(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129538
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】分光器、携帯型装置、分析システム
(51)【国際特許分類】
G01J 3/10 20060101AFI20240919BHJP
G01J 3/18 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
G01J3/10
G01J3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038824
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】尾形 亮磨
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭典
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 才明
(72)【発明者】
【氏名】野口 英剛
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020AA03
2G020BA05
2G020CB02
2G020CB26
2G020CB31
2G020CB54
2G020CC05
2G020CC42
2G020CC62
2G020CD12
2G020CD24
(57)【要約】
【課題】分光器における光利用効率の向上と被検物の表面凹凸に起因する測定値の変動の低減。
【解決手段】本分光器は、被検物を照明する光源と、前記被検物からの光を入射させる光入射手段と、前記光入射手段によって入射された前記光を波長分散させる回折格子と、反射面を有し、当該反射面の傾きが可変である反射手段と、前記反射手段によって反射された前記光の一部を出射させる光出射手段と、前記光源から前記被検物を経由して前記光入射手段に至る光路中に配置される1又は複数の照明補助手段と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物を照明する光源と、
前記被検物からの光を入射させる光入射手段と、
前記光入射手段によって入射された前記光を波長分散させる回折格子と、
反射面を有し、当該反射面の傾きが可変である反射手段と、
前記反射手段によって反射された前記光の一部を出射させる光出射手段と、
前記光源から前記被検物を経由して前記光入射手段に至る光路中に配置される1又は複数の照明補助手段と、を有する、分光器。
【請求項2】
前記照明補助手段は、前記光源の周囲に配置された凹面ミラーを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項3】
前記光入射手段は、前記被検物からの光を通過させる光通過部を有し、
前記凹面ミラーは、前記光源から出射する光束の光軸と前記光通過部の中心とを含む平面に対して面対称である、請求項2に記載の分光器。
【請求項4】
前記凹面ミラーの凹面部は、前記光源を挟んで対向する部分を有する、請求項3に記載の分光器。
【請求項5】
前記凹面ミラーは、前記平面に対して面対称な、互いに独立した2つの凹面部を含む、請求項3に記載の分光器。
【請求項6】
前記照明補助手段は、前記被検物から前記光入射手段に至る光束を挟んで前記光源とは逆側に配置された第2凹面ミラーを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項7】
前記光入射手段は、前記被検物からの光を通過させる光通過部を有し、
前記第2凹面ミラーは、前記光源から出射する光束の光軸と前記光通過部の中心とを含む平面に対して面対称である、請求項6に記載の分光器。
【請求項8】
前記第2凹面ミラーは、自由曲面形状である、請求項7に記載の分光器。
【請求項9】
前記照明補助手段は、前記光源と前記被検物の間に配置される凸レンズを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項10】
前記凸レンズは、少なくとも前記被検物に近い部分が平面状にカットされている、請求項9に記載の分光器。
【請求項11】
前記光源から出射する光を外部の前記被検物に導き、前記被検物からの光を内部に導く測定窓を有し、
前記照明補助手段は、前記測定窓を兼用した凸レンズを含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項12】
前記光入射手段は、前記被検物からの光を通過させる光通過部を有し、
前記凸レンズは、凸面と、前記凸面の反対側の面となるシリンドリカル面と、を有し、
前記シリンドリカル面は、前記光源から出射する光束の光軸と前記光通過部の中心とを含む平面に対して面対称である、請求項11に記載の分光器。
【請求項13】
前記照明補助手段は、前記被検物からの光に対して、前記光入射手段を通過する光以外の光の一部を反射し、再び前記被検物に入射させる再入射手段を含む、請求項1に記載の分光器。
【請求項14】
前記光入射手段は、前記被検物からの光を通過させる光通過部を有し、
前記再入射手段は、前記光入射手段の前記被検物の側の面において、前記光通過部を除く部分に設けられた反射部材である、請求項13に記載の分光器。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の分光器を有する、携帯型装置。
【請求項16】
樹脂判別装置である、請求項15に記載の携帯型装置。
【請求項17】
請求項15に記載の携帯型装置と、前記携帯型装置と情報の送受信が可能な携帯機器と、を有する、分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光器、携帯型装置、及び分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定光を分光することにより、波長ごとの分光スペクトルが得られるようにしたいわゆる分光器が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような分光器には、分光分析の対象となる被検物を照明する照明光学系が必要になる。
