(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128887
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240913BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240913BHJP
A61B 6/04 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61B8/14
A61B6/00 330Z
A61B6/00 370
A61B6/04 309B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038161
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 久嗣
(72)【発明者】
【氏名】延山 理紗子
(72)【発明者】
【氏名】菅原 將高
(72)【発明者】
【氏名】谷内 光史
【テーマコード(参考)】
4C093
4C601
【Fターム(参考)】
4C093AA07
4C093CA16
4C093CA18
4C093DA06
4C093ED21
4C093FA36
4C601DD08
4C601EE11
4C601JC37
(57)【要約】
【課題】異常が疑われる部位が乳房の端部にあっても、本開示を実施しない場合と比較して圧迫部材と乳房との間の空隙の影響を低減した超音波画像を得ることができる制御装置、制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】コンソール50は、少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、撮影台と圧迫部材との間で圧迫状態とされた乳房の第1関心領域を特定し、第1関心領域が圧迫部材と接近するように、乳房が圧迫状態とされたまま少なくとも圧迫部材を回転させるよう制御し、回転させた圧迫部材を介して、第1関心領域の超音波画像を撮影するよう制御する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
撮影台と圧迫部材との間で圧迫状態とされた乳房の第1関心領域を特定し、
前記第1関心領域が前記圧迫部材と接近するように、前記乳房が圧迫状態とされたまま少なくとも前記圧迫部材を回転させるよう制御し、
回転させた前記圧迫部材を介して、前記第1関心領域の超音波画像を撮影するよう制御する
制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記第1関心領域が前記圧迫部材と接触しているか否かを判定し、
前記第1関心領域が前記圧迫部材と接触していないと判定した場合に、前記第1関心領域が前記圧迫部材と接近するように、前記圧迫部材を回転させるよう制御する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記第1関心領域の超音波画像を取得し、
前記超音波画像に基づいて、前記第1関心領域が前記圧迫部材と接触しているか否かを判定する
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記第1関心領域の超音波画像において不連続に信号値が変化する部分がある場合に、前記圧迫部材と接触していないと判定する
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
圧迫状態とされた前記乳房の放射線画像を取得し、
前記放射線画像における第2関心領域の位置を特定し、
前記第2関心領域に対応する前記乳房の領域を前記第1関心領域として特定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記放射線画像をディスプレイに表示させるよう制御し、
前記放射線画像における第2関心領域の位置の指定を受け付ける
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記放射線画像における第2関心領域を抽出する
請求項5に記載の制御装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記圧迫部材を、前記乳房の胸壁側から乳頭側へ延びる軸回りに回転させるよう制御する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
撮影台と圧迫部材との間で圧迫状態とされた乳房の第1関心領域を特定し、
前記第1関心領域が前記圧迫部材と接近するように、前記乳房が圧迫状態とされたまま少なくとも前記圧迫部材を回転させるよう制御し、
回転させた前記圧迫部材を介して、前記第1関心領域の超音波画像を撮影するよう制御する
処理を含む制御方法。
【請求項10】
撮影台と圧迫部材との間で圧迫状態とされた乳房の第1関心領域を特定し、
前記第1関心領域が前記圧迫部材と接近するように、前記乳房が圧迫状態とされたまま少なくとも前記圧迫部材を回転させるよう制御し、
回転させた前記圧迫部材を介して、前記第1関心領域の超音波画像を撮影するよう制御する
処理をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳房の放射線画像を撮影するマンモグラフィ装置が知られている。また、病巣の検出精度の向上及び検査の効率化といった観点から、放射線画像に加えて乳房の超音波画像も撮影可能な装置が提案されている。例えば、特許文献1には、圧迫部材によって圧迫状態とされた乳房の放射線画像と超音波画像とを撮影する装置が開示されている。特許文献1に記載の装置においては、超音波プローブが、圧迫部材の上面(被検者の乳房が配置される側と反対側の面)に沿って移動している。また例えば、特許文献2には、超音波を受信する振動子群を圧迫板の内部に備え、圧迫板の内部の圧力を調整することで、被検体の乳房と接する接触面積を増大させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-176509号公報
