(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129141
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】研磨パッド、その製造方法、およびそれを用いた半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240918BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20240918BHJP
【FI】
H01L21/304 622F
B24B37/24 Z
B24B37/24 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109268
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2022000716の分割
【原出願日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】10-2019-0135512
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0136302
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】505232852
【氏名又は名称】エスケー エンパルス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK enpulse Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1043,Gyeonggi-daero,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do 17784, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ヘヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ジャンウォン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】気孔の大きさおよび分布を調整して研磨率および平坦度を向上させる研磨パッド、その製造方法および前記研磨パッドを用いて半導体素子を製造する方法を提供する。
【解決手段】研磨パッドは、複数の気孔を含む研磨層を含み、研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、前記複数気孔の数平均径(Da)が15μm~50μmであり、前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔(Au)が、前記研磨面の全面積のうち0.9%以上~12%未満の面積比で含まれる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気孔を含む研磨層を含み、
研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、
前記複数気孔の数平均径(Da)が15μm~50μmであり、
前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔(Au)が、前記研磨面の全面積のうち0.9%以上~12%未満の面積比で含まれる、研磨パッド。
【請求項2】
前記複数気孔の総面積率が、研磨面の全面積のうち30%~55%であるか、
前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔径(Du)が100μm以上であるか、または、
前記研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において最大ピークの気孔径が60μm~150μmである、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記研磨層が、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、および固相発泡剤を含む組成物の硬化物を含み、
前記固相発泡剤が、20μm~50μmのD50を有するか、または、
前記固相発泡剤が、シェルを有する微細中空粒子であり、前記シェルのガラス転移温度(Tg)が70℃~110℃である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
請求項1に記載の研磨パッドの製造方法であって、
ウレタン系プレポリマー、硬化剤、および発泡剤を含む組成物を混合する段階と、
前記組成物を所定の圧力または減圧条件下のモールドに吐出注入して前記研磨層を成形する段階と、を含む、研磨パッドの製造方法。
【請求項5】
前記発泡剤が、固相発泡剤を含むか、または気相発泡剤及び固相発泡剤の両方ともを含み、
前記固相発泡剤が20μm~50μmの平均粒径(D50)を有し、
前記組成物が、前記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、前記固相発泡剤を0.5重量部超~2.5重量部未満の量で含む、請求項4に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項6】
前記減圧が、真空度0.6kgf/cm2~1kgf/cm2未満の範囲で行われる、請求項4に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の研磨パッドを用いる半導体素子製造方法であって、
複数の気孔を含む研磨層を含む前記研磨パッドをプラテンに装着する段階と、
前記研磨層の研磨面とウェーハの表面とを当接するよう互いに相対回転させて、前記ウェーハの表面を研磨する段階と、を含む、研磨パッドを用いる半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、半導体の化学的機械研磨(CMP)工程に使用され得る研磨パッド、その製造方法、およびそれを用いた半導体素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の中で化学機械的平坦化(CMP)工程は、ウェーハのような半導体基板をヘッドに付着し、プラテン(platen)上に形成された研磨パッドの表面に接触するようにした状態で、スラリーを供給して半導体基板の表面を化学的に反応させながらプラテンとヘッドとを相対運動させ、機械的に半導体基板表面の凹凸部分を平坦化する工程である。
【0003】
研磨パッドは、このようなCMP工程において重要な役割を担う必須の材料として、一般的にポリウレタン系の樹脂からなり、表面にスラリーの大きな流れを担う溝(groove)と、微細な流動をサポートする気孔(pore)とを備える。
【0004】
研磨パッド内の気孔は、空隙を有する固相発泡剤、揮発性液体が満たされている液相発泡剤、不活性ガス、繊維質などを用いて形成するか、または化学的反応によりガスを発生させて形成し得る。
【0005】
前記固相発泡剤としては、熱膨張されサイズが調整されたマイクロカプセル(熱膨張されたマイクロカプセル)が使用される。前記熱膨張されたマイクロカプセルは、すでに膨張されたマイクロバルーンの構造体として、均一な大きさの粒径を有することにより、気孔の粒径サイズを均一に調整可能である。しかし、前記熱膨張されたマイクロカプセルは、100℃以上の高温の反応条件において、その形状が変化して気孔の調整が難しいと言うデメリットがあった。また、気孔の大きさと分布により品質の均一性が実現されたとしても、気孔の設計自由度が良くなく、気孔分布を調整するには限界がある。
【0006】
例えば、特許文献1は、不活性ガスと気孔誘導重合体とを使用する低密度ポリシングパッドの製造方法および低密度ポリシングパッドを開示している。しかし、前記公開特許は、気孔の大きさおよび分布を調整するのに限界があり、研磨パッドの研磨率については全く開示していない。
【0007】
同様に、特許文献2は、粒径の異なる2種類の固相発泡剤を使用して研磨パッドを製造する方法を開示しているが、前記登録特許も気孔の大きさおよび分布を調整して研磨性能を向上させるのに限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2016-0027075号
【特許文献2】韓国登録特許第10-0418648号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、実現例の目的は、気孔の大きさおよび分布を調整して研磨率および平坦度を向上させ得る、研磨パッド、その製造方法、および前記研磨パッドを用いて半導体素子を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために一実現例は、複数の気孔を含む研磨層を含み、研磨面の単位面積(mm2)当りの前記気孔の総面積が40%~60%であり、下記数学式1で表示されるDq値が5μm以上~15μm以下であり、下記数学式2で表示されるDsk値が0.3超~1未満であり、下記数学式3で表示されるDku値が1超~5未満である、研磨パッドを提供する。
【0011】
【0012】
前記数学式1~3において、
dは、それぞれの気孔径から複数気孔の数平均径(number mean diameter)を引いた値であり、nは単位面積(mm2)当りの気孔全体の数である。
【0013】
他の実現例は、複数の気孔を含む研磨層を含み、研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、前記複数気孔の数平均径(Da)が15μm~50μmであり、前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔(Au)が、前記研磨面の全面積のうち0.9%以上~12%未満の面積比で含まれる、研磨パッドを提供する
【0014】
他の実現例は、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、および発泡剤を含む組成物を混合する段階と、前記組成物を所定の圧力条件下のモールドに吐出注入して研磨層を成形する段階と、を含み、前記研磨層が複数の気孔を含み、研磨面の単位面積(mm2)当り前記気孔の総面積が40%~60%であり、前記数学式1で表示されるDq値が5μm以上~15μm以下であり、前記数学式2で表示されるDsk値が0.3超~1未満であり、前記数学式3で表示されるDku値が1超~5未満である、研磨パッドの製造方法を提供する。
【0015】
他の実現例は、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、および固相発泡剤を含む組成物を混合する段階と、前記混合された組成物を減圧下でモールドに吐出注入して研磨層を成形する段階と、を含み、前記減圧が真空度0.6kgf/cm2~1kgf/cm2未満の範囲で行われ、研磨パッドが複数の気孔を含む研磨層を含み、研磨面を基準とする前記複数気孔の直径分布において、前記複数気孔の数平均径(Da)が15μm~50μmであり、前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔(Au)が、前記研磨面の全面積のうち0.9%以上~12%未満の面積比で含まれる、研磨パッドの製造方法を提供する。
【0016】
他の実現例は、複数の気孔を含む研磨層を含む研磨パッドをプラテンに装着する段階と、前記研磨層の研磨面とウェーハの表面とを当接するよう互いに相対回転させて、前記ウェーハの表面を研磨する段階と、を含み、前記研磨層は、前記研磨面の単位面積(mm2)当り前記気孔の総面積が40%~60%であり、前記数学式1で表示されるDq値が5μm以上~15μm以下であり、前記数学式2で表示されるDsk値が0.3超~1未満であり、前記数学式3で表示されるDku値が1超~5未満である、半導体素子の製造方法を提供する。
【0017】
他の実現例は、複数の気孔を含む研磨層を含む研磨パッドをプラテンに装着する段階と、前記研磨層の研磨面とウェーハの表面とを当接するよう互いに相対回転させて前記ウェーハの表面を研磨する段階と、を含み、前記研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、前記複数気孔の数平均径(Da)が15μm~50μmであり、前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔(Au)が、前記研磨面の全面積のうち0.9%以上~12%未満の面積比で含まれる、半導体素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
