(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129178
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】半導体ウェーハ研削砥石装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240919BHJP
B24B 1/04 20060101ALI20240919BHJP
B24B 9/00 20060101ALN20240919BHJP
【FI】
H01L21/304 601B
B24B1/04 B
B24B9/00 601H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038203
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】津留 太良
【テーマコード(参考)】
3C049
5F057
【Fターム(参考)】
3C049AA04
3C049AA09
3C049AA12
3C049AA16
3C049AA17
3C049AA18
3C049AB04
3C049BB02
3C049BC02
3C049CB01
5F057AA37
5F057CA09
5F057CA16
5F057DA17
5F057EB20
(57)【要約】
【課題】
研削加工位置における研削屑の滞留を低減した構造の半導体ウェーハの外周面取り加工用の研削砥石を備える半導体ウェーハ研削砥石装置の提供
【解決手段】
半導体ウェーハの研削装置に設けられ、半導体ウェーハの周縁部を研削する砥石を有する半導体ウェーハ研削砥石装置において、一端側に前記砥石が設けられ前記砥石を回転駆動する回転駆動手段と、前記砥石の回転と切り込み量を制御する加工手段とを備え、前記回転駆動手段は前記砥石を前記半導体ウェーハの厚さ方向に対向する軸回り回転可能なように配置されていることを特徴とする半導体ウェーハ研削砥石装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハの研削装置に設けられ、半導体ウェーハの周縁部を研削する砥石を有する半導体ウェーハ研削砥石装置において、
一端側に前記砥石が設けられ前記砥石を回転駆動する回転駆動手段と、前記砥石の回転と切り込み量を制御する加工手段とを備え、前記回転駆動手段は前記砥石を前記半導体ウェーハの厚さ方向に対向する軸回り回転可能なように配置されていることを特徴とする半導体ウェーハ研削砥石装置。
【請求項2】
前記回転駆動手段は一対設けられており、各前記回転駆動手段は一端部に前記砥石を有し、前記砥石を前記半導体ウェーハの厚さ方向に直交する軸回り回転可能であり、各前記砥石の形状は前記半導体ウェーハの周縁部の上半部または下半部を研削するベルマウス状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
【請求項3】
前記一対の砥石は、半導体ウェーハに対して周方向位置を互いに変えて配置されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
【請求項4】
前記一対の砥石は、半導体ウェーハの上下方向に互いにオーバーラップして研削可能なように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
【請求項5】
前記回転駆動手段は前記砥石を前記半導体ウェーハの厚さ方向に直交する軸回りに回転可能なように配置されており、前記砥石の軸方向端面は、平坦面かもしくは研削対象の半導体ウェーハの外径曲率よりも小さい曲率の凹面であることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
【請求項6】
前記砥石に、超音波を印加する超音波印加手段と、前記砥石の回転と切り込み量を制御する加工手段と、前記超音波印加手段が印加する超音波の少なくとも方向と周波数のいずれかを制御する超音波制御手段とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
【請求項7】
各前記砥石に、超音波を印加する超音波印加手段と、前記砥石の回転と切り込み量を制御する加工手段と、前記超音波印加手段が印加する超音波の少なくとも方向と周波数のいずれかを制御する超音波制御手段とを設けたことを特徴とする請求項2に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
