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特開2024-129384封止フィルム及びその製造方法、並びに、電子部品装置及びその製造方法
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  • 特開-封止フィルム及びその製造方法、並びに、電子部品装置及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129384
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】封止フィルム及びその製造方法、並びに、電子部品装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20240919BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240919BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240919BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240919BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H01L21/56 R
H01L23/30 R
C08L101/00
C08L63/00 Z
C08G59/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038557
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】大泉 篤史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】島村 充芳
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4M109
5F061
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002CD001
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002FD010
4J002GQ00
4J036AA01
4J036AD08
4J036DC40
4J036FA01
4J036FA05
4J036FB07
4J036JA05
4J036JA07
4J036KA01
4J036KA03
4M109AA01
4M109BA03
4M109CA22
4M109EA02
4M109EA11
4M109EB02
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB12
5F061AA01
5F061BA04
5F061CB11
(57)【要約】
【課題】電子部品を封止するための封止フィルムの製造方法であって、封止成形物における封止不良を低減することが可能な封止フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】支持体と、支持体上に設けられた、熱硬化性樹脂組成物を含む熱硬化性樹脂層とを備える、電子部品を封止するための封止フィルムの製造方法が開示される。封止フィルムの製造方法は、支持体の背面側に設置されたロールにより支持体を移動させる塗布方式で、熱硬化性樹脂組成物と有機溶剤とを含む樹脂ワニスを支持体上に塗布する工程と、塗布された樹脂ワニスから有機溶剤の少なくとも一部を除去し、支持体上に熱硬化性樹脂層を形成する工程とを備える。支持体の厚さは、45μm以上である。熱硬化性樹脂層の厚さは、1~100μmである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体上に設けられた、熱硬化性樹脂組成物を含有する熱硬化性樹脂層とを備える、電子部品を封止するための封止フィルムの製造方法であって、
前記支持体の背面側に設置されたロールにより前記支持体を移動させる塗布方式で、前記熱硬化性樹脂組成物と有機溶剤とを含む樹脂ワニスを前記支持体上に塗布する工程と、
塗布された前記樹脂ワニスから前記有機溶剤の少なくとも一部を除去し、前記支持体上に前記熱硬化性樹脂層を形成する工程と、
を備え、
前記支持体の厚さが45μm以上であり、
前記熱硬化性樹脂層の厚さが1~100μmである、
封止フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記支持体がポリエステルフィルム又はポリイミドフィルムである、
請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂及び硬化剤を含む、
請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の少なくとも一方が25℃で液状である液状成分を含み、
前記液状成分の合計の含有量が、前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の総量を基準として、30~80質量%である、
請求項3に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の封止フィルムの製造方法によって得られる封止フィルムの前記熱硬化性樹脂層に電子部品を埋め込む工程と、
前記熱硬化性樹脂層を硬化させて、前記熱硬化性樹脂層の硬化物である、電子部品を封止する封止部を形成する工程と、
を備える、
電子部品装置の製造方法。
【請求項6】
電子部品を封止するための封止フィルムであって、
支持体と、前記支持体上に設けられた、熱硬化性樹脂組成物を含有する熱硬化性樹脂層とを備え、
前記支持体の厚さが45μm以上であり、
前記熱硬化性樹脂層の厚さが1~100μmである、
封止フィルム。
【請求項7】
電子部品と、前記電子部品を封止する封止部とを備え、
前記封止部が請求項6に記載の封止フィルムの前記熱硬化性樹脂層の硬化物である、
