(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129505
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】生体信号処理システム、信号処理装置、コンピュータプログラム、生体信号の生成方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/327 20210101AFI20240919BHJP
【FI】
A61B5/327
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038749
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】和泉 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】荒木 徹平
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 翔
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127CC08
(57)【要約】
【課題】所定の電極配置とは異なる他の電極配置であっても、必要な複数チャネル生体信号を得られるようにする。
【解決手段】開示の生体信号処理システムは、第1配置で生体へ装着されるm個の電極と、前記m個の電極から取得したpチャネルの第1生体信号を、生成モデルに入力し、前記生成モデルからqチャネルの第2生体信号を出力する処理を実行する信号処理装置と、を備える。前記qチャネルの前記第2生体信号は、第2配置で生体へ装着されるn(nは3以上の整数)個の電極から得られる信号に相当する信号である。前記第2配置は、電極の数及び装着位置の少なくともいずれか一方において、前記第1配置とは異なる電極配置である。前記生成モデルは、前記pチャネルの前記第1生体信号が入力されると前記qチャネルの前記第2生体信号を出力するよう構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配置で生体へ装着されるm(mは3以上の整数)個の電極と、
前記m個の電極から取得したp(pは2以上の整数)チャネルの第1生体信号を、生成モデルに入力し、前記生成モデルからq(qは2以上の整数)チャネルの第2生体信号を出力する処理を実行する信号処理装置と、
を備え、
前記qチャネルの前記第2生体信号は、第2配置で生体へ装着されるn(nは3以上の整数)個の電極から得られる信号に相当する信号であり、
前記第2配置は、電極の数及び装着位置の少なくともいずれか一方において、前記第1配置とは異なる電極配置であり、
前記生成モデルは、前記pチャネルの前記第1生体信号が入力されると前記qチャネルの前記第2生体信号を出力するよう構成されている
生体信号処理システム。
【請求項2】
前記第1配置で生体へ装着される前記m個の電極は、前記m個の電極の相対位置関係が固定された状態で単一のベース上に設けられている
請求項1に記載の生体信号処理システム。
【請求項3】
前記生成モデルは、前記pチャネルの前記第1生体信号が入力されると前記qチャネルの前記第2生体信号を出力するよう機械学習された学習済モデルである
請求項1に記載の生体信号処理システム。
【請求項4】
前記qチャネルの前記第2生体信号は、標準12誘導心電図における12チャネルの信号又は標準12誘導心電図に含まれる12チャネル未満の信号である
請求項1に記載の生体信号処理システム。
【請求項5】
前記pチャネルの前記第1生体信号が取得される前記m個の前記電極は、全てが前記生体の胸部中央に装着される
請求項1に記載の生体信号処理システム。
【請求項6】
信号処理を実行する信号処理装置であって、
前記信号処理は、
第1配置で生体へ装着されるm(mは3以上の整数)個の電極からp(pは2以上の整数)チャネルの第1生体信号を取得し、
前記pチャネルの前記第1生体信号を生成モデルに入力し、前記生成モデルからq(qは2以上の整数)チャネルの第2生体信号を出力する
ことを含み、
前記qチャネルの前記第2生体信号は、第2配置で生体へ装着されるn(nは3以上の整数)個の電極から得られる信号に相当する信号であり、
前記第2配置は、電極の数及び装着位置の少なくともいずれか一方において、前記第1配置とは異なる電極配置であり、
前記生成モデルは、前記pチャネルの前記第1生体信号が入力されると前記qチャネルの前記第2生体信号を出力するよう構成されている
信号処理装置。
【請求項7】
生体信号の生成方法であって、
第1配置で生体へ装着されるm(mは3以上の整数)個の電極からp(pは2以上の整数)チャネルの第1生体信号を取得し、
前記pチャネルの前記第1生体信号を生成モデルに入力して、前記生成モデルからq(qは2以上の整数)チャネルの第2生体信号を出力する、
ことを含み、
前記qチャネルの前記第2生体信号は、第2配置で生体へ装着されるn(nは3以上の整数)個の電極から得られる信号に相当する信号であり、
前記第2配置は、電極の数及び装着位置の少なくともいずれか一方において、前記第1配置とは異なる電極配置であり、