【請求項8】
前記砥石に、超音波を印加する超音波印加手段と、前記砥石の回転と切り込み量を制御する加工手段と、前記超音波印加手段が印加する超音波の少なくとも方向と周波数のいずれかを制御する超音波制御手段とを設けたことを特徴とする請求項5に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハを研削する研削砥石装置に係り、特に半導体ウェーハの周縁部を面取り加工するのに好適な半導体ウェーハ研削砥石装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原始ウェーハを効率よく加工することが特許文献1に記載されている。この公報に記載の加工装置は、被加工物を保持する保持面を備え、原始ウェーハの直径より小さい直径であって回転可能なチャックテーブルの外周から、原始ウェーハの外周をはみ出させて原始ウェーハを保持する。次いで、保持面に対向して研削砥石を環状に配設した研削ホイールを回転可能に備えた研削手段を、チャックテーブルに接近させる。原始ウェーハの一方の面を研削する(第一の研削工程)。原始ウェーハを反転して、原始ウェーハの他方の面を研削する(第二の研削工程)。その後、研削ホイールで原始ウェーハの外周に面取り加工を施す(面取り加工工程)。面取り加工工程では、研削ホイールの外周に配設されリング状の溝が形成された面取り砥石により原始ウェーハの外周を研削して、面取り部を形成する。
【0003】
特許文献2には、劈開面を有する半導体用ウェーハの面取り加工において、面取り加工に起因するウェーハ不良の発生を低減し、加工の歩留まりを向上させることが開示されている。ウェーハの面取り加工では、インゴットからスライスされて形成された薄板状の半導体ウェーハをウェーハ送り装置に載置して、ウェーハの外周部を回転する砥石を用いて面取りする。ウェーハが砥石に当接する際に、ウェーハの劈開面が砥石の接線方向に直角な方向となるように、ウェーハを回転させて周方向位置を定めたらその回転を停止させ、その後ウェーハを砥石の接線方向から砥石へ接近させる。
【0004】
特許文献3には、板状物の面取り装置に用いられる面取り砥石の溝形状を、所望の形状にツルーイングすることが開示されている。そのため、面取り装置には、同軸上に外周粗研削砥石とマスター砥石からなる外周加工砥石を設ける。それとともに、板状物を載置して回転する載置台の回転軸と同軸上にツルーイング砥石を設け、マスター砥石の溝形状をツルーイング砥石の外周に転写し、ツルーイング砥石の外周形状を面取り砥石に転写して面取り砥石に溝を形成し、面取り砥石に所望の形状の溝をオンマシンで、精度よく容易に形成する。
【0005】
特許文献4には、ウェーハの面取り砥石の成形であるツルーイングにおいて、あらゆる形状の面取り用溝を研削砥石に効率的に形成することが記載されている。具体的には、外周研削砥石へのツルーイングの際、ツルアーの端部をYテーブルとZテーブルとによりウェーハ外周部の面取り形状に相当する軌道上を移動させて、ツルーイングする。これにより、ツルアーを交換しなくて済むので、成形時間が短縮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-48759号公報
【特許文献2】特開2017-183503号公報
【特許文献3】特開2005-153085号公報
【特許文献4】特開2007-61978号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】山田他、「SICの精密レーザスライシング 第2報:操作方向とへき開伸展・連結の関係性」、砥粒加工学会誌、第65巻、第10号、第549頁~第555頁、2021年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、インゴットから切り出されたばかりの原始ウェーハに研削加工を施して所定の大きさのウェーハを作成することが開示されている。そこでは、ウェーハの表裏面には通常の平面研削を、ウェーハの外周は総型砥石を用いて外周面取り加工(研削)を施している。砥石は総型砥石であるので研削部はキャビティ(凹)状になっており、平面研削の場合に比べて研削屑が加工部付近に滞留しやすい。滞留した研削屑は砥石に目詰まりを生じさせる。目詰まりが許容限度を超えると、砥石交換または砥石の形状再生(ツルーイング)が必要になり、実効研削時間の低減を招くので、砥石形状の更なる改善が求められている。
