は複数組み合わせて、希釈/混合することができる。匂い物質313から供給された匂い成分は、一度パイプ311dからの無臭空気で希釈される(1次希釈)が、パイプ312aからその一部(1~99%の間)が抜き取られる。そこで残された気体は、再度パイプ311eからの無臭空気で希釈され(2次希釈)、再度パイプ312bからその一部が抜き取られる。そこで残された気体は、再度パイプ311fからの無臭空気で希釈され(3次希釈)、再度パイプ312cからその一部が抜き取られる。そこで残された気体は、再度パイプ311gからの無臭空気で希釈され(4次希釈)、におい放出口318まで到達する。このように、1つの希釈ブロック内で最大4段階の希釈を行うことができる。パイプ312dの排気ラインは、被検査者に匂いを提示しないときに作動し、匂いを提示するときには停止する。このように動作することで、匂い放出口318まで到達する匂い成分の有無を切り替えることができる。パイプ312dの排気ラインは、4次希釈の気体より少し多めの流量とすることが好ましい。なお、4次希釈まで必要がない場合には、任意の無臭空気ライン(311e、311f、311g)、任意の排気ライン(312a、312b、312c)に通ずるバルブを閉じることにより、希釈次数を任意に調整することができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これら各種の変更例又は修正例についても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例0056】
希釈ブロックの流路径の違いによる希釈後の気体の濃度安定性を評価するため、流路径の異なる希釈ブロック319を用いて以下の実験を行った。3段階の希釈倍率で希釈した気体を順次生成し、PIDセンサ(光イオン化式センサ、Aurora Scientific製)を用いて濃度の安定性を評価した。時間分解能は10Hzとした。
[条件]
・アルミニウム製希釈ブロックの温度:150℃
・匂い成分:トルエン
・流路径水準:4.35mm、2.18mm
[結果]
図5は、流路径4.35mmの希釈ブロックを用いたときの時間の経過に対するPIDセンサの強度(すなわち匂い成分の濃度)と、流路径2.18mmの希釈ブロックを用いたときの時間の経過に対するPIDセンサの強度(すなわち匂い成分の濃度)を示す。図5から、流路径2.18mmの希釈ブロックを用いると、匂い成分の濃度のふらつきが小さく、より安定して成分希釈ができることがわかった。したがって、より安定した嗅覚検査を行うためには、流路径を2.18mm以下とすることが特に好ましいといえる。
【0057】
次に、希釈ブロックを用いて希釈したときに、希釈倍率と希釈された気体の濃度に相関関係があることを確認するため、以下の実験を行った。3段階の希釈倍率で希釈した気体を順次生成し、PIDセンサ(光イオン化式センサ、Aurora Scientific製)を用いて気体の濃度を評価した。
[条件]
・アルミニウム製希釈ブロックの温度:150℃
・匂い成分:リモネン
・希釈ブロックの流路径:2.18mm
希釈倍率を以下の通り決定し、希釈倍率での気体の濃度を測定した。
・1次希釈気体(図6では100%と表記)、
・1次希釈気体を2倍希釈した気体(図6では50%と表記)、
・2倍希釈した気体を2倍希釈した気体(図6では25%と表記)、
・空気(匂い成分無し、図6では0%と表記)
[結果]
図6は従来の配管で形成された流路で希釈された場合の、希釈倍率とPIDセンサの強度(すなわち匂い成分の濃度)と、アルミニウム製希釈ブロックで希釈された場合の、希釈倍率とPIDセンサの強度(すなわち匂い成分の濃度)を示す。アルミニウム製希釈ブロックを用いた場合も、従来の配管で形成された流路と同様に希釈倍率と匂い成分の濃度に相関関係があった。よって、従来の流路と同等の精度で希釈できることが確認された。
【0058】
本願の課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1> 匂い物質を空気と混合して放出する匂い放出装置であって、
前記匂い物質が任意の倍率に希釈されるように、前記匂い物質を前記空気で希釈する希釈ブロックを備え、
前記希釈ブロックは、内部に流路が形成された金属製のブロックであり、
前記匂い物質が進入する流路と、前記空気が進入する流路が、前記希釈ブロックの内部で合流することにより、前記匂い物質が希釈されて前記希釈ブロックから排出される、匂い放出装置。
<2> 前記流路の内表面の少なくとも一部に、前記匂い物質が吸着するのを低減させるための表面処理加工が施された、<1>に記載の匂い放出装置。
<3> 前記希釈ブロックを加熱するための加熱機構を備える、<1>又は<2>に記載の匂い放出装置。
<4> 前記希釈ブロックは、アルミニウム又は銅を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の匂い放出装置。
<5> 前記流路の内径は、0.5mm~4.35mmである、<1>~<4>のいずれか1つに記載の匂い放出装置。
<6> 前記希釈ブロック内において前記匂い物質と前記空気が合流する位置と、希釈された前記匂い物質を前記希釈ブロックから排出させる位置との距離が6cm以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の匂い放出装置。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の匂い放出装置が放出した匂いを嗅いだ被検査者に、匂いの選択肢を提示する提示部を備える、匂い検査装置。
【符号の説明】
【0059】
1 匂い検査システム
10 匂い放出装置
20 匂い検査装置
30 匂い放出装置
110 制御部
111 パイプ
112 流量計
113 電磁バルブ
114 加湿装置
120 匂い供給部
121 液体の匂い物質
130 希釈部
131 希釈ブロック
132 活性炭
133 バルブ
140 排出部
141 パイプ
142 流量計
143 電磁バルブ
144 ポンプ
150 匂い放出部
311 パイプ
312 パイプ
313 匂い物質(Odor)
314 マスフローコントローラ(MFC)
315 バルブ
316 ポンプ
317 脱臭フィルター(Filter)
318 匂い放出口
319 希釈ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6