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特開2024-129500複写けん制印刷物及び複写けん制印刷物用データの作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129500
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】複写けん制印刷物及び複写けん制印刷物用データの作成方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20240919BHJP
   B42D 25/337 20140101ALI20240919BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/337
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038742
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】松下 芙佐子
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005HB10
2C005JB25
2H113AA04
2H113AA06
2H113BA00
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA05
2H113BA09
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB08
2H113BB22
2H113CA34
2H113CA39
2H113CA40
2H113CA44
2H113FA56
(57)【要約】
【課題】複写前の印刷物において、複写後に出現する潜像画像の隠ぺい性を向上させることができる複写けん制印刷物及び複写けん制印刷物用データの作成方法を提供する。
【解決手段】基材に複写機で再現可能な大きさの網点で構成された潜像画像部を有する第1画像部と、少なくとも一部に潜像画像部が重なり合い、かつ複写機で再現不可能な大きさの網点で構成された可視画像部及び背景部を有する第2画像部とを有する複写けん制画像を有し、潜像画像部の網点面積率は第1網点面積率であり、可視画像部における画像重合部を除いた領域の網点面積率である第2網点面積率は第1網点面積率よりも大きな網点面積率であり、画像重合部の網点面積率は第2網点面積率から第1網点面積率を引いた値である複写けん制印刷物である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一部に、複数の網点で形成された複写けん制画像を備え、
前記複写けん制画像は、
複写機で再現可能な大きさの網点で構成された潜像画像部を有する第1画像部と、
少なくとも一部に前記潜像画像部が重なり合い、かつ前記複写機で再現不可能な大きさの網点で構成された可視画像部及び背景部を有する第2画像部と、を有し、
前記潜像画像部と前記可視画像部が重なり合う画像重合部には、前記複写機で再現可能な大きさの網点と、前記複写機で再現不可能な大きさの網点が配置され、
前記潜像画像部の網点面積率は、第1網点面積率であり、
前記可視画像部における前記画像重合部を除いた領域の網点面積率である第2網点面積率は、前記第1網点面積率よりも大きな網点面積率であり、
前記可視画像部における前記画像重合部の網点面積率は、前記第2網点面積率から前記第1網点面積率を引いた値である
複写けん制印刷物。
【請求項2】
前記背景部の網点面積率である第3網点面積率は、前記第1網点面積率と等しく、
前記背景部における前記潜像画像部と重なり合う領域である背景重合部には、網点が形成されておらず、空白となっている
請求項1に記載の複写けん制印刷物。
【請求項3】
前記背景部の網点面積率である第3網点面積率は、前記第1網点面積率よりも大きな網点面積率に設定され、
前記背景部における前記潜像画像部と重なり合う領域である背景重合部の網点面積率は、前記第3網点面積率から前記第1網点面積率を引いた値に設定される
請求項1に記載の複写けん制印刷物。
【請求項4】