電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、封止フィルム及びその製造方法、並びに、電子部品装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品(例えば、半導体チップ)の封止は、通常、固形又は液状の樹脂組成物(封止材)を用いてモールド成形によって行われている。例えば、特許文献1には、基板上に搭載した複数の電子部品を、封止フィルム(フィルム状樹脂組成物)を用いて、樹脂封止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-327623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の軽薄短小化に伴って、半導体装置の小型化及び薄型化が進んでおり、封止フィルムにも薄膜化が求められている。
【0005】
封止フィルムは、例えば、熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散させた樹脂ワニスを調製し、樹脂ワニスを支持体上に塗布する工程と、塗布された樹脂ワニスから有機溶剤の少なくとも一部を除去し、熱硬化性樹脂層を形成する工程とを含む方法によって製造することができる。ところで、本発明者らの検討によると、このような製造方法において、熱硬化性樹脂層の薄膜化(例えば、100μm以下)を行うと、熱硬化性樹脂層の支持体とは反対側の表面(電子部品を封止するときに電子部品側に向けられる封止面)において、局所的に規定の厚さに満たない凹部が形成される場合があることが見出された。このような熱硬化性樹脂層を備える封止フィルムを用いて、電子部品の樹脂封止を行うと、熱硬化性樹脂層に電子部品を埋め込むときの支持体の加熱下で押圧により、凹部の体積に相当する分の熱硬化性樹脂層が押し込まれて、封止後の封止成形物の表面(熱硬化性樹脂層の封止面とは反対側の表面)の凹部に対応する箇所において、窪みが生じることがある。封止成形物にこのような窪みが多数存在すると、その封止成形物は封止不良であると判断される。そのため、封止フィルムの製造時には、熱硬化性樹脂層の表面(封止面)において、凹部の発生を抑制することが求められている。
【0006】
本開示は、電子部品を封止するための封止フィルムの製造方法であって、封止成形物における封止不良を低減することが可能な封止フィルムの製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが凹部の発生原因について詳細に検討したところ、支持体の背面(樹脂ワニスが塗布される塗布面とは反対側の面)側に設置されたロール(例えば、バックロール、コーティングロール等と呼ばれることがある。)により支持体を移動させる塗布方式において、ロール上に存在する異物によって、塗布部と支持体とのギャップが局所的に小さくなり、これによって、熱硬化性樹脂層の表面(封止面)に凹部が形成されることを見出した。本発明者らのさらなる検討によると、異物を取り除く他、ロール上に異物が存在する場合であっても、支持体の厚さが一定以上の範囲にあると、異物等に由来する微細な凹凸を緩和でき、封止後の封止成形物において、凹部に由来する窪みを低減できることを見出し、本開示の発明を完成するに至った。
【0008】
本開示は、[1]~[4]に記載の封止フィルムの製造方法、[5]に記載の電子部品装置の製造方法、[6]に記載の封止フィルム、及び[7]に記載の電子部品装置を提供する。
[1]支持体と、前記支持体上に設けられた、熱硬化性樹脂組成物を含む熱硬化性樹脂層とを備える、電子部品を封止するための封止フィルムの製造方法であって、前記支持体の背面側に設置されたロールにより前記支持体を移動させる塗布方式で、前記熱硬化性樹脂組成物と有機溶剤とを含む樹脂ワニスを前記支持体上に塗布する工程と、塗布された前記樹脂ワニスから前記有機溶剤の少なくとも一部を除去し、前記支持体上に前記熱硬化性樹脂層を形成する工程とを備え、前記支持体の厚さが45μm以上であり、前記熱硬化性樹脂層の厚さが1~100μmである、封止フィルムの製造方法。
[2]前記支持体がポリエステルフィルム又はポリイミドフィルムである、[1]に記載の封止フィルムの製造方法。
[3]前記熱硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂及び硬化剤を含む、[1]又は[2]に記載の封止フィルムの製造方法。
[4]前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の少なくとも一方が25℃で液状である液状成分を含み、前記液状成分の合計の含有量が、前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の総量を基準として、30~80質量%である、[3]に記載の封止フィルムの製造方法。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の封止フィルムの製造方法によって得られる封止フィルムの前記熱硬化性樹脂層に電子部品を埋め込む工程と、前記熱硬化性樹脂層を硬化させて、前記熱硬化性樹脂層の硬化物である、電子部品を封止する封止部を形成する工程とを備える、電子部品装置の製造方法。
[6]電子部品を封止するための封止フィルムであって、支持体と、前記支持体上に設けられた、熱硬化性樹脂組成物を含む熱硬化性樹脂層とを備え、前記支持体の厚さが45μm以上であり、前記熱硬化性樹脂層の厚さが1~100μmである、封止フィルム。
[7]電子部品と、前記電子部品を封止する封止部とを備え、前記封止部が[6]に記載の封止フィルムの前記熱硬化性樹脂層の硬化物である、電子部品装置。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電子部品を封止するための封止フィルムの製造方法であって、封止成形物における封止不良を低減することが可能な封止フィルムの製造方法が提供される。また、本開示によれば、このような製造方法によって得られる封止フィルム、及び、このような封止フィルムを用いた電子部品装置及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、封止フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図2図2は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、図2(a)、図2(b)、及び図2(c)は、各工程を示す模式断面図である。
