(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129587
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】媒体収納装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/04 20060101AFI20240919BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240919BHJP
B41J 29/377 20060101ALI20240919BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B65H1/04 310C
G03G21/00 530
B41J29/377
B41J29/38 206
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038898
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉手 知紀
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
3F343
【Fターム(参考)】
2C061AP07
2C061AS02
2C061BB25
2C061CJ02
2C061CJ03
2C061HJ03
2C061HK11
2H270KA56
2H270LA24
2H270LA28
2H270LA44
2H270LC02
2H270MD02
2H270SA15
2H270SB19
2H270SB21
2H270SB23
2H270SC12
2H270ZC03
2H270ZC04
3F343FA02
3F343FB02
3F343FC19
3F343HE20
3F343HE27
3F343KB03
3F343MB04
3F343MB05
3F343MB09
(57)【要約】
【課題】収納空間を拡張する機能と、収納空間の環境を維持する機能を併用できる媒体収納装置を提供する。
【解決手段】シート状の媒体を収納する収納空間を有する収納手段と、収納空間を拡張可能にする空間拡張手段と、収納空間の拡張度合いを検知する検知手段と、収納空間の温湿度環境を調整可能にする環境調整手段と、拡張度合いに応じて環境調整手段の動作量を制御する制御手段と、を備えることで、収納空間を拡張する機能と、収納空間の環境を維持する機能を併用できる媒体収納装置による。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の媒体を収納可能とする収納空間を備える収納部と、
前記収納部に備えられ、前記収納空間を拡張可能にする空間拡張部と、
前記収納空間の拡張度合いを検知する拡張検知部と、
前記収納空間の温湿度環境を調整する環境調整部と、
前記拡張度合いに応じて前記環境調整部の動作量を制御する制御部と、
を備える、
ことを特徴とする媒体収納装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記拡張度合い及び前記媒体に関する情報に基づいて前記動作量を制御する、
請求項1に記載の媒体収納装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記拡張度合いを予め規定される複数の閾値を対比し、各閾値に対応する前記動作量を用いて、前記環境調整部の動作又は停止を含む動作量を決定し、
決定された動作量に基づいて当該環境調整部の動作を制御する、
請求項1又は2に記載の媒体収納装置。
【請求項4】
前記拡張度合いに対応させた前記動作量の調整量を任意に設定可能にする動作量設定部をさらに備える、
請求項1に記載の媒体収納装置。
【請求項5】
前記動作量設定部は、前記収納空間の拡張時における前記調整量を設定可能にする、
請求項4に記載の媒体収納装置。
【請求項6】
前記動作量設定部は、前記収納空間の非拡張時における前記調整量を設定可能にする、
請求項4に記載の媒体収納装置。
【請求項7】
シート状の媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部に前記媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部を介して前記画像形成部に供給される前記媒体を収納する媒体収納部と、
を備え、
