(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129577
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理装置及びソフトウエア
(51)【国際特許分類】
H01L 21/302 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038885
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅田 泰生
(72)【発明者】
【氏名】戸田 聡
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 希
(72)【発明者】
【氏名】平出 圭介
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004AA05
5F004BA19
5F004BB19
5F004BB22
5F004BB24
5F004BB25
5F004BB29
5F004BC01
5F004BC03
5F004BC06
5F004CA02
5F004CA04
5F004DA00
5F004DA18
5F004DA20
5F004DA25
5F004DA29
5F004DB00
5F004DB01
5F004DB03
5F004EA28
5F004EA34
(57)【要約】
【課題】アンモニアガス及びアミンガスのうちの少なくとも一方を少なくとも含むエッチングガスを用いて基板にエッチング処理を行うにあたり、当該基板の面内の各部で均一性高い処理を行う。
【解決手段】本開示のエッチング方法は、第1エッチングガス、アンモニアガス及びアミンガスのうちの少なくとも一方を含む第2エッチングガスの各々を、ガス供給源からガス供給路に供給する工程と、
前記第1エッチングガス及び前記第2エッチングガスを、前記ガス供給路に設けられる貯留部に貯留して、当該貯留部の内部を昇圧させる貯留工程と、
前記ガス供給路において前記貯留部の下流側に設けられるバルブを開いて、前記貯留部に貯留された前記第1エッチングガス及び前記第2エッチングガスを、内部に基板が格納された処理容器に供給し、前記基板に形成された第1膜をエッチングするガス供給工程と、
を実施する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1エッチングガス、アンモニアガス及びアミンガスのうちの少なくとも一方を含む第2エッチングガスの各々を、ガス供給源からガス供給路に供給する工程と、
前記第1エッチングガス及び前記第2エッチングガスを、前記ガス供給路に設けられる貯留部に貯留して、当該貯留部の内部を昇圧させる貯留工程と、
前記ガス供給路において前記貯留部の下流側に設けられるバルブを開いて、前記貯留部に貯留された前記第1エッチングガス及び前記第2エッチングガスを、内部に基板が格納された処理容器に供給し、前記基板に形成された第1膜をエッチングするガス供給工程と、
を含むエッチング方法。
【請求項2】
前記第1エッチングガスはハロゲン含有ガスであり、
前記第1膜はシリコン含有膜である請求項1記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記第1膜を繰り返しエッチングするために、前記バルブの開閉を繰り返して前記ガス供給工程を繰り返し行う開閉工程を含む請求項2記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記貯留工程は、
前記貯留部内を第1圧力から前記第1圧力よりも高い第2圧力とする初期貯留工程と、
前記ガス供給工程を行うことで前記第2圧力よりも低く、且つ前記第1圧力よりも高い第3圧力とされた前記貯留部内を再度当該第2圧力とする再貯留工程と、を含み、
前記ガス供給工程と、前記再貯留工程とからなるサイクルが繰り返し行われる請求項3記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記バルブの開放に応じたタイミングで、前記処理容器内の圧力を一の圧力から低下させて他の圧力に変更する工程と、
前記バルブを開いてから次に当該バルブを開くまでに前記処理容器内の圧力を前記他の圧力から前記一の圧力へ上昇させる工程と、
を備える請求項3記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記貯留部は、第1貯留部及び第2貯留部を含み、
前記バルブは、第1バルブ及び第2バルブを含み、
前記貯留工程は、前記第1エッチングガス、前記第2のエッチングガスを第1貯留部、第2貯留部に夫々貯留する工程を含み、
前記ガス供給工程は、前記第1貯留部の下流側に設けられる前記第1バルブ、前記第2貯留部の下流側に設けられる前記第2バルブを夫々開く工程を含む請求項2記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記ガス供給工程は、前記第1バルブ及び前記第2バルブを同時に開く工程を含む請求項6記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記基板には前記第1膜とは異なる種類の第2膜が形成され、
前記第1膜及び前記第2膜のうち第1膜が選択的にエッチングされるように、前記バルブの閉鎖と、前記処理容器内の排気と、を行う請求項2記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記第1膜は酸化シリコン膜であり、前記第2膜は窒化シリコン膜である請求項8記載のエッチング方法。
【請求項10】
駆動機構により、前記処理容器内で前記基板を載置するステージを昇降させて、前記ステージと前記処理容器の天井との距離を変更する工程を備え、
前記ガス供給工程は、
前記基板の処理条件に応じて設定された高さに位置した前記ステージ上の当該基板に、前記第1エッチングガス及び前記第2エッチングガスを供給する工程を含む請求項1記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記貯留部内の圧力を圧力センサにより検出する工程と、
前記圧力に基づいて異常の有無の判定を行う工程と、
を含む請求項3記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記圧力の検出は、開閉が繰り返される前記バルブについて、
開かれる期間毎、且つ閉じられる期間毎に行われる請求項11記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記処理容器内で前記基板を載置するステージが、当該処理容器内に複数設けられ、
前記ガス供給工程は、前記各ステージに載置された前記基板に一括して前記第1エッチングガス及び前記第2エッチングガスを供給する工程を含む請求項1記載のエッチング方法。
【請求項14】
第1エッチングガス、アンモニア及びアミンガスのうちの少なくとも一方を含む第2エッチングガスの各々を供給するガス供給源と、
前記ガス供給源から前記第1エッチングガス及び前記第2エッチングガスが供給されるガス流路と、
第1膜が形成された基板が格納され、前記ガス流路の下流端が接続される処理容器と、
前記ガス流路に設けられる貯留部と、
前記ガス流路において前記貯留部の下流側に設けられ、前記第1エッチングガス及び前記第2エッチングガスが前記貯留部に貯留されて当該貯留部の内部が昇圧するように閉じられた後に、当該第1エッチングガス及び当該第2エッチングガスを前記処理容器内に供給して前記第1膜をエッチングするために開かれるバルブと、
を備えるエッチング装置。
【請求項15】
エッチング装置に用いられるソフトウエアであって、
第1エッチングガス、アンモニアガス及びアミンガスのうちの少なくとも一方を含む第2エッチングガスの各々を、ガス供給源からガス供給路に供給するステップと、
前記第1エッチングガス及び前記第2エッチングガスを、前記ガス供給路に設けられる貯留部に貯留して、当該貯留部の内部を昇圧させる貯留ステップと、
前記ガス供給路において前記貯留部の下流側に設けられるバルブを開いて、前記貯留部に貯留された前記第1エッチングガス及び前記第2エッチングガスを、内部に基板が格納された処理容器に供給し、前記基板に形成された第1膜をエッチングするガス供給ステップと、
を含むソフトウエア。
【請求項16】
前記貯留部は、第1貯留部及び第2貯留部を含み、