基材の少なくとも一部に、複数の網点で形成された複写けん制画像を備え、前記複写けん制画像は、複写機で再現可能な大きさの網点で構成された潜像画像部を有する第1画像部と、少なくとも一部に前記潜像画像部が重なり合い、かつ前記複写機で再現不可能な大きさの網点で構成された可視画像部及び背景部を有する第2画像部と、を有し、前記潜像画像部と前記可視画像部が重なり合う領域には、前記複写機で再現可能な大きさの網点と、前記複写機で再現不可能な大きさの網点が配置される複写けん制印刷物において、複写けん制印刷物用データを作成する方法であって、
前記可視画像部の基となる可視画像部データ及び前記背景部の基となる背景部データのみからなる網点で構成された目標完成画像データと、前記潜像画像部の基となる潜像画像部データを有して前記第1画像部の基となり網点で構成された第1画像部データとを、作成する又はあらかじめ登録されたデータベースから取り込む工程と、
前記潜像画像部データを複写機で再現可能な大きさの網点に設定した後、前記目標完成画像データの網点面積率から、前記複写機で再現可能な大きさの網点に設定した前記潜像画像部データ有する前記第1画像部データの網点面積率を減算し、減算画像データを作成する工程と、
前記減算画像データの網点を前記複写機で再現不可能な大きさの網点に設定し、前記第2画像部の基となる第2画像部データを作成する工程と、
前記第1画像部データと前記第2画像部データを足し合わせて前記複写けん制画像の基となる複写けん制画像データを作成する工程と、
を含む複写けん制印刷物用データの作成方法。
【請求項5】
前記目標完成画像データにおける前記潜像画像部データと重なる領域では、前記目標完成画像データの網点面積率から前記潜像画像部データの網点面積率を引くことで、前記第2画像部データにおける前記潜像画像部データと重なる領域の網点面積率を設定する
請求項4に記載の複写けん制印刷物用データの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、銀行券、株券、債券等、有価証券、各種証明書及び重要書類の偽造、改ざんを防止する必要性がある印刷物において、複写機により複写した場合に容易に真偽判別することができる複写けん制印刷物及び複写けん制印刷物用データの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ、複写機等、デジタル機器の進展及び化学薬品により、貴重印刷物の精巧な複製物の作成及び改ざんを容易に実施することが可能となっており、特殊な薬品では改ざんされないために、プリンタ、複写機等、デジタル機器では再現不可能な様々な偽造防止技術が必要とされている。
【0003】
代表的なものに、細かい網点の粗密を利用して目視では判別できない画像(以下、「潜像画像」という)を付与することで、複写機で複製した場合、複写物に再現性の劣化により潜像画像が出現する印刷物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図7は、従来の複写けん制印刷物の一例を示す図である。
【0005】
図7に示すように、従来の複写けん制印刷物200は、複写した際に、複写物に視認可能に出現する文字「COPY」である潜像画像201を有している。この潜像画像201とその背景は、複数の網点を配置することで構成されている。
【0006】
拡大図に示すように、潜像画像201を構成する網点202は、潜像画像201の周囲である背景を構成する網点203よりも大きく形成されており、複写機で再現可能な大きさで形成されている。そして、背景を構成する網点203は、複写機で再現不可能な大きさで形成されている。よって、複写けん制印刷物200を複写した際には、潜像画像201を構成する網点202が再現され、背景を構成する網点203が再現されないことで、文字「COPY」が複写物に出現する。
【0007】
しかしながら、図7に示す複写けん制印刷物200は、網点の粗密を利用していることから、潜像画像201が肉眼でも視認することができる。そのため、可視光下における潜像画像の隠蔽性が求められていた。
【0008】
このような、可視光下における潜像画像の隠蔽性を向上する技術としては、例えば、特許文献2に記載されているようなものがある。特許文献2には、潜像画像と潜像画像の周囲である背景にまたがってカムフラージュ画像を配置する技術が記載されている。そして、カムフラージュ画像を配置することで、潜像画像を可視光下(肉眼)により視認性を抑制している。
【0009】
図8は、特許文献2に記載された従来の複写けん制印刷物の他の例を示す図である。