【0003】
照明光学系としては、例えば、光源と、光源から出射した光束を被照射面に導光する導光体と、を備える構成が挙げられる。この照明光学系において、導光体は、光源からの光束が入射する入射面と、入射面から入射した光束を反射する楕円反射面と、楕円反射面によって反射された光束が出射する出射面と、を有し、光源は、楕円反射面の焦点のうち被照射面から遠位にある第1の焦点から、光源の発光面に垂直な成分を有する方向に離間して配置されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分光器は携帯して素材分別回収現場等で用いられる場合がある。そのため、従来よりも光利用効率が高くて消費電力が低い光源を備えた分光器が求められている。また、従来のような直接光だけの照明では、被検物の表面凹凸による影の影響で測定値が変動する場合がある。そのため、安定した測定値が得られる分光器が求められている。
【0005】
本発明は、分光器における光利用効率の向上と被検物の表面凹凸に起因する測定値の変動の低減とを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る分光器は、被検物を照明する光源と、前記被検物からの光を入射させる光入射手段と、前記光入射手段によって入射された前記光を波長分散させる回折格子と、反射面を有し、当該反射面の傾きが可変である反射手段と、前記反射手段によって反射された前記光の一部を出射させる光出射手段と、前記光源から前記被検物を経由して前記光入射手段に至る光路中に配置される1又は複数の照明補助手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、分光器における光利用効率の向上と被検物の表面凹凸に起因する測定値の変動の低減とを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る分光器を例示する斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る分光器における照明補助手段18の配置例を示す斜視図である。
【
図3】
図2を光源から出射する光束の光軸上の点から視た図である。
【
図4】第1実施形態に係る分光器を例示する側面図である。
【
図5】照明補助手段19の一例を示す斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す斜視図である。
【
図7】比較例1に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す斜視図である。
【
図8】第1実施形態の変形例1に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す斜視図である。
【
図9】第1実施形態の変形例2に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す斜視図である。
【
図10】第1実施形態の変形例3に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す斜視図である。
【
図11】比較例2に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す斜視図である。
【
図12】比較例2に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す側面図である。
【
図13】第1実施形態の変形例4に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す側面図である。
【
図14】第1実施形態の変形例5に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す側面図である。
【
図15】照明補助手段の形状例を示す側面図である。
【
図16】第1実施形態の変形例6に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す側面図である。
【
図17】第1実施形態の変形例7に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す側面図である。
【
図18】
図17の被検物側からZ方向に沿って照明補助手段を視た図である。
【
図19】第1実施形態の変形例8に係る分光器を例示する斜視図である。
【
図20】第2実施形態に係る分析システムの全体構成を例示する模式図である。
【
図21】樹脂判別動作を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
以下に示す実施形態は、本開示の技術思想を具体化するための分光器を例示するものであって、本開示を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
〈第1実施形態〉
図1を参照して、第1実施形態に係る分光器1の構成を説明する。
図1は、第1実施形態に係る分光器を例示する斜視図である。
【0012】
図1に示すように、分光器1は、光源10と、光入射部11と、凹面回折格子13と、可動光反射部14と、光出射部15と、照明補助手段18と、照明補助手段19とを有する。
図1では、凹面回折格子13の凹曲面を簡略化して略平面として描いている。また、
図1では、各構成部のローカル座標系を併せて表示している。以降の図でも、同様の座標系を表示する場合がある。
【0013】
