(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129446
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】逆浸透膜のスケール抑制剤及びスケール抑制方法
(51)【国際特許分類】
C02F 5/10 20230101AFI20240919BHJP
C02F 5/00 20230101ALI20240919BHJP
B01D 65/08 20060101ALI20240919BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240919BHJP
B01D 61/10 20060101ALI20240919BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20240919BHJP
C08L 33/24 20060101ALI20240919BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20240919BHJP
C08F 220/58 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C02F5/10 620B
C02F5/00 620B
C02F5/10 620C
B01D65/08
C02F1/44 C
B01D61/10
C08L33/02
C08L33/24
C08F220/06
C08F220/58
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038665
(22)【出願日】2023-03-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】大柴 雄平
(72)【発明者】
【氏名】早川 邦洋
【テーマコード(参考)】
4D006
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006KA33
4D006KD30
4D006KE14R
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB05
4D006PB08
4D006PB27
4J002BG011
4J002BG012
4J002GD00
4J100AJ02P
4J100AM21Q
4J100BA56Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA02
4J100DA28
4J100DA38
4J100JA18
(57)【要約】
【課題】スケール抑制効果に優れた非リン系のスケール抑制剤及びこのスケール抑制剤を用いたスケール抑制方法を提供する。
【解決手段】逆浸透膜処理におけるスケールの析出を抑制するスケール抑制剤であって、アクリル酸に由来する構成単位(i)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸に由来する構成単位(ii)とを有し、構成単位(i)と構成単位(ii)とのモル比が95:5~99:1であり、重量平均分子量が2000以上10000未満である共重合体Aと、アクリル酸に由来する構成単位(i)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸に由来する構成単位(ii)とを有し、構成単位(i)と構成単位(ii)とのモル比が80:20~90:10であり、重量平均分子量が5000を超え10000未満である共重合体Bとを含み、共重合体Aと共重合体Bとの配合質量比A:Bが3:1~6:1であり、リン含有化合物を実質的に含まない、スケール抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜処理におけるスケールの析出を抑制するスケール抑制剤であって、
アクリル酸に由来する構成単位(i)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸に由来する構成単位(ii)とを有し、構成単位(i)と構成単位(ii)とのモル比が95:5~99:1であり、重量平均分子量が2000以上10000未満である共重合体Aと、
アクリル酸に由来する構成単位(i)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸に由来する構成単位(ii)とを有し、構成単位(i)と構成単位(ii)とのモル比が80:20~90:10であり、重量平均分子量が5000を超え10000未満である共重合体Bと
を含み、
共重合体Aと共重合体Bとの配合質量比A:Bが3:1~6:1であり、
リン含有化合物を実質的に含まない、スケール抑制剤。
【請求項2】
逆浸透膜処理におけるスケールの析出を抑制するスケール抑制方法であって、
該逆浸透膜処理の被処理水に、
アクリル酸に由来する構成単位(i)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸に由来する構成単位(ii)とを有し、構成単位(i)と構成単位(ii)とのモル比が95:5~99:1であり、重量平均分子量が2000以上10000未満である共重合体Aと、
