(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129581
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】エッチング方法及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240919BHJP
H01L 21/302 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 201A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038892
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄭 雄鉉
(72)【発明者】
【氏名】浅田 泰生
(72)【発明者】
【氏名】旭 健史郎
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA09
5F004BA19
5F004CA08
5F004DA00
5F004DA18
5F004DA20
5F004DA29
5F004DB03
5F004EA34
(57)【要約】
【課題】基板に形成された酸化シリコン膜をエッチングするにあたり、エッチング後の酸化シリコン膜の形状を所望のものとすること。
【解決手段】本開示のエッチング方法は、表面に酸化シリコン膜が形成された基板に、ハロゲン含有ガスと、アンモニアガスと、アミンガスとをエッチングガスとして供給して、前記酸化シリコン膜をエッチングするエッチング工程を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に酸化シリコン膜が形成された基板に、ハロゲン含有ガスと、アンモニアガスと、アミンガスとをエッチングガスとして供給して、前記酸化シリコン膜をエッチングするエッチング工程を含むエッチング方法。
【請求項2】
前記基板の表面には、前記酸化シリコン膜と、当該酸化シリコン膜とは種類が異なるシリコン含有膜と、が互いに隣接すると共に、各々露出して設けられ、
前記エッチング工程は、前記酸化シリコン膜及び前記シリコン含有膜のうち、前記酸化シリコン膜を選択的にエッチングする工程を含む請求項1記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記酸化シリコン膜とは種類が異なるシリコン含有膜は、シリコン膜である請求項2記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記基板の表面には、側壁が前記シリコン膜によって形成される凹部が設けられ、
前記エッチング工程は、当該凹部内に形成された前記酸化シリコン膜をエッチングする工程を含む請求項3記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記エッチングガスのうちの少なくともいずれかを前記基板に供給するエッチング期間と、
前記エッチング期間の後で前記各エッチングガスの前記基板への供給を停止し、前記基板の周囲を排気する排気期間と、からなるサイクルが繰り返される請求項1記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記ハロゲン含有ガス、前記アンモニアガス、前記アミンガスの各々の前記基板へ供給される期間は互いに重なる請求項5記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記アンモニアガス、前記アミンガスの各々の前記基板へ供給される期間は互いに重なり、
前記基板に供給する前記アンモニアガスの流量に対する前記アミンガスの流量の割合は、3より小さい請求項5記載のエッチング方法。
【請求項8】
表面に酸化シリコン膜が形成された基板を格納する処理容器と、
前記酸化シリコン膜をエッチングするために、ハロゲン含有ガスと、アンモニアガスと、アミンガスとをエッチングガスとして供給して、前記酸化シリコン膜をエッチングするガス供給機構と、