前記生成モデルは、前記pチャネルの前記第1生体信号が入力されると前記qチャネルの前記第2生体信号を出力するよう構成されている
生体信号の生成方法。
【請求項8】
コンピュータに信号処理を実行させるコンピュータプログラムであって、
前記信号処理は、
第1配置で生体へ装着されるm(mは3以上の整数)個の電極からp(pは2以上の整数)チャネルの第1生体信号を取得し、
前記pチャネルの前記第1生体信号を生成モデルに入力して、前記生成モデルからq(qは2以上の整数)チャネルの第2生体信号を出力する、
ことを含み、
前記qチャネルの前記第2生体信号は、第2配置で生体へ装着されるn(nは3以上の整数)個の電極から得られる信号に相当する信号であり、
前記第2配置は、電極の数及び装着位置の少なくともいずれか一方において、前記第1配置とは異なる電極配置であり、
前記生成モデルは、前記pチャネルの前記第1生体信号が入力されると前記qチャネルの前記第2生体信号を出力するよう構成されている
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体信号処理システム、信号処理装置、コンピュータプログラム、生体信号の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、生体信号計測装置を開示している。特許文献1の装置は、生体内の電気的活動など、電位の経時的な変化を電極で計測する。特許文献1は、その装置を、脳波計に適用するほか、心電計等に適用できることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
生体信号の測定には、例えば、標準12誘導心電図を得るための測定がある。標準12誘導心電図は、12個の心電図(12チャネルの心電図)から構成される。標準12誘導心電図を記録するには、4個の四肢電極及び6個の胸部電極の計10個の電極が用いられる。適切な標準12誘導心電図を得るには、所定数(10個)の電極を、生体の所定の位置に正確に装着させる必要がある。
【0005】
このように、標準12誘導心電図又はその他の必要な複数チャネル生体信号を記録しようとする場合、所定数の電極を、生体の所定の位置に配置する必要がある。必要な複数チャネル生体信号は、所定の電極配置で得られるが、他の電極配置では、従来、得られなかった。
【0006】
しかし、所定数の電極を生体の所定の位置に配置した所定の電極配置が必要であると、利便性の低下を招くことがある。また、所定の電極配置を得るのが困難なこともある。したがって、所定の電極配置とは異なる他の電極配置であっても、必要な複数チャネル生体信号を得られるようにすることが望まれる。
【0007】
本開示のある側面は、生体信号処理システムである。開示の生体信号処理システムは、第1配置で生体へ装着されるm(mは3以上の整数)個の電極と、前記m個の電極から取得したp(pは2以上の整数)チャネルの第1生体信号を、生成モデルに入力し、前記生成モデルからq(qは2以上の整数)チャネルの第2生体信号を出力する処理を実行する信号処理装置と、を備え、前記qチャネルの前記第2生体信号は、第2配置で生体へ装着されるn(nは3以上の整数)個の電極から得られる信号に相当する信号であり、前記第2配置は、電極の数及び装着位置の少なくともいずれか一方において、前記第1配置とは異なる電極配置であり、前記生成モデルは、前記pチャネルの前記第1生体信号が入力されると前記qチャネルの前記第2生体信号を出力するよう構成されている。
【0008】
本開示の他の側面は、信号処理装置、生体信号の生成方法、又はコンピュータプログラムを含む。更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、生体信号処理システムの構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電極装置を用いた電極の貼り付け状態を示す説明図である。
【
図4】
図4は、標準12誘導心電図のための電極の位置を示す説明図である。
【
図5】
図5は、信号処理装置における処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、生成モデルの学習フェーズ及び推論フェーズの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<1.生体信号処理システム、信号処理装置、生体信号の生成方法、コンピュータプログラム、の概要>
【0011】
(1)実施形態に係るシステムは、生体信号処理システムであり得る。生体信号処理システムは、第1配置で生体へ装着されるm(mは3以上の整数)個の電極と、前記m個の電極から取得したp(pは2以上の整数)チャネルの第1生体信号を、生成モデルに入力し、前記生成モデルからq(qは2以上の整数)チャネルの第2生体信号を出力する処理を実行する信号処理装置と、を備え得る。前記qチャネルの前記第2生体信号は、第2配置で生体へ装着されるn(nは3以上の整数)個の電極から得られる信号に相当する信号であり得る。前記第2配置は、電極の数及び装着位置の少なくともいずれか一方において、前記第1配置とは異なる電極配置であり得る。前記生成モデルは、前記pチャネルの前記第1生体信号が入力されると前記qチャネルの前記第2生体信号を出力するよう構成され得る。
