(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129799
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】超音波伝達媒体給排部材及び内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
A61B8/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023162
(22)【出願日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2023038759
(32)【優先日】2023-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】下山 雄土
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB22
4C601EE11
4C601FE01
4C601FF03
4C601GB03
4C601GC02
4C601GC13
(57)【要約】
【課題】超音波内視鏡の操作性を向上させることが可能な超音波伝達媒体給排部材及び内視鏡システムを提供する。
【解決手段】超音波内視鏡の挿入部の先端側の先端部本体に設けられた超音波トランスデューサの外表面を覆うように装着される超音波内視鏡用バルーン120を備えた超音波伝達媒体給排部材150であって、超音波内視鏡用バルーン120は超音波伝達媒体を充填可能な貯留部を有し、貯留部の内部に連通するチューブ140と、超音波内視鏡の操作部に着脱自在に固定可能であり、且つ、超音波内視鏡用バルーン120にチューブ140を介して接続された固定部152と、を備える。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波内視鏡の挿入部の先端側の先端部本体に設けられた超音波トランスデューサの外表面を覆うように装着される超音波内視鏡用バルーンを備えた超音波伝達媒体給排部材であって、
前記超音波内視鏡用バルーンは超音波伝達媒体を充填可能な貯留部を有し、
前記貯留部の内部に連通するチューブと、
前記超音波内視鏡の操作部に着脱自在に固定可能であり、且つ、前記超音波内視鏡用バルーンに前記チューブを介して接続された固定部と、
を備える、超音波伝達媒体給排部材。
【請求項2】
前記固定部は、前記固定部の前記操作部への固定状態の保持と解除を操作する操作部材を有する、
請求項1に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項3】
前記固定部は、前記チューブに前記超音波伝達媒体を給排するポート部を有する、
請求項1に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項4】
前記ポート部は、前記超音波伝達媒体を供給及び排出するための給排手段を接続可能な給排口を有する、
請求項3に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項5】
前記給排口は、ルアロックコネクタで接続可能な形状を有する、
請求項4に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項6】
前記給排口は、ルアロックコネクタを介して前記超音波伝達媒体の給排が可能である、
請求項4に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項7】
前記固定部は、
互いに対向する一対の把持体と、
前記一対の把持体を回動自在に連結する連結部材と、
を有する、
請求項1に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項8】
前記連結部材は、前記チューブに前記超音波伝達媒体を給排するポート部を有する、
請求項7に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項9】
前記ポート部は、前記連結部材から着脱可能な構造である、
請求項8に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項10】
前記固定部は、前記一対の把持体の把持力を付与する把持力付与部材を有する、
請求項7に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項11】
前記固定部は、前記操作部が有する凸部を回避する形状を有する、
請求項1に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項12】
前記固定部は、前記凸部の形状と係合可能な形状を有する、
請求項11に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項13】
前記凸部は、前記操作部に設けられた鉗子口金の鉗子導入部である、
請求項11に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項14】
前記固定部は、前記操作部に接触する部分に防滑部材を有する、
請求項1に記載の超音波伝達媒体給排部材。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の超音波伝達媒体給排部材と、
前記固定部が着脱自在に固定可能な操作部を有する超音波内視鏡と、
を備える内視鏡システム。
【請求項16】
前記操作部は、前記固定部が係合可能な凸部を有する、
請求項15に記載の内視鏡システム。
【請求項17】
前記凸部は、前記操作部に設けられた鉗子口金の鉗子導入部である、
請求項16に記載の内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波伝達媒体給排部材及び内視鏡システムに係り、特に、超音波内視鏡の挿入部の先端部本体に装着される超音波内視鏡用バルーンを備えた超音波伝達媒体給排部材及び内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において超音波内視鏡が利用されている。超音波内視鏡は、被検体の体腔内に挿入される挿入部の先端部に、撮像素子と超音波トランスデューサとを一体的に配置したものである。超音波トランスデューサは、体腔内の被観察部位に向けて超音波を放射し、被観察部位で反射したエコー信号を受信し、受信したエコー信号に応じた電気信号が超音波観測装置に出力される。そして、超音波観測装置において各種の信号処理がなされた後、超音波断層画像としてモニタ等に表示される。
【0003】
超音波及びエコー信号は、空気中で著しく減衰するため、超音波トランスデューサと被観察部位の間に、水又はオイル等の超音波伝達媒体を介在させる必要がある。そこで、超音波内視鏡の先端部に伸縮性のバルーン(超音波内視鏡用バルーン)を装着し、このバルーンに超音波伝達媒体を注入して膨張させ、被観察部位に当接させている。これにより、超音波トランスデューサと被観察部位の間から空気が排除され、超音波及びエコー信号の減衰が防止される。
【0004】
このような挿入部の先端部に装着されるバルーンとして、種々のバルーンが提案されている。例えば、下記の特許文献1は、振動子とバルーンとの間に超音波伝達媒体を貯めるように構成され、挿入部の先端部にバルーン装着用の突起又は係止溝を備え、バルーンには係止溝に嵌まる係止リングを備えることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、超音波伝達媒体をバルーンに給排するためのチューブが挿入部の内部に設けられているが、このチューブを挿入部の外部に設けた場合、挿入部を細径化できるメリットがある。この場合、チューブの先端側をバルーン内の超音波伝達媒体貯留部(以下、「貯留部」と言う。)に連通し、チューブの基端側にシリンジ等の給排手段を接続する構成となる。
【0007】
しかしながら、上記の構成では、施術者による超音波内視鏡の施術中にチューブが引き回される場合があるので、超音波内視鏡の操作性を妨げてしまうという問題がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、超音波内視鏡の操作性を向上させることが可能な超音波伝達媒体給排部材及び内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
第1態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、超音波内視鏡の挿入部の先端側の先端部本体に設けられた超音波トランスデューサの外表面を覆うように装着される超音波内視鏡用バルーンを備えた超音波伝達媒体給排部材であって、超音波内視鏡用バルーンは超音波伝達媒体を充填可能な貯留部を有し、貯留部の内部に連通するチューブと、超音波内視鏡の操作部に着脱自在に固定可能であり、且つ、超音波内視鏡用バルーンにチューブを介して接続された固定部と、を備える。
【0011】
第2態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第1態様において、固定部は、固定部の操作部への固定状態の保持と解除を操作する操作部材を有する。
【0012】
