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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129725
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】粒子充填層の流体状況観察装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/08 20060101AFI20240919BHJP
   B01F 23/231 20220101ALI20240919BHJP
【FI】
G01N15/08 Z
B01F23/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039109
(22)【出願日】2023-03-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年8月12日http://www.jsmf.gr.jp/mfsymp2022/doc/program.html http://www.jsmf.gr.jp/mfsymp2022/web/mfsymp2022.zip 〔刊行物等〕 日本混相流学会 混相流シンポジウム2022、令和4年8月20日 〔刊行物等〕 令和4年8月24日 https://confit.atlas.jp/guide/event/aesj2022f/proceedings/list 〔刊行物等〕 一般社団法人日本原子力学会 2022年秋の大会、令和4年9月8日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、原子力規制庁「原子力施設等防災対策等委託費(粒子状デブリ冷却性実験)事業」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】植田 翔多
(72)【発明者】
【氏名】新井 崇洋
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB05
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】粒子を充填した配管内を直接観察することができる粒子充填層の流体状況観察装置を提供する。
【解決手段】気液二層流体が流通する容器本体6と、容器本体6の内部に多数収容されるアモルファスフッ素樹脂(非晶質フッ素樹脂)製の透明な粒体7と、粒体7の間を気液二層流体が流通する状態を撮影するカメラ8とを備え、粒子7を充填した容器本体6内を流通する気液二層流の状態を直接視認して観察する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液二層流体が流通する容器本体と、
前記容器本体の内部に多数収容される粒体と、
前記粒体の間を気液二層流体が流通する状態を視認状態で表示する観察手段とを備えた
ことを特徴とする粒子充填層の流体状況観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、
前記粒体は、屈折率が気液二層流体の液体とほぼ同じ値の材質からなる透明な粒体である
ことを特徴とする粒子充填層の流体状況観察装置。
【請求項3】
請求項2に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、
前記容器本体に対して、気体の大きさが任意に調整された二層流体を供給する二層流体供給手段と、
前記二層流体供給手段から供給された気体の状態を維持する気泡調整手段とを備えた
ことを特徴とする粒子充填層の流体状況観察装置。
【請求項4】
請求項3に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、
観察手段の後流側に配される格子状構造体を備え、
前記格子状構造体は、
長尺状の一方検出体、長尺状の他方検出体が交差して相互に間隔を開けて配され、電気信号の送受信により気泡の状態を導出する検出部材である
ことを特徴とする粒子充填層の流体状況観察装置。
【請求項5】
請求項3もしくは請求項4に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、
前記粒体は、屈折率が1.33から1.34の範囲の材質製である
ことを特徴とする粒子充填層の流体状況観察装置。
【請求項6】
請求項5に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、
観察手段は、
気液二層流体が流通する状態を撮像して画像を表示する撮像手段である
ことを特徴とする
粒子充填層の流体状況観察装置。
【請求項7】
請求項6に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、
前記容器本体を流通した気液二層流体を回収して気体と液体を分離する分離手段と、
分離された液体を前記容器本体の入口における前記二層流体供給手段に送る給水手段と、