【0012】
実施形態に係る生体信号処理システムによれば、第2配置の電極から得られる信号に相当する第2生体信号を、第2配置とは異なる第1配置の電極から取得された第1生体信号から生成することができる。つまり、所定の第2配置とは異なる第1配置の電極配置であっても、必要な第2生体信号を得ることができる。
【0013】
(2)前記第1配置で生体へ装着される前記m個の電極は、前記m個の電極の相対位置関係が固定された状態で単一のベース上に設けられているのが好ましい。電極の相対位置関係が固定されていることで、電極の装着が容易になる。
【0014】
(3)前記生成モデルは、前記pチャネルの前記第1生体信号が入力されると前記qチャネルの前記第2生体信号を出力するよう機械学習された学習済モデルであるのが好ましい。
【0015】
(4)前記qチャネルの前記第2生体信号は、標準12誘導心電図における12チャネルの信号又は標準12誘導心電図に含まれる12チャネル未満の信号であるのが好ましい。
【0016】
(5)前記pチャネルの前記第1生体信号が取得される前記m個の前記電極は、全てが前記生体の胸部中央に装着されるのが好ましい。
【0017】
(6)実施形態に係る装置は、信号処理を実行する信号処理装置であり得る。前記信号処理は、第1配置で生体へ装着されるm(mは3以上の整数)個の電極からp(pは2以上の整数)チャネルの第1生体信号を取得し、前記pチャネルの前記第1生体信号を生成モデルに入力し、前記生成モデルからq(qは2以上の整数)チャネルの第2生体信号を出力することを含み得る。前記qチャネルの前記第2生体信号は、第2配置で生体へ装着されるn(nは3以上の整数)個の電極から得られる信号に相当する信号であり得る。前記第2配置は、電極の数及び装着位置の少なくともいずれか一方において、前記第1配置とは異なる電極配置であり得る。前記生成モデルは、前記pチャネルの前記第1生体信号が入力されると前記qチャネルの前記第2生体信号を出力するよう構成され得る。
【0018】
(7)実施形態に係る方法は、生体信号の生成方法であり得る。生成方法は、第1配置で生体へ装着されるm(mは3以上の整数)個の電極からp(pは2以上の整数)チャネルの第1生体信号を取得し、前記pチャネルの前記第1生体信号を生成モデルに入力して、前記生成モデルからq(qは2以上の整数)チャネルの第2生体信号を出力する、ことを含み得る。前記qチャネルの前記第2生体信号は、第2配置で生体へ装着されるn(nは3以上の整数)個の電極から得られる信号に相当する信号であり得る。前記第2配置は、電極の数及び装着位置の少なくともいずれか一方において、前記第1配置とは異なる電極配置であり得る。前記生成モデルは、前記pチャネルの前記第1生体信号が入力されると前記qチャネルの前記第2生体信号を出力するよう構成され得る。
【0019】
(8)実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに信号処理を実行させるコンピュータプログラムであり得る。前記信号処理は、第1配置で生体へ装着されるm(mは3以上の整数)個の電極からp(pは2以上の整数)チャネルの第1生体信号を取得し、前記pチャネルの前記第1生体信号を生成モデルに入力して、前記生成モデルからq(qは2以上の整数)チャネルの第2生体信号を出力する、ことを含み得る。前記qチャネルの前記第2生体信号は、第2配置で生体へ装着されるn(nは3以上の整数)個の電極から得られる信号に相当する信号であり得る。前記第2配置は、電極の数及び装着位置の少なくともいずれか一方において、前記第1配置とは異なる電極配置であり得る。前記生成モデルは、前記pチャネルの前記第1生体信号が入力されると前記qチャネルの前記第2生体信号を出力するよう構成され得る。
【0020】
コンピュータプログラムは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。
【0021】
<2.生体信号処理システム、信号処理装置、コンピュータプログラム、生体信号の生成方法の概要の例>
【0022】
図1は、実施形態に係る生体信号処理システム1を示している。システム1は、電極装置10と、信号処理装置20と、を備える。電極装置10は、第1生体信号を測定する。信号処理装置20は、第1生体信号から、第1生体信号とは異なる第2生体信号を再構成する。
【0023】
電極装置10は、第1生体信号を測定するため、生体の表面に装着される。なお、第1生体信号は、実施形態に係る電極装置10によって測定される信号である。生体は、例えば、人である。生体信号は、例えば、生体の体表面電位である。体表面電位は、例えば、心臓その他筋肉の活動によって生じる、微弱な電位(数十マイクロボルト~数十ミリボルト)である。
【0024】
電極装置10は、複数の電極E0~E15を備える。ここでは、「複数の電極E0~E15」を、「m個の電極E0~E15」ともいう。mは、3以上の整数であるのが好ましい。各電極E0~E15は、体表面電位測定のため、体表面に接するように装着される。電極装置10は、各電極E0~15が体表面に接するように、体表面に取り付けられる。
【0025】