第3態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第1態様又は第2態様において、固定部は、チューブに超音波伝達媒体を給排するポート部を有する。
【0013】
第4態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第3態様において、ポート部は、超音波伝達媒体を供給及び排出するための給排手段を接続可能な給排口を有する。
【0014】
第5態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第4態様において、給排口は、ルアロックコネクタで接続可能な形状を有する。
【0015】
第6態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第4態様又は第5態様において、給排口は、ルアロックコネクタを介して超音波伝達媒体の給排が可能である。
【0016】
第7態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第1態様から第6態様のいずれかにおいて、固定部は、互いに対向する一対の把持体と、一対の把持体を回動自在に連結する連結部材と、を有する。
【0017】
第8態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第7態様において、連結部材は、チューブに超音波伝達媒体を給排するポート部を有する。
【0018】
第9態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第8態様において、ポート部は、連結部材から着脱可能な構造である。
【0019】
第10態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第7態様から第9態様のいずれかにおいて、固定部は、一対の把持体の把持力を付与する把持力付与部材を有する。
【0020】
第11態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第1態様から第10態様において、固定部は、操作部が有する凸部を回避する形状を有する。
【0021】
第12態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第11態様において、固定部は、凸部の形状と係合可能な形状を有する。
【0022】
第13態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第11態様又は第12態様において、凸部は、操作部に設けられた鉗子口金の鉗子導入部である。
【0023】
第14態様に係る超音波伝達媒体給排部材は、第1態様から第13態様のいずれかにおいて、固定部は、操作部に接触する部分に防滑部材を有する。
【0024】
第15態様に係る内視鏡システムは、第1態様から第14態様のいずれかの超音波伝達媒体給排部材と、固定部が着脱自在に固定可能な操作部を有する超音波内視鏡と、を備える。
【0025】
第16態様に係る内視鏡システムは、第15態様において、操作部は、固定部が係合可能な凸部を有する。
【0026】
第17態様に係る内視鏡システムは、第16態様において、凸部は、操作部に設けられた鉗子口金の鉗子導入部である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、超音波内視鏡の操作性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図7】チューブを省略した超音波内視鏡用バルーンの分解組み立て図である。
【
図9】超音波内視鏡用バルーンに供給される超音波伝達媒体の流れを説明するための断面図である。
【
図10】超音波内視鏡用バルーンの振動子面領域が膨出した状態を示す断面図である。
【
図11】チューブを省略した超音波内視鏡用バルーンの先端部本体への装着を説明するための斜視図である。
【
図12】チューブを省略した超音波内視鏡用バルーンを装着した先端部本体を、XZ面で切断した斜視図である。
【
図13】超音波内視鏡用バルーンを装着した先端部本体を、YZ面で切断した断面図である。
【
図14】チューブを省略した超音波内視鏡用バルーンを基端の側から見た斜視図である。
【
図15】実施形態の超音波伝達媒体給排部材の全体斜視図である。
【
図17】操作部の基端側から固定部を見た場合の斜視図である。
【
図18】操作部の先端側から固定部を見た場合の固定部の斜視図である。
【
図19】ルアテーパー式フィッティングの一例を示した断面図である。
【
図21】操作部に対する固定部の固定形態の一例を示した説明図である。
【
図22】操作部に対する固定部の固定形態の一例を示した説明図である。
【
図23】操作部に対する固定部の固定形態の一例を示した説明図である。
【
図24】操作部に対する固定部の固定形態の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る内視鏡システム(本発明の内視鏡システムの一例)は、いずれも後述する超音波内視鏡1と超音波伝達媒体給排部材150とを備えて構成されるものである。以下では、超音波内視鏡1の構成について説明した後に、超音波伝達媒体給排部材150の構成について説明する。
【0030】
[超音波内視鏡の全体構成]
図1は、超音波内視鏡1の全体図である。
図1に示すように、超音波内視鏡1(以下、単に「内視鏡1」と言う。)は、本発明の超音波内視鏡の一例であり、病変部(観察部位、検査部位、診察部位でも可)の細胞組織の採取などに用いられる。なお、本実施形態では病変部として気管支のリンパ節を例に挙げて説明を行う。
【0031】
内視鏡1は、施術者が把持して各種操作を行う操作部10と、患者の体内に挿入される挿入部12と、ユニバーサルコード14と、を備える。内視鏡1は、ユニバーサルコード14を介して、内視鏡システムを構成する不図示のプロセッサ装置、光源装置及び超音波観測装置等のシステム構成装置に接続される。
【0032】
操作部10には、施術者によって操作される各種操作部材が設けられており、例えば、アングルレバー16及び吸引ボタン22などが設けられている。
【0033】
また、操作部10には、挿入部12内を挿通する処置具挿通チャンネル23(
図3参照)に処置具を挿入する処置具導入口24が設けられている。
【0034】
挿入部12は、操作部10の先端から延出されており、全体が細径で長尺状に形成されている。挿入部12は、基端側から先端側に向かって順に軟性部30、湾曲部32及び先端部本体34により構成されている。
【0035】
軟性部30は、挿入部12の基端側からの大部分を占めており、任意の方向に湾曲する可撓性を有している。挿入部12を体腔内に挿入した際には、軟性部30が体腔内への挿入経路に沿って湾曲する。
【0036】
湾曲部32は、操作部10のアングルレバー16をA1方向に回転操作することによって上下方向(A2方向)に湾曲動作するようになっており、湾曲部32を湾曲動作させることによって先端部本体34を所望の方向に向けることができる。
【0037】
先端部本体34は、詳しくは後述の
図2と
図3を用いて説明するが、体内の観察画像を撮影するための観察光学系40及び照明光学系44と、超音波画像を取得するための超音波トランスデューサ50と、処置具導入口24から挿入された処置具を導出する処置具導出口52(以下、導出口52)と、を備える。
【0038】
ユニバーサルコード14は、詳しくは後述の
図3に示す信号ケーブル54、信号ケーブル56、及びライトガイド58を内包している。ユニバーサルコード14の不図示の端部にはコネクタが備えられている。コネクタは、プロセッサ装置、光源装置、及び超音波観測装置等の内視鏡システムを構成する所定のシステム構成装置に接続される。これにより、システム構成装置から内視鏡1に対して、内視鏡1の運用に必要な電力、制御信号、及び照明光等が供給される。観察光学系40により取得された観察画像の信号、及び超音波トランスデューサ50により取得された超音波画像の信号が内視鏡1からシステム構成装置に対して伝送される。なお、システム構成装置に伝送された信号は画像処理され、観察画像及び超音波画像はモニタに表示され、施術者等が観察することができる。
【0039】
なお、操作部10の構成は、
図1に示す態様に限定されない。アングルレバー16の代わりに一対のアングルノブを設け、一対のアングルノブを回転操作することにより、湾曲部32を上下方向及び左右方向に湾曲操作させてもよい。また、操作部10に送気送水ボタンを設け、送気送水ボタンを操作することで、先端部本体34に空気等の気体及び洗浄用液体等を供給してもよい。
【0040】
[先端部本体の構成]
図2は、穿刺針100が導出された先端部本体34の斜視図である。
図3は、先端部本体34の断面図である。
【0041】
以下、各部の構成を説明するに当たっては、X軸、Y軸及びZ軸の三次元直交座標系を用いて説明する。なお、図中のZ方向は先端部本体34(挿入部12)の長手軸38に対して平行な方向である。図中のZ方向のZ(+)方向側が先端部本体34の先端側であり、Z(-)方向側が先端部本体34の基端側である。図中のY方向は、Z方向に垂直で、本実施形態では各図における上下方向である。このY方向の一方向側であるY(+)方向側が図中の上方向であり、Y方向の一方向側とは反対の他方向側であるY(-)方向側が図中の下方向である。図中のX方向は、Z方向及びY方向の双方に垂直な方向である。
【0042】
図2と