図3図3は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)、及び図3(e)は、各工程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0012】
本開示における数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0013】
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0014】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」等の他の類似の表現においても同様である。また、「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。
【0015】
「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0016】
[封止フィルム]
図1は、封止フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。本実施形態の封止フィルム10は、電子部品を封止するための封止フィルム(又は電子部品を埋め込むための埋め込みフィルム)であり、支持体1と、支持体1上に設けられた、熱硬化性樹脂組成物を含む熱硬化性樹脂層2とを備える。熱硬化性樹脂層2の支持体1とは反対側の主面が、電子部品を封止するときに電子部品側に向けられる封止面2Sである。
【0017】
支持体1は、基材フィルムであってよい。基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム;ポリイミド(PI)フィルム;ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム;エチレン酢酸ビニル(EVA)フィルム;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム;ポリカーボネートフィルムなどが挙げられる。基材フィルムは、単層構造であっても、2層以上の多層構造であってもよい。また、基材フィルムは、延伸処理が施されていてもよい。延伸処理が施された基材フィルムとしては、例えば、オリエンテッドポリプロピレン(OPP)等が挙げられる。
【0018】
支持体1(基材フィルム)は、剛直なフィルムであってよい。剛直なフィルムは、例えば、引張弾性率が1.0GPa以上であるフィルムであってよい。このようなフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。支持体1(基材フィルム)は、例えば、ポリエステルフィルム又はポリイミドフィルムであってよい。
【0019】
なお、支持体1の引張弾性率は、下記の試験方法により求めることができる。まず、支持体1をJIS K6251:2010に規格されているダンベル状1号形試験片の形状に切り取って試験片を作製する。試験片の中央部に40mm離れて平行な2本の標線をつける。JIS K6251:2010に規格されている試験方法に準拠し、温度23℃下で、引張試験機(例えば、株式会社エー・アンド・デイ製、型番:RTC-1210)を用いて引張試験により引張弾性率を求める。
【0020】
より具体的には、試験片を引張試験機に設置し、温度23℃下、引張速度500mm/分にて試験片を100%延伸する(つまり、2本の標線の間が80mmになるまで延伸する)。その際に測定された応力-ひずみ曲線から、ひずみε1=0.0005(0.05%)における応力σ1(MPa)と、ひずみε2=0.0025(0.25%)における応力σ2(MPa)とを求め、下記の式(1)から引張弾性率を算出する。
引張弾性率(MPa)=(σ2-σ1)÷(ε2-ε1) (1)
【0021】
ここで、支持体が長尺状に製造される樹脂フィルムである場合、試験片の長さ方向が樹脂フィルムのMD方向に一致する試験片と、試験片の長さ方向が樹脂フィルムのTD方向に一致する試験片とを作製する。MD方向の試験片の引張弾性率とTD方向の試験片の引張弾性率とを平均した値が引張弾性率である。
【0022】
支持体1は、離型処理が施されていてもよい。離型処理が施された支持体は、例えば、、離型剤を支持体の表面に塗布し、乾燥することによって得ることができる。離型剤としては、例えば、シリコーン系(シロキサン系)、フッ素系、オレフィン系の離型剤が挙げられる。
【0023】
支持体1の厚さは、45μm以上であり、例えば、48μm以上又は50μm以上であってもよい。支持体1の厚さが45μm以上であると、異物等に由来する微細な凹凸を緩和することができ、局所的に規定の厚さに満たない凹部の形成を低減することができる。支持体1の厚さは、例えば、200μm以下、150μm以下、100μm以下、又は80μm以下であってよい。支持体1の厚さが200μm以下であると、熱硬化性樹脂層の両面から熱風を吹きつけて乾燥する乾燥機を用いる場合でも、樹脂ワニス中の溶剤の除去が妨げられ難くなる傾向がある。また、支持体1の厚さがこのような範囲にあることにより、封止フィルムをロールにし易くなり、搬送性及びハンドリング性に優れる傾向がある。
【0024】
熱硬化性樹脂層2は、熱硬化性樹脂組成物を含有する。熱硬化性樹脂組成物は、例えば、エポキシ樹脂及び硬化剤を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂組成物は、例えば、硬化促進剤、無機充填剤等をさらに含んでいてもよい。熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂層2を構成する主成分であり、熱硬化性樹脂組成物の含有量は、熱硬化性樹脂層2の総量を基準として、90~100質量%、95~100質量%、又は98~100質量%であってよい。熱硬化性樹脂層2は、熱硬化性樹脂組成物からなるものであってよい。
【0025】