アクリル酸に由来する構成単位(i)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸に由来する構成単位(ii)とを有し、構成単位(i)と構成単位(ii)とのモル比が80:20~90:10であり、重量平均分子量が5000を超え10000未満である共重合体Bとを、
共重合体Aと共重合体Bとの添加質量比A:Bが3:1~6:1となるように添加し、
該被処理水にリン含有化合物を添加しない、スケール抑制方法。
【請求項3】
該逆浸透膜処理の濃縮水のFe濃度が0.01mg/L以上である、請求項2の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は逆浸透(RO)膜のスケール抑制剤及びスケール抑制方法に係る。
【背景技術】
【0002】
海水、かん水の淡水化や排水回収系等でRO膜システムが用いられている。高回収率でRO膜システムを運転した場合、RO膜面でRO膜給水中の成分が高濃縮されることで、スケール障害が問題となる。
【0003】
逆浸透膜処理において生成するスケール種としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、フッ化カルシウム、金属水酸化物等がある。特に、鉄鋼分野や化学工場分野では、製造プロセスにおいて硫酸等の酸性溶液を大量に使用するため、高濃度の硫酸イオンを含む水が排出されることから、RO膜の高回収率運転時における硫酸カルシウムスケールの発生が問題となってくる。
【0004】
一般的に、RO処理でのスケール抑制剤として、分子量が比較的小さく、スケール抑制効果が高いことから、ヘキサメタリン酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウム等の無機ポリリン酸類、アミノメチルホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、及びホスホノブタントリカルボン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類といったリンを含む素材が使用されている。
【0005】
近年の環境負荷低減の動きから、各種リン系化合物を用いないスケール抑制剤が求められることが増えている。
【0006】
特許文献1には、非リン系スケール抑制剤として、特定のアクリル酸/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸系ポリマーがカルシウム系スケール、シリカ系スケール抑制性能に優れていることが記載されている。
【0007】
特許文献1の非リン系スケール抑制剤は、給水中の鉄濃度が高いと、スケール抑制効果が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、スケール抑制効果に優れた非リン系のスケール抑制剤及びこのスケール抑制剤を用いたスケール抑制方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスケール抑制剤は、逆浸透膜処理におけるスケールの析出を抑制するスケール抑制剤であって、アクリル酸に由来する構成単位(i)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸に由来する構成単位(ii)とを有し、構成単位(i)と構成単位(ii)とのモル比が95:5~99:1であり、重量平均分子量が2000以上10000未満である共重合体Aと、アクリル酸に由来する構成単位(i)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸に由来する構成単位(ii)とを有し、構成単位(i)と構成単位(ii)とのモル比が80:20~90:10であり、重量平均分子量が5000を超え10000未満である共重合体Bとを含み、共重合体Aと共重合体Bとの配合質量比A:Bが3:1~6:1であり、リン含有化合物を実質的に含まない。
【0011】
本発明のスケール抑制方法は、逆浸透膜処理におけるスケールの析出を抑制するスケール抑制方法であって、該逆浸透膜処理の被処理水に、アクリル酸に由来する構成単位(i)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸に由来する構成単位(ii)とを有し、構成単位(i)と構成単位(ii)とのモル比が95:5~99:1であり、重量平均分子量が2000以上10000未満である共重合体Aと、アクリル酸に由来する構成単位(i)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸に由来する構成単位(ii)とを有し、構成単位(i)と構成単位(ii)とのモル比が80:20~90:10であり、重量平均分子量が5000を超え10000未満である共重合体Bとを、共重合体Aと共重合体Bとの添加質量比A:Bが3:1~6:1となるように添加し、該被処理水にリン含有化合物を添加しない。
【0012】
本発明の一態様では、該逆浸透膜処理の濃縮水のFe濃度が0.01mg/L以上である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、RO装置の濃縮水中の鉄濃度が高い場合でも、優れたスケール抑制効果が奏される。
【0014】
すなわち、共重合体Aは、RO給水中で鉄の非存在下では、優れたスケール抑制効果を有する。共重合体Bは、鉄の非存在下では、共重合体Aよりもスケール抑制効果は劣るが、鉄存在下でもスケール抑制効果は共重合体Aほど低くならない。
【0015】