図3に示すように、先端部本体34は、先端部本体34の先端側から基端側に向かって、超音波取付部34aと、導出口形成部34bと、本体部34cと、を備える。
【0043】
超音波取付部34aには、先端部本体34をX方向側から見た場合に、超音波トランスデューサ50が長手軸38に対してY(-)方向側に前傾(傾斜)した姿勢で取り付けられている。超音波トランスデューサ50は、超音波を送受する超音波振動子が長手軸38の方向に沿って円弧状に配列された振動子面51を有するコンベックス型である。振動子面51から生体に向けて超音波を送信する一方、振動子面51によって生体組織で反射した超音波エコーを受信する。超音波トランスデューサ50によりリンパ節の超音波画像を生成する信号が取得される。なお、超音波トランスデューサ50を構成する超音波振動子の数は限定されない。
【0044】
導出口形成部34bは、Y(+)方向側に開口した処置具の導出口52と、導出口52が開口しているXZ面に平行で且つZ方向(長手軸38を含む、以下同じ)に沿った略矩形状の開口形成面71と、を有する。開口形成面71は、XZ面に平行で且つZ方向に沿った面であり、先端部本体34の外周面の一部を構成する。なお、本実施形態では、導出口52が平面状の開口形成面71内で開口しているが、曲面、傾斜面、或いは凹凸面等の各種形状の面内で開口していてもよい。なお、本実施形態では処置具として、リンパ節の組織採取に用いられる穿刺針100を例に挙げて説明を行う。
【0045】
導出口形成部34b及び本体部34cの内部には管路74が形成されている。管路74の先端側は導出口52に接続され、且つ管路74の基端側は挿入部12内を挿通された処置具挿通チャンネル23に接続している。これにより、処置具導入口24から挿入された穿刺針100の先端が処置具挿通チャンネル23及び管路74を経て導出口52まで案内され、導出口52から外部に導出される。
【0046】
本体部34cは、観察光学系40及び照明光学系44が配置される光学系収納部82を備える。光学系収納部82は、略半円筒形状を有しており、凸面84と段差面85とを有する。凸面84は、先端部本体34(光学系収納部82)の外周面の一部を構成する。凸面84は、開口形成面71よりもY(+)方向側に位置し且つZ方向に沿った形状を有する。なお、凸面84についても曲面、傾斜面、或いは凹凸面等の各種形状に形成されていてもよい。
【0047】
段差面85は、開口形成面71の基端側と凸面84の先端側とを接続する斜面であり、先端部本体34の外周面の一部を構成する。なお、ここでいう斜面には、Z方向に対する傾斜角度が90°の垂直面も含まれる。
【0048】
段差面85には、観察光学系40の観察窓40aと、一対の照明光学系44の照明窓44aとが設けられている。
【0049】
観察光学系40は、段差面85に設けられた観察窓40aと、光学系収納部82内に設けられたレンズ系40b及び撮像素子40cと、を含む。撮像素子40cは、CCD(Charge Coupled Device)型又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型のイメージセンサであり、観察窓40aからレンズ系40bを介して取り込まれた観察像を撮像する。そして、撮像素子40cは、観察像の撮像信号を、挿入部12内に挿通された信号ケーブル56を介してシステム構成装置へ出力する。
【0050】
照明光学系44は、観察光学系40のX方向の両側に設けられており、段差面85に設けられた照明窓44aと、挿入部12内に挿通されたライトガイド58と、を含む。各照明窓44aの後方には、ライトガイド58の出射端が配設されている。これにより、光源装置から各ライトガイド58に供給された照明光が各照明窓44aから出射される。
【0051】
以上のように、先端部本体34では、その先端側から基端側に向かって、超音波トランスデューサ50、導出口52、及び段差面85(観察窓40a)が順番に配置される。すなわち超音波トランスデューサ50と観察窓40aとの間に導出口52が配置される。このため、穿刺針100による気管支壁面におけるリンパ節に向けての穿刺箇所を観察光学系40で観察することができる。
【0052】
次に、後述するバルーン120を装着するための先端部本体34の構成について説明する。
図4は、先端部本体34の斜視図である。
図5は先端部本体34の側面図である。
図6は、先端部本体34の平面図である。
【0053】
先端部本体34は、Z方向に垂直な方向であり、超音波トランスデューサ50の振動子面51の面方向に平行な方向である幅方向(X方向)に、超音波トランスデューサ50を挟んで両側面に立ち壁部91を有する。2個の立ち壁部91は、YZ面に平行な面で構成される。立ち壁部91は、全面において、YZ面に平行である必要はなく、また平行は略平行を含む。2個の立ち壁部91の幅方向の距離、すなわち、超音波取付部34aの幅は、Y方向から見た場合、先端部本体34の他の部分(導出口形成部34b及び本体部34c)と比較して短い(
図6参照)。
【0054】
後述するバルーン120の固定部が立ち壁部91に密着固定されることで、バルーンが、先端部本体34に固定される。
【0055】
また、先端部本体34は、超音波トランスデューサ50と導出口52との間には平面部93を有する。平面部93は、XZ面に略平行な平面で、X方向の長さがZ方向の長さより長い。平面部93は、既述した2個の立ち壁部91の基端側で連接し、平面部93と開口形成面71とは一体の平面を構成する。
【0056】
また、先端部本体34は、超音波トランスデューサ50と導出口52との間となる先端部本体34のX方向の両側の側面にそれぞれ溝部92を有する。換言すれば、
図6に示すように、先端部本体34をY(+)方向側から見た場合、溝部92は、超音波トランスデューサ50と導出口52との間に配置される。溝部92は、平面部93の両端部からY(-)方向側にY方向に平行に延び(
図5参照)、平面部93の両側に配置される(
図6参照)。すなわち、溝部92は超音波トランスデューサ50の基端側(Z(-)方向側)に配置され、且つ、先端部本体34をZ(+)方向側から見た場合、超音波トランスデューサ50を挟んで両側に配置されている。なお、
図4から
図6においては、溝部92は、超音波トランスデューサ50の基端側に設けられているが、溝部92が形成される位置は、超音波トランスデューサ50の基端側に限定されず、立ち壁部91に設けられていてもよい。
【0057】
後述するように、溝部92には、バルーン120の固定部に設けられた凸部122jが嵌合する。溝部92と凸部122jとが嵌合することで、バルーン120が先端部本体34から抜けにくくすることができる。
【0058】
先端部本体34は、超音波トランスデューサ50の基端側(Z(-)方向側)で、且つ振動子面51と反対側の面に段差部94を有する(
図5参照)。段差部94はXY面に略平行な平面であり、Z(-)方向側から見てY(-)方向に突出する。
【0059】
後述するように、段差部94は、バルーン120の固定部に設けられた係止部122kに係止することで、バルーン120が、先端部本体34から抜けることを防止することができる。
【0060】
[バルーンの構成]
次に、実施形態のバルーン120について説明する。図中において、
図2から
図6と同様に、X軸、Y軸及びZ軸の三次元直交座標系を用いて説明する。バルーン120が先端部本体34に装着された際の、X方向、Y方向及びZ方向に一致する。Z(+)方向側が先端側であり、Z(-)方向側が基端側となる。図中のZ方向は、先端部本体34(挿入部12)の長手軸38に対して平行な方向に相当する。図中のY方向は、Z方向に垂直で、本実施形態では各図における上下方向である。このY方向の一方向側であるY(+)方向側が図中の上方向であり、Y方向の一方向側とは反対の他方向側であるY(-)方向側が図中の下方向である。図中のX方向は、Z方向及びY方向の双方に垂直な方向である。
【0061】
図7は、後述するチューブ140を省略したバルーン120の組み立て図であり、
図7の700Aは組立後の斜視図であり、
図7の700Bは組立前の斜視図である。
図7に示すように、バルーン120は、インナー部122とアウター部124とを含む、二層構造のバルーン本体121により構成される。
【0062】
<インナー部>
インナー部122は、Z方向の一端に開口部122aを有し、対向配置された2個の側面部122bと、上面部122cと、傾斜面部122dと、底面部122eと、を備える。インナー部122は、開口部122aを有する有底筒状で構成されており、2個の側面部122bと、上面部122cと、傾斜面部122dと、底面部122eとにより開口部122a以外が塞がれている。
【0063】
開口部122aを画定する、2個の側面部122bと上面部122cと底面部122eの各辺は直線状であり、開口部122aの形状は略矩形状となる。
【0064】
開口部122aは、基端側(Z(-)側)から先端側(Z(+)側)に向かうにしたがい、下側(Y(-)側)から上側(Y(+)側)に傾斜する。
【0065】
側面部122bは、Z方向に沿って延び、YZ面に略平行な面で構成され、上面部122c及び傾斜面部122dの側に位置する第1側面部122fと、開口部122aの側に位置する第2側面部122gと、を備える。対向する第1側面部122f間の距離は、対向する第2側面部122g間の距離より小さい。第1側面部122fと第2側面部122gとの間には段差部122hが形成される。
【0066】