エポキシ樹脂は、特に限定されないが、1分子中に2個以上のエポキシ基(又はグリシジル基)を有する化合物であってよい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールAP型エポキシ樹脂(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタンジグリシジルエーテル);ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジグリシジルエーテル);ビスフェノールB型エポキシ樹脂(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタンジグリシジルエーテル);ビスフェノールBP型エポキシ樹脂(ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンジグリシジルエーテル);ビスフェノールC型エポキシ樹脂(2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル);ビスフェノールE型エポキシ樹脂(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル);ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールG型エポキシ樹脂(2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパンジグリシジルエーテル);ビスフェノールM型エポキシ樹脂(1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼンジグリシジルエーテル);ビスフェノールP型エポキシ樹脂(1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼンジグリシジルエーテル);ビスフェノールPH型エポキシ樹脂(5,5’-(1-メチルエチリデン)-ビス[1,1’-(ビスフェニル)-2-オール]プロパンジグリシジルエーテル);ビスフェノールTMC型エポキシ樹脂(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンジグリシジルエーテル);ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンジグリシジルエーテル);ヘキサンジオールビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂等);ビフェニル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びそれらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート;脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂として市販品を用いることができる。市販のエポキシ樹脂としては、EXA4700(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC株式会社製)、NC-7000(ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製)等のナフタレン型エポキシ樹脂;EPPN-502H(トリスフェノール型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社)等のフェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂);エピクロンHP-7200H(ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂、DIC株式会社製)等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;NC-3000H(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;エピクロンN660及びエピクロンN690(DIC株式会社製)、EOCN-104S(日本化薬株式会社製)等のノボラック型エポキシ樹脂;TEPIC(日産化学工業株式会社製)等のトリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート;エピクロン860、エピクロン900-IM、エピクロンEXA-4816、及びエピクロンEXA-4822(DIC株式会社製)、アラルダイトAER280(旭化成エポキシ株式会社製)、エポトートYD-134(日鉄エポキシ製造株式会社製)、JER834及びJER872(三菱化学株式会社製)、ELA-134(住友化学株式会社製)、エピコート807、815、825、827、828、834、1001、1004、1007、及び1009(三菱化学株式会社製)、DER-330、301、及び361(ダウ・ケミカル社製)、並びにYD8125及びYDF8170等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;JER806(三菱化学株式会社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;エピクロンN-740(DIC株式会社製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂;デナコールDLC301(ナガセケムテックス株式会社製)等の脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0027】
エポキシ樹脂の含有量は、後述の無機充填剤の存在下でもフィルム形成性を充分に確保する観点から、熱硬化性樹脂組成物の総量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってよい。エポキシ樹脂の含有量は、硬化収縮をより低減させる観点から、熱硬化性樹脂組成物の総量を基準として、30質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下であってよい。
【0028】
硬化剤は、エポキシ樹脂と反応して、エポキシ樹脂ととともに架橋構造体を形成する化合物であれば特に制限されない。硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、酸無水物、イミダゾール化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン等が挙げられる。硬化剤は、例えば、フェノール樹脂であってよい。