電極装置10は、電極E0~E15を支持するベースとして、シート11を備える。シート11は、例えば、薄いフィルム状の合成樹脂又はその他の材料によって構成される。シート11は、好ましくは、可撓性を有する。シート11が可撓性を有することで、体表面の形状に沿って、シート11を貼り付けることができる。シート11は、面方向に伸縮自在であるのが好ましい。シート11は、透明又は半透明であるのが好ましい。
【0026】
図2に示すように、シート11は、第1面11aと、第1面11aの反対面である第2面11bと、を有する。第1面11aは、生体の体表面に貼り付けられる面である。第1面11aは、体表面への貼り付けのため、粘着性を有する。粘着性は、シート11自体が有していてもよいし、第1面11aに粘着剤を塗布すること、又はその他の粘着性を生じさせるための表面処理を施すことによって得てもよい。
【0027】
m個の電極E0~E15は、第1面11aに設けられている。m個の電極E0~E15は、第1面11a上において、露出するように設けられている。したがって、第1面11aが体表面に接するように、シート11が体表面に貼り付けられると、電極E0~E15は、体表面である皮膚に接する。各電極E0~E15は、貼り付けられた位置における体表面電位を測定する。
【0028】
実施形態の電極装置10においては、全ての電極E0~E15が、単一のシート11上に集積して設けられているため、シート11を貼り付けるという1つの工程で、複数の電極E0~E15を人に装着させることができる。したがって、電極装置10の装着作業が容易である。
【0029】
また、実施形態の電極装置10においては、全ての電極E0~E15が、シート11上に位置固定的に設けられている。この結果、電極E0~E15の相対位置関係は、単一のシート11(ベース)によって規制されて固定化されている。各電極E0~E15の相対位置関係が固定化された状態であることは、第2生体信号の再構成を精度よく行う上で有利である。
【0030】
シート11の第1面11aには、配線12も設けられている。配線12は、電極E0~E15それぞれから、シート11に取り付けられた通信装置15まで延びる。配線12は、図示しないコネクタを介して通信装置15に接続されている。
【0031】
通信装置15は、電極E0~E15によって測定された第1生体信号を信号処理装置20へ送信する。通信装置15は、例えば、信号処理回路及び無線回路を備える。信号処理回路は、例えば、各電極E0~E15によって測定された第1生体信号を増幅する増幅器、及び、増幅された信号をデジタル信号に変換するAD変換コンバータ等などを備える。無線回路は、デジタル信号を変調した無線信号を信号処理装置20へ無線送信する。なお、通信装置15は、有線送信によって、第1生体信号を信号処理装置20へ送信してもよい。信号処理装置20は、通信装置15から送信された第1生体信号を受信し、第1生体信号を用いて、後述の処理を実行することで、第2生体信号を生成する。
【0032】
図3(A)に示すように、電極装置10は、一例として、電極E0~E15が、人の胸部中央に位置するように人に装着される。電極E0~E15が胸部中央に装着されると、電極E0~E15の多くが、体表面において、心臓Hに重なる位置に存在するため有利である。心臓H付近の体表面(胸部中央付近)は、後述のように体表面電位の変化が大きいため、その心臓H付近の体表面(胸部中央付近)に、多数の集積化された電極E0~E15を配置することで、体表面電位に関する多くの情報を得ることができ有利である。
【0033】
ここで、人の胸部は、人の前側の体表面のうち、体内において胸骨及び肋骨が存在する範囲である。胸部中央は、胸部の左右方向における、ほぼ中央の位置である。心臓は、胸部中央(のやや左寄り)にあるため、胸部中央は、心臓近傍の位置である。
【0034】
図3(B)は、人の胸部を含む上半身の体表面電位分布の一例を示している。
図3(B)において、16個の白い丸は、胸部中央に装着された16個の電極E0~E15を示す。
図3(B)において、人体上に描かれた白線は、その白線の位置が同電位であることを示す。また、
図3(B)において、Aは、最も電位が大きい位置及び小さい位置のいずれか一方を示し、Bは、他方を示す。AとBそれぞれの電位は、心臓の両端部において生じる。
図3(B)に示すように、AとBとの間は、白線が密集しており、電位の変化が大きい。
【0035】
図3(B)に示すように、胸部中央(
図3(B)において16個の白い丸が存在する範囲に概ね相当)においては、人の体表面に存在する電位の値のほとんどが分布している。すなわち、
図3(B)において同電位を示す白線のほぼ全てが、胸部中央を通っている。胸部中央以外の範囲の電位の分布は、胸部中央付近を通った白線の分布によって決まる。このため、胸部中央の範囲内の複数の点における電位の情報は、胸部中央以外の体表面位置における電位を推測するために有用な情報となる。したがって、胸部中央に電極装置10を装着して得られた第1生体信号を用いれば、他の位置における第2生体信号を求めることが可能になる。
【0036】
実施形態においては、一例として、信号処理装置20は、第1生体信号を用いて、標準12誘導心電図に相当する第2生体信号を生成する。一般に、標準12誘導心電図を得る場合、4個の四肢電極R,L,F,N及び6個の胸部電極C1,C2,C3,C4,C5,C6の計10個の電極を用いて、各電極の装着位置における電位が測定される。