前記実現例によると、研磨パッドに含まれる複数気孔の大きさ(直径)および分布が調整され得、これにより、前記研磨パッドは、特定範囲の単位面積当たり気孔の総面積および前記数学式1~3のDq、DskおよびDkuの値を示す気孔分布を有するか、複数気孔の数平均径(Da)および前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を制御することにより、研磨率および平坦度などの研磨性能をさらに向上させることができる。
【0019】
また、前記研磨パッドを利用して、優れた品質の半導体素子を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一実現例に係る半導体素子製造工程の概略的な工程を示すものである。
【
図2】
図2は、本発明の一実現例に係るモールドを用いた成形工程を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施例1-1における研磨パッドの気孔の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図4】
図4は、実施例1-1における研磨パッドの1mm
2の研磨面を、走査電子顕微鏡(SEM)により100倍に拡大した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
以下の実現例の説明において、各層またはパッド等が、各層またはパッド等の「上(on)」または「下(under)」に形成されるものとして記載される場合において、「上(on)」および「下(under)」は、直接(directly)または他の構成要素を介して(indirectly)形成されるものをすべて含む。
【0022】
各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。
【0023】
本明細書において、用語「複数の」は1超のことを指す。
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うことは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0024】
また、本明細書に記載された構成成分の物性値、寸法等を表すすべての数値範囲は、特別な記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0025】
以下、本発明を実現例により詳細に説明する。実現例は、発明の要旨を変更しない限り、様々な形態に変形され得る。
【0026】
[研磨パッド]
一実現例に係る研磨パッドは、複数の気孔を含む研磨層を含み、研磨面の単位面積(mm2)当り前記気孔の総面積が40%~60%であり、下記数学式1で表示されるDq値が5μm以上~15μm以下であり、下記数学式2で表示されるDsk値が0.3超~1未満であり、下記数学式3で表示されるDku値が1超~5未満である。
【0027】
【0028】
前記数学式1~3において、
dは、それぞれの気孔径から複数気孔の数平均径を引いた値であり、nは単位面積(mm2)当りの気孔全体の数である。
【0029】
前記数学式1~3のDq、DskおよびDkuは、それぞれの気孔径、複数気孔の数平均径(Da)、および単位面積当たりの気孔全体の数を用いて計算し得る。
【0030】
前記気孔の直径、前記複数気孔の数平均径および前記気孔全体の数は、研磨面1mm2を基準にして走査電子顕微鏡(SEM)および画像解析ソフトウェアを使用して観測される各々の気孔径を測定し、気孔数を算出して計算し得る。前記研磨面は、前記研磨層の厚さ方向に連続する面のうちのいずれか一面のことを指し得る。また、前記研磨面は、前記研磨パッドの製造直後に現れる最外殻の表面でもあり得、所定時間の間に研磨工程が行われた後に現れる最外殻の表面でもあり得る。
【0031】
前記研磨パッドは、その表面上に現れた気孔の直径および気孔の分散程度により、研磨スラリーの流動性および研磨効率が変わるようになる。すなわち、前記研磨パッドの表面上に現れた気孔の直径に応じて、研磨スラリーの流動性が影響を受けることとなり、これらの気孔径の分布により、研磨される対象の表面にスクラッチなどの発生有無や研磨率が決定され得る。
【0032】
一実現例による前記研磨パッドは、複数気孔の数平均径および単位面積当たりの気孔全体の数を調整することにより、気孔の総面積および前記数学式1~3のDq、DskおよびDkuなどのパラメータがそれぞれ特定の範囲を有するように設計することができ、その結果、優れた研磨率および平坦度を実現することができる。
【0033】
したがって、前記研磨パッドにおける気孔の直径および気孔の分散程度を調整することが非常に重要であり、特に、研磨性能を向上させるために、CMP工程においてスラリーと半導体基板との間の研磨メカニズムに基づいて気孔の直径に合わせて設計することが非常に重要である。
【0034】
前記数学式1で表示されるDq値は、気孔分布において気孔径と密接に関連するパラメータとして、気孔分布グラフにおいて、気孔の数平均径に対してどれほど気孔が広がっているかに対する尺度である。Dq値が大きい場合は気孔の散布が大きいことを意味し、Dq値が小さい場合は散布が小さいことを意味する。
【0035】
前記Dq値は、研磨面の気孔径と複数気孔の数平均径(Da)との差dに対して、二乗平均平方根(root mean square、RMS)を用いて計算され得る。実現例に係る前記Dq値は、5μm以上~15μm以下、具体的に7μm以上~14μm以下、より具体的に7μm以上~13μm以下、10μm超~15μm以下、5μm以上~10μm以下、または8μm以上~12μm以下であり得る。前記Dq値が前記範囲内にあると、研磨率および平坦度などの研磨性能に優れる。前記Dq値が15μmを超えると、物理的なCMPを要する研磨性能、特にタングステン膜を研磨した場合の研磨率が過剰に増加することがあり、オキサイド膜およびタングステン膜に対する平坦度が悪化し得る。これに対して、Dq値が5μm未満であると、パッド面積当たりのスラリー担持量が少ないため、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が過剰に低下するか、オキサイド膜に対する平坦度が悪化し得る。
【0036】
前記数学式1において、研磨面の複数気孔の数平均径(Da)は、研磨面1mm2内の前記複数気孔径の和を複数気孔の数で割った平均値と定義し得る。一実現例によると、前記Daは15μm~25μm、具体的に18μm~25μm、より具体的に18μm~23μm、または18μm~22μmであり得る。研磨パッドが前記範囲のDaを満足すると、研磨率および平坦度を向上させることができる。もし、Daが15μm未満である場合は、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が過剰に低くなり、オキサイド膜に対する平坦度が低調となり得る。これに対し、25μmを超える場合は、タングステン膜およびオキサイド膜に対する研磨率および平坦度のいずれもの物性が低調となり得る。
【0037】
また、前記数学式2で表示されるDsk値は、気孔分布グラフにおいて、気孔の数平均径に対する前記気孔分布グラフの偏り程度を意味し得る。具体的に、Dskの場合、気孔分布グラフにおいて気孔の数平均径に対して気孔分布グラフがどれほど小さい方または大きい方に偏っているかを示す尺度として、1を中心に1よりも小さい場合は、正規の分布に対する気孔の数平均径と比較して気孔分布グラフが小さい方に偏っていることを意味し、1よりも大きい場合は、正規の分布に対する気孔の数平均径と比較して気孔分布グラフが大きい方に偏っていることを意味する。
【0038】
実現例に係る前記Dsk値は0.3超~1未満、具体的に0.4超~1未満、より具体的に0.4以上~0.9以下、0.6超~1未満、または0.3超~0.6以下であり得る。前記Dsk値が前記範囲内である場合、気孔の数平均径に対して大きい気孔の数がより多いことを意味すると言え、研磨パッドの研磨率および平坦度などの研磨性能に優れる。前記Dsk値が0.3以下である場合、気孔の数平均径に対して小さい気孔がより多いことを意味すると言え、この場合、研磨パッドの単位面積当たりのスラリー担持量が少ないため、研磨率、特にタングステン膜を研磨した場合の研磨率が著しく低下し得る。もし、前記Dsk値が1以上の場合、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が過剰に増加することがあり、タングステン膜およびオキサイド膜に対する平坦度が悪化し得る。
【0039】
一方、前記数学式3で表示されるDku値は、全体的な気孔の分布がどれ程度広がっているかを意味するものであり、3を中心に3よりも小さい場合は、平均気孔径で正規分布に比べて気孔分布が鋭い(sharp)ことを意味し、3よりも大きい場合は、正規分布に比べて気孔分布が鈍い(broad)ことを意味する。
【0040】
本発明の実施例によると、Dku値は3に近い数値である1超~5未満、2超~5未満、2.5以上~4.5以下、3.5超~5未満、1超~3.5以下、1超~4以下、2超~3以下、または3超~4.5未満であり得、前記Dku値が前記範囲を満足すると、研磨スラリーの流動性に優れ、研磨率および平坦度を向上させ得る。もし、前記Dku値が1以下の場合、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が著しく低下することがあり、前記Dku値が5以上の場合、気孔径が均一でないため研磨スラリーの流動性に悪影響を与え得ることとなり、研磨される対象の表面にスクラッチ等が発生し得るので、研磨率および平坦度などの研磨性能が低下し得る。
【0041】
実現例によると、前記数学式1~3において単位面積(mm2)当り気孔全体の数を示すnは、700~2500、具体的に750~2200であり得る。また、それぞれの気孔径と、複数気孔の数平均径との差を示すdは-30~60、具体的に-20~50であり得る。
【0042】
また、前記研磨パッドは、研磨面の単位面積当たりの前記気孔の総面積が、40%~60%、具体的に40%~55%、より具体的に40%~50%、50%超~60%以下、または45%~53%であり得る。もし、前記気孔の総面積が40%未満の場合、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が過剰に小さくなり、オキサイド膜に対する平坦度が悪化し得る。一方、前記気孔の総面積が60%を超える場合、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が過剰に大きくなるか、オキサイド膜を研磨した場合の研磨率が過剰に小さくなり得る。また、タングステン膜に対する平坦度が著しく悪くなり得る。
【0043】
本発明の実現例による研磨パッドは、前記研磨面の単位面積当たりの前記気孔の総面積、および前記数学式1~3のDq、DskおよびDkuの範囲をいずれも満たさなければならない。
【0044】
一実現例によると、前記研磨パッドは、前記研磨面の単位面積当たりの前記気孔の総面積が40%~50%であり、前記Dq値が10μm超~15μm以下であり、前記Dsk値が0.6超~1未満であり、前記Dku値が3.5超~5未満であり得る。
【0045】
また他の一実現例によると、前記研磨パッドは、前記研磨面の単位面積当たりの前記気孔の総面積が50%超~60%以下であり、前記Dq値が5μm以上~10μm以下であり、前記Dsk値が0.3超~0.6以下であり、前記Dku値が1超~3.5以下であり得る。
【0046】
また他の実現例による研磨パッドは、複数の気孔を含む研磨層を含み、研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、前記複数気孔の数平均径(Da)が15μm~50μmであり、前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔(Au)が、前記研磨面の全面積のうち0.9%以上~12%未満の面積比で含まれる。
【0047】
前記複数気孔の数平均径および面積比などは、走査電子顕微鏡(SEM)および画像解析ソフトウェアを使用して観測される各々の気孔径を測定して計算し得る。前記研磨面は、前記研磨層の厚さ方向に連続する面のうちのいずれか一面を意味し得る。また、前記研磨面は、前記研磨パッドの製造直後に現れる最外殻の表面でもあり得、所定時間の間に研磨工程が行われた後に現れる最外殻の表面でもあり得る。
【0048】