また、インナー部122は、インナー部122の外周を囲うフランジ部122iを備える。フランジ部122iは、上面部122cの基端側であり、且つ、第1側面部122fの基端側に設けられ、底面部122e(不図示)にも設けられる。フランジ部122iは連結された4つの直線部により構成され、インナー部122の外周を囲うように設けられる。
【0067】
傾斜面部122dは、既述の超音波トランスデューサ50の振動子面51に倣う形状を有しており、基端側(Z(-)側)から先端側(Z(+)側)に向かうにしたがい、上側(Y(+)側)から下側(Y(-)側)に円弧状に傾斜する。
【0068】
側面部122bは、第2側面部122gの内面に、対向する2個の凸部122jを有する。2個の凸部122jはY方向に平行に延び、相互に近づく方向に突出する。
【0069】
<アウター部>
アウター部124は、Z方向の一端に開口部124aを有し、対向配置された2個の側面部124bと、上面部124cと、傾斜面部124dと、底面部124eと、を備える。アウター部124は、開口部124aを有する有底筒状で構成されており、2個の側面部124bと、上面部124cと、傾斜面部124dと、底面部124eとにより開口部124a以外が塞がれている。
【0070】
開口部124aを画定する、2個の側面部122bと上面部122cと底面部122eの各辺は直線状であり、開口部124aの形状は略矩形状となる。
【0071】
側面部124bは、Z方向に沿って延び、YZ面に略平行な面で構成される。アウター部124の開口部124aは、インナー部122の段差部122hを収容するため、側面部124bの側(X方向)に広がっている。
【0072】
傾斜面部124dは、既述の超音波トランスデューサ50の振動子面51に倣う形状を有しており、基端側(Z(-)側)から先端側(Z(+)側)に向かうにしたがい、上側(Y(+)側)から下側(Y(-)側)に湾曲状に傾斜している。
【0073】
<バルーン本体>
700Aに示すように、インナー部122は、アウター部124の開口部124aを介して、アウター部124に収容され、アウター部124はインナー部122を覆う。ただし、アウター部124はインナー部122の全てを覆う必要ない。アウター部124は、インナー部122の2個の第1側面部122fと、上面部122cと、傾斜面部122dと、底面部122eの一部(先端側)を覆う。一方、アウター部124は、インナー部122の第2側面部122gと底面部122eの一部(基端側)を覆っていない。
【0074】
700Aに示すように、インナー部122とアウター部124を構成する、2個の側面部122bと2個の側面部124bとがそれぞれ対向配置され、上面部122cと上面部124cとが対向配置され、傾斜面部122dと傾斜面部124dとが対向配置され、底面部122eと底面部124eとが対向配置される。
【0075】
アウター部124の開口部124aの周縁部は、インナー部122のフランジ部122iに当接する。フランジ部122iにより、インナー部122に対するアウター部124の相対位置が決定される。
【0076】
アウター部124がインナー部122の開口部122aの側で貼り合わされ、二層構造のバルーン本体121が構成される。バルーン本体121は、挿入部12のZ方向の一端に設けられ、且つ先端部本体34に取り付けられる開口部122aを有する有底筒状に構成される。
【0077】
バルーン本体121の材質としては、インナー部122とアウター部124とがくっつかない構成とするため、インナー部122とアウター部124とが異なる材質であることが好ましい。ただし、後述するように、インナー部122とアウター部124との間にはクリアランスを設けることで、インナー部122とアウター部124とがくっつくことを防止することができる。したがって、インナー部122とアウター部124とは同じ材質としてもよい。インナー部122及びアウター部124の材質としては、シリコンゴム、又は、天然ゴム等を用いることができる。
【0078】
バルーン120が先端部本体34に装着された際、インナー部122の第1側面部122fと立ち壁部91とが対向配置され、傾斜面部122dと超音波トランスデューサ50とが対向配置される。アウター部124の側面部124bと立ち壁部91とが第1側面部122fを挟んで対向配置され、傾斜面部124dと超音波トランスデューサ50とが傾斜面部122dを挟んで対向配置される。
【0079】
インナー部122に設けられた開口部122aは、先端部本体34が挿入される挿入口となる。インナー部122の内部空間は、先端部本体34の形状の相似形状であり、先端部本体34の外形より小さい形状で形成される。先端部本体34に装着される前のバルーン120の2個の側面部122bの幅(X方向の長さ)が、2個の立ち壁部91の幅方向の距離より小さく設けられている。これにより、インナー部122の開口部122aから先端部本体34に挿入した際に、インナー部122の2個の側面部122bがX方向に膨張し、戻ろうとする収縮力により、側面部122bが、立ち壁部91に密着することで固定される。インナー部122の2個の側面部122bが先端部本体34に密着固定する固定部として機能する。
【0080】
インナー部122の側面部122bを構成する第2側面部122gに設けられた2つの凸部122jは、バルーン120を先端部本体34に装着した際、先端部本体34の溝部92と嵌合する。先端部本体34の溝部92と嵌合する2つの凸部122jは、固定部として機能する側面部122bに設けられる。なお、溝部92が立ち壁部91に設けられている場合、2つの凸部122jは側面部122bを構成する第1側面部122fに設けられる。
【0081】
また、インナー部122の内部を先端部本体34の相似形状であり、先端部本体34の外形より小さい形状とすることで、振動子面51及び振動子面51の反対側の面からも密着固定することができる。これにより、インナー部122は、先端部本体34の振動子面51及び振動子面51の反対側の面とも密着固定することができ、バルーン120を先端部本体34に強固に固定することができる。インナー部122の傾斜面部122dと底面部122eとが先端部本体34に密着固定する固定部として機能する。
【0082】
また、バルーン本体121は、超音波トランスデューサ50の振動子面の外形形状に沿った形状を有することが好ましい。バルーン本体121をこのような構成とすることで、先端部本体34にバルーン120を装着させる際の向きを安定させることができる。
【0083】
図8は、バルーン120の断面図である。800Aは、バルーン120をYZ面で切断した断面図であり、800Bは、バルーン120をXY面で切断した断面図である。
図8に示すように、アウター部124がインナー部122を覆い、アウター部124とインナー部122とを貼り合わせることによりバルーン本体121が構成される。
【0084】
800Aに示すように、インナー部122とアウター部124とが貼り合わされ、インナー部122とアウター部124との間に閉塞した空間を形成することができる。この空間が、超音波伝達媒体を貯める貯留部121aとなる。貯留部121aに超音波伝達媒体を貯めることにより、アウター部124の傾斜面部124dを構成する振動子面領域124fを膨出可能であり、振動子面領域124fが膨出部として機能する。振動子面領域124fは、超音波トランスデューサ50の振動子面51に対向する領域である。
【0085】
上述したようにバルーン120の貯留部121aが、インナー部122とアウター部124との間の閉塞した空間で構成されるので、バルーン120自体で液密を確保できる。したがって、先端部本体とバルーンとの間で液密を確保する従来とは異なり、先端部本体とバルーンとの係止において、バルーン120は円環の溝形状を必要としない。バルーン120は、円環の溝形状とすることに起因する、先端部本体34の太径化及び大型化を回避することを可能にする。また、バルーン120は、先端部本体34の形状に設計の自由度を与える。
図7に示すように、バルーン120の開口部122aは、円環形状でなく矩形状にできる。
【0086】
インナー部122とアウター部124との間は、密着せず、クリアランスを有することが好ましい。インナー部122とアウター部124とが密着しないことで、貯留部121aに超音波伝達媒体を供給する際に、インナー部122の外面とアウター部124の内面とがくっついて超音波伝達媒体が供給されにくくなることを防止することができる。また、後述するように、インナー部122とアウター部124とを接着させて組み立てる際に、インナー部122とアウター部124とをくっつきにくくすることができる。クリアランスとはインナー部122の外面とアウター部124の内面とが一定の距離だけ離間している状態を意味する。
【0087】
800Aに示すように、四角で囲まれた領域において、インナー部122とアウター部124とが、接着剤などにより貼り合わされる。接着剤により貼り合わされたインナー部122とアウター部124との接着部121bには、クリアランスは存在しない。クリアランスは、インナー部122とアウター部124との間の全域になくてもよい。
【0088】
接着部121bは、例えばインナー部122の上面部122c(不図示)とアウター部124の上面部124c(不図示)に対応する位置であってもよい。
【0089】