前記容器本体の入口における前記二層流体供給手段に圧縮空気を送る気体供給手段とを備えた
ことを特徴とする粒子充填層の流体状況観察装置。
【請求項8】
請求項1に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、
前記容器本体に対して、気体の大きさが任意に調整された気液二層流体を供給する二層流体供給手段と、
前記二層流体供給手段から供給された気体の状態を維持する気泡調整手段とを備えた
ことを特徴とする粒子充填層の流体状況観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、化学プラントの触媒充填層や、CO地中貯留層を模擬した流路を流通する流体(単相流、気液二相流)の状況を可視化して観察する粒子充填層の流体状況観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、化学プラントでは、触媒が充填された流路における冷却水や溶液の流通状況(流況)を把握することは、プラントの設計上肝要となっている。また、粒子間の空隙が大きい岩盤などからなり、水や塩水で飽和されている帯水層にCOを圧入するCO地下中貯留層では、COの溶解状況、COがトラップされる状況、COがトラップされた後の挙動である経時変化(長時間動態)などを把握することは、CO地下中貯留への適用性の判断を行う上で肝要となっている。
【0003】
冷却水や溶液の流通状況(流況)の把握や、COのCO地下中貯留層での状況の把握を行うためには、流体の状況を外部から把握して、液相、気相の挙動を検出する技術を適用することができる。例えば、超音波を用いて配管内部の流体の液位や流速を検出する技術(例えば、特許文献1)を適用することができる。
【0004】
触媒が充填された流路や、粒子間の空隙が大きい岩盤などを流通する状況においては、配管の内部に粒子を充填して配管内部(充填層)の流体(気液二層流体)の状況を把握することが好ましい。即ち、粒子が充填された充填層の内部における液相と気相の挙動(粒子との関わり)を直接観察して、リアルタイムに的確に把握することが好ましい。
【0005】
しかし、配管の内部に粒子を充填して配管内部(充填層)の流体の状況を直接観察して把握する技術は存在せず、粒子を充填した配管内部(充填層)の気液二層流体の状況を直接観察することができる技術の出現が望まれているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-197017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、粒子を充填した充填層内の気液二層流体の状況を直接観察することができる粒子充填層の流体状況観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の粒子充填層の流体状況観察装置は、気液二層流体が流通する容器本体と、前記容器本体の内部に多数収容される粒体と、前記粒体の間を気液二層流体が流通する状態を視認状態で表示する観察手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明は、容器本体に多数の粒体を収容することで粒子が充填された充填層が構築され、観察手段により粒体の間を気液二層流体が流通する状態、即ち、粒子を充填した充填層内を流通する気液二層流の状態を視認することができる。この結果、粒子を充填した充填層内の気液二層流体の状況を直接観察することが可能になる。
【0010】
観察手段(撮像手段)の観察状況(撮影像)に基づき粒体に対する気体(気泡)の状況を評価する評価手段を備えることが好ましい。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明の粒子充填層の流体状況観察装置は、請求項1に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、前記粒体は、屈折率が気液二層流体の液体とほぼ同じ値の材質からなる透明な粒体であることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、粒体が液体(水)の屈折率とほぼ同じ値の屈折率の透明な材料で構成されているので、粒体の表・裏を流通する気液二層流体(気泡)の状況を観察することができる。
【0013】
また、請求項3に係る本発明の粒子充填層の流体状況観察装置は、請求項2に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、前記容器本体に対して、気体の大きさが任意に調整された気液二層流体を供給する二層流体供給手段と、前記二層流体供給手段から供給された気体の状態を維持する(気体が合体しない状態にする)気泡調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る本発明では、二層流体供給手段により気体の大きさが任意に調整された(気体が所望の径に維持された)気液二層流体が供給され、気泡調整手段により気体の状態が所望の径のままに維持される(気体同士が合体しない状態に維持される)。