前記バルブは、第1バルブ及び第2バルブを含み、
前記貯留ステップは、前記第1エッチングガス、前記第2のエッチングガスを第1貯留部、第2貯留部に夫々貯留するステップを含み、
前記ガス供給工程は、前記第1貯留部の下流側に設けられる前記第1バルブ、前記第2貯留部の下流側に設けられる前記第2バルブを同時に開くステップを含み、
前記第1貯留部内の仮想の圧力を算出するために設定された第1パラメータと、前記第2貯留部内の仮想の圧力を算出するために設定された第2パラメータと、に基づいて、
前記第1貯留部内と前記第2貯留部内との仮想の圧力の差の異常を検出するステップを実行する請求項15記載のソフトウエア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、基板処理装置及びソフトウエアに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)などの基板を処理に対して、タンクに一旦貯留したガスを処理容器内に放出して処理を行う場合が有る。特許文献1では、フラットパネルディスプレイ(FPD)製造用の基板に対して、そのようにタンクに貯留されたHe、HCl、SF6の各ガスを放出してエッチング処理を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、アンモニア及びアミンガスのうちの少なくとも一方を少なくとも含むエッチングガスを用いて基板にエッチング処理を行うにあたり、当該基板の面内の各部で均一性高い処理を行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のエッチング方法は、第1エッチングガス、アンモニアガス及びアミンガスのうちの少なくとも一方を含む第2エッチングガスの各々を、ガス供給源からガス供給路に供給する工程と、
前記第1エッチングガス及び前記第2エッチングガスを、前記ガス供給路に設けられる貯留部に貯留して、当該貯留部の内部を昇圧させる貯留工程と、
前記ガス供給路において前記貯留部の下流側に設けられるバルブを開いて、前記貯留部に貯留された前記第1エッチングガス及び前記第2エッチングガスを、内部に基板が格納された処理容器に供給し、前記基板に形成された第1膜をエッチングするガス供給工程と、
を含むエッチング方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、アンモニア及びアミンガスのうちの少なくとも一方を少なくとも含むエッチングガスを用いて基板にエッチング処理を行うにあたり、当該基板の面内の各部で均一性高い処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態であるエッチング装置の縦断正面図である。
【
図3】前記エッチング装置の内部を示す概略斜視図斜視図である。
【
図4】前記エッチング装置により行われる処理のタイミングチャートである。
【
図5】前記エッチング装置の動作を示す作用図である。
【
図6】前記エッチング装置の動作を示す作用図である。
【
図7】エッチング処理されるウエハの表面の縦断面を示す模式図である。
【
図8】エッチング処理されるウエハの表面の縦断面を示す模式図である。
【
図9】エッチング処理されるウエハの表面の縦断面を示す模式図である。
【
図10】エッチング処理されるウエハの表面の縦断面を示す模式図である。
【
図11】エッチング処理されるウエハの表面の縦断面を示す模式図である。
【
図12】エッチング処理されるウエハの表面の縦断面を示す模式図である。
【
図13】前記エッチング装置により行われる他の処理のタイミングチャートである。
【
図14】前記エッチング装置の動作を示す作用図である。
【
図15】前記エッチング装置により行われる他の処理のタイミングチャートである。
【
図16】評価試験での処理を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示のエッチング装置の一実施形態であると共に、本開示に係るエッチング方法を実施するエッチング装置1について、
図1、
図2に縦断正面図、縦断側面図を夫々示している。エッチング装置1において行われる処理の概要を先に説明する。このエッチング装置1は、エッチングガスとしてハロゲン含有ガス及び塩基性ガスを用いることで、真空雰囲気である所望の圧力下で、ウエハWの表面のエッチングを行う。なお、このエッチングを行うにあたり、ウエハWの周囲にプラズマは形成されない。
【0009】
エッチング装置1に搬送される上記のウエハWには、第1膜であるSiOx(酸化シリコン)膜101の他に第2膜であるSiN(窒化シリコン膜)102が形成されており、各々ウエハWの表面に露出した状態となっている。SiOx膜101及びSiN膜102のいずれも、エッチングガスに対して被エッチング性を有する。つまり、第1エッチングガスであるハロゲン含有ガスと、第2エッチングガスである塩基性ガスとが揃って供給された状態になると、SiOx膜101及びSiN膜102はいずれもエッチングされる。
【0010】
エッチング装置1はSiOx膜101及びSiN膜102のうち、SiOx膜101を選択的に、且つウエハWの面内において均一性高くエッチングできるように構成されている。詳しく述べると、エッチング装置1ではSiOx膜101とSiN膜102との間におけるエッチングガス(ハロゲン含有ガス及び塩基性ガス)に対するインキュベーションタイムが異なることを利用して、上記の選択的エッチングが行われる。インキュベーションタイムとは、ガスが基板上の膜に吸着してから当該膜に対して反応が開始されるまでの時間である。
【0011】
上記のハロゲン含有ガスとしてはフッ素含有ガス、より具体的にはフッ化水素(HF)ガスが用いられ、塩基性ガスとしてはNH3(アンモニア)ガスまたはアミンガスが用いられる。アミンガスについて、さらに具体的にはトリメチルアミン(Tri Methyl Amine:TMA)ガスが用いられる。これらのエッチングガスを用いた場合のインキュベーションタイムについては、SiOx膜101及びSiN膜102のうち、SiOx膜101の方が短い。つまりハロゲン含有ガス、塩基性ガスの両方がウエハWに供給された状態となった直後は、SiOx膜101がエッチングされる一方で、SiN膜102はエッチングされない。
【0012】
エッチング装置1については、処理容器11内にウエハWを格納して排気された状態とする一方で、上記したエッチングガスをタンクに貯留して加圧された状態とする。そして、このエッチングガスを、タンクから処理容器11内に放出するように構成されている。それにより、当該エッチングガスを速やかに処理容器11内に拡散させる。そして、エッチングガスの供給を開始してから比較的短い時間で、この供給を停止する。このエッチングガス供給の停止と、処理容器11内の排気とによって、エッチングガスを処理容器11から除去し、SiN膜102がエッチングされることを抑制する。
【0013】
このような処理容器11内へのエッチングガスの給断は、タンクの下流側に設けたバルブにより行う。このバルブの開閉を比較的高い速度で、繰り返し行うことにより、SiOx膜101について選択的にエッチングし、且つエッチング量を所望のものとする。なお、上記したようにタンク内から放出されるエッチングガスは、処理容器11内を速やかに拡散することで、ウエハWの面内各部においてエッチングガスが吸着するタイミングのばらつきが抑えられるので、ウエハWの面内で均一性高くエッチングがなされることになる。
【0014】
上記のタンクとして、ハロゲン含有ガス用のタンク、塩基性ガス用のタンクが夫々設けられる。つまりHFガスと、NH3ガスあるいはTMAガスと、は別々のタンク(タンク81、82)に貯留される。それにより、ハロゲン含有ガスと塩基性ガスとが、タンクに貯留されている間に互いに反応してしまうことが防止されるようにしている。そのようにガス種毎にタンクが設けられることに合わせて、上記のバルブはバルブV1、V2として、タンク81の下流側、タンク82の下流側に夫々設けられている。
【0015】
本例ではバルブV1、V2間における開閉のタイミングが揃えられる。即ち、HFガスが処理容器11内に供給される期間と、NH3ガスあるいはTMAガスが処理容器11内に供給される期間とは一致する。また、処理容器11には2つのウエハWが格納され、処理容器11内にて左右に並んで設けられるステージ5に各々載置される。上記したエッチング処理は、この2つのウエハWに対して互いに同様に且つ一括して行われる。それにより、装置のスループットの向上が図られている。