【0010】
図8に示すように、従来の複写けん制印刷物200Aは、潜像画像201である文字「COPY」と、潜像画像201及びその背景に重なり合って形成された、三重の円形状であるカムフラージュ画像204とを有している。
【0011】
拡大図に示すように、潜像画像201を構成する網点202は、潜像画像201の周囲である背景を構成する網点203よりも大きく形成されており、複写機で再現可能な大きさで形成されている。そして、背景を構成する網点203は、複写機で再現不可能な大きさで形成されている。さらに、カムフラージュ画像204を構成する網点205、206のうち、潜像画像201に重なり合う網点205は、複写機で再現可能な大きさで、かつ、網点202よりも大きい網点で形成されている。
【0012】
カムフラージュ画像204を構成する網点205、206のうち、潜像画像201である文字「COPY」の周囲である背景と重なっている網点206は、複写機で再現不可能な大きさで形成されているが、網点203よりも大きい網点で形成されている。そのため、複写した際には、潜像画像201が複写物に出現し、さらに潜像画像201と重なるカムフラージュ画像204が、潜像画像201よりも濃く複写物に出現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公昭55-45400号公報
【特許文献2】特開平04-170569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献2に記載された技術では、潜像画像だけでなくカムフラージュ画像のような可視画像も複写されるため、複写物には、潜像画像と可視画像の2種類の画像が出現していた。その結果、従来の複写けん制印刷物では、複写物に可視画像が残存するため、潜像画像の視認性が低下していた。
【0015】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、複写物において潜像画像の視認性を向上させることができる複写けん制印刷物及び複写けん制印刷物用データの作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、複写けん制印刷物は、基材の少なくとも一部に、複数の網点で形成された複写けん制画像を備え、複写けん制画像は、複写機で再現可能な大きさの網点で構成された潜像画像部を有する第1画像部と、少なくとも一部に潜像画像部が重なり合い、かつ複写機で再現不可能な大きさの網点で構成された可視画像部及び背景部を有する第2画像部と、を有し、潜像画像部と可視画像部が重なり合う画像重合部には、複写機で再現可能な大きさの網点と、複写機で再現不可能な大きさの網点が配置され、潜像画像部の網点面積率は、第1網点面積率であり、可視画像部における画像重合部を除いた領域の網点面積率である第2網点面積率は、第1網点面積率よりも大きな網点面積率であり、可視画像部における画像重合部の網点面積率は、第2網点面積率から第1網点面積率を引いた値である。
【0017】
また、複写けん制印刷物は、背景部の網点面積率である第3網点面積率は、第1網点面積率と等しく、背景部における潜像画像部と重なり合う領域である背景重合部には、網点が形成されておらず、空白となっている。
【0018】
さらに、複写けん制印刷物は、背景部の網点面積率である第3網点面積率は、第1網点面積率よりも大きな網点面積率に設定され、背景部における潜像画像部と重なり合う領域である背景重合部の網点面積率は、第3網点面積率から第1網点面積率を引いた値に設定される。
【0019】
また、複写けん制印刷物用データの作成方法は、前述した構成を有する複写けん制印刷物を作成する方法であって、可視画像部の基となる可視画像部データ及び背景部の基となる背景部データのみからなる網点で構成された目標完成画像データと、潜像画像部の基となる潜像画像部データを有して第1画像部の基となり網点で構成された第1画像部データとを、作成する又はあらかじめ登録されたデータベースから取り込む工程と、潜像画像部データを複写機で再現可能な大きさの網点に設定した後、目標完成画像データの網点面積率から、複写機で再現可能な大きさの網点に設定した潜像画像部データ有する第1画像部データの網点面積率を減算し、減算画像データを作成する工程と、減算画像データの網点を複写機で再現不可能な大きさの網点に設定し、第2画像部の基となる第2画像部データを作成する工程と、第1画像部データと第2画像部データを足し合わせて複写けん制画像の基となる複写けん制画像データを作成する工程と、を含む。