【0015】
二層流体供給手段は、例えば、複数の二重管を用い、二重管の内側を多孔質の内径部として空気を供給し、外の筒部、及び、二重管の外側に水を供給する構成とされる。そして、それぞれの二重管の中と外の水、及び、空気の量を個別に調整することで、供給される気体(気泡)の大きさが所望の径になるように(分布が所望の状態になるように)調整される。
【0016】
気体としては、空気に限らず、例えば、炭酸ガスなどの透明なガスを用いることが可能である。
【0017】
気泡調整手段は、例えば、大きい粒状部材から小さい粒状部材を順次配置し、粒状部材の間の空隙のサイズが連続的に徐々に小さくなる構成にする。二層流体供給手段で初期の所望の径で形成された気体(気泡)に対し、空隙のサイズが連続的に徐々に小さくなる気泡調整手段を流通させることにより、所望の径(観察したい状態の微細な径)の気泡の合体が抑制されて、気体の状態が維持されて観察部位に送られる。
【0018】
例えば、二層流供給手段から供給される気泡の径が最終的に求められる小さい径の所望の径の気泡の場合、粒子が充填された配管に所望の径の気泡が直接供給されると、サイズが小さい空隙に所望の径(観察したい状態の微細な径)の気泡が送られることになり、気泡が合体して膜状の泡になる虞がある。このため、空隙のサイズが連続的に徐々に小さくなる流路に二層流供給手段から供給される気泡を流通させ、所望の径の気泡の合体が抑制された状態に調整して(気体の状態が維持された状態に調整して、所望の径の気泡が観察部位に供給される。
【0019】
また、請求項4に係る本発明の粒子充填層の流体状況観察装置は、請求項3に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、観察手段の後流側に配される格子状構造体を備え、前記格子状構造体は、長尺状の一方検出体、長尺状の他方検出体が交差して相互に間隔を開けて配され、電気信号の送受信により気泡の状態を導出する検出部材であることを特徴とする。
【0020】
請求項4に係る本発明では、いわゆる、ワイヤメッシュセンサを備えてボイド率の状況(流通方向に交差する方向の分布など)を合わせて評価することができる。
【0021】
また、請求項5に係る本発明の粒子充填層の流体状況観察装置は、請求項3もしくは請求項4に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、前記粒体は、屈折率が1.33から1.34の範囲の材質製であることを特徴とする。
【0022】
請求項5に係る本発明では、水と同じ屈折率をもつ材質の粒体を適用することができる。例えば、水と同じ屈折率をもつ材質としては、アモルファスフッ素樹脂(非晶質フッ素樹脂)を適用することができる。粒体(粒子)の作り方としては、例えば、非晶質フッ素樹脂を矩形板状に焼成加工し、矩形板状の非晶質フッ素樹脂を多数の立方体に加工して多数の立方体を粒状に加工(粒子表面研磨など)する方法を用いることができる。
【0023】
また、請求項6に係る本発明の粒子充填層の流体状況観察装置は、請求項5に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、観察手段は、気液二層流体が流通する状態を撮像して画像を表示する撮像手段(カメラ)であることを特徴とする。
【0024】
請求項6に係る本発明では、撮像手段(カメラ)で撮像した画像を観察することができる。
【0025】
また、請求項7に係る本発明の粒子充填層の流体状況観察装置は、請求項6に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、前記容器本体を流通した気液二層流体を回収して気体と液体を分離する分離手段と、分離された液体を前記容器本体の入口における前記二層流体供給手段に送る給水手段と、前記容器本体の入口における前記二層流体供給手段に圧縮空気を送る気体供給手段とを備えたことを特徴とする。
【0026】
請求項7に係る本発明では、容器本体を流通した気液二層流体を分離手段で回収して液体を分離し、分離された液体を給水手段から二層流体供給手段に循環させる。また、気体供給手段から二層流体供給手段に圧縮空気を供給する。
【0027】
また、請求項8に係る本発明の粒子充填層の流体状況観察装置は、請求項1に記載の粒子充填層の流体状況観察装置において、前記容器本体に対して、気体の大きさが任意に調整された気液二層流体を供給する二層流体供給手段と、前記二層流体供給手段から供給された気体の状態を維持する(気体が合体しない状態にする)気泡調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0028】