【0016】
続いて、上記したエッチング装置1の概略構成について、当該装置の内部を示す
図3の斜視図も参照して説明する。上記したエッチング装置1を構成する処理容器11は、蓋12と、容器本体13と、により構成されている。容器本体13は、処理容器11の側壁及び底壁を形成する。この容器本体13としては、縦断面視で各々凹部形状をなす外壁部14と、内壁部15と、を備えており、内壁部15は外壁部14内に位置することによって、処理容器11の側壁及び底壁は二重壁として形成されている。
【0017】
内壁部15に囲まれて処理空間形成部材41が設けられる。処理空間形成部材41は、容器本体13に囲まれる領域を左右に区画することで、ウエハWを各々処理する処理空間4を2つ形成するための部材である。ステージ5に対するウエハWの受け渡しが妨げられないように、処理空間形成部材41は昇降自在である。なお2つの処理空間4について、以降は処理空間4A、4Bとして互いに区別して示す場合が有る。
【0018】
処理容器11の蓋12の下面には、左右に離れて2つのシャワープレート3が設けられており、処理空間形成部材41と共に処理空間4A、4Bを形成すると共に、当該処理空間4A、4Bに夫々ガスを供給する。また、処理空間4A、4Bには、ウエハWを載置するステージ5が各々設けられる。各ステージ5は昇降可能であり、所望の高さにウエハWが配置されて処理がなされる。また、処理空間4A、4Bは、容器本体13の底部の左右の中央に開口する排気口28により、排気される。
【0019】
続いて、エッチング装置1の各部の構成を詳しく説明する。以降の説明では、シャワープレート3について、処理空間4Aを形成するもの、処理空間4Bを形成するものを夫々3A、3Bとして互いに区別して示す場合が有る。またステージ5について、処理空間4Aに設けられるもの、処理空間4Bに設けられるものを夫々5A、5Bとして互いに区別して示す場合が有る。ところで、処理空間4AでのウエハWの処理に用いられる構成要素と、処理空間4BでのウエハWの処理に用いられる構成部材のうち、互いに同じものについては同じ数字の符号を付して示す。また左右方向、前後方向について、図中では互いに直交するX方向、Y方向として夫々示している。
【0020】
上記した容器本体13をなす内壁部15の上端部は外方に広がることで、フランジ16を形成し、当該フランジ16が外壁部14の上端部に下方から支持される。なお、内壁部15は、外壁部14に対して着脱が自在である。外壁部14と内壁部15との間には隙間17が形成されている。後述するように内壁部15、外壁部14の各所には、処理容器11内でステージ5、処理空間形成部材41を昇降させるために開口する孔や排気用の孔が形成されている。これらの各孔の孔縁に沿ってシール部材であるOリング37が設けられており、外壁部14と内壁部15とに密着している。それにより、隙間17がこれらの孔とは連通せず、密閉空間として構成されている。
【0021】
処理容器11の外側から接続される図示しないガス供給管及び排気管を介して、隙間17に対して不活性ガスの供給と排気とがなされ、ウエハWの処理中、隙間17は比較的低い圧力に保たれる。それによって、処理空間4から処理容器11の外部へのガスの漏洩が防止されると共に、処理空間4における処理容器11の外部に対する断熱効果が得られる。
【0022】
また、容器本体13をなす外壁部14、内壁部15における前方側の壁部には、貫通孔18、19が夫々形成されており、これらの貫通孔18、19は前後方向(Y方向)において互いに重なる(
図2参照)。貫通孔18、19は左右方向(X方向)に長尺なスリット形状であり、左右に長尺な筒状部材21が貫通孔18、19を形成する周面に密着すると共に、貫通孔18から貫通孔19に跨がるように前後に伸びて設けられる。
【0023】
筒状部材21に囲まれる領域は、ウエハWの搬送口22として構成されており、当該搬送口22の左側領域、右側領域をウエハWが夫々通過して、ステージ5A、5Bに受け渡される。搬送口22は、外壁部14に対して前方側に設けられるゲートバルブ23により開閉される。図示しない搬送機構によって、搬送口22を介して処理容器11の内外におけるウエハWの搬送が行われる。
【0024】
また内壁部15のフランジ16上には、当該フランジ16に沿って形成された図示しないヒータを介して、蓋12の周縁部が支持されている。蓋12の下面にはシャワープレート3(3A、3B)が互いに左右に離れて設けられている。シャワープレート3は平面視で円形に構成され、ガスを水平方向に拡散させる拡散空間32と、拡散空間32に接続されるガス吐出口33と、を各々備えている。ガス吐出口33はシャワープレート3の下面に分散して多数形成され、ステージ5の上面に向けて各々開口する。
【0025】
処理容器11の蓋12の上部側には流路形成部34が設けられている。この流路形成部34には後述する配管系6が接続され、当該配管系6から供給されるガスが当該流路形成部34に形成された流路を介してシャワープレート3A、3Bの拡散空間32に供給される。配管系6において上記したエッチングガスを供給するラインは、シャワープレート3A、3Bに共用される。流路形成部34における流路は、当該ラインから供給されるエッチングガスをシャワープレート3A、3Bの各拡散空間32へと分配するように構成されている。
【0026】
容器本体13をなす内壁部15の底部に、左右に間隔を空けて2つの貫通孔24が形成されている。外壁部14の底部において、この貫通孔24に重なる部位は、底部形成部10として構成されている。各底部形成部10上に、起立した円筒体である下部内壁25が設けられている。下部内壁25の胴部は貫通孔24内に位置し、下部内壁25の上端部は、貫通孔24よりも上方の位置で外方へ広がることでフランジ26を形成する。また、下部内壁25の下方側の側壁には貫通孔である排気路27が形成されており、下部内壁25の内外が当該排気路27を介して連通する。
【0027】
また外壁部14の底部において、左右方向における先述の貫通孔24が設けられる位置の間に、排気口28が開口している。内壁部15の底部で排気口28の上方には、貫通孔29が形成されており、当該貫通孔29を介して排気口28は内壁部15に囲まれる領域を排気可能である。外壁部14の底部には下方から、排気口28に開口するように排気管20の一端が接続されている。そして排気管20の他端は、バルブV10を介して排気機構2Aに接続されている。排気機構2Aは、例えばターボ分子ポンプ、ドライポンプなどにより構成されており、バルブV10の開度が調整されることで処理容器11内の圧力の調整がなされる。
【0028】
上記した処理空間形成部材41について詳しく述べる。処理空間形成部材41は左右に伸びるように形成され、鉛直方向に形成された貫通孔42が2つ、左右に離れて設けられている。各貫通孔42は処理空間4を形成するための孔であり、平面視で円形である。処理空間形成部材41の上縁部は外方へ広がり、上側フランジ43を形成する。また、各貫通孔42の上側の孔縁部には、貫通孔42の周に沿ったOリング38が設けられている。
【0029】
そして、各貫通孔42の下端部は、当該貫通孔42の中心軸へと向かうように突出することで下側フランジ44を形成しており、下側フランジ44上には貫通孔42の周に沿ったOリング39が設けられる。下側フランジ44は、下部内壁25のフランジ26の下方に位置する。なお、貫通孔42を形成する周面のうち、下側フランジ44の上方側における部位を、内周面45として示している。
【0030】
処理空間形成部材41の左右の中央下部は、支柱46に支持されており、支柱46は処理容器11の底部を貫通して、処理容器11の外部に設けられる昇降機構47に接続されている。なお図中48は、処理容器11の外側において支柱46に設けられるフランジである。図中49は鉛直方向に伸縮可能なベローズであり、支柱46を囲んでフランジ48と処理容器11の底部とに接続されることで、処理容器11内の気密性を担保する。なお、支柱46及び昇降機構47が設けられる位置は、排気口28が形成される位置に対して後方側にずれている。当該昇降機構47により、処理空間形成部材41は上方側の処理位置と下方側の待機位置との間を昇降する。
【0031】
図1、