前記媒体収納部が請求項1に記載の媒体収納装置である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体収納装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の媒体を積層して収納媒体収納装置が知られている。媒体収納装置は、シート状の媒体に画像を形成する画像形成装置における媒体の収納部に適用されることで、画像形成部に対し供給する媒体を収納し供給する機能を発揮する。また、媒体の収納空間に収納可能な媒体よりも大きな媒体への対応を目的として、収納空間を拡張可能に構成した媒体収納装置が知られている。
【0003】
媒体の品質を維持することを目的として、媒体の収納空間の温度環境や湿度環境を保つ機能を備える技術が開示されている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術のように、媒体の収納空間の環境を維持する機能と、従来から知られているような収納空間の拡張機能を併用する場合、収納空間の気密性が損なわれることが懸念される。例えば、気密性が損なわれると、従来から開示されているような、除湿ヒータなどで収納空間を一定の室調に保つ機能が本来要求される性能を発揮できない。また、エアなどを用いて媒体を浮上させて分離させるような媒体収納装置であれば、気密性が損なわれる状態になると、収納空間の気流制御を最適状態に保つことは困難である。
【0005】
すなわち、従来技術によれば、収納空間を拡張する機能と、収納空間の環境を維持する機能を併用させるには課題がある。
【0006】
本発明は、収納空間を拡張する機能と、収納空間の環境を維持する機能を併用できる媒体収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、媒体収納装置に関し、シート状の媒体を収納可能とする収納空間を備える収納部と、前記収納部に備えられ、前記収納空間を拡張可能にする空間拡張部と、前記収納空間の拡張度合いを検知する拡張検知部と、前記収納空間の温湿度環境を調整する環境調整部と、前記拡張度合いに応じて前記環境調整部の動作量を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、収納空間を拡張する機能と、収納空間の環境を維持する機能を併用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】収納空間を拡張した状態の媒体収納装置の平面図。
【
図6】収納空間を拡張した状態の媒体収納装置の正面図。
【
図7】収納空間の拡張度合いを検知する検知部を説明する図。
【
図8】収納空間の拡張度合いを検知する検知部を説明する図。
【
図9】収納空間の拡張度合いを検知する検知部を説明する図。
【
図10】収納空間の拡張度合いを検知する検知部を説明する図。
【
図11】媒体収納装置における制御処理の流れを例示するフローチャート。
【
図12】媒体収納装置における制御処理の流れを例示するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の要旨]
以下、本発明に係る媒体収納装置及び画像形成装置の実施形態について説明する。本発明に係る媒体収納装置は、シート状の媒体を収納可能な収納空間を有するシート収納部において、収納空間を拡張可能な構造を有するものを前提としている。そして、収納空間の拡張度合いを段階的に検知可能な検知手段と、収納空間の温湿度環境を変化させる温湿度環境変化手段と、を備えている。これらを前提にして、本発明に係る媒体収納装置は、拡張度合いの検知結果に応じて温湿度環境変化手段の動作条件の動作量を調整することで、拡張された収納空間に適した温湿度環境を維持できる機能を提供するものである。
【0011】
また、収納対象である媒体の種類に応じても温湿度環境変化手段の動作条件を可変させる機能も提供する。なお、温湿度環境変化手段の動作条件とは、温湿度環境変化手段として動作する機構の動作制御のための制御量を調整するためのパラメータに相当する。
【0012】
[画像形成装置の実施形態]
本発明に係る画像形成装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、画像形成装置の実施形態としてのMFP10の外観図である。MFP10は、シート状の媒体としての用紙Pに画像を形成する装置であって、画像形成部11、操作パネル12、ADF部13、媒体排出部14、媒体供給部15と、画像形成制御部100と、を備える。また、MFP10には、媒体供給部15の収納空間を拡張可能な媒体収納部20を装着することができる。
【0013】
画像形成部11は、媒体供給部15又は媒体収納部20から供給されたシート状の媒体としての用紙Pに対して画像を形成し、媒体排出部14へと搬送する。