【特許文献2】特開2020-000446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超音波画像は、超音波を物体に照射してその反射波を受信するという原理上、超音波の照射部から物体までの間に空隙があると画像は不明瞭になってしまう。したがって、圧迫状態の乳房を超音波撮影する場合、圧迫部材と乳房との間に空隙が生じないよう密着させることが望まれる。しかしながら、乳房は中央部が最も厚みがあるため、圧迫部材によって乳房を圧迫しても、特に端部において圧迫部材との間に空隙が生じてしまう場合があった。異常が疑われる部位がこの乳房の端部にあると、適切な画像診断ができない場合があった。
【0005】
本開示は、異常が疑われる部位が乳房の端部にあっても、本開示を実施しない場合と比較して圧迫部材と乳房との間の空隙の影響を低減した超音波画像を得ることができる制御装置、制御方法及び制御プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、撮影台と圧迫部材との間で圧迫状態とされた乳房の第1関心領域を特定し、第1関心領域が圧迫部材と接近するように、乳房が圧迫状態とされたまま少なくとも圧迫部材を回転させるよう制御し、回転させた圧迫部材を介して、第1関心領域の超音波画像を撮影するよう制御する。
【0007】
上記第1の態様において、プロセッサは、第1関心領域が圧迫部材と接触しているか否かを判定し、第1関心領域が圧迫部材と接触していないと判定した場合に、第1関心領域が圧迫部材と接近するように、圧迫部材を回転させるよう制御してもよい。
【0008】
上記第1の態様において、プロセッサは、第1関心領域の超音波画像を取得し、超音波画像に基づいて、第1関心領域が圧迫部材と接触しているか否かを判定してもよい。
【0009】
上記第1の態様において、プロセッサは、第1関心領域の超音波画像において不連続に信号値が変化する部分がある場合に、圧迫部材と接触していないと判定してもよい。
【0010】
上記第1の態様において、プロセッサは、圧迫状態とされた乳房の放射線画像を取得し、放射線画像における第2関心領域の位置を特定し、第2関心領域に対応する乳房の領域を第1関心領域として特定してもよい。
【0011】
上記第1の態様において、プロセッサは、放射線画像をディスプレイに表示させるよう制御し、放射線画像における第2関心領域の位置の指定を受け付けてもよい。
【0012】
上記第1の態様において、プロセッサは、放射線画像における第2関心領域を抽出してもよい。
【0013】
上記第1の態様において、プロセッサは、圧迫部材を、乳房の胸壁側から乳頭側へ延びる軸回りに回転させるよう制御してもよい。
【0014】
本開示の第2の態様は、制御方法であって、撮影台と圧迫部材との間で圧迫状態とされた乳房の第1関心領域を特定し、第1関心領域が圧迫部材と接近するように、乳房が圧迫状態とされたまま少なくとも圧迫部材を回転させるよう制御し、回転させた圧迫部材を介して、第1関心領域を含む乳房の超音波画像を撮影するよう制御する処理を含む。
【0015】
本開示の第3の態様は、制御プログラムであって、撮影台と圧迫部材との間で圧迫状態とされた乳房の第1関心領域を特定し、第1関心領域が圧迫部材と接近するように、乳房が圧迫状態とされたまま少なくとも圧迫部材を回転させるよう制御し、回転させた圧迫部材を介して、第1関心領域を含む乳房の超音波画像を撮影するよう制御する処理をコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0016】
上記態様によれば、本開示の撮影装置、撮影システム、制御方法及び制御プログラムは、異常が疑われる部位が乳房の端部にあっても、本開示を実施しない場合と比較して圧迫部材と乳房との間の空隙の影響を低減した超音波画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】撮影システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図3】圧迫部材の概略構成の一例を示す三面図である。
【
図4】圧迫部材の概略構成の一例を示す三面図である。
【
図7】コンソールのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】コンソールの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】ディスプレイに表示される画面の一例を示す図である。
【
図13】第1実施例に係る制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】第2実施例に係る制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】第3実施例に係る制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】圧迫部材及び撮影台の回転を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。
【0019】
まず、
図1を参照して、撮影システム1の構成について説明する。
図1は、撮影システム1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、撮影システム1は、撮影装置10及びコンソール50を備える。撮影装置10とコンソール50、コンソール50と外部のRIS(Radiology Information System)6は、有線又は無線のネットワークを介して接続可能に構成されている。
【0020】
撮影システム1においては、コンソール50がRIS6から撮影オーダ等を取得し、当該撮影オーダ及びユーザの指示等に応じて、撮影装置10の制御を行う。撮影装置10は、圧迫部材40によって圧迫状態とされた被検者の乳房を被写体として、放射線画像及び超音波画像を取得する。コンソール50が、本開示の制御装置の一例である。
