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特開2024-129072活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物、キャリア用剥離剤及びそれを用いた塗膜形成方法、剥離ライナー形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129072
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物、キャリア用剥離剤及びそれを用いた塗膜形成方法、剥離ライナー形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20240918BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240918BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20240918BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240918BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20240918BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20240918BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20240918BHJP
   C08G 18/61 20060101ALI20240918BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C09D4/02
C09K3/00 R
C09D183/06
B05D7/24 301T
B05D5/00 A
B05D3/06 Z
B05D7/24 302P
C08G18/67 010
C08G18/61
C08G18/79 010
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103413
(22)【出願日】2024-06-26
(62)【分割の表示】P 2022138324の分割
【原出願日】2017-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭市
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博之
(72)【発明者】
【氏名】小泉 文夫
(72)【発明者】
【氏名】中崎 義知
(72)【発明者】
【氏名】亀井 淳一
(57)【要約】
【課題】良好な塗工面外観と軽い剥離力を両立する、高精細電子部品の製造用の製造工程
キャリア等に好適な活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物、キャリア用剥離剤及びそれを
用いた塗膜形成方法、剥離ライナー形成方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリロイル基を一分子中に平均して三つ以上有し、かつその濃度
は1kg当たり8当量以上である水酸基含有(メタ)アクリレート(A)、一分子中に少
なくとも二個以上のイソシアネート基を有するイソシアヌレート(B)、一分子中に少な
くとも一つ以上の水酸基を有し、数平均分子量1,000~5,000の直鎖状のジメチ
ルオルガノポリシロキサン(C)の反応物を含み、質量比で(C)/((A)+(B)+
(C))=0.002~0.009で、硬化塗膜の膜厚が0.5~2μmとなるよう形成
して用いる剥離ライナー用の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基を一分子中に平均して三つ以上有し、かつその濃度は1kg当
たり8当量以上である水酸基含有(メタ)アクリレート(A)、
一分子中に少なくとも二個以上のイソシアネート基を有するイソシアヌレート(B)、
一分子中に少なくとも一つ以上の水酸基を有し、数平均分子量1,000~5,000
の直鎖状のジメチルオルガノポリシロキサン(C)の反応物を含む活性エネルギー線硬化
性剥離剤組成物であって、(C)成分の含有量が質量比で(C)/((A)+(B)+(
C))=0.002~0.009であり、前記活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物を、
基材に塗工し、活性エネルギー線を照射した硬化塗膜の膜厚が0.5~2μmとなるよう
形成して用いる剥離ライナー用の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物。
【請求項2】
上記(A)成分の水酸基含有(メタ)アクリレート(A)が、一般式(1)又は一般式
(2)に示す構造を有する請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物。
【化1】
(一般式(1)、(2)中、X~X10は、それぞれ独立に(メタ)アクリロイル基又
は水酸基を表し、X~Xのうち少なくとも3個以上は、(メタ)アクリロイル基を示
し、X~X10のうち少なくとも3個以上は、(メタ)アクリロイル基を示す。)
【請求項3】
上記(C)成分のジメチルオルガノポリシロキサン(C)が、一般式(3)、(4)、
(5)に示す構造のうち、少なくとも一種以上を使用してなる請求項1又は請求項2に記
載の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物。
【化2】
(一般式(3)、(4)、(5)中、R、R3、は、それぞれ独立にアルキル基又
はアルキレンエーテル基を、R、R、R、Rは、それぞれ独立にアルキレン基又
はアルキレンエーテル基を示す。nは、正の整数を示す。)
【請求項4】
上記(B)成分のイソシアヌレート(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネートから成