接着部121bは、超音波伝達媒体をバルーン120内に供給しても膨らまないため、穿刺針100が導出口52から導出されても、バルーン120の基端側(Z(-)側)は膨らまないので、導出口52から導出された穿刺針100が膨らんだバルーン120に接触することを防止することができる。接着部121bは、後述する振動子面領域124f以外の膨出を抑制でき、膨出規制部として機能する。接着部121bは、振動子面領域124fの基端側(Z(-)側)が膨出することを抑制する。
【0090】
アウター部124の傾斜面部124dは、振動子面領域124fと厚肉部124gとを含んでいる。厚肉部124gは、Z方向の一端(Z(-)側)とは反対側(Z(+)側)となる他端の側に配置され、振動子面領域124fの厚みより大きな寸法の厚みで形成される。厚肉部124gは、超音波伝達媒体が貯留部121aに供給された際に、アウター部124の振動子面領域124fの先端側(Z(+)側)が膨出することを抑制する。厚肉部124gは、膨出規制部として機能し、振動子面領域124fをより効果的に膨出させることができる。
【0091】
振動子面領域124fは、厚肉部124gを含めアウター部124の他の領域より薄い膜厚で形成されているので、振動子面領域124fを、他の領域と比較し、膨出しやすくできる。
【0092】
バルーン120の固定部として機能するインナー部122の底面部122eは、内側に係止部122kを有する。係止部122kは、XY面に略平行な平面で構成され、先端側(Z(+)側)から見て、Y(+)方向に立ち上がる。係止部122kは、バルーン120を先端部本体34に装着した際、先端部本体34の段差部94と係止する。
【0093】
バルーン本体121のインナー部122は、振動子面領域124fの反対側の底面部122eに貯留部121aに連通する連通路122mを有する。連通路122mは、Z(-)の方向に開口を有し、貯留部121aは連通路122mを介して外部と連通される。
【0094】
バルーン120の固定部として機能するインナー部122の底面部122eの連通路122mにチューブ140を差し込むことで、バルーン120にチューブ140を取り付けることができる。バルーン120へのチューブ140の取り付けは、着脱自在であっても、分離不能であってもよい。チューブ140は、内部に流路となる空間を有する筒状の部材である。チューブ140の流路から、連通路122mを介して、バルーン120内の貯留部121aに超音波伝達媒体を供給できる。これにより、バルーン120のアウター部124を構成する振動子面領域124fを膨らませることができる。チューブ140を、バルーン120に取り付けることにより、超音波伝達媒体をバルーン120に供給するための供給管路を内視鏡1の挿入部12に設ける必要がないため、挿入部12を細径化することができる。また、バルーン120(及びチューブ140)を使い捨て(ディスポーザブル)とすることで、チューブ140の洗浄及び滅菌を行う必要が無くなる。近年、滅菌装置が滅菌対象とする最小管路径を規定しており、洗浄、消毒及び滅菌に対する要求が大きくなっており、チューブ140を使い捨てとすることで、供給管路の洗浄及び滅菌の作業を省略することができる。
【0095】
チューブ140は、バルーン本体121(インナー部122及びアウター部124)より膨張しにくく構成されている。すなわち、バルーン本体121は、チューブ140より膨張しやすい構成である。バルーン本体121をチューブ140より膨張しやすくするためには、例えば、バルーン本体121の膜厚をチューブ140の膜厚より薄くしたり、バルーン本体121の材質をチューブ140の材質より膨張係数の大きい材質としたりすることで実現可能である。
【0096】
800Bに示すように、アウター部124は、振動子面領域124fのZ方向に直交するX方向の両側に、振動子面領域124fの厚みより大きな寸法の厚みで形成される側面部124b(すなわち厚肉部)を有する。アウター部124は、振動子面領域124fと側面部122bとを繋ぐ移行部124hを有する。移行部124hは、振動子面領域124fから側面部124bに近づくにしたがい厚みが厚くなる。移行部124hは超音波伝達媒体が貯留部121aに供給された際に、振動子面領域124fがX方向に膨出することを抑制でき、膨出規制部として機能する。移行部124hは側面部124bのY(+)側の一部により構成できる。
【0097】
バルーン本体121において、振動子面領域124fのZ(+)方向に直交するX方向の両側にインナー部122の側面部122bとアウター部124の側面部124bとが対向配置される。バルーン本体121は、対向する側面部122bと側面部124bとの間に、インナー部122とアウター部124とを接着剤等により接着するための接着領域121cを有する。接着領域121cは、超音波伝達媒体が貯留部121aに供給された際に、振動子面領域124fがX方向に膨出することを抑制し、膨出規制部として機能する。接着領域121cは、800Bに示すように、側面部122bと側面部124bとの間の一部の領域であってもよいし、対向する側面部122bと側面部124bとの間の全領域であってもよい。
【0098】
アウター部124の底面部124eは、幅方向(X方向)の略中央に、断面視において半球状で、Z方向に延びる凹部124iを有する。凹部124iは、クリアランスの一部を構成し、インナー部122の連通路122mに連通される部分である。凹部124iにより超音波伝達媒体を貯留部121aに容易に供給できる。
【0099】
図9は、バルーン120に供給される超音波伝達媒体の流れを説明するためのバルーン120の断面図である。900Aは、バルーン120をYZ面で切断した断面図であり、900Bは、バルーン120をXY面で切断した断面図である。
【0100】
図9に基づいて、超音波伝達媒体が貯留部121aに供給される流路について説明する。900Aに示すように、貯留部121aに超音波伝達媒体を供給するためアウター部124の連通路122mにチューブ140が取り付けられる。チューブ140は振動子面領域124fの反対側(Y(-)側)に配置されているので、振動子面領域124fの膨出を阻害しない。また、観察光学系40により観察画像の取得を阻害しない。
【0101】
超音波伝達媒体がチューブ140を通ってバルーン120に供給される。インナー部122の連通路122mを介して、インナー部122とアウター部124との間のクリアランスを有する領域に、超音波伝達媒体が供給される。超音波伝達媒体は、インナー部122の底面部122eとアウター部124の底面部124eとの間に充填され、さらに、インナー部122の傾斜面部122dとアウター部124の傾斜面部124dとの間に充填される。超音波伝達媒体は、最終的には、振動子面領域124fと傾斜面部122dとにより主として構成される貯留部121aに貯えられる。
【0102】
また、900Bに示すように、超音波伝達媒体は、インナー部122の底面部122eとアウター部124の底面部124eの間に充填され、さらに、インナー部122の側面部122bとアウター部124の側面部124bとの間に充填される。超音波伝達媒体は、最終的には、振動子面領域124fと傾斜面部122dとより主として構成される貯留部121aに貯えられる。
【0103】
図10は、バルーン120の振動子面領域120fが膨出した状態を示す断面図であり、バルーン120をYZ面で切断した断面図である。
図10に示すように、超音波伝達媒体が貯留部121aに貯えられると、振動子面領域124fが最も膨出する。
【0104】
振動子面領域124fは、厚肉部124gを含めアウター部124の他の領域より薄い膜厚で形成されている。これにより、振動子面領域124fが、他の領域と比較し、膨出しやすい。
【0105】
振動子面領域124f以外の領域に、例えば、膨出規制部として機能する厚肉部124g、接着部121b、移行部124h(不図示)及び接着領域121c(不図示)が設けられている。厚肉部124g、及び接着部121bにより、振動子面領域124f以外の領域(振動子面領域124fを挟んでZ(+)方向及びZ(-)方向の領域)が膨出することが抑制される。また、移行部124h及び接着領域121cにより、振動子面領域124f以外の領域(振動子面領域124fを挟んでX方向の領域)が膨出することが抑制される。
【0106】
バルーン120において、振動子面領域124fを最も膨出させることにより、バルーン120の底面側、また側面側の膨らみは抑制することができ、バルーン120を装着した先端部本体34を体腔内に挿入した際、より末梢まで挿入することができる。
【0107】
なお、チューブ140はバルーン120と比較すると最も膨張しない部材である。したがって、チューブ140を介して超音波伝達媒体をバルーン120に供給する際、チューブ140の膨張が抑制されるので、超音波伝達媒体をバルーン120に効果的に供給できる。
【0108】
次に、バルーン120と先端部本体34との装着について説明する。
図11は、チューブ140を省略したバルーン120の先端部本体34への装着を説明するための斜視図である。1100Aはバルーン120を先端部本体34に装着する前の状態を示す。バルーン120の開口部122aと先端部本体34の先端側が位置合わせされる。1100Bはバルーン120を先端部本体34に装着した後の状態を示す。バルーン120の開口部122aが先端部本体34に取り付けられ、バルーン120が先端部本体34に装着される。インナー部122は、超音波取付部34aの超音波トランスデューサ50を覆い、さらに、導出口形成部34bの開口形成面71以外の外周面の一部を覆う。アウター部124は、超音波取付部34aの超音波トランスデューサ50を覆う位置に配置される。