【0021】
次に、
図2を参照して、撮影装置10の概略構成について説明する。
図2は、撮影装置10の外観の一例を示す側面図であり、被検者の右側から撮影装置10を見た場合の図である。
図2に示すように、撮影装置10は、放射線源17Rと、放射線検出器28と、放射線源17Rと放射線検出器28との間に配置された撮影台16と、撮影台16との間で乳房2を圧迫する圧迫部材40と、放射線源17Rと圧迫部材40との間に配置された超音波プローブ30と、を備える。撮影装置10では、医師及び技師等のユーザによって、撮影台16の撮影面16A上に被検者の乳房2がポジショニングされる。
【0022】
撮影装置10は、アーム部12、基台14及び軸部15を備える。アーム部12は、基台14によって、上下方向(Z方向)に移動可能に保持される。軸部15は、アーム部12を基台14に連結する。アーム部12は、軸部15を回転軸αとして、基台14に対して相対的に回転可能となっている。また、アーム部12は、放射線照射部17を備える上部と撮影台16を備える下部とで別々に、軸部15を回転軸αとして、基台14に対して相対的に回転可能となっていてもよい。
【0023】
アーム部12は、放射線照射部17及び撮影台16を備える。放射線照射部17は、放射線源17Rを備え、放射線源17Rから照射される放射線(例えばX線)の照射野を変更可能に構成されている。照射野の変更は、例えば、ユーザが操作部26を操作することで行われてもよいし、取り付けられた圧迫部材40の種類に応じて制御部20が行うものであってもよい。放射線源17Rは、圧迫部材40によって圧迫状態とされた乳房に放射線Rを照射する。
【0024】
撮影台16は、制御部20、記憶部22、I/F(Interface)部24、操作部26及び放射線検出器28を備える。制御部20は、コンソール50の制御に応じて、撮影装置10の全体の動作を制御する。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備える(図示省略)。ROMには、CPUで実行される、放射線画像及び超音波画像の取得に関する制御を行うためのプログラムを含む各種プログラムが予め記憶されている。RAMは、各種データを一時的に記憶する。
【0025】
記憶部22には、放射線画像及び超音波画像のデータ及びその他の各種情報等が記憶される。記憶部22は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)及びフラッシュメモリ等の記憶媒体によって実現される。
【0026】
I/F部24は、有線通信又は無線通信により、コンソール50との間で各種情報の通信を行う。具体的には、I/F部24は、コンソール50から撮影装置10の制御に関する情報を受信する。また、I/F部24は、コンソール50に対して、放射線画像及び超音波画像のデータを送信する。
【0027】
操作部26は、撮影台16等に設けられた、ユーザが手又は足等で操作可能なパーツであり、例えばスイッチ、ボタン及びタッチパネル等である。また例えば、操作部26は、ユーザによる音声入力を受け付けてもよい。
【0028】
放射線検出器28は、撮影台16の内部に配置され、乳房及び撮影台16を透過した放射線Rを検出し、検出した放射線Rに基づいて放射線画像を生成し、生成した放射線画像を表す画像データを出力する。なお、放射線検出器28の種類は特に限定されず、例えば、放射線Rを光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器であってもよいし、放射線Rを直接電荷に変換する直接変換方式の放射線検出器であってもよい。
【0029】
また、アーム部12には、プローブユニット38及び圧迫ユニット48が連結される。プローブユニット38には、超音波プローブ30を着脱可能に支持する支持部36が取り付けられる。プローブユニット38に備えられた駆動部(図示省略)によって、支持部36(超音波プローブ30)が上下方向(Z方向)及び水平方向(X方向及びY方向)に移動される。また、支持部36は、プローブユニット38との係合部を回転軸として、基台14に対して相対的に回転可能となっていてもよい。支持部36は、放射線Rを透過する材料で形成されていることが好ましい。
【0030】
超音波プローブ30は、圧迫部材40によって圧迫状態とされた乳房の超音波画像を得るためのものであり、放射線源17Rと圧迫部材40との間に配置され、超音波を圧迫部材40を介して乳房に照射し、乳房からの反射波を受信する。具体的には、超音波プローブ30は、超音波トランスデューサアレイを備える。超音波トランスデューサアレイは、複数の超音波トランスデューサが一次元状又は二次元状に配列された構成である。超音波トランスデューサは、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(lead) Zirconate Titanate)に代表される圧電セラミック、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF:Polyvinylidene Difluoride)に代表される高分子圧電素子等の圧電体の両端に電極を形成してなる。また、プローブユニット38には、超音波プローブ30が受信した乳房からの反射波を超音波画像に変換する変換器(図示省略)が内包され、変換器によって超音波画像が得られる。
【0031】
また、撮影装置10には、互いに異なる複数種類の超音波プローブ30が取付可能であってもよい。例えば、被検者の体格(例えば乳房の大きさ)、乳房の組織構成(例えば脂肪量及び乳腺量)、並びに撮影の種類(例えば拡大撮影及びスポット撮影)等に応じて、それぞれ異なる種類の超音波プローブ30が用意され、撮影装置10に着脱できるようになっていてもよい。例えば、中心周波数が約7.5MHzのリニア型プローブ(表在等用)、中心周波数が約3.5MHzのコンベックス型プローブ(腹部等用)、及び中心周波数が約2.5MHzのセクタ型プローブ(心臓等用)等の、性能及び寸法が異なる超音波プローブ30を選択的に用いてもよい。