【0009】
特許文献2では、ウェーハの劈開面が砥石の接線方向に直角な方向となるように、ウェーハの回転位置を定めた後砥石を接近させて研削し、面取り時の不良発生を防止しているが、切削に用いる砥石には通常のいわゆる総型砥石が想定されている。その場合、砥石とウェーハにより形成される窪み(キャビティ)に砥粒や切削屑がたまりやすく、砥石交換や砥石の形状再生の頻度は従来のままとなる。
【0010】
特許文献3および4にはウェーハを研削する砥石の形状再生のためのツルーイングが記載されている。そして特許文献4にはあらゆる形状の溝を砥石に成形することが可能であることも記載されている。しかしながら、これら何れの公報においても、ウェーハの研削時に砥石とウェーハ間にキャビティが構成されて切削屑がたまりやすくなるのを解消するために、砥石形状を変更することについては考慮されていない。
【0011】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、半導体ウェーハの外周面取り加工用の研削砥石が、研削加工位置における研削屑の滞留を低減した構造を備えることにある。本発明の他の目的は、上記目的に加え、研削砥石に超音波加振を付与したときであっても、高いスループットで外周面取り加工を可能にする研削砥石を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明の特徴は、以下のとおりである。
[1] 半導体ウェーハの研削装置に設けられ、半導体ウェーハの周縁部を研削する砥石を有する半導体ウェーハ研削砥石装置において、一端側に上記砥石が設けられ上記砥石を回転駆動する回転駆動手段と、上記砥石の回転と切り込み量を制御する加工手段とを備え、上記回転駆動手段は上記砥石を上記半導体ウェーハの厚さ方向に対向する軸回り回転可能なように配置されていることを特徴とする半導体ウェーハ研削砥石装置。
[2] 上記回転駆動手段は一対設けられており、各上記回転駆動手段は一端部に上記砥石を有し、上記砥石を上記半導体ウェーハの厚さ方向に直交する軸回り回転可能であり、各上記砥石の形状は上記半導体ウェーハの周縁部の上半部または下半部を研削するベルマウス状に形成されていることを特徴とする[1]に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
[3] 上記一対の砥石は、半導体ウェーハに対して周方向位置を互いに変えて配置されていることを特徴とする[2]に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
[4] 上記一対の砥石は、半導体ウェーハの上下方向に互いにオーバーラップして研削可能なように配置されていることを特徴とする[3]に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
[5] 上記回転駆動手段は上記砥石を上記半導体ウェーハの厚さ方向に直交する軸回りに回転可能なように配置されており、上記砥石の軸方向端面は、平坦面かもしくは研削対象の半導体ウェーハの外径曲率よりも小さい曲率の凹面であることを特徴とする[1]に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
[6] 上記砥石に、超音波を印加する超音波印加手段と、上記砥石の回転と切り込み量を制御する加工手段と、上記超音波印加手段が印加する超音波の少なくとも方向と周波数のいずれかを制御する超音波制御手段とを設けたことを特徴とする[1]に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
[7] 各上記砥石に、超音波を印加する超音波印加手段と、上記砥石の回転と切り込み量を制御する加工手段と、上記超音波印加手段が印加する超音波の少なくとも方向と周波数のいずれかを制御する超音波制御手段とを設けたことを特徴とする[2]に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
