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特開2024-128888生検システム、ガイド装置、及び生検方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128888
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】生検システム、ガイド装置、及び生検方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20240913BHJP
   A61B 6/04 20060101ALI20240913BHJP
   A61B 6/00 20240101ALI20240913BHJP
【FI】
A61B8/00
A61B6/04 309B
A61B6/00 370
A61B6/00 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038162
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】延山 理紗子
(72)【発明者】
【氏名】堀内 久嗣
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 涼香
【テーマコード(参考)】
4C093
4C601
【Fターム(参考)】
4C093AA07
4C093AA25
4C093CA16
4C093CA33
4C093DA06
4C093ED21
4C093FF28
4C601BB03
4C601DD08
4C601EE11
4C601FF03
4C601GA20
4C601GC03
4C601LL33
(57)【要約】
【課題】生検針の汚染を防止した状態で、超音波プローブおよび生検針のいずれか一方を生検対象から遠い位置に適用する必要がなく高画質の超音波画像を参照しながら乳房の生検を行うことができる生検システム、ガイド装置、及び生検方法を提供する。
【解決手段】超音波画像撮影装置により超音波画像の撮影を行いながら乳房の生検を行う生検システムであって、生検針と、超音波画像の撮影に用いられる超音波プローブとが挿入可能な開口部を有し、乳房を圧迫状態にする圧迫部材と、前記乳房に挿入される前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度と、前記超音波プローブの目標走査位置と、をガイドするためのガイド処理を行う少なくとも1つのプロセッサと、前記超音波プローブと前記乳房との間に、前記生検針と非接触の状態に設けられる音響整合体と、を備えた生検システム。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像撮影装置により超音波画像の撮影を行いながら乳房の生検を行う生検システムであって、
生検針と、超音波画像の撮影に用いられる超音波プローブとが挿入可能な開口部を有し、乳房を圧迫状態にする圧迫部材と、
前記乳房に挿入される前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度と、前記超音波プローブの目標走査位置と、をガイドするためのガイド処理を行う少なくとも1つのプロセッサと、
前記超音波プローブと前記乳房との間に、前記生検針と非接触の状態に設けられる音響整合体と、
を備えた生検システム。
【請求項2】
前記音響整合体は、前記超音波プローブに装着される
請求項1に記載の生検システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記乳房に挿入される前記生検針の現在の挿入位置及び現在の挿入角度を取得し、
前記超音波プローブの現在の走査位置を取得し、
前記生検針の現在の挿入位置及び現在の挿入角度と、前記超音波プローブの現在の走査位置と、前記生検針の現在の先端の位置と、前記生検針の目標挿入位置及び前記目標挿入角度と、前記超音波プローブの前記目標走査位置とに基づいて前記ガイド処理を行う
請求項1に記載の生検システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記ガイド処理として、
前記乳房の放射線画像及び前記超音波画像撮影装置により撮影された超音波画像の少なくとも一方を取得し、
前記乳房の放射線画像中の関心領域、もしくは前記乳房の超音波画像中の関心領域に基づいて、前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出して、導出した前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を提示し、
導出した前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度に基づいて前記生検針と非接触な位置となる前記超音波プローブの目標走査位置を導出して、導出した前記超音波プローブの目標走査位置を提示する
請求項1に記載の生検システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、
ターゲットが石灰化の場合は、前記放射線画像中の関心領域に基づいて、前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出し、
ターゲットが腫瘤の場合は、前記超音波画像中の関心領域に基づいて、前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出する
請求項4に記載の生検システム。
【請求項6】
前記超音波プローブの移動を行う移動機構をさらに備え、
前記プロセッサは、
前記移動機構に前記超音波プローブの目標走査位置を提示し、
前記移動機構は、前記目標走査位置に前記超音波プローブを移動させる
請求項1に記載の生検システム。
【請求項7】
前記移動機構は、前記超音波プローブを前記生検針に対して回転させることにより、生検針の長軸方向及び短軸方向について超音波画像の撮影を可能とさせる
請求項6に記載の生検システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、
導出した前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度に基づいた前記生検針の最終到達点を撮影可能となる位置に、前記超音波プローブの走査位置をガイドするためのガイド処理を行う
請求項1に記載の生検システム。
【請求項9】
前記生検針を配置する配置機構をさらに備え、
前記プロセッサは、
前記配置機構に前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を提示し、
前記配置機構は、前記目標走査位置及び目標挿入角度に応じて前記生検針を配置させる
請求項1に記載の生検システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記音響整合体と前記生検針とが接触する可能性があるか否かを判定し、
接触する可能性がある場合は、警告する