【0032】
圧迫ユニット48には、圧迫部材40を支持する支持部46が着脱可能に取り付けられる。圧迫ユニット48に備えられた駆動部(図示省略)によって、支持部46(圧迫部材40)が上下方向(Z方向)に移動される。また、支持部46は、圧迫ユニット48との係合部を回転軸として、基台14に対して相対的に回転可能となっていてもよい。すなわち、圧迫部材40は、乳房の胸壁側から乳頭側へ延びる軸(Y方向へ延びる軸)回りに回転可能となっていてもよい。
【0033】
圧迫部材40は、撮影面16A上に配置される乳房を圧迫状態とするためのものである。具体的には、圧迫部材40は、放射線源17Rと撮影台16との間に配置され、撮影台16との間で乳房を挟み込むことによって、乳房を圧迫状態にする。
図3に、圧迫部材40の一例の三面図を示す。
図3の三面図には、圧迫部材40を上側(放射線照射部17側)から見た上面図、被検者側から見た側面図、及び被検者の右側から見た側面図が含まれる。
図3に示すように、圧迫部材40は、圧迫部42及び支持部46を含む。
【0034】
支持部46は、取付部47及び腕49を含む。取付部47は、圧迫部材40を撮影装置10、具体的には圧迫ユニット48の駆動部に取り付ける。腕49は、圧迫部42を支持する。
【0035】
圧迫部42は、高さが略一様の壁部44によって、略平坦に構成された底部43が囲まれ、断面形状が凹型に形成されている。圧迫部42は、乳房の圧迫においてポジショニング及び圧迫状態の確認を行うために、光学的に透明又は半透明の材料で形成されることが好ましい。また、圧迫部42は、放射線R及び超音波の透過性に優れた材料で形成されることが好ましい。また、圧迫部42は、例えば落下強度及び圧縮強度等の強度に優れた材料で形成されることが好ましい。
【0036】
このような材料としては、例えば、ポリメチルペンテン(PMP:Polymethylpentene)、ポリカーボネート(PC:Polycarbonate)、アクリル、ポリプロピレン(PP:Polypropylene)及びポリエチレンテレフタラート(PET:Polyethylene Terephthalate)等の樹脂を用いることができる。特にポリメチルペンテンは、超音波の透過率及び反射率に影響する音響インピーダンスが、他の材料と比較して人体(乳房)と近い値となっており、超音波画像に与えるノイズの割合を低下できる。したがって、圧迫部42の材料としては、ポリメチルペンテンが好適である。
【0037】
また、撮影装置10には、互いに異なる複数種類の圧迫部材40が取付可能であってもよい。例えば、被検者の体格(例えば乳房の大きさ)、乳房の組織構成(例えば脂肪量及び乳腺量)、並びに撮影の種類(例えば拡大撮影及びスポット撮影)等に応じて、それぞれ異なる種類の圧迫部材40が用意され、撮影装置10に着脱できるようになっていてもよい。具体的には、乳房の大きさに応じた圧迫部材、腋窩撮影用の圧迫部材、拡大撮影用の圧迫部材、並びに、病変が存在する領域のみの放射線画像を撮影する、いわゆるスポット撮影用の圧迫部材等を用いてもよい。すなわち、圧迫部材40は、乳房全体を圧迫するものに限らず、乳房の一部を圧迫するような乳房よりも小さいものであってもよい。
【0038】
図4に、
図3の圧迫部材40と異なる他の形態の一例として、小乳房用の圧迫部材40Sの三面図を示す。
図4の三面図には、圧迫部材40Sを上側(放射線照射部17側)から見た上面図、被検者側から見た側面図、及び被検者の右側から見た側面図が含まれる。圧迫部材40Sは、
図3の圧迫部材40と同様に、圧迫部42及び支持部46を含む。圧迫部材40Sにおいては、底部43が平坦ではなく、胸壁側(取付部47から離れた側)に比べて、取付部47側が高くなっている。また、壁部44は、高さが一様ではなく、胸壁側の一部の高さが、その他の部分の高さに比べて低くなっている。このような形状によって、圧迫部材40Sは、小さい乳房であってもポジショニング及び圧迫が容易となっている。
【0039】
このように、撮影装置10においては、乳房を圧迫状態とするための圧迫部材40、及び超音波画像を取得するための超音波プローブ30の少なくとも一方を着脱可能としてもよい。すなわち、撮影装置10には、それぞれ寸法の異なる複数種類の圧迫部材40及び超音波プローブ30が取付可能であってもよい。この場合、撮影装置10は、取り付けられている圧迫部材40及び超音波プローブ30の種類を検出してもよい。
【0040】
例えば、圧迫部材40の取付部47に、圧迫部材40の種類ごとに配置が異なる複数のピンを識別情報として設け、圧迫ユニット48に設けられたピンの配置の検知が可能なセンサ(例えばフォトインタラプタ等)によって、識別情報を読み取ってもよい。また例えば、圧迫部材40の任意の位置に圧迫部材40の種類に応じたマーカ(例えばバーコード及び二次元コード等)を識別情報として設け、当該マーカを検出可能なセンサ(例えばCCD(Charge Coupled Device)センサ等)によって、識別情報を読み取ってもよい。
【0041】
また例えば、圧迫部材40の任意の位置に圧迫部材40の種類に応じた識別情報を有するRFID(Radio Frequency Identification)タグを設け、当該RFIDタグを読取可能なRFIDリーダによって、識別情報を読み取ってもよい。また例えば、圧迫部材40の種類ごとの重さと識別情報とを対応付けて予め記憶部22に記憶しておき、重さを検出可能なセンサによって取り付けられた圧迫部材40の重さを測定し、測定値に基づいて識別情報(圧迫部材40の種類)を特定してもよい。
【0042】
超音波プローブ30についても同様に、例えばピン、マーカ、RFIDタグ及び重さ等に応じて、取り付けられた超音波プローブ30の種類を識別してもよい。
【0043】