【0014】
操作パネル12は、MFP10の動作に関わる設定を変更可能なユーザインターフェースを構成し、用紙Pに対するジョブの実行指示や、実行時の条件などを設定する操作設定機能を提供する構成である。操作パネル12は、後述するように、媒体収納部20において実行される判定処理や制御に用いられる調整量の設定にも用いることができる。すなわち、操作パネル12は動作量設定部を構成する。
【0015】
ADF部13は、用紙Pを自動的に読み取り部へと移動させて画像読み取り機能を動作させる構成である。
【0016】
媒体排出部14は、画像形成部11において画像が形成された用紙Pを所定の位置に排出する。
【0017】
媒体供給部15は、用紙Pを積載して収納可能な収納空間を有する構成であって、画像形成部11に対して用紙Pを供給する機能を有する。
【0018】
画像形成制御部100は、MFP10の動作を制御する。画像形成制御部100の詳細については、後述する。
【0019】
媒体収納部20は、媒体供給部15における収納可能な用紙Pの収納数を拡張する構成であって、用紙Pを積載して収納可能な収納空間を有する。媒体収納部20は、MFP10に対し着脱自在であって、独立した装置としての媒体収納装置を構成する。以下において、本発明に係る媒体収納装置の実施形態を説明するにあたり、媒体収納部20を、その一実施形態として用いることとする。媒体収納装置としての媒体収納部20は、MFP10が備える媒体供給部15の収納空間では収まらない量の用紙Pを収納し、また、媒体供給部15の収納空間において収まらない大きさの用紙Pを収納可能とする。
【0020】
また、媒体収納部20には、画像形成制御部100と連携して、媒体収納部20の動作制御及び動作状況の判定を行う媒体収納制御部200を備えている。媒体収納制御部200の詳細も後述する。
【0021】
[制御ブロック]
次に、MFP10が備える画像形成制御部100と、媒体収納部20が備える媒体収納制御部200の機能構成について
図2を用いて説明する。
図2は、画像形成制御部100と媒体収納制御部200の機能ブロック図である。
図2に示すように、画像形成制御部100は、操作パネル12からの「給紙条件設定」を受けてMFP10が備える機能構成の動作を制御し、また、MFP10の各機能構成からの情報を受けて装置状態表示を制御する。
【0022】
媒体収納制御部200は、媒体収納部アクチュエータ210に対し、動作の制御を行う。媒体収納部アクチュエータ210には、例えば、用紙Pを収納空間から供給するために取り出す給紙モータ211や、給紙モータ211によりピックアップされた用紙Pを画像形成部11に向けて送り出す搬送モータ212や、収納空間内の用紙Pの量に応じて底板を昇降させる底板昇降モータ213や、積載されている用紙Pを分離させるための気流を発生させる分離ファン214や、分離した用紙Pを供給方向へと移動させるために浮遊させる浮上ファン215や、収納空間内の温湿度環境を調整する環境調整部としての除湿ヒータ216など、が含まれる。なお、媒体収納部アクチュエータ210には、上記にて列挙した構成以外の構成が含まれてもよい。
【0023】
媒体収納制御部200は、媒体収納部アクチュエータ210に対し、例えば、給紙条件に応じて浮上ファン215や分離ファン214の動作量の制御や、用紙Pの条件(大きさ、厚さ、収納空間内の用紙Pの枚数)などに応じた、温度と湿度の調整(温湿調整)を行うための動作量の制御を行う。なお、いずれの動作量の制御においても、後に説明するように、収納空間を拡張している度合い(拡張度合い)に応じて、同じ条件であっても異なる動作量になるように制御する。
【0024】
図1を参照すれば明らかなとおり、MFP10の構成は、画像形成部11を有する本体部分に対し、その下方に拡張部分としての媒体収納部20が配置される。媒体収納部20の動作制御は、画像形成制御部100から媒体収納制御部200に通知される「給紙設定(用紙情報)」に基づいて実行される。また、媒体収納制御部200から画像形成制御部100へは、媒体収納部20の状態を通知する情報が送られる。
【0025】
MFP10の操作パネル12にてユーザが給紙条件(用紙Pのパラメータを含む情報であって、用紙Pの大きさや厚さなどを決定づける情報)を設定すると、MFP10が有する画像形成制御部100が、MFP10が備える各種機構(媒体供給部15,画像形成部11,媒体排出部14)などに対し、これらの動作を制御するためのパラメータを設定する。
【0026】
画像形成制御部100はパラメータの設定と並行して、媒体収納部20が有する媒体収納制御部200に対し、制御条件を通知する。
【0027】