請求項8に係る本発明では、二層流体供給手段により気体の大きさが任意の所望の径(初期の微細な)に調整された気液二層流体が供給され、気泡調整手段により気体の状態が維持されて(気体同士が合体しない状態にされて)所望の径の気泡の挙動が観察される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の粒子充填層の流体状況観察装置は、粒子を充填した充填層内の気液二層流体の状況を直接観察することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】CO地下中貯留層の状況を説明する概念図である。
図2】本発明の一実施例に係る粒子充填層の流体状況観察装置の全体構成図である。
図3】二層流体供給手段の概略構成図である。
図4】気泡調整手段の概略構成図である。
図5】格子状構造体(ワイヤメッシュセンサ)の概念図である。
図6】ボイド率の状況を説明する概念図である。
図7】観察画像の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
例えば、CO地下中貯留層においては、図1に示すように、地中の帯水層1にCOが圧入される。圧入されたCOは、空隙中に気泡として残留するガストラップ2、及び、地下水中に溶解する溶解トラップ3とされ、長い時間をかけて鉱物トラップとなる。空隙中に気泡として残留するガストラップ2、及び、地下水中に溶解する溶解トラップ3の状況が把握されることにより、帯水層1の選定やCOの圧入状態を推定することができる。
【0032】
本発明の粒子充填層の流体状況観察装置では、粒子を充填した充填層内を流通する気液二層流の状態(気泡の状態)を視認することで、粒子を充填した充填層内の気液二層流体の状況を直接観察し、例えば、CO地下中貯留層におけるCOの挙動を推定する。本発明の粒子充填層の流体状況観察装置では、粒子を充填した充填層内の気液二層流体の状況を直接観察することができるので、CO地下中貯留層におけるCOの挙動の推定の他にも、瓦礫や廃棄物など、直接観察ができない場所を流通する気液二層流体の状況の推定に用いることができる。
【0033】
図2に基づいて粒子充填層の流体状況観察装置の全体の構成を説明する。
【0034】
図2には本発明の一実施例に係る粒子充填層の流体状況観察装置の全体を説明するための概略構成を示してある。
【0035】
図に示すように、粒子充填層の流体状況観察装置5は、気液二層流体(水・気泡)が流通する容器本体6を備えている。容器本体6の内部には、観察の対象となる地層を構成する粒子を想定した粒径の(観察対象の箇所の粒子に近似した径の)粒体7が多数収容されている。
【0036】
そして、容器本体6には、粒体7の間を気液二層流体が流通する状態を視認状態で表示する観察手段としてのカメラ(撮像手段)8が備えられている。尚、図中の符号9は、カメラ8の撮影部位を照らす照明手段である。
【0037】
粒体7は、屈折率が気液二層流体の液体である水とほぼ同じ値(1.33から1.34の範囲)の透明な材質であるアモルファスフッ素樹脂(非晶質フッ素樹脂)製で形成されている。粒体7が液体(水)の屈折率とほぼ同じ値の屈折率の透明な材料で構成されているので、粒体7の表・裏を流通する気液二層流体(水・気泡)の状況を観察することができる。
【0038】
粒体(粒子)7の作り方としては、例えば、非晶質フッ素樹脂を矩形板状に焼成加工し、矩形板状の非晶質フッ素樹脂を多数の立方体に加工して多数の立方体を粒状に加工(粒子表面研磨など)する方法を用いることができる。
【0039】
尚、粒体7の材質は、アモルファスフッ素樹脂(非晶質フッ素樹脂)製に限定されない。粒体7を構成する材質の屈折率が気液二層流体の液体とほぼ同じであることが好ましい。また、粒体7を構成する材質の屈折率は任意の値のものを適用することができる。
【0040】
容器本体6に対して、気泡(気体)の大きさが任意(初期の所望の径)に調整された気液二層流体(水・気泡)を供給する二層流体供給手段11が備えられ、二層流体供給手段11と容器本体6の間には、二層流体供給手段11から供給された気体(気泡)の状態を維持する、即ち、気体同士が合体しないようにして気泡の径を見たい径である所望の微細な径に維持する気泡調整手段12が備えられている。
【0041】
また、カメラ8の後流側(上側)には、格子状構造体15が備えられている。格子状構造体15は、具体的には後述するが、長尺状の一方検出体、長尺状の他方検出体が交差して相互に間隔を開けて配され、電気信号の送受信により気泡の状態を導出する検出部材(ワイヤメッシュセンサ)である。ワイヤメッシュセンサにより、交差部での気泡の状態(ボイド率)が求められ、ボイド率の状況(流通方向に交差する方向の気泡の分布など)が合わせて評価される。
【0042】
容器本体を流通した気液二層流体(水・気泡)は気液分離手段(分離手段)16に送られ(回収され)、気体と液体(水)が分離される。気液分離手段(分離手段)16で分離された液体(水)は熱交換器17で所望の温度(例えば常温)に調整され、熱交換器17で所望の温度に調整された液体(水)は給水手段18により二層流体供給手段11に送られる。また、二層流体供給手段11には、気体供給手段19により圧縮空気が送られる。