光源10は、分光分析の対象となる被検物500を照明する。光源10としては、被検物500に対して適正な波長帯域の光を照射する光源が選択され、配置される。光源10は、例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、又はLED(発光ダイオード)等である。
【0014】
光入射部11は、被検物500からの光を入射させる光入射手段の一例である。光源10からの光は、被検物500で反射されて光入射部11に達する。光入射部11における光通過部11a以外の領域は、光を通過させない非光通過部11bを構成している。光通過部11aは、例えばピンホール形状又はスリット形状等であり、光の入射位置を決定したり、波長分解能を向上させたりするために設けられている。被検物500で反射されて光入射部11に達した光は、光通過部11aを通過して凹面回折格子13に向かって伝搬する。
【0015】
凹面回折格子13は、光入射部11によって入射された光を波長分散させる回折格子の一例である。凹面回折格子13は、入射する光を回折させることにより波長分散させつつ、波長分散光を可動光反射部14に向けて反射する。波長分散光に含まれる異なる波長の光は、それぞれ集束しながら伝搬して、可動光反射部14の反射面上の反射ライン14L上の異なる位置に入射し、反射面により反射される。
【0016】
凹面回折格子13は、例えば、上面に凹曲面が形成された基板と、この凹曲面に形成された回折格子とを有する。さらに、回折格子の表面に、反射率を向上させるためのAl、Ag、Au、Pt等の金属材料を用いた反射部材が形成されてもよい。例えば、基板の凹曲面に対してレジストを塗布し、干渉露光法等を用いてレジストに格子パターンを形成し、ドライエッチング等を行うことにより、基板の凹曲面に回折格子を形成できる。
【0017】
凹面回折格子13には、例えば、回折格子の溝部の断面形状として、矩形形状、正弦波形状、ノコギリ波形状等を有するものを適用できる。
【0018】
凹面回折格子13は、回折格子の表面に反射部材を有さない構成であってもよい。また、凹面回折格子13の構成は、同様の波長分散機能を有するものであれば、これらの例には限定されない。光入射部11から平行光が入射する場合には、凹面回折格子13の代わりに平面回折格子を用いることによっても、同様の波長分散機能が得られる。この場合には、平面回折格子の傾きを変える構成を採用した場合に必要となる複雑な装置構成(例えば、平面回折格子の前後で光を平行光にするためのコリメート光学系等)は不要である。
【0019】
凹面回折格子13は、基板の上面に形成された凹曲面に薄膜状の樹脂層が形成され、この樹脂層に回折格子が形成された構成としてもよい。この場合には、反射率を向上させるために、樹脂層に形成された回折格子の表面に、Al、Ag、Au、Pt等の金属材料を用いた反射部材が形成されることが好ましい。
【0020】
可動光反射部14は、凹面回折格子13側に反射面を有し、反射面の傾きが可変である反射手段の一例である。可動光反射部14は、凹面回折格子13による波長分散光を、反射面により光出射部15に向けて反射する。
【0021】
可動光反射部14は揺動軸14Aを有している。可動光反射部14は、揺動軸14A回りに揺動することにより、波長分散光を反射する反射面の傾きを変化させる。波長分散光は、反射面の傾きに応じて走査される。
【0022】
可動光反射部14は、例えば、半導体基板に半導体プロセス、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセス等によって薄型且つ小型に形成可能である。また、半導体基板に可動光反射部14を形成することにより、圧電駆動、静電駆動、電磁駆動等の駆動素子部を半導体基板上にモノリシックに形成できる。これにより、分光器1は、モータ等の外部駆動装置を用いなくても可動光反射部14を駆動させることができるため、さらなる小型化が可能となる。但し、可動光反射部14が形成される基板は半導体に限定されるものではなく、ガラス、金属、樹脂等であってもよい。
【0023】
光出射部15は、可動光反射部14によって反射された波長分散光に含まれる異なる波長の光のうち一部の光を、光通過部15aを通して外部に出射させる光出射手段の一例である。波長分散光に含まれる異なる波長の光うち一部の光は、光通過部15aを通って外部に出射する。光出射部15における光通過部15a以外の領域は、波長分散光を通過させない非光通過部15bを構成している。
【0024】
光通過部15aは、例えばピンホール形状、スリット形状等を有し、波長分散光に含まれる異なる波長の光のうち一部の光の出射位置を決定したり、波長分解能を向上させたりするために設けられている。
【0025】
波長分散光に含まれる異なる波長の光は、それぞれ可動光反射部14の反射面上の反射ライン14L上の異なる位置において反射され、光出射部15上の出射ライン15L上の異なる位置に入射する。
【0026】
可動光反射部14の反射面が揺動軸14A回りに傾きを変化させることにより、波長分散光に含まれる異なる波長の光それぞれの出射ライン15L上における入射位置が変化する。
【0027】
波長分散光に含まれる異なる波長の光のうち、光通過部15aの位置に入射する光は、光通過部15aを通って出射する。光出射部15は、波長分散光に含まれる波長であって、可動光反射部14の揺動角により決定される波長の光を、光通過部15aを通して出射させることができる。
【0028】
なお、光入射部11及び光出射部15は、基板上に形成されたものであってもよい。この場合、基板の材料には、例えば、半導体、ガラス、金属、樹脂等を適用できるが、これらに限定されるものではない。但し、基板の材料として半導体を用いると、半導体プロセス、MEMSプロセス等を用いて高精度且つ廉価に光入射部11及び光出射部15を形成できるため好ましい。
【0029】
分光器1は、光出射部15の光通過部15aを通って出射された出射光を検出する光検出手段を有してもよい。光検出手段には、例えば、フォトダイオードを使用できる。近赤外領域の光を分光する場合には、光検出手段としてInGaAsフォトダイオードを使用することが好ましい。