請求項1に記載の生検システム。
【請求項11】
前記超音波画像撮影装置により撮影された複数の超音波画像を取得し、
前記複数の超音波画像から3次元超音波画像を生成する画像処理装置をさらに備えた
請求項1に記載の生検システム。
【請求項12】
前記音響整合体はゲル状であり、
前記プロセッサは、
前記乳房の放射線画像及び前記超音波画像撮影装置により撮影された超音波画像の少なくとも一方を取得し、
前記乳房の放射線画像中の関心領域、もしくは前記乳房の超音波画像中の関心領域に基づいて、前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出し、
導出した前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度に基づいて前記生検針と非接触となる配置位置に前記音響整合体の配置位置をガイドするためのガイド処理をさらに行う、
請求項1に記載の生検システム。
【請求項13】
超音波画像撮影装置により超音波画像の撮影を行いながら乳房の生検を行う生検システムに用いられるガイド装置であって、
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサが、
前記乳房に挿入される生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度と、超音波プローブの目標走査位置と、をガイドするためのガイド処理を行う
ガイド装置。
【請求項14】
超音波画像撮影装置により超音波画像の撮影を行いながら乳房の生検を行う生検システムによる生検方法であって、
生検針と、超音波画像の撮影に用いられる超音波プローブとが挿入可能な開口部を有した圧迫部材により乳房が圧迫状態にされ、
前記超音波プローブと前記乳房との間に、前記生検針と非接触の状態に音響整合体が設けられた状態で、
プロセッサが、前記乳房に挿入される前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度と、前記超音波プローブの目標走査位置と、をガイドするためのガイド処理を行う
生検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生検システム、ガイド装置、及び生検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波ガイド下で、穿刺針周辺の組織を観察しながら乳房の生検を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-13788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に従来の技術では、超音波画像では、音響インピーダンスマッチングをはかるための音響整合体を被検体に対して塗布してから行われる。
【0005】
このような場合、音響整合体により生検針が汚染されてしまうことを避けるため、超音波プローブと生検針とを離れた場所からアプローチしていた。しかし、より良好な超音波画像を得るためには撮影対象から近い場所に超音波プローブが適用されることが望まれ、また生検針の侵襲範囲を少なくするためには生検針の穿刺位置も生検対象部位から近い位置が望まれている。
【0006】
本開示は、上記事情を考慮して成されたもので、生検針の汚染を防止した状態で、超音波プローブおよび生検針のいずれか一方を生検対象から遠い位置に適用する必要がなく高画質の超音波画像を参照しながら乳房の生検を行うことができる生検システム、ガイド装置、及び生検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本開示の第1の態様の生検システムは、超音波画像撮影装置により超音波画像の撮影を行いながら乳房の生検を行う生検システムであって、生検針と、超音波画像の撮影に用いられる超音波プローブとが挿入可能な開口部を有し、乳房を圧迫状態にする圧迫部材と、乳房に挿入される生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度と、超音波プローブの目標走査位置と、をガイドするためのガイド処理を行う少なくとも1つのプロセッサと、超音波プローブと乳房との間に、生検針と非接触の状態に設けられる音響整合体と、を備える。
【0008】
本開示の第2の態様の生検システムは、第1の態様の生検システムにおいて、音響整合体は、超音波プローブに装着される。
【0009】
本開示の第3の態様の生検システムは、第1の態様の生検システムにおいて、プロセッサは、乳房に挿入される生検針の現在の挿入位置及び現在の挿入角度を取得し、超音波プローブの現在の走査位置を取得し、生検針の現在の挿入位置及び現在の挿入角度と、超音波プローブの現在の走査位置と、生検針の現在の先端の位置と、生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度と、超音波プローブの目標走査位置とに基づいてガイド処理を行う。
【0010】
本開示の第4の態様の生検システムは、第1の態様の生検システムにおいて、プロセッサは、ガイド処理として、乳房の放射線画像及び超音波画像撮影装置により撮影された超音波画像の少なくとも一方を取得し、乳房の放射線画像中の関心領域、もしくは乳房の超音波画像中の関心領域に基づいて、生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出して、導出した生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を提示し、導出した生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度に基づいて生検針と非接触な位置となる超音波プローブの目標走査位置を導出して、導出した超音波プローブの目標走査位置を提示する。
【0011】
本開示の第5の態様の生検システムは、第4の態様の生検システムにおいて、プロセッサは、ターゲットが石灰化の場合は、放射線画像中の関心領域に基づいて、生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出し、ターゲットが腫瘤の場合は、超音波画像中の関心領域に基づいて、生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出する。
【0012】
本開示の第6の態様の生検システムは、第1の態様の生検システムにおいて、超音波プローブの移動を行う移動機構をさらに備え、プロセッサは、移動機構に超音波プローブの目標走査位置を提示し、移動機構は、目標走査位置に超音波プローブを移動させる。
【0013】
本開示の第7の態様の生検システムは、第6の態様の生検システムにおいて、移動機構は、超音波プローブを生検針に対して回転させることにより、生検針の長軸方向及び短軸方向について超音波画像の撮影を可能とさせる。
【0014】