図2は、処理空間形成部材41が処理位置、待機位置に夫々位置する状態を示している。処理位置において、上側フランジ43上のOリング38はシャワープレート3の周縁に、下側フランジ44上のOリング39は下部内壁25のフランジ26に夫々密着する。それにより、シャワープレート3、処理空間形成部材41、下部内壁25、外壁部14の底部によって囲まれる空間が、処理容器11内の左右に形成される。当該空間にはステージ5が設けられるが、当該空間におけるステージ5の上方の領域が処理空間4である。各処理空間4は、上記した下部内壁24の排気路27を介して、排気口28より排気される。また
図2に示すように、待機位置における処理空間形成部材41の上端は搬送口22の下方に位置することで、処理容器11内に対するウエハWの搬送が可能となっている。
【0032】
なお上側フランジ43の左方側、右方側から下方に伸びるシャフト40が設けられ、内壁部15、外壁部14を貫通する。シャフト40は、処理空間形成部材41の昇降時の揺らぎを防ぐ役割を有する。シャフト40についても支柱46と同様に、フランジ48を備えると共に、当該フランジ48及び処理容器11の底部に接続されるベローズ49に囲まれた構成とされることで、処理容器11内の気密性が担保されている。
【0033】
ところで上記したように処理容器11内における排気経路が形成されるにあたり、処理容器11でエッチングガスに接する部位、エッチングガスに接するおそれが有る部位には、当該エッチングガスに対する腐食防止用の保護膜が形成されている。従って、この保護膜は、処理容器11を構成する母材とは異なる材質の膜である。具体的には、例えば内壁部15において処理空間4に向う側周面や底面、外壁部14をなす底部形成部10の上面に当該保護膜が形成されており、内壁部15、底部形成部10は処理容器11を構成する他の部位に対して着脱可能であり、装置のメンテナンスを行うことが容易である。処理容器11の母材は例えばアルミニウムであり、保護膜の材質としては使用するエッチングガスに応じて適宜選択すればよい。本例のようにHFガス、NH3ガス、TMAガスを用いる場合、保護膜は例えばNi(ニッケル)により構成される。
【0034】
続いて、ステージ5(5A、5B)について説明する。各ステージ5は平面視円形であり、その上面はシャワープレート3の下面に対向し、その側面は処理空間形成部材41の貫通孔42をなす内周面45に対向する。ステージ5の上部側は静電チャックとして構成されており、ステージ5の上面に載置されたウエハWを吸着する。ステージ5の下部側には流体の流路51が形成されている。図示しない温度調整機構により温度調整された流体が当該流路51に供給されることで、ステージ5に吸着されたウエハWが所望の温度とされる。なお、ステージ5には流路51に対する流体の供給管及び排出管が接続されるが、図示は省略する。
【0035】
各ステージ5の下部には、縦断面視で凹形の囲み部52の上端が接続され、囲み部52とステージ5の下面とに囲まれる密閉空間に水平板53が設けられている。水平板53上には、鉛直に伸びるピン54が3本(図中では2本のみ表示)設けられる。水平板53は、囲み部52の底部、処理容器11の底部形成部10を貫通する支柱55に接続され、支柱55の下端部は、処理容器11の外部に設けられる昇降機構56に接続されている。ウエハW支持用のピン54は、昇降機構56によってステージ5の上面にて突没し、図示しない搬送機構とステージ5との間でウエハWを受け渡す。なお、図中50はステージ5に設けられる貫通孔であり、ピン54が挿通される。
【0036】
また、囲み部52を下方から支持する支柱57が、処理容器11の底部形成部10を貫通して設けられており、処理容器11の外部に設けられる昇降機構58に接続されている。支柱57及び上記の支柱55を囲むと共に鉛直方向に伸縮可能なベローズ59が、下部内壁25に囲まれて設けられている。ベローズ59については、囲み部52の周縁に上端が、外壁部14の底部に下端が夫々接続されており、上記したベローズ49と同様に処理容器11内の気密性を担保する役割を有する。
【0037】
ところで支柱57、昇降機構58及びベローズ59については、ステージ5毎に設けられている。そのため、ステージ5A、5Bについては個別に高さを調整することができるが、本例ではステージ5A、5B上のウエハWに対して同様の処理を行うために、ステージ5間の高さは揃えられる。なお、このようにステージ5が昇降可能であることは、ステージ5の上方領域である処理空間4の容積について調整可能であるということである。
【0038】
続いて、配管系6について説明する。配管系6は、下流端が流路形成部34に接続される配管61、62、63、64を備えている。配管61、62は、夫々シャワープレート3A、3Bに接続されている。そして配管61、62の上流側は、流量調整機構60を介してN2ガス供給源71A、71Bに夫々接続されている。流量調整機構60は、バルブ及びマスフローコントローラにより構成され、流路の下流側へのガスの給断の切替え、及びガスの流量の調整を行う。なお後述する配管61、62以外の配管に設けられる流量調整機構60についても、配管61、62に介設される流量調整機構60と同様の構成である。N2ガス供給源71から供給されるN2(窒素)ガスは、エッチングガスのキャリアガス且つ処理容器11内をパージするパージガスの役割を果たす。
【0039】
配管63、64は貯留部が介設されるガス流路として構成されている。配管63の下流端は、流路形成部34の流路を介してシャワープレート3A、3Bに接続される。そして、この配管63については上流側に向けて、バルブV1、タンク81、バルブV3がこの順に介設されている。そして、バルブV3の上流側で当該配管63は分岐して、配管63A、63Bを形成する。配管63Aは、流量調整機構60を介してHFガス供給源72に接続されている。配管63Bは、流量調整機構60を介してN2ガス供給源73に接続されている。N2ガス供給源73から供給されるN2ガスは、HFガスに対する希釈ガスである。バルブV3については、第1貯留部であるタンク81に各ガスを供給して貯留する期間中は開かれ、第1バルブであるバルブV1の開放中はタンク81に貯留されたガスが配管63を逆流することを防止するために閉鎖される。
【0040】
配管64の下流端は、流路形成部34の流路を介してシャワープレート3A、3Bに接続される。そして、この配管64については上流側に向けて、バルブV2、タンク82、バルブV4がこの順に介設されている。そしてバルブV4の上流側で当該配管64は分岐して、配管64A、64B、64Cを形成する。配管64A~64Cには、流量調整機構60が各々介設されている。そして配管64A、64B、64C上流端は夫々TMAガス供給源74、NH3ガス供給源75、N2ガス供給源76に接続されている。NH3ガス及びTMAガスのいずれかが、タンク82へ向けて供給される。N2ガス供給源76から供給されるN2ガスは、NH3ガス及びTMAガスに対する希釈ガスである。バルブV4については、第2貯留部であるタンク82に各ガスを供給して貯留する期間中は開かれ、第2バルブであるバルブV2の開放中はタンク82に貯留されたガスが配管64を逆流することを防止するために閉鎖される。
【0041】
タンク81、82の各々には圧力センサ80が設けられており、タンク81、82内の圧力についての検出信号を、後述の制御部90に送信する。制御部90はその検出信号に基づいて、タンク81、82内の圧力を検出することができる。なお検出信号は、100ミリ秒よりも短い間隔、具体的には例えば10ミリ秒間隔で制御部90に送信され、制御部90は同間隔でタンク81、82内の圧力を検出することができる。この圧力の検出間隔は、バルブV1、V2について、開いた状態及び閉じた状態のうちの一方から他方へと移行する時間よりも短い。従って、後述するようにバルブV1、V2の開閉によって、ウエハWに対して行う処理のステップが切り替わるが、ステップ毎にタンク81、82の圧力を検出し、異常の有無を判定することが可能である。
【0042】
図1に示すように、エッチング装置1はコンピュータである制御部90を備えており、この制御部90は、ソフトウエア、メモリ、CPU、操作部、アラーム出力部を備えている。操作部はエッチング装置1のユーザーが各種の設定を行うためのデータ入力装置であり、例えばタッチパネル等などにより構成されている。操作部から、後述するタンク81、82内の圧力に異常が生じた際の動作設定や、処理レシピに関する各設定を行うことができる。各種の設定は、制御部90のメモリに記憶される。アラーム出力部としては例えばディスプレイやスピーカーなどにより構成され、所定の画面表示や所定の音声をアラームとして、後述する異常や判定結果をユーザーに報知する。
【0043】