るイソシアヌレート体である請求項1~3の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性
剥離剤組成物。
【請求項5】
上記(B)成分の一分子中に少なくとも二個以上のイソシアネート基を有するイソシア
ヌレート(B)が持つ総イソシアネート基量から、上記(C)成分のジメチルオルガノポ
リシロキサン(C)が持つ総水酸基量を差し引いた値が、上記(A)成分の水酸基含有(
メタ)アクリレート(A)が持つ総水酸基量よりも小さくなるよう調整された、請求項1
~4の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物を硬化した電
子材料部品の製造工程キャリア用剥離剤。
【請求項7】
請求項1~5の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物を基材に硬化
後の膜厚が0.5~2μmとなるよう塗工し、活性エネルギー線を照射し、硬化させる塗
膜形成方法。
【請求項8】
請求項7に記載の塗膜形成方法と同様に形成する剥離ライナー形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物、キャリア用剥離剤及び、それを用い
た塗膜形成方法、剥離ライナー形成方法に関し、剥離力と塗工面外観に優れる、電子材料
用途等の粘着テープ、又は粘着シートに用いられる剥離ライナーに応用可能な活性エネル
ギー線硬化性剥離剤組成物、キャリア用剥離剤及びそれを用いた塗膜形成・剥離ライナー
形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープ及び粘着シート類は、その取扱い性の良さと良好な接着特性から、各種業界
で使用されている。電子機器分野においても、各種部材の接着等に多くの粘着テープ及び
粘着シート類が用いられている。粘着テープ及び粘着シートの剥離ライナーは、狙い通り
の剥離力を付与させるために様々な剥離剤が塗装されている。また、粘接着剤のプロテク
トフィルムとしての用途とは別に、電子材料部品を製造する際に用いる製造工程キャリア
としても無くてはならないものである。
【0003】
これらに用いられる剥離剤に要求される性能としては、安定した剥離力はもちろん、そ
の他にも多くの性能が挙げられる。例えば、平滑な面を得るための塗工適正や剥離剤を使
用した後の残留接着率、表面が擦られ磨耗した後でも剥離力が損なわれない耐摩耗性、さ
らに溶剤系の粘着剤を剥離シート上に塗装し熱により乾燥する場合の耐溶剤性が必要とな
る。さらに電子材料用途等に使用する粘着シートの場合、剥離ライナーから剥離成分であ
るシリコーンが粘着シート側に移行してしまうと、このシリコーンが電気電子機器の故障
の原因となるためシリコーンの非移行性も重要な性能の一つである。
【0004】
従来の剥離剤は、熱可塑性、熱硬化性樹脂の二つに大別され、熱可塑性樹脂は、塗装後
反応硬化させないため、成膜後の耐溶剤性、耐熱性等が低い。一方、熱硬化性樹脂は、耐
溶剤性、耐熱性等に優れるものの、塗装後加熱硬化することが前提となるため、厚みが薄
く熱に弱い基材には使用できないという欠点がある。また、熱硬化性樹脂の主要樹脂の一
つにアルキド樹脂をメラミン等の架橋剤で硬化させるものがある(特許文献1、特許文献
2参照)。
【0005】
アルキド樹脂をメラミン等の架橋剤で硬化させたものは高性能であるものの、前述した
熱硬化であるという点に加え、原材料として使用したホルムアルデヒドの一部未反応物を
不純物として含むため、環境問題の観点からも見直しが図られつつある。このため熱を介
さない硬化系であり、かつ、環境汚染物質を含まない剥離剤が長く求められている。
【0006】
発明者等は上記目的を勘案して鋭意検討し、水酸基含有(メタ)アクリレート、有機イ
ソシアネート、水酸基を有する直鎖状のジメチルオルガノポリシロキサンを反応させて得
られる樹脂に光重合開始剤を配合することで、良好な剥離力、残留接着率、塗工適正、耐
溶剤性、耐摩耗性、シリコーンの非移行性を持つ活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物が
得られることを見出した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-156498号公報
【特許文献2】特開2008-156499号公報
【特許文献3】特開2010-265403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、昨今の電子材料機器の高性能化、小型化に伴い、それに用いられる電子材料部
品の精細度も年々高いものが求められる傾向にある。よってその部材を製造する際に使用
する製造工程キャリアも、その剥離力の軽さだけではなく、剥離層表面の平滑度が高いレ
ベルで求められており、これまでに開発した剥離剤では業界の要求に応えられなくなって
きた。
本発明は、良好な塗工面外観と軽い剥離力を両立する、高精細電子部品の製造用の製造
工程キャリア等に好適な活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物、キャリア用剥離剤及びそ
れを用いた塗膜形成方法、剥離ライナー形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者等は軽い剥離力を維持したまま、より高平滑な剥離層を形成する剥離剤を検討し
た結果、これまでに得た知見に加え、ジメチルオルガノポリシロキサンの分子量範囲と含
有量を限定し、有機イソシアネートにイソシアヌレートを用いることで、これまでに無い
良好な塗工面外観と軽い剥離力を両立できることを見出した。
本発明は、[1](メタ)アクリロイル基を一分子中に平均して三つ以上有し、かつそ
の濃度は1kg当たり8当量以上である水酸基含有(メタ)アクリレート(A)、一分子
中に少なくとも二個以上のイソシアネート基を有するイソシアヌレート(B)、一分子中