本開示の第8の態様の生検システムは、第1の態様の生検システムにおいて、プロセッサは、導出した生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度に基づいた生検針の最終到達点を撮影可能となる位置に、超音波プローブの走査位置をガイドするためのガイド処理を行う。
【0015】
本開示の第9の態様の生検システムは、第1の態様の生検システムにおいて、生検針を配置する配置機構をさらに備え、プロセッサは、配置機構に生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を提示し、配置機構は、目標走査位置及び目標挿入角度に応じて生検針を配置させる。
【0016】
本開示の第10の態様の生検システムは、第1の態様の生検システムにおいて、プロセッサは、音響整合体と生検針とが接触する可能性があるか否かを判定し、接触する可能性がある場合は、警告する。
【0017】
本開示の第11の態様の生検システムは、第1の態様に記載の生検システムにおいて、超音波画像撮影装置により撮影された複数の超音波画像を取得し、複数の超音波画像から3次元超音波画像を生成する画像処理装置をさらに備える。
【0018】
本開示の第12の態様の生検システムは、第1の態様に記載の生検システムにおいて、音響整合体はゲル状であり、プロセッサは、乳房の放射線画像及び超音波画像撮影装置により撮影された超音波画像の少なくとも一方を取得し、乳房の放射線画像中の関心領域、もしくは乳房の超音波画像中の関心領域に基づいて、生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出し、導出した生検針の目標挿入位置及び目標挿度に基づいて生検針と非接触となる配置位置に音響整合体の配置位置をガイドするためのガイド処理をさらに行う。
【0019】
また、上記目的を達成するために本開示の第13の態様のガイド装置は、超音波画像撮影装置により超音波画像の撮影を行いながら乳房の生検を行う生検システムに用いられるガイド装置であって、少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサが、乳房に挿入される生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度と、超音波プローブの目標走査位置と、をガイドするためのガイド処理を行う。
【0020】
また、上記目的を達成するために本開示の第14の態様の生検方法は、超音波画像撮影装置により超音波画像の撮影を行いながら乳房の生検を行う生検システムによる生検方法であって、生検針と、超音波画像の撮影に用いられる超音波プローブとが挿入可能な開口部を有した圧迫部材により乳房が圧迫状態にされ、超音波プローブと乳房との間に、生検針と非接触の状態に音響整合体が設けられた状態で、プロセッサが、乳房に挿入される生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度と、超音波プローブの目標走査位置と、をガイドするためのガイド処理を行う方法である。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、生検針の汚染を防止した状態で、超音波プローブおよび生検針のいずれか一方を生検対象から遠い位置に適用する必要がなく高画質の超音波画像を参照しながら乳房の生検を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の生検システムにおける全体の構成の一例を概略的に表した構成図である。
図2】第1実施形態の医用撮影装置の外観の一例を表す側面図である。
図3】第1実施形態の圧迫部材の一例を表したブロック図である。
図4】第1実施形態の超音波プローブの移動機構の一例を表したブロック図である。
図5A】超音波プローブの回転について説明するための図である。
図5B】超音波プローブの回転について説明するための図である。
図6】第1実施形態の医用撮影装置及びコンソールの構成の一例を表すブロック図である。
図7】第1実施形態のコンソールの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図8】第1実施形態のコンソールにおいて実行される、生検処理の流れの一例を表すフローチャートである。
図9】第3実施形態のコンソールの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図10】第4実施形態のコンソールにおいて実行される、生検処理の流れ一例の一部を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は本発明を限定するものではない。
【0024】
[第1実施形態]
まず、本実施形態の生検システム2における、全体構成の一例の概略について説明する。図1には、本実施形態の生検システム2における、全体構成の一例を概略を表す構成図が示されている。図1に示すように、生検システム2は、医用撮影装置10及びコンソール12を備える。
【0025】
医用撮影装置10は、被検者の乳房を被写体として、乳房の放射線画像及び超音波画像の撮影が可能であり、かつ乳房の生検採取を行うことが可能な装置である。一例として、本実施形態の医用撮影装置10は、バイオプシ(生検)を行うことが可能なマンモグラフィ装置に、超音波撮影を行う機能を付加した装置である。
【0026】
図2には、本実施形態の医用撮影装置10の外観の一例を示す側面図が示されている。なお、図2では、被検者の右側から医用撮影装置10を見た場合の側面図である。図2に示すように、医用撮影装置10は、放射線源36Rと、放射線検出器30と、放射線源36Rと放射線検出器30との間に配置された撮影台40と、撮影台40との間で乳房を圧迫する圧迫部材34と、を備える。
【0027】
撮影台40の内部には、放射線検出器30が配置されている。放射線検出器30は、被写体である乳房を通過した放射線Rを検出する。本実施形態の医用撮影装置10では、撮影を行う場合、撮影台40の撮影面40A上には、被検者の乳房が医師及び技師等のユーザによってポジショニングされる。被検者の乳房が接する撮影面40A等は、放射線Rの透過性や強度の観点から、例えば、カーボン等で形成されている。
【0028】
放射線検出器30は、被検者の乳房及び撮影台40を透過した放射線Rを検出し、検出した放射線Rに基づいて放射線画像を生成し、生成した放射線画像を出力する。本実施形態の放射線検出器30の種類は、特に限定されず、例えば、放射線Rを光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器であってもよいし、放射線Rを直接電荷に変換する直接変換方式の放射線検出器であってもよい。
【0029】
放射線源36Rは、放射線照射部36内に備えられている。図2に示すように放射線照射部36は、撮影台40及び圧迫ユニット46と共にアーム部42に設けられている。なお、図2に示すように本実施形態の医用撮影装置10は、アーム部42と、基台44と、軸部45と、を備えている。アーム部42は、基台44によって、上下方向(Z軸方向)に移動可能に保持される。軸部45は、アーム部42を基台44に連結する。またアーム部42は、線源移動部37によって軸部45を回転軸として、基台44に対して相対的に回転可能となっている。アーム部42が、基台44に対して相対的に回転することにより、撮影台40の撮影面40Aに載置された乳房に対する放射線の入射角度を異ならせることができる。このように、本実施形態の医用撮影装置10は、いわゆるステレオ撮影や、トモシンセシス撮影が可能とされている。