前記研磨パッドは、その表面上に現れた気孔の直径に応じて研磨スラリーの流動性および研磨効率が変わることとなる。すなわち、前記研磨パッドの表面上に現れた気孔の直径に応じて、研磨スラリーの流動性が影響を受けることとなり、これらの気孔径の分布に応じて、研磨される対象の表面にスクラッチなどの発生有無や研磨率が決定され得る。特に、気孔が均一でないと、研磨性能の均一性を損なう結果をもたらし得る。一実現例による前記研磨パッドは、複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を制御することにより、気孔の均一性および研磨性能の均一性を向上させることができ、その結果、優れた研磨率および平坦度を実現し得る。
【0049】
本発明の実現例によると、前記研磨パッドは、複数の気孔を含む研磨層を含み、前記数学式1で表示されるDq値が5μm以上~15μm以下であり、前記数学式2で表示されるDsk値が0.3超~1未満であり、前記数学式3で表示されるDku値が1超~5未満であり、研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、前記複数気孔の数平均径(Da)が15μm~50μmであり、前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔(Au)が、前記研磨面の全面積のうち0.9%以上~12%未満の面積比で含まれ得る。また、前記研磨面の単位面積(mm2)当り前記気孔の総面積は40%~60%であり得る。
【0050】
前記数学式1~3のDq、DskおよびDkuを示す気孔分布を有し、複数気孔の数平均径(Da)および前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を制御することにより、研磨性能の均一性を向上させることができ、研磨率および平坦度などの研磨性能をさらに向上させることができる。
【0051】
前記研磨パッドは、研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、前記複数気孔の数平均径(Da)が、15μm~50μm、15μm~30μm、15μm~25μm、15μm~23μm、15μm~21μm、または18μm~25μmであり得る。
【0052】
前記Daは、複数気孔の数平均径として、複数の気孔径の和を複数の気孔数で割った平均値と定義し得る。
【0053】
一実現例による本発明の研磨パッドが前記範囲のDaを満足すると、研磨率および平坦度を向上させることができる。もし、Daが15μm未満の場合、オキサイド膜を研磨した場合の研磨率が過剰に高くなるか、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が低く、平坦度が過剰に低下し得る。逆に、Daが50μmを超える場合、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が過剰に高くなるか、平坦度が過剰に低下し得る。
【0054】
前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔(Au)は、本明細書において特異気孔(unnormal pore)と称することがあり、その面積率であるAu(%)は、下記数学式4のように計算し得る。
【0055】
[数4]
前記数学式4において、
A
t(μm
2)は、全体の測定面積であり、A
u(μm
2)は、複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔の面積である。
【0056】
前記Au(%)は、前記研磨面の全面積のうち0.9%以上~12%未満、0.9%以上~10%未満、1%以上~12%未満、1%~10%、0.9%以上~5%未満、0.9%以上~4%未満、2%~10%、5%~11%、または6%~11%であり得る。研磨パッドが前記範囲のAu(%)を有すると、全体的な気孔の均一性を満足させることができ、さらには、CMP工程中の均一な研磨性能をも向上させることができる。もし、前記研磨パッドが前記範囲のAu(%)を超えると、全体的な気孔の均一性を損なうことがあり、これによって、均一な研磨性能を達成するのに困難があり得る。その結果、タングステン膜およびオキサイド膜に対する平坦度が過剰に悪化することがあり、オキサイド膜を研磨した場合の研磨率が低下し得る。これに対して、前記研磨パッドが前記範囲のAu(%)未満の場合は、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が過剰に低下することがあり、オキサイド膜を研磨した場合の研磨率が過剰に大きくなり、研磨性能に悪影響を与え得る。
【0057】
一実現例によると、前記Auの直径(Du)は、前記複数気孔の数平均径(Da)の2倍の大きさよりも大きく、前記Duは下記数学式5のように計算し得る。
【0058】
[数5]
Du>Da×2
前記数学式5において、
Duは、複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔の直径であり、Daは、複数気孔の数平均径である。
【0059】
実現例によると、前記Duは100μm以上、具体的に100μm~150μmであり得る。
【0060】
前記複数気孔の総面積率(Ap(%))は、研磨面の全面積のうち30%~55%、35%~55%、35%~53%、35%~50%、35%~45%、45%~55%、または46%~53%であり得、下記数学式6のように計算し得る。
【0061】
[数6]
前記数学式6において、
A
t(μm
2)は、全体の測定面積であり、A
p(μm
2)は、複数気孔の総面積である。
【0062】
一方、前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を除いた残りの気孔(An)は、本明細書において一般気孔(normal pore)と称することがあり、その面積率であるAn(%)は下記数学式7のように計算し得る。
【0063】
[数7]
前記数学式7において、
A
t(μm
2)は、全体の測定面積であり、A
n(μm
2)は、複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を除いた残りの気孔の面積である。
【0064】
前記An(%)は、研磨面の全面積のうち34%~54%、34%~45%、35%~50%、39%超~52%未満、または39%超~50%未満であり得る。
【0065】
一方、前記研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、最大ピークの気孔径は10μm~150μmであり得る。前記最大ピークの気孔径は、当該径を有する気孔の断面積の和の比率が最も高い気孔の直径と定義し得る。
【0066】
前記研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、最大ピークの気孔径は、例えば10μm~50μm、例えば15μm~40μm、例えば17μm~30μmであり得る。また、前記研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、最大ピークの気孔径は60μm~150μm、具体的に60μm~100μmであり得る。
【0067】
一実現例によると、前記数学式1~3のDq、DskおよびDkuを示す気孔分布を有する場合、前記研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、最大ピークの気孔径は、例えば10μm~50μmであり得る。
【0068】
また他の実現例によると、前記複数気孔の数平均径(Da)が15μm~50μmであり、前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔(Au)が前記研磨面全体の面積のうち0.9%以上~12%未満の面積比で含まれる場合、前記研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、最大ピークの気孔径は60μm~150μmであり得る。
【0069】
また、前記最大ピークの気孔径が複数気孔の数平均径よりも5μm~30μm程度さらに大きいか小さいのであり得る。または、前記最大ピークの気孔径が複数気孔の数平均径よりも10μm~20μm程度さらに大きいか小さいのであり得る。
【0070】
前記実現例により、前記研磨パッドに含まれる複数気孔の直径および分布が調整され得、それによって、特定範囲の研磨面の単位面積当たり気孔の総面積、および前記数学式1~3のDq、Dsk、およびDkuの範囲、および/または前記複数気孔の数平均径(Da)並びに前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔の面積比を満足することにより、研磨率および平坦度をさらに向上させることができる。
【0071】
前記研磨パッドは、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が、600Å/分~900Å/分であり得る。前記研磨パッドは、オキサイド膜を研磨した場合の研磨率が、2700Å/分~3300Å/分であり得る。
【0072】
例えば、前記研磨パッドが、特定範囲の研磨面の単位面積当たり気孔の総面積、および前記数学式1~3のDq、DskおよびDkuの範囲を満足することにより、研磨率および平坦度をさらに向上させることができ、具体的に前記研磨パッドは、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が、720Å/分~860Å/分、具体的に730Å/分~850Å/分、より具体的に750Å/分~850Å/分であり得る。
【0073】
また、前記研磨パッドは、オキサイド膜を研磨した場合の研磨率が、2750Å/分~3300Å/分、具体的に2800Å/分~3200Å/分、より具体的に2900Å/分~3200Å/分、または2900Å/分~3150Å/分であり得る。
【0074】
さらには、半導体基板、例えばウェーハ面内の研磨均一性を示す研磨平坦度(WIWNU:Within Wafer Non Uniformity)の場合、タングステン膜に対する平坦度が12%未満、例えば11%未満、例えば10%未満、例えば9%未満、例えば5%未満、4.8%以下、または4.5%以下であり得る。また、オキサイド膜を研磨した場合の平坦度が10%以下、例えば10%未満、例えば9%未満、例えば6%未満、例えば4.5%未満、4.0%未満、または3.8%以下であり得る。
【0075】
一方、前記実現例により、研磨パッドに含まれる複数気孔の数平均径(Da)、および前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を制御することにより、研磨率および平坦度をさらに向上させることができ、具体的に前記研磨パッドは、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が、610Å/分~900Å/分、610Å/分~850Å/分、610Å/分~820Å/分、または615Å/分~800Å/分であり得る。
【0076】
また、前記研磨パッドは、オキサイド膜を研磨した場合の研磨率が、2860Å/分~3250Å/分、2900Å/分~3200Å/分、または2920Å/分~3200Å/分であり得る。
【0077】
さらには、半導体基板面内の研磨均一性を示す研磨平坦度(WIWNU)の場合、タングステン膜の平坦度が、10%未満、9%未満、4.5%以下、または4.3%未満であり得る。また、オキサイド膜を研磨した場合の平坦度が、12%未満、10%未満、9%未満、8%未満、6%未満、5%未満、または4%未満であり得る。
【0078】
前記研磨パッドは、3級アミン系化合物および有機金属系化合物からなる群より選択された1種以上の反応速度調整剤と、シリコーン系界面活性剤とをさらに含み得る。
【0079】
[研磨パッドの製造方法]
前記研磨パッドの製造方法は、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、および発泡剤を含む組成物を混合する段階と、前記組成物を所定の圧力または減圧条件下のモールドに吐出注入して研磨層を成形する段階と、を含み得る。
【0080】
一実現例による前記研磨パッドの製造方法は、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、および発泡剤を含む組成物を混合する段階(段階1)と、前記組成物を所定の圧力条件下のモールドに吐出注入して研磨層を成形する段階(段階2)と、を含み、前記研磨層が複数の気孔を含み、研磨面の単位面積(mm2)当りの前記気孔の総面積が40%~60%であり、前記数学式1で表示されるDq値が5μm以上~15μm以下であり、前記数学式2で表示されるDsk値が0.3超~1未満であり、前記数学式3で表示されるDku値が1超~5未満である。