に少なくとも一つ以上の水酸基を有し、数平均分子量1,000~5,000の直鎖状の
ジメチルオルガノポリシロキサン(C)の反応物を含む活性エネルギー線硬化性剥離剤組
成物であって、(C)成分の含有量が質量比で(C)/((A)+(B)+(C))=0
.002~0.009であり、前記活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物を、基材に塗工
し、活性エネルギー線を照射した硬化塗膜の膜厚が0.5~2μmとなるよう形成して用
いる剥離ライナー用の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物である。
また、本発明は、[2]上記(A)成分の水酸基含有(メタ)アクリレート(A)が、
一般式(1)又は一般式(2)に示す構造を有する上記[1]に記載の活性エネルギー線
硬化性剥離剤組成物である。
【0010】
【化1】
(一般式(1)、(2)中、X~X10は、それぞれ独立に(メタ)アクリロイル基又
は水酸基を表し、X~Xのうち少なくとも3個以上は、(メタ)アクリロイル基を示
し、X~X10のうち少なくとも3個以上は、(メタ)アクリロイル基を示す。)
また、本発明は、[3]上記(C)成分のジメチルオルガノポリシロキサン(C)が、
一般式(3)、(4)、(5)に示す構造のうち、少なくとも一種以上を使用してなる上
記[1]又は[2]に記載の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物である。
【0011】
【化2】
(一般式(3)、(4)、(5)中、R、R3、は、それぞれ独立にアルキル基又
はアルキレンエーテル基を、R、R、R、Rは、それぞれ独立にアルキレン基又
はアルキレンエーテル基を示す。nは、正の整数を示す。)
【0012】
また、本発明は、[4]上記(B)成分のイソシアヌレート(B)が、ヘキサメチレン
ジイソシアネートから成るイソシアヌレートである上記[1]~[3]の何れか一項に記
載の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物である。
また、本発明は、[5]上記(B)成分の一分子中に少なくとも二個以上のイソシアネ
ート基を有するイソシアヌレート(B)が持つ総イソシアネート基量から、上記(C)成
分のジメチルオルガノポリシロキサン(C)が持つ総水酸基量を差し引いた値が、上記(
A)成分の水酸基含有(メタ)アクリレート(A)が持つ総水酸基量よりも小さくなるよ
う調整された、上記[1]~[4]の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性剥離剤
組成物である。
また、本発明は、[6]上記[1]~[5]の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬
化性剥離剤組成物を硬化した電子材料部品の製造工程キャリア用剥離剤である。
また、本発明は、[7]上記[1]~[5]の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬
化性剥離剤組成物を基材に硬化後の膜厚が0.5~2μmとなるよう塗工し、活性エネル
ギー線を照射し、硬化させる塗膜形成方法である。
また、本発明は、[8]上記[7]に記載の塗膜形成方法と同様に形成する剥離ライナ
ー形成方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、良好な塗工面外観(剥離層表面の高い平滑度)と軽い剥離力を両立する
活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物、キャリア用剥離剤と剥離ライナーを得ることがで
きる。このような活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物と剥離ライナーを用いることで、
製造工程キャリアを用いた製造物がより高い精度を得やすくなり、塗工物はより薄膜塗工
が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、(メタ)アクリロイル基を一分子中に平均して三つ以上有し、かつその濃度
は1kg当たり8当量以上である水酸基含有(メタ)アクリレート(A)、一分子中に少
なくとも二個以上のイソシアネート基を有するイソシアヌレート(B)、一分子中に少な
くとも一つ以上の水酸基を有する数平均分子量1,000~5,000の直鎖状のジメチ
ルオルガノポリシロキサン(C)の反応物と、必要により光重合開始剤よりなり、質量比
で(C)/((A)+(B)+(C))=0.002~0.009となるよう調整され、
硬化塗膜の膜厚が0.5~2μmとなるよう形成される粘着テープ及び粘着シート、製造
工程キャリア等に用いる剥離ライナー用の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物に関する
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物を構成する水酸基含有(メタ)アクリレ
ート(A)は、(メタ)アクリロイル基を一分子中に平均して三つ以上(好ましくは五つ
以上)有し、かつその濃度は1kg当たり8当量以上(好ましくは10当量以上)でなけ
ればならない。その理由は十分な硬化性を保有させるためである。活性エネルギー線硬化
性剥離剤組成物は、含有する(メタ)アクリロイル基がラジカル反応を起こし、重合する
ことで硬化が進行する。しかし、ラジカルは酸素分子に補足され、失活するため、酸素存
在下では硬化阻害を受けること、さらにその影響は薄膜になればなるほど顕著になること
が一般に知られている。本発明の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物は、基材に活性エ
ネルギー線硬化性剥離剤組成物層を設ける際、コストの問題や、より平滑な面を得るため
に0.05~2μmという薄膜で塗工、塗装されることが多い。このような状況で十分な