【0020】
さらに、複写けん制印刷物用データの作成方法は、目標完成画像データにおける潜像画像部データと重なる領域では、目標完成画像データの網点面積率から潜像画像部データの網点面積率を引くことで、第2画像部データにおける潜像画像部データと重なる領域の網点面積率を設定する。
【発明の効果】
【0021】
上記構成の複写けん制印刷物及び複写けん制印刷物用データの作成方法では、複写物において潜像画像の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態例にかかる複写けん制印刷物を示す平面図。
図2】本発明の実施の形態例にかかる複写けん制印刷物の複写けん制画像を示す模式図。
図3】本発明の実施の形態例にかかる複写けん制画像の第1画像部を示す図。
図4】本発明の実施の形態例にかかる複写けん制画像の第2画像部を示す図。
図5】本発明の実施の形態例にかかる複写けん制印刷物を作成する作成装置Mを示すブロック図。
図6】本発明の実施の形態例にかかる複写けん制印刷物の複写けん制画像の作成方法を示す図。
図7】従来の複写けん制印刷物の一例を示す図。
図8】従来の複写けん制印刷物の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施の形態例にかかる複写けん制印刷物及び複写けん制印刷物用データの作成方法について、図1図6を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0024】
1.実施の形態例
まず、実施の形態例(以下、「本例」という)にかかる複写けん制印刷物の構成について、図1図4を参照して説明する。
【0025】
図1は、本例の複写けん制印刷物の一部を示す平面図である。
【0026】
図1に示す本例の複写けん制印刷物100は、例えば、銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等、各種証明書及び重要書類に用いられる印刷物である。図1に示すように、複写けん制印刷物100は、基材1と、基材1の少なくとも一部に形成される複写けん制画像5と、を備えている。複写けん制画像5は、基材1における予め設定された箇所に配置されている。
【0027】
なお、複写けん制画像5の数は、基材1上に一つに限定されるものではなく、複数設けてもよい。また、複写けん制画像5を基材1の全面に、地紋模様のような下地模様として設けてもよい。
【0028】
図2は、複写けん制画像5を示す模式図である。
【0029】
図2に示すように、複写けん制画像5は、第1画像部10と、第2画像部20と、を備えている。複写けん制画像5は、肉眼では、第2画像部20の「星形状」の可視画像部21及び可視画像部21の周囲である背景部22が視認される。この複写けん制画像5を複写した際には、第2画像部20が消失し、第1画像部10の潜像画像部11が複写物に視認可能に出現する。
【0030】
なお、複写物とは、本例の複写けん制印刷物100を複写機で複写した際の出力物をいう。本例では、可視画像部21として「星形状」を適用し、潜像画像部11として「月形状」を適用している。なお、可視画像部21及び潜像画像部11の絵柄は、「星形状」及び「月形状」に限定されるものではなく、円形、花形、角形状、その他各種の形状及びひらがな、カタカナ、漢数字、アルファベット、記号等、任意の形状であっても構わない。
【0031】
図3は、第1画像部10を示す図である。
【0032】
図3に示すように、第1画像部10は、「月形状」の潜像画像部11を有している。潜像画像部11は、複写機で再現可能な大きさの網点を複数配置することで構成されている。なお、網点の形状は、スクエアドット、チェーンドット、ラウンドドットなど特に限定はなく、更には、複数の網点形状で構成してもよい。潜像画像部11は、図2に示すように、第2画像部20の可視画像部21及び背景部22の一部と重なり合って配置されている。また、潜像画像部11の網点面積率(以下、「第1網点面積率」という)は、例えば、20%で構成されている。
【0033】