【0037】
図4は、標準12誘導心電図のための10個(n=10)の電極R,L,F,N,C1,C2,C3,C4,C5,C6の装着位置を示している。
図4(A)に示すように、電極Rは、右手に装着される。電極Lは、左手に装着される。電極Fは左足に装着される。電極Nは右足に装着される。
図4(A)に示すように、4個の四肢電極R,L,F,Nによって、I誘導、II誘導、III誘導、aV
R誘導、aV
L誘導、aV
F誘導の計6チャネルの心電図(第2生体信号)を得ることができる。
【0038】
図4(B)に示すように、電極C1,C2,C2,C3,C4,C5,C6は、胸部に装着される。電極C1は、第4肋間胸骨右縁に装着され、V1誘導の心電図を得るために用いられる。電極C2は、第4肋間胸骨左縁に装着され、V2誘導の心電図を得るために用いられる。電極C3は、電極C2と電極C4との中間点に装着され、V3誘導の心電図を得るために用いられる。電極C4は、第4肋間と左鎖骨中線の交点に装着され、V4誘導の心電図を得るために用いられる。電極C5は、電極C4と同じ高さの水平線と左前腋窩線の交点との交点に装着され、V5誘導の心電図を得るために用いられる。電極C6は、電極C4と同じ高さの水平線と左中腋窩線との交点に装着され、V6誘導の心電図を得るために用いられる。
【0039】
このように、6個の電極C1,C2,C2,C3,C4,C5,C6によって、V1誘導、V2誘導、V3誘導、V4誘導、V5誘導、V6誘導の計6チャネルの心電図(第2生体信号)を得ることができる。
【0040】
したがって、標準12誘導心電図としては、4個の四肢電極R,L,F,Nによる6チャネルと、6個の胸部電極C1,C2,C2,C3,C4,C5,C6による6チャネルの計12チャネルの心電図(第2生体信号)を得ることができる。
【0041】
標準12誘導心電図のための10個(n=10)の電極R,L,F,N,C1,C2,C3,C4,C5,C6は、それぞれ分離しており、それぞれの電極を、所定の位置に正確に装着させる必要がある。それぞれの電極が所定の位置に正確に装着されていないと、得られた心電図は、診断に役立たない。しかし、これら10個の電極R,L,F,N,C1,C2,C3,C4,C5,C6を正確な位置に装着させるのは、医療従事者であっても容易ではないことがある。また、電極の装着に慣れた医療従事者がいない場合には、心電図の測定ができないことがある。
【0042】
しかし、実施形態のシステム1を用いると、電極装置10によって得られた第1生体信号によって、標準12誘導心電図に相当する第2生体信号を得ることができる。したがって、電極の装着の負担が軽減される。
【0043】
図3(A)に戻り、実施形態の電極装置10は、少なくとも1個の電極、好ましくは複数の電極E0~E15が、心臓の位置と重なるように、胸部中央に装着される。ここでは、電極装置10が生体に装着されたときの電極E0~E15の配置を、「第1配置」という。
図3(A)は、第1配置の一例を示している。
図3(A)に示す第1配置は、集積化した16個の電極E0~E15が胸部中央に装着された電極配置である。
【0044】
また、第1配置とは異なる電極配置を、「第2配置」という。第2配置は、電極の数及び装着位置の少なくともいずれか一方において、第1配置と異なれば足りる。
図4に示す標準12誘導心電図のための電極配置は、第2配置の一例である。
図4に示す第2配置は、電極の数及び装着位置の両方において、
図3に示す第1配置と異なる。第2配置において、電極は、胸部中央に集中する第1配置に比べて、広範囲に装着される。
【0045】
図1及び
図3に示す電極装置10において、電極E0~E15の数を示すmは、16である。すなわち、
図1に示す電極装置10は、16個の電極E0~E15を備える。これらの電極E0の中には、1個又はそれより多い基準電極E15が含まれ得る。基準電極E15は、基準となる生体表面電位(基準電位)を得るための電極である。図示の電極装置10においては、左隅の電極E15が基準電極である。m個の電極E0~E15のうち、基準電極E15以外の電極E0~E14は、信号処理装置20に与えられるpチャネル生体信号(生体表面電位)を測定するための測定電極である。ここでは、15個の測定電極E0~E14は、基準電位を基準とした15チャネルの体表面電位(第1生体信号)を測定するために用いられる。なお、測定電極E0~E14によって測定される電位は、他の測定電極E0~E14を基準とした体表面電位であってもよい。他の測定電極E0~E14を基準とした体表面電位も測定することで、電極数が同じでも、より多くのチャネルの第1生体信号(生体表面電位)を得ることができる。
【0046】
このように、図示の電極装置10は、一例として、16個(m=16)の電極を有し、15(p=15)チャネルの第1生体信号を測定することができる。
【0047】
図1及び
図3に示す電極装置10において、電極E0~E15は、シート11上に2次元アレイ上に配列されている。より具体的には、16個の電極E0~E15は、縦4列、横4行の2次元アレイ配列である。なお、電極E0~E15の配列は、2次元アレイ配列に限られるものではなく、その他の配置であってもよい。