【0081】
他の実現例による研磨パッドの製造方法は、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、および固相発泡剤を含む組成物を混合する段階(段階1)と、前記混合された組成物を減圧下でモールドに吐出注入して研磨層を成形する段階(段階2)と、を含み、前記減圧が真空度0.6kgf/cm2~1kgf/cm2未満の範囲で行われ得る。前記製造方法によると、減圧条件を調整することによって、複数気孔の数平均径および複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を制御することができる。
【0082】
また他の実現例による研磨パッドの製造方法は、前記段階1および前記段階2を含み、前記数学式1~3のDq、Dsk、およびDkuを示す気孔分布を有するとともに、複数気孔の数平均径(Da)および前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を前記範囲に制御し得る。
【0083】
本発明の実現例によると、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、および発泡剤の含有量を調整することにより、気孔の物性を調節し得る。具体的に、前記製造方法において、発泡剤、特に固相発泡剤および/または気相発泡剤の種類と含有量とを調整し、必要に応じて、反応速度調整剤の含有量を調整し、前記モールド内の圧力を調整することにより、気孔径と複数気孔の数平均径、単位面積当たりの気孔全体数、および気孔の総面積を調整して、前記特定範囲を有するDq、Dsk、およびDkuの値、および/または複数気孔の数平均径(Da)および前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を制御することができ、これにより、研磨パッドの研磨率および平坦度などの研磨特性を向上させることができる。
【0084】
また、前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する特異気孔は、工程の不安定性により意図せずに形成されることがあり、例えば、圧力条件が適切に制御されず、気孔が過剰に投入されたり、固相発泡剤が異常な大きさに膨張されたり、あるいは固相発泡剤の変形によりオープンセル(open cell)が形成される等に起因して、前記特異気孔が増加し得る。本発明は、実現例により、前記特異気孔を高圧注入および減圧排出によって空気や気泡の混入を制御して、前記固相発泡剤の大きさを適切に調整することにより、気孔分布を適正範囲に形成し得る。
【0085】
具体的に見てみると、一実現例による前記研磨パッドの製造方法は、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、および発泡剤を含む組成物を混合する段階(第1段階)を含み得る。
【0086】
前記第1段階は、各成分を混合する段階であって、これによりウレタン系プレポリマー、発泡剤および硬化剤の混合物を含む組成物が得られる。前記硬化剤は、前記ウレタン系プレポリマーおよび前記固相発泡剤と一緒に添加するか、前記ウレタン系プレポリマーおよび前記固相発泡剤を1次混合し、次いで前記硬化剤が2次で混合され得る。
【0087】
一例として、ウレタン系プレポリマー、固相発泡剤、および硬化剤は、実質的にほぼ同時に混合過程に投入され得る。
【0088】
別の例として、ウレタン系プレポリマーおよび固相発泡剤は予め混合し、その後硬化剤を投入し得る。すなわち、前記硬化剤は、ウレタン系プレポリマー内に予め混入されなくても良い。もし、前記硬化剤をウレタン系プレポリマーに予め混合する場合、反応速度の調整が困難になることがあり、特にイソシアネート末端基を有するプレポリマーの安定性が大きく阻害され得る。
【0089】
前記混合物を製造する段階は、前記ウレタン系プレポリマーと前記硬化剤とを混合して反応を開始させ、前記固相発泡剤をむらなく分散させる段階である。具体的に、前記混合は1000rpm~10000rpm、または4000rpm~7000rpmの速度で行われ得る。前記速度範囲であるとき、固相発泡剤が原料内にむらなく分散されるのに、より有利であり得る。
【0090】
前記ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤は、それぞれの分子内の反応性基(reactive group)のモル数を基準に、1:0.8~1:1.2のモル当量比、または1:0.9~1:1.1のモル当量比で混合され得る。なお、「それぞれの反応性基のモル数基準」とは、例えば、ウレタン系プレポリマーのイソシアネート基のモル数と、硬化剤の反応性基(アミン基、アルコール基など)のモル数とを基準とすることを意味する。したがって、前記ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤は、前記で例示されたモル当量比を満足する量で単位時間当たりに投入されるように投入速度が調整され、混合過程に一定の速度で投入され得る。
以下、研磨パッドに含まれる個々の具体的な成分を詳細に説明する。
【0091】
[ウレタン系プレポリマー]
プレポリマー(prepolymer)とは、一般に、一種の最終成形品を製造するにおいて、成形し易いように重合度を中間段階で中止させた、比較的低い分子量を有する高分子のことを意味する。プレポリマーは、それ自体で、または他の重合性化合物と反応させた後に成形することができ、例えば、イソシアネート化合物とポリオールとを反応させてプレポリマーを調製し得る。
【0092】
前記ウレタン系プレポリマーの調製に使用されるイソシアネート化合物は、例えば、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate、TDI)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(naphthalene-1,5-diisocyanate)、パラフェニレンジイソシアネート(p-phenylene diisocyanate)、トリジンジイソシアネート(tolidine diisocyanate)、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'-diphenyl methane diisocyanate)、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(dicyclohexylmethane diisocyanate)、およびイソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate)からなる群より選択される1種以上のイソシアネートであり得る。
【0093】
前記ウレタン系プレポリマーの調製に使用され得るポリオールは、例えば、ポリエーテルポリオール(polyether polyol)、ポリエステルポリオール(polyester polyol)、ポリカーボネートポリオール(polycarbonate polyol)、およびアクリルポリオール(acryl polyol)からなる群より選択された1種以上のポリオールであり得る。前記ポリオールは、300g/mol~3000g/molの重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0094】
前記ウレタン系プレポリマーは、前述したように、イソシアネート化合物とポリオールとを反応させて調製し得る。前記イソシアネート化合物およびポリオールの具体的な種類は、前記研磨パッドにて例示した通りである。
【0095】
前記ウレタン系プレポリマーは、500g/mol~3000g/molの重量平均分子量を有し得る。具体的に、前記ウレタン系プレポリマーは、600g/mol~2000g/mol、または800g/mol~1000g/molの重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0096】
一例として、前記ウレタン系プレポリマーは、イソシアネート化合物としてトルエンジイソシアネートが使用され、ポリオールとしてポリテトラメチレンエーテルグリコールが使用され重合された500g/mol~3000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する高分子であり得る。
【0097】
[硬化剤]
前記硬化剤は、アミン化合物およびアルコール化合物中の1種以上であり得る。具体的に、前記硬化剤は、芳香族アミン、脂肪族アミン、芳香族アルコール、および脂肪族アルコールからなる群より選択される1つ以上の化合物を含み得る。
【0098】
例えば、前記硬化剤は、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)、ジエチルトルエンジアミン(diethyltoluenediamine)、ジアミノジフェニルメタン(diaminodiphenylmethane)、ジアミノジフェニルスルホン(diaminodiphenyl sulphone)、m-キシリレンジアミン(m-xylylenediamine)、イソホロンジアミン(isophoronediamine)、エチレンジアミン(ethylenediamine)、ジエチレントリアミン(diethylenetriamine)、トリエチレンテトラアミン(triethylenetetramine)、ポリプロピレンジアミン(polypropylenediamine)、ポリプロピレントリアミン(polypropylenetriamine)、エチレングリコール(ethylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、ブタンジオール(butanediol)、ヘキサンジオール(hexanediol)、グリセリン(glycerine)、およびトリメチロールプロパン(trimethylolpropane)からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0099】
[発泡剤]
前記発泡剤は、前記研磨層内の気孔構造を形成するための成分であり、研磨パッドの空隙の形成に通常使用されるものであれば、特に制限しない。
【0100】
例えば、前記発泡剤は、中空構造を有する固相発泡剤、揮発性液体を用いた液相発泡剤、および不活性ガスの中から選ばれた1種以上であり得る。具体的に、前記発泡剤は、気相発泡剤、固相発泡剤、またはこれらのいずれもを含み得る。
【0101】
[固相発泡剤]
前記固相発泡剤は、熱膨張された(サイズ調整された)マイクロカプセルであり、5μm~200μmの平均粒径を有するマイクロバルーン構造体であり得る。前記熱膨張された(サイズ調整された)マイクロカプセルは、熱膨張性マイクロカプセルを加熱膨張させて得られたものであり得る。
【0102】
前記熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂を含む外皮と、前記外皮の内部に封入された発泡剤とを含み得る。前記熱可塑性樹脂は、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、メタクリロニトリル系共重合体、およびアクリル系共重合体からなる群より選択された1種以上であり得る。さらには、前記内部に封入された発泡剤は、炭素数1~7の炭化水素からなる群より選択された1種以上であり得る。具体的に、前記内部に封入された発泡剤は、エタン(ethane)、エチレン(ethylene)、プロパン(propane)、プロペン(propene)、n-ブタン(n-butane)、イソブタン(isobutene)、ブテン(butene)、イソブテン(isobutene)、n-ペンタン(n-pentane)、イソペンタン(isopentane)、ネオペンタン(neopentane)、n-ヘキサン(n-hexane)、ヘプタン(heptane)、石油エーテル(petroleum ether)などの低分子量炭化水素と、トリクロロフルオロメタン(trichlorofluoromethane、CCl3F)、ジクロロジフルオロメタン(dichlorodifluoromethane、CCl2F2)、クロロトリフルオロメタン(chlorotrifluoromethane、CClF3)、テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene、CClF2-CClF2)などのクロロフルオロ炭化水素と、テトラメチルシラン(tetramethylsilane)、トリメチルエチルシラン(trimethylethylsilane)、トリメチルイソプロピルシラン(trimethylisopropylsilane)、トリメチル-n-プロピルシラン(trimethyl-n-propylsilane)などのテトラアルキルシランと、からなる群より選択され得る。