【0030】
また、図2に示すように、圧迫部材34は、圧迫ユニット46に取り付けられている。圧迫ユニット46と、アーム部42とは、軸部45を回転軸として、別々に、基台44に対して相対的に回転可能となっている。本実施形態では、軸部45、アーム部42、及び圧迫ユニット46にそれぞれギア(図示省略)が設けられ、このギア同士の噛合状態及び非噛合状態を切替えることにより、アーム部42及び圧迫ユニット46の各々が軸部45に連結される。軸部45に連結されたアーム部42及び圧迫ユニット46の一方または両方が、軸部45と一体に回転する。
【0031】
本実施形態の圧迫部材34は、板状の部材であり、圧迫ユニット46内に設けられた圧迫部材駆動部32(図6参照)により上下方向(Z軸方向)に移動し、撮影台40との間で被検者の乳房を圧迫する。
【0032】
圧迫部材34は、乳房の圧迫において位置合わせや圧迫状態の確認を行うために光学的に透明であることが好ましく、また、放射線Rの透過性に優れた材料によって形成される。さらに、本実施形態の圧迫部材34は、生検用の圧迫部材であり、図3に示すように、圧迫部材34は、乳房を圧迫する際に乳房と接触する底部34Aに、開口部34Bを有している。開口部34Bには、生検針66と、超音波プローブ70とが挿入可能とされている。
【0033】
また、図2に示すように、本実施形態の医用撮影装置10は、バイオプシユニット60を備えている。バイオプシユニット60は、配置機構62、生検針66、及び生検針ユニット67を有する。生検針66は生検針ユニット67に設けられており、乳房に穿刺され、組織の採取に用いられる。配置機構62は、生検針66をX、Y及びZ方向に移動させて、目標挿入位置に生検針66を配置する機能を有する。なお、本実施形態において、X方向とは被検者の左右方向であり、Y方向とは被検者の前後方向である。また、Z方向とはXY平面に垂直な方向であり、被検者の上下方向である。そのため、以降では、X方向については「左右方向」といい、Y方向については「前後方向」といい、また、Z方向については「上下方向」という。
【0034】
配置機構62は、針位置コントローラ63を含み、生検針66の先端の位置は、針位置コントローラ63により制御される。針位置コントローラ63は、ターゲットの位置情報を受け取ると、生検針66の先端の位置をターゲットの位置に応じた目標挿入位置にまで移動させ、目標挿入角度に応じて生検針66を傾ける。このようにして配置機構62により配置された生検針66を乳房Wに穿刺させて、生検針66によるターゲットの採取、すなわち生検が行われる。なお、本実施形態において生検針66の「挿入角度」とは、撮影台40の撮影面40Aに対する垂線と、生検針66との成す角度(図5A、5Bの角度θ参照)のことをいう。
【0035】
また、図2に示すように、本実施形態の医用撮影装置10は、音響整合体71が装着された超音波プローブ70と、移動機構72とを備える。なお、本実施形態におけるターゲット、が本開示の関心領域の一例である。
【0036】
超音波プローブ70は、乳房を超音波で走査することにより乳房の超音波画像を取得するために用いられる。超音波プローブ70は、1次元状、又は、2次元状に配列された複数の超音波トランスデューサ(図示省略)を備える。各々の超音波トランスデューサは、印加される駆動信号に基づいて超音波を送信すると共に、超音波エコーを受信することにより受信信号を出力する。超音波プローブ70には、乳房と接する超音波の送信面を少なくとも覆うように、音響整合体71が設けられている。音響整合体71は、生体(乳房)に近い音響インピーダンスを有する部材で構成されており、本実施形態では、ゲル状またはシート状である。このような音響整合体71としては、音響カプラ等を用いることができる。具体例としては、例えば、ポリウレタン製のゲルパッドを固定治具で超音波プローブ70に固定するタイプの音響カプラが挙げられる。
【0037】
移動機構72は、超音波プローブ70を、前後、左右、及び上下方向に移動させる機能を有する。図4に示すように移動機構72は、1本の移動レール72Xと、2本の移動レール72Yとを含む。移動レール72Xは、左右向に沿って伸びるレールであり、超音波プローブ70が取り付けられる。移動機構72は。移動レール72Xに沿って超音波プローブ70を移動させることによって、左右方向に沿った超音波プローブ70の位置を変化させる。
【0038】
また、移動レール72Yは、撮影台40の撮影面40Aの両端の各々に設けられた、前後方向に沿って延びるレールである。移動機構72は、超音波プローブ70が取り付けられた移動レール72Xを前後方向に沿って移動させることにより、前後方向に沿った超音波プローブ70の位置を変化させる。
【0039】
また、移動機構72は、移動レール72X及び72Yを上下方向に移動させることによって、超音波プローブ70の高さも変化することができる。
【0040】
さらに本実施形態では、図4に示すように、移動機構72によって、超音波プローブ70を回転(回転角度φ)させて乳房に接触させる向きを変えることが可能とされている。例えば、図5Aに示すように、超音波プローブ70を回転させて振動子の配列方向を生検針66の長軸方向と交差する向きで配置した場合、生検針66の短軸方向について、超音波画像の撮影が可能となる。この場合、一例として図5Aに示すように、超音波プローブ70により得られた超音波画像80には、生検針66の短軸方向の断面画像81とターゲットのターゲット画像82とが含まれる。
【0041】
一方、超音波プローブ70を回転させて振動子の配列方向を生検針66の短軸方向と交差する向きで配置した場合、生検針66の長軸方向について、超音波画像の撮影が可能となる。この場合、一例として図5Bに示すように、超音波プローブ70により得られた超音波画像80には、生検針66の長軸方向の断面画像81とターゲットのターゲット画像82とが含まれる。
【0042】
このように、超音波プローブ70を回転させることにより、超音波画像に写る生検針66の断面画像81を、短軸方向の断面画像と、長軸方向の断面画像とで切り代えることができる。このように、超音波画像80に写る生検針66の断面画像の状態を切り代えることにより、生検針66の侵入軌跡や、針先の位置を異なる角度から観察し易くすることができる。また、生検針66と、ターゲットTとの位置関係を空間的に捉えやすくすることができる。
【0043】