網点面積率とは、単位面積あたりに占める網点面積の割合をパーセントで表したものであり、ベタ刷り部分は100%、白紙の部分は0%、その中間は50%となる。従来の複写けん制印刷物は、複写機で再現可能な大きさの網点と、再現できない大きさの網点で構成することを特徴としていたが、本発明においては、詳細は後述するが、網点の大きさに加えて網点面積率の大小関係に特徴を有することで、複写前の印刷物における潜像画像部11の隠ぺい性を向上させたことを特徴とする。
【0034】
図4は、第2画像部20を示す図である。
【0035】
図4に示すように、第2画像部20は、「星形状」の可視画像部21と、可視画像部21の周囲に配置された背景部22を有し、背景部22は、さらに背景重合部24を有している。第2画像部20を構成する可視画像部21、背景部22は、複写機で再現不可能な大きさの網点を複数配置することで構成されている。背景重合部24は、背景部22における第1画像部10の潜像画像部11と重なる領域に配置される。この背景重合部24には、第2画像部20を構成する網点が形成されておらず、空白(網点面積率0%)となっている。なお、背景重合部24は必ずしも空白ではなく、網点を配置する構成も可能であるが、配置する構成については、後述する。
【0036】
また、「星形状」の可視画像部21における、第1画像部10の「月形状」の潜像画像部11と重なる領域には、画像重合部23が形成されている。画像重合部23は、可視画像部21の一部とすることから、複写機で再現不可能な大きさの網点を複数配置することで構成されている。
【0037】
前述の通り、第1画像部10における潜像画像部11は複写機で再現可能な大きさの網点で構成され、第2画像部における画像重合部23は、複写機で再現不可能な大きさの網点で構成される。よって、第1画像部10と第2画像部20を重ね合わせて複写けん制画像5を構成した際、複写けん制画像5における画像重合部23と潜像画像部11が重なる領域には、複写機で再現可能な大きさの網点と、複写機で再現不可能な大きさの網点が配置される。なお、領域としては、画像重合部23と潜像画像部11は重なっているが、領域を構成する網点においては、複写機で再現可能な大きさの網点と、再現不可能な大きさの網点は重ならないよう配置されている。重なって配置した場合、例えば、複写機で再現可能な大きさの網点の上に再現不可能な大きさの網点が重なった場合、複写時に再現可能な大きさの網点の上の網点は、再現されるため好ましくない。
【0038】
可視画像部21における画像重合部23を除いた領域の網点面積率(以下、「第2網点面積率」という)は、潜像画像部11の第1網点面積率よりも大きな網点面積率で構成されており、例えば、30%で構成されている。なお、可視画像部21の網点面積率は、一定の値に限定されるものではなく、複数の異なる網点面積率でもよい。
【0039】
背景部22の網点面積率(以下、「第3網点面積率」という)は、第1画像部10の潜像画像部11の第1網点面積率と同じ網点面積率で構成されており、例えば、20%で構成されている。このように、背景部22の第3網点面積率を、第1画像部10の潜像画像部11の第1網点面積率と等しく設定し、背景部22における潜像画像部11と重なる領域に背景重合部24を空白である網点面積率0%で構成している。
【0040】
これにより、複写する前の複写けん制画像5における可視光下(肉眼)では、可視画像部21の網点面積率が最も大きく、他の領域である潜像画像部11、背景部22、潜像画像部11と画像重合部23が重なる領域は、網点面積率が等しくなる。よって、可視画像部21以外を等しい網点面積率で構成することで一体化させることができ、潜像画像部11の隠蔽性を向上させることができる。
【0041】
なお、背景部22の第3網点面積率を、潜像画像部11の第1網点面積率と等しく設定した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、背景部22の第3網点面積率を、潜像画像部11の第1網点面積率よりも大きくしてもよい。この場合、背景部22における潜像画像部11と重なる領域である背景重合部24の網点面積率は、空白(網点面積率0%)ではなく、背景部22の第3網点面積率から、潜像画像部11の第1網点面積率を引いた網点面積率となる。背景重合部24は、複写機で再現不可能な大きさの網点で構成される。
【0042】