ソフトウエアには、後述するウエハWの処理を行うことができるように命令(各ステップ)が組み込まれており、このソフトウエアは、記憶媒体、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、メモリーカード、光磁気ディスク、DVD等に格納され、制御部90にインストールされる。制御部90は当該ソフトウエアによりエッチング装置1の各部に制御信号を出力し、各部の動作を制御することで、ウエハWに対する処理を実行することができる。具体的にはバルブV1~V4の開閉、バルブV10の開度調整、流量調整機構60による各配管の下流側への各ガスの供給、昇降機構58によるステージ5の高さの調整、昇降機構47、56による処理空間形成部材41、ピン54の昇降、ゲートバルブ23による搬送口22の開閉などの各動作が制御される。
【0044】
上記のソフトウエアには、上記した検出信号からのタンク81、82内における圧力の検出と、当該検出圧力が所定の範囲内に収まるか否かの判定と、当該判定により検出圧力が所定の範囲内に収まらないと判定された場合の対処動作と、を行うためのプログラムが含まれる。この対処動作としては例えば、実行中のウエハWの処理を中止すると共にアラームを出力すること、アラームの出力と共に次に装置に搬送されるウエハWの処理を中止すること(実行中のウエハWの処理は継続する)、ウエハWの処理の中止は行わずにアラームの出力のみ行うことである。これらの中から、ユーザーによって予め設定された動作が実行される。
【0045】
ところでウエハWを処理する前に、ウエハWをどのような処理レシピで処理するかがユーザーにより選択される。処理レシピはウエハWの処理条件に関するパラメータの組み合わせであり、制御部90のメモリに記憶される。その組み合わせをなす個々のパラメータとしては、具体的には処理容器11内の圧力、ウエハWの処理温度、及び処理容器11内へ供給する各ガスに関するパラメータが挙げられる。上記の各ガスに関するパラメータには、各流量調整機構60による下流側へのガスの供給のタイミング及び供給時の流量、バルブV1~V4の開閉のタイミングに関するパラメータが含まれる。
【0046】
上記のソフトウエアには、処理レシピの作成を補助するプログラムが含まれる。このプログラムはウエハWの処理を行う前に、ユーザーがパラメータを入力することで、タンク81、82内の各圧力を算出し、この算出値が適正なものであるか否かを判定するプログラムである。この算出値が適正であるか否かの判定としては、ガスが貯留された各タンク81、82内の圧力が許容範囲に収まるか否か(即ち、上限の閾値、下限の閾値を超えるか否か)の判定の他に、バルブV1、V2が共に開放状態に切り替わった際のタンク81、82内の圧力差が許容範囲に収まるか否かの判定が含まれる。なお、判定によって算出値が許容範囲に収まらないとされた場合には、当該プログラムは、アラーム出力部からその旨のアラームを出力するように構成されている。
【0047】
タンク81、82内の圧力差の判定についてさらに述べると、上記したように本例ではタンク81、82の下流側のバルブV1、V2は同時に開かれることでシャワープレート3に向けて各ガスが供給される。仮にタンク81、82内の圧力差が大き過ぎると、タンク81、82のうちの一方のタンクから供給されたガスが、シャワープレート3を介して他方のタンクへ向けて流れる。つまり配管系6において、ガスの逆流が起きてしまう。そうなるとガス同士の望まない反応が起きるなどして、ウエハWに正常な処理がなされなくなってしまうおそれが有る。そのような不具合が防止されるように、本プログラムは、上記のように圧力差の判定を行い、設定が不適切な場合にはアラームを出力させることにより、ユーザーにパラメータの再設定を促す構成とされている。この圧力差の判定方法については、エッチング装置1の動作例を説明した後に具体的に述べる。
【0048】
続いて、エッチング装置1における動作例について、タイミングチャートである
図4、処理容器11へのガスの供給状態及び処理容器11内におけるガスの流れを示す
図5、
図6を参照して説明する。また、ウエハWの表面の変化を模式的に示す
図7~
図12も適宜参照する。なお、本例ではTMAガスを用いるものとするが、TMAガスの代わりにNH
3ガスを用いる場合も同様の手順で処理を行うことができる。
【0049】
図4のタイミングチャートについては、タンク81、82内の圧力変化、バルブV1、V2の開閉状態、タンク81へのHFガス供給のタイミング、タンク82へのTMAガス供給のタイミング、処理容器11内の圧力変化(即ち、処理空間4の圧力変化)について示している。なお、処理容器11内の圧力についてはバルブV10の開度によって変化するので、この圧力変化のチャートは、バルブV10の開度の変化を示していることになる。
図5、
図6では配管系6を構成する各配管について、ガスが流通している部位を他の部位よりも太く示している。
図7~
図12のうちのいくつかの図では、HFガスを103、TMAガスを104として夫々模式的に示している。
【0050】
先ず、処理空間形成部材41が待機位置にて待機すると共に、ステージ5がウエハWの搬送に干渉しないように比較的低い位置で待機する状態で、搬送機構によって処理容器11内にウエハWが2つ搬送される。
図7は、そのように処理容器11内に搬送されるウエハWの表面を示している。これらのウエハWが、ピン54を介して各ステージ5上に各々吸着されて所望の温度、例えば-20℃~150℃となる。
【0051】
搬送機構が処理容器11から退避した後、処理空間形成部材31が処理位置へと上昇し、処理空間4が形成される。各ステージ5が所定の高さ位置へと上昇し、シャワープレート3A、3Bに夫々近接する。そして、N2ガス供給源71A、71Bからシャワープレート3A、3Bを介して処理空間4A、4Bに夫々N2ガスが供給される一方で、バルブV10の開度が所定の開度(第1開度とする)となるように調整され、処理容器11内における処理空間4A、4Bが所定の一の圧力となる。
【0052】
バルブV1、V2が閉じられ、且つバルブV3、V4が開かれた状態とされる。そして、空の状態のタンク81にHFガス供給源72、N
2ガス供給源73からHFガス及びN
2ガスの供給が開始されると共に、空の状態のタンク82にTMAガス供給源74、N
2ガス供給源76からTMAガス及びN
2ガスの供給が開始される(チャート中、時刻t1、
図6)。タンク81、82に各ガスが貯留され、当該タンク81、82内の圧力が、ガスの供給が開始される前の初期圧力(第1圧力)から上昇する。タンク81、82内が所望の第2圧力(以降、放出圧力と記載する)になった状態で、バルブV3、V4が閉じられる一方、バルブV1、V2が開かれる(時刻t2)。また、この時刻t2では、バルブV10の開度が第1開度よりも大きい所定の第2開度となるように変更されると共に、流量調整機構60により、タンク81、82へ向けたHFガス、TMAガス及びN
2ガスの供給が停止する。
【0053】
バルブV1、V2が開放されることで、タンク81、82に貯留されたガスが処理空間4A、4Bに放出され、当該処理空間4全体に速やかに拡散する(
図6)。また、バルブV10の開度が第2開度に変更されたことで、処理空間4A、4Bの圧力が低下し、所定の圧力(他の圧力と呼称する)となる。その圧力低下によっても、各ガスは処理空間4A、4Bに速やかに拡散する。なお、上記のようにタンク81、82から各ガスを放出する瞬間においては、当該処理空間4A、4Bの圧力を比較的高い圧力(一の圧力と呼称する)としておくのは、タンク81、82と処理空間4A、4Bとの差圧が大きすぎることによって発生する不具合を防ぐためである。具体的には、供給されるガスの圧力によるウエハWの位置ずれや、処理容器11内に形成される気流によってパーティクルの巻き上げが生じることを防ぐ。なお処理空間4A、4Bの、一の圧力、他の圧力は例えば0.133Pa~666Paの範囲内における圧力である。
【0054】
処理空間4A、4Bに拡散したHFガス103及びTMAガス104は、ウエハWの表面全体、即ちSiOx膜101、SiN膜102の各々の表面全体に吸着する(
図8)。そして既述したインキュベーションタイムの違いにより、SiOx膜101及びSiN膜102のうち、SiOx膜101についてのみ、エッチングが開始される(
図9)。然る後、例えばタンク81、82内が初期圧力に戻る前にバルブV1、V2が閉じられ(時刻t3)、タンク81、82から処理空間4A、4Bへのガス供給が停止する。この際のタンク81、82の圧力を待機圧力(第3圧力)とする。なお速やかにバルブV1、V2を閉じることで、本例では(待機圧力-初期圧力)>(放出圧力-待機圧力)となっている。