本発明では、共重合体Aに対し共重合体Bを3:1~6:1の割合で用いることにより、鉄存在下でも優れたスケール抑制特性が得られる。なお、共重合体Aおよび共重合体Bは、何れもリンを含まない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のRO膜用スケール抑制剤は、下記の共重合体A及び共重合体Bを共重合体Aと共重合体Bとの質量比(共重合体A/共重合体B)として3:1~6:1の割合で含む。
【0017】
共重合体A:アクリル酸(AA)に由来する構成単位(i)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)に由来する構成単位(ii)とを有し、構成単位(i)と構成単位(ii)とのモル比が95:5~99:1、好ましくは96:4~99:1であり、重量平均分子量が2000以上10000未満、好ましくは5000を超え8000以下である。
【0018】
共重合体B:アクリル酸(AA)に由来する構成単位(i)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)に由来する構成単位(ii)とを有し、構成単位(i)と構成単位(ii)とのモル比が80:20~90:10、好ましくは85:15~90:10であり、重量平均分子量が5000を超え10000未満、好ましくは6000~8000である。
【0019】
なお、共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC法)による標準ポリアクリル酸ナトリウム換算の値である。
【0020】
[その他の構成単位]
共重合体A、Bは、上記構成単位(i),(ii)を上記割合で有していればよいが、スケール抑制効果を阻害しない範囲で、これらの他に、上記構成単位と共重合可能な他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。この場合、上記構成単位(i),(ii)によるスケール抑制効果を有効に得るために、他の単量体に由来する構成単位のモル比は、本発明の共重合体の製造に用いた全単量体に由来する構造単位100モル%に対して10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0021】
他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-スルホエチルメタクリレート等のスルホン酸基含有不飽和単量体及びそれらの塩;N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、N-ビニル-メチルアセトアミド、N-ビニルオキサゾリドン等のN-ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド等の窒素含有ノニオン性不飽和単量体;3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の水酸基含有不飽和単量体;3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパンにエチレンオキサイドを1~200モル程度付加させた化合物(3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン)、(メタ)アリルアルコールにエチレンオキサイドを1~100モル程度付加させた化合物等のポリオキシエチレン基含有不飽和単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸単量体;スチレン等の芳香族不飽和単量体等が挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、本発明の共重合体は、他の単量体に由来する構成単位を含まない2元共重合体であることが、製造費の面から好ましい。
【0022】
<製造方法>
共重合体A,Bを製造する方法としては、共重合体原料として少なくともアクリル酸(塩)と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)を用いて、ラジカル重合法により共重合する方法が挙げられる。例えば、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を水に溶解し、雰囲気を不活性ガスで置換し、重合開始剤の存在下に重合温度50~100℃で、水溶液重合を行うことで共重合体A,Bを製造することができる。
【0023】
ここで、重合開始剤としては公知のものを使用することができ、例えば、過硫酸系(過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系(ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等)、過酸化物(過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等)、過酸化水素などの水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。これらのうち過硫酸系開始剤を使用することが好ましい。
【0024】
本発明のスケール抑制剤は、リン含有化合物を実質的に含まない。リン含有化合物を実質的に含まないとは、スケール抑制剤中のリン含有化合物の合計含有量が0.1質量%未満であることをいう。
【0025】