一例として、背景部22の第3網点面積率を30%とし、潜像画像部11の第1網点面積率を20%として、潜像画像部11の第1網点面積率よりも大きくした場合、背景部22における潜像画像部11と重なる領域である背景重合部24の網点面積率は、背景部22の第3網点面積率30%から、潜像画像部11の第1網点面積率20%を引いた網点面積率10%となる。その場合、可視画像部21を可視光下で視認可能とするために、可視画像部21の第2網点面積率は、背景部22の第3網点面積率より大きくする必要があり、例えば40%とする。
【0043】
また、画像重合部23においても、第2網点面積率から第1網点面積率を引いた網点面積率であることから、40%から20%を引いた網点面積率20%となる。これにより、複写する前の複写けん制画像5における可視光下(肉眼)での潜像画像部11を、第2画像部20の背景部22を等しい網点面積率で構成することで一体化させることができ、潜像画像部11の隠蔽性を向上させることができる。
【0044】
可視画像部21における画像重合部23の網点面積率(以下、「第4網点面積率」という)は、潜像画像部11の第1網点面積率よりも小さい網点面積率で構成されている。また、画像重合部23の第4網点面積率は、可視画像部21における画像重合部23を除いた領域の第2網点面積率から、潜像画像部11の第1網点面積率を引いた網点面積率となっている。そのため、本例の画像重合部23の第4網点面積率は、例えば、10%で構成されている。
【0045】
前述したように、可視画像部21の画像重合部23には、第1画像部10の潜像画像部11が重なり合う。そのため、画像重合部23と第1画像部10の潜像画像部11を重ね合わせた際、その領域の網点面積率は、画像重合部23の第4網点面積率と、潜像画像部11の第1網点面積率を足した網点面積率となる。
【0046】
ここで、画像重合部23の第4網点面積率を、可視画像部21における画像重合部23を除いた領域の第2網点面積率よりも小さくし、かつ、可視画像部21における画像重合部23を除いた領域の第2網点面積率から、潜像画像部11の第1網点面積率を引いた面積率に設定している。そのため、画像重合部23と第1画像部10の潜像画像部11を重ね合わせた領域の網点面積率は、可視画像部21における画像重合部23を除いた領域の第2網点面積率と等しくなる。
【0047】
これにより、複写する前の複写けん制画像5において、可視画像部21における潜像画像部11と重なる画像重合部23の網点面積率(濃度)が他の領域の網点面積率と異なる網点面積率となることを防ぐことができる。その結果、複写する前の複写けん制画像5において、可視画像部21全体の網点面積率(濃度)を均一にすることができ、潜像画像部11の隠蔽性を向上させることが可能となる。
【0048】
また、第2画像部20である可視画像部21及び背景部22は、複写機で再現不可能な大きさの網点で構成されているため、複写物では再現されずに消失する。そのため、前述した構成を有する複写けん制画像5を複写機で複写した場合、複写物には、可視画像部21だけでなく、背景部22も消失し、図3に示すような潜像画像部11のみが印刷される。これにより、複写物において潜像画像部11の視認性を向上させることができる。
【0049】
なお、背景重合部24に網点が配置された場合でも、背景重合部24は、複写機で再現不可能な大きさの網点で構成されているため、複写物では再現されずに消失する。よって、背景重合部24に網点を配置した複写けん制画像5を複写機で複写した場合、複写物には、可視画像部21だけでなく、背景部22と、背景部22が有する背景重合部24が消失し、図3に示すような潜像画像部11のみが印刷される。これにより、複写物において潜像画像部11の視認性を向上させることができる。
【0050】
さらに、潜像画像部11における可視画像部21と重なる領域では、複写機で再現可能な網点と再現不可能な網点が共存している。そのため、潜像画像部11における可視画像部21と重なる領域では、第2画像部20の画像重合部23を構成する網点が複写機で再現されずに消失し、潜像画像部11を構成する網点のみが残存する。その結果、本例の複写けん制印刷物100によれば、複写物において、潜像画像部11全体を明瞭に出現させることができ、潜像画像部11の視認性を向上させることが可能となる。
【0051】
2.複写けん制画像5の作成方法
次に、前述した構成を有する複写けん制画像5の作成方法について説明する。
【0052】
図5は、本発明の実施の形態例にかかる複写けん制印刷物100を作成する作成装置Mを示すブロック図である。
【0053】