一方、本実施形態のコンソール12は、無線通信LAN(Local Area Network)等を介してRIS(Radiology Information System)5等から取得した撮影オーダ及び各種情報と、操作部56等によりユーザにより行われた指示等とを用いて、医用撮影装置10の制御を行う機能を有している。また、コンソール12は、無線通信または有線通信により画像保存システム19と接続されており、医用撮影装置10により得られた放射線画像及び超音波画像を、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)等の画像保存システム19に送信して、保存させる機能を有している。なお、本実施形態のコンソール12が、本開示のガイド装置の一例である。
【0044】
さらに、図6を参照して、医用撮影装置10及びコンソール12の構成について説明する。図6には、医用撮影装置10及びコンソール12の構成の一例を表すブロック図が示されている。
【0045】
図6に示すように医用撮影装置10は、さらに、制御部20、記憶部22、I/F部24、及び操作部26備えている。制御部20、記憶部22、I/F部24、操作部26、放射線検出器30、圧迫部材駆動部32、放射線照射部36、線源移動部37、バイオプシユニット60、超音波プローブ70、及び移動機構72はシステムバスやコントロールバス等のバス29を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0046】
本実施形態の制御部20は、医用撮影装置10の全体の動作を制御する。制御部20は、CPU20A、ROM20B、及びRAM20Cを備える。ROM20Bには、撮影の制御の際に実行される撮影処理プログラム21等の、CPU20Aで実行される各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM20Cは、各種データを一時的に記憶する。
【0047】
記憶部22には、放射線検出器30を用いて撮影された放射線画像、超音波プローブ70を用いて撮影された超音波画像、及びその他の各種情報等が記憶される。記憶部22の具体例としては、HDDやSSD等が挙げられる。
【0048】
操作部26は、撮影及び生検に関する指示や各種情報等をユーザが入力するために用いられる。なお、操作部26は特に限定されるものではなく、例えば、各種スイッチ、タッチパネル、タッチペン、及びマウス等が挙げられる。
【0049】
I/F部24は、無線通信または有線通信により、コンソール12との間で放射線画像、超音波画像、及び各種情報の通信を行う。
【0050】
一方、コンソール12は、図6に示すように、制御部50、記憶部52、I/F部54、操作部56、及び表示部58備えている。制御部50、記憶部52、I/F部54、操作部56、及び表示部58はシステムバスやコントロールバス等のバス59を介して相互に各種情報の授受が可能に接続されている。
【0051】
本実施形態の制御部50は、コンソール12の全体の動作を制御する。制御部50は、CPU50A、ROM50B、及びRAM50Cを備える。ROM50Bには、生検の制御の際に実行される生検処理プログラム51等の、CPU50Aで実行される各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM50Cは、各種データを一時的に記憶する。
【0052】
記憶部52には、医用撮影装置10により撮影された放射線画像、超音波画像、及びその他の各種情報等が記憶される。記憶部52の具体例としては、HDDやSSD等が挙げられる。
【0053】
操作部56は、撮影及び生検に関する指示や各種情報等をユーザが入力するために用いられる。なお、操作部56は特に限定されるものではなく、例えば、各種スイッチ、タッチパネル、タッチペン、及びマウス等が挙げられる。表示部58は、各種情報を表示する。なお、操作部56と表示部58とを一体化してタッチパネルディスプレイとしてもよい。
【0054】
I/F部54は、無線通信または有線通信により、RIS5、医用撮影装置10、及び画像保存システム19の各々との間で放射線画像、超音波画像、及び各種情報の通信を行う。
【0055】
また、図7には、コンソール12の機能の一例を表す機能ブロック図が示されている。コンソール12は、画像取得部90、ターゲット情報取得部92、ガイド情報導出部94、及びガイド情報提示部96を備える。一例として本実施形態のコンソール12は、画像取得部90、ターゲット情報取得部92、ガイド情報導出部94、及びガイド情報提示部96として機能する。
【0056】
画像取得部90は、生検に係わる放射線画像または超音波画像を取得する機能を有する。本実施形態では、穿刺を行う前に生検する乳房のターゲットとなる領域を含むように放射線の照射角度を異ならせて2方向から乳房を撮影するスカウト撮影を行い、スカウト画像を取得する。スカウト画像は、病理検査する位置を確認するために異なる視点から見た画像である。ユーザは、スカウト画像上で生検対象となるターゲットを指定する。そのため、画像取得部90は、スカウト画像を取得する。また、画像取得部90は、超音波プローブ70を用いて撮影され超音波画像を取得する。画像取得部90は、取得したこれらの画像をガイド情報導出部94に出力する。生検対象となるターゲットしては、特に限定されないが、代表例として、石灰化、腫瘤、及びスピキュラ等の少なくとも一つを含む病変部分が挙げられる。
【0057】
ターゲット情報取得部92は、上述のようにして、ユーザにより指定されたターゲットに関する情報を取得する機能を有する。具体的には、ターゲット情報取得部92は、スカウト画像上で指定されたターゲットの位置を表す情報をターゲット情報として取得する。ターゲット情報取得部92は、取得したターゲット情報をガイド情報導出部94に出力する。
【0058】
ガイド情報導出部94は、プローブ用ガイド情報導出部95A及び生検針用ガイド情報導出部95Bを含む。生検針用ガイド情報導出部95Bは、生検針66を乳房に挿入する目標となる目標挿入位置及び目標挿入角度を導出する機能を有する。一例として本実施形態の生検針用ガイド情報導出部95Bは、ユーザにより指定されたターゲットの位置(3次元位置)に基づいて、目標挿入位置及び目標挿入角度を導出する。
【0059】
プローブ用ガイド情報導出部95Aは、超音波プローブ70の目標となる走査位置である目標走査位置を導出する機能を有する。一例として、本実施形態のプローブ用ガイド情報導出部95Aは、生検針66の目標挿入位置及び目標挿入角度、及び乳房を圧迫した状態における圧迫部材34の底部34Aの開口部34Bの位置に基づいて、超音波プローブ70の目標走査位置を導出する。具体的には、プローブ用ガイド情報導出部95Aは、生検針66の目標挿入角度と目標挿入位置とから、生検針66の最終到達点を導出する。超音波プローブ70の走査位置は、最終到達点の上部が好ましい。プローブ用ガイド情報導出部95Aは、最終到達点上に最も近く、上述したように超音波プローブ70を回転させても、超音波プローブ70に設けられた音響整合体71が生検針66と非接触状態を保てる、圧迫部材34の開口部34B内の位置を導出する。なお、超音波プローブ70を回転させた場合であっても、超音波プローブ70に設けられた音響整合体71が生検針66と非接触状態となる位置が、圧迫部材34の開口部34Bの外部になってしまう場合は、その旨をユーザに、事前に報知することが好ましい。もしくな、圧迫部材34の開口部34B内に、生検針66及び超音波プローブ70を挿入した場合、超音波プローブ70を回転させると、音響整合体71が生検針66と接触してしまう場合は、その旨をユーザに警告することが好ましい。ガイド情報導出部94は、このようにして導出した、超音波プローブ70の目標走査位置と、生検針66の目標挿入位置及び目標挿入角度とを、ガイド情報提示部に出力する。