【0030】
本開示に係る分光器は、光源から被検物を経由して光入射手段に至る光路中に配置される1又は複数の照明補助手段を有する。照明補助手段は、1以上の任意の個数とすることができる。第1実施形態に係る分光器1は、一例として、光源10から被検物500を経由して光入射部11に至る光路中に配置される照明補助手段18及び19を有する。
【0031】
なお、本開示において、『光源から被検物を経由して光入射手段に至る光路中』とは、光源から出射されて様々な方向に進む光のうち、いずれかを入射可能な位置を指す。光源から出射された光が直接入射可能な位置であってもよいし、被検物を経由した光が入射可能な位置であってもよい。
【0032】
分光器1において、上記各構成部は、
図1に示すように所定の位置に配置され、さらに所定の姿勢を維持できるように、筐体に対して固定されている。筐体は、例えば、光源10から出射する光を外部の被検物500に導き、被検物500からの光を内部に導く測定窓を有している。測定窓は、光源10から出射する光及び被検物500からの光に対する透過率の高い材料から構成することができる。分光器1は、例えば、筐体内に配置され、測定窓のみから光の入射及び出射が可能な構成とされている。
【0033】
以下、照明補助手段18及び19について詳しく説明する。
【0034】
図2は、第1実施形態に係る分光器における照明補助手段18の配置例を示す斜視図である。
図3は、
図2を光源から出射する光束の光軸上の点から視た図である。
【0035】
図2に斜線で示すAは、光源10から出射する光束の光軸OAと光通過部11aの中心11oとを含む平面(以降、平面Aと称する)を示している。なお、
図3において、光軸OA及び平面Aは、紙面と直交する方向に延びている。また、光軸OAは、例えば光源10がハロゲンランプであれば、ハロゲンランプの中心軸と一致する。
【0036】
図2及び
図3に示すように、照明補助手段18は、光源10の周囲に配置された凹面ミラーとすることができる。ここで、光源10の周囲とは、平面Aに垂直な方向から視て光源10と重なる部分を有する位置を指す。
【0037】
照明補助手段18は、例えば、平面Aに対して面対称な凹面ミラーとすることができる。つまり、凹面ミラーの凹面部18Aは、平面Aに対して面対称である。凹面部18Aは、光源10を挟んで対向する部分を有することが好ましい。凹面ミラーは、1つの部品であってもよいし、2つ以上の部品であってもよい。例えば凹面ミラーが2つの部品からなる場合、各凹面ミラーは、平面Aに対して面対称な、互いに独立した2つの凹面部18Aを含んでもよい。
【0038】
図4は、第1実施形態に係る分光器を例示する側面図である。
図4では、光源10と被検物500との間に備わる測定窓1Wを示している。測定窓1Wを半径rの円形とし、測定窓1Wに対して入射角θで斜めに入射する光Lが、測定窓1W上で円形の面分布をなすようにするためには、測定窓1Wの入射直前の照明光の空間分布は、平面A(
図4では紙面に平行な方向)と直交する軸の半径がr、平面A内にある軸の半径がr・cosθの楕円形状とすることが望ましい。これを実現するため、2つの凹面部18Aの形状は、トロイダル形状等の面対称な凹面であることが望ましい。
【0039】
図2及び
図3に例示する位置に照明補助手段18が配置されることにより、光源10からの直接光以外の出射光を、広く間接光として活用でき、均質な照明分布を得ることができる。なお、照明補助手段18を2つの凹面ミラーに分けた場合は、1つの凹面ミラーにする場合よりも、分光器1の小型軽量化が可能となる。照明補助手段18では、光源10からの光出射方向がより広範な場合でも、光源10からの光を好適に集光させることが可能である。照明補助手段18が平面Aに対して面対称な凹面ミラーであれば、この効果が顕著となる。
【0040】
照明補助手段19は、被検物500から光入射部11に至る光束を挟んで光源10とは逆側に配置された凹面ミラーである。照明補助手段19は、平面Aに対して面対称であることが好ましい。照明補助手段19は、平面Aに対して面対称な自由曲面形状の凹面ミラーであることがより好ましい。面対称な自由曲面形状は、例えば式(1)に示すXY多項式で記述することができる。平面Aに直交する方向をX軸方向とすると、Xの次数は偶数である。
【数1】
数1において、kはコーニック定数、cは曲率、cjは単項式X
mY
nの係数(j=[(m+n)
2+m+3n]/2+1)、r=√x
2+y
2、である。
【0041】
図5は、照明補助手段19の一例を示す斜視図である。
図5に示す照明補助手段19は、式(1)に示すXY多項式において、m=2、n=1と2の係数に0以外の実数を指定した自由曲面形状を有する。
【0042】
照明補助手段19は、光源10とは逆方向から被検物500を照明するので、被検物500への光入射方向の偏りを低減できる。その結果、被検物500の表面が滑らかでなかったり、傾いた姿勢で配置されていたりしても、安定した検出光強度を得ることが可能となる。照明補助手段19が平面Aに対して面対称な自由曲面形状の凹面ミラーであれば、この効果が顕著となる。
【0043】
図6は、第1実施形態に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す斜視図である。
図7は、比較例1に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す斜視図である。
図7に示す比較例1に係る分光器1Xは、照明補助手段18及び19を有していない点が、分光器1と相違する。
【0044】
図6に示す分光器1では、照明補助手段18及び19を有することにより、
図7に示す分光器1Xに対して、光線の密度で図示される通り、被検物500に多方向から照明光を入射させることが可能となる。シミュレーションの結果、
図6に示す分光器1では、
図7に示す分光器1Xに対して、光利用効率を3.2倍に向上できることがわかった。これは、