[8] 上記砥石に、超音波を印加する超音波印加手段と、上記砥石の回転と切り込み量を制御する加工手段と、上記超音波印加手段が印加する超音波の少なくとも方向と周波数のいずれかを制御する超音波制御手段とを設けたことを特徴とする[5]に記載の半導体ウェーハ研削砥石装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウェーハの外周面取り加工装置に用いる研削砥石を、ウェーハの外周縁部の断面形状を上下に2分割した断面形状を有する複数個の研削砥石素片で構成したので、研削加工位置におけるキャビティ形状の生成を極力低減できるとともに、各砥石素片を独立して回転駆動できるので、加工位置での研削屑の滞留を低減できる。これにより、砥石の目詰まり程度が低下し砥石交換頻度やツルーイング頻度を低減できる。また、研削砥石に超音波を加振すると砥石の目詰まり程度がさらに低下し砥石交換頻度がさらに低減して、ウェーハの外周面取り加工の高いスループットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る研削砥石装置を備える、研削装置の一実施例の正面図である。
【
図2】本発明に係る研削砥石装置の一実施例の模式側面図であり、
図2(a)は帽子型砥石の2軸が平行な例であり、
図2(b)は帽子型砥石の2軸がウェーハの周方向に離れている例である。
【
図3】本発明に係る研削砥石装置の他の実施例の模式側面図である。
【
図4】本発明に係る研削砥石装置のさらに他の実施例の模式側面図である。
【
図5】本発明に係る研削砥石装置のさらに他の実施例の模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明に係る研削砥石装置180の一実施例を、図面を用いて説明する。
図1は、本実施例に示す研削砥石装置180が備えられたウェーハ研削装置10の概略正面図である。ウェーハ研削装置10は、ウェーハ保持部20、研削砥石部50、図示しないウェーハ供給/収納部、ウェーハ洗浄/乾燥部、ウェーハ搬送手段、及びウェーハ研削装置10の各部の動作を制御する制御部を備える。
【0016】
ウェーハ保持部20は、本体ベース11上に載置されたX軸ベース21、2本のX軸ガイドレール22、4個のX軸リニアガイド23、ボールねじ及びステッピングモータを備えるX軸駆動機構25によって、図のX方向に移動されるXテーブル24を有する。
【0017】
Xテーブル24には、2本のY軸ガイドレール(図示せず)、4個のY軸リニアガイド27、図示しないボールねじ及びステッピングモータを有するY軸駆動機構32により図のY方向に移動される、Yテーブル28が組み込まれている。
Yテーブル28には、2本のZ軸ガイドレール29と図示しない4個のZ軸リニアガイドによって案内され、ボールねじ及びステッピングモータを備えるZ軸駆動機構30によって図のZ方向に移動されるZテーブル31が組み込まれている。
【0018】
Zテーブル31には、回転スピンドル33が組み込まれ、回転スピンドル33にはウェーハWを吸着載置するウェーハテーブル34が取り付けられている。ウェーハテーブル34は回転軸心を中心として回転される。ウェーハ保持部20では、ウェーハWを回転θおよびX、Y、Z方向に併進移動することで、ウェーハWに設定された加工位置を後述する研削砥石部50に位置決めする。
【0019】
研削砥石部50では、上方にターンテーブル53が、下方に砥石ベース158が配置されている。ターンテーブル53には、(半導体)ウェーハWの外周部を研削する研削砥石155a(156aU)、155a(156aL)と研削スピンドル(スピンドルモータ156)を含む、一対の研削砥石装置180が取り付けられている。研削砥石156aUはウェーハWの外周上部を、研削砥石156aLはウェーハWの外周下部を研削する。
図1では、ターンテーブル53は、水平面に沿って回転する。ウェーハWの外周上部を研削する場合には、研削砥石156aUをウェーハWの方に(
図1のように)近づけ、ウェーハWの外周下部を研削する場合には、ターンテーブル53を半回転させ、研削砥石156aLをウェーハWに近づければよい。
【0020】
なお、研削砥石装置180は、ターンテーブル53上に2つの研削スピンドルを有し、それぞれに研削砥石155a(156aU)、155a(156aL)が配置されているが、研削砥石155aの配置は上記に限定されない。また、研削砥石装置180は、ターンテーブル53を有していなくてもよい。