【0055】
処理空間4A、4Bの排気、及びN
2ガス供給源71A、71Bから供給されるN
2ガスのパージ作用によって、処理空間4A、4BからHFガス103及びTMAガス104が除去される。処理空間4A、4Bの圧力が比較的低い他の圧力とされているため、このHFガス103及びTMAガス104の除去は効率良く進行し、処理空間4A、4BにおけるHFガス103及びTMAガス104の濃度が急激に低下する。その濃度低下により、SiOx膜101及びSiN膜102に吸着したHFガス103及びTMAガス104は、当該SiOx膜101及びSiN膜102から処理空間4A、4Bへと脱離する(
図10、
図11)。従って、SiOx膜101についてはエッチングの進行が停止し、SiN膜102についてはエッチングの開始が阻害される。
【0056】
その後、バルブV3、V4が開かれ、流量調整機構60によりタンク81へのHFガス及びN
2ガスの供給と、タンク82へのTMAガス及びN
2ガスの供給と、が再開されると共に、バルブV10の開度が第1開度に戻り(時刻t4)、処理空間4A、4Bの圧力が上昇して一の圧力に戻る。従って、時刻t4では時刻t1と同様の動作が行われ、処理容器11の状態としては
図5の状態に戻る。
【0057】
タンク81、82内の圧力が待機圧力から上昇して放出圧力となると、時刻t2と同様の動作が行われる。即ち、バルブV3、V4の閉鎖、バルブV1、V2の開放、バルブV10の開度の第2開度への変更、流量調整機構60によるタンク81、82へ向けたHFガス、TMAガス及びN
2ガスの供給停止が行われる(時刻t5)。従って、この時刻t5における装置の動作は時刻t2の動作と同じである。この動作により、タンク81、82に貯留されたガスが処理空間4A、4Bへの放出される一方、処理空間4A、4Bの圧力は低下し、他の圧力となる。処理容器11としては再度、
図6の状態となり、SiOx膜101の選択的エッチングが再度開始される。
【0058】
然る後、時刻t3と同じくバルブV1、V2が閉鎖され(時刻t6)、処理空間4A、4BからHFガス103及びTMAガス104が除去されて、SiOx膜101についてはエッチングの進行が停止し、SiN膜102についてはエッチングの開始が阻害される。そしてバルブV3、V4が開かれ、タンク81へのHFガス及びN2ガスの供給と、タンク82へのTMAガス及びN2ガスの供給とが再度開始されると共に、バルブV10の開度が第1開度に戻る(時刻t7)。即ち、時刻t7では時刻t4と同様に装置の動作が行われる。そしてタンク81、82内の圧力が待機圧力から上昇して放出圧力となると、時刻t2、t5と同様の動作が行われる(時刻t8)。
【0059】
このように時刻t5~t8では、時刻t2~t5における一連の動作が、再度行われる。そして、時刻t8以降も同様の動作が繰り返される。このようにサイクル動作が行われることで、SiOx膜101の選択的なエッチングが繰り返される。所定の回数のサイクルが終了して、SiOx膜101のエッチング量が所望のものとなると(
図12)、処理容器11内への搬入時とは逆の手順で、各ウエハWが処理容器11内から搬出される。
【0060】
以上のように、先ずタンク81、82にガスを貯留するステップ(初回貯留ステップとする)が行われる。そして、それ以降はタンク81、82から処理空間4にガスを放出するガス放出ステップ、タンク81、82からのガスの放出を停止して処理空間4から各ガスを排気する排気ステップ、放出された分のガスをタンク81、82に供給する再貯留ステップからなるサイクルが繰り返されることで、ウエハWが処理される。排気ステップと、再貯留ステップと、は並行して実施される。
【0061】
なお、ガス放出ステップが行われる期間は、バルブV1、V2が開かれる期間であり、時刻t2-t3間、時刻t5-t6間の各々が該当する。1回のガス放出ステップが行われる期間は比較的短く、例えば1秒以下である。そのため、上記した処理例ではバルブV1、V2の開放時にタンク81、82内のガスのすべてが処理空間4に放出されず、一部が残留する。従って空の状態のタンク81、82にガスを貯留する初回貯留ステップ(時刻t1-t2間)は、再貯留ステップ(時刻t4-t5間、時刻t7-t8間)よりも長い。
【0062】
以上に述べたように、エッチング装置1においては、タンク81、82内に貯留されることで加圧された比較的、大量のHFガス及びTMAガスが、バルブV1、V2が開かれることで処理空間4に放出される。そのためHFガス及びTMAガスが処理空間4全体に短時間で行き渡ることになるので、ウエハWの面内の各部のSiOx膜101にHFガス及びTMAガスが同時ないしは略同時に吸着し、エッチングが開始される。そのため、ウエハWの面内におけるSiOx膜101のエッチングの均一性を高くすることができる。また、バルブV1、V2の解放後、当該バルブV1、V2が速やかに閉鎖される。具体的にはタンク81、82内が初期圧力に戻る前にバルブV1、V2が閉鎖されることで、SiN膜102のエッチングを抑え、SiOx膜101のエッチングを選択的に行うことができる。
【0063】
なお、初回貯留ステップ(時刻t1-t2間)の後のサイクルは、上記の説明では3回以上繰り返されるように述べたが、繰り返しの回数は任意である。また、必要なエッチング量が微量である場合にはサイクルは繰り返さず、1回のみ行うようにしてもよい。
また上記の処理では、バルブV1、V2の開放と同時にバルブV10の開度を変更して処理空間4の圧力を低下させているが、バルブV1、V2の開放時点に対して僅かな所定の時間だけ先、あるいは僅かな所定の時間だけ後のタイミングでバルブV10の開度が変更されてもよい。そのように毎回のバルブV1、V2の開放時点から所定の時間(予め定めた時間)だけずれたタイミングでバルブV10の開度が変更されることも、開放時点と同時にバルブV10の開度が変更されることと同様、バルブの開放に応じたタイミングで処理容器内の圧力を低下させることに含まれる。
【0064】
ところで上記の初回貯留ステップ及びその後のサイクルの実行中、タンク81、82の各圧力センサ80から検出信号が制御部90に所定の間隔で送信され続けて、タンク81、82内の圧力が監視される。この検出信号の送信間隔は、バルブV1、V2が開かれてガス放出ステップが行われる時間(時刻t2-t3間、t5-t6間)よりも短い。従って、バルブV1、V2が開かれた状態となるガス放出ステップ、バルブV1、V2が閉じられる状態となる他のステップの各々について、当該圧力が検出される。つまり、バルブV1、V2について開かれる期間毎、且つ閉じられる期間毎に圧力の検出がなされる。そしてその圧力に基づいて、異常の有無が監視される。従って、装置の動作の異常を速やかに発見することができ、ウエハWから製造される半導体製品の歩留りの低下を防止することができる。
【0065】
上記したユーザーによる処理レシピの作成を補助するためのタンク81、82内の圧力差の判定について補足して説明する。この圧力差の判定を行うために、タンク81、82内の各々について、下流側のバルブV1またはV2が開かれる際の圧力の算出が行われる。以降はタンク81に関して説明する。前提として、タンク81の容積(単位:cc)は一定であるため、タンク81内の圧力は、タンク81へのガス供給量(単位:cc)と、タンク81からのガス吐出量(単位:cc)と、に応じて変化することになる。ガス吐出量はタンク81の圧力による影響を受けるが、バルブV1がごく短い間のみ開く場合は、このガス吐出量はタンク81の圧力によってのみ変化するとみなすことができる。また、定常運転状態(バルブV1、V2の開閉が繰り返される、既述したチャートの時刻t2以降の状態)ではバルブV1が開かれる各タイミングでのタンク81内の圧力は同じ圧力であり、ガス供給量=ガス吐出量である。なお、ガス供給量はタンク81へ供給するガスの流量×時間であり、ガスの流量とは、タンク81へはHFガス及びN2ガスを供給するので(HFガスの流量+N2ガスの流量)である。
【0066】
上記の前提の下、ユーザーは
図4の時刻t1~時刻2の時間(即ち、タンク81が空の状態からガスが充填されてバルブV1が開放されるまでの時間)と、タンク81の上流側に設けられる流量調整機構60からタンク81へ供給されるHFガス及びN
2ガスの各流量をパラメータとして設定する。この時刻t1~時刻2の時間×(HFガスの流量+N