【0043】
尚、熱交換器17は必ずしも設ける必要はなく、気液分離手段16で分離された液体(水)の温度が所望の温度に維持されていれば、熱交換器17を省略することもできる。
【0044】
上記構成の流体状況観察装置は5、水の屈折率とほぼ同じ屈折率の透明な材質の粒体7を容器本体6に多数収容することで、透明な粒子が充填された充填層が構築され、カメラ8により粒体7の間(表、裏)を気液二層流体が流通する状態、即ち、粒子を充填した充填層内を流通する気液二層流(水・気泡)の状態を撮影して視認することができる。この結果、粒子を充填した充填層内の気液二層流体(水・気泡)の状況を、粒体7の表・裏を含めて直接観察することが可能になる。
【0045】
尚、カメラ8で撮影した画像(撮影像)に基づき粒体7に対する気体(気泡)の状況を評価する評価手段を備えることができる。
【0046】
図3に基づいて二層流体供給手段11を具体的に説明する。
【0047】
図3には二層流体供給手段11の構成を具体的に表す概略構成を示してある。
【0048】
図に示すように、二層流体供給手段11の内部には、複数の二重管21が設けられている。それぞれの二重管21の内側は多孔質の内径部22とされ、気体供給手段19が接続されている。それぞれの二重管21の内径部22の外側と外径部23の間の筒部24、及び、筒部24の外側には給水手段18が接続されている。
【0049】
複数の二重管21の内径部22には、空気量調整手段25を介して気体供給手段19が接続され、それぞれの内径部22に対して空気量が個別に調整される。空気量調整手段25としては、例えば、各空気供給経路に空気量調整バルブが備えられた構成となっている。
【0050】
複数の二重管21の筒部24の内側、及び、筒部24の外側には、水量調整手段26を介して給水手段18が接続され、それぞれの筒部24の内側、及び、筒部24の外側に対して水量が個別に調整される。水量調整手段26としては、例えば、各給水経路に水量調整バルブが備えられた構成となっている。
【0051】
気体供給手段19、及び、水量調整手段26の調整により、それぞれの二重管21から供給される水と空気(気泡)の量、状態を個別に調整することができる。これにより、任意の大きさ、分布により気泡の供給状況を調整することができる。つまり、二重管21毎に、独立して空気と水の流量を調整して初期の気泡の大きさ(分布)を制御することができ、所定の大きさの径(初期の所定の径)の気泡41を気泡調整手段12に送ることができる。
【0052】
図4に基づいて気泡調整手段12を具体的に説明する。
【0053】
図4には気泡調整手段12の構成を具体的に表す概略構成を示してある。
【0054】
図に示すように、気泡調整手段12は、3つの調整部27、28、29が配されている。気体供給手段19に接続される調整部27から順に、調整部28、29には、大きい径の粒状部材である粒31から小さい径の粒状部材である粒32、33が順次配置されている。これにより、調整部27、28、29は、粒31、32、33の間の空隙のサイズが連続的に徐々に小さくなっている。
【0055】
二層流体供給手段11で初期の所定の径で形成された気泡41に対し、空隙のサイズが連続的に徐々に小さくなる調整部27、28、29を流通させることにより、所望の径(観察したい状態の微細な径)の気泡41の合体が抑制されて、気泡41の径がそのままの状態で維持される(気体の状態が維持される)。
【0056】
つまり、粒体7が充填された容器本体6(配管)に所定の径の気泡41(見たい箇所で生じる大きさの気泡)が直接供給されると、サイズが小さい空隙に所望の径(観察したい状態の微細な径)の気泡41が急激に送られることになり、気泡41同士が合体して膜状の泡になる虞がある。この場合、流動条件を任意に調整する必要が生じる。
【0057】
このため、空隙のサイズが連続的に徐々に小さくなる気泡調整手段12の流路に二層流体供給手段11から供給される気泡41を流通させ、所望の径の気泡41の合体が抑制された状態に調整して、流動条件を調整することなく、所望の径の気泡41が観察部位である容器本体6に供給される。
【0058】
従って、粒31、32、33の間の空隙のサイズが連続的に徐々に小さくなる流路に、二層流体供給手段11から供給される気泡41(所望の径で形成された気泡)を流通させ、気泡41の合体を抑制することで、所望の径(微細径)の気泡41を容器本体6の観察部位に供給することができる。即ち、気泡調整手段12を用いることにより、流動条件に依存せずに、初期の所望の径の気泡41を形成することで、所望の微細径の気泡41をそのままの状態(合体させずに)で観察部位に送ることができる。
【0059】
図5図6に基づいて格子状構造体15を具体的に説明する。
【0060】
図5には格子状構造体(ワイヤメッシュセンサ)15を具体的に説明する構成の概念、図6にはワイヤメッシュセンサの検出状況(ボイド率の状況)を各交差部で説明する概念を示してある。
【0061】