を備えるエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング方法及びエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程で、例えば半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)である基板に形成された酸化シリコン膜に対してエッチングが行われる。特許文献1では、当該酸化シリコン膜に対してアミンガスを供給してエッチングを行うことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2020/054476A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板に形成された酸化シリコン膜をエッチングするにあたり、エッチング後の酸化シリコン膜の形状を所望のものとすることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のエッチング方法は、表面に酸化シリコン膜が形成された基板に、ハロゲン含有ガスと、アンモニアガスと、アミンガスとをエッチングガスとして供給して、前記酸化シリコン膜をエッチングするエッチング工程を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、基板に形成された酸化シリコン膜をエッチングするにあたり、エッチング後の酸化シリコン膜の形状を所望のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態であるエッチング方法を行う対象であるウエハの縦断側面図である。
【
図2】比較例のエッチング工程を示すウエハの縦断側面図である。
【
図3】比較例のエッチング工程を示すウエハの縦断側面図である。
【
図4】他の比較例のエッチング工程を示すウエハの縦断側面図である。
【
図5】本実施形態の概要を示すための説明図である。
【
図6】本実施形態のエッチング工程を示すための縦断側面図である。
【
図7】本実施形態のエッチング工程を示すチャート図である。
【
図8】本実施形態のエッチング工程を実施するための装置の縦断側面図である。
【
図10】評価試験の結果の画像を示す説明図である。
【
図11】評価試験の結果の画像を示す説明図である。
【
図12】評価試験の結果の画像を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示のエッチング方法の一実施形態(実施例)について説明する。このエッチング方法の概要を述べると、ハロゲン含有ガス、NH
3(アンモニア)ガスと、アミンガスと、をエッチングガスとして基板であるウエハWに供給して、ウエハWの表面におけるSiOx(酸化シリコン)膜11をエッチングする。
図1に示すように、ウエハWの表面にはSi膜12が形成されており、Si膜12には溝が形成されている。従ってSi膜12と、Si膜12の下方側に形成される下層膜13とによって、ウエハWの厚さ方向に開口する凹部14が形成されており、Si膜12は凹部14をなす側壁として構成されている。なお、下層膜13は後述のいくつかの図では表示を省略する。
【0009】
そして上記の凹部14内に、SiOx膜11が形成されている。上記のエッチングガスを用いることによって、各々シリコン含有膜であると共にウエハWの表面に露出するSiOx膜11及びSi膜12のうち、SiOx膜11が選択的にエッチングされる。エッチング後にSiOx膜11の一部が凹部14内に残留するように処理が行われる。
【0010】
実施例のエッチングについてより具体的に述べると、ウエハWへのエッチングガスの供給と、ウエハWへのエッチングガスの供給を停止させた状態での反応生成物の昇華(気化も含む)と、を繰り返し行うことで、所望の量のSiOx膜11をエッチングする。なお、本実施例ではエッチングガスの一つであるハロゲン含有ガスとして、例えばHF(フッ化水素)ガスを用いる。
【0011】
上記したようにこのエッチングガスには、各々塩基性ガスであるNH3ガス及びアミンガスが含まれる。そのようにNH3ガス及びアミンガスの両方を用いることで、エッチング後に凹部14内に残留するSiOx膜11の上面(表面)について平坦性を比較的高くし、ウエハWから製造される半導体デバイスについて、当該平坦性が低いことによる性能の悪化を防止することを目的とする。なおこの実施例では、ハロゲン含有ガスとしてはHFガスを用い、アミンガスとしてはトリメチルアミン(TMA:trimethylamine)ガスを用いる。
【0012】
以下、実施例におけるエッチングガスの作用効果を明確に示すために、比較例の処理を先に説明する。エッチングガスとしてHFガス及びNH
3ガスを用いる処理を比較例1、エッチングガスとしてHFガス及びTMAガスを用いてエッチングを行う処理を比較例2とする。先ず比較例1におけるエッチングを説明する。
図2、
図3は、この比較例1の処理中に発生すると推定されるSiOx膜11の変化を示す、ウエハWの縦断側面図である。図では、HFガス及びNH
3ガスであるエッチングガスを、エッチングガス21として示している。なお以下の説明で、SiOx膜11に関する左右の端部、左右の中央部という記載は特に説明が無い限り、縦断面視での左右の端部、左右の中央部を夫々意味するものとする。