【0109】
既述したように、インナー部122の固定部である側面部122b(不図示)の収縮力により少なくとも側面部122bが立ち壁部91に密着固定する。
【0110】
固定部として機能するインナー部122の、バルーン120の膨出部として機能する振動子面領域124fの基端側には、平坦部122qを備える。超音波トランスデューサ50と導出口52との間の平面部93とバルーン120の平坦部122qとが密着固定する。また、平坦部122qを有することで、振動子面領域124fと、導出口52との間の距離を長くすることができるので、導出口52から導出された穿刺針100が膨らんだバルーン120に接触することを防止することができる。平坦部122qは、既述した接着部121bの位置としてもよい。
【0111】
なお、バルーン120は全体として、超音波トランスデューサ50をオフセットした形状を有しているので、作業者はバルーン120を先端部本体34に装着する向きを容易に把握できる。
【0112】
本実施形態のバルーン120によれば、インナー部122とアウター部124を貼り合わせて密閉空間とし、超音波伝達媒体を貯留する貯留部121aとしている。したがって、先端部本体34の外形の形状は、液密を確保するための形状に限定されず、先端部本体34の細径化、及び、穿刺針100の導出ルートを考慮して設計することができる。
【0113】
バルーン120にチューブ140を取り付け、チューブ140を介して貯留部121aに超音波伝達媒体を供給する場合、
図11に示すように、供給管路を内視鏡1の先端部本体34に設ける必要がない。
【0114】
図12は、チューブ140を省略したバルーン120が装着された先端部本体34をXZ面で切断した図である。
図12に示すように、バルーン120を構成するインナー部122の固定部である側面部122bは凸部122jを有する。また、超音波トランスデューサ50と導出口52との間に溝部92が設けられる。凸部122jと溝部92とが嵌合する。溝部92と凸部122jとが嵌合することで、バルーン120と先端部本体34とが離間する方向への移動することが規制され、バルーン120が先端部本体34から抜けにくくすることができる。
【0115】
なお、立ち壁部91が溝部(不図示)を有する場合、バルーン120の超音波トランスデューサ50に対向する側面部122bに凸部(不図示)が設けられ、この凸部と溝部とが嵌合することで、バルーン120が先端部本体34から抜けにくくすることができる。
【0116】
バルーン120は、振動子面51に対向する振動子面領域124fと傾斜面部122dとの間に貯留部121aを有する。
【0117】
図13は、バルーン120が装着された先端部本体34をYZ面で切断した断面である。
図13に示すように、先端部本体34は、超音波トランスデューサ50の基端側(Z(-)方向側)で、且つ振動子面51と反対側の面に段差部94を有する。バルーン120を構成するインナー部122の固定部である底面部122eは係止部122kを有する。段差部94と係止部122kとが係止することで、バルーン120が、先端部本体34から抜けることを防止することができる。バルーン120が装着された内視鏡1の挿入部12をZ(-)方向に体腔内から引き抜く際に、バルーン120が脱落することを防止することができる。また、チューブ140は挿入部12と並走して取り付けられ、操作部10付近でシリンジ等の超音波伝達媒体の給排手段と接続される。
【0118】
図14は、チューブ140を省略したバルーン120をZ(-)方向からZ(+)方向に見た斜視図である。インナー部122の底面部122eは、基端側(Z(-)側)にテーパ部122nを有する。テーパ部122nは、Z(-)方向に延びるにしたがい、Y(+)方向に傾斜する。また、インナー部122の2個の側面部122bは、基端側(Z(-)側)に、それぞれテーパ部122pを有する。2個のテーパ部122pは、Z(-)方向に延びるにしたがい、近づき合う向きに傾斜する。
【0119】
テーパ部122nを有することで、第1方向(Z方向)の力をY方向に逃がすことができる。また、テーパ部122pを有することで、第1方向(Z方向)の力をX方向に逃がすことができる。これにより、先端部を体腔内に挿抜する際に、体内組織との接触によりかかる力をY方向及びX方向に逃がすことができるので、バルーン120が先端部本体34から脱落することを防止することができる。
【0120】
バルーン120がテーパ部122nとテーパ部122pとを有する場合を例示したが、いずれか、一方だけでもよい。
【0121】
[超音波伝達媒体給排部材]
次に、実施形態の超音波伝達媒体給排部材について説明する。
図15は、実施形態の超音波伝達媒体給排部材150の全体斜視図である。
【0122】
図15に示すように、実施形態の超音波伝達媒体給排部材150は、本発明の超音波伝達媒体給排部材の一例であり、バルーン120と、チューブ140と、固定部152と、を備える。バルーン120は、既述の超音波トランスデューサ50の外表面を覆うように装着されるものであり、本発明の超音波内視鏡用バルーンの一例である。チューブ140は、バルーン120が有する貯留部121aの内部に連通するものであり、本発明のチューブの一例である。チューブ140は、チューブ140の先端開口部140a(
図8参照)がバルーン120の連通路122mに取り付けられることにより、バルーン120に連結される。
【0123】
固定部152は、後述するように内視鏡1の操作部10に着脱自在に固定可能であり、且つ、バルーン120にチューブ140を介して接続される。チューブ140は、チューブ140の基端開口部140bが固定部152の後述する孔部154に装着されることにより、固定部152に連結される。なお、固定部152は、本発明の固定部の一例である。
【0124】
図16は、固定部152の構成を示した組立斜視図である。
図17及び
図18は、それぞれ固定部152が操作部10に固定された状態を示した斜視図である。なお、
図17は、操作部10の基端側から固定部152を見た場合の斜視図、
図18は、操作部10の先端側から固定部152を見た場合の斜視図である。
【0125】
図16乃至
図18に示すように、固定部152は、操作部10に着脱自在に把持固定される把持部材156と、把持部材156の操作部10への固定状態(把持状態)の保持と解除を操作する摘まみ部材158と、チューブ140に超音波伝達媒体を給排するポート部160と、を有する。摘まみ部材158は、本発明の操作部材の一例であり、固定部152(把持部材156)の操作部10への固定状態の保持と解除を操作する操作部材である。
【0126】
ポート部160は、給排口162を有する。給排口162には、超音波伝達媒体を供給及び排出するためのシリンジ164がチューブ166及びコネクタ168を介して接続される。
【0127】
図19は、給排口162とコネクタ168とを接続するルアテーパー式フィッティングの一例を示した断面図である。ルアテーパー式フィッティングは、はめ込み式(ルアスリップ式)とねじ式(ルアロック式)の2つのタイプがある。
図19では、コネクタ168として、はめ込み式のコネクタ168Aを左側に図示し、ねじ式のコネクタ168Bを右側に図示している。はめ込み式のコネクタ168Aは、外周面がテーパ状に形成されたノズル部200を有する。ねじ式のコネクタ168Bは、外周面がテーパ状に形成されたノズル部202と、内周面に雌ねじ204が形成されたカラー部206と、を有する。
【0128】
一方、給排口162は、ルアロックコネクタに相当する形状(接続形状)に構成されており、すなわち、テーパ孔208と、先端部に半径方向外方に突出する雄ねじ部210と、が形成された雌嵌合部212を有している。
【0129】
給排口162とはめ込み式のコネクタ168Aとは、ノズル部200を雌嵌合部212のテーパ孔208にはめ込むことによって結合される。また、給排口162とねじ式のコネクタ168Bとは、ノズル部202を雌嵌合部212のテーパ孔208に嵌入させた後、カラー部206を回転させることによって結合される。これにより、給排口162とコネクタ168A、168Bとが接続される。
【0130】
このように給排口162をルアロックコネクタとして構成することにより、はめ込み式のコネクタ168Aであってもねじ式のコネクタ168Bであっても給排口162に容易に接続することができる。これにより、給排口162を介して超音波伝達媒体の給排が可能となる。また、ルアテーパー式フィッティングを採用することにより、超音波伝達媒体の給排時に給排口162とコネクタ168との接続部から超音波伝達媒体が漏れることを確実に防止することができる。
【0131】
なお、ポート部160及び給排口162は、本発明のポート部及び給排口の一例である。また、チューブ166及びコネクタ168を使用することなく、シリンジ164を給排口162に直結する場合は、シリンジ164の先端管165を上記のようなはめ込み式又はねじ式のコネクタに構成すればよい。
【0132】
図15及び
図16に示すように、把持部材156は、互いに対向する一対の把持体170、172を有する。把持体170、172は、対称形状で構成され、且つ、互いに対向する挟持片170a、172aを有する。挟持片170a、172aは、互いに外側に円弧状に膨らんだ凹状に形成され、操作部10の円弧状の外周面10aを操作部10の径方向から把持(挟持)可能である。なお、一対の把持体170、172は、本発明の一対の把持体の一例である。