【0060】
ガイド情報提示部96は、プローブ用ガイド情報提示部97A及び生検針用ガイド情報提示部97Bを含む。生検針用ガイド情報提示部97Bは、目標挿入位置に生検針66を移動させ、かつ目標挿入角度に生検針66を傾斜させるための生検針用ガイド情報を、医用撮影装置10に出力する。これにより、医用撮影装置10では、生検針用ガイド情報に基づいて、配置機構62により、生検針66を移動させる。
【0061】
また、プローブ用ガイド情報提示部97Aは、目標走査位置に超音波プローブ70を移動させるためのプローブ用ガイド情報を、医用撮影装置10に出力する。これにより、医用撮影装置10では、プローブ用ガイド情報に基づいて、移動機構72により、超音波プローブ70を移動させる。
【0062】
次に、本実施形態のコンソール12の生検における作用について図面を参照して説明するが、図8には、コンソール12において実行される、生検処理の流れの一例を表すフローチャートが示されている。なお、本実施形態の生検処理が、本開示のガイド処理の一例である。
【0063】
図8にステップS100で画像取得部90は、上述したように、スカウト画像、すなわち放射線の照射角度を異ならせて撮影された2枚の放射線画像を取得する。
【0064】
次のステップS102で画像取得部90は、表示部58に、上記ステップSS100で取得したスカウト画像を表示させる。上述したように、ユーザは、表示されたスカウト画像に対してターゲットを指定する。そのため、次のステップS104でターゲット情報取得部92は、ユーザにより指定されたターゲットの位置を表すターゲット情報を出力する。
【0065】
次のステップS106でガイド情報導出部94の生検針用ガイド情報導出部95Bは、上述したように、生検針66の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出する。
【0066】
次のステップS108でガイド情報導出部94のプローブ用ガイド情報導出部95Aは、上述したように、超音波プローブ70の目標走査位置を導出する。
【0067】
次のステップS110でガイド情報提示部96のプローブ用ガイド情報提示部97Aは、医用撮影装置10に対して、超音波プローブ70を目標走査位置に移動させるためのプローブ用ガイド情報を出力し、また、超音波画像の撮影を開始させるための指示を出力する。
【0068】
これにより、医用撮影装置10では、上述したように移動機構72が超音波プローブ70を目標走査位置に移動させる。また、圧迫部材34の開口部34Bに挿入した超音波プローブ70を、音響整合体71を介して乳房に接触させ、超音波画像の撮影を開始させる。医用撮影装置10は、撮影により得られた超音波画像を、順次、コンソール12に出力する。なお、上述したように、本実施形態では、超音波プローブ70の回転が可能とされている。超音波プローブ70の回転は、ユーザがコンソール12の操作部56を用いて指示したタイミングで適宜、行われる。
【0069】
次のステップS112で画像取得部90は、上述の様にして撮影された超音波画像を、医用撮影装置10から取得し、表示部58に表示させる。ユーザは、表示された超音波画像により、生検針66の挿入が適切に行われているか否かを判断することができる。
【0070】
次のステップS114で生検針用ガイド情報提示部97Bは、医用撮影装置10に対して、生検針66を目標挿入位置に移動させ、目標挿入角度に傾けるための生検針用ガイド情報を出力する。
【0071】
これにより、医用撮影装置10では、上述したように、配置機構62が生検針66を目標挿入角度に傾け、また生検針66の先端の位置が目標挿入位置となるように、生検針66を配置する。ユーザは、このようにして配置された生検針66を乳房に穿刺させ、ターゲットの組織を採取する生検を実施する。
【0072】
そこで、次のステップS116でガイド情報提示部96は、生検が実施されたか否かを判定する。生検が実施されていない場合、ステップS116の判定が否定判定となり、ステップS122へ移行する。一方、生検が実施された場合、ステップS116の判定が肯定判定となり、ステップS118へ移行する。
【0073】
ステップS118でガイド情報提示部96は、超音波画像の撮影を終了させるための撮影終了指示、及び生検針66の位置及び超音波プローブ70の位置を初期状態の位置に移動させるための移動指示を出力する。これにより、医用撮影装置10では、超音波プローブ70の駆動を停止させ、移動機構72により、超音波プローブ70を初期位置に移動させる。また、医用撮影装置10では、配置機構62により、生検針66を初期位置に移動させる。次のステップS120で画像取得部90は、超音波画像の表示を終了する。
【0074】
次のステップS122では、生検処理を終了するか否かを判定する。生検処理を未だ終了しない場合、ステップS122の判定が否定判定となり、ステップS116に戻って、ステップS116~S120の処理を繰り返す。
【0075】
一方、実施形態では、適切に生検が実施されて、生検のやり直しがない場合、及び生検を中止する場合、ステップS122の判定が肯定判定となり、図8に示した生検処理が終了する。
【0076】
上記の実施形態では、スカウト画像に基づいて、ターゲットの位置を特定していたが、ターゲットの位置を特定する方法は、スカウト画像を用いる方法に限定されないが、ターゲットの3次元位置が特定できることが好ましい。このような方法としては例えば、断層画像等、スカウト画像以外の放射線画像であってもよいし、事前に撮影した超音波画像であってもよい。
【0077】
また、本実施形態では、スカウト画像に対してユーザが指定したターゲットの位置を表す情報をターゲット情報取得部92が取得する形態について説明したが、ターゲット情報取得部92が、画像からターゲットを検出することにより、ターゲット情報を取得する形態としてもよい。この場合、例えば、ターゲット情報取得部92は、CAD(Computer-Aided Detection)を用いて放射線画像または超音波画像からターゲットを検出すればよい。どの画像を用いてどのような種類のターゲット情報を取得するのかは特に限定されないが、放射線画像及び超音波画像のそれぞれの特徴を考慮すると、石灰化の検出には放射線画像を用い、腫瘤の検出には超音波画像を用いることが好ましい。
【0078】
[第2実施形態]
第1実施形態では、自動で生検針66を移動させ、また、自動で超音波プローブ70を移動させる形態について説明したが、生検針66及び超音波プローブ70の少なくとも一方をユーザが移動させる形態としてもよい。例えば、超音波プローブ70を技師が移動させる場合、医用撮影装置10の代わりに、生検が可能なマンモグラフィ装置と、マンモグラフィ装置と別体の超音波画像装置とを組み合わせて医用撮影装置10を構成すればよい。この場合、コンソール12のガイド情報提示部96は、超音波プローブ70の目標走査位置を示すプローブ用ガイド情報を、表示部58に表示させればよい。