なお、圧迫部材40の底部43の上面43A及び/又は乳房との接触面43Bには、ゲル状又は液状の超音波透過性を有する媒質が塗布されていてもよい。このような媒質としては、例えば、人体(乳房)の音響インピーダンスに近い音響インピーダンスを有する公知の超音波検査用ゼリーを適用できる。すなわち、撮影装置10は、ゲル状又は液状の超音波透過性を有する媒質が塗布された状態の圧迫部材40によって圧迫状態とされた乳房の超音波画像を、圧迫部材40を介して取得してもよい。この場合、超音波プローブ30の超音波放射面と上面43Aとの界面、及び/又は、接触面43Bと乳房との界面に空気が入ることを抑制でき、各界面における音響インピーダンスの差を小さくできるので、超音波画像に与えるノイズの割合を低下できる。
【0044】
なお、撮影装置10による乳房の撮影方式は特に限定されない。例えば頭尾方向(CC:Cranio-Caudal)撮影、内外斜位方向(MLO:Medio-Lateral Oblique)撮影、乳房の一部を撮影する拡大撮影及びスポット撮影等であってもよい。CC撮影は、上下方向(Z方向)に撮影台16と圧迫部材40とで乳房を挟み込むことで、圧迫状態の乳房を撮影する方式である。MLO撮影は、アーム部12の基台14に対する回転角度が45度以上90度未満となるよう傾けた状態で、撮影台16と圧迫部材40とで乳房を挟み込むことで、腋窩部分を含む圧迫状態の乳房を撮影する方式である。
【0045】
また例えば、撮影装置10は、トモシンセシス撮影を行うものであってもよい。トモシンセシス撮影では、照射角度が異なる複数の照射位置の各々から放射線源17Rにより乳房に向けて放射線Rを照射して、複数枚の乳房の放射線画像が撮影される。すなわちトモシンセシス撮影においては、撮影台16、圧迫部材40及び乳房等の角度は固定としたまま、放射線照射部17の基台14に対する回転角度を変えて撮影が行われる。
【0046】
また、撮影装置10では、被検者が起立している状態(立位状態)のみならず、被検者が椅子及び車椅子等に座った状態(座位状態)において、被検者の乳房がポジショニングされるものであってもよい。
【0047】
ところで、超音波画像は、超音波を物体に照射してその反射波を受信するという原理上、超音波プローブ30から物体までの間に空隙があると画像は不明瞭になってしまう。したがって、圧迫状態の乳房2を超音波撮影する場合、圧迫部材40と乳房2との間に空隙が生じないように密着させることが望まれる。
【0048】
しかしながら、乳房2は中央部が最も厚く、端部に行くほど薄くなる形状をしている。
図5は、被検者の胸壁側から乳頭側へ向かって撮影装置10を見た場合の概略図であり、乳房2と圧迫部材40とが接触している部分を太破線で示している。
図5に示すように、圧迫部材40によって乳房2を圧迫しても、端部においては乳房2と圧迫部材40との間に空隙が生じてしまう場合があった。この場合、異常が疑われる部位(関心領域A)が乳房2の端部にあると、空隙の影響により、適切な画像診断ができない場合があった。
【0049】
そこで、本開示のコンソール50は、
図6に示すように、異常が疑われる部位(関心領域A)が乳房2の端部にある場合、当該関心領域Aを含む乳房2の部分が圧迫部材40と接近するように、少なくとも圧迫部材40を回転させるよう制御する。これにより、本開示を実施しない場合と比較して圧迫部材40と乳房2との間の空隙の影響を低減した超音波画像を得る。以下、コンソール50について説明する。
【0050】
図7を参照して、コンソール50のハードウェア構成の一例を説明する。
図7に示すように、コンソール50は、CPU51、不揮発性の記憶部52、及び一時記憶領域としてのメモリ53を含む。また、コンソール50は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ54、タッチパネル、キーボード及びマウス等の操作部55、並びにI/F部56を含む。I/F部56は、撮影装置10、RIS6及びその他外部装置等との有線又は無線通信を行う。CPU51、記憶部52、メモリ53、ディスプレイ54、操作部55及びI/F部56は、システムバス及びコントロールバス等のバス58を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0051】
記憶部52は、例えば、HDD、SSD及びフラッシュメモリ等の記憶媒体によって実現される。記憶部52には、コンソール50における制御プログラム57が記憶される。CPU51は、記憶部52から制御プログラム57を読み出してからメモリ53に展開し、展開した制御プログラム57を実行する。コンソール50としては、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末及びウェアラブル端末等を適宜適用できる。
【0052】
また、記憶部52には、撮影装置10で取得された放射線画像及び超音波画像の画像データ及びその他の各種情報等が記憶される。放射線画像及び超音波画像の画像データは、撮影オーダ及び撮影情報の少なくとも一方と対応付けられて記憶されていてもよい。撮影情報とは、例えば、撮影オーダに含まれる被検者情報及び撮影種目、撮影を行った撮影者(例えば医師及び技師等のユーザ)を示す撮影者情報、撮影を行った日時を示す日時情報、のうち少なくとも1つであってもよい。
【0053】
図8を参照して、コンソール50の機能的な構成の一例について説明する。
図8に示すように、コンソール50は、取得部60、特定部62、判定部64及び制御部66を含む。CPU51が制御プログラム57を実行することにより、CPU51が取得部60、特定部62、判定部64及び制御部66として機能する。
【0054】
(第1実施例)
取得部60は、撮影装置10から、圧迫状態とされた乳房2の放射線画像90を取得する。具体的には、取得部60は、I/F部56を介して撮影装置10の記憶部22に記憶された放射線画像を取得してもよいし、記憶部52に記憶済みの放射線画像を取得してもよいし、外部装置に保存されている放射線画像を取得してもよい。
【0055】
特定部62は、撮影台16と圧迫部材40との間で圧迫状態とされた乳房2の第1関心領域91を特定する。