【0013】
上記のエッチングガス21が所定の温度に加熱された状態のウエハWに供給されることで(
図2(a))、凹部14内のSiOx膜11の表面が当該エッチングガス21と反応し、反応生成物であるケイフッ化アンモニウム[(NH
4)SiF
6:AFS]からなる層15が形成される。SiOx膜11上における、左右の端部と中央部との間で、AFS層15の厚さにばらつきが生じる(
図2(b))。
【0014】
より詳しくは、SiOx膜11に対して、左右の端部(即ち、Si膜12との界面に近い領域)よりも左右の中央部(即ちSi膜12との界面から比較的離れた領域)にエッチングガス21が比較的多く供給される。それによって、AFS層15において、左右の中央部の厚さが、左右の端部の厚さよりも大きくなる。なお、このようにSiOx膜の各部でエッチングガス21の供給量がばらつく理由はSi膜12に起因するものであるが、比較例2での説明で詳しく述べる。
【0015】
SiOx膜11における左右の中央部については、比較的厚さが大きいAFS層15が形成されたことでエッチングガス21との接触が妨げられる傾向となる。その一方で、SiOx膜11の左右の端部の上方に形成されているAFS層15の厚さは比較的小さいため、エッチングガス21に接しやすい。そのためSiOx膜11の左右の中央部よりも左右の端部で反応が進行し、SiOx膜11の表面の高さは、左右の中央部と左右の端部との間で均される(
図2(c))。しかし、後述の評価試験で示すようにAFSはSiに対して吸着性が低い一方で、AFSはAFSに対して吸着性が高く、凝集しやすい。それらのことに起因して、AFS層15を構成するAFSのうち、Si膜12の界面付近のAFSはAFS層15から脱離する。即ち、エッチングガス21の供給が続けられると、SiOx膜11の左右の端部上のAFS層15の厚さが低下する(
図2(d))。
【0016】
そのようにAFS層15の厚さが低下したことで、SiOx膜11の左右の端部ではエッチングガス21との反応が比較的大きく進行するが、左右の中央部では当該反応は比較的抑えられる。そして、SiOx膜11の左右の端部上、左右の中央部上でAFS層15の厚さが大きくなることで、エッチングガス21との接触が妨げられ、反応が停止する(
図3(a))。この反応停止時において、これまでに述べたように反応が進行したことで、SiOx膜11については、その表面が左右の中央部の方が左右の端部よりも高い形状(凸形状とする)となっている。そして、エッチングガス21のウエハWへの供給停止後、ウエハWの加熱とウエハWの周囲の排気とによりAFS層15が除去されるが、SiOx膜11としては、上記した凸形状のままである(
図3(b))。従って、SiOx膜11の表面の平坦性としては比較的低い。
【0017】
次に比較例2におけるエッチングを、比較例1との差異点を中心に、
図4を参照して説明する。
図4は、この比較例2の処理中に発生すると推定されるSiOx膜11の変化を示す、ウエハWの縦断側面図である。
図4は、このエッチングにおいて発生すると推定されるウエハWの変化の様子を示す縦断側面図である。
図4では、HFガス及びTMAガスであるエッチングガスを、エッチングガス22として示している。そのエッチングガス22が所定の温度に加熱された状態のウエハWに供給されることで(
図4(a))、凹部14内のSiOx膜11の表面が当該エッチングガス22と反応し、反応生成物16が生じる。上記したNH
3ガスから生じるAFSと比べて、この反応生成物16の昇華温度は低い。従って、この反応生成物16は生成後に速やかに昇華し、エッチングガス22のSiOx膜11への接触は、この反応生成物16によって妨げられ難い(
図4(b))。
【0018】
そしてエッチングガス22について、一部は凹部14の開口方向に沿って下方に供給されるが、他の一部は当該開口方向に対して斜めに供給される。そのように供給されたエッチングガス22のうちの一部は、下方へ向う途中でSi膜12に衝突して跳ね返ることによって、縦断面視でSiOx膜11の左右の中央部に供給される。即ち、当該左右の中央部には、エッチングガス22の分子が直接供給されたり、Si膜12に跳ね返った当該分子が供給されたりする。つまり、SiOx膜11の左右の中央部には、比較的多くのエッチングガス22の分子が衝突するが、上記の跳ね返りが起きることで左右の端部には当該分子が衝突しにくい。即ち、分子の衝突確率の違いによって、SiOx膜11は左右の端部よりも中央部で比較的大きくエッチングが進行する(
図4(c))。そのためエッチング終了後においてSiOx膜11は、その表面について縦断面視での左右の中央部の方が、左右の端部よりも低く位置する形状(凹形状とする)となっている(