硬化性を発揮する活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物は限定される。十分な硬化性を有
していない場合、活性エネルギー線を照射しても硬化不良を起こしやすくなる。その結果
、見かけが硬化していても、残留接着率、耐摩耗性、耐溶剤性等が悪くなり、剥離力も重
くなりやすい。(メタ)アクリレート(A)が、(メタ)アクリロイル基を一分子中に平
均して三つ以上有し、かつその濃度が1kg当たり8当量以上であれば、前述のような薄
膜においても、十分な硬化性を有する。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート、
メタアクリレート及びそれらの混合物を意味する。
【0016】
より良い硬化性を求めるなら、メタクリロイル基を含まず、官能基としては、アクリロ
イル基と水酸基のみで構成される水酸基含有アクリレートを用いることが、望ましい。そ
の中でも、上記の一般式(1)、(2)に示す構造を持つ、ジペンタエリスリトールモノ
アクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリア
クリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペン
タアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ペンタエリスリトールジアク
リレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートから選択される1種、又は2種以上の
混合物であり、含有するアクリロイル基が、平均して一分子中に三つ以上、かつその濃度
が1kg当たり8当量以上に調整されたものが特に望ましい。
【0017】
また、使用状況に応じてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートやペンタエリスリ
トールテトラアクリレート等、水酸基を含まず、アクリロイル基のみを含むアクリレート
を併用することもできる。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物を構成する一分子中に少なくとも二個以
上のイソシアネート基を有するイソシアヌレート(B)の原料となるイソシアネートモノ
マは、トリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジ
イソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ナ
フタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネ
ート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネ
ート化合物等、公知慣用のものが挙げられる。ビウレット型、アダクト型等、イソシアヌ
レート以外にもイソシアネート化合物は多くあるが、塗工面の平滑性を最優先で設計する
ならば、イソシアヌレート体を用いる必要がある。特にヘキサメチレンジイソシアネート
から成るイソシアヌレートを用いた場合、良好な塗工面外観を維持しつつ、最も剥離力が
軽くなる傾向にあり、望ましい。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物を構成する水酸基を有する直鎖状のジメ
チルオルガノポリシロキサン(C)は、イソシアネート基を有するイソシアヌレート(B
)を介して、水酸基含有(メタ)アクリレート(A)と反応させるため、一分子中に少な
くとも一つ以上の水酸基を有している必要がある。また、良好な剥離力を発現させるため
に、直鎖上であることが求められる。さらにその数平均分子量は1,000~5,000
である必要がある。数平均分子量が1,000以上であると、剥離力が軽くなりやすく、
数平均分子量が5,000以下であると、塗工面が滑らかになりやすくなり、平滑性を保
つのが容易になる。代表例としては、一般式(3)、(4)、(5)に示す構造を持つも
のが挙げられる。一般式(5)、(3)、(4)の順に剥離力が軽く、塗工面が荒れやす
い傾向であるが、何れもシリコーンの含有量と数平均分子量を前述の範囲で制御すること
で、良好な塗工面外観を付与できる。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロ
マトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した
値である。
水酸基を有する直鎖状のジメチルオルガノポリシロキサン(C)は、市販品を使用する
ことができ、例えば、サイラプレーンFM-4411、FM-4421、FM-4425
、FMDA11、FMDA21、FMDA26、FM0411、FM0421、FM04
25(JNC株式会社製商品名)、X22-160AS、KF-6001、KF-600
2、KF-6003、X-22-170BX、X-22-170DX、X22-176D
X、X-22-176F(信越化学工業株式会社製商品名)が挙げられる。
【0020】
水酸基含有(メタ)アクリレート(A)、イソシアヌレート(B)、ジメチルオルガノ
ポリシロキサン(C)の質量比の割合は、(C)/((A)+(B)+(C))=0.0
02~0.009の範囲内でなければならない。特許文献3の特許請求の範囲に記載のよ
うに、ジメチルオルガノポリシロキサン(C)の割合が上記範囲より大きくなると、剥離
力は安定し易いが塗工面が荒れ易く、昨今の製造工程キャリアに求められる高い平滑性は
実現できない。0.002以上であると、軽剥離を発現しやすくなり、0.009以下で
あると塗工面を滑らかに保ちやすくなる。好ましくは0.003~0.008であり、よ
り好ましくは0.004~0.006の範囲である。
【0021】
さらに、一分子中に少なくとも二個以上のイソシアネート基を有するイソシアヌレート
(B)が持つ総イソシアネート基量から、ジメチルオルガノポリシロキサン(C)が持つ
総水酸基量を差し引いた値が、水酸基含有(メタ)アクリレート(A)が持つ総水酸基量