【0048】
電極装置10が備える電極E0~E15の数mは、複数チャネルの生体信号を得るため少なくとも3個又はそれ以上であるのが好ましい。電極装置10が備える電極E0~E15の数mは、9個以上25個以下であるのがより好ましく、11個以上20個以下であるのがさらに好ましい。
【0049】
電極装置10が備える電極E0~E15は、電極装置10のコンパクト化又は取り扱いを容易にするため、集積化しているのが好ましい。例えば、全ての電極E0~E15が、所定の大きさの基準範囲X内に位置するように集積されているのが好ましい。
【0050】
ここで、基準範囲Xは、例えば、全ての電極E0~E15を内部に位置させることができる大きさを持つ正方形の範囲である。この基準範囲Xを構成する正方形の1辺の長さは、30cm以下であるのが好ましい。1辺が30cm程度の正方形内に全ての電極E0~E15が収まるように集積化されていれば、電極E0~E15を人の胸部に装着させるのが容易になる。
【0051】
また、基準範囲Xを構成する正方形の1辺の長さは、小さいほど好ましく、例えば、25cm以下であるのがより好ましく、20cm以下であるのがより好ましく、15cm以下であるのがより好ましい。1辺の長さが小さいほど、電極の集積度合が高くなる。
【0052】
基準範囲Xを構成する正方形の1辺の長さは、小さすぎると、電極E0~E15又は後述の配線の形成が困難になることがあるため、例えば、5cm以上であるのがより好ましく、10cm以上であるのがより好ましい。
【0053】
実施形態において、第1生体信号は、複数チャネル取得される。すなわち、第1生体信号のチャネル数pは、2以上の整数であるのが好ましい。第1生体信号のチャネル数pは、多いほど、後述の第2生体信号の再構成に必要な情報量が多くなり、好ましい。
【0054】
図4に示す電極R,L,F,N,C1,C2,C3,C4,C5,C6の数を示すnは、10であり、これらの電極によって得られる第2生体信号のチャネル数を示すqは、12である。つまり、標準12誘導心電図のための測定においては、10個(n=10)の電極が用いられ、12(q=12)チャネルの第2生体信号が測定される。なお、標準12誘導心電図のための測定又はその他の第2生体信号の測定において、nは、3以上の整数であるのが好ましく、qは、2以上の整数であるのが好ましい。
【0055】
第1配置において得られるチャネル数pは、第2配置において得られるチャネル数qと同程度、又はチャネル数qよりも大きい値であるのが好ましい。第1配置のチャネル数pが、第2配置におけるチャネル数qよりも多い場合、第1配置において多くの信号を取得できるため、第2生体信号の再構成を精度良く行うことができる。例えば、第2配置が標準12誘導心電図のための電極配置である場合、チャネル数q=12又はそれ未満であり得る。q=12である場合、電極装置10を用いた第1配置におけるチャネル数pは、少なくともqと同程度になるように、10,11,又は12以上であるのが好ましい。また、電極装置10を用いた第1配置におけるチャネル数pを、13以上にすることで、チャネル数qよりも大きくなり好ましい。チャネル数pは、チャネル数qよりも十分大きいのがより好ましく、例えば、14以上が好ましく、15以上がさらに好ましい。
【0056】
第1配置における電極数mは、第2配置における電極数nと同程度、又は電極数nよりも大きい値であるのが好ましい。第1配置の電極数mが、第2配置における電極数nよりも多い場合、第1配置において多くの信号を取得し易く有利である。例えば、第2配置が標準12誘導心電図のための電極配置である場合、電極数n=10である。この場合、電極装置10を用いた第1配置における電極数mは、少なくともnと同程度になるように、9又は10以上であるのが好ましい。また、電極装置10を用いた第1配置における電極数mを、11以上にすることで、電極数nよりも大きくなり好ましい。電極数mは、電極数nよりも十分大きいのがより好ましく、例えば、12以上が好ましく、15以上がさらに好ましい。
【0057】
また、第1配置は、生体の表面において、第2配置よりも電極が高密度に配置されているのが好ましい。
【0058】
図1に戻り、第1配置の電極装置10から取得した複数チャネルの第1生体信号は、信号処理装置20に与えられる。信号処理装置20は、生成モデルを用いて、複数チャネルの第1生体信号は、複数チャネルの第2生体信号を生成する。なお、ここでは、所定期間の時系列の第1生体信号から、所定期間の時系列の第2生体信号が生成される。
【0059】
信号処理装置20は、電極装置10から送信された第1生体信号を受信するための通信装置23を備える。通信装置23は、例えば、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信を行うための装置である。また、信号処理装置20は、プロセッサ21とプロセッサに接続された記憶装置22とを有するコンピュータを備える。通信装置23はコンピュータの内部に設けられていてもよいし、外部に設けられていてもよい。
【0060】