制御条件を受け取った媒体収納制御部200は、媒体収納部センサ220を介して媒体収納部20の内部の状態を検出し、用紙Pを供給可能な状態であるか否かを判定する。供給可能な状態であれば、媒体収納制御部200は、媒体収納部アクチュエータ210に対して、それぞれの動作を制御するための動作量を通知して、媒体供給動作を実行させる。
【0028】
この際、例えば紙厚が厚い用紙Pなどが給紙条件によって設定されている場合、MFP10からの条件設定に応じて、分離ファン214,浮上ファン215の動作量を調整し、通常の厚さの場合よりも強くエアを吹き出すように動作させる。
【0029】
また、紙厚が薄い用紙P(=湿度に弱い用紙P)が給紙条件によって設定されている場合、MFP10からの条件設定に応じて、除湿ヒータ216の動作量を調整し、通常の厚さの場合よりも温度を調整する/加湿するなどの調整を行う。
【0030】
[媒体収納部20の概要]
次に、媒体収納部20の構成について
図3と
図4を用いて説明する。
図3は、媒体収納部20の平面図である。
図4は、媒体収納部20の正面図である。
【0031】
媒体収納部20は、駆動源や制御部などの構成を格納可能な筐体21と、用紙Pを載置可能な用紙載置台22と、用紙Pを収納空間に補充するために用紙載置台22を引き出し可能にする引き出し部23と、を備える。また、媒体収納部20は、用紙載置台22の引き出し状態を検出可能な開閉検知センサ227と、用紙載置台22を、用紙Pが供給可能位置に至るように底板を昇降可能にする底板昇降モータ213と、を備える。また、媒体収納部20は、用紙Pの側面位置および背面位置を保持可能なサイドフェンス24及びエンドフェンスと25と、用紙Pの供給方向の先頭側に設けられ用紙Pの供給搬送を可能とする用紙供給搬送部26と、を備える。そして、媒体収納部20は、用紙供給搬送部26により搬送された用紙PをMFP10に搬送する縦搬送部27と、用紙載置台22上に設けられ、媒体収納部20の内部空間(収納空間)の湿調を行う除湿ヒータ216と、媒体収納制御部200と、基本構成として備える。
【0032】
さらに、媒体収納部20は、拡張可動部28と拡張検知部228と、を備える。拡張可動部28は、前述の用紙載置台22の後部に設けられ、一定の範囲で用紙載置台22を引き出し可能にすることで、
図3及び
図4の状態では収納不能の大きさの用紙P(長サイズ用紙PL)を収納可能な状態にするために機能する。拡張検知部228は、拡張可動部28によって拡張された用紙載置台22の収納様態を検出する。
【0033】
[媒体収納部20の長サイズ対応]
次に、
図5と
図6を用いて、長サイズ用紙PLを収納可能な状態にした場合の媒体収納部20の態様を説明する。
図5は、媒体収納部20の平面図である。
図6は、媒体収納部20の正面図である。
【0034】
拡張可動部28は、一定の範囲をガイドレールなどの手段によって、用紙載置台22を含む構成を引き出し可能に保持する。用紙載置台22の位置が所定の第一位置までの範囲内(収納空間の拡張度合いが所定の範囲内)であれば、媒体収納制御部200は、引き出し部23が閉じられた状態(閉状態)である判定するように構成されている。この場合、媒体収納制御部200は、媒体収納部20を利用可能状態と判定する。
【0035】
すなわち、拡張可動部28は収納空間を拡張可能にする空間拡張部に相当する。
【0036】
また、用紙載置台22の位置が所定の第二位置の範囲であって、第一位置よりも収納空間を開放した状態であり、用紙Pを補給する状態であれば、媒体収納制御部200は、引き出し部23が開けられた状態(開状態)であると判定するように構成されている。この場合、媒体収納制御部200は、媒体収納部20を利用不能状態と判定する。
【0037】
したがって、媒体収納部20は、引き出し部23を通常の状態(
図3及び
図4の状態)から引き出した状態(
図5及び
図6の状態)であっても、所定の第一位置までの引き出し状態であれば、長サイズ用紙PLの供給動作を実行することができるように構成されている。なお、引き出し部23を引き出した状態で、媒体収納部20を利用可能状態として判定する位置(上記の第一位置に相当)は、複数設けてもよく、用紙Pの大きさによって段階的に収納空間を拡張することができるように構成されている。
【0038】
また、媒体収納部20は、すでに説明のとおり、収納空間内の湿度調整(湿調)を行うことができるように、除湿ヒータ216を備えている。除湿ヒータ216を動作させて湿調を実行している状態のとき、すなわち、媒体収納部20の収納空間が拡張された状態(引き出し部23が引き出されて開口している状態)のとき、湿度が所定の状態になるように調整することが困難になる。その結果、本来想定されている性能(=望ましい湿調状態)を発揮できない、また、用紙載置台22が拡張状態に有ることで、本来湿調が不要な用紙Pについても湿調の必要性が生じるなどの懸念が有る。