【0079】
[第3実施形態]
ガイド情報の他の形態について説明する。生検処理の最中に超音波プローブ70を用いて撮影された超音波画像から生成された3次元超音波画像等の超音波画像をガイド情報として用いてもよい。この場合、図9に示したように、コンソール12は、画像生成部91を備え、画像取得部90が取得した複数の超音波画像から、3次元超音波画像を生成する。なお、この場合、生検針66の目標挿入位置及び目標挿入角度に沿った断面の3次元超音波画像であることが好ましい。なお、画像生成部91を、コンソール12と別体の画像処理装置とし、コンソール12が、画像処理装置で生成された3次元超音波画像を取得する形態としてもよい。本実施形態の画像生成部91が、本開示の画像処理装置の一例である。
【0080】
また、画像生成部91は、生検針66の現在の挿入位置及び挿入角度を取得し、現在の生検針66の状態から、ターゲットまでの残りの距離等を導出して、上述した3次元超音波画像上に当該情報を付加してユーザに提示することが好ましい。例えば、上述したように、挿入角度に応じた断面の超音波画像において、ターゲットまでの残りの距離を表示させてもよい。
【0081】
[第4実施形態]
上記各実施形態では、音響整合体71が超音波プローブ70に装着されている形態、換言すると、超音波プローブ70と音響整合体71とが一体化される形態について説明したが、音響整合体71は、超音波プローブ70と別体であってもよい。
【0082】
なお、音響整合体71は、ユーザが配置した以上の範囲に広がらないものが好ましいため、例えば、粘性の低い液状の音響整合体71は、好ましくなく、例えば、ゲル状のものが好ましくエコーゲルパッド等が好ましい。
【0083】
このように、超音波プローブ70と別体の音響整合体71を設ける場合、ユーザが音響整合体71を配置する。そのため、コンソール12は、生検針66と非接触となる音響整合体71の配置位置をユーザにガイドすることが好ましい。
【0084】
この場合のコンソール12で実行される生検処理は、上述した生検処理(図8参照)のステップS106とS108との間に、図10に示したステップS107A及びS107Bの処理を行う。
【0085】
図10のステップS107Aでガイド情報導出部94は、生検針66の目標挿入位置及び目標挿入角度に基づいて、乳房Wに生検針66を挿入しても、生検針66と超音波プローブ70とが非接触となる領域を、音響整合体71の配置可能位置として導出する。
【0086】
次のステップS107Bでガイド情報提示部96は、上記ステップS107Aで導出した音響整合体71の配置可能位置をガイドするためのガイド情報を提示する。
【0087】
なお、ガイド情報の提示方法は限定されない。例えば、表示部58上に、乳房を撮影した放射線画像等の乳房の配置位置わかる画像を表示させ、その画像上に、音響整合体71の配置可能位置を表す情報を表示させてもよい。また例えば、医用撮影装置10が照射線の小照射範囲を、可視光を照射することでユーザに示すための可視光の光源やコリメータ等を有する場合、これらを用いて、音響整合体71の配置可能位置を可視光で提示する形態としてもよい。
【0088】
なお、本実施形態では、ユーザが実際に配置した音響整合体71の位置を検出し、音響整合体71の配置可能位置を超えて音響整合体71が配置されている場合、ユーザに対して警告を行うことが好ましい。例えば、乳房上に配置された音響整合体71の状態をカメラで撮影して得られた撮影画像に対して、画像解析を行い、音響整合体71の実際の位置を特定し、実際の配置位置と、音響整合体71の配置可能位置とを比較すればよい。
【0089】
以上説明したように、上記各形態の生検システム2によれば、圧迫部材34の開口部34Bに、生検針66及び超音波プローブ70が挿入可能であるため、超音波プローブ70とターゲットとの距離を短くすることができるため、超音波プローブ70により撮影された超音波画像の画質を高画質とすることができる。また、音響整合体71と生検針66を非接触とすることができるため、生検針66が音響整合体71により汚染されるのを抑制することができる。従って、上記各実施形態の生検システム2によれば、生検針66の汚染を防止した状態で、高画質の超音波画像を参照しながら乳房の生検を行うことができる。
【0090】
上記各実施形態において、例えば画像取得部90、ターゲット情報取得部92、ガイド情報導出部94、及びガイド情報提示部96といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0091】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0092】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態が挙げられる。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態が挙げられる。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0093】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0094】
また、上記各実施形態では、生検処理プログラム51がコンソール12のROM50Bに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。生検処理プログラム51は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、生検処理プログラム51は、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0095】
その他、上記各実施形態で説明した生検システム2、医用撮影装置10、及びコンソール12等の構成及び動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることはいうまでもない。また、上記各実施形態を適宜組み合わせてもよいこともいうまでもない。
【0096】
以上の上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0097】
(付記1)
超音波画像撮影装置により超音波画像の撮影を行いながら乳房の生検を行う生検システムであって、
生検針と、超音波画像の撮影に用いられる超音波プローブとが挿入可能な開口部を有し、乳房を圧迫状態にする圧迫部材と、
前記乳房に挿入される前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度と、前記超音波プローブの目標走査位置と、をガイドするためのガイド処理を行う少なくとも1つのプロセッサと、
前記超音波プローブと前記乳房との間に、前記生検針と非接触の状態に設けられる音響整合体と、
を備えた生検システム。
【0098】
(付記2)
前記音響整合体は、前記超音波プローブに装着される