【0133】
また、把持部材156を構成する一対の把持体170、172は、操作部10に接触する部分に防滑機能を有するラバーシート173を有する。ラバーシート173は、挟持片170a、172aの互いに対向する内側面に取り付けられている。なお、ラバーシート173は、本発明の防滑部材の一例である。
【0134】
固定部152は、一対の把持体170、172を回動自在に連結する連結部材174を有する。以下、具体的な構成について説明する。
【0135】
連結部材174は、互いに平行に配置された一対の軸176、178を有する。軸176、178は、それぞれの両端が連結部材174に形成された軸受部180a、180b、182a、182bに支持される。また、軸176、178は、軸受部180a、180b、182a、182bにそれぞれ装着されるEリング184によって、軸受部180a、180b、182a、182b(連結部材174)からの脱落が防止される。
【0136】
把持体170、172は、それぞれ挟持片170a、172aに連設された筒状の軸受部170b、172bを有する。軸受部170b、172bに軸176、178が挿通配置される。これにより、把持体170、172は、それぞれ軸176、178を介して連結部材174に回動自在に連結される。その結果、把持体170、172(挟持片170a、172a)が操作部10の外周面10aを操作部10の径方向から挟持可能となる。なお、連結部材174は、本発明の連結部材の一例である。
【0137】
また、固定部152は、トーションばね186、188を有する。トーションばね186、188のコイル部186a、188aに、軸176、178が挿通される。これにより、トーションばね186、188が軸176、178を介して連結部材174に取り付けられる。
【0138】
トーションばね186、188は、それぞれコイル部186a、188aの両端部に係止ピン186b、186c、188b、188cを有する。係止ピン186b、188bは、それぞれ連結部材174に形成された溝174a、174bに係止され、係止ピン186c、188cは、後述の摘まみ部材158に係止される。
【0139】
連結部材174について詳しく説明する。
図20は、
図16に示した連結部材174の拡大図である。
図20に示すように、連結部材174は、連結本体部175を有する。連結本体部175は、外形が略直方体形状に構成されている。また、操作部10(
図18参照)の先端側から連結本体部175を見た場合、連結本体部175は、正面175a、外側面175b、内側面175c、左側面175d及び右側面175eを有する。正面175aに既述の孔部154が形成される。また、左側面175d及び右側面175eに既述の溝174a及び溝174bが形成される。
【0140】
図16に戻り、摘まみ部材158は、一対の摘まみ体190、192を有する。摘まみ体190、192は、それぞれ挟持片170a、172aに軸受部170b、172bを介して連設される。すなわち、摘まみ部材158は把持部材156と一体に構成される。また、既述のトーションばね186、188の係止ピン186c、188cは、それぞれ摘まみ体190、192に形成された溝190a、192aに係止される。
【0141】
これにより、一対の摘まみ体190、192を施術者の指で互いに近づく方向に操作した場合、一対の把持体170、172は、トーションばね186、188の付勢力に抗して互いに離れる方向(操作部10の径方向の外側方向)に回動する。また、一対の摘まみ体190、192から指を離した場合、一対の把持体170、172は、トーションばね186、188の付勢力によって互いに近づく方向(操作部10の径方向の内側方向)に回動する。この動作によって把持部材156に把持力が付与され、固定部152が操作部10に固定される。なお、トーションばね186、188は、本発明の把持力付与部材の一例である。
【0142】
固定部152が操作部10に固定された場合、
図20に示した連結本体部175の内側面175cは、把持体170、172のそれぞれの内側面(ラバーシート173)と協働して操作部10を把持(挟持)する面として機能する。また、把持体170、172が操作部10を把持した場合、内側面175cは、操作部10が有する凸部を回避する形状を有する。以下、具体的な構成について説明する。
【0143】
本例では、上記の凸部として、処置具導入口24の鉗子導入部25(
図17及び
図18参照)を例示する。鉗子導入部25は、操作部10の外周面から操作部10の基端側に向けて突出した略円筒状の部材である。連結本体部175の内側面175cは、鉗子導入部25の円弧状の外周面25aを回避する円弧状の凹部175fを有している。なお、凹部175fにもラバーシート173が取り付けられている。また、処置具導入口24は、鉗子口金に相当する。
【0144】
ここで、
図17及び
図18では、内側面175cの凹部175fが鉗子導入部25の外周面25aを回避しつつ外周面25aに係合した固定形態が示されている。このとき、把持体170、172は、鉗子導入部25を除く操作部10の外周面10aを把持する。このような凹部175fを連結部材174に備えることにより、固定部152を鉗子導入部25に位置決め可能となり、また、回転を防止した状態で固定部152を鉗子導入部25に固定可能となる。
【0145】
次に、把持部材156(把持体170、172)の機能について説明する。把持部材156は、鉗子導入部25を除く操作部10の外周面10aを把持する機能の他、以下の機能も有している。
【0146】
すなわち、施術者によっては左手で操作部10を把持したり、右手で操作部10を把持したりして内視鏡1を操作する場合がある。その場合、操作部10に対する固定部152の固定位置によっては、ポート部160から引き出されるチューブ166(又はポート部160に直結されるシリンジ164)が施術者にとって邪魔になり、内視鏡1の操作性を妨げる場合がある。
【0147】
したがって、内視鏡1の操作性を向上させるためには、ポート部160が向く方向(ポート部160からチューブ166が引き出される方向、又はポート部160に直結されるシリンジ164が向く方向)を、施術者の好みに応じた方向に変更可能であることが要求される。また、ポート部160の向きを変更した場合であっても、固定部152を操作部10に位置決め可能であり且つ回転を防止した状態で固定可能であることが要求される。
【0148】
そこで、本例の固定部152は、上記の把持部材156を備えているので、操作部10に対し任意の位置で固定部152を固定可能である。これにより、ポート部160が向く方向を、施術者の好みに応じた方向に変更することができる。
【0149】
次に、ポート部160が向く方向を変更した場合の二つの固定形態について説明する。
図21及び
図22には、
図18に示した固定部152の固定形態(以下、第1固定形態と言う。)に対し、固定部152を長手軸38の回りに矢印A方向(操作部10の先端側から見て反時計回り方向)に約90度ずらして固定した固定形態(以下、第2固定形態と言う。)が示されている。すなわち、第2固定形態は、ポート部160が向く方向を第1固定形態に対して矢印A方向に約90度傾けた固定形態である。第2固定形態は、特に、左手で操作部10を把持する施術者にとって操作性のよい形態となる。なお、
図21は、操作部10の基端側から固定部152を見た場合の斜視図であり、
図22は、操作部10の先端側から固定部152を見た場合の斜視図である。
【0150】
第2固定形態において、把持体170、172のうち鉗子導入部25と対向する把持体172(挟持片172a)は、上記の通り凹状に形成されているので、鉗子導入部25の外周面25aを回避しつつ外周面25aに係合する。また、把持体172の基端側面には、把持体172の先端側に向いた凹状の切欠部172cが形成されており、この切欠部172cは第2固定形態において鉗子導入部25の外周面25aを回避しつつ外周面25aに係合する。このとき、連結本体部175の凹部175fと他方の把持体170(挟持片170a)は、それぞれ操作部10の外周面10aを回避しつつ外周面10aに係合する。
【0151】
一方、
図23及び
図24には、第1固定形態に対して、固定部152を長手軸38の回りに矢印B方向(操作部10の先端側から見て時計回り方向)に約90度ずらして固定した固定形態(以下、第3固定形態と言う。)が示されている。すなわち、第3固定形態は、ポート部160が向く方向を第1固定形態に対して矢印B方向に約90度傾けた固定形態である。第3固定形態は、特に、右手で操作部10を把持する施術者にとって操作性のよい形態である。なお、
図23は、操作部10の基端側から固定部152を見た場合の斜視図であり、
図24は、操作部10の先端側から固定部152を見た場合の斜視図である。
【0152】
第3固定形態において、把持体170、172のうち鉗子導入部25と対向する把持体170(挟持片170a)は、上記の通り凹状に形成されているので、鉗子導入部25の外周面25aを回避しつつ外周面25aに係合する。また、把持体170の基端側面には、把持体170の先端側に向いた凹状の切欠部170cが形成されており、この切欠部170cは第3固定形態において鉗子導入部25の外周面25aを回避しつつ外周面25aに係合する。このとき、連結本体部175の凹部175fと他方の把持体172(挟持片172a)は、それぞれ操作部10の外周面10aを回避しつつ外周面10aに係合する。