【0029】
フェノール樹脂は、2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限されず、公知のフェノール樹脂を用いることができる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;ビフェニル骨格型フェノール樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂;メタキシリレン・パラキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;キシリレン変性ナフトール樹脂などが挙げられる。
【0030】
フェノール樹脂として市販品を用いることができる。市販のフェノール樹脂としては、フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD-2090、フェノライトTD-2149、フェノライトVH-4150、及びフェノライトVH4170(DIC株式会社製);XLC-LL及びXLC-4L(三井化学株式会社製);SN-100、SN-300、及びSN-400(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製);SKレジンHE910(エア・ウォーター株式会社製);DL-92(明和化成株式会社製)等が挙げられる。
【0031】
硬化剤の含有量は、後述の無機充填剤の存在下でもフィルム形成性を充分に確保する観点から、熱硬化性樹脂組成物の総量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってよい。硬化剤の含有量は、硬化収縮をより低減させる観点から、熱硬化性樹脂組成物の総量を基準として、30質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下であってよい。
【0032】
エポキシ樹脂及び硬化剤の少なくとも一方は、25℃で液状である液状成分を含んでいてもよい。すなわち、エポキシ樹脂及び硬化剤は、25℃で液状である液状成分と、25℃で固形である固形成分とから構成され得る。ここで、「25℃で液状である液状成分」とは、軟化点が25℃以下である成分(化合物)、又は、25℃で測定される粘度が400Pa・s以下である成分(化合物)を意味する。「25℃で固形である固形成分」とは、軟化点が25℃超である成分(化合物)、又は、25℃で測定される粘度が400Pa・s超である成分(化合物)を意味する。
【0033】
なお、軟化点とは、JIS K7234に準拠し、環球法によって測定される値を意味する。25℃で測定される粘度とは、25℃に保持された当該成分(化合物)について、E型粘度計又はB型粘度計を用いて測定される値を意味する。
【0034】
25℃で液状であるエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノール骨格を含んでいてもよい。ビスフェノール骨格は、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールB骨格、ビスフェノールC骨格、ビスフェノールE骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールG骨格、又はビスフェノールZ骨格であってよい。25℃で液状であるエポキシ樹脂は、低分子量である場合が多く、耐熱性の観点では不利となる場合がある。そのため、25℃で液状であるエポキシ樹脂がこれらのビスフェノール骨格を含むことにより、耐熱性の向上が期待できる。
【0035】
25℃で液状である硬化剤は、25℃で液状であるフェノール樹脂であってよい。25℃で液状であるフェノール樹脂は、例えば、ビスフェノール骨格を含んでいてもよい。25℃で液状であるフェノール樹脂は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等のビスフェノール類、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル等のジヒドロキシフェニルエーテル類、並びに、これらのフェノール骨格の芳香環に直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリール基、ヒドロキシアルキル基、アリル基、環状脂肪族基等を導入したフェノール樹脂、及び、これらのビスフェノール骨格の中央にある炭素原子に、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリル基、置換アリル基、環状脂肪族基、アルコキシカルボニル基等を導入したフェノール樹脂などが挙げられる。
【0036】
液状成分の合計の含有量は、電子部品の埋め込み性の観点から、エポキシ樹脂及び硬化剤の総量を基準として、30~80質量%である。液状成分の合計の含有量はエポキシ樹脂及び硬化剤の総量を基準として、35質量%以上であってもよく、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、又は45質量%以下であってもよい。
【0037】
エポキシ樹脂及び硬化剤の合計の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の総量を基準として、5質量%以上、7質量%以上、又は10質量%以上であってよく、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0038】
エポキシ樹脂のエポキシ基(又はグリシジル基)と硬化剤のエポキシ基(又はグリシジル基)に対して反応性を有する官能基との当量比(エポキシ樹脂のエポキシ基(又はグリシジル基)の当量/硬化剤のエポキシ基(又はグリシジル基)に対して反応性を有する官能基の当量)は、例えば、0.7~2.0、0.8~1.8又は0.9~1.7であってよい。
【0039】