【0103】
本発明の一実現例によると、前記固相発泡剤は、20μm~50μmの平均粒径(D50)を有し得る。なお、D50は、粒子径分布の50パーセンタイル(中間)の体積粒径のことを指す。より具体的に、前記固相発泡剤は、25μm~48μmのD50を有し得る。より具体的に、前記固相発泡剤は、25μm~40μm、28μm~40μm、または30μm~40μmのD50を有し得る。前記固相発泡剤のD50が前記範囲を満足すると、研磨率および平坦度をさらに向上させ得る。前記固相発泡剤のD50が前記範囲未満の場合、気孔の数平均径が小さくなり、研磨率および平坦度に影響を与えることがあり、前記範囲を超える場合、気孔の数平均径が過剰に大きくなり、研磨率および平坦度に影響を与え得る。
【0104】
また、固相発泡剤の平均粒径に対する標準偏差は、15以下、13以下、11以下、7~11、または7.5~10.4であり得る。
【0105】
前記ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に、前記固相発泡剤を0.5重量部~3重量部の量で使用し得る。
【0106】
前記ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に、前記固相発泡剤を0.5重量部超~2.5重量部未満、0.6重量部以上~2.3重量部以下、0.8重量部以上~2重量部以下、0.8重量部以上~1.8重量部以下、1.0重量部以上~2.0重量部以下、または1.0重量部以上~1.5重量部以下の量で使用し得る。
【0107】
または、前記ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に、前記固相発泡剤を0.5重量部~2.7重量部、または0.8重量部~2.6重量部、または1.5重量部~3重量部の量で使用し得る。
【0108】
前記固相発泡剤は、シェルを有する微細中空粒子であり得る。前記シェルのガラス転移温度(Tg)は、70℃~110℃、80℃~110℃、90℃~110℃、100℃~110℃、70℃~100℃、70℃~90℃、または80℃~100℃であり得る。前記固相発泡剤のシェルのガラス転移温度が好ましい範囲であるとき、前記研磨パッドの製造工程中に適切な圧力条件および吐出条件を適用して、前記微細気孔の変形を防止することにより、前記研磨面の気孔分布を前述の目的範囲で実現し得る。
【0109】
本発明の一実現例によると、発泡剤として気相発泡剤を使用しなくても、固相発泡剤のみを使用して、前記特性を有する気孔の大きさ(直径)および気孔の大きさ分布を制御し得る。特に、固相発泡剤の種類および含有量、および/または前記組成物をモールドに吐出注入する際、吐出量お真空度を調整することにより、本発明で目的とする気孔の大きさ分布を制御し得る。
【0110】
[気相発泡剤]
前記気相発泡剤は、不活性ガスを含み得、前記気相発泡剤は、前記ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度調整剤、およびシリコーン系界面活性剤が混合されて反応する過程に投入され、気孔を形成し得る。前記不活性ガスは、プレポリマーと硬化剤との間の反応に関与しないガスであれば、種類は特に限定されない。例えば、前記不活性ガスは、窒素ガス(N2)、アルゴンガス(Ar)、およびヘリウムガス(He)からなる群より選択される1種以上であり得る。具体的に、前記不活性ガスは、窒素ガス(N2)またはアルゴンガス(Ar)であり得る。
【0111】
前記不活性ガスは、前記組成物(原料混合物)の総体積、具体的にウレタン系プレポリマー、発泡剤、反応速度調整剤、硬化剤、および/または界面活性剤の合計体積の5体積%~30体積%に該当する体積で投入され得る。
【0112】
具体的に、前記不活性ガスは、前記組成物の総体積の5体積%超~20体積%以下、5体積%超~18体積%以下、具体的に6体積%~15体積%、より具体的に6体積%~13体積%、または7.5体積%~10体積%に該当する体積で投入され得る。
【0113】
または、前記不活性ガスは、前記組成物の総体積の6体積%~25体積%、具体的に8体積%~25体積%に該当する体積で投入され得る。
【0114】
[反応速度調整剤]
本発明の一実現例によると、前記組成物は反応速度調整剤を含み得る。
【0115】
前記反応速度調整剤は、反応促進剤または反応遅延剤であり得る。具体的に、前記反応速度調整剤は反応促進剤であり得、例えば、3級アミン系化合物および有機金属系化合物からなる群より選択された1種以上の反応促進剤であり得る。
【0116】
具体的に、前記反応速度調整剤は、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルブタンジアミン、2-メチル-トリエチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、ビス(2-メチルアミノエチル)エーテル、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N,N,N''-ペンタメチルジエチレンタルリアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチルアミノエチルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、2-メチル-2-アザノルボルナン、ジブチルスズジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズジ-2-エチルヘキサノエート、およびジブチルスズジメルカプチドからなる群より選択された1種以上を含み得る。具体的に、前記反応速度調整剤は、ベンジルジメチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、およびトリエチルアミンからなる群より選択された1種以上を含み得る。
【0117】
前記反応速度調整剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に0.05重量部~2重量部の量で使用され得る。
【0118】
具体的に、前記反応速度調整剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に0.1重量部超~2重量部以下、0.1重量部超~1.8重量部以下、具体的に0.3重量部以上~1.8重量部以下、より具体的に0.3重量部超~1.8重量部未満、または0.5重量部以上~1.5重量部以下の量で使用され得る。
【0119】
前記反応速度調整剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に0.05重量部~1.8重量部、0.05重量部~1.7重量部、0.05重量部~1.6重量部、0.1重量部~1.5重量部、0.1重量部~0.3重量部、0.2重量部~1.8重量部、0.2重量部~1.7重量部、0.2重量部~1.6重量部、0.2重量部~1.5重量部、または0.5重量部~1重量部の量で使用され得る。
【0120】
前記範囲内の含有量で反応速度調整剤を含む場合、混合物(例えば、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度調整剤、およびシリコーン系界面活性剤の混合物)の反応速度(混合物が固相化する時間)を適切に調整することにより、所望の大きさの気孔を形成し得る。
【0121】
[界面活性剤]
本発明の一実現例によると、前記組成物は界面活性剤を含み得る。前記界面活性剤は、形成される気孔の重なりおよびまとまり現象を防止する役割をし、研磨パッドの製造に通常使用されるものであれば、その種類を特に制限しない。例えば、前記界面活性剤は、シリコーン系界面活性剤を含み得る。前記シリコーン系界面活性剤の市販品としては、Evonik社製のB8749LF、B8736LF2、およびB8734LF2などが挙げられる。
【0122】
前記シリコーン系界面活性剤は、前記ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に0.2重量部~2重量部の量で含まれ得る。具体的に、前記シリコーン系界面活性剤は、前記ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に、0.2重量部~1.9重量部、0.2重量部~1.8重量部、0.2重量部~1.7重量部、0.2重量部~1.6重量部、0.2重量部~1.5重量部、または0.5重量部~1.5重量部の量で含まれ得る。前記範囲内の含有量でシリコーン系界面活性剤を含む場合、気相発泡剤由来の気孔がモールド内で安定して形成および保持され得る。
【0123】
[反応および気孔形成]
前記ウレタン系プレポリマーと硬化剤とは、混合した後反応して固相のポリウレタンを形成して、シート等として製造される。具体的に、前記ウレタン系プレポリマーのイソシアネート末端基は、前記硬化剤のアミン基、アルコール基等と反応し得る。この際、不活性ガスを含む気相発泡剤および固相発泡剤は、ウレタン系プレポリマーと硬化剤との化学的反応に関与せず、かつ、物理的に原料内にむらなく分散され気孔構造を形成する
前記研磨パッド製造工程中の圧力および/または吐出条件等により、前記固相発泡剤の大きさ変化が生じるか、あるいは前記固相発泡剤による気孔構造中の外部気体による気孔が浸透する等により、前記研磨パッドの気孔構造が決定され得る。
【0124】
一方、気相発泡剤を使用する場合には、不活性ガスを含む気相発泡剤もまた、ウレタン系プレポリマーと硬化剤との反応に関与せず、かつ、原料内にむらなく分散され気孔を形成し、前記研磨パッドの製造工程中の圧力および/または吐出条件等により、前記気相発泡による気孔構造の大きさが調整され、前記研磨パッドの気孔構造に影響を与え得る。
【0125】
また、反応速度調整剤を使用する場合には、前記反応速度調整剤がウレタン系プレポリマーと硬化剤との間の反応を促進したり、遅延させたりすることによって、気孔径を調整する。例えば、前記反応速度調整剤が反応を遅延させる反応遅延剤である場合、前記原料内に微細に分散されている不活性ガスが互いに合わさる時間が増えるため、気孔径を増大させ得る。逆に、前記反応速度調整剤が反応を促進させる反応促進剤である場合は、前記原料内に微細に分散されている不活性ガスが互いに合わさる時間が減るため、気孔径を減少させ得る。
【0126】
一方、本発明の一実現例による研磨パッドの製造方法は、前記組成物を所定の圧力または減圧条件下のモールドに吐出注入して研磨層を成形する段階(第2段階)を含み得る。
【0127】
前記モールド内の圧力または減圧条件を調整することにより、気孔径と、複数気孔の数平均径、単位面積当たりの気孔全体数、および気孔の総面積を調整して、前記特定範囲を有するDq、DskおよびDku値、および/または複数気孔の数平均径(Da)および前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を制御することができ、これにより、研磨パッドの研磨率および平坦度等の研磨特性を向上させることができる。
【0128】
特に、前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔、すなわち、特異気孔は、工程の不安定性によって意図せずに形成され得、本発明は、実現例により、前記特異気孔を高圧注入および減圧排出によって空気や気泡の混入を制御し適正範囲に形成することにより、研磨パッドの性能をさらに向上させることができる。
【0129】
[成形]
図2は、本発明の一実現例による、モールドを用いた成形工程を示す概略図である。
【0130】
図2を参照して具体的に見てみると、前記成形は、モールド(mold)100を用いて行われ得る。具体的に、ミキシングヘッドなどにて十分に撹拌された原料(組成物)は、モールドに吐出(b)されモールドの内部を満たせ得る。この際、吐出量を調整することができ、これは前記特異気孔を制御するのに影響を与え得る。また、前記特異気孔を高圧注入および減圧排出(a)により空気や気泡の混入を制御して適正範囲に形成することにより、研磨パッドの性能をさらに向上させることができる。
【0131】
前記吐出(b)注入時の吐出量が、5kg/分~20kg/分、具体的に8kg/分~18kg/分、より具体的に8kg/分~15kg/分、または10kg/分~12kg/分であり得る。もし、前記範囲の吐出量を超える場合は、負荷が多くかかり工程上の問題があり得、前記範囲の吐出量未満の場合は、ウレタン系プレポリマーと硬化剤との間の反応が早く起こり、簡単に固まってしまう。