プロセッサ21は、例えば、CPUである。記憶装置22は、例えば、一次記憶装置及び二次記憶装置を備える。一次記憶装置は、例えば、RAMである。二次記憶装置は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)又はソリッドステートドライブ(SSD)である。記憶装置22は、プロセッサ21によって実行されるコンピュータプログラム22cを備える。
【0061】
プロセッサ21は、記憶装置22に格納されたコンピュータプログラム22cを読み出して実行する。記憶装置22のコンピュータプログラム22cは、コンピュータを、信号処理装置20として動作させるための命令を含むプログラムコードを有する。信号処理装置20の動作は、m個の電極から、pチャネルの第1生体信号を取得し、取得したPチャネルの第1生体信号を生成モデルに入力し、生成モデルからqチャネルの第2生体信号を出力する処理を実行することを含む。
【0062】
記憶装置22は、取得したpチャネルの第1生体信号を保存する記憶領域22aを有する。また、記憶装置22は、生成されたqチャネルの第1生体信号を保存する記憶領域22bを有する。
【0063】
図5は、信号処理装置20によって実行される処理の手順を示している。
図5に示す処理では、第1配置の電極E0~E15から取得した第1生体信号から、第1配置とは異なる第2配置の電極によって得られるべき第2生体信号が生成される。つまり、
図5に示す処理では、実際に測定された第1生体信号から、診断に必要とされる第2生体信号が再構築される。
【0064】
まず、ステップS1において、信号処理装置20は、第1生体信号を取得する。例えば、信号処理装置20は、通信装置23を介した無線通信によって、電極装置10から、pチャネルの第1生体信号を受信する。ステップS2において、信号処理装置20は、受信した第1生体信号を記憶装置22に保存する。
【0065】
図6は、16個(m=16)の電極E0~E15によって測定された15(p=15)チャネルの第1生体信号(生体表面電位)の時系列データ(信号波形)を示している。
図6では、ch0からch14までの計15チャネルの第1生体信号の波形が示されている。ch0からch14までのチャネルそれぞれは、基準電極E15の電位を基準電位として測定された電極E0から電極E14それぞれにおける電位である。
【0066】
各信号波形において、縦軸は電位を示し、横軸は時間を示す。各信号波形は、同時に測定されたものであり、
図6では、11.0[s]~13.0[s]までの同一期間における波形が示されている。なお、参考として、ch0の信号波形とともに、心電図におけるP波、R波、T波、Q波、S波の位置が示されている。
【0067】
図6に示す15チャネルの第1生体信号は、人の胸部中央において高密度に集積配置された電極E0~E14の各位置における電位を示している。以下では、一例として、これらの15(p=15)チャネルの第1生体信号を用いて、標準12誘導心電図に含まれる8(q=8)チャネルの心電図(第2生体信号)が生成される。以下で生成される8チャネルの心電図は、一例として、I誘導、II誘導、V1誘導、V2誘導、V3誘導、V4誘導、V5誘導、及びV6誘導である。なお、III誘導、aV
R誘導、aV
L誘導、aV
F誘導も生成されてもよい。
【0068】
図5のステップS3において、信号処理装置20は、生成モデル30を用いて、同一期間のpチャネルの第1生体信号の時系列データから、その期間におけるqチャネルの第2生体信号を生成する。
【0069】
生成モデル30は、pチャネルの第1生体信号が入力されると、qチャネルの第2生体信号を出力するよう構成されている。生成モデル30は、一例として、pチャネルの第1生体信号が入力されると、qチャネルの第2生体信号を出力するよう機械学習された学習済モデル30である。機械学習は、一例として深層学習である。
【0070】
図7は、生成モデル30の一例を示している。
図7(A)は、生成モデル30の機械学習フェーズの説明図であり、
図7(B)は、第1生体信号から第2生体信号を再構築する推論フェーズの説明図である。生成モデル30は、一例として、畳み込みニューラルネットワーク111と全結合層112とを備え、入力された第1生体信号の特徴量113を得るよう構成されている。生成モデル30は、特徴量113から全結合層114によって第2生体信号を再構成して出力する。なお、入力される第1生体信号には、必要に応じて、ノイズ除去などの前処理が予め施される。
【0071】
図7(A)に示すように、学習フェーズでは、学習用の第1生体信号と学習用の第2生体信号とを用いて、ニューラルネットワークであるモデル30の機械学習が行われる。学習用の第1生体信号は、一例として、人の胸部中央に貼り付けられた電極装置10に含まれる16(m=16)個の電極E0~E15から取得した15(p=15)チャネルの心電図である(
図6参照)。学習用の第2生体信号は、一例として、標準12誘導心電図の測定のための10(n=10)個の電極から取得した8(q=8)チャネルの心電図である。8チャネルの心電図は、I誘導、II誘導、V1誘導、V2誘導、V3誘導、V4誘導、V5誘導、及びV6誘導である。
【0072】
学習フェーズにおいては、学習用の第1生体信号と同時に同一人について測定された同一期間の学習用の第2生体信号とがペアとされる。学習用の第1生体信号がモデル30に入力されると、学習用の第2生体信号が再構成されるように、モデル30の機械学習が行われる。