硬化促進剤は、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進するものであれば特に制限されない。硬化促進剤としては、例えば、アミン系化合物、リン系化合物、イミダゾール系化合物が挙げられる。アミン系化合物としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5等が挙げられる。リン系化合物としては、トリフェニルホスフィン及びその付加反応物、(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)ホスフィン等が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。硬化促進剤は、誘導体が豊富であり、所望の活性温度が得られ易い点から、イミダゾール系化合物であってよい。
【0040】
硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の総量を基準として、0.01~5質量%であってよく、0.1質量%以上又は0.3質量%以上であってもよく、3質量%以下又は1.5質量%以下であってもよい。硬化促進剤の含有量が、エポキシ樹脂及び硬化剤の総量を基準として、0.01質量%以上であると、充分な硬化促進効果が得られ易くなり、5質量%以下であると、予想外の硬化反応を抑制することができ、熱硬化性樹脂層の割れ及び溶融粘度の上昇に伴う成形不良が生じ難くなる。
【0041】
無機充填剤は、特に制限されず、従来公知の無機充填剤が使用できる。無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素及び窒化アルミニウムが挙げられる。これらの中でも、表面改質等により樹脂中への分散性を向上させ、樹脂ワニス中での沈降を抑制し易い点、及び、比較的小さい熱膨張率を有して所望の硬化膜特性が得られ易い点から、無機充填剤は、シリカであってよい。
【0042】
無機充填剤は、表面処理が施されていてもよい。表面処理の手法は、特に制限されないが、簡便であり、所望の特性を付与し易いことから、シランカップリング剤を用いる手法であってよい。シランカップリング剤としては、例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン及びアルキルクロロシラン等が挙げられる。
【0043】
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n-オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
無機充填剤の平均粒子径は、特に制限されるものではないが、例えば、0.01~50μmであってよく、0.1μm以上又は0.3μm以上であってもよく、25μm以下又は10μm以下であってもよい。無機充填剤の平均粒子径が0.01μm以上であると、無機充填剤が凝集し難くなり、熱硬化性樹脂層での無機充填剤の分散が容易となる。無機充填剤の平均粒子径が50μm以下であると、樹脂ワニス中で沈降し難くなり、均質な熱硬化性樹脂層を作製し易くなる。なお、無機充填剤の平均粒子径は、例えば、レーザー回析法によって測定される。
【0045】
無機充填剤の含有量は、熱硬化性樹脂層と電子部品との熱膨張率の差に起因する反りを抑制する観点から、熱硬化性樹脂組成物の総量を基準として、30質量%以上、50質量%以上、又は70質量%以上であってよい。無機充填剤の含有量は、熱硬化性樹脂層の割れを防ぎ、充分に封止できなくなる不具合を抑制する観点から、熱硬化性樹脂組成物の総量を基準として95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってよい。
【0046】
熱硬化性樹脂組成物は、応力緩和剤として、エラストマーをさらに含有していてもよい。エラストマーとしては、例えば、スチレンブタジエン粒子、シリコーンパウダ、シリコーンオイル、シリコーンオリゴマーが挙げられる。
【0047】
熱硬化性樹脂組成物は、本開示の効果を損なわない範囲内で他の添加剤をさらに含有していてもよい。添加剤の具体例としては、顔料、染料、離型剤、酸化防止剤、表面張力調整剤等が挙げられる。
【0048】
熱硬化性樹脂層2の厚さは、1~100μmであり、例えば、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってもよく、90μm以下、80μm以下、又は70μm以下であってもよい。熱硬化性樹脂層2の厚さが1μm以上であると、電子部品の良好な埋め込み性が得られ易く、熱硬化性樹脂層2の厚さが100μm以下であると、本開示の効果をより高水準で得ることができる。
【0049】
封止フィルムは、熱硬化性樹脂層2の保護を目的として、熱硬化性樹脂層2の支持体とは反対側の表面を被覆する保護層(例えば、保護フィルム)をさらに備えていてもよい。保護層を設けることで、封止フィルムの取扱い性が向上するとともに、封止フィルムが巻取られた場合に支持体の裏面に樹脂層が張り付くといった不具合を回避することができる。
【0050】
保護層は、特に限定されないが、支持体の基材フィルムとして例示したものを用いることができる。保護層の厚さは、例えば、1~100μmであってよい。
【0051】
[封止フィルムの製造方法]
本実施形態の封止フィルムの製造方法は、支持体の背面側に設置されたロールにより支持体を移動させる塗布方式で、熱硬化性樹脂組成物と有機溶剤とを含む樹脂ワニスを支持体上に塗布する工程(以下、「工程(A)」という場合がある。)と、塗布された樹脂ワニスから有機溶剤の少なくとも一部を除去し、支持体上に熱硬化性樹脂層を形成する工程(以下、「工程(B)」という場合がある。)とを備える。
【0052】
工程(A)では、熱硬化性樹脂組成物と有機溶剤とを含む樹脂ワニスを調製する。樹脂ワニスは、熱硬化性樹脂組成物の各成分を有機溶剤と配合することによって得ることができる。
【0053】
有機溶剤は、特に制限されないが、環境負荷が小さく、エポキシ樹脂及び硬化剤を溶解し易い点から、エステル類、ケトン類、及びアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよく、エポキシ樹脂及び硬化剤を特に溶解し易い点から、ケトン類であってよい。ケトン類は、室温(25℃)での揮発が少なく、除去し易い点から、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0054】
樹脂ワニスを調製する際の有機溶剤の配合量は、熱硬化性樹脂組成物の各成分の総量を100質量部としたときに、5~50質量部であってよい。有機溶剤の配合量が5質量部以上であると、樹脂ワニスの流動性が確保され易くなり、50質量部以下であると、揮発すべき溶媒量を少なくすることができる。