図4(d))。従って、SiOx膜11の表面の平坦性としては比較的低い。
【0019】
図5は、実施例におけるエッチングを示す概念図である。図中左側は、
図2~
図4で説明したようにNH
3ガス及びTMAガスのうちの一方を用いてエッチングされたSiOx膜11を示す。これまでに述べたようにNH
3ガスをエッチングガスとして使用する場合と、TMAガスをエッチングガスとして使用する場合とで、生じる反応生成物の昇華性が異なることによって、エッチング後のSiOx膜11の中央部及び周縁部のうちのいずれが高くなるかが異なる。そこで実施例では、これらのガスの両方を使用する。そのようにすることで、これらのガスの作用のバランスが取られ、
図5の右側下段に示すように、NH
3ガスを単独で用いる場合よりも左右の中央部が端部に対して高くなることを抑えたり、
図5の右側上段に示すようにTMAガスを単独で用いる場合よりも左右の端部が中央部に対して高くなることを抑えたりすることができる。また、
図5の右側中央段に示すように、左右の中央部と端部との高さを揃えることも可能となる。
【0020】
実施例のエッチング工程について、
図6の縦断側面図と、
図7のタイミングチャートと、を参照して説明する。このタイミングチャートは、ウエハWへ各ガスを供給するタイミングを示している。後述するようにウエハWは処理容器内に格納されて処理されるので、
図7は処理容器内への各ガスの給断のタイミングを示している。また、この処理容器内は排気されて所定の圧力の真空雰囲気とされると共に、ウエハWは所定の温度になるように加熱された状態で、エッチングが行われる。
【0021】
そのような処理容器内のウエハWに対して、エッチングガスとしてHFガス、NH
3ガス及びTMAガスを供給する(チャート中、時刻t1)。即ち、
図2~
図4でエッチングガス21、22として示した各ガスをウエハWに供給する(
図6(a))。このガスのうち、HFガス及びNH
3ガス(エッチングガス21)がSiOx膜11に作用し、比較例1で述べたようにAFS層15が形成される。ただし、塩基性ガスとしてはTMAガスが含まれることで、NH
3ガスの分圧を比較的小さくすることができることから、AFS層15の厚さを比較的小さくすることができる。そのようにAFS層15の厚さが比較的小さいことにより、各エッチングガスはAFS層15を通過し、SiOx膜11に作用することができる。
【0022】
AFS層15は、比較例1で述べたように左右の中央部の厚さが、左右の端部の厚さよりも大きくなるように形成される。従って、このAFS層15のSiOx膜11に対するガスの遮蔽作用について見ると、SiOx膜11の左右の端部よりも中央部の方が大きく、当該中央部においてエッチングが抑制されることになる。しかし比較例2で述べたようにSi膜12によって、SiOx膜11の左右の中央部ではエッチングガス22の衝突確率が比較的高く、反応生成物16が生成して昇華が進行する。なお、エッチングガス21についても、エッチングガス22と同様に左右の中央部に比較的多く衝突する。
【0023】
このようにAFS層15の遮蔽作用の違いと、各ガスの衝突確率の違いとのバランスが取られ、SiOx膜11の左右の中央部と端部とについて、均一性高く変質が進行する(
図6(b))。そしてHFガス、NH
3ガス及びTMAガスの各々のウエハWへの供給が停止する(時刻t2)。そしてウエハWの加熱と処理容器内の排気とによって、AFS層15が昇華して除去される(
図6(c))。なお、SiO膜11上に反応生成物16等の他の反応生成物が残留している場合、当該他の反応生成物についても昇華して除去され、SiO膜11の表面が露出する。
【0024】
時刻t2から所定の時間が経過すると、再度、エッチングガスであるHFガス、NH3ガス及びTMAガスがウエハWに供給され(時刻t3)、SiOx膜11と反応する。然る後、当該エッチングガスのウエハWへの供給が停止し(時刻t4)、反応生成物の昇華及び処理容器内の排気により、SiOx膜11上の反応生成物が除去されてエッチングが進行すると共に当該SiOx膜11が露出する。続いて、時刻t4から所定の時間が経過すると、再度、エッチングガスであるHFガス、NH3ガス及びTMAガスがウエハWに供給される(時刻t5)。
【0025】
時刻t1~時刻t3の直前における処理を1回目のサイクルとすると、時刻t3~時刻t5の直前では1回目のサイクルと同様の2回目のサイクルが実施されて、SiOx膜11がエッチングされる。時刻t5以降も同様のサイクルが繰り返し行われ、サイクルが実施される度にエッチングが進行する。サイクルが所定の回数繰り返され、SiOx膜11について所望の量がエッチングされると、ウエハWに対する処理が終了する(