【0132】
また、前記減圧排出(a)の際、真空度は0.6kgf/cm2~1kgf/cm2未満、具体的に0.6kgf/cm2~0.9kgf/cm2、より具体的に0.7kgf/cm2~0.9kgf/cm2の範囲で行われ得る。前記真空度は、気孔径を制御するのに重要な役割を果たし得る。すなわち、前記減圧工程によって巨大気孔が発生し得る空気および気泡が排出され、これにより、複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する特異気孔の面積率(Au(%))を制御し得る。したがって、前記範囲の真空度下で減圧が行われる場合、Au(%)を0.9%以上~12%未満の面積比に含まれるように制御し得る。もし、真空度が前記範囲を超える場合はAu(%)が大きくなり、相対的にAn(%)が小さくなり、タングステン膜を研磨した場合の初期研磨率が高過ぎることがあり、オキサイド膜を研磨した場合の初期研磨率が低過ぎることがあり得る。また、研磨性能が均一ではなく、タングステン膜およびオキサイド膜の平坦度が低下し得る。また、真空度が前記範囲未満であると、Au(%)が小さくなり、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が過剰に低くなり、タングステン膜を研磨した場合の初期研磨率が過剰に高くなり得る。また、研磨性能が均一ではなく、タングステン膜およびオキサイド膜の平坦度が低下し得る。
【0133】
また、前記モールド内の圧力は、0.6kgf/cm2~1.2kgf/cm2に調整され得る。また、前記モールド内の圧力は、0.8kgf/cm2~1.1kgf/cm2、0.8kgf/cm2~1.0kgf/cm2、0.6kgf/cm2~1.0kgf/cm2、1.0kgf/cm2~1.2kgf/cm2、または0.9kgf/cm2~1.1kgf/cm2であり得る。また、前記モールド内の圧力は、例えば1kgf/cm2の条件で行われ得る。
【0134】
もし、前記圧力が0.6kgf/cm2未満の場合は、Dq値が過剰に大きくなり得、1.2kgf/cm2を超える場合は、気孔の数平均径が過剰に小さくなり得る。これにより、Dq、Dsk、およびDkuに影響を与えることがあり、さらには研磨率および平坦度などの研磨特性が変わり得る。
【0135】
前記ウレタン系プレポリマーと硬化剤との間の反応は、モールド内で完了され、モールドの形状どおりに固相化されたケーキ状の成形体が得られる。
【0136】
その後、得られた成形体を適切にスライスまたは切削して、研磨パッドの製造のための研磨層として加工し得る。一例として、最終的に製造される研磨パッドの厚さの5倍~50倍高さのモールドに成形した後、成形体を同厚さ間隔でスライスして多数の研磨パッド用シート状にまとめて製造し得る。この場合、十分な固相化時間を確保するために、反応速度調整剤として反応遅延剤を使用することができ、これにより、モールドの高さを最終的に製造される研磨パッド厚さの5倍~50倍に設定した後に成形しても、研磨層の製造が可能である。ただし、前記研磨層は、モールド内の成形された位置によって、異なる直径の気孔を有し得る。すなわち、モールドの下部で成形された研磨層の場合は微細な直径の気孔を有するのに対し、モールドの上部で成形された研磨層は、下部で成形されたシートに比べて直径がより大きい気孔を有し得る。
【0137】
また、前記研磨層、または各シート別にも均一な直径の気孔を有するようにするために、例えば、1回の成形で1枚のシート製造が可能なモールドを使用し得る。そのために、前記モールドの高さは、最終的に製造される研磨パッドの厚さとさほど大きく差が出ない。例えば、前記成形は、最終的に製造される研磨パッド厚さの1倍~3倍に相当する高さを有するモールドを使用して行われ得る。より具体的に、前記モールドは、最終的に製造される研磨パッド厚さの1.1倍~2.5倍、または1.2倍~2倍の高さを有し得る。この際、より均一な直径の気孔を形成するために、反応速度調整剤として反応促進剤を使用し得る。
【0138】
その後、前記モールドから得られた成形体の上端および下端のそれぞれを切削し得る。例えば、前記成形体の上端および下端のそれぞれを成形体の総厚さの1/3以下ずつ切削したり、1/22~3/10ずつ切削したり、または1/12~1/4ずつ切削し得る。
【0139】
具体的な一例として、前記成形が最終製造される研磨パッド厚さの1.2倍~2倍に相当する高さを有するモールドを使用して行われ、前記成形後に前記モールドから得られた成形体の上端および下端のそれぞれを成形体の総厚さの1/12~1/4ずつ切削する工程をさらに含み得る。
【0140】
前記製造方法は、前記表面切削後、表面に溝を加工する工程、下層部との接着工程、検査工程、包装工程等をさらに含み得る。これらの工程は、通常の研磨パッド製造方法の通りに行われ得る。
【0141】
[研磨パッドの物性]
先般記載したように、実現例による研磨パッドは、単位面積当たりの気孔の総面積および前記数学式1~3のDq、DskおよびDkuを含む気孔分布パラメータが前記範囲内であるとき、研磨パッドの研磨率および平坦度などの研磨パッドの研磨性能が著しく向上し得る。
【0142】
または、実現例による研磨パッドは、DaおよびAu(%)が前記範囲内であるとき、均一な研磨性能を実現することができ、これにより、研磨パッドの研磨率および平坦度が著しく向上し得る。
【0143】
または、実現例による研磨パッドは、前記物性のすべてを満足する場合、研磨パッドの性能がさらに向上し得る。
【0144】
前記研磨パッドは、研磨パッドの単位面積(mm2)当り気孔の合計数が600個以上であり得る。より具体的に、研磨パッドの単位面積(mm2)当り気孔の合計数が700個以上、または750個以上、800個以上であり得る。また、前記研磨パッドの単位面積(mm2)当り気孔の合計数が900個以上であり得るが、これに限定されるものではない。また、前記研磨パッドの単位面積(mm2)当り気孔の合計数が2500個以下、具体的に2200個以下、1500個以下、または1200個以下であり得るが、これに限定されるものではない。したがって、前記研磨パッドの単位面積(mm2)当り気孔の合計数は、700個~2500個、例えば、750個~2200個、800個~1500個、または800個~1200個まで含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0145】
具体的に、前記研磨パッドは、その弾性モジュラスは、60kgf/cm2以上であり得る。より具体的に、前記研磨パッドの弾性モジュラスは100kgf/cm2以上であり得るが、これに限定されるものではない。前記研磨パッドの弾性モジュラスの上限は150kgf/cm2であり得るが、これに限定されるものではない。
【0146】
また、実現例による研磨パッドは、研磨性能に優れるとともに、研磨パッドとしての基本物性、例えば、耐電圧、比重、表面硬度、引張強度、および伸び率に優れる。
【0147】
前記研磨パッドの比重および硬度などの物理的性質は、イソシアネートとポリオールとの反応により重合されたウレタン系プレポリマーの分子構造により調節し得る。
【0148】
具体的に、前記研磨パッドは、30ショアD~80ショアDの硬度を有し得る。より具体的に、前記研磨パッドは、40ショアD~70ショアDの硬度を有し得るが、これに限定されるものではない。
【0149】
具体的に、前記研磨パッドは、0.6g/cm3~0.9g/cm3の比重を有し得る。より具体的に、前記研磨パッドは、0.7g/cm3~0.85g/cm3の比重を有し得るが、これに限定されるものではない。
【0150】
具体的に、前記研磨パッドは、10N/mm2~100N/mm2の引張強度を有し得る。より具体的に、前記研磨パッドは、15N/mm2~70N/mm2の引張強度を有し得る。さらにより具体的に、前記研磨パッドは、20N/mm2~70N/mm2の引張強度を有し得るが、これに限定されるものではない。
【0151】
具体的に、前記研磨パッドは、30%~300%の伸び率を有し得る。より具体的に、前記研磨パッドは、50%~200%の伸び率を有し得る。
【0152】
前記研磨パッドは、その耐電圧が14kV~23kVであり、厚さが1.5mm~2.5mmであり、比重が0.7g/cm3~0.9g/cm3であり、25℃にて表面硬度が50ショアD~65ショアDであり、引張強度が15N/mm2~25N/mm2であり、伸び率が80%~250%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0153】
前記研磨パッドは、1mm~5mmの厚さを有し得る。具体的に、前記研磨パッドは、1mm~3mm、1mm~2.5mm、1.5mm~5mm、1.5mm~3mm、1.5mm~2.5mm、1.8mm~5mm、1.8mm~3mm、または1.8mm~2.5mmの厚さを有し得る。研磨パッドの厚さが前記範囲内であるとき、研磨パッドとしての基本物性を十分に発揮し得る。
【0154】
前記研磨パッドは、表面に機械的研磨のための溝(groove)を有し得る。前記溝は、機械的研磨のための適切な深さ、幅、および間隔を有し得、特に限定されない。
実現例による研磨パッドは、前述した研磨パッドの物性を同時に示し得る。
【0155】
[半導体素子の製造方法]
一実現例による半導体素子の製造方法は、前記一実現例による研磨パッドを用いて半導体基板の表面を研磨する段階を含む。
【0156】
つまり、一実現例による半導体素子の製造方法は、複数の気孔を含む研磨層を含む研磨パッドをプラテンに装着する段階と、前記研磨層の研磨面とウェーハの表面とを当接するよう互いに相対回転させて前記ウェーハの表面を研磨する段階と、を含み、前記研磨層は、前記研磨面の単位面積(mm2)当り前記気孔の総面積が40%~60%であり、前記数学式1で表示されるDq値が5μm以上~15μm以下であり、前記数学式2で表示されるDsk値が0.3超~1未満であり、前記数学式3で表示されるDku値が1超~5未満であり得る。
【0157】
他の実現例による半導体素子の製造方法は、複数の気孔を含む研磨層を含む研磨パッドをプラテンに装着する段階と、前記研磨層の研磨面とウェーハの表面とを当接するよう互いに相対回転させて前記ウェーハの表面を研磨する段階と、を含み、前記研磨面を基準とした前記複数気孔の直径分布において、前記複数気孔の数平均径(Da)が15μm~50μmであり、前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔(Au)が、前記研磨面の全面積のうち0.9%以上~12%未満の面積比で含まれ得る。
【0158】
また他の実現例による半導体素子の製造方法は、複数の気孔を含む研磨層を含む研磨パッドをプラテンに装着する段階と、前記研磨層の研磨面とウェーハの表面とを当接するよう互いに相対回転させて前記ウェーハの表面を研磨する段階と、を含み、前記範囲の単位面積当たりの気孔の総面積と前記数学式1~3のDq、DskおよびDkuを示す気孔分布を有し、前記範囲の複数気孔の数平均径(Da)および複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有し得る。
【0159】
図1は、一実現例による半導体素子製造工程の概略的な工程を示したものである。
図1を参照すると、前記一実現例による研磨パッド110をプラテン120上に装着した後、半導体基板130を前記研磨パッド110上に配置する。この際、前記半導体基板130の表面は、前記研磨パッド110の研磨面に直接接触される。研磨のために、前記研磨パッド上にノズル140を介して研磨スラリー150が噴射され得る。前記ノズル140を介して供給される研磨スラリー150の流量は、約10cm
3/分~約1000cm
3/分の範囲内で、目的に応じて選択され得、例えば、約50cm
3/分~約500cm
3/分であり得るが、これに限定されるものではない。
【0160】
その後、前記半導体基板130と前記研磨パッド110とは互いに相対回転して、前記半導体基板130の表面が研磨され得る。この際、前記半導体基板130の回転方向および前記研磨パッド110の回転方向は同じ方向でもあり得、反対方向でもあり得る。前記半導体基板130と前記研磨パッド110との回転速度は、約10rpm~約500rpmの範囲で目的に応じて選択され得、例えば、約30rpm~約200rpmであり得るが、これに制限されるものではない。
【0161】