図9に、乳房2について特定された第1関心領域91の一例を示す。
図9は、被検者の胸壁側から乳頭側へ向かって撮影装置10を見た場合の概略図であり、乳房2と圧迫部材40とが接触している部分を太破線で示している。
【0056】
具体的には、特定部62は、まず取得部60によって取得された放射線画像90における第2関心領域92の位置を特定する。第2関心領域92は、例えば、腫瘍及びがん等が疑われる異常陰影の領域、及び高濃度乳腺(デンスブレスト)となっている領域等である。
【0057】
例えば、特定部62は、操作部55を介してユーザにより指定された領域を第2関心領域92として特定してもよい。
図10は、制御部66によってディスプレイ54に表示される画面D1の一例であり、放射線画像90(マンモグラフィ画像)が含まれている。
図10に示すように、制御部66は、取得部60によって取得された放射線画像90をディスプレイ54に表示させるよう制御し、放射線画像90における第2関心領域92の位置の指定を受け付けてもよい。また、
図10の放射線画像90には、乳房2と圧迫部材40とが接触している接触領域93を破線で示している。
【0058】
また例えば、特定部62は、第2関心領域92の位置の特定方法として、公知のCAD(Computer Aided Detection/Diagnosis)技術を用いた方法を適宜適用してもよい。CAD技術を用いて関心領域を特定する方法としては、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)等の学習モデルを用いた方法を適用できる。例えば、特定部62は、放射線画像を入力とし、当該放射線画像に含まれる関心領域を抽出して出力するよう学習された学習モデルを用いて、放射線画像90における第2関心領域92を抽出してもよい。
【0059】
次に、特定部62は、放射線画像90において特定した第2関心領域92に対応する乳房2の領域を第1関心領域91として特定する。第2関心領域92に対応する乳房2の領域は、例えば、放射線画像90における座標と、圧迫部材40の底部43の位置と、を対応付けることによって、特定できる。
【0060】
判定部64は、特定部62により特定された第1関心領域91が圧迫部材40と接触しているか否かを判定する。具体的には、判定部64は、超音波プローブ30を用いて第1関心領域91を仮で撮影することによって超音波画像を取得する。「仮で」とは、この段階では乳房2の第1関心領域91と圧迫部材40との間には空隙がある可能性があり、良好な超音波画像を得られるとは限らないためである。以下、この仮で超音波撮影することを超音波プレスキャンという。
【0061】
図11に、関心領域Aが明瞭で良好な超音波画像98の一例を示す。
図12に、関心領域Aが不明瞭で不良な超音波画像98Pの一例を示す。
図12に示すように、不良な超音波画像98Pでは、X方向のある座標x1を境界として画素値が急峻に変化している。これは、第1関心領域91と圧迫部材40との間に空隙がある状態(
図5参照)で撮影されたことによって、空隙の影響により画素値が変化しているためである。乳房2と圧迫部材40との間に空隙があると、このような不連続に信号値が変化する部分99が生じる場合がある。換言すれば、圧迫部材40と乳房2との間の空隙を解消することによって、
図11のような良好な超音波画像98を得ることができるようになる。
【0062】
判定部64は、超音波プレスキャンにより得られた超音波画像に基づいて、第1関心領域91が圧迫部材40と接触しているか否かを判定する。例えば上述したように、乳房2と圧迫部材40との間に空隙がある場合、超音波画像において不連続に信号値が変化する部分99が生じる場合がある。そこで、判定部64は、超音波プレスキャンにより得られた第1関心領域91の超音波画像において不連続に信号値が変化する部分99がある場合に、第1関心領域91は圧迫部材40と接触していないと判定する。
【0063】
制御部66は、特定部62により特定された第1関心領域91が圧迫部材40と接近するように、乳房2が圧迫状態とされたまま少なくとも圧迫部材40を回転させるよう制御する。具体的には、制御部66は、判定部64によって第1関心領域91が圧迫部材40と接触していないと判定された場合に、第1関心領域91が圧迫部材40と接近するように、圧迫部材40を回転させるよう制御する。例えば
図6に示すように、制御部66は、圧迫部材40を、乳房の胸壁側から乳頭側へ延びる軸(Y方向へ延びる軸)回りに回転させるよう制御することによって、第1関心領域91が圧迫部材40と接近するようにする。
【0064】
また、制御部66は、回転させた圧迫部材40を介して、第1関心領域91の超音波画像を撮影するよう、超音波プローブ30を制御する。この場合、第1関心領域91が圧迫部材40と接触又は近接している状態で超音波撮影ができるので、圧迫部材40と乳房2との間の空隙の影響を低減した超音波画像が得られる。
【0065】
次に、
図13を参照して、本実施形態に係るコンソール50の作用を説明する。コンソール50において、CPU51が制御プログラム57を実行することによって、
図13に示す制御処理が実行される。制御処理は、例えば、ユーザにより操作部55を介して実行開始の指示があった場合に実行される。
【0066】
ステップS10で、制御部66は、医師及び技師等によってポジショニングされた乳房2を圧迫するよう撮影装置10を制御する。ステップS11で、制御部60は、ステップS10で圧迫された状態の乳房2を放射線撮影するよう撮影装置10を制御する。また、取得部60は、乳房2の放射線画像90を取得する。
【0067】
ステップS12で、特定部62は、ステップS11で取得された放射線画像90における第2関心領域92の位置を特定する。ステップS13で、特定部62は、ステップS12で特定した放射線画像90における第2関心領域92に対応する乳房2の領域を第1関心領域91の位置として特定する。
【0068】