付記1に記載の生検システム。
【0099】
(付記3)
前記プロセッサは、
前記乳房に挿入される前記生検針の現在の挿入位置及び現在の挿入角度を取得し、
前記超音波プローブの現在の走査位置を取得し、
前記生検針の現在の挿入位置及び現在の挿入角度と、前記超音波プローブの現在の走査位置と、前記生検針の現在の先端の位置と、前記生検針の目標挿入位置及び前記目標挿入角度と、前記超音波プローブの前記目標走査位置とに基づいて前記ガイド処理を行う
付記1または付記3に記載の生検システム。
【0100】
(付記4)
前記プロセッサは、前記ガイド処理として、
前記乳房の放射線画像及び前記超音波画像撮影装置により撮影された超音波画像の少なくとも一方を取得し、
前記乳房の放射線画像中の関心領域、もしくは前記乳房の超音波画像中の関心領域に基づいて、前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出して、導出した前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を提示し、
導出した前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度に基づいて前記生検針と非接触な位置となる前記超音波プローブの目標走査位置を導出して、導出した前記超音波プローブの目標走査位置を提示する
付記1から付記3のいずれか1つに記載の生検システム。
【0101】
(付記5)
前記プロセッサは、
ターゲットが石灰化の場合は、前記放射線画像中の関心領域に基づいて、前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出し、
ターゲットが腫瘤の場合は、前記超音波画像中の関心領域に基づいて、前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出する
付記4に記載の生検システム。
【0102】
(付記6)
前記超音波プローブの移動を行う移動機構をさらに備え、
前記プロセッサは、
前記移動機構に前記超音波プローブの目標走査位置を提示し、
前記移動機構は、前記目標走査位置に前記超音波プローブを移動させる
付記1から付記5のいずれか1つに記載の生検システム。
【0103】
(付記7)
前記移動機構は、前記超音波プローブを前記生検針に対して回転させることにより、生検針の長軸方向及び短軸方向について超音波画像の撮影を可能とさせる
付記6に記載の生検システム。
【0104】
(付記8)
前記プロセッサは、
導出した前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度に基づいた前記生検針の最終到達点を撮影可能となる位置に、前記超音波プローブの走査位置をガイドするためのガイド処理を行う
付記1から付記7のいずれか1つに記載の生検システム。
【0105】
(付記9)
前記生検針を配置する配置機構をさらに備え、
前記プロセッサは、
前記配置機構に前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を提示し、
前記配置機構は、前記目標走査位置及び目標挿入角度に応じて前記生検針を配置させる
付記1から付記8のいずれか1つに記載の生検システム。
【0106】
(付記10)
前記プロセッサは、
前記音響整合体と前記生検針とが接触する可能性があるか否かを判定し、
接触する可能性がある場合は、警告する
付記1から付記9のいずれか1つに記載の生検システム。
【0107】
(付記11)
前記超音波画像撮影装置により撮影された複数の超音波画像を取得し、
前記複数の超音波画像から3次元超音波画像を生成する画像処理装置をさらに備えた
付記1から付記10のいずれか1つに記載の生検システム。
【0108】
(付記12)
前記音響整合体はゲル状であり、
前記プロセッサは、
前記乳房の放射線画像及び前記超音波画像撮影装置により撮影された超音波画像の少なくとも一方を取得し、
前記乳房の放射線画像中の関心領域、もしくは前記乳房の超音波画像中の関心領域に基づいて、前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度を導出し、
導出した前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度に基づいて前記生検針と非接触となる配置位置に前記音響整合体の配置位置をガイドするためのガイド処理をさらに行う、
付記1から付記12のいずれか1つに記載の生検システム。
【0109】
(付記13)
超音波画像撮影装置により超音波画像の撮影を行いながら乳房の生検を行う生検システムに用いられるガイド装置であって、
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサが、
前記乳房に挿入される生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度と、超音波プローブの目標走査位置と、をガイドするためのガイド処理を行う
ガイド装置。
【0110】
(付記14)
超音波画像撮影装置により超音波画像の撮影を行いながら乳房の生検を行う生検システムによる生検方法であって、
生検針と、超音波画像の撮影に用いられる超音波プローブとが挿入可能な開口部を有した圧迫部材により乳房が圧迫状態にされ、
前記超音波プローブと前記乳房との間に、前記生検針と非接触の状態に音響整合体が設けられた状態で、
プロセッサが、前記乳房に挿入される前記生検針の目標挿入位置及び目標挿入角度と、前記超音波プローブの目標走査位置と、をガイドするためのガイド処理を行う
生検方法。
【符号の説明】
【0111】
2 生検システム
5 RIS
10 医用撮影装置
12 コンソール
19 画像保存システム
20、50 制御部
21 撮影処理プログラム
20A、50A CPU
20B、50B ROM
20C、50C RAM
21 撮影処理プログラム
22、52 記憶部
24、54 I/F部
26、56 操作部
29、59 バス
30 放射線検出器、30A 検出面
32 圧迫部材駆動部
34 圧迫板、34A 底部、36B 開口部
36 放射線照射部、36R 放射線源
37 線源移動部
40 撮影台、40A 撮影面
42 アーム部
44 基台
45 軸部
46 圧迫ユニット
51 生検処理プログラム
58 表示部
60 バイオプシユニット
62 配置機構
63 針位置コントローラ
66 生検針
67 生検針ユニット
70 超音波プローブ
71 音響整合体
72 移動機構 72X、72Y 移動レール
80 超音波画像
81 断面画像
82 ターゲット画像
90 画像取得部
91 画像生成部
92 ターゲット情報取得部
94 ガイド情報導出部
95A プローブ用ガイド情報導出部、95B 生検針用ガイド情報導出部
96 ガイド情報提示部
97A プローブ用ガイド情報提示部、97B 生検針用ガイド情報提示部
R 放射線
T ターゲット
W 乳房
θ、φ 角度
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10