図6に示す分光器1では、光源10の光エネルギーを31.3%まで低減させても、実質的に
図7に示す分光器1Xと同じ検出光強度が得られることを示しており、光源10の低消費電力化に大きく寄与する。
【0045】
このように、分光器1では、光源10から、被検物500に直接届かない方向に出射する光を、照明補助手段18及び19で反射させ、被検物500に導いている。これにより、従来は被検物500の照明に寄与しなかった光を有効に活用することが可能となる。すなわち、分光器1では、従来使われることのなかった光を有効に活用できるため、光利用効率が飛躍的に向上する。
【0046】
また、従来の直接光だけの照明では被検物500の表面凹凸に起因する測定値の変動が生じる場合があったが、分光器1では様々な方向から被検物500を照明するため、被検物500の表面凹凸に起因する測定値の変動の低減が可能となる。
【0047】
また、光源10の光利用効率を向上させることにより光源10の低消費電力化を実現できるため、分光器1を携帯して素材分別回収現場等で用いることが可能となる。分光器1は、例えば、蓄電池を用いてワイヤレスで使用することも可能である。
【0048】
また、分光器1では、従来、分光器1を収容する筐体の内部に散乱していた光を有効光に変換できるため、迷光を削減でき、分光性能を向上させることができる。
【0049】
さらに、被検物500を照明する光のパワーを均等化することができるため、分光器1を構成する各部品の位置や姿勢が変動した場合でも、光出射部15に至る光の強度や波長がずれにくい。そのため、複数の分光器1を作製した場合に、分光器1の個体差によらず安定した分光検出が可能となる。例えば、分光器1を組付ける時の部品バラつきによる特性変動が抑えられ、歩留まりが向上する。
【0050】
〈第1実施形態の変形例〉
本開示に係る分光器は、照明補助手段18及び19のいずれか一方のみを有する構成であってもよい。この場合も、分光器1に準ずる効果を奏する。
【0051】
図8は、第1実施形態の変形例1に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す斜視図である。
図8に示す分光器1Aは、照明補助手段19を有していない点が、分光器1と相違する。
【0052】
図8に示すように、分光器1Aでは、照明補助手段18を設けたことにより、光源10からの直接光以外の出射光を、広く間接光として活用でき、均質な照明分布を得ることができる。シミュレーションの結果、
図8に示す分光器1Aでは、
図7に示す分光器1Xに対して、光利用効率を2.2倍に向上できることがわかった。よって、分光器1Aでは、分光器1Xに対して、光源10の光利用効率の向上や、被検物500の表面凹凸に起因する測定値の変動の低減を実現できる。
【0053】
図9は、第1実施形態の変形例2に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す斜視図である。
図9に示す分光器1Bは、照明補助手段18を有していない点が、分光器1と相違する。
【0054】
図9に示すように、分光器1Bでは、照明補助手段19が被検物500から光入射部11に至る光束Bを挟んで光源10とは逆側に配置されているため、被検物500への光入射方向の偏りを低減できる。シミュレーションの結果、
図9に示す分光器1Bでは、
図7に示す分光器1Xに対して、光利用効率を2.0倍に向上できることがわかった。よって、分光器1Bでは、分光器1Xに対して、光源10の光利用効率の向上や、被検物500の表面凹凸に起因する測定値の変動の低減を実現できる。
【0055】
図10は、第1実施形態の変形例3に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す斜視図である。
図10に示す分光器1Cは、照明補助手段18及び19の代わりに照明補助手段21を有している点が、分光器1と相違する。照明補助手段21は、光源10と被検物500の間に配置される凸レンズである。照明補助手段21は、例えば、光源10側の面が平面、被検物500側の面が球面の平凸レンズであってもよい。
【0056】
光源10と被検物500の間に照明補助手段21として凸レンズを配置することにより、従来の光路上のスペースに照明補助手段を配置できるため、分光器1Cの大型化や複雑化を招くことなく、光利用効率を改善できる。シミュレーションの結果、
図10に示す分光器1Cでは、
図7に示す分光器1Xに対して、光利用効率を2.9倍に向上できることがわかった。よって、分光器1Cでは、分光器1Xに対して、光源10の光利用効率の向上や、被検物500の表面凹凸に起因する測定値の変動の低減を実現できる。
【0057】
照明補助手段21は、少なくとも被検物500に近い部分が平面状にカットされていることが好ましい。このような形状により、分光器1Cの小型化が図れる。また、分光器1Cと被検物500をより近接させることができ、被検物500からの出射光をより多く分光器1Cに取り入れることができる。
【0058】
図10の例では、凸レンズにカット部Aとカット部Bが形成されている。このうちカット部Aは被検物500に近い部分をカットしている面である。カット部A及カット部Bの一方又は両方に、反射コーティングを設けてもよい。これにより、反射コーティングのない状態ではカット部を透過し照明光として寄与しない光成分を、照明光として機能させることが可能となる。照明補助手段21のレンズ中心を挟み、カット部A及びカット部Bの対向側をカットすると、より効果的である。
【0059】
図11は、比較例2に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す斜視図である。
図12は、比較例2に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す側面図である。
図11及び