図6(d))。各サイクルにおいて、SiOx膜11は、中央部と端部とが均一性高くエッチングされるため、処理終了時のSiOx膜11について、SiOx膜11の表面の平坦性が比較的高いものとなる。
【0026】
なお、各サイクルにおいてエッチングガスのうちの少なくともいずれかが供給されている期間はエッチング期間に該当し、エッチングガスのいずれも供給されていない期間は排気期間に該当する。従って、この
図7のようにエッチング処理を行うにあたっては、時刻t1~t2及び時刻t3~t4がエッチング期間、時刻t2~t3及び時刻t4~t5が排気期間に該当する。
【0027】
上記の
図5を用いて、エッチング後のSiOx膜11の形状について補足して説明する。既述したようにエッチングガスから生じるAFSが、エッチング後のSiOx膜11の平坦性に形状に比較的大きく関与する。
図6、
図7で説明したように処理を行うにあたり、AFSについての生成が抑えられるかあるいは昇華性が高い処理条件であれば、
図5の右側上段に示すように、TMAガスの衝突確率の影響が比較的強く表れ、凹形状となりやすい。
【0028】
具体的には、処理容器内を比較的低い圧力とすること、処理容器内に供給するNH
3ガスの流量に対して処理容器内に供給するTMAガスの流量を比較的大きくすること、ウエハWの温度を比較的高くすること、及び/またはエッチングガスの供給終了から次にエッチングガスを供給するまでの時間(上記した処理の時刻t2~t3、t4~t5の時間)を比較的長くすることで、SiOx膜11は凹形状となりやすい。反対に、処理容器内を比較的高い圧力とすること、処理容器内に供給するNH
3ガスの流量に対して処理容器内に供給するTMAガスの流量を比較的小さくすること、ウエハWの温度を比較的低くすること、及び/またはエッチング後の排気時間を比較的短くすることで、
図5右側下段に示すようにエッチング後のSiOx膜11は凸形状となりやすい。
【0029】
つまり、エッチングガスとしてアミンガス及びNH3ガスの両方を使用することの他に、各種の処理条件を調整することによって、エッチング後のSiOx膜11の表面の形状を制御し、平坦性をより高くすることができる。後の評価試験で、SiOx膜11の表面の平坦性を高くする上で、上記の処理条件のうちNH3ガスの流量に対してTMAガスの流量の好ましい範囲について説明する。
【0030】
次に、本開示に係るエッチング処理を行うエッチング装置3について、
図8の縦断側面図を参照して説明する。図中31は、エッチング装置3を構成する処理容器である。図中39は、処理容器31の側壁に開口するウエハWの搬送口であり、ゲートバルブ33により開閉される。処理容器31内にはウエハWを載置するステージ41が設けられており、当該ステージ41には図示しない昇降ピンが設けられる。その昇降ピンを介して処理容器31の外に配置された基板搬送機構とステージ41との間で、ウエハWの受け渡しが行われる。
【0031】
ステージ41には温度調整部32が埋設されており、ステージ41に載置されたウエハWが温度調整される。この温度調整部32は、例えば水などの温度調整用の流体が流通する循環路の一部をなす流路として構成されており、当該流体との熱交換によりウエハWの温度が調整される。ただし温度調整部32としては、そのような流体の流路であることに限られず、例えば抵抗加熱を行うためのヒーターにより構成されていてもよい。エッチングガスを供給する際のウエハWの温度(ステージ41の表面の温度)は、AFSの昇華を行うために、例えば-20℃~150℃とすることが好ましい。
【0032】
また、処理容器31内には排気管33の一端が開口しており、当該排気管33の他端は圧力変更機構であるバルブ34を介して、例えば真空ポンプにより構成される排気機構35に接続されている。バルブ34の開度が調整されることによって、処理容器31内の圧力が所定の圧力とされてウエハWにエッチング処理が行われる。この圧力は、例えば0.133Pa~1.3×104Paである。
【0033】
処理容器31内の上部側には、ステージ41に対向するようにガスシャワープレート46が設けられている。ガスシャワープレート46には、ガス供給路51~54の下流側が接続されており、ガス供給路51~54の上流側は流量調整部50を各々介して、ガス供給源61~64に接続されている。各流量調整部50は、バルブ及びマスフローコントローラを備えている。ガス供給源61~64から供給される各ガスについては、当該流量調整部50に含まれるバルブの開閉によって下流側への給断が行われる。また当該各ガスについて、各流量調整部50により、下流側へ供給される流量が調整される。シャワープレート46に設けられるガス流路に供給された各ガスが、シャワープレート46の下面に設けられる多数の吐出口から下方に吐出される。ガスシャワープレート46、流量調整部50及びガス供給源61~64により、ガス供給機構が構成される。