【0039】
また、用紙Pの側面や用紙Pの供給方向にプロアファン(分離ファン214、浮上ファン215)などのエア吹付け手段を備え、エアを吐き出して用紙Pに当てることで、用紙Pの分離及び搬送を行う構成も存在する。しかし、媒体収納部20のように、収納空間を拡張可能にし、拡張状態(開口が開いている状態)において利用可能とする場合、開口部の影響によって、用紙載置台22を含む収納空間内の気流が本来想定している気流と異なる状況になり得る。その結果、除湿ヒータ216の例と同様に、本来想定されている性能を発揮できず、搬送品質、給紙性能の低下が生じる懸念が有る。
【0040】
そこで、本実施形態に係る媒体収納部20では、長サイズ用紙PLに対応可能とした拡張機構を備えつつ、用紙載置台22を拡張状態の位置に移動させた場合に、その位置を段階的に検出可能な拡張検知部228を備える。この拡張検知部228によって、除湿ヒータ216やエア吐出手段(分離ファン214、浮上ファン215)など、用紙載置台22が拡張位置にあるときに性能を損なう可能性がある媒体収納部アクチュエータ210の制御量を最適化する。これによって、収納空間を拡張可能な媒体収納装置の利便性を向上できるようになる。
【0041】
[媒体収納部20における収納空間の拡張状態]
次に、媒体収納部20の収納可能空間を拡張したときの拡張度合いを検知する仕組みの例について、
図7と
図8を用いて説明する。
図7は、拡張可動部28と拡張検知部228の相対的な関係を例示する図である。
図8は、拡張状態を検知する際の、段階的に変化する拡張状態の様子を例示する図である。
【0042】
拡張検知部228は、例えば、光学センサなどを適用可能であり、拡張可動部28が移動した状態や、移動量を検知することができるように構成されている。例えば、発光部からの光が拡張可動部28に向けて出射され、拡張可動部28に受光部を備えている構成であれば、受光部における受光量に基づいて、発光部と受光部との相対位置を判定し、拡張可動部28が閉状態であるのか開状態であるのか、また、開状態である場合、拡張度合いはどの程度なのか、を判定できるようにする。
【0043】
なお、拡張検知部228は、拡張可動部28の移動量、位置などを検知できるセンサであれば、その方式を限定するものではない。上記に例示したような光学センサの他、超音波を用いて拡張可動部28の位置を検知する超音波センサを適用することも可能である。
【0044】
図8(a)は、収納空間を拡張していない状態であって、この状態から引き出し部23を引き出して用紙載置台22を移動させると、
図8(b)の状態、
図8(c)の状態、
図8(d)の状態ようになる。
【0045】
媒体収納部20を通常の使い方で使用する場合には、
図8(a)のように拡張可動部28は収納された状態である。
【0046】
用紙載置台22を拡張して使用したい場合には、
図8(b)、
図8(c)、
図8(d)のように収納空間を拡張する。拡張検知部228は、拡張可動部28との相対的な位置を段階的に検知できるように、検知結果の判定を段階的に設定した閾値との比較で行うように構成されている。例えば
図8(a)の状態であれば非検知、
図8(b)の状態であればセンサ左方の検出閾値:大と判定して「検出結果A」を判定結果として出力する。
【0047】
同様に
図8(c)の状態であれば、センサ右方の検出閾値:大と判定して「検出結果B」を判定結果として出力する。
【0048】
また、
図8(d)の状態であれば、センサ前方に一定の閾値ありと判定して「検出結果C」を判定結果として出力する。
【0049】
「検出結果A」、「検出結果B」、「検出結果C」を媒体収納制御部200にフィードバックし、媒体収納制御部200によって、除湿ヒータ216とエア吐出手段(分離ファン214、浮上ファン215)の制御量変更パラメータとして使用する。なお、拡張検知部228は、すでに説明のとおり、光学的手段や音波を利用したセンサなどを用いても良いし、フィラーなどによる物理的な様態を利用したセンサでもよい。
【0050】
図9は、用紙載置台22の拡張状態に応じた除湿ヒータ制御変更テーブルT1の一例を示したものである。除湿ヒータ制御変更テーブルT1は、媒体収納制御部200が備える記憶手段に予め記憶されているものとするが、操作パネル12を介してユーザが任意に変更できるようでもよい。
【0051】