図12に示す比較例2に係る分光器1Yは、照明補助手段18及び19を有していない点が、分光器1と相違する。また、分光器1Yにおいて、測定窓1Wは平板のガラスである。
【0060】
図13は、第1実施形態の変形例4に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す側面図である。
図13に示す分光器1Dは、照明補助手段18及び19の代わりに照明補助手段22を有している点が、分光器1と相違する。照明補助手段22は、光源10と被検物500の間及び被検物500と光入射部11の間に配置される測定窓を兼用した凸レンズである。照明補助手段22は、例えば、面22aの形状が球面の平凸レンズである。
【0061】
図12及び
図13より、測定窓が凸レンズである
図13の場合は、測定窓1Wが平板である
図12の場合と比べて光利用効率を1.4倍に向上できることがわかった。このように、照明補助手段22が測定窓を兼用することにより、分光器1Cの大型化や複雑化を招くことなく、光源10の光利用効率の向上や、被検物500の表面凹凸に起因する測定値の変動の低減を実現できる。なお、照明補助手段22において、凸面は被検物500側、光入射部11側のいずれであってもよく、いずれの場合も上記の効果が得られる。
【0062】
図14は、第1実施形態の変形例5に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す側面図である。
図14に示す分光器1Eは、照明補助手段18及び19の代わりに照明補助手段23を有している点が、分光器1と相違する。照明補助手段23は、光源10と被検物500の間及び被検物500と光入射部11の間に配置される凸レンズである。
【0063】
具体的には、照明補助手段23は、
図13に示す照明補助手段22の曲率半径をRとしたとき、平面Aの断面内(図中紙面と平行な方向)の曲率半径R、それと直交する断面の曲率半径を0.65Rとしたトーリック面23aを備えた凸レンズである。照明補助手段23は、被検物500と光入射部11の間に備わる測定窓を兼用している。
【0064】
シミュレーションの結果、
図14に示す分光器1Eでは、
図13に示す分光器1Dに対して、光利用効率を1.08倍に向上できることがわかった。さらに、凹面回折格子13上の検出光分布を均質化するために、照明補助手段23は、平面Aに対して対称な自由曲面形状であってもよい。
【0065】
図15は、照明補助手段の形状例を示す側面図である。
図15(a)は、照明補助手段24のレンズ中心を通り平面Aに直交する軸の軸上から視た図、すなわち、
図13と同じ方向から視た図である。また、
図15(b)は、照明補助手段24のレンズ中心を通り平面A内にある軸の軸上から視た図である。
【0066】
図15に示す照明補助手段24は、
図13に示す照明補助手段22(凸レンズ)において、面22aの反対側の面をシリンドリカル面としたレンズである。つまり、照明補助手段24は、面24aと、面24aの反対側の面となる面24bとを有する凸レンズである。そして、面24aは球面であり、面24bはシリンドリカル面である。
【0067】
このような形状により、検出光量を増加させながら、より作製しやすい形状のレンズを実現できる。照明補助手段24において、シリンドリカル面は、平面Aに対して面対称であることが好ましい。
【0068】
図16は、第1実施形態の変形例6に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す側面図である。
図16に示す分光器1Fは、照明補助手段18及び19の代わりに照明補助手段24を有している点が、分光器1と相違する。照明補助手段24は、
図15に示す形状のレンズであり、光源10と被検物500の間及び被検物500と光入射部11の間に配置される。照明補助手段24は、被検物500と光入射部11の間に備わる測定窓を兼用している。
【0069】
シミュレーションの結果、
図16に示す分光器1Fでは、
図13に示す分光器1Dに対して、光利用効率を1.07倍に向上できることがわかった。なお、照明補助手段24の面24bは、円弧の中心軸が平面A内にあるシリンドリカルレンズであるが、円弧の中心軸が平面Aと直交する方向のシリンドリカル面としても設計可能である。さらに、凹面回折格子13上の検出光分布を適正化するために、照明補助手段24は、平面Aに対して対称な非円弧としてもよい。
【0070】
図17は、第1実施形態の変形例7に係る分光器の光線追跡シミュレーションの結果を示す側面図である。
図17に示す分光器1Gは、照明補助手段25が追加された点が、分光器1と相違する。
図17において、第1実施形態及び各変形例で示したいずれか1以上の照明補助手段を設けてもよい。
【0071】
図18は、
図17の被検物側からZ方向に沿って照明補助手段25を視た図である。
図17及び
図18に示すように、照明補助手段25は、略中央に、光入射部11への光束の立体角を制限する開口部25xを備えている。照明補助手段25の被検物500側の面25aは、コーティング等により反射面とされている。コーティングには、例えば、Al、Ag、Au、Pt等の金属材料を用いることができる。
【0072】
反射面である照明補助手段25の面25aにより、光入射部11から外れる光線は再び被検物500に戻る。被検物500に戻った光は、被検物500で拡散反射され、その一部が光入射部11を通過するため、光の有効利用が可能となる。このように、照明補助手段25は、被検物500からの光に対して、光入射部11を通過する光以外の光の一部を反射し、再び被検物500に入射させる再入射手段として機能する。
【0073】
従来の分光器では、光入射部11を通過する検出光以外の光が迷光とならないよう、高光吸収材料を用いて吸収し遮光していた。分光器1Gでは、従来は遮光していた成分を再入射手段により再び光入射部11に入射させるため、光利用効率と照明均質性が向上する。
【0074】
なお、
図17及び