【0034】
ガス供給源61、62、63、64からは、HFガス、TMAガス、N2ガス、NH3ガスが夫々供給され、これらの各ガスはガスシャワープレート46を介して処理容器31内に供給される。各流量調整部50により、これらの各ガスの供給は互いに独立して行うことができる。不活性ガスであるN2ガスはキャリアガスとして、エッチングガスと共にガスシャワープレート46を介して処理容器31内に供給される。また、N2ガスは上記のサイクルの実施時に、エッチングガスが供給されない期間においてもパージガスとして処理容器31内に供給される。即ち、上記したウエハWの処理中は常時、処理容器31内に供給される。
【0035】
また、エッチング装置3は、コンピュータである制御部30を備えており、この制御部30は、プログラム、メモリ、CPUを備えている。プログラムには、既述したウエハWの処理及びウエハWの搬送が行われるように命令(各ステップ)が組み込まれており、このプログラムは、記憶媒体、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、DVD等に格納され、制御部30にインストールされる。制御部30は当該プログラムによりエッチング装置3の各部に制御信号を出力し、各部の動作を制御する。具体的には、そのように制御される上記のエッチング装置3の動作としては、例えばステージ41に供給される流体の温度、ガスシャワープレート46からの各ガスの給断、バルブ34による排気流量の調整などの各動作が含まれる。
【0036】
なお上記の処理において、アミンガスとしてTMAガスを用いているが、TMAガス以外のアミンガスを用いてもよい。具体的には、ジメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノターシャリーブチルアミン、ピロリジン、ピリジンなどの各種のアミン化合物のガスを用いることができる。従って、1級、2級、3級のうちいずれのアミンをエッチングガスとして用いてもよい。そしてエッチングガスについては、エッチング対象の膜の材料に応じて適宜選択すればよい。SiOx膜11をエッチングする場合には、例えばハロゲン含有ガスとして、HF以外にはHCl、HBr、HI、SF6などの各ガスを用いることができる
【0037】
図7のチャートで示した処理ではサイクルを複数回繰り返し行っているが、必要なエッチング量が微量である場合にはサイクルは繰り返さず、1回のみ行うようにしてもよい。また、そのタイムチャートで示した例では、HFガスの供給期間と、TMAガスの供給期間と、NH
3ガスの供給期間とが、互いに重なるように各ガスを供給しているが、これらのガスの供給期間が重ならないようにしてもよい。従って例えば、HFガス、TMAガス、NH
3ガスについて順番に1つずつウエハWに供給してもよい。また、この3つのエッチングガスのうちの2つを先にウエハWに供給してから残りの1つを供給してもよい。つまり、3つのうちの2つのガスのみ、供給期間が互いに重なるようにしてもよい。
【0038】
そのように3種のエッチングガスについての供給期間にずれが生じる場合であっても、1つのサイクルとしては、各エッチングガスのウエハWへの供給後、ウエハW上の反応生成物を昇華させるために各エッチングガスを供給しない排気期間が設けられるようにすればよい。つまり、3種のうちの少なくともいずれかのエッチングガスが供給されるエッチング期間と、そのエッチング期間の後の排気期間と、からなるサイクルを繰り返すことでSiOx膜11のエッチングが行われるようにすればよい。
【0039】
なお、そのように3種のエッチングガスについて供給期間をずらしてもよいが、ウエハWの周囲におけるエッチングガスの分圧を高くしてエッチングレートを高くする観点から、3つのエッチングガスの供給期間を重ねることが好ましく、
図7で示したように当該3つのエッチングガスの供給が同時に行われる(供給期間の開始時点が揃い、且つ供給停止時点が揃う)ことがより好ましい。
【0040】
ところで、エッチングガスについては成分としてハロゲン、アミン、NH3が含有されることを述べてきた。本明細書で、そのようにエッチングガスや、エッチング対象となる膜がある特定の成分を含有するとは、当該成分を不純物として含有するという意味では無く、構成成分として含有する意味である。
【0041】