ステップS14で、判定部64は、ステップS13で特定した第1関心領域91を超音波プローブ30を用いて超音波プレスキャンすることによって超音波画像を取得する。ステップS15で、判定部64は、ステップS14で取得した超音波プレスキャンにより得られた超音波画像に基づいて、第1関心領域91が圧迫部材40と接触しているか否かを判定する。
【0069】
ステップS15が否定判定の場合、第1関心領域91は圧迫部材40と接触していないと判定し、ステップS16に移行する。ステップS16で、制御部66は、ステップS13で特定された第1関心領域91が圧迫部材40と接近するように、少なくとも圧迫部材40を回転させるよう制御し、ステップS17に移行する。一方、ステップS15が肯定判定の場合、第1関心領域91は圧迫部材40と接触していると判定し、圧迫部材40を回転させることなく、ステップS17に移行する。
【0070】
ステップS17で、制御部66は、圧迫部材40を介して、第1関心領域91の超音波画像を撮影するよう超音波プローブ30を制御し、本制御処理を終了する。
【0071】
(第2実施例)
以上、コンソール50の機能及び作用の一例について説明したが、本開示のコンソール50は種々の変形が可能である。以下、
図14を参照して第2実施例について説明するが、第1実施例と重複する説明は一部省略する。第1実施例では、放射線撮影を行った後に超音波プレスキャン及び超音波撮影を行う形態について説明したが、第2実施例では、超音波プレスキャンによって乳房2と圧迫部材40とが接触しているか否かを確認した後、放射線撮影及び超音波撮影を行う。
【0072】
コンソール50において、CPU51が制御プログラム57を実行することによって、
図14に示す第2実施例に係る制御処理が実行される。制御処理は、例えば、ユーザにより操作部55を介して実行開始の指示があった場合に実行される。
【0073】
ステップS20で、制御部66は、医師及び技師等によってポジショニングされた乳房2を圧迫するよう撮影装置10を制御する。ステップS23で、特定部62は、乳房2における第1関心領域91の位置を特定する。この場合の第1関心領域91としては、例えば、撮影オーダ等において検査対象部位(例えば腋窩等)が定められている場合に、当該部位を適用できる。
【0074】
ステップS24で、判定部64は、ステップS23で特定した第1関心領域91を超音波プローブ30を用いて超音波プレスキャンすることによって超音波画像を取得する。ステップS25で、判定部64は、ステップS24で取得した超音波プレスキャンにより得られた超音波画像に基づいて、第1関心領域91が圧迫部材40と接触しているか否かを判定する。
【0075】
ステップS25が否定判定の場合、第1関心領域91は圧迫部材40と接触していないと判定し、ステップS26に移行する。ステップS26で、制御部66は、ステップS23で特定された第1関心領域91が圧迫部材40と接近するように、少なくとも圧迫部材40を回転させるよう制御し、ステップS27に移行する。一方、ステップS25が肯定判定の場合、第1関心領域91は圧迫部材40と接触していると判定し、圧迫部材40を回転させることなく、ステップS27に移行する。
【0076】
ステップS27で、制御部66は、ステップS10で圧迫された状態の乳房2を放射線撮影するよう撮影装置10を制御する。ステップS28で、制御部66は、圧迫部材40を介して、第1関心領域91の超音波画像を撮影するよう超音波プローブ30を制御し、本制御処理を終了する。
【0077】
(第3実施例)
次に、
図15を参照して第3実施例について説明する。上述したように、乳房2の端部を超音波撮影しようとすると、乳房2と圧迫部材40が密着していないことから、得られる超音波画像は不明瞭になる可能性が高い。そこで第3実施例では、第1関心領域91が乳房2の端部に位置する場合は、特に圧迫部材40との接触判定を行わずとも、圧迫部材40を回転させる制御を行う。
【0078】
コンソール50において、CPU51が制御プログラム57を実行することによって、
図15に示す第3実施例に係る制御処理が実行される。制御処理は、例えば、ユーザにより操作部55を介して実行開始の指示があった場合に実行される。
【0079】
ステップS30で、制御部66は、医師及び技師等によってポジショニングされた乳房2を圧迫するよう撮影装置10を制御する。ステップS31で、制御部60は、ステップS30で圧迫された状態の乳房2を放射線撮影するよう撮影装置10を制御する。また、取得部60は、乳房2の放射線画像90を取得する。
【0080】
ステップS32で、特定部62は、ステップS31で取得された放射線画像90における第2関心領域92の位置を特定する。ステップS33で、特定部62は、ステップS32で特定した放射線画像90における第2関心領域92に対応する乳房2の領域を第1関心領域91の位置として特定する。ステップS35で、判定部64は、ステップS33で特定された第1関心領域91の位置が、乳房2の中央部に位置するか、端部に位置するかを判定する。
【0081】
ステップS35が否定判定の場合、第1関心領域91は乳房2の端部に位置しており、圧迫部材40と接触していない可能性が高いと判定し、ステップS36に移行する。ステップS36で、制御部66は、ステップS33で特定された第1関心領域91が圧迫部材40と接近するように、少なくとも圧迫部材40を回転させるよう制御し、ステップS37に移行する。一方、ステップS35が肯定判定の場合、第1関心領域91は乳房2の中央部に位置しており、第1関心領域91は圧迫部材40と接触している可能性が高いと判定し、圧迫部材40を回転させることなく、ステップS37に移行する。
【0082】
ステップS37で、制御部66は、圧迫部材40を介して、第1関心領域91の超音波画像を撮影するよう超音波プローブ30を制御し、本制御処理を終了する。
【0083】