よりも小さくなるよう調整することにより、ジメチルオルガノポリシロキサン(C)のう
ち、水酸基含有(メタ)アクリレート(A)との未反応物を減少させやすくなる傾向にあ
る。即ち、活性エネルギー線硬化能((メタ)アクリレートに由来する官能基)を持たな
いシリコーン化合物の量が減り、結果としてシリコーンの非移行性がさらに良好になるた
め、望ましい。
【0022】
本発明に用いられる活性エネルギー線としては、電子線、α線、β線、γ線、赤外線、
可視光線、紫外線等公知慣用のものが挙げられる。中でも電子線、紫外線は比較的研究が
進んでおり、特に紫外線はその照射装置が安価に手に入る等の利点があるため、望ましい
【0023】
本発明の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物を活性エネルギー線で硬化させる場合、
上記の電子線を用いれば光重合開始剤を混合させる必要がないが、紫外線で硬化させる場
合、光重合開始剤を混合させる必要がある。光重合開始剤に用いられるものとしては、2
,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ベンゾフェノン、1-[4-
(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン
-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-
アセトキシ-エトキシ]エチルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[
2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1
-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチ
ルベンジル)-(4-1-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、ビ
ス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2
,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサ
イド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1,
2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(o-ベンゾイルオキシム)
]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール
-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、2-クロロチオキサントン、2,4-
ジエチルチオキサントン、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、
エチルアントラキノン等公知慣用のものから一種、又は2種以上の混合物を用いることが
できる。特に表面硬化性が優れているとされる1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニ
ル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、フェニ
ルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒ
ドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-
1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン
-1-オンが望ましく、中でも2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-
メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オンが特に
望ましい。また、その配合量は、硬化性、コスト等の面から、(A)(B)(C)の総質
量に対して、5~15質量%に調整するのが望ましい。
【0024】
また、上記光重合開始剤の効果を高めるため、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル
エステル、p-ジメチルアミノ-安息香酸エチルエステル、N-メチルジエタノールアミ
ン、ビスエチルアミノベンゾフェノン、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-
エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート等の開始助剤を用いることもできる。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物は、使用上の利便性から通常は有機溶剤
溶液とされるが、この有機溶剤としては各成分と溶解性がよく、反応性を有しないもので
あれば従来公知のものを用いることができる。トルエン、キシレン、メタノール、エタノ
ール、イソブタノール、n-ブタノール、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン等を
、単独または2種以上の混合物を用いることができ、その使用量は樹脂固形分が1~60
質量%の範囲になるようにするのが望ましい。
【0026】
本発明の活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物は、基材に塗工(塗装)、溶剤系の場合
は加温して溶剤を揮発させてから活性エネルギー線を照射して硬化させることにより剥離
層を形成することができる。加熱温度は、膜厚、希釈溶剤にもよるが50~100℃であ
る。
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を、基材に塗工して剥離ライナーを作製する場