作成装置Mは、入力部U1、編集部U2及び記憶部U3を少なくとも備えている。
【0054】
入力部U1は、複写けん制印刷物100の作成に必要なデータを取得し、編集部U2に与える手段とする。
【0055】
編集部U2は、与えられたデータを記憶部U3に格納するとともに、複写けん制印刷物100の作成に必要な演算処理及び画像処理の全てを行い、得られた結果を印刷部U4に与える。
【0056】
記憶部U3は、複写けん制印刷物100の作成に必要なデータを、編集部U2の演算に必要な各種データ及びその演算結果を記憶する手段とする。
【0057】
複写けん制印刷物100を作成する際に用いる画像データについては、前述した入力部U1、編集部U2及び記憶部U3により作成することが可能だが、画像データを用いて複写けん制印刷物100を印刷するために、更に、印刷部U4、通信インタフェースU5及び表示体U6を備えることも可能とする。
【0058】
印刷部U4は、編集部U2から与えられたデータを、印刷して複写けん制印刷物100を得る手段とする。印刷部U4には、網点で構成された画像データを印刷することが可能な、レーザプリンタ、インクジェットプリンタ、フィルム・セッタ、プレート・セッタ等、無版のデジタル印刷装置を用いる。印刷版面を用いないことで、版面作成工程がなくなるだけではなく、複数の複写けん制印刷物100を作成する際に、複写けん制印刷物100ごとに形成する画像を異なる画像とする可変印刷を行うことが可能となる。
【0059】
通信インタフェースU5は、図示されていないコンピュータ端末と編集部U2とを接続し、必要に応じてコンピュータ端末と編集部U2との間で情報の転送を行う。例えば、通信インタフェースU5により、あらかじめ登録された外部のデータベースサーバから画像、テキスト等、複写けん制印刷物100の作成に必要な各種データを得ることを可能とする。
【0060】
表示部U6は、入力されたデータ、演算結果等、複写けん制印刷物100の作成に必要なデータ及び入力条件、コマンド等、作成者に必要な情報を表示する手段であり、例えばCRT及び液晶ディスプレイを少なくとも一つ有する。
【0061】
図5の作成装置Mを用いて、本実施の形態による複写けん制印刷物100を作成する方法について、図6を参照して説明する。
【0062】
図6は、複写けん制画像5の作成方法を示す図である。
【0063】
まず、可視画像部21の基となる可視画像部データ21D及び背景部22の基となる背景画像部データ22Dのみからなる網点で構成された目標画像データ50Dと、潜像画像部11の基となる潜像画像部データ11Dを有して第1画像部10の基となり網点で構成された第1画像部データ10Dとを、編集部U2にて作成する又は通信インタフェースU5により、予め登録された外部のデータベースから取り込む。さらには、予め記憶部U3に格納したデータを用いてもよい。
【0064】
入力部U1により取得した画像データが、ビットマップによる二値画像データ又はアウトライン図形データ(以下、「デジタルデータ」とする)でない場合、デジタルデータへ変換する必要があるため、編集部U2によりデジタルデータへ変換する。
【0065】
よって、入力部U1は、各データを取得する入力部U1と、取得した基となる画像データをデジタルデータに変換するデータ変換手段を一つの機器内に備えたスキャナ及びデジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯端末等、データ変換手段を備えた撮像機器であることが好ましい。データ変換手段を備えた入力部U1とすることで、画像の取得とデジタルデータへの変換を一度に行うことが可能となる。
【0066】
また、あらかじめ作成及び/又は取得した画像データを用いる場合、入力部U1は、あらかじめ作成及び/又は取得した原画像を既にデジタルデータとして記録してあるCD-ROM、FD、USBメモリ及び、情報記録媒体からデジタルデータを取得するMOドライブ、CD-ROMドライブ、FDドライブ、イメージカードリーダ等、入出力機器としてもよい。
【0067】
この場合、前述の通り、各画像は既にデジタルデータ化されているおり、編集部U2を介す必要はない。よって、各画像データを入力部U1により取得した後、編集部U2を介すことなく、記憶部U3に格納する。
【0068】