2ガスの流量)がタンク81へのガス供給量であり、このガス供給量はタンク81の容積を超えない値とする。そしてこのガス供給量と、タンク81の容積と、所定の計算式とにより、時刻t2でバルブV1が開放される際のタンク81内の圧力が自動で算出される。
なお、上記したようにバルブV1の開放によるガス吐出量はタンク81内の圧力によって決まり、算出されたバルブV1開放の際のタンク81の圧力から、そのガス吐出量が所定の計算式をもって算出される。上記したようにガス吐出量=圧力の低下を補填するためのガス供給量である。そして、HFガスの流量+N
2ガスの流量は既に設定されているため、このガス流量とガス供給量とから、タンク81にガスの再充填を行うために必要な時間(
図4のチャートの時刻t4-t5の時間、t7-t8の時間)についても自動的に算出されてユーザーが知ることができる。
【0067】
以上に述べたようにユーザーの各設定により、バルブV1の開放時のタンク81内の圧力を算出することができる。タンク82内についても同様にタンク82に供給される各ガスの流量及び時刻t1~時刻2の時間の設定により、バルブV2が開かれる際の圧力を算出することができる。なお、ユーザーが設定するタンク81への各ガスの流量、供給時間は、第1パラメータに相当し、タンク82への各ガスの流量、供給時間は、第2パラメータに相当する。そのように算出されるタンク81、82内の圧力(仮想の圧力)について、同じ時刻におけるタンク81内の圧力と、タンク82内の圧力との差(仮想の圧力差)が算出され、その算出値について許容範囲内に収まるか否かが判定される(即ち、異常の有無が検出される)ことになる。
【0068】
バルブV1がごく短い間開くことで、タンク81の圧力の変化量が一定且つガス吐出量がタンク81内の圧力のみによって変化するとみなすものとしたが、実際にはタンク81内の圧力とバルブV1の開く時間とによって、タンク81の圧力の変化量及びガス吐出量が変化する。上記したように時刻t2でバルブV1が開放される際のタンク81内の圧力が自動で算出されるが、バルブV1の開く時間と、このバルブV1を開く際のタンク81の圧力と、からバルブV1の開放終了後の圧力が計算されるように、所定の計算式を用意するようにしてもよい。そして、その計算式によって算出された開放終了後のバルブV1の圧力から、上記したようにバルブV1開放終了後のタンク81内へのガス再充填を行うために必要な時間が算出されるようにしてもよい。なお、このバルブV1開放中においてもタンク81にガスを供給する場合は、そのガスを供給した分だけ、バルブV1の開放によるタンク81内の圧力の減少量が減ることになり、タンク81からのガスの吐出量及びタンク81の圧力変化量は影響を受けることになる。そのため、上記の計算式は、そのバルブV1の開放中のガスの供給時間、流量についてもベースにして、バルブV1の開放終了後の圧力を算出するように設定されるものとする。バルブV1の開放時間、このバルブV1の開放中におけるタンク81内へのガスの供給時間及び供給するガスの流量についてはユーザーが設定する。
【0069】
なお、タンク81内の圧力を計算するにあたり、タンク81の圧力の上昇量についてタンク81への各ガスの流量×供給時間×所定の係数を、タンク81の圧力の上昇量とする。また、バルブV1の開放時間に応じた分だけ、タンク81の圧力低下が起きるものと見なして、例えばバルブV1の開放時間×所定の係数をタンク81の圧力の低下量とする。従って、
図4の時刻t1-t2間における時間及びタンク81に供給されるHFガス及びN
2ガスの流量について、ユーザーが設定する。また、サイクルの実行中におけるバルブV1が開かれる時刻t5-t6間の時間、サイクルの実行中における再貯留ステップである時刻t4-t5間における時間及びタンク81に供給されるHFガス及びN
2ガスの流量について、ユーザーが設定する。その設定によって、バルブV1が開かれる時刻t2、t5におけるタンク81内の圧力が算出されるようにしてもよい。タンク82内についても同様にパラメータが設定されることで、バルブV2が開かれる時刻t2、t5における圧力が算出される。そして、時刻t2、t5の各々におけるタンク81、82内の圧力差が算出され、許容範囲内に収まるか否かの判定がなされるようにしてもよい。なお、ウエハWの処理中においてはタンク81、82内の個々の圧力が監視されるように述べたが、処理レシピの作成時と同じく、タンク81、82内の圧力差を算出し、当該圧力差に基づいて異常の有無の判定が行われてもよい。
【0070】
ところで、例示したHFガス及びTMAガスのように、両方のガスの相互作用によりウエハWの反応が進行するガスを用いる場合は、各ガスが共にウエハWの供給されている状態とすればよい。つまり、一方のガスがウエハWに吸着されている状態となっている間(ウエハWからの脱離が完了していない間)に、他方のガスがウエハWに供給されるようにすればよい。そのため、各ガスを同時にウエハWに供給することには限られず、各ガスを交互にウエハWに供給してもよい。即ち、
図4に示した処理ではバルブV1、V2が開放される期間が揃えられるが、バルブV1が開放される期間、バルブV2がされる期間が互いにずれていてもよい。
【0071】
図13に示すタイミングチャートは、そのようにバルブV1、V2が開放される期間がずれる処理例を示しており、
図4のタイミングチャートの処理と比較すると、バルブV2の開放、タンク82内へのTMAガスの供給についてタイミングが遅れるように設定されている。具体的に処理を説明すると、バルブV1の開放によるHFガスの処理空間4への放出、バルブV1の閉鎖、バルブV2の開放によるTMAガスの処理空間4への放出、バルブV2の閉鎖が順番に繰り返される。バルブV1、V2のうちの一方が閉鎖されてから他方が開放されるまでは間隔が空けられ、その間に処理空間4のパージと排気とが行われる。ただし、ウエハWに一方のエッチングガスを供給してから他方のエッチングガスを供給するまでに、その一方のエッチングガスはSiOx膜101から脱離することになる。そのためSiOx膜101に対するエッチング性を高めて装置のスループットを高くする観点からは、
図4で説明した処理のように、バルブV1、V2が開放する期間を揃えることが好ましい。
【0072】
なおバルブV1、V2間で開放されるタイミングがずれ、且つ開かれる期間が重なってもよい。従って、例えばバルブV1の開放に若干遅れてバルブV2が開放されることで、バルブV1、V2が共に開かれた状態となり、タンク81、82から処理空間4へ各ガスが供給されるようにしてもよい。ただし、上記したシャワープレート3を介しての一方のタンクから他方のタンクへ向けたガスの逆流を防ぐために、バルブV1、V2は同時に開くことが好ましい。
【0073】
ところで、タンク81、82から供給されたガスを速やかに処理空間4に拡散させるためには、処理空間4の容積が小さいほど好ましい。従って
図5、
図6で例示したようにステージ5を、処理容器11の天井を形成するシャワープレート3に近接するように配置することが好ましい。ただし、処理レシピ次第では、ステージ5とシャワープレート3との距離が近接しすぎることが望ましくないことが考えられる。一例を挙げると、バルブV1、V2の開放時のタンク81、82内の圧力が比較的大きい処理レシピを設定した場合、シャワープレート3からのガスの吐出圧が過大になり過ぎることで、ウエハW表面におけるシャワープレート3のガス吐出口33の直下領域がダメージを受けることが考えられる。
【0074】
従って、ウエハWに処理を行うにあたり、ステージ5は一律に同じ高さに位置するようにしてもよいが、ウエハWの処理条件に応じた高さに配置することが好ましい。
図14は
図5と同様に、ウエハWの処理中のエッチング装置1の縦断側面図を示しており、
図5に示す例に比べて、ステージ5の高さ位置が低い。バルブV1、V2開放時のタンク81、82内の圧力が比較的低い場合には
図5に示す高さに、比較的低い場合には
図14に示す高さに、夫々ステージ5を配置して処理を行う運用とすることができる。そのようにステージ5の高さを変更するにあたり、当該ステージ5の上面とシャワープレート3との距離H1(
図14参照)について、例えば10mm~100mmの範囲で変更することが好ましい。なお、装置のユーザーは処理レシピを複数設定する際に、各処理レシピに対応付けてステージ5の高さについても設定し、その対応が制御部90のメモリに記憶されるようにする。ユーザーが複数の処理レシピから使用する処理レシピを選択すると、そのメモリ内のデータに従って、ステージ5が選択した処理レシピ(即ち、選択した処理条件)に対応する高さに位置して、ウエハWに処理が行われるようにする運用としてもよい。