【0153】
このように把持体170、172(挟持片170a、172a)を、外周面25aを回避しつつ外周面25aに係合可能な形状(凹状)に形成し、把持体170、172に外周面25aを回避しつつ外周面25aに係合可能な形状(凹状)の切欠部170c、172cを形成することにより、ポート部160が向く方向を、施術者の好みに応じた方向に調整した場合でも、固定部152を鉗子導入部25に位置決めすることができ、且つ、回転を防止した状態で固定部152を鉗子導入部25に固定することができる。
【0154】
図25は、連結部材174からポート部160が取り外された状態を示した斜視図である。
図25に示すように、本例のポート部160は、連結部材174に対し着脱自在に構成される。
【0155】
ポート部160は、略直方体形状のアタッチメント部材194を有する。アタッチメント部材194は、連結本体部175の一部を構成する正面175aと外側面175bとを有し、正面175aに孔部154が形成され、外側面175bに給排口162が形成される。また、アタッチメント部材194は、孔部154と給排口162とを連通するL字状の給排路196をアタッチメント部材194の内部に有している。
【0156】
このように構成されたアタッチメント部材194は、連結部材174の左側壁174cと右側壁174dと底面174eとの間で画成される凹状の収容溝174fに着脱自在に収容される。これにより、ポート部160が連結部材174に対して着脱自在に取り付けられる。
【0157】
次に、実施形態の超音波伝達媒体給排部材150が有する幾つかの効果について説明する。
【0158】
実施形態の超音波伝達媒体給排部材150は、バルーン120にチューブ140を介して接続された固定部152が、操作部10に着脱自在に固定可能に構成されるので、施術者による内視鏡1の施術中にチューブ140が引き回されることを防止することができる。これにより、内視鏡1の操作性を向上させることができる。
【0159】
また、実施形態の超音波伝達媒体給排部材150を構成する固定部152には、固定部152の操作部10への固定状態の保持と解除を操作する操作部材である摘まみ部材158が設けられるので、その操作部材(摘まみ部材158)を操作することにより、操作部10に対する固定部152の着脱を容易に行うことが可能となる。
【0160】
なお、実施形態では、本発明の操作部材の一例として摘まみ部材158を示したが、これに限らず、固定部152の操作部10への固定状態の保持と解除を操作することができるものであればよい。すなわち、本発明の操作部材は、摘まみ部材158のように指で摘まむことが可能な摘まみ形状を有するものに限定されず、例えば、指を引っ掛けることが可能な引っ掛け形状又はその他の形状を有するものであってもよい。
【0161】
また、実施形態では、固定部152が、操作部10に着脱自在に把持固定される把持部材156(一対の170、172)を備えた構成を示したが、これに限らず、操作部10に着脱自在に固定されるものであればよい。例えば、固定部152が係合部材、吸着部材、又は磁石などを備えており、これらにより操作部10に対し固定部152が係合、吸着、又は磁力などにより固定される構成であってもよい。
【0162】
また、実施形態の超音波伝達媒体給排部材150は、操作部10に対し固定部152を施術者の好みに応じた位置に固定することができるので、ポート部160が向く方向を施術者の好みに応じた方向に変更することができる。
【0163】
また、ポート部160に給排口162を備えたので、給排口162にシリンジ164等の給排手段を接続することができる。これにより、バルーン120に対する超音波伝達媒体の供給及び排出を容易に行うことができる。
【0164】
また、連結部材174に一対の把持体170、172を回動自在に設けたので、固定部152を操作部10に簡単に固定することができる。
【0165】
また、連結部材174にポート部160を備えたので、例えば、摘まみ部材158の操作に邪魔になることなくポート部160(給排口162)にシリンジ164等の給排手段に接続することができる。
【0166】
また、固定部152にトーションばね186、188を備えたので、一対の把持体170、172に把持力を付与することができる。これにより、固定部152を操作部10に確実に固定することができる。
【0167】
また、固定部152に、鉗子導入部25を回避しつつ係合可能な形状の凹部175fと把持体170、172(挟持片170a、172a)とを備えたので、固定部152を鉗子導入部25に位置決めすることができる。また、回転を防止した状態で固定部152を鉗子導入部25に固定することができる。更に、操作部10に対する固定部152の固定位置を容易に把握することができる。
【0168】
また、把持体170、172(挟持片170a、172a)にラバーシート173を備えたので、操作部10に対する固定部152のスリップに起因する位置ずれを防止することができる。また、凹部175fにもラバーシート173を備えたので、上記の位置ずれをより確実に防止することができる。
【0169】
また、給排口162をルアロックコネクタで接続可能な形状としたので、ルアロックコネクタを介して超音波伝達媒体の給排が可能となる。
【0170】
また、ポート部160を連結部材174から着脱可能としたので、ポート部160を使い捨て(ディスポーザブル)とすることができる。これにより、ポート部160(特に孔部154、給排口162及び給排路196)の洗浄及び滅菌を行う必要が無くなる。
【0171】
なお、実施形態では、一対の把持体170、172を連結部材174に回動自在に連結した固定部152について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、連結部材174を用いることなく、一対の把持体170、172同士を1本の軸を介して回動自在に連結した構成の固定部であっても適用できる。
【0172】
また、実施形態では、鉗子導入部25(凸部)に固定部152を固定する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、操作部10の外周面10aのうち鉗子導入部25を除く平坦な外周面10aであっても固定部152を固定することができる。
【0173】
以上、実施形態に係る超音波伝達媒体給排部材及び内視鏡システムについて説明したが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0174】
1 超音波内視鏡
10 操作部
10a 外周面
12 挿入部
14 ユニバーサルコード
16 アングルレバー
22 吸引ボタン
23 処置具挿通チャンネル
24 処置具導入口
25 鉗子導入部
25a 外周面
30 軟性部
32 湾曲部
34 先端部本体
34a 超音波取付部
34b 導出口形成部
34c 本体部
34d 傾斜面
38 長手軸
40 観察光学系
40a 観察窓
40b レンズ系
40c 撮像素子
44 照明光学系
44a 照明窓
50 超音波トランスデューサ
51 振動子面
52 処置具導出口
54 信号ケーブル
56 信号ケーブル
58 ライトガイド
71 開口形成面
74 管路
82 光学系収納部
84 凸面
85 段差面
91 立ち壁部
92 溝部
93 平面部
94 段差部
100 穿刺針
120 超音波内視鏡用バルーン
120 バルーン
121 バルーン本体
121a 貯留部
121b 接着部
121c 接着領域
122 インナー部
122a 開口部
122b 側面部
122c 上面部
122d 傾斜面部
122e 底面部
122f 第1側面部
122g 第2側面部
122h 段差部
122i フランジ部
122j 凸部
122k 係止部
122m 連通路
122n テーパ部
122p テーパ部
122q 平坦部
124 アウター部
124a 開口部
124b 側面部
124c 上面部
124d 傾斜面部
124e 底面部
124f 振動子面領域
124g 厚肉部
124h 移行部
124i 凹部
140 チューブ
140a 先端開口部
140b 基端開口部
150 超音波伝達媒体給排部材
152 固定部
154 孔部
156 把持部材
158 摘まみ部材
160 ポート部
162 給排口
164 シリンジ
166 チューブ
168 コネクタ
168A コネクタ
168B コネクタ
170 把持体
170a 挟持片
170b 軸受部
170c 切欠部
172 把持体
172a 挟持片
172b 軸受部
172c 切欠部
173 ラバーシート
174 連結部材
174a 溝
174b 溝
174c 左側壁
174d 右側壁
174e 底面
174f 収容溝
175 連結本体部
175a 正面
175b 外側面
175c 内側面
175d 左側面
175e 右側面
175f 凹部
176 軸
178 軸
180a 軸受部
180b 軸受部
182a 軸受部
182b 軸受部
184 Eリング
186 トーションばね
188 トーションばね
186a コイル部
186b 係止ピン
186c 係止ピン
188a コイル部
188b 係止ピン
188c 係止ピン
190 摘まみ体
190a 溝
192 摘まみ体
192a 溝
194 アタッチメント部材
196 給排路
200 ノズル部
202 ノズル部
204 雌ねじ
206 カラー部
208 テーパ孔
210 雄ねじ部
212雌嵌合部