図10は、用紙載置台22の拡張状態に応じたブロアファン制御変更テーブルT2の一例を示したものである。ブロアファン制御変更テーブルT2も、媒体収納制御部200が備える記憶手段に予め記憶されているものとするが、操作パネル12を介してユーザが任意に変更できるようでもよい。
【0052】
除湿ヒータ制御変更テーブルT1とブロアファン制御変更テーブルT2は共に、用紙Pの厚さ(坪量)と拡張検知部228からの出力(媒体収納部20の拡張度合い)に応じて、媒体収納部アクチュエータ210の動作量を調整する調整量を保持している。この調整量が、各アクチュエータの動作量を調整して制御するためのパラメータとなる。なお、除湿ヒータ制御変更テーブルT1とブロアファン制御変更テーブルT2において、坪量は固定し、拡張検知部228からの出力のみに応じて媒体収納部アクチュエータ210の動作量を調整するように制御してもよい。
【0053】
媒体収納部20は、MFP10からの媒体情報に応じて、用紙Pごとに最適な制御を行う。例えば、坪量0~1(薄紙)の場合、湿度などの影響を受けやすい。そこで、湿度の影響を受けやすい種類の用紙Pを収納する状態(操作パネル12によって設定される)のときは、画像形成制御部100から通知される媒体情報に基づいて、除湿ヒータ216を動作させ(オン)、坪量2以上の用紙Pの場合は、除湿ヒータ216を動作させない(オフ)とするなど、設定を変更可能にする。
【0054】
また、媒体収納部20は、収納空間が拡張された度合い(拡張度合い)を拡張検知部228からの出力に応じて判定し、用紙載置台22が拡張された状態で収納空間内の気流様態の変化を想定して、気流を発生させるアクチュエータの動作量を変更し、媒体収納部20の内部の湿調性能を損なわずに媒体収納部20を使用可能とする。
【0055】
例えば、坪量5の用紙Pに対して、用紙載置台22の拡張状態が非検出の場合、坪量5の用紙Pに対しての除湿は不要となるため、除湿ヒータ216をOFFにし、プロアファン(分離ファン214、浮上ファン215)のDuty設定を10%とする。すなわち、プロアファン(分離ファン214、浮上ファン215)はPWM制御で動作するものとする。
【0056】
また、坪量5の用紙Pに対し、用紙載置台22の拡張状態が「検出結果C」(最大拡張)の場合、坪量5の用紙Pに対しては除湿が不要であるが、除湿ヒータ216をONにし、プロアファン(分離ファン214、浮上ファン215)のDuty設定を20%とする。
【0057】
[媒体収納制御部200における制御処理のフロー]
次に、媒体収納制御部200において実行される制御処理の例について、
図11及び
図12のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
まず、MFP10にて、給紙条件を設定する(S1101)。続いて、媒体収納制御部200が、画像形成制御部100から媒体情報を取得する(S1102)。続いて、媒体収納部20の用紙載置台22の引き出し状態によって、収納空間の開閉状態を判定する(S1103)。収納空間が開いている場合(S1104:YES)、用紙Pの補給状態であると判定し、用紙Pの補給が完了した後に用紙載置台22が元の状態に戻されるまで(S1106、S1104:YES)、処理をループする。
【0059】
収納空間が閉じている場合(S1104:No)、媒体収納制御部200は拡張検知部228からの出力を判定する(S1105)。用紙載置台22が拡張されている場合(S1107:YES)、処理を
図12のフローチャートへと移行する。用紙載置台22が拡張されていない場合(S1107:No)、すなわち、非拡張時の場合、該当する調整量を設定して、所定の給紙動作を開始する(S1108)。給紙動作が終了したら(S1109)、一連の動作を終了する(S1109)。
【0060】
S1107において、用紙載置台22が拡張されている場合(S1107:YES)、拡張検知部228からの出力に基づいて拡張状態を判定する(S1201)。用紙載置台22の拡張状態が「検出結果A(拡張:小)」ならば(S1202:YES)、媒体収納制御部200は、用紙載置台22の拡張状態が「検出結果A(拡張:小)」の場合の動作量を、除湿ヒータ制御変更テーブルT1とブロアファン制御変更テーブルT2から取得する(S1203)。
【0061】
用紙載置台22の拡張状態が「検出結果A(拡張:小)」ではないならば(S1202:No)、用紙載置台22の拡張状態が「検出結果B(拡張:中)」であるか否かを判定する(S1204)。用紙載置台22の拡張状態が「検出結果B(拡張:中)」であるならば(S1204:YES)、媒体収納制御部200は、用紙載置台22の拡張状態が「検出結果B(拡張:中)」の場合の動作量を、除湿ヒータ制御変更テーブルT1とブロアファン制御変更テーブルT2から取得する(S1205)。