例えば、研削砥石装置は、所定のクリアランスを介して上下に並べられた研削砥石155a(156aU)、155a(156aL)、及び、個々のスピンドルモータ156を備える1個の研削スピンドルを有していてもよい。
【0021】
ターンテーブル53に配置した研削砥石装置180が有する研削砥石155aは、ウェーハの周縁部を楕円球面に研削可能なベルマウス状に形成された帽子型の研削砥石155a(155aU、155aL)である。
【0022】
研削砥石部50の下方に配置される砥石ベース158の上部に、水平方向にその回転軸を配置して、研削砥石装置180をウェーハWに対向して取り付ける。砥石ベース158に取り付けた研削砥石装置180には、ウェーハWの周縁をほぼ垂直な面(円筒面)に研削する平坦部用砥石としての皿型の研削砥石155bが取り付けられている。もちろん、砥石ベース158やターンテーブル53に取り付ける研削砥石装置180の砥石として、その加工の目的や加工時間等を考慮して帽子型の研削砥石155aと皿型の研削砥石155bを選択的に使用できる。
【0023】
図2に、帽子型の研削砥石155aの詳細を示す。
図2(a)は、2個の平行な水平軸のそれぞれの先端に帽子型の研削砥石155aを配置した例であり、帽子型の研削砥石155aの側面図である。各研削砥石155aは、被加工物であるウェーハWの断面形状に合致する帽子型の形状であり、ウェーハWの断面形状において、厚さ方向中心から滑らかな弧状にウェーハWの厚さが変化するような曲面が形成される形状となっている。すなわち、研削砥石155aはウェーハW側端部径が小さく、スピンドルモータ156側に行くに従い裾広がりのベルマウス状に形成されている。言い換えれば、円錐もしくは円錐台の斜面に曲率を持った形状、金管楽器の先端部の徐々に広がる「ベル」部分のような形状とされている。
【0024】
研削砥石155aの大きさは特に限定されないが、装置のレイアウトの自由度が上がること、特に、限られた狭いスペースでも設置が可能な点で、研削対象となるウェーハWの直径に対して、研削砥石155aの直径(回転方向の最大径)が、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、1.0以下好ましく、0.5以下がより好ましく、0.3以下が更に好ましい。
【0025】
上下に配置した2個の研削砥石155aU、155aLは、その外形形状が実質的に同一である。したがって、ウェーハWの厚さ方向中心から等しい距離にそれぞれの回転軸心を配置することで、ウェーハWの外周面は上下対称に研削加工される。しかしながら
図2(a)においては、上下に配置した研削砥石155aU、155aLの動作が干渉するのを回避するため、両研削砥石155aU、155aLの間にわずかな隙間を形成する必要がある。その結果ウェーハWの厚さ方向中心部には加工されない領域が形成される。
【0026】
この不具合を解消するもっとも簡単な方法は、
図2(b)に示すように、2個の研削砥石155aU、155aLの互いの研削位置がオーバーラップするようにする。より具体的には、2個の研削砥石155aU、155aLをウェーハWの周方向に異なる位置に配置して研削砥石155aU、155aL間の干渉を避けるようにすることである(互い違いに配置することである)。
図2(b)においては、上下の研削砥石155aU、155aLについて、ウェーハWの周方向にその軸間距離をδ
1とし、ウェーハの厚さ方向に軸間距離をδ
2として、それぞれウェーハWの厚さより大きくし、かつ研削個所が互いにオーバーラップするようにしている。これにより研削漏れ箇所の出現を回避できる。
【0027】
図3に、ウェーハの外周面を研削する研削砥石155bの他の例を、側面断面図で示す。ウェーハWの外周面を平面にする必要が生じた場合に用いる。ウェーハWの外周面研削において平面研削する場合には、上面との境目である上辺部と下面との境目である下辺部が角部を形成すると、ウェーハ処理工程間の搬送中や処理行程中のハンドリングなどで、上下辺部から亀裂等が発生する確率が高まる。
【0028】
これらを考慮して、平面研削する研削砥石155bの断面形状を決定する。具体的には、ウェーハWの厚さ方向の大部分を加工する部分(研削砥石155bの中心部分)を平坦、すなわち直線形状または曲率R