前記半導体基板130は、研磨ヘッド160に装着された状態で、前記研磨パッド110の研磨面に所定の荷重で加圧され当接するようにした後、その表面が研磨され得る。前記研磨ヘッド160によって、前記半導体基板130の表面および前記研磨パッド110の研磨面に加わる荷重は約1gf/cm2~約1000gf/cm2の範囲で目的に応じて選択され得、例えば、約10gf/cm2~約800gf/cm2であり得るが、これに限定されるものではない。
【0162】
一実現例において、前記半導体素子の製造方法は、前記研磨パッド110の研磨面を研磨に適した状態に保持させるために、前記半導体基板130の研磨と同時にコンディショナー170により前記研磨パッド110の研磨面を加工する段階をさらに含み得る。
【0163】
前記一実現例によると、研磨パッドに含まれる複数気孔の大きさ(直径)および分布が調整され得、これにより、前記研磨パッドは、特定範囲の単位面積当たり気孔の総面積および前記数学式1~3のDq、DskおよびDkuを示す気孔分布を有するか、複数気孔の数平均径(Da)および前記複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を制御することにより、研磨率および平坦度などの研磨性能をさらに向上させ得る。また、前記研磨パッドを利用して、優れた品質の半導体素子を効率的に製造し得る。
【0164】
(実施例)
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例は、本発明を例示するものであるのみ、本発明の範囲がこれらに限定されない。
【0165】
(実施例1-1)
ウレタン系プレポリマー、硬化剤、不活性ガス注入ライン、および反応速度調整剤注入ラインが備えられているキャスティング装置において、プレポリマータンクに未反応NCOを9.1重量%で有するPUGL-550D(SKC社製)を充填し、硬化剤タンクに4、4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA、イシハラ社製)を充填し、不活性ガスとしては窒素(N2)を、反応速度調整剤としては、反応促進剤(Airproduct社製、製品名:A1、3級アミン系化合物)を準備した。また、前記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して1重量部の固相発泡剤(AkzoNobel社製、製品名:Expancel 461 DET 20 d40、平均粒径:32.67μm)、および1重量部のシリコーン系界面活性剤(Evonik社製、製品名:B8462)を予め混合した後、プレポリマータンクに注入した。
【0166】
それぞれの投入ラインを介してウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度調整剤、シリコーン系界面活性剤、および不活性ガスをミキシングヘッドに一定の速度で投入しながら撹拌した。この際、ウレタン系プレポリマーのNCO基のモル当量と硬化剤の反応性基のモル当量とを1:1で合わせ、合計投入量を10kg/分の速度で保持した。また、不活性ガスは、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度調整剤、およびシリコーン系界面活性剤の合計体積の10%の体積で一定に投入し、反応速度調整剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に0.5重量部の量で投入された。
【0167】
撹拌された原料をモールド(縦1000mm、横1000mm、高さ3mm)に、吐出量10kg/分にし、前記モールド内の圧力を1.0kgf/cm2に調整した条件下で吐出し、反応を終了して多孔質ポリウレタン成形体を得た。以降、調製された多孔質ポリウレタン成形体は、その表面が研削盤により研削され、チップにより溝加工する過程を経て、平均厚さが2mmに調整された。
【0168】
前記多孔質ポリウレタン層と基材層(平均厚さ:1.1mm)とを、ホットメルトフィルム(SKC社製、製品名:TF-00)を使用して、120℃にて熱融着して研磨パッドを製造した。
【0169】
(実施例1-2)
反応速度調整剤、気相発泡剤、および固相発泡剤の含有量を下記表1のように調整したことを除いては、実施例1-1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0170】
(実施例1-3)
前記実施例1-1のキャスティング装置において、前記不活性ガス注入ラインと、前記反応速度調整剤注入ラインを遮断した。プレポリマータンクに、9.1NCO%を有するPUGL-600D(SKC社製、重量平均分子量:1500g/mol)を充填し、硬化剤タンクに、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(TCI(Tokyo Chemical Industry)社製)を充填した。
【0171】
さらに、前記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して1.5重量部の固相発泡剤(AkzoNobel社製、製品名:Expancel 551 DE 40 d42、平均粒径:40μm)を予め混合した後、プレポリマータンクに注入した。
【0172】
それぞれの投入ラインを介して前記固相発泡剤と混合されたウレタン系プレポリマーおよび硬化剤を、ミキシングヘッドに一定の速度で投入しながら撹拌した。前記ミキシングヘッドの回転速度は約5000rpmであった。この際、ウレタン系プレポリマーのNCO基のモル当量と硬化剤の反応性基のモル当量とを1:1で合わせ、合計投入量を10kg/分の速度で保持した。
【0173】
撹拌された原料をモールド(縦1000mm、横1000mm、高さ3mm)に、吐出量10kg/分にし、前記モールド内の圧力を0.8kgf/cm2に調整した条件下で吐出し、反応を終了して、多孔質ポリウレタン成形体を得た。以降、調製された多孔質ポリウレタン成形体は、その表面が研削盤により研削され、チップにより溝加工する過程を経て、平均厚さが2mmに調整された。
【0174】
前記多孔質ポリウレタン層と基材層(平均厚さ:1.1mm)とを、ホットメルトフィルム(メーカー:SKC、製品名:TF-00)を使用して、120℃にて熱融着して研磨パッドを製造した。
【0175】
(実施例1-4)
固相発泡剤の含有量およびモールド内の真空圧力等を下記表1のように調整したことを除いては、実施例1-3と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0176】
(実施例2-1)
ウレタン系プレポリマー、硬化剤、不活性ガス注入ライン、および反応速度調整剤注入ラインが備えられているキャスティング装置において、プレポリマータンクに、9.1NCO%を有するPUGL-600D(SKC社製、重量平均分子量:1500g/mol)を充填し、硬化剤タンクに、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(TCI社製)を充填し、不活性ガスとして窒素(N2)を準備した。また、前記反応速度調整剤としては、シグマアルドリッチ社のトリエチレンジアミン(triethylene diamine、TEDA)を使用した。
【0177】
さらに、前記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して1重量部の固相発泡剤(AkzoNobel社、製品名:Expancel 461 DET 20 d40、平均粒径:40μm)および0.5重量部のシリコーン界面活性剤(Evonik社、製品名:B8462)を予め混合した後、プレポリマータンクに注入した。
【0178】
それぞれの投入ラインを介してウレタン系プレポリマー、硬化剤、反応速度調整剤、および不活性ガスをミキシングヘッドに一定の速度で投入しながら撹拌した。前記ミキシングヘッドの回転速度は、約5000rpmであった。この際、ウレタン系プレポリマーのNCO基のモル当量と硬化剤の反応性基のモル当量とを1:1で合わせ、合計投入量を10kg/分の速度で保持した。また、不活性ガスは、ポリウレタンシートの目標比重を0.8g/cm3に設定し、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度調整剤、およびシリコーン界面活性剤の合計体積の21体積%で投入し、反応速度調整剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に0.5重量部の量で投入した。
【0179】
撹拌された原料をモールド(縦1000mm、横1000mm、高さ3mm)に、吐出量10kg/分にし、真空度0.8kgf/cm2の減圧下で吐出し、反応を終了して固相ケーキ状の成形体を得た。その後、前記成形体の上端および下端をそれぞれ0.5mm厚ずつ切削して、厚さ2mmの上部パッドを得た。
【0180】
その後、上部パッドに対して表面ミリングおよび溝形成工程を経て、ホットメルト接着剤により下部パッドと積層して研磨パッドを製造した。
【0181】
(実施例2-2)
下記表2に示すように、吐出量を12kg/分に調整したことを除いては、実施例2-1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0182】
(実施例2-3)
下記表2に示すように、吐出量を12kg/分にし、真空度を0.7kgf/cm2に調整したことを除いては、実施例2-1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0183】
(実施例2-4)
下記表2に示すように、吐出量を10kg/分にし、真空度を0.9kgf/cm2に調整したことを除いては、実施例2-1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0184】
(実施例2-5)
前記実施例2-1のキャスティング装置において、前記不活性ガス注入ラインと、前記反応速度調整剤注入ラインとを遮断した。プレポリマータンクに、9.1NCO%を有するPUGL-600D(SKC社製、重量平均分子量:1500g/mol)を充填し、硬化剤タンクに、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(TCI社製)を充填した。
【0185】
さらに、前記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して1.5重量部の固相発泡剤(AkzoNobel社、製品名:Expancel 551 DE 40 d42、平均粒径:40μm)を予め混合した後、プレポリマータンクに注入した。
【0186】
それぞれの投入ラインを介して、前記固相発泡剤と混合されたウレタン系プレポリマーおよび硬化剤を、ミキシングヘッドに一定の速度で投入しながら撹拌した。前記ミキシングヘッドの回転速度は約5000rpmであった。この際、ウレタン系プレポリマーのNCO基のモル当量と硬化剤の反応性基のモル当量とを1:1で合わせ、合計投入量を10kg/分の速度で保持した。
【0187】
撹拌された原料をモールド(縦1000mm、横1000mm、高さ3mm)に、吐出量10kg/分にし、真空度0.8kgf/cm2の減圧下で吐出し、反応を終了して固相ケーキ状の成形体を得た。その後、前記成形体の上端および下端をそれぞれ0.5mm厚ずつ切削して、厚さ2mmの上部パッドを得た。
【0188】
その後、上部パッドに対して表面ミリングおよび溝形成工程を経て、ホットメルト接着剤により下部パッドと積層して、研磨パッドを製造した。
【0189】
(比較例1-1~1-8)
モールド内の真空圧力、反応速度調整剤、気相発泡剤、および固相発泡剤の含有量を下記表1のように調整したことを除いては、実施例1-1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0190】
(比較例1-9および1-10)
固相発泡剤の含有量およびモールド内の真空圧力等を下記表1のように調整したことを除いては、実施例1-3と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0191】
(比較例2-1)
下記表2のように真空度を常圧に調整したことを除いては、実施例2-1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0192】
(比較例2-2)
下記表2に示すように吐出量を12kg/分にし、真空度を0.5kgf/cm2に調整したことを除いては、実施例2-5と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0193】
(比較例2-3)