【0062】
用紙載置台22の拡張状態が「検出結果B(拡張:中)」ではないならば(S1204:No)、媒体収納制御部200は、用紙載置台22の拡張状態が「検出結果C(拡張:大)」の場合の動作量を、除湿ヒータ制御変更テーブルT1とブロアファン制御変更テーブルT2から取得する(S1206)。
【0063】
続いて、用紙設置台の拡張状態(収納空間の拡張度合い)に基づいて取得した動作量を用いて除湿ヒータ216のON/OFF判定を行う(S1207)。除湿ヒータ216がONならば(S1207:YES)、除湿ヒータ216を動作させる(S1208)。除湿ヒータ216がOFFならば(S1207:No)、除湿ヒータ216を動作させずに次の判定に移行する。
【0064】
続いて、用紙設置台の拡張状態(収納空間の拡張度合い)に基づいて取得した動作量を用いて除湿ヒータ216のON/OFF判定を行う(S1207)。プロアファン(分離ファン214、浮上ファン215)のDuty変更判定を行う(S1209)。プロアファン(分離ファン214、浮上ファン215)のDuty設定に変更があるときは(S1209:YES)、Dutyの設定量を変更する(S1210)。Duty設定に変更がないときは(S1209:No)、Dutyの設定量を変更せずに、処理をS1108に移行する。
【0065】
以上説明したとおり、本実施形態に係る媒体収納部20は、用紙載置台22の拡張状態の検出状態又は給紙条件、若しくはこれらの両方に応じて、除湿ヒータ216やプロアファン(分離ファン214、浮上ファン215)の動作を制御し、制御量を最適化する。これによって、用紙Pの収納空間における環境条件を調整する機能として本来想定されている性能を損なわないように調整し、媒体収納部20としての利便性を向上できる。
【0066】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0067】
本発明の内容は、例えば、以下のとおりである。
<1>
シート状の媒体を収納可能とする収納空間を備える収納部と、
前記収納部に備えられ、前記収納空間を拡張可能にする空間拡張部と、
前記収納空間の拡張度合いを検知する拡張検知部と、
前記収納空間の温湿度環境を調整する環境調整部と、
前記拡張度合いに応じて前記環境調整部の動作量を制御する制御部と、
を備える、
ことを特徴とする媒体収納装置である。
<2>
前記制御部は、前記拡張度合い及び前記媒体に関する情報に基づいて前記動作量を制御する、
前記<1>に記載の媒体収納装置である。
<3>
前記制御部は、前記拡張度合いを予め規定される複数の閾値を対比し、各閾値に対応する前記動作量を用いて、前記環境調整部の動作又は停止を含む動作量を決定し、
決定された動作量に基づいて当該環境調整部の動作を制御する、
前記<1>又は<2>に記載の媒体収納装置である。
<4>
前記拡張度合いに対応させた前記動作量の調整量を任意に設定可能にする動作量設定部をさらに備える、
前記<1>乃至<3>のいずれか一つに記載の媒体収納装置である。
<5>
前記動作量設定部は、前記収納空間の拡張時における前記調整量を設定可能にする、
前記<4>に記載の媒体収納装置である。
<6>
前記動作量設定部は、前記収納空間の非拡張時における前記調整量を設定可能にする、
前記<4>に記載の媒体収納装置である。
<7>
シート状の媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部に前記媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部を介して前記画像形成部に供給される前記媒体を収納する媒体収納部と、
を備え、
前記媒体収納部が前記<1>乃至<6>のいずれか一つに記載の媒体収納装置である、
ことを特徴とする画像形成装置である。
【符号の説明】
【0068】
10 :MFP
11 :画像形成部
12 :操作パネル
13 :ADF部
14 :媒体排出部
15 :媒体供給部
20 :媒体収納部
21 :筐体
22 :用紙載置台
23 :引き出し部
24 :サイドフェンス
26 :用紙供給搬送部
27 :縦搬送部
28 :拡張可動部
100 :画像形成制御部
200 :媒体収納制御部
210 :媒体収納部アクチュエータ
211 :給紙モータ
212 :搬送モータ
213 :底板昇降モータ
214 :分離ファン
215 :浮上ファン
216 :除湿ヒータ
220 :媒体収納部センサ
227 :開閉検知センサ
228 :拡張検知部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】