画像データにおける画素とは、格子状に配列して画像データを形成する点のことであり、色に関する情報を数値として持つものとする。画素により画像を形成する画像形式は、TIFF形式、BMP形式等、画素で画像を形成可能であれば画像形成に制限はない。いずれの作成又は取得方法においても、記憶部U3に格納した画像データは複数の画素から構成される。
【0069】
図6に示すように、まず可視画像部データ21D及び背景部データ22Dのみからなる目標完成画像データ50Dの網点面積率から潜像画像部データ11Dを有する第1画像部10の画像データである第1画像部データ10Dの網点面積率を減算する処理を、編集部U2において行う。そして、減算する処理をした画像データの網点を複写機で再現不可能な大きさの網点に設定する。
【0070】
なお、複写けん制印刷物100を作成する場合、ほとんどの印刷方式において、複写けん制印刷物100と複写けん制画像5の画像データ間では、ドットゲインによる網点面積率の上昇が見込まれることから、画像データの作成にあたっては、あらかじめそれを見込んだ網点面積率にする必要があることはいうまでもない。
【0071】
また、目標完成画像データ50Dにおける潜像画像部データ11Dと重なる領域では、目標完成画像データ50Dの網点面積率から潜像画像部データ11Dの網点面積率を減算する処理を、編集部U2において行う。これにより、可視画像部21、背景部22、画像重合部23及び背景重合部24を有する第2画像部20の画像データである、可視画像部データ21D、背景部データ22D、画像重合部データ23D及び背景重合部データ24Dを有する第2画像部データ20Dの画像データを作成することができ、可視画像部21、背景部22及び画像重合部23の網点面積率を容易に設定することができる。
【0072】
次に、作成した第2画像部20の画像データである第2画像部20Dと第1画像部10の画像データである第1画像部データ10Dを、編集部2において足し合わせる。そして、前述した工程を行うことで、可視画像部21を有する第2画像部20と、潜像画像部11を有する第1画像部10を重ね合わせた複写けん制画像5の画像データである複写けん制画像データ5Dを作成することができる。
【0073】
このように、目標完成画像データ50から潜像画像部11を有する第1画像部10の画像データである第1画像部データ10Dを減算することで、第2画像部20の網点面積率を容易に設定することができる。これにより、デザイン上の制限を受けることなく、複写けん制画像5の画像データを作成することができる。
【0074】
本発明の作成方法により得られる、複写けん制画像5の画像データを用いて、印刷部U4により基材1に出力することで、複写けん制印刷物100を作成することが可能となる。
【0075】
なお、本発明は前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能とする。
【0076】
例えば、複写けん制画像5は、単色に限定されるものではなく、複数色や、金インキのように光輝性を有する色で形成してもよい。形成した場合、さらに、可視画像部21及び背景部22は、網点面積率(濃度)が一定のベタ印刷に限定されるものではなく、グラデーション及び顔画像のように複数の網点面積率からなる複数の階調で形成してもよい。
【0077】
本発明の複写けん制印刷物100の基材1は、特に限定されるものではなく、上質紙、コート紙、アート紙等、紙葉類を用いることができる。また、フィルム、プラスチック、それらの複合素材を用いることもできる。
【0078】
本発明の複写けん制印刷物100の印刷方法としては、オフセット印刷、グラビア印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、デジタル印刷、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ等、特に限定されるものではないが、微細な特殊形状網点を印刷する場合、オフセット印刷、デジタル印刷、インクジェットプリンタ、レーザプリンタが好ましい。
【符号の説明】
【0079】
1…基材、 5…複写けん制画像、 10…第1画像部、 11…潜像画像部、 20…第2画像部、 21…可視画像部、 22…背景部、 23…画像重合部、 24…背景重合部、 50…目標完成画像データ、 100…複写けん制印刷物
図1
図2
図3
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図6
図7
図8