装置の構成としては任意であり、例えばエッチングガスの流路をなすガス供給路51~53について、ガスを貯留する貯留部としてタンクを介設すると共に当該タンクの下流側にバルブを介設する。当該バルブが閉鎖された状態でタンクにガスを貯留し、タンク内が加圧された状態でバルブを開くことで、各エッチングガスを処理容器31内に比較的短い期間に比較的大きな流量で供給可能な装置構成としてもよい。なお、ガス供給路52、53の下流側の部位は合流して共通化され、この共通化された部位に上記のタンクとバルブとを設けることで、NH3ガス及びTMAガスについては共通のタンクに貯留され、共通のバルブを介して処理容器31内に供給されるようにしてもよい。そしてHFガスについては、NH3ガス及びTMAガスに対して不要な反応が起きることを防止するために、NH3ガス及びTMAガスが貯留されるタンクとは別のタンクに貯留されて処理容器31内に供給する構成とすることが好ましい。つまり、ガス供給路51のタンクに貯留され、ガス供給路51のバルブを介して処理容器31内に供給されるようにすればよい。
【0042】
ところでSiOx膜11が設けられる凹部14について、上方(基板の厚さ方向)へ向けて開口することには限られず、側方に向けて開口する構成であってもよい。また、SiOx膜11とSi膜12との位置関係については、SiOx膜11と、Si膜12とが隣接すると共に、各々基板Wの表面に露出していれば、Si膜12の界面付近の領域と、当該界面から比較的離れた領域との間でのSiOx膜11のエッチング量を、本技術によって制御することができる。つまり、SiOx膜11についてはSi膜12が側壁をなす凹部14内に設けられることには限られない。なお、本技術はこのように基板の表面にSiOx膜と、他の種類のシリコン含有膜との両方が共に露出して形成される場合に適用されることには限られず、基板の表面全体にSiOx膜11が設けられ、このSiOx膜11をエッチングする場合に適用してもよい。
【0043】
なお、SiOx膜11が設けられる凹部14の側壁はSi膜12によって構成され、このSi膜12の反応生成物に対する吸着性の低さが、既述したようにSiOx膜11のエッチング後の形状に関与すると推定される。SiGe膜などのSi膜12以外のシリコン含有膜についても、Si膜12と同様に反応生成物に対する吸着性は低く、既述したエッチングガス(ハロゲン含有ガス及び塩基性ガス)に対する耐性は高い。そのため凹部14の側壁がSi膜12の代わりに、これらのSi膜12以外のシリコン含有膜によって構成されている場合についても、当該エッチングガスを用いたエッチングが有効であると考えられる。
【0044】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更、組み合わせがなされてもよい。
【0045】
本技術に関連して行われた評価試験について、以下に説明する。
[評価試験1]
評価試験1として、シミュレーションによってHF、NH3、TMA、AFSの各々におけるSiN(窒化シリコン)、SiO、Si、AFSに対する吸着に要するエネルギー量(ΔG/eV)を算出した。その結果を表1として示す。表中の各数値がそのエネルギー量であって、その値が小さいほど吸着性が高い。
【0046】
【0047】
この表1に示すようにAFS同士の吸着性は高く、互いに分子が集まりやすい傾向が有る。そして、SiOに対してはAFS及びNH
3が吸着されやすいが、Siに対してはAFS及びNH
3が吸着されにくい。そのため、エッチングガスとしてNH
3ガスが含まれる場合には、
図2等で説明したように反応が進行すると推定される。即ち、Si膜12に対するSiOx膜11の選択的なエッチングが行われること、及びAFS層15について
図2(d)で示すように、SiOx膜11の左右の端部では厚さが比較的小さくなることが考えられる。
【0048】
また、SiOに対するTMAの吸着性は比較的高いが、Siに対するTMAの吸着性は比較的低い。NH
3のSiO、Siに対する吸着性も、TMAのSiO、Siに対する吸着性と同様の傾向にある。そのため
図6で説明したように、TMAガス及びNH
3ガスの両方をエッチングガスとして用いた場合において、Si膜12に対して選択性をもってSiOx膜11をエッチングできることが分かる。
【0049】
さらに表1に示すように、SiNについてはSiに比べてAFSに対する吸着性が高い。従って
図2で説明したようにNH3ガスを用いてエッチングするにあたり、仮に凹部14の側壁をSiN膜で形成した場合にはAFSの剥がれが起こり難く、左右の端部でのエッチング量が抑えられることが推定される。従って、凹部14の側壁について、SiN膜により構成されていてもよいが、Si膜により構成されている場合の方が、より本技術の有効性が高いと考えられる。
【0050】
[評価試験2]
評価試験2としてエッチング装置3と同様の試験装置を用いて、
図1で示したように各膜が形成された基板に対して、実施例として説明したようにHFガス、NH