【0073】
機械学習には、学習用の第1生体信号と学習用の第2生体信号とのペアが、複数人分用いられる。異なる複数人の学習用信号を用いることで、モデル30は、個人差にかかわらず第2生体信号を精度よく生成できる。
【0074】
また、電極装置10の人体への貼り付け位置及び貼り付け角度には、ばらつきが生じ得る。しかし、そのようなばらつきを含む多数の学習用信号を用いて、モデル30の機械学習をすることで、貼り付け位置及び貼り付け角度が多少不適切であっても、精度良く、第2生体信号を生成することができる。したがって、実施形態の電極装置10の貼り付けは、正確さが多少損なわれていてもよく、標準12誘導心電図のための電極の貼り付けに比べて、容易である。この結果、電極装置10を医療従事者が貼り付けるのが容易になるのはもちろん、電極装置10が貼り付けられる患者自らが、容易に、電極装置10を貼り付けることもできる。したがって、実施形態の電極装置10は、自宅等の医療施設外で、心電図を測定するために用いられ得る。このため、実施形態の電極装置10は、遠隔医療等に活用され得る。
【0075】
図7(B)に示すように、推論フェーズ(
図5のステップS3に相当)では、第1生体信号がモデル30に入力される。モデル30は、第1生体信号から再構成された第2生体信号を出力する。推論フェーズで入力される第1生体信号は、一例として、人の胸部中央に貼り付けられた電極装置10に含まれる16(m=16)個の電極E0~E15から取得した15(p=15)チャネルの心電図である(
図6参照)。再構成される第2生体信号は、一例として、標準12誘導心電図における8(q=8)チャネルの心電図である。8チャネルの心電図は、I誘導、II誘導、V1誘導、V2誘導、V3誘導、V4誘導、V5誘導、及びV6誘導である。
【0076】
図8は、4人分の学習用の第1、第2生体信号を用いて機械学習した生成モデル30を用いて生成された8チャネル第2生体信号(心電図)を示している。第2生体信号の生成のため、生成モデル30には、被験者の胸部中央に貼り付けられた電極装置10から得られた15チャネルの第1生体信号の所定期間の時系列データが入力される。所定期間は、心臓の1拍分以上の時間長さを持つのが好ましい。なお、被験者は、学習用信号が測定された4人とは異なる人物である。
【0077】
図8の各心電図において、縦軸は電位を示し、横軸は時間を示す。
図8において、実線で示される「再構成」の波形は、生成モデル30によって再構成された波形である。
図8において、点線で示される「リファレンス」の波形は、被験者に標準12誘導心電図のための電極を貼り付けて、第1生体信号と同時に測定されたリファレンス信号である。「再構成」の波形が「リファレンス」に近似しているほど、再構成の精度がよいといえる。そして、
図8に示すように、「再構成」の波形は、「リファレンス」に近似しており、再構成を精度よく行えている。しかも、
図8に示す「再構成」波形は、4人分の学習用信号を用いて機械学習されたモデル30を用いたものであるため、より多数の学習用信号を用いて機械学習されたモデル30を用いることで、第2生体信号の再構成の精度を更に高めることが期待できる。
【0078】
図5に戻り、ステップS4において、信号処理装置20は、生成された第2生体信号を記憶装置22に保存する。また、信号処理装置20は、生成された第2生体信号を外部に出力することができる(ステップS5)。外部に出力することは、例えば、ディスプレイへの表示、プリンターによる印刷、ネットワークへの送信である。外部に出力された第2生体信号は、例えば、医師による診断に用いられる。本実施形態によれば、標準12誘導心電図のための電極を患者に正確に装着させなくても、標準12誘導心電図に含まれる心電図を得ることができ有利である。
【0079】
なお、実施形態に係る装置・システムは、心電図の測定・生成用に限られるものではなく、骨格筋筋電図又は内蔵平滑筋筋電図などその他の生体信号の測定・生成用にも用いることができる。
【0080】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 :生体信号処理システム
10 :電極装置
11 :シート
11a :第1面
11b :第2面
12 :配線
15 :通信装置
20 :信号処理装置
21 :プロセッサ
22 :記憶装置
22a :記憶領域
22b :記憶領域
22c :コンピュータプログラム
23 :通信装置
30 :生成モデル
111 :畳み込みニューラルネットワーク
112 :全結合層
113 :特徴量
114 :全結合層
C1 :胸部電極
C2 :胸部電極
C3 :胸部電極
C4 :胸部電極
C5 :胸部電極
C6 :胸部電極
E0 :電極
E1 :電極
E2 :電極
E3 :電極
E4 :電極
E5 :電極
E6 :電極
E7 :電極
E8 :電極
E9 :電極
E10 :電極
E11 :電極
E12 :電極
E13 :電極
E14 :電極
E15 :電極
F :四肢電極
H :心臓
L :四肢電極
N :四肢電極
R :四肢電極
X :基準範囲
m :電極数
n :電極数
p :チャネル数
q :チャネル数