図5に示すように、格子状構造体(ワイヤメッシュセンサ)15は、長尺状の一方検出体である励起電極体51と、励起電極体51に対して交差して配される他方検出体としての計測電極52とで構成されている。励起電極体51には所定の電位が与えられ、計測電極52では電位が計測される。励起電極体51と計測電極52は複数(図には4本)備えられ、互いに間隔を開けて設置され、格子状に配されている。
【0062】
励起電極体51には電気信号が送られ、励起電極体51に送られた電気信号は交差部で計測電極52により受信される。受信された電気信号は励起信号に対する強さによりインピーダンスが計測され、交差部での電気伝導度合い(ボイド率)が求められる。即ち、気泡が多い場合には、電気伝導度合が低くボイド率が高くなる。
【0063】
図6に示すように、励起電極体51(ABCD)と計測電極52(abcd)の交差部(A-a、A-b、A-c、A-d・・・・B-b、・・・C-c、・・・D-a、D-b、D-c、D-d)でのボイド率の経時変化が求められる。図6の各交差部でのグラフは、縦軸がボイド率(高低)、横軸が時間を表している。
【0064】
図6の結果により、ボイド率の状況(流通方向に交差する方向の分布など)が合わせて評価される。図6に示した例では、壁から離れた交差部(B-b、B-c、C-b、C-c)でのボイド率が低く、壁沿いに気泡が多く生じていることが示されている。
【0065】
上述した粒子充填層の流体状況観察装置5では、給水手段18により水が二層流体供給手段11に送られる(循環される)と共に、気体供給手段19により圧縮空気が二層流体供給手段11に送られる。二層流体供給手段11では、所定の大きさ(初期の所定の径)の気泡41を含む気液二層流体が調整される。
【0066】
二層流体供給手段11により、所定の大きさの径(初期の所定の径)の気泡41が気泡調整手段12(空隙のサイズが連続的に徐々に小さくなる流路)に送られる。気泡調整手段12では、空隙のサイズが連続的に徐々に小さくなる流路に気泡41が流通し、気泡41が合体することなく気泡41の径がそのままの状態で維持され、流動条件を調整することなく所望の径の気泡41が観察部位である容器本体6に送られる。
【0067】
容器本体6に送られた気液二層流体(水・気泡)の状況はカメラ8で撮影される。そして、格子状構造体(ワイヤメッシュセンサ)15でボイド率の状況(流通方向に交差する方向の気泡41の分布など)が合わせて評価される。
【0068】
カメラ8で撮影された気液二層流体の状況の一例を図7に示してある。図7(a)は正面視の状態、図7(b)は斜視の状態である。
【0069】
容器本体6に充填された粒体7は、屈折率が気液二層流体の液体である水とほぼ同じ値(1.33から1.34の範囲)の透明な材質であるアモルファスフッ素樹脂(非晶質フッ素樹脂)製で形成されているので、粒体7の表・裏を流通する気液二層流体(水・気泡)の状況を直接の画像として観察することができる。
【0070】
つまり、粒体7が液体(水)の屈折率とほぼ同じ値の屈折率の透明な材料で構成されているので、粒体7の表(手前)側にある気泡41(実線で示してある)だけでなく、粒体7の裏(後ろ)側にある気泡41(点線で示してある)の状況も粒体7を透過して観察することができる。即ち、粒体7の表・裏を流通する気液二層流体(水・気泡)の状況を観察することができる。
【0071】
図7に示した画像と、図6に示したボイド率の状況の結果を用いて、気泡のパラメータの判断基準を作成し、気泡の状態、溶解の状態を評価することができる。
【0072】
粒体7の材質は、気液二層流体の液体の種類により、屈折率を適宜選択することができる。粒体7を適用される液体とほぼ同じ屈折率の透明の材質で構成することにより、透明な粒体を透過した気泡を直接観察することができる。
【0073】
尚、上述した粒子充填層の流体状況観察装置5における気泡調整手段12は、観察のために所望の微細径の気泡とするために用いているが、他の目的のために所望の微細径の気泡を得る手段に用いることが可能であり、観察のために用いることに限定されない。
【0074】
上述した粒子充填層の流体状況観察装置5は、粒子を充填した充填層内の気液二層流体の状況を、粒子の表・裏を含めて直接観察することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、粒子充填層の流体状況観察装置の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 帯水層
2 ガストラップ
3 溶解トラップ
5 粒子充填層の流体状況観察装置
6 容器本体
7 粒体
8 カメラ
9 照明手段
11 二層流体供給手段
12 気泡調整手段
15 格子状構造体
16 気液分離手段
17 熱交換器
18 給水手段
19 気体供給手段
21 二重管
22 内径部
23 外径部
24 筒部
25 空気量調整手段
26 水量調整手段
27、28、29 調整部
31、32、33 粒
41 気泡
51 励起電極体
52 計測電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7