リン含有化合物は、スケール抑制剤として従来から広く用いられているものが挙げられ、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウム等の無機ポリリン酸類、アミノメチルホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、及びホスホノブタントリカルボン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類が挙げられる。
【0026】
[スケール抑制剤のRO給水への添加及び添加量]
本発明のスケール抑制剤は、RO給水に対し、任意の濃度に調整した水溶液として添加する。その添加量は、RO給水の水質に応じて適宜選択することができるが、RO給水中における共重合体A及び共重合体Bの合計濃度が0.1~20mg/L程度となるように添加することが好ましい。
【0027】
なお、RO給水に対し本発明のスケール抑制剤を添加してもよく、該スケール抑制剤を構成する共重合体Aと共重合体Bとを別々に、上記の割合にて添加してもよい。
【0028】
このように、RO装置への給水に本発明のスケール抑制剤(又は共重合体A,B)を添加して逆浸透膜処理することで、鉄存在下でかつスケールが生成し易い給水を高水回収率、即ち、高濃縮倍率で逆浸透膜処理する場合であっても、スケールの生成を効果的に抑制することができる。
【0029】
本発明によると、RO装置の濃縮水のFe濃度(全鉄濃度as Fe)が、0.01mg/L以上、さらには0.1mg/L以上であってもスケールを十分に抑制することができる。全鉄濃度は、原子吸光法、またはチオシアン酸法(吸光度法)などの方法により測定することができる。
【0030】
また、本発明によると、濃縮水のカルシウム硬度が、100mg-CaCO3/L以上、例えば100mg-CaCO3/L~5g-CaCO3/Lであってもスケールを十分に抑制することができる。
【実施例0031】
下記表1に示す共重合体を用いたスケール抑制剤を製造し、下記表2,3に示す模擬RO濃縮水I(炭酸カルシウムスケール生成系)及び模擬RO濃縮水II(硫酸カルシウムスケール生成系)に各スケール抑制剤を添加してスケール抑制効果を試験した。
【0032】
<スケール抑制剤>
AA(アクリル酸)と、AMPS(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)と、必要に応じさらにtBu(N-(tert-ブチル)アクリルアミド)とを表1に示すモル比にて重合させることにより、表1に示す共重合体A1,B1,C1,C2を製造した。
【0033】
なお、共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)を用い、以下の条件で測定した。
【0034】
検出器 :RI
カラム :東ソー株式会社製 TSK-GEL G2500PWXL+TSK-GEL G4000PWXL
溶離液 :0.1Mリン酸緩衝液/MeCN=80/20
流速 :0.6ml/分
カラム温度:40℃
検量線 :標準ポリアクリル酸ナトリウム
【0035】
【0036】
<模擬RO濃縮水I(炭酸カルシウム生成系)>
試薬特級のCaCl2・2H2O,NaHCO3及びFe2(SO4)3を超純水に表2に示す濃度にて溶解させて調製した。(カルシウム硬度1.4g-CaCO3/L,Fe3+濃度、0.5mg/L)
【0037】
【0038】
<模擬RO濃縮水II(硫酸カルシウム生成系)>
試薬特級CaCl2・2H2O,Na2SO4及びFe2(SO4)3を超純水に表3に示す濃度にて溶解させて調製した。(カルシウム硬度4.5g-CaCO3/L,Fe3+濃度、0.5mg/L)
【0039】
【0040】
[実施例1]
共重合体A1と共重合体B1とを4:1の割合(質量比)になるよう混合してスケール抑制剤を調製した後、超純水に溶解させて0.2wt%溶液とした。
【0041】
各模擬RO濃縮水I,II200mLに対し、表4の添加量となるように上記スケール抑制剤を添加し、25℃の恒温槽で24時間静置した。
【0042】
24時間経過後、目視にてスケール形成の有無を確認し、スケールが見られなかった各サンプルについて、パーティクルカウンター(Chemtrac, Inc., PC5000)で溶液中の2~50μmの微粒子数を測定し、2~50μm微粒子総体積を算出した。結果を表4,5に示す。
【0043】
【0044】
【0045】
表4,5より、このスケール抑制剤の最適添加量(微粒子総体積が最も小さくなる添加量)は、模擬RO濃縮水Iの場合18mg/L、模擬RO濃縮水IIの場合13mg/Lであることが認められた。
【0046】
[比較例1~8]
スケール抑制剤を表6のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして各スケール抑制剤の最適添加量を求めた。結果を表6に示す。表6中、最適添加量の欄の「-」は、未実施であることを意味する。
【0047】
【0048】
<考察>
RO模擬濃縮水I,IIのいずれにおいても、共重合体Aと共重合体Bとを4:1で配合した実施例1のスケール抑制剤の最適添加量が最も少なく、比較例1~8に比べてスケール抑制効果が高いことが認められた。
【0049】
以上の実施例1及び比較例1~8より、Fe存在下では、共重合体単独では効果が不十分であるが、共重合体A,Bを特定の配合質量比で含むスケール抑制剤は、良好なスケール抑制効果を有することが認められた。