下記表2のように真空度を常圧に調整したことを除いては、実施例2-5と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0194】
(試験例)
(1)気孔特性
<複数気孔の数平均径および単位面積当たり気孔の総面積>
研磨パッドを1mm×1mmの正方形(厚さ:2mm)に切った1mm2の研磨面を、走査電子顕微鏡(SEM)を使用して100倍に拡大された画像から断面を観察した。
【0195】
画像解析ソフトウェアを使用して、得られた画像から気孔全体の直径を測定し、気孔の数平均径、気孔径別断面積の和の分布、気孔の数および気孔の総面積を得た。
【0196】
- 気孔の断面積の和の比率:前記SEM画像から、気孔を1μm単位で分類して作成された。
- 数平均径(number mean diameter)(Da):研磨面1mm2内の複数気孔径の和を複数気孔の数で割った平均値
- 気孔数:SEM画像上の単位面積(mm2)当りの気孔全体の数
- 単位面積(mm2)当り気孔の総面積(%):SEM画像の全面積に対する気孔のみの面積の百分率
【0197】
図3および
図4は、それぞれ実施例1-1の研磨パッドの気孔の走査電子顕微鏡(SEM)イメージ、および実施例1-1の研磨パッドの1mm
2の研磨面をSEMにより100倍に拡大した画像ある。
図3および
図4から分かるように、実施例1-1の研磨パッドは、均一な気孔分布を示すことが確認された。
【0198】
実施例2-1の研磨パッドの場合、複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔が制御され、
図3および
図4と類似しており、均一な気孔分布を示すことが確認された。
【0199】
<複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔(Au)の面積率(Au(%))>
Au(%)は、下記数学式4のように計算し得る。
【0200】
[数4]
前記数学式4において、
A
t(μm
2)は、全体の測定面積であり、A
u(μm
2)は、複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔の面積である。
【0201】
<複数気孔の総面積率(Ap(%))>
Ap(%)は、下記数学式6のように計算し得る。
【0202】
[数6]
前記数学式6において、
A
t(μm
2)は、全体の測定面積であり、A
p(μm
2)は、複数気孔の総面積である。
【0203】
<複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を除いた残りの気孔(An)の面積率(An(%))>
An(%)は、下記数学式7のように計算し得る。
【0204】
[数7]
前記数学式7において、
A
t(μm
2)は、全体の測定面積であり、A
n(μm
2)は、複数気孔の数平均径に対して200%以上大きい径を有する気孔を除いた残りの気孔の面積である。
【0205】
(2)タングステン膜およびオキサイド膜の研磨率
CMP研磨装置を使用して、CVD工程によってタングステン(W)膜が形成された直径300mmのシリコンウェーハを設置した。その後、前記研磨パッドを付けたプラテン上に、シリコンウェーハのタングステン膜を下にしてセットした。その後、研磨荷重が2.8psiになるように調整し、研磨パッド上にか焼シリカスラリーを190ml/分の速度で投入しながら、プラテンを115rpmで30秒間回転させ、タングステン膜を研磨した。研磨後、シリコンウェーハをキャリアから外して、回転式脱水機(spin dryer)に装着して精製水(DIW)で洗浄した後、空気により15秒間乾燥した。乾燥されたシリコンウェーハを、接触式面抵抗測定装置(4探針プローブ)を使用して研磨前後の厚さの差を測定した。その後、下記数学式8に基づいて研磨率を計算した。
【0206】
[数8]
研磨率(Å/分)=研磨前後の厚さの差(Å)/研磨時間(分)
【0207】
また、同じ装置を使用して、タングステン膜が形成されたシリコンウェーハの代わりに、TEOS-プラズマCVD工程により酸化ケイ素(SiOx)膜が形成された直径300mmのシリコンウェーハを設置した。その後、前記研磨パッドを付けたプラテン上に、シリコンウェーハの酸化ケイ素膜を下にしてセットした。その後、研磨荷重が1.4psiになるように調整し、研磨パッド上にか焼シリカスラリーを190ml/分の速度で投入しながら、プラテンを115rpmで60秒間回転させ、酸化ケイ素膜を研磨した。研磨後、シリコンウェーハをキャリアから外し、回転式脱水機(spin dryer)に装着して精製水(DIW)で洗浄した後、空気により15秒間乾燥した。乾燥されたシリコンウェーハを分光干渉式ウェーハ厚み計(Keyence社製、モデル名:SI-F80R)を使用して、研磨前後の厚さの差を測定した。その後、前記数学式8に基づいて研磨率を計算した。
【0208】
(3)タングステン膜およびオキサイド膜の平坦度
前記実験例(2)と同様の方法により得られたタングステン膜が形成されたシリコンウェーハおよび酸化ケイ素(SiOx)膜が形成されたシリコンウェーハのそれぞれに対して、熱酸化膜が1μm(10000Å)塗布されたものを利用して、前述の研磨条件で1分間研磨した後、98ヶ所のウェーハの面内膜厚を測定し、下記数学式9に基づいて、ウェーハ面内の研磨平坦度(WIWNU:Within Wafer Non Uniformity)を測定した。
【0209】
[数9]
研磨平坦度(WIWNU)(%)=(研磨された厚さの標準偏差/平均研磨厚さ)×100(%)
【0210】
前記実施例1-1~1-4、および比較例1-1~1-10で製造した研磨パッドについて、前記試験例の条件に応じてそれぞれの物性を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0211】
【0212】
表1に示すように、実施例1-1~1-4のように研磨面の単位面積当たり気孔の総面積および数学式1~3のDq、DskおよびDku値を、本発明の範囲にすべて満足する研磨パッドは、タングステン膜およびオキサイド膜に対する研磨率および平坦度が、比較例1-1~1-10に比べて著しく優れていることを示した。
【0213】
具体的に見てみると、実施例1-1および1-4の研磨パッドは、タングステン膜およびオキサイド膜に対する研磨率が、それぞれ750Å/分~815Å/分、2850Å/分~3150Å/分の範囲内であり、タングステン膜およびオキサイド膜に対する平坦度がそれぞれ4.5%以下と、優れていた。
【0214】
これに対し、研磨面の単位面積当たり気孔の総面積が40%未満である比較例1-1の研磨パッドは、タングステン膜およびオキサイド膜に対する研磨率がそれぞれ620Å/分および2215Å/分と、実施例1-1~1-4の研磨パッドに比べて著しく低下していた。
【0215】
一方、研磨面の単位面積当たり気孔の総面積が60%を超える比較例1-2の研磨パッドは、タングステン膜に対する平坦度が12.5%と、実施例1-2の研磨パッドのタングステン膜に対する平坦度に比べて著しく低下していることが分かる。その上、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が950Å/分と、実施例1-1~1-4の研磨パッドに比べて高すぎる反面、オキサイド膜に対する研磨率は2705Å/分と、非常に低かった。
【0216】
一方、Dq値が5μm未満である比較例1-3の研磨パッドは、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が711Å/分と、実施例1-1~1-4の研磨パッドに比べて減少しており、オキサイド膜に対する平坦度が10.2%と、実施例1-1および1-2の研磨パッドに比べて著しく低いことが分かる。
【0217】
Dq値が15μm超である比較例1-4の研磨パッドは、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が920Å/分と、実施例1-1~1-4の研磨パッドに比べて過剰に増加しており、タングステン膜およびオキサイド膜に対する平坦度がそれぞれ10.5%および7.5%と、実施例1-1~1-4に比べて低調なことを示した。
【0218】
また、Dsk値が0.3以下である比較例1-5の研磨パッドは、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が低調であり、Dsk値が1以上である比較例1-6の研磨パッドは、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が過剰に増加し、タングステン膜およびオキサイド膜に対する平坦度が、実施例1-1~1-4の研磨パッドに比べて著しく低調なことを示した。
【0219】
一方、Dku値が1以下である比較例1-7の研磨パッドは、タングステン膜を研磨した場合の研磨率が低調であり、Dku値が5以上である比較例1-8の研磨パッドは、タングステン膜およびオキサイド膜に対する、研磨率および平坦度のいずれもの物性面において著しく低下していることが分かる。
【0220】
また、実施例1-3および1-4の研磨パッドは、反応速度調整剤および気相発泡剤を使用しなくても、真空圧力および固相発泡剤の投入量を調整して、効果的に研磨率および平坦度を向上させられることを確認した。
【0221】
これに対し、実施例1-3および1-4の研磨パッドと同様に反応速度調整剤および気相発泡剤を使用していない比較例1-9および1-10の研磨パッドは、固相発泡剤の投入量が少な過ぎるか、過剰に多く使用したとき、単位面積当たり気孔の総面積およびDq値が本発明の範囲から外れており、この場合、研磨率および平坦度が著しく悪化した。
【0222】
したがって、研磨面の単位面積当たり気孔の総面積のみならず、数学式1~3のDq、DskおよびDku値のいずれか一つのパラメータでも本発明の範囲から外れると、研磨率および平坦度の研磨性能に大きな影響を与えることが分かる。
【0223】
前記実施例2-1~2-5、および比較例2-1~2-3で製造した研磨パッドについて、前記試験例の条件に基づいてそれぞれの物性を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0224】
【0225】
表2に示すように、実施例2-1~2-5は、Daが15μm~50μm範囲内にあり、Au(%)が研磨面の全面積のうち0.9%以上~12%未満の範囲内にあることを確認した。また、前記範囲内にあるDaおよびAu(%)を満足すると、タングステン膜およびオキサイド膜に対する研磨率および平坦度が、比較例2-1~2-3に比べて著しく優れていることを示した。
【0226】
具体的に見てみると、実施例2-1~2-5の研磨パッドは、タングステン膜およびオキサイド膜に対する研磨率がそれぞれ615Å/min~810Å/min、2910Å/min~3151Å/minの範囲内であり、タングステン膜およびオキサイド膜に対する平坦度が、比較例2-1~2-3の研磨パッドに比べて優れていた。
【0227】
これに対し、Au(%)が12%を超えた比較例2-1の研磨パッドの場合、オキサイド膜に対する研磨率および平坦度がそれぞれ2854Å/minおよび12.9%と、研磨率および平坦度が実施例に比べて著しく低下しており、特に実施例2-2の研磨パッドに比べてタングステン膜およびオキサイド膜に対する平坦度が約3.5倍程度低調なことを示した。これは、実施例2-1と比較すると、真空度を常圧に調整することにより、Au(%)が本発明の範囲から外れたものと予測し得る。
【0228】
一方、Da(μm)の値が15μm未満である比較例2-2および2-3の研磨パッドの場合、Au(%)が本発明の範囲に満足しても、Da(μm)値が低すぎてオキサイド膜に対する平坦度が実施例に比べて著しく低調なことが分かる。これは、実施例2-5と比較すると、真空度を過剰に低く調整するか、常圧に調整することにより、Da(μm)値が本発明の範囲から外れたものと予測し得る。
【0229】
一方、実施例2-5の研磨パッドの場合、気相発泡剤、界面活性剤、および反応速度調整剤を使用しなくても、吐出量および真空度を調整することによって、本発明の範囲内であるDa(μm)値およびAu(%)を実現することができ、研磨率および平坦度のいずれも適正範囲内にあることを確認した。
【0230】
したがって、気相発泡剤を使用せず、固相発泡剤のみでも、その含有量、組成物をモールドに吐出し注入する際の吐出量、および真空度を制御して、満足のいく研磨性能を実現できることが分かった。
【符号の説明】
【0231】
100:モールド
a:減圧排出
b:吐出
110:研磨パッド
120:プラテン
130:半導体基板
140:ノズル
150:研磨スラリー
160:研磨ヘッド
170:コンディショナー