合、剥離剤層は、硬化塗膜の膜厚で0.5~2μmにする必要がある。膜厚が0.5μm
以上であると、軽い剥離力が安定して発現しやすくなり、膜厚が2μm以下であると、塗
工面が滑らかになりやすくなり、また、2μmを超えると単位面積当たりの生産コストが
嵩むようになる。
【0028】
剥離ライナー用の基材としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム及
びポリエチレンナフタレートフィルム等のフィルム基材、並びに上質紙、中質紙、アート
紙、キャストコート紙、コート紙等の紙基材が挙げられる。
【実施例0029】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるもの
ではない。また、実施例において示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り質量部及
び質量%を示す。
【0030】
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を装備したフラスコに、(メタ)アクリロ
イル基を一分子中に平均して三つ以上有し、かつその濃度は1kg当たり8当量以上であ
る水酸基含有(メタ)アクリレート(A)としてKAYARAD(登録商標) DPHA
(日本化薬株式会社製 一般式(1)に示す構造を持ち、ペンタアクリレートとヘキサア
クリレートの混合物)を2170部、一分子中に少なくとも二個以上のイソシアネート基
を有するイソシアヌレート(B)としてヘキサメチレンジイソシアネートからのイソシア
ヌレート30部、一分子中に少なくとも一つ以上の水酸基を有する直鎖状のジメチルオル
ガノポリシロキサン(C)としてサイラプレーン(登録商標)FMDA11(JNC株式
会社製商品名、数平均分子量1,000 一般式(3)に示す構造を持ち、R=-OH
、R=-(CHOCHCH-、R=-CHCH)20部、メチルエチル
ケトン2220部を仕込み、85℃まで昇温して7時間保温して反応させ、IR測定の結
果イソシアネート基が消失したことを確認し、30℃まで系内温度を降下させてからIr
gacure(登録商標)907(BASFジャパン株式会社製光重合開始剤、2-メチ
ル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン)を111
部仕込んで混合し、活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物Aを得た。
【0031】
[実施例2]
実施例1と同様の装備を持ったフラスコに(メタ)アクリロイル基を一分子中に平均し
て三つ以上有し、かつその濃度は1kg当たり8当量以上である水酸基含有(メタ)アク
リレート(A)としてKAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製 一般式(1)に
示す構造を持ち、ペンタアクリレートとヘキサアクリレートの混合物)を2170部、一
分子中に少なくとも二個以上のイソシアネート基を有するイソシアヌレート(B)として
ヘキサメチレンジイソシアネートからのイソシアヌレート126部、一分子中に少なくと
も一つ以上の水酸基を有する直鎖状のジメチルオルガノポリシロキサン(C)としてサイ
ラプレーンFM0411(JNC株式会社製商品名、数平均分子量1,000 一般式(
5)に示す構造を持ち、R=-OH、R=-COC-)9部、メチルエ
チルケトン1665部を仕込み、85℃まで昇温して7時間保温して反応させ、IR測定
の結果イソシアネート基が消失したことを確認し、30℃まで系内温度を降下させてから
Irgacure184(BASFジャパン株式会社製光重合開始剤、1-ヒドロキシ-
シクロヘキシル-フェニル-ケトン)を180部仕込んで混合し、活性エネルギー線硬化
性剥離剤組成物Bを得た。
【0032】
[実施例3]
実施例1と同様の装備を持ったフラスコに、一分子中に少なくとも二個以上のイソシア
ネート基を有するイソシアヌレート(B)としてヘキサメチレンジイソシアネートからの
イソシアヌレート70部、一分子中に少なくとも一つ以上の水酸基を有する直鎖状のジメ
チルオルガノポリシロキサン(C)としてサイラプレーンFMDA21(JNC株式会社
製商品名、数平均分子量5,000 一般式(3)に示す構造を持つ)200部、メチル
エチルケトン270部を仕込み、85℃まで昇温して7時間保温して反応させ、反応物を
得た。同様の装備を持った別のフラスコに、KAYARAD DPHA(日本化薬株式会
社製 一般式(1)に示す構造を持ち、ペンタアクリレートとヘキサアクリレートの混合
物)を960部、先ほど得られた反応物を81部、メチルエチルケトン1000部を仕込
み、85℃まで昇温して7時間保温して反応させIR測定の結果イソシアネート基が消失
したことを確認し、30℃まで系内温度を降下させてからIrgacure127(BA
SFジャパン株式会社製光重合開始剤、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロ
キシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1
-オン)を100部仕込んで混合し、活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物Cを得た。
【0033】
[実施例4]
実施例1と同様の装備を持ったフラスコに、一分子中に少なくとも二個以上のイソシア
ネート基を有するイソシアヌレート(B)としてヘキサメチレンジイソシアネートからの
イソシアヌレート60部、一分子中に少なくとも一つ以上の水酸基を有する直鎖状のジメ
チルオルガノポリシロキサン(C)としてX-22-176DX(信越化学工業株式会社
製商品名、数平均分子量3,000 一般式(3)に示す構造を持つ)150部、メチル
エチルケトン210部を仕込み、85℃まで昇温して7時間保温して反応させ、反応物を
得た。同様の装備を持った別のフラスコに、KAYARAD DPHA(日本化薬株式会