図18では、再入射手段である照明補助手段25は平板状であるが、照明補助手段25は被検物500側が凹面に湾曲していてもよい。また、光源10や各種照明補助手段からの照明光と検出光を遮らない範囲で、これらの周囲を囲む構成としてもよい。
【0075】
図19は、第1実施形態の変形例8に係る分光器を例示する斜視図である。
図19に示すように、再入射手段は、光入射部11の被検物500の側の面において、光通過部11aを除く部分に設けられた反射部材であってもよい。反射部材としては、例えば、Al、Ag、Au、Pt等の金属材料を用いることができる。このような構造により、従来構造から大きな変更を加えることなく、光利用効率向上と照明均質性向上が図れる。
【0076】
図19では、光入射部11は、光通過部11aと、光非反射部11c及び光反射部11dを備えた非光通過部11bとを有している。光非反射部11cは、光通過部11aの外周に接するように、光通過部11aの周囲に設けられている。光反射部11dは、光非反射部11cの外周を囲むように設けられている。
【0077】
光非反射部11cを設けることは必須ではない。しかし、光通過部11aの外周に接するように光反射部11dを設けると、光反射部11dのエッジから迷光となりうる反射光が光通過部11aの内部に侵入するおそれがある。そのため、光通過部11aに接するように光非反射部11cを設けることが好ましい。
【0078】
【0079】
また、本開示に係る分光器において、照明補助手段18,19,21,22,23,24,25は、いずれか2つ以上を組み合わせて用いることが可能である。これらの全てを組み合わせて用いてもよい。
【0080】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、第1実施形態に係る分光器1を有する分析システム300について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一の名称、符号については、同一もしくは同質の部材又は構成部を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0081】
<分析システム300の構成例>
図20は、第2実施形態に係る分析システムの全体構成を例示する模式図である。
図20に示すように、分析システム300は、携帯型装置200と、携帯端末310と、を有する。携帯型装置200は、分光器1と、プロセッサ306と、通信回路304と、を有する。携帯型装置200は、必要に応じ、電池等の他の構成要素を有してもよい。また、携帯型装置200は、分光器1に代えて、分光器1A、1B、1C、1D、1E、1F、又は1Gを有してもよい。
【0082】
分析システム300は、一つの携帯端末310に対して一つの分光器1を有する構成の他に、一つの携帯端末310に対して複数の分光器1を有する構成であってもよい。また、一つの携帯端末310に対して、分光器1A、1B、1C、1D、1E、1F、及び1Gのうち、いずれか2つ以上を有する構成であってもよい。
【0083】
プロセッサ306は、分光器1の光検出手段が出力する電気信号を入力し、光スペクトルの時間と光の強度を含む出力が関連付けられた情報を演算により取得する。通信回路304は、プロセッサ306による取得結果を携帯端末310へ出力する。
【0084】
携帯端末310は、携帯型装置200と情報の送受信が可能な携帯機器である。携帯端末310は、インターフェース314、プロセッサ316、及び通信回路317を有する。携帯端末310は、例えば、スマートフォン又はタブレット端末等である。携帯端末310は、カメラ機能を有していてもよい。
【0085】
プロセッサ316は、携帯型装置200の通信回路304から出力された光スペクトルの時間と光の強度を含む出力が関連付けられた情報Spを、通信回路317を用いて受信する。そして、プロセッサ316は、受信した情報Spと、分光器1が有する可動光反射部14の回動周波数や回転角度振幅等に基づいて、時間を光の波長に換算し、光の波長ごとの光の強度の関係で構成される分光スペクトル情報Sqを得る。またプロセッサ316は、得られた分光スペクトル情報Sqを用いて被検物500の組成判別結果等の分析結果を演算により取得する。
【0086】
プロセッサ316は、インターフェース314を介して分析結果をディスプレイ312に表示できる。
【0087】
このような分析システム300において、携帯型装置200は、例えばBluetooth(登録商標)等の無線シリアル通信を用いて、通信回路304を介してデータを携帯端末310に伝送する。携帯端末310は、携帯型装置200からデータを受信し、プロセッサ316によって処理及び分析する。そして、分析システム300は、この分析結果である、例えば光スペクトルの情報Sq及び組成判別結果等をディスプレイ312に表示させる。
【0088】
<分析システム300の動作例>
分析システム300において、携帯型装置200が樹脂判別装置である場合における、樹脂判別動作について説明する。
図21は、樹脂判別動作を例示するフローチャートである。
【0089】
まず、ステップS1において、分析システム300には、分類又は同定される樹脂を含む被検物500が提供される。
【0090】
続いて、ステップS2において、分析システム300は、メモリに一又は複数の赤外材料分類モデル(多変量分類モデル)を保存する。
【0091】
続いて、ステップS3において、分析システム300は、未加工の赤外スペクトルデータを収集するために、被検物500に対する分光分析を実行する。
【0092】
続いて、ステップS4において、分析システム300は、携帯端末310のプロセッサ316による未加工の赤外スペクトルデータの多変量処理を実行する。
【0093】
続いて、ステップS5において、分析システム300は、携帯端末310のプロセッサ316により、特定のタイプの樹脂ベース複合材料として(材料モデルに一致する)、試料の組成を同定する。
【0094】