3ガス及びTMAガスを供給し、凹部14におけるSiOx膜11のエッチングを行った。これらのHFガス、NH
3ガス及びTMAガスについては
図7のチャートで示したように処理容器31内に供給した。従って、各ガスについて、互いに同時に基板に供給した。
【0051】
この評価試験2では、基板毎に処理容器31内に供給するNH3ガスとTMAガスとの流量比を変更して処理を行った。そして、エッチング後に各基板のSEM画像を取得し、凹部14の状態を観察した。具体的には、Si膜12の頂部とSiOx膜11の左右の中央部との高さの差(中央エッチング深さとする)、Si膜12の頂部とSiOx膜11の左右の端部との高さの差(端部エッチング深さとする)を各々取得した。そしてエッチング深さの差として、端部エッチング深さ-中央エッチング深さを算出した。従って、エッチング深さの差の絶対値が小さいほど、SiOx膜11の表面の高さの均一性が高い。即ち、SiOx膜の表面におけるエッチングの均一性が高い。以降の説明では、処理容器31に供給したTMAガスの流量を、処理容器31に供給したNH3ガスの流量で除した値(即ち、アンモニアガスの流量に対する前記アミンガスの流量の割合)について、「TMAガス流量/NH3ガス流量」として表記する場合が有る。
【0052】
上記したTMAガス流量/NH3ガス流量について、評価試験2-1では11:1、評価試験2-2では9:3、評価試験2-3では7:5、評価試験2-4では1:1、評価試験2-5では5:7、評価試験2-6では3:9、評価試験2-7では1:11とした。従って流量比について、評価試験2-1では11(=11/1)、評価試験2-2では3(=9/3)、評価試験2-3では1.4(=7/5)、評価試験2-4では1(=1/1)、評価試験2-5では0.71(=5/7)、評価試験2-6では0.33(=3/9)、評価試験2-7では0.09(=1/11)である。
【0053】
図9のグラフ及び
図10、
図11の画像は、評価試験2の結果を示したものである。グラフについては代表して評価試験2-1、2-3、2-5、2-7の結果についてのみ示している。グラフの横軸はTMAガス/NH
3ガス流量比であり、縦軸は上記したエッチング深さの差を示しており、所定の数値(図中ではAとして表記)の刻みで目盛りを付している。グラフより、評価試験2-1ではエッチング深さの差の絶対値が比較的大きいが、評価試験2-3、2-5、2-7ではこのエッチング深さの差の絶対値が比較的小さく、SiOx膜11の高さの均一性が高いことが分かる。
【0054】
また各画像より、SiOx膜11についてはTMAガス流量/NH3ガス流量が小さいほどSiOx膜11の表面については左右の中央部に対して左右の端部が低い凸形状となる。そして、TMAガス流量/NH3ガス流量が大きいほど、SiOx膜11の表面については左右の中央部に対して左右の端部が高い凹形状となることが分かる。評価試験2-1、2-2ではSiOx膜11について顕著な凹形状となっており、左右の中央部と、左右の端部との差が比較的大きいが、評価試験2-3~2-7では左右の中央部と、左右の端部との差が抑えられており、SiOx膜11の表面の平坦性は比較的高い。画像から、特に評価試験2-3~2-5での当該平坦性が高いことが分かる。従ってこの評価試験2からは、TMAガス、NH3ガスに関して供給期間が互いに重なるように基板に供給するにあたり、TMAガス流量/NH3ガス流量を3より小さい値とすることが好ましく、0.33~1.4とすることがより好ましいことが分かる。
【0055】
[評価試験3]
評価試験3として、評価試験2と同様に
図7のチャートに示したように各エッチングガスを複数の基板に各々供給して、SiOx膜11のエッチングを行った。この評価試験3では、TMAガス流量/NH
3ガス流量については基板毎に一定とする代わりに、各基板の温度を互いに異なる温度に設定してエッチングを行った。具体的には評価試験3-1、3-2、3-3として、基板の温度を夫々80℃、90℃、100℃に設定した。
【0056】
図12の画像は、評価試験3の結果を示したものである。評価試験3-3で凹形状となる傾向が最も大きく現れる一方、評価試験3-1で凹形状となる傾向が最も小さかった
これは実施形態で説明したように、AFSの昇華性に起因すると考えられる。そして、評価試験3-1、3-2ではSiOx膜11の表面の平坦性は比較的高い。従ってこの評価試験3からは、エッチング処理時における基板の温度としては、100℃より小さくすることが好ましく、90℃以下とすることがより好ましいことが確認された。
【符号の説明】
【0057】
W ウエハ
11 SiOx(酸化シリコン)膜
21 エッチングガス(HFガス、NH3ガス)
22 エッチングガス(HFガス、TMAガス)