社製 一般式(1)に示す構造を持ち、ペンタアクリレートとヘキサアクリレートの混合
物)を972部、先ほど得られた反応物を56部、メチルエチルケトン1000部を仕込
み、85℃まで昇温して7時間保温して反応させIR測定の結果イソシアネート基が消失
したことを確認し、30℃まで系内温度を降下させてからIrgacure184(BA
SFジャパン株式会社製光重合開始剤)を100部仕込んで混合し、活性エネルギー線硬
化性剥離剤組成物Dを得た。
【0034】
[比較例1]
実施例1と同様の装備を持ったフラスコに、一分子中に少なくとも二個以上のイソシア
ネート基を有する有機イソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート336部、
一分子中に少なくとも一つ以上の水酸基を有する直鎖状のジメチルオルガノポリシロキサ
ン(C)としてサイラプレーンFMDA11(JNC株式会社製商品名、数平均分子量1
,000 一般式(3)に示す構造を持ち、R=-OH、R=-(CHOCH
CH-、R=-CHCH)1000部、メチルエチルケトン1336部を仕込み
、85℃まで昇温して7時間保温して反応させ、反応物を得た。同様の装備を持った別の
フラスコに、KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製 一般式(1)に示す構造
を持ち、ペンタアクリレートとヘキサアクリレートの混合物)を960部、先ほど得られ
た反応物を80部、メチルエチルケトン960部を仕込み、85℃まで昇温して7時間保
温して反応させIR測定の結果イソシアネート基が消失したことを確認し、30℃まで系
内温度を降下させてからIrgacure184(BASFジャパン株式会社製光重合開
始剤、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)を100部仕込んで混合し
、活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物Eを得た。
本組成物は、特許文献3の実施例1に記載の組成物と同一のものである。
【0035】
[比較例2]
実施例1と同様の装備を持ったフラスコにヘキサメチレンジイソシアネート336部、
サイラプレーンFMDA11(JNC株式会社製商品名)1000部、メチルエチルケト
ン1336部を仕込み、85℃まで昇温して7時間保温して反応させ、反応物を得た。同
様の装備を持った別のフラスコにKAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)を8
67部、先ほど得られた反応物を266部、メチルエチルケトン867部を仕込み、85
℃まで昇温して7時間保温して反応させIR測定の結果イソシアネート基が消失したこと
を確認し、30℃まで系内温度を降下させてからIrgacure184(BASFジャ
パン株式会社製光重合開始剤)を100部仕込んで混合し、活性エネルギー線硬化性剥離
剤組成物Fを得た。
本組成物は、特許文献3の実施例2に記載の組成物と同一のものである。
【0036】
[比較例3]
実施例1と同様の装備を持ったフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート336部
、サイラプレーンFMDA26(JNC株式会社製商品名)15000部、メチルエチル
ケトン15336部を仕込み、85℃まで昇温して7時間保温して反応させ、反応物を得
た。同様の装備を持った別のフラスコに、KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社
製)を970部、先ほど得られた反応物を60部、メチルエチルケトン970部を仕込み
、85℃まで昇温して7時間保温して反応させIR測定の結果イソシアネート基が消失し
たことを確認し、30℃まで系内温度を降下させてからIrgacure184(BAS
Fジャパン株式会社製光重合開始剤)を100部仕込んで混合し、活性エネルギー線硬化
性剥離剤組成物Gを得た。
本組成物は、特許文献3の実施例4に記載の組成物と同一のものである。
【0037】
[比較例4]
実施例1と同様の装備を持ったフラスコにヘキサメチレンジイソシアネート570部、
サイラプレーンFM0411(JNC株式会社製商品名)1000部、メチルエチルケト
ン1570部を仕込み、85℃まで昇温して7時間保温して反応させ、反応物を得た。同
様の装備を持った別のフラスコにKAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)を9
53部、先ほど得られた反応物を94部、メチルエチルケトン953部を仕込み、85℃
まで昇温して7時間保温して反応させIR測定の結果イソシアネート基が消失したことを
確認し、30℃まで系内温度を降下させてからIrgacure184(BASFジャパ
ン株式会社製光重合開始剤)を100部仕込んで混合し、活性エネルギー線硬化性剥離剤
組成物Hを得た。
本組成物は、特許文献3の実施例9に記載の組成物と同一のものである。
【0038】
[比較例5]
実施例1と同様の装備を持ったフラスコに(メタ)アクリロイル基を一分子中に平均し
て三つ以上有し、かつその濃度は1kg当たり8当量以上である水酸基含有(メタ)アク
リレート(A)としてKAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製 一般式(1)に
示す構造を持ち、ペンタアクリレートとヘキサアクリレートの混合物)を989部、一分
子中に少なくとも二個以上のイソシアネート基を有するイソシアヌレート(B)としてヘ
キサメチレンジイソシアネートからのイソシアヌレート10部、一分子中に少なくとも一
つ以上の水酸基を有する直鎖状のジメチルオルガノポリシロキサン(C)としてサイラプ
レーンFM0411(JNC株式会社製商品名、数平均分子量1,000 一般式(5)
に示す構造を持ち、R=-OH、R=-(CHOCHCH-、R=-CH
CH)1部、メチルエチルケトン1000部を仕込み、85℃まで昇温して7時間保