続いて、ステップS6において、分析システム300は、被検物500をさらに処理する(例えば、さらなるリサイクルステップのために適切な場所に保存される)。分析システム300は、このようなステップS1からステップS6の各処理を、ステップS3において別の樹脂を含む被検物500に対して繰返すことができる。
【0095】
例えば、分析システム300は、分類モデルを用いて樹脂を含む被検物500の組成の同定を行い、特定の樹脂を含む試料が含みうる樹脂を決定する。例えば、分析システム300を用いて樹脂を判別することにより、樹脂を含む被検物500のリサイクルにおいて、材料処理に使用される炉の処理条件を最適化する等の工程の処理条件を最適化できる。
【0096】
また、
図21の動作における分光分析の実行前に既知の材料データを登録する処理を追加することも可能である。この処理により、被検物500の分析結果の精度を向上することが可能となる。このように、分析システム300は、高い信頼性によって樹脂を判別できる。
【0097】
また、分析システム300は、光利用効率が高く低消費電力である分光器1を有するため、携帯して素材分別回収現場等で好適に用いることができる。例えば、分析システム300は、現場で蓄電池による長時間の駆動が可能となる。また、分析システム300を用いることにより、使用時の物理的衝撃や温度変化に伴う部品の姿勢変化に対して、特性変動が抑えられ、安定した計測結果が得られる。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0099】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 被検物を照明する光源と、
前記被検物からの光を入射させる光入射手段と、
前記光入射手段によって入射された前記光を波長分散させる回折格子と、
反射面を有し、当該反射面の傾きが可変である反射手段と、
前記反射手段によって反射された前記光の一部を出射させる光出射手段と、
前記光源から前記被検物を経由して前記光入射手段に至る光路中に配置される1又は複数の照明補助手段と、を有する、分光器。
<2> 前記照明補助手段は、前記光源の周囲に配置された凹面ミラーを含む、前記<1>に記載の分光器。
<3> 前記光入射手段は、前記被検物からの光を通過させる光通過部を有し、
前記凹面ミラーは、前記光源から出射する光束の光軸と前記光通過部の中心とを含む平面に対して面対称である、前記<2>に記載の分光器。
<4> 前記凹面ミラーの凹面部は、前記光源を挟んで対向する部分を有する、前記<3>に記載の分光器。
<5> 前記凹面ミラーは、前記平面に対して面対称な、互いに独立した2つの凹面部を含む、前記<3>又は前記<4>に記載の分光器。
<6> 前記照明補助手段は、前記被検物から前記光入射手段に至る光束を挟んで前記光源とは逆側に配置された第2凹面ミラーを含む、前記<1>乃至前記<5>のいずれか一に記載の分光器。
<7> 前記光入射手段は、前記被検物からの光を通過させる光通過部を有し、
前記第2凹面ミラーは、前記光源から出射する光束の光軸と前記光通過部の中心とを含む平面に対して面対称である、前記<6>に記載の分光器。
<8> 前記第2凹面ミラーは、自由曲面形状である、前記<7>に記載の分光器。
<9> 前記照明補助手段は、前記光源と前記被検物の間に配置される凸レンズを含む、前記<1>乃至前記<8>のいずれか一に記載の分光器。
<10> 前記凸レンズは、少なくとも前記被検物に近い部分が平面状にカットされている、前記<9>に記載の分光器。
<11> 前記光源から出射する光を外部の前記被検物に導き、前記被検物からの光を内部に導く測定窓を有し、
前記照明補助手段は、前記測定窓を兼用した凸レンズを含む、前記<1>乃至前記<10>のいずれか一に記載の分光器。
<12> 前記光入射手段は、前記被検物からの光を通過させる光通過部を有し、
前記凸レンズは、凸面と、前記凸面の反対側の面となるシリンドリカル面と、を有し、
前記シリンドリカル面は、前記光源から出射する光束の光軸と前記光通過部の中心とを含む平面に対して面対称である、前記<11>に記載の分光器。
<13> 前記照明補助手段は、前記被検物からの光に対して、前記光入射手段を通過する光以外の光の一部を反射し、再び前記被検物に入射させる再入射手段を含む、前記<1>乃至前記<12>のいずれか一に記載の分光器。
<14> 前記光入射手段は、前記被検物からの光を通過させる光通過部を有し、
前記再入射手段は、前記光入射手段の前記被検物側の面において、前記光通過部以外の部分に設けられた反射部材である、前記<13>に記載の分光器。
<15> 前記<1>乃至前記<14>のいずれか一に記載の分光器を有する、携帯型装置。
<16> 樹脂判別装置である、前記<15>に記載の携帯型装置。
<17> 前記<15>又は前記<16>に記載の携帯型装置と、前記携帯型装置と情報の送受信が可能な携帯機器と、を有する、分析システム。
【符号の説明】
【0100】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G 分光器
1W 測定窓
10 光源
11 光入射部
11a 光通過部
11b 非光通過部
11c 光非反射部
11d 光反射部
11o 光通過部11aの中心
13 凹面回折格子
14 可動光反射部
14A 揺動軸
14L 反射ライン
15 光出射部
15a 光通過部
15b 非光通過部
15L 出射ライン
18,19,21,22,23,24,25 照明補助手段
18A 凹面部
24a,24b,25a 面
25x 開口部
200 携帯型装置
300 分析システム
304 通信回路
306 プロセッサ
310 携帯端末
312 ディスプレイ
314 インターフェース
316 プロセッサ
317 通信回路
500 被検物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】
【特許文献1】特開2018-119946号公報
【特許文献2】特開2017-091838号公報