【0055】
続いて、支持体の背面(樹脂ワニスが塗布される塗布面とは反対側の面)側に設置されたロールにより支持体を移動させる塗布方式で、樹脂ワニスを支持体上に塗布する。塗布方式は、例えば、ダイコーター塗布方式又はコンマコーター塗布方式であってよい。ダイコーター塗布方式とは、支持体の背面側に設置されたロールによって支持体を移動させ、あらかじめ計量された樹脂ワニスを幅方向に均一に分配するためのダイを経由して支持体上に塗布する塗布方式である。コンマコーター塗布方式とは、支持体の背面側に設置されたロールによって支持体を移動させ、あらかじめ厚く盛っておいた塗液を一定の高さに設定したコンマロールで削ぎ落して塗布面を平滑にする塗布方式である。これらの塗布方式を採用することにより、熱硬化性樹脂層の支持体とは反対側の表面(封止面)において、局所的に規定の厚さに満たない凹部が形成されることを抑制することができ、本開示の効果を高水準で得ることができる。
【0056】
工程(B)では、塗布された樹脂ワニスから有機溶剤の少なくとも一部を除去する。有機溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、樹脂ワニスを加熱乾燥させる方法が挙げられる。樹脂ワニスを加熱乾燥させる方法としては、例えば、熱風吹きつけ等の方法が挙げられる。加熱乾燥の加熱温度は、例えば、40~150℃であってよく、加熱温度の保持時間は、1~30分であってよい。加熱乾燥条件は、加熱温度及び/又は保持時間が異なる複数の条件の組み合わせであってもよい。
【0057】
このようにして、支持体1上に熱硬化性樹脂層2を形成することにより、封止フィルム10を得ることができる。熱硬化性樹脂層における揮発成分(主に有機溶剤)の含有量は、熱硬化性樹脂層の総量を基準として、0.01~2.0質量%又は0.1~1.7質量%であってよい。揮発成分の含有量がこのような範囲にあると、フィルム割れ等の不具合を防止でき、良好な取扱い性が得られる。また、熱硬化時に揮発成分の揮発に伴うボイドの発生等の不具合を防止することができる。
【0058】
[電子部品及びその製造方法]
本実施形態の封止フィルムを用いた電子部品装置の製造方法について説明する。以下では、電子部品の代表例としての半導体チップを有する半導体装置を製造する方法の一実施形態について具体的に説明する。
【0059】
図2及び図3は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。本実施形態の半導体装置の製造方法は、基板30上に仮固定材40を貼り付け、仮固定材40上に複数の半導体チップ20を仮固定する工程(図2の(a))と、仮固定された半導体チップ20と、支持体1及び支持体1に設けられた熱硬化性樹脂層2を備える封止フィルム10とを、半導体チップ20が熱硬化性樹脂層2の封止面2Sと対向配置される向き(熱硬化性樹脂層2の封止面2Sが半導体チップ20と接する向き)で重ね、その状態でこれらを加熱下で押圧し、熱硬化性樹脂層2に半導体チップ20を埋め込む工程(図2の(b))と、半導体チップ20が埋め込まれた熱硬化性樹脂層2を硬化させる工程(図2の(c))とを備える。硬化によって、熱硬化性樹脂層の硬化物からなり、半導体チップ20を封止する封止部2aが形成される。
【0060】
半導体装置の製造方法では、封止フィルムの押圧のためにラミネート法を用いてもよいし、コンプレッションモールドを用いてもよい。
【0061】
ラミネート法において使用するラミネータは、特に限定されない。ラミネータとしては、例えば、ロール式、バルーン式等のラミネータが挙げられる。これらの中でも、ラミネータは、埋め込み性をより向上させる観点から、真空加圧が可能なバルーン式のラミネータであってよい。
【0062】
半導体チップの埋め込みのための温度(例えば、ラミネート温度)は、熱硬化性樹脂層2が流動して半導体チップが埋め込まれるように、調整される。当該温度は、支持体の軟化点以下であってよい。半導体チップの埋め込みのための圧力は、半導体チップ(又は電子部品)のサイズ、密集度によって適宜調整することができるが、例えば、0.05~1.5MPa又は0.1~1.0MPaであってよい。押圧の時間は、特に限定されないが、20~600秒、30~300秒、又は40~120秒であってよい。半導体チップを埋め込んだ後、支持体1は、例えば、熱硬化性樹脂層2に半導体チップ20を埋め込んだ後、半導体チップ20が埋め込まれた熱硬化性樹脂層2を硬化させた後等の適切なタイミングで熱硬化性樹脂層2から剥離される。
【0063】
熱硬化性樹脂層2の硬化は、例えば、大気下又は不活性ガス下で行うことができる。硬化温度は、特に限定されるものではないが、80~280℃、100~240℃、又は120~200℃であってよい。硬化温度が80℃以上であると、熱硬化性樹脂層の硬化が充分に進み、不具合の発生を特に効果的に抑制することができる。硬化温度が280℃以下であると、他の材料への熱害の発生を抑制することができる。硬化時間は、特に限定されないが、30~600分、45~300分、又は60~240分であってよい。硬化時間がこのような範囲にあると、熱硬化性樹脂層の硬化が充分に進み、良好な生産効率が得られ易い。硬化条件は、温度及び/又は時間が異なる複数の条件の組み合わせであってもよい。
【0064】
熱硬化性樹脂層2に電子部品(半導体チップ20)を埋め込むことと、熱硬化性樹脂層2を硬化させて封止部2aを形成することとは、分離した別の工程であってもよいし、同時に又は連続的に行う工程であってもよい。例えば、熱硬化性樹脂層及び電子部品を加熱しながら押圧することによって、熱硬化性樹脂層に電子部品を埋め込むとともに熱硬化性樹脂層を硬化して、電子部品を封止する封止部を形成させてもよい。
【0065】
本実施形態においては、以下の絶縁層形成、配線パターン形成、ボールマウント、及びダイシングの各工程を経て、半導体装置を得ることができる。これらの工程を高い精度で効率的に行うために、封止成形物100の反りが小さいことが望ましい。
【0066】