以上説明したように、本開示の一態様に係るコンソール50は、少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、撮影台16と圧迫部材40との間で圧迫状態とされた乳房2のうち少なくとも一部を含む第1関心領域91を特定し、第1関心領域91が圧迫部材40と接近するように、少なくとも圧迫部材40を回転させるよう制御し、回転させた圧迫部材40を介して、第1関心領域91の超音波画像を撮影するよう制御する。
【0084】
すなわち、本開示のコンソール50によれば、異常が疑われる部位(第1関心領域91)が乳房2の端部に位置する場合にも、第1関心領域91が圧迫部材40と接触又は近接している状態で超音波撮影ができる。したがって、本開示の技術を実施しない場合と比較して圧迫部材40と乳房2との間の空隙の影響を低減した超音波画像を得ることができる。
【0085】
なお、上記実施形態においては、
図6等に示すように、圧迫部材40のみが第1関心領域91と接近するように回転し、撮影台16は回転しない形態について説明したが、これに限らない。例えば、
図16に示すように、圧迫部材40と撮影台16とが一体となって回転するようにしてもよい。また例えば、アーム部12ごと回転するようにしてもよい。
【0086】
撮影台16及び/又はアーム部12が回転(回転)する場合は、通常、
図2に示すように軸部15を回転軸αとして回転が行われる。この場合、乳房2への負荷が大きくなってしまう。そこで、撮影台16及び/又はアーム部12を回転させる場合は、回転軸αまわりの回転と、基台14による上下方向(Z方向)の移動と、を同時に行うことによって、乳房2の中心βを回転軸として回転するようにすることが好ましい。なお、乳房2の中心βは、例えば、乳房2の圧迫厚さを測定可能なセンサ等により導出できる。
【0087】
また、上記実施形態では、圧迫部材40を乳房2の胸壁側から乳頭側へ延びる軸(
図2のY方向へ延びる軸)回りに回転させる形態について説明したが、回転軸の方向は特に限定されない。具体的には、圧迫部材40を、乳房2の左右へ延びる軸(
図2のX方向へ延びる軸)回りに回転可能に構成してもよい。例えば、乳房2の左右へ延びる軸回りに圧迫部材40を回転させることによって、乳頭付近に圧迫部材40を接近させる(すなわち胸壁側を浮かせる)ことができる。したがって、乳頭付近に第1関心領域91がある場合にも、圧迫部材40と乳房2との間の空隙の影響を低減した超音波画像を得ることができるようになる。
【0088】
また具体的には、圧迫部材40を、乳房2の圧迫方向へ延びる軸(
図2のZ方向へ延びる軸)回りに回転可能に構成してもよい。例えばMLO撮影において、乳房2の圧迫方向へ延びる軸回りに圧迫部材40を回転させることによって、腋窩に食い込むような形で圧迫部材40をフィットさせることができる。したがって、腋窩付近に第1関心領域91がある場合にも、圧迫部材40と乳房2との間の空隙の影響を低減した超音波画像を得ることができるようになる。また、これらの各軸回りの回転を組み合わせてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、コンソール50が本開示の制御装置の一例である形態について説明したが、コンソール50以外の装置が本開示の制御装置の機能を備えていてもよい。換言すると、取得部60、検出部62及び制御部64の機能の一部又は全部を、例えば撮影装置10及び外部装置等の、コンソール50以外の装置が備えていてもよい。
【0090】
また、上記実施形態において、例えば、制御部20、取得部60、特定部62、判定部64及び制御部66といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0091】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0092】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System on Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0093】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0094】
また、上記各実施形態では、撮影装置10における各種プログラムが制御部20に含まれるROMに予め記憶(インストール)され、コンソール50における制御プログラム57が記憶部52に予め記憶されている態様を説明したが、これに限定されない。撮影装置10における各種プログラム及び制御プログラム57は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、撮影装置10における各種プログラム及び制御プログラム57は、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。さらに、本開示の技術は、プログラムに加えて、プログラムを非一時的に記憶する記憶媒体にもおよぶ。
【0095】
本開示の技術は、上記実施形態例及び実施例を適宜組み合わせることも可能である。以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0096】
1 撮影システム
2 乳房
6 RIS
10 撮影装置
12 アーム部
14 基台
15 軸部
16 撮影台
16A 撮影面
17 放射線照射部
17R 放射線源
20、64 制御部
22、52 記憶部
24、56 I/F部
26、55 操作部
28 放射線検出器
30 超音波プローブ
36 支持部
38 プローブユニット
40、40S 圧迫部材
42 圧迫部
43 底部
43A 上面
43B 接触面
44 壁部
46 支持部
47 取付部
48 圧迫ユニット
49 腕
50 コンソール
51 CPU
53 メモリ
54 ディスプレイ
57 制御プログラム
58 バス
60 取得部
62 特定部
64 判定部
66 制御部
90 放射線画像
91 第1関心領域
92 第2関心領域
93 接触領域
98、98P 超音波画像
99 不連続に信号値が変化する部分
A 関心領域
D1 画面
R 放射線