【0075】
ところでエッチング装置1ではハロゲン含有ガスとしてHF、塩基性ガスとしてNH3またはTMAガスを夫々用いてSiOx膜をエッチングするが、このようなエッチング処理を行うことに限られない。例えばエッチング対象の膜としては、SiOx膜以外の酸素を含有するSi膜であってもよく、SiOCN膜やオルトケイ酸テトラエチル(Tetraethyl ortho silicate)などの膜であってもよい。そしてハロゲン含有ガスとして、HF以外にはHCl、HBr、HI、SF6などの各ガスを用いることができる。
【0076】
また、酸素を含有するSi膜をエッチングするにあたっては、TMA以外のアミンを用いることができる。具体的にはジメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノターシャリーブチルアミン、ピロリジン、ピリジンなどの各種のアミン化合物のガスを用いることができる。また、アミン化合物の他の具体例として、上記化合物のC-H結合の一部、もしくは全部をC-F結合とした化合物(1,1,1-トリフルオロジメチルアミン等)を用いることができる。
【0077】
またエッチング装置1でエッチングを行うにあたって、SiOx膜101、SiN膜102のようにインキュベーションタイムが異なる膜が、共にウエハWに露出して、インキュベーションタイムが短い膜を選択的にエッチングすることが特に有効であるが、そのようにエッチング対象の膜が限定されるものではない。例えばウエハW表面に単一の膜のみが露出し、当該膜をエッチング対象膜としてエッチングする場合にも、エッチング装置1を用いることができる。
【0078】
なお、エッチング対象膜については、上記した酸素を含有するSi膜であることには限られず、それ以外のSiを含有する膜であってもよい。具体的にはSi膜、SiGe膜などのシリコン含有膜であってもよい。これらのSi膜、SiGe膜をエッチングするにあたってはハロゲン含有ガスとして、F2ガス、IF7ガス、IF5ガス、ClF3ガス、SF6などを用い、塩基性ガスとしてはNH3ガスを用いることができる。なお、本明細書で膜やガスを構成する化合物がある物質を「含有する」とは、その物質を不純物として含有する意味では無く、化合物を構成する主成分として含有する意味である。
【0079】
例えばF2ガス及びNH3ガスを用いてSi膜をエッチング処理するにあたり、これらのガス供給時のウエハWの処理温度によっては、Si膜が変質したAFS((NH4)SiF6)が残留し、後にウエハWを加熱することで当該AFSが除去される。本願におけるエッチングとしてはガスによって膜が除去されることの他に、変質のみが起きることが含まれる。つまり、上記したSi膜をAFSに変質させる処理についてもエッチング処理に含まれる。
【0080】
ところでNH3ガス及びアミンガスのうちの一方を選択して使用するように述べてきたが、両方のガスを用いてもよい。従って、これらのNH3ガス及びアミンガスによって構成される混合ガスをウエハWに供給してもよい。また、そのように混合ガスとしてウエハWに供給するにあたり、上記のタンク82にNH3ガス及びアミンガスを共に貯留してもよいし、NH3ガス、アミンガス毎に個別にタンクに貯留され、処理容器11内に供給された際に、混合されるようにしてもよい。従って、タンクが設けられるライン(供給路)としては2つであることには限られない。なお、ハロゲン含有ガス、塩基性ガスが、同じ共タンクに貯留されてもよい。ただし上記したようにハロゲン含有ガスと塩基性ガスとがタンクに貯留されている間に互いに反応してしまうおそれが有るため、これまでに述べたように別々のタンクに貯留することが好ましい。
【0081】
また、タンク81、82を利用してウエハWを処理するにあたり、
図4、
図13で説明したチャートの処理ではガスの放出後、速やかにバルブV1、V2を閉鎖しているが、そのような処理とすることには限られない。その処理の一例として、
図15に示すチャートの処理(説明の便宜上、連続供給処理として記載する)について、
図4で説明した処理(パルス供給処理として記載する場合が有る)との差違点を中心に説明する。
図15中の時刻t11ではタンク81、82へHFガス、TMAガスの供給を夫々開始される。従って、時刻t11の動作は、パルス供給処理の時刻t1の動作と同様である。その後、時刻t12でバルブV1、V2を開放してタンク81、82から処理空間3A、3Bへのガス供給を行う。時刻t12の動作は、バルブV3、V4の閉鎖を行わず、HFガス供給源72、N
2ガス供給源73からタンク81へのHFガス及びN
2ガスの供給と、TMAガス供給源74、N
2ガス供給源76からタンク82へのTMAガス及びN
2ガスの供給とを継続して行うという点で、パルス供給処理の時刻t2の動作と異なる。
【0082】
タンク81、82の圧力は、内部で加圧されたガスの放出により急激に低下した後、緩やかに低下して初期圧力に戻ると、バルブV1~V4が閉じられ、流量調整機構60により各ガス供給源からのタンク81、82へ向けてのガス供給が停止し、バルブV10の開度が第1開度から第2開度に変更される(時刻t13)。そして、処理空間4の圧力が位置の圧力から他の圧力となるように低下し、処理空間4からの各ガスの排気が進行する。
【0083】
以上の一連の動作が、サイクル動作として繰り返し行われることで、所望の量のSiO
2膜101がエッチングされる。このような処理においても、HFガス及びTMAガスをウエハWの表面全体に速やかに拡散させることができるので、ウエハWの面内各部でSiO
2膜101を均一性高くエッチングすることができる。しかし、SiN膜102が比較的長い時間、HFガス及びTMAガスに曝されることになるので、SiO
2膜101のエッチング選択性を高くするためには、
図4で説明したパルス供給処理を行うことが有効である。
【0084】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更、組み合わせがなされてもよい。
【0085】
〔評価試験〕
以下、本技術に関して行われた評価試験について説明する。この評価試験では、エッチング装置1を用いて、パターンが形成された基板に対して処理を行い、エッチング前後におけるパターンの様子を観察した。そして、エッチング前後でウエハWの表面に露出すると共に当該パターンを形成するSiOx膜101、SiN膜102について、エッチング量を検出し、選択比(=SiOx膜101のエッチング量/SiN膜102のエッチング量)を算出した。評価試験1-1~1-3として、互いに異なる態様でエッチングを行った。
【0086】
評価試験1-1として、
図16のタイミングチャートで示すように装置の各部の動作を行って処理を行っている。この
図16の処理(非加圧処理とする)について、
図4のパルス供給処理との差異点を説明する。時刻t21で、流量調整機構60よりタンク81、82に各ガスを供給する一方、閉鎖されていたバルブV1、V2を開放する。そして、時刻t22でバルブV1、V2を閉鎖すると共に、第1開度とされていたバルブV10を第2開度として処理容器11内の圧力を低下させる。以上の一連の処理をサイクルとすると、このサイクルを5回繰り返すことで、ウエハWにエッチングを行った。このように評価試験1-1では、タンク81、82を設けてはいるが、タンク81、82によるガスの貯留、加圧の作用がなされないように、各ガスを処理空間4に供給している。評価試験1-2としては、
図15で説明した連続供給処理を行った。サイクルの実施回数は5回とした。評価試験1-3としては、
図4のパルス供給処理を行った。初回貯留ステップの後のサイクルの実施回数は25回とした。
【0087】
選択比について評価試験1-1では1.2であり、評価試験1-2では3.1であり、評価試験1-3では52.3であった。従って、評価試験1-3が最も好ましく、評価試験1-2が次に好ましい結果となった。この試験結果から、HFガス及びTMAガスを各々タンク81、82に貯留して処理容器11内に供給することの有効性が確認された。また、バルブV1、V2については、タンク81、82内からガスが放出されきって当該タンク81、82内が初期圧力に戻る前に閉鎖することが有効であることが示された。
【符号の説明】
【0088】
W ウエハ
11 処理容器
63、64 配管
72、74 ガス供給源
81、82 タンク