まず、仮固定材40を基板30とともに剥離して、半導体チップ20及びこれを封止する封止部2aからなる封止成形物100を得る(図3の(a))。封止成形物100の一方の主面内で半導体チップ20が露出している。半導体チップ20が露出している側の封止成形物の主面上に、絶縁層50が設けられる(図3の(b))。次に、絶縁層50をパターン化することで配線54を形成し、パターン化された絶縁層52上にボール56をマウントする(図3の(c))。
【0067】
次に、ダイシングカッター60により、封止成形物100を個片化する(図3の(d)及び(e))。これにより、半導体チップ20と、本実施形態の封止フィルムの熱硬化性樹脂層の硬化物である封止部2aとを備える半導体装置200が得られる。半導体装置200において、半導体チップ20は、封止部2a内に埋め込まれている。
【0068】
以上、本開示の封止フィルム、並びに、半導体装置及び電子部品装置の製造方法の好適な実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
【実施例0069】
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
[封止フィルムの作製]
<材料の準備>
(A)エポキシ樹脂
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、製品名:JER806、エポキシ当量:160、25℃で液状)
(B)硬化剤
フェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製、製品名:DL-92、水酸基当量:103、25℃で固体)
(C)硬化促進剤
イミダゾール系化合物(2-エチル-4-メチルイミダゾール、四国化成工業株式会社製、製品名:2E4MZ)
(D)無機充填剤
シリカ(株式会社アドマテックス製、製品名:SX-E2、表面処理:フェニルアミノシラン処理、平均粒径:5.8μm)
(E)有機溶剤
メチルエチルケトン
【0071】
<樹脂ワニスの調製>
10L容量のポリ容器に(E)成分497.5gを入れ、これに(D)成分3500gを加え、撹拌羽を用いて(E)成分に(D)成分を分散させた分散液を調製した。この分散液に、(A)成分300g及び(B)成分460gを加えて撹拌した。(A)成分及び(B)成分が溶解した後、(C)成分2.5gを加えて1時間撹拌して混合液を調製した。この混合液をナイロン製♯200メッシュ(開口:75μm)でろ過し、ろ液を採取して熱硬化性樹脂組成物と有機溶剤とを含む樹脂ワニスを得た。
【0072】
<封止フィルムの作製>
支持体として、離型剤A(シリコーン系(中剥離))を用いて離型処理を行ったポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:50μm)を準備した。得られた樹脂ワニスを、塗工機(塗布ヘッド方式:ダイコーター)を使用して、以下の条件で支持体上に塗布した。塗布された樹脂ワニスを以下の乾燥条件で有機溶剤を除去し、厚さ50μmの熱硬化性樹脂層を形成した。これにより、支持体と、支持体上に設けられた熱硬化性樹脂層とを備える、実施例1の封止フィルムを得た。
【0073】
なお、熱硬化性樹脂層の厚さは、デジタルインジケータ(株式会社ミツトヨ製、製品名:ID-C125B)を用いて以下の条件で封止フィルムの厚さを測定し、その封止フィルムの厚さから別途測定した支持体の厚さを差し引いて求めた。
・測定子:フラットタイプ
・スタンド:コンパレートスタンドBSG-20
【0074】
塗布速度及び乾燥速度は、塗布及び乾燥におけるロールによる支持体の移動速度を意味する。乾燥条件の温度及び炉長は、それぞれ、乾燥炉内の温度及び乾燥炉内での支持体の移動距離を意味し、乾燥は異なる加熱温度条件の2段階で行った。これらの条件は他の実施例及び比較例でも同様である。
・塗布速度及び乾燥速度:5m/分
・乾燥条件(温度/炉長):50℃/9m、60℃/9m
【0075】
(実施例2)
離型剤Aを離型剤B(シリコーン系(軽剥離))に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の封止フィルム(支持体の厚さ:50μm、熱硬化性樹脂層の厚さ:50μm)を得た。
【0076】
(比較例1)
支持体の厚さを50μmから38μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の封止フィルム(支持体の厚さ:38μm、熱硬化性樹脂層の厚さ:50μm)を得た。
【0077】
(比較例2)
支持体の厚さを50μmから38μmに変更した以外は、実施例2と同様にして、比較例1の封止フィルム(支持体の厚さ:38μm、熱硬化性樹脂層の厚さ:50μm)を得た。
【0078】
(参考例1)
支持体の厚さを50μmから38μmに変更し、熱硬化性樹脂層の厚さを50μmから120μmに変更した以外は、実施例2と同様にして、参考例1の封止フィルム(支持体の厚さ:38μm、熱硬化性樹脂層の厚さ:120μm)を得た。
【0079】
[封止フィルムの評価]
<凹部の個数の計測>
熱硬化性樹脂層を形成した際に局所的に規定の厚みに満たない現象を「ハジキ」という。支持体に形成された熱硬化性樹脂層を透過光を用いて目視にて、1mあたりの凹部の個数を計測した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
参考例1と比較例1、2とを対比すると、参考例1に示すように、熱硬化性樹脂層の厚さが100μmを超える場合には、凹部の発生が観測されなかったのに対して、比較例1、2に示すように、熱硬化性樹脂層の厚さが100μm以下である場合には、凹部の発生が観測された。このことから、熱硬化性樹脂層が薄膜化するにつれて、凹部の形成が発生することが判明した。次に、実施例1、2と比較例1、2とを対比すると、熱硬化性樹脂層の厚さが100μm以下である場合において、支持体の厚さを45μm以上とすることにより、凹部の個数を減少させることができることが判明した。以上より、本開示の製造方法によって製造される封止フィルムが、封止不良を低減することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0082】
1…支持体、2…熱硬化性樹脂層、2a…封止部、10…封止フィルム、20…半導体チップ、30…基板、40…仮固定材、50…絶縁層、52…パターン化された絶縁層、54…配線、56…ボール、60…ダイシングカッター、100…封止成形物、200…半導体装置。
図1
図2
図3