Gの曲線とし、上下辺部を加工する部分(研削砥石155bの外径端部)を滑らかな円弧等の曲線形状とする。そして曲線形状部分の曲率は、ウェーハWの外径曲率1/Rw)より小さくする。これにより平面研削する研削砥石155bがウェーハWに意図せずに干渉して、所望形状から逸脱するのを防止できる。なお、研削砥石155bは、前述の
図2(a)における、上下に配置した研削砥石155aU、155aLの間にわずかな隙間によるウェーハWの厚さ方向中心部の加工されない領域を後から加工することにも使用できる。
【0029】
図4および
図5に、
図2、
図3で示した研削砥石155a、155bと超音波印加手段170とを組み合わせた研削砥石装置180b、180cの例を示す。
図4は帽子型砥石の例であり、
図5は皿型砥石の例である。ウェーハWが単結晶ウェーハであれば特に顕著であるが、ウェーハWは周方向に結晶方位を変化させる。非特許文献1に記載のように、ウェーハWの加工位置における結晶方位が異なると、同じ研削条件で研削しても、へき開の進展が異なり、予期した研削量よりも多大になったり、逆に過小になったりする。そこで、研削砥石に連結するスピンドルモータ156の回転速度等の研削条件を変えずに、実質的に研削条件を変化させるために、スピンドルモータ156に軸方向加振用の圧電アクチュエータ172と鉛直方向加振用の圧電アクチュエータ174を付設して研削砥石装置180b、180cを構成する。圧電アクチュエータ172、174を制御して、超音波印加する方向と周波数を変え、研削砥石155a、155bの研削条件を変化させる。これにより、へき開の遅速を制御でき、ウェーハの周方向に一様な研削結果を得ることができる。
【0030】
図3、4の研削砥石155a、155b、及び、ワークWの配置から理解されるように、研削砥石155a、155bと、ワークWの回転方向は異なっている。
従来、研削砥石によるワークWの研削においては、研削砥石とワークWとの回転方向は同一だった(同一平面で回転していた)。この従来の構成では、研削後のワークWの表面に「条痕」と呼ばれる、すじ状の凹凸が生ずることがあった。
これに対し、研削砥石の回転方向を相対的に少し傾けて、条痕の発生を抑制する「ヘリカル研削」と呼ばれる手法が採用されることがあった。
【0031】
本発明の半導体ウェーハ研削砥石装置は、「ヘリカル研削」とは異なるアプローチにて、条痕の発生を抑制し得る技術である。従来と異なる形状の研削砥石155a、及び、155bを使うことで、ワークWの回転方向と、研削砥石155a、及び、155bの回転方向とが異なる状態が作り出される。これにより、「ヘリカル研削」と同様に、条痕の発生が抑制される。
超音波加振することより表面のすじ状の凹凸の発生を更に抑制することができる。これにより得られる表面は、より均一な状態(例えば、梨地状)となる。
【0032】
また、ウェーハWのエッジ形状・表面状態には、製品の種類、及び、後工程の種類等により、様々な要求がある。単にフラットな表面とするだけでなく、所定の表面粗さを有する表面が、研削後の目標とされることもある。超音波加振を併用すると、条痕の発生をより抑制できるだけでなく、研削後の目標の表面状態に沿った制御もより容易となる点で好ましい。
【0033】
上記説明では、被研削対象のウェーハWとしてシリコンの単結晶ウェーハWを想定して説明しているが、ウェーハはシリコン単結晶ウェーハに限らず、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の他の材質のウェーハであってもよく、また多結晶ウェーハであってもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
10…ウェーハ研削装置、11…本体ベース、20…ウェーハ保持部、21…X軸ベース、22…X軸ガイドレール、23…X軸リニアガイド、24…Xテーブル、25…X軸駆動機構、27…Y軸リニアガイド、28…Yテーブル、29…Z軸ガイドレール、30…Z軸駆動機構、31…Zテーブル、32…Y軸駆動機構、33…回転スピンドル、34…ウェーハテーブル、50…研削砥石部、53…ターンテーブル、155a、155aU、155aL…(帽子型、ベルマウス状)研削砥石、155b…(皿型)研削砥石、156…スピンドルモータ、158…砥石ベース、170…超音波印加手段、172…圧電アクチュエータ(水平方向または軸方向加振用)、174…圧電アクチュエータ(鉛直方向加振用)、180、180b、180c…研削砥石装置、W…ウェーハ、δ1…周方向偏差、δ2…上下方向偏差