温して反応させ、IR測定の結果イソシアネート基が消失したことを確認し、30℃まで
系内温度を降下させてからIrgacure907(BASFジャパン株式会社製光重合
開始剤)を50部仕込んで混合し、活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物Iを得た。
【0039】
[比較例6]
実施例1と同様の装備を持ったフラスコに水酸基含有(メタ)アクリレート(A)とし
てKAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)を2170部、イソシアヌレート(
B)としてヘキサメチレンジイソシアネートからのイソシアヌレート30部、水酸基を有
する直鎖状のジメチルオルガノポリシロキサン(C)としてX-22-176DX(信越
化学工業株式会社製商品名)23部、メチルエチルケトン2223部を仕込み、85℃ま
で昇温して7時間保温して反応させ、IR測定の結果イソシアネート基が消失したことを
確認し、30℃まで系内温度を降下させてからIrgacure907(BASFジャパ
ン株式会社製光重合開始剤)を111部仕込んで混合し、活性エネルギー線硬化性剥離剤
組成物Jを得た。
【0040】
[比較例7]
実施例1と同様の装備を持ったフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート170部
、ジメチルオルガノポリシロキサン(C)としてサイラプレーンFM0411(JNC株
式会社製商品名)1000部、メチルエチルケトン1170部を仕込み、85℃まで昇温
して7時間保温して反応させ、反応物を得た。同様の装備を持った別のフラスコに、KA
YARAD DPHA(日本化薬株式会社製)を994部、先ほど得られた反応物を12
部、メチルエチルケトン994部を仕込み、85℃まで昇温して7時間保温して反応させ
IR測定の結果イソシアネート基が消失したことを確認し、30℃まで系内温度を降下さ
せてからIrgacure184(BASFジャパン株式会社製光重合開始剤、1-ヒド
ロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)を100部仕込んで混合し、活性エネルギ
ー線硬化性剥離剤組成物Kを得た。
【0041】
[比較例8]
実施例1と同様の装備を持ったフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート336部
、サイラプレーンFMDA11(JNC株式会社製商品名)1000部、メチルエチルケ
トン1336部を仕込み、85℃まで昇温して7時間保温して反応させ、反応物を得た。
同様の装備を持った別のフラスコに、KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製
)を990部、先ほど得られた反応物を20部、メチルエチルケトン990部を仕込み、
85℃まで昇温して7時間保温して反応させIR測定の結果イソシアネート基が消失した
ことを確認し、30℃まで系内温度を降下させてからIrgacure184(BASF
ジャパン株式会社製光重合開始剤)を100部仕込んで混合し、剥離剤組成物Lを得た。
【0042】
性能評価は下記方法に従って行った。
【0043】
評価用剥離フィルムの基材として、未処理の厚さ100μmのポリエチレンテレフタレ
ート(以下PETと略す)フィルムを用い、これに実施例1~4及び比較例1~7におい
ては、樹脂組成物を固形分膜厚で1.0μmになるよう塗装し、比較例8においては、樹
脂組成物を0.15μmになるように塗装した。活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物A
~Lは、塗装後、70℃、1分で溶剤分を揮発させ、紫外線照射装置(高圧水銀灯1灯8
0W/cm)を用いて200mJ/cmの紫外線を照射し、硬化させ、評価用剥離フィ
ルム(剥離ライナー)を得た。
【0044】
1)剥離力:作製した剥離フィルム上の処理面にポリエステル粘着テープ(ニットー31
B、日東電工株式会社製商品名)を2kgのローラーで一往復圧着し、25mm幅に切断
し、得た試験片について、300mm/分の速度で180°に引っ張り、その剥離力を測
定した。
【0045】
2)塗工面外観:基材に供試樹脂を塗装、成膜後、塗膜表面の状態を目視で確認し、以下
の基準で評価した。
「○」:虹色の干渉模様がほぼ見られない
「△」:虹色の干渉模様の輪郭がはっきりしている
「×」:虹色の干渉模様が激しく発現、又はブラッシングしている
【0046】
表1に上記で作製した活性エネルギー線硬化性剥離剤組成物A~Lに用いた(A)成分
中の、一分子中のアクリロイル基の数、1kg当たりの当量、(B)成分のイソシアヌレ
ート又は有機イソシアネート、(C)成分の構造、数平均分子量及び(A)、(B)、(
C)の総計に対する(C)成分の質量比を纏めて示した。また、表2に各実施例、比較例
の性能評価結果を纏めて示した。
【0047】
【表1】
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
HDIヌレート:ヘキサメチレンジイソシアネートからのイソシアヌレート
【0048】
【表2】
【0049】
表1、2に示すように、(C)成分の含有量が0.009よりも多くなっている比較例
1、4では、剥離力は軽いものの塗工面外観が悪く、(C)成分の含有量がさらに多い比
較例2と(C)成分の分子量が5000より大きい比較例3では、さらに塗工面外観の悪
化が顕著である。逆に(C)成分の含有量が0.002より小さい比較例5では、塗工面
外観は良好であるものの、他の実施例、比較例と比較して大きく重剥離化している。
これに対し、(C)成分の含有量、分子量が適正である実施例1~4は、軽い剥離力と
良好な塗工面外観を維持しており、剥離剤としての性能である剥離力は勿論、良好な塗工
面外観、ひいては高い平滑性を利用して、高精細電子部品等の製造工程キャリアとして、
比較例に記載の組成